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委員会会議録

委員会補足文書

開催別議員別委員会別検索用


令和5年10月子どもの孤立対策特別委員会
常葉大学教育学部 准教授 太田正義氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/10/2023 会派名:


○太田正義氏
 皆さん、こんにちは。
 常葉大学教育学部で教育心理学を教えております太田といいます。よろしくお願いします。
 本日はいじめと不登校に関して、研究等で分かっていることを含めて、お話をできればと思っています。
 もともと、私、大学を出てからずっと臨床、支援の現場にいたのですが、10年ちょっと前から大学に入りまして、大学に入ると研究をしないといけないですが、そうしたときにどういう研究をしようかと考えたのですが、やはり現場で関わってた子供たち、問題を抱えた子供たちが多かったのですけれども、その問題からどうやって立ち直っていくのかや、その問題をこじらせないためにはどうしたらいいのかなど、そういったことをずっと研究しております。その中に不登校とか、いじめの問題もありましたので、今日はそういう研究の成果をお話しできればと思っております。
 先週、文科省の令和4年度の問題行動等調査が発表されまして、いじめの認知件数と不登校の数がすごく増えていると、全国ニュースにもなっていましたけれども、いじめの問題と不登校の問題は、分けて考えないといけなくて、私の立場からすると、いじめの認知件数は増えたほうがいい。不登校は増えたほうがいいのか、減ったほうがいいのか、よく分からないけれども、いずれにせよ、学校に行けない状況の子供たちが増えている要因については、しっかりと考えていかないといけないと思います。
 まず最初に、いじめの問題から、説明をしていきたいと思います。
 これは配付した資料と全く同じものですが、文科省の調査で、よく見るグラフです。昭和60年からずっと、いじめの認知件数、発生件数が調査されていまして、増えたり減ったりしていると。この縦線が、定義が変わったところで、今までに3回変わっています。一番右側の線が、いじめ防止対策推進法に基づく定義になり、その後から、いじめの件数が爆増しているという状況になっています。
 令和2年度に減ったのは、コロナで、要するに関係が薄くなったからだという分析がされています。学年別の推移を見てみると、こんな感じで、年度と学年ごとにプロットしたものですが、実は増えているのはどこかというと、いじめの認知件数については、小学校がすごく増えていることが分かります。このグラフは、昔は全然違う形を描いていまして、いじめ防止対策推進法ができる以前は、こういう経年で見ても、小学校で微増、中1で激増して減ると、中1ギャップの1つの理由として使われていたものですけれども、いじめ防止対策推進法ができた後に、右肩下がりというような形のグラフになっています。
 これは、やはり理由がありまして、いじめ防止対策推進法のいじめの定義が、要件が3つあるのですが、1つは人間関係があること、それから心理的、物理的影響を与える行為があったこと、そして、その与えられた側が心身の苦痛を感じていること、というその3つの要件に当てはまればいじめと認知しましょうとなっているわけです。ですから、ちょっとした悪口でも、例えば同じクラスの中で、ばかと言ったとして、言われた側がすごく傷ついたと言っていれば、いじめと認知していくと。これは、本人の被害感を基に認知件数、認知につなげてくださいということになっているのですが、これは、過去にささいな言動などで、大きな事件に発展してしまったケースがやはりたくさんあるということで、網羅的に網をかけていきましょうということから、こういうすごく緩い、ある意味緩い認知、緩い要件になっていると考えることができます。文科省も、けんかはお互いの両方向のいじめであるみたいなことは言っていて、けんかでいじめと捉えられないものはほとんどないだろうという見解も出されていますので、この増えているのは、いじめの定義に従って、しっかりと認知を行ってきたからだと考えるのが妥当かなと思っております。決していじめが増えたということではなくて、しっかりと認知するようになったと考えたほうがいい。
 ただ、新聞報道だと、減ると対策の結果、増えるとそれも対策の結果みたいに報道されることが多いので、この辺がなかなか理解が進まないところだと思います。
 この学年が上がる度に減っていることについて、どう考えたらいいのかというのはすごく議論されてきています。当然、成長すると同時に子供みたいなトラブルが減るということもあると思いますし、ここで1点、少し気をつけなければいけないのは、もしかしたら可能性として、いじめられた子供が学校に行かなくなったという可能性も当然あるというところはあると思いますが、これは後で説明していきます。
 県別に認知率、正確には認知率と言っていいのかどうか分からないのですが、1,000人当たりに何件発生したかというのを割り算したものが出ていますが、例えば全国のいじめの認知率は、こんな感じで少しずつ上がっていると。静岡県は、これまで全国に寄り添うように推移していて、ここのところ、ちょっと全国平均を超えたよということが報道されたりしましたけれども、実は、これは自治体によって結構差があります。例えば、僕が注目している、山形県は、頑張って増やしているんですね。問い合わせたところ、やはりこういうものはいじめとしましょうみたいなことで、具体的なものを捕まえて、認知につなげているということを言っていました。
 例えば、宮崎県も頑張っているのですが、増えては減り、増えては減りで、また減ってきているという状況で、認知件数は結構、地方自治体によって数がばらばらという問題が出てきていて、これはずっと指摘されているところでもあります。
 その1つは、最初のほうで、昭和60年からの調査の推移を見ましたけれども、社会的に大きな事件があると、認知件数は増えるんですね。世間の注目が集まると増えると。しばらくすると減るということを繰り返してきた経緯があると。あとは取り組み方。先ほどの例えば山形県や宮崎県のように、取組によって、やはり増えたり減ったりするということが言えると。
 あと、県内でも地域、学校間の格差は結構あるかと思います。これは理由が大分、分かってきていて、調査方法がばらばらであることですね。調査に関しては学校に任されています。学校が調査をして、その数を教育委員会に上げるという形になっておりますので、同様の調査で把握されてないというところが大きい。
 例えば、いじめの調査の場合は、記名でやると、捕捉率が下がることが分かっています。あとは教室で書かせると、捕捉率が下がることも分かっていますが、やはり手間の問題など、いろいろな問題があって、教室で記名で書かせている学校もまだあるというところで、そうすると、なかなか、例えば同じクラスの中でそういう加害者が、被害者がいた場合に、教室の中で書いてるときって、書きづらいですよね。そういうことで捕捉できていない可能性というのは結構あるのではないかと言われています。
 それから、さっきも言いましたけれども、認知が増えても減っても、取組の効果、成果であるという主張が可能なので、減らせばいいのか、増やせばいいのかが見えてこないというのが1つ。
 あと、一番大きな問題だと僕が思っているのは、いじめの定義では、被害者の主観でいじめかどうか決まるのですが、認知件数は教員の判断です。いじめ防止対策推進法は、子供が主観的に感じたことをいじめとせよといっているのですが、出されるデータは教員の認知件数なんです。これは、一方からのデータが出されて、それで判断するのはなかなか課題があるのではないかということで、児童生徒のいじめの経験率をしっかりと調査したほうがいいと思いまして、取っております。
 全国的にも、児童生徒に対して、悉皆で取るということはなかなか行われていなくて、例えば自死があったときに、問題を把握するため、背景を把握するために、一斉に調査に入ることはあるのですが、その後、継続で行われるということはほとんどなくて、学校現場の大きな問題ですので、これは継続的にやはり取ったほうがいいだろうということで、様々な市と協力して調査を行っております。
 調査項目としては、文科省の項目とはちょっとずれるのですが、被害者がいじめと言えばいじめに該当するような経験を取っていると。当然こういう経験をしても、いじめだと被害者が言わなければ、いじめにカウントされない可能性はあるのですが、いじめ防止対策推進法上は、事後的に後から、これはいじめじゃなかったのかと訴えることが可能になっていますので、どういう経験があったのかをやはり調べる必要があるということで、こういう項目で、頻度で取っています。
 一度もない、一度だけある、月に一度くらい、週に一度くらい、週に何度もやられたという頻度で、取ります。最初は、あるなしで取っていたのですが、たくさんやられているのと、1回だけだと、ちょっと違うのではないかという疑問がありましたので、こういった形で取っています。
 2014年から昨年2022年まで、全部で11回調査を行っていて、赤い丸は3回、これは規模の大きい市になります。小4から中3までで4万人程度。緑と青の丸は、これは同じ市で、第2回調査から11回調査まで、小5から中3で4,000人程度。黄色は、1回しか取っていないのですが、小4から中3で6,000人程度の市で調査を行いました。これは家に持ち帰って、家で記入をして、封筒に入れて封をして回収、無記名という形でやっております。
 そうすると、何が分かったかというと、第1回の調査のみ、あるなしで取ったので、それ以外は同じような項目で取っているのですが、いじめと言えばいじめというような経験率で言うと、小学校で4割から5割、中学校で3割程度起きているということが分かったと。これは、コロナのときも関係なく起きています。認知件数調査だと、コロナのときは減っているとなっていますが、発生率、現場でどれぐらい子供がそういうことを感じているのかといったときに、関係なく、これぐらいの頻度では起きる事象だということです。
 赤のところでは、特別支援学級の子供たちの頻度も分けて取っているのですが、支援学級の子供たちは、調査のたびにちょっとデータが変わって、通常の学級と同じぐらいのときもあれば、ちょっと多いというときもあり、ばらつきが大きい。それから黄色の丸のところの調査は、外国籍のお子さんを分けて調査しているのですが、外国籍だからといって、特段いじめ被害に遭っているとか、加害をしているというデータは出てこなかったです。
 第5回2017年からは、この頻度で分けて、週に何回もやられたという子供たちを別で分析しております。そうすると、グラフの下に記載のとおり、週に何度も被害に遭っている子は、大体小学校、中学校問わず1割弱、出てきています。つまり、ざっくりと、週に何回も被害に遭っていると、結構深刻な状態だと思います。我々の研究のデータでも、頻度が上がると抑鬱が上がるので、精神的な影響がかなり激しいことが分かっているのですが、1割程度まで認知率が上がっていないと、週に何度も起きているいじめが全部捕捉できていない可能性は当然あると、データ上は見えてきます。これは、静岡県内のある3つの市のデータですので、全体に言えるのかという問題もありますが、大きい市も入っておりますので、そういう意味ではこれぐらいは起きている事象なのかなと考えています。
 それから、ではなぜ捕捉できないのか。学校現場でいじめの認知率が数%ですよね。1割に満たない状態なのですが、なぜ捕捉できないのかという視点で研究も進めております。
 例えば、いじめ被害に遭ったときに、子供たちはどうしているのか分析してみると、学年を追うごとに保護者に相談しなくなるし、先生にも知らせなくなります。何もしないという子供たちが増えていくと。だから、子供というのは、被害に遭ったときに、学年が上がると先生には相談しない、大人にも相談しない。でも、女の子の場合は、保護者にはまだ相談する。友達にも相談しているという結果が出ていて、これはほかの市でも似たような結果が出ていますので、これも発達的特徴と言えるのかもしれません。
 つまり、子供からの相談を待っていると、なかなか捕捉が難しいということです。だから、積極的に情報収集をしていかないと、特に中学生の男子は親にも先生にも相談しないし、友達にも相談しないという結果が出てきています。
 目撃への対処についても、結構はっきり出てきていて、目撃のほうが相談しないですね。いじめを見ていても相談しないし、この右下の「なにもしなかった」は、傍観していたことになると思うのですが、傍観者も増えている。下側の左が「やめるように言った」、これは仲裁行動ですが、仲裁者も減っていくという結果が出ています。
 一時期、傍観はよくないみたいなこと、傍観者も悪だという、加害と一緒だという議論があったのですが、傍観している子たちがどういう子たちか調べた研究もあるのですが、そうするとやはり適応的な子たちなんですね。学校になじんでいて、先生との関係もいいと。でも厄介事には巻き込まれたくないので、見て見ぬふりをしてしまうということが分かっています。
 これは、こういう子たちからいかに告発してもらうかを考えなければならないと思うのですが、やり方として、それはよくないことだよというのも1つの方法なのですが、やはり告発のハードルを下げることが重要だと思います。傍観も悪だと言うと、あれはいじめではなかったという、認知の書き換えがやはり起こることが多くて、自分は何もしないわけなので、何もしないときに、あれはいじめではなかったよねと思ってしまったらもう、それこそ捕まえられないことですから、どうやってばれずに、しっかりと報告してもらうかという議論も必要かなというのは、こういうデータからは、もう考えられることです。
 こういうデータを総合して、いじめ早期発見のためにどうしたらいいのかということも考えてみたのですが、前提としなければならないのは、児童生徒からの把握にはやはり限界があるのではないかということです。現状のやり方だと、限界が恐らくありそうだと。だから、いじめアンケートも含めて、今とは少し違う方法を用いて、その状況や経験を収集する必要があるのではないかと。
 最近では、ICT――タブレット等を活用したアンケート調査を導入している市なども出始めてきています。これは、7月に文科省が、自殺予防教育で、健康観察アプリなどを使って、自殺につながるような、そういう変化を追ってくださいみたいな通知が出ていると思うのですが、民間の様々なアプリなどが紹介されていまして、そういったアプリを静岡県内でも導入して取り組み始めているところがあったりします。これは、いじめのアンケートもくっついてるものもあることから、そういうように様々な方法でいじめを把握していくことが結構重要ではないかと思います。
 それから、そうは言っても、やはり学校の先生には相談してほしいという思いもありまして、どうしたら学校の先生に相談してくれるのかという研究もずっと進めています。これは、援助要請行動研究というのですが、どうやったら援助要請を出せるのかと。そうすると、先生がやはりふだんから関係がいいこと、それからしっかりと子供たちを認めているというのがあると、子供のほうから相談しやすいということは出てくるのですが、ただ、この研究の中で、援助要請の効果は結構限定的ではないかというデータも出てきています。加えて、援助要請した後、解決してないといじめの深刻度がめちゃめちゃ高いと。これは、幾つか理由があると思うのですが、まず、援助要請の効果が限定的だということについて、見ていきたいと思います。
 これは、いじめ被害全体における援助要請の効果を見たものなのですが、上の段が小学校で、相談なし、相談あり。相談ありが先生に援助を求めたということですね。そうしたときに、一番左側、「解決してない」がどれだけ減ったかと見ると、ちょっと減っている。中学校でも相談すると、いじめ全体で見ると、ちょっと減っていると。だから、援助要請の効果はありそうだけどれも、効果は僅かと。
 これが、さっきも言いました、週に何回もやられているという深刻ないじめで見てみると、小学校はそれでも14%ぐらい「解決していない」が減っていて、「全て解決した」も増えてますから、援助要請の効果はありそうなのですが、中学校の効果はちょっと見えにくいと。「解決していない」が、ちょっとだけ減ってる。1%ぐらいですか。「少し解決した」が増えて、「全て解決した」が減っていると。
 こういうデータを見せると、学校は何やってんだという議論になってしまうのですが、実はそんな単純な話ではなくて、ほかにも分析してみたのですが、子供たちが軽微なものはあまり相談しない。だから深刻度合いが増してから相談に行く。こじれてから相談している可能性がすごく高いことが分かってきました。つまり、難しい問題になってしまって、先生に相談する時点ではかなり難しくて、解決が見通せないような状況にあると。
 あとは、もしかしたら、先生に言ったとしてもしっかりとやってくれなかったというのも中には入っているかもしれないので、そこは問題だとは思うのですが、大抵は面倒くさくなってからようやく大人に相談するのではないかというデータになっています。ですので、こういうのを見ると、何とか深刻化、頻度が上がる前に食い止めると、いじめの発生を問うのではなくて、頻度が上がらないこと、深刻化しないことを考えたほうがいいのではないかということで、どんなときにいじめは深刻化するのかという研究も併せて行っております。
 そうすると、実はいじめ被害者、加害者、ともに先生との関係が悪く、先生との接触頻度が低いということが出てきております。これは、左側が小学校で右側が中学校。色がついてる、左側の縦の長いほうが一般群で、グレーの数値が低いほうが深刻加害群になっています。そうすると、深刻加害をしている子のほうが先生との接触頻度も低いし、先生との関係も悪い。保護者との関係も悪いという結果が出ています。つまり、深刻加害をするような子たちは、接触頻度、つまり物理的にも距離があって、関係性が悪いということは心理的にも距離がある。物理的にも、心理的にも距離があるところでいじめが行われているということが分かってきました。
 そうすると、逆に距離を詰めにいくことで解消を図ることが可能だと。今日お分けしたスライドにはないのですが、実はいじめ加害の抑止に挨拶が効くというのは結構出てきます。挨拶をされていると感じるほど、いじめをしないと。これは、学校現場では、挨拶は大事だということで、先生方が一生懸命やってくださっていることなので、挨拶はやはり増やしていく、声かけを増やしていくことで、加害が減るというのは、どこで取っても出てきますので、取り組むときに、そういうちょっとした、今までやっていることを丁寧にやっていくということでも解消につながる部分もあるというのが、こういうデータから見えてきたことです。
 それから、データはないのですが、低頻度のいじめ被害経験者は次の加害者に、高頻度のいじめ被害者は次の高頻度の加害者になるというリスクが物すごい高いことが、ロジスティック回帰分析という分析方法で見えてきました。いじめ被害を受けている子が、次、人をいじめたくなる場面で、いじめ加害をしてしまうリスクはめちゃめちゃ高まるということです。学校現場だと、被害を受けたのだから、人の気持ちが分かるでしょみたいな、やられたほうの気持ちを分かんないのって言われがちですが、実はそういう話ではなくて、被害を受けると傷ついたプライドを次、似たような場面でいじめられないことで、もう1回取り戻すという、人間の心理があるのではないかということが、データとしては見えてきています。低頻度のいじめ加害者は、全般的にいじめ被害に遭う率が高くて、実は高頻度の加害者はそんなにやり返されないということも分かっています。
 こういう状況を見ると、いじめられていた子が次の加害者になるのは、物すごい切ない話なので、しっかりと、次、人をいじめたくなるような場面に出会ったときに、そうではない選択肢を取ると、そういうリスクが高まるよということも含めて、心理教育をしていく必要があるのではないのかということが見えてきたことです。
 それから、家庭の経済状況といじめの関係についても調べてみました。貧困世帯の子がいじめられているのではないかという議論もありましたので、数年前に取ってみたのですが、これは、世帯の年収で貧困を見たのではなくて、暮らし向きの認知で取っています。別の市、県で取ったときに、世帯の収入と、子供が自分の暮らし向きが厳しいかどうか、どう思っているのかと、両方取ったのですが、実際の世帯年収よりも、子供が自分の家が貧乏だと思っているかどうかのほうが、様々な問題行動と関連が見られたんですね。ですから、今回は収入ではなくて、子供が暮らし向き、暮らしぶりについてどう思っているかというところで取ったのですが、貧困だと思っているほど、特にいじめられるということはなかったです。ただし、発生との関係は薄いのですが、いざいじめが起きると、貧困家庭の子は、何もしないという選択肢を取る子たちが多い。そうすると、やはり長引いてしまうんですよ。何もしない選択肢をやはり取ってしまうので、長引く、発見が遅れる、やられっぱなしになるというリスクが高いことが分かってきました。こちらも併せて、やはり心理教育が必要なのではないかと考えられます。
 それから、いじめの問題で言うと、いじめ防止対策推進法の28条に規定されてます、いじめ重大事態があります。これは、生命――自殺未遂を行った、自殺をした、身体――暴力被害を受けた、財産――金品を取られた、財産に被害を生じた、または不登校――学校に行けなくなったと、いじめの結果としてこういうことが起きているということがあるのですが、実は、このいじめと不登校の関連は、重大事態調査でもかなり指摘されていて、文科省の調査上は、いじめが原因で不登校になっている子たちというのは0.5%とか0.4%ぐらいなんですね。そんなことないでしょうっていうのはずっと言われていて、令和元年に調査が入って、文科省が取ったところ、最初に行きづらいと感じ始めたきっかけとして、いじめを挙げた児童が25.2%、生徒が25.5%いる。最初のきっかけとは別の理由としていじめを挙げた児童が23%、生徒が16.2%いる。つまり、この文科省調査上は、不登校児童生徒の25から48%に不登校重大事態の可能性が出てきていると。
 これの何が問題かというと、今日の議論に合うかどうか分からないのですが、いじめ重大事態が起こると、重大事態の第三者委員会を走らせなければいけないです。県立の学校は静岡県の教育委員会がやる、市町の学校は、各市の教育委員会が第三者委員会をやるのですが、数が増えると、恐らく第三者委員会が回らなくなるという問題が、恐らくこのあと出てくると思います。私は今、7つぐらい入っているのですが、基本的にはもう回ってないです。全ての時間、土日含めて全部使っても回らないぐらいになっています。
 不登校重大事態が、例えば3割あったとしましょう。静岡県に、昨年度不登校の子が9,000人ちょっといて、その3割が不登校重大事態になると二千何百人ですよね。二千何百本、調査を動かせるのかという問題が出てきます。それは、最終的には被害を受けた子たちの不利益につながるものですから、こういう重大事態調査という仕組みそのものも、少し考えていかなければいけない状況にあるのかと感じています。おそらくこのあと、こども家庭庁が、重大事態調査については、ある程度情報を集めるという話も聞いていますが、どっちが先かですね。問題が大きくなっていくのが先か、数が増えていくのが先かという問題があると思います。
 次に不登校について、個々の調査について説明をしたいと思います。これは、先週発表された問題行動調査の不登校の数値なのですが、ぐっと増えています。ちょっと前に中学校で1クラスに1人という時代になったと言われていたのですが、今や中学校1クラスに2人ぐらいいるのではないかという時代になってきています。どこが増えているのか。学年別にプロットし直してみたのですけれども、学年ごとに当然、不登校児童生徒の数は増えているのですが、傾向としては、ずっとこんな感じです。やはり中学校、小6から中1にかけてがんと増えると、増加率が高い。
 どういうふうに見たほうがいいのかというと、ここの中学校で増える前、小学校も増加しているのですが、実は小学校のこの赤で囲った部分に、不登校予備軍、つまり学校に何とか行っているけれども、結構厳しいぞと感じている子たちがいるのではないかというのが、昔から言われていたところです。学校はみんな行かなければいけないところなので、頑張って行くのですが、背景に様々な問題を抱えている子たちというのは、無理して行きますよね。結果として、環境が変わるタイミングで、環境移行というのはストレスですから、ストレスがプラスで乗っかってしまうと、中1でどかんと増えるという考え方をするのが妥当かと思います。
 小中一貫校でデータも取ってみました。そうすると、小中一貫校の場合は、中学校1年の不登校は、そんなに増えないですね。まだそんなにたくさん数を取っていないのですが、そのかわり、中2で増えます。結果的に、数自体は増えているのですけれども、なだらかに移行している関係でしょうか。小中一貫校だと、中1よりも中2で不登校が増えているというデータも出ています。この辺りも、何で不登校になっているのかを聞いてみないと分からない。不登校の調査も、教員が主な理由を1個と、ほかに考えられる理由を2個つけて報告したものがまとめられているので、実際に学校に行ってない子供たちに、なぜ学校に行けなくなったのって聞かないと分からないことから、これを取ってみました。
 平成30年に適応指導教室にスクールカウンセラーを導入して、適応指導教室の改善、効果的な活用を考えましょうと、静岡県教育委員会でそういう事業をやりまして、その事業に私も入っておりましたので、そのときに県内の全ての適応指導教室でデータを取りました。そうすると、「いじめてくる人がいる」と答えた子が3割ぐらいいたんですね。これは、文科省の調査と調査の方法が違っていて、複数回答ありの調査なので、当然こちらのほうが数が増えるのですが、それにしても県内の適応指導教室に通う子供の3割ぐらいがいじめを受けたと言っている。
 「いじめを除いて、友達との関係で嫌なことがあった」は、5割ぐらいです。学校に行けなくなるぐらい、いじめを除いて友達との嫌な関係って何なのかと言われると、恐らくこれもいじめに類するものと考えていいのではないかと思うと、半分ぐらいの子がそういうことがあったと答えている。クラスになじめないとか、授業が嫌だとか、そういういろいろな理由も挙げてくれています。
 次の年も、同じ調査を取っています。適応指導教室です。大体似たようなデータが出てきていますので、これぐらいの数はあるのではないかという印象を持っています。
 ちなみに、令和元年度は文部科学省の問題行動調査上は、いじめが原因なのは0.3%、静岡県の適応指導教室に関しては、いじめと答えている子が、調査方法が違うので単純に比較はできないのですが、37%ぐらいとなっています。
 調査をして、このときに感じたのは、これは適応指導教室に通っている子たちなんですね。通っていない子たちも当然いるので、通っていない子たちはどう思っているんだろうというところで、ある市と協力して、すごく大変な調査だったのですが、学校に行っていない子のお家に先生が家庭訪問してもらって、調査用紙を届けてもらいます。その上で、回答してもいいという保護者と子供が、それぞれ別々の調査用紙を回答して、郵送で返送するという調査を取りました。1,500人ぐらいに分けて、211人返ってきてます。親子セットで。
 そうしたときに、ひきこもりも含めた不登校児童生徒のうち、2割ぐらいがいじめを受けたと答えています。左側が児童生徒で、右側が保護者で、保護者と児童生徒の感覚のずれというのは結構あるのですが、保護者のほうが、より先生との関係とか、いじめみたいなものを重く見積もっているという結果になっています。あとは、保護者よりも子供のほうが先のことを結構心配になっているなど、こういう結果が見えてきました。
 この調査では、いろんなことを聞いていまして、例えば、保護者の方に子供のことで相談したいと思う人とか、機関はどういうところですかということも尋ねています。学校の先生との関係が崩れているのではないかと、かなり言われていたのですが、実際はそうでもないという結果が出ていて、70%以上の保護者が、担任の先生にしっかりと相談したいと回答をしています。
 または、子供の調子が悪いので、医療機関にしっかりと診てもらいたいと答えている保護者もいる。担任、それから医療機関、その次にスクールカウンセラーという順番で、相談したいと答えています。
 このときに、子供の側というよりは、保護者の方にいろいろ質問をしてまして、それはなぜかというと、例えば公教育からドロップアウトしたことの負担を保護者が担っているというような声を現場ではよく聞いたんですね。実際にどうなのかというデータがなかったので、これも聞いてみました。子供が不登校になったことによって、保護者の生活はどのように変わったのか聞いたところ、少なからぬ保護者が、自分自身の行動とか活動、仕事に制約を受けたと感じているというのが見えてきた。仕事を変えたという方もいらっしゃいますし、子供のために仕事の時間を少なくしたと、結果として家計が苦しくなったという回答も出ています。
 ただ、不登校になったことで、子供と積極的に会話が増えたと、肯定的な回答をしている方もいますし、学校の話題を避けずに、しっかりしていこうと努力されているという結果も見えてきました。要するに、保護者なりにはすごく頑張っている保護者も多いし、苦労されているのだけれども、そこに対してちょっと支援が行き届いてない現状はありそうだということです。
 それから、不登校の要因として、発達障害もあるのではないかと現場で結構聞かれているので、それについても取ってみました。そうすると、発達障害やその疑いなど、発達面でのことが当てはまると回答している保護者が、男子のほうが少し多くて48%ぐらいです。女子のほうは3割ぐらいの保護者が、発達的な面を不登校の要因に挙げている。
 実際に、医療機関で診断を受けたことがあるかと聞くと、男女合わせての親が38%ぐらい診断を受けていますと回答しています。つまり、発達障害の診断を受けていて、不登校になっている子たちが結構いる可能性が見えてきたということです。
 なおかつ、診断を受けた後に、個別の支援計画に基づいた支援を受けていたかと聞いたところ、支援を受けていないと答えた親が結構いるということも分かっていると。
 発達障害は、2022年に文科省が出した調査結果によると、発達障害が疑われる子供は児童生徒8.8%ぐらい、現場にはいるとなっていますが、不登校の子の中に、38%ぐらい発達障害がいるというのは、かなり数としては多いと。加えて、こういう支援を受けてないという実情がある可能性があるということですね。ただこれも、支援を受けてないのは学校のせいかというと、なかなかそうも言いづらくて、例えば診断を受けたけれども学校の先生には言ってないというパターンもありますし、支援計画は親の判こをついて動かすものですから、保護者が支援計画は特にその子にはいいですと言った可能性もあるし、あとは不登校になってから発達障害と診断されたというケースも当然あると思いますので、現場でやられてないということには、直接は結びつかないと思いますが、1点言えるのは、適切な支援がしっかりと届かないと、不登校になる可能性は高まるのではないかということは言えると思います。
 それから、子供とか保護者の、学校や登校に対する考え方も聞いています。そうすると、「学校に行かないのはよくないこと」だと思っている子供が、もう結構います。ただ、保護者のほうが、「学校に行かないのはよくないこと」と思ってないという結果が出ていたり、この調査は令和3年1月に取っているのですが、「遠隔授業があれば参加させたい」と、子供はそんなに思ってないのですが、8割ぐらいの保護者が望んでいるという結果も出ています。これは、コロナの後なので、また今取れば、もうちょっと子供の割合は上がってくるかもしれないと思っています。
 こうした結果を見ると、学校を休むことに関して、学校に行かないという選択肢があってもいいと思っていると同時に、学校に行くのは当たり前だし、少なからず、学校に行かないことに対して罪悪感を持っている子たちもいると。不登校に対して、親が理解を示してくれると思っている一方で、心配をかけているとか、友達にどう思われているか気になっているという様子も見えてくるのですね。教育機会確保上は、学校に行かないという選択肢も子供によってはある。学校に行かないこと、イコールすぐに問題行動ではないとされていますけれども、子供や保護者の中に、そういった理念がまだまだ浸透してないという状況があるのかと思っています。
 先ほど、発達障害の割合について話をしたのですが、2012年に文部科学省が取った調査上は、6.4%だと言われていたんです。学校の先生が、勉強面、行動面、対人関係面、学習面で何かしら支援が必要だと思っている子供たちです。これが10年後になったら、増えているんですね。学校の先生がそう捉えている子が増えていると。これについては結構いろいろな方が、何でだと、今、しきりに調べている最中ですが、障害ということで言えば、増えることはないですね。一定の割合でいるはず。この間に何があったかというと、学習指導要領の改訂があったのです。主体的で対話的な深い学びが求めるもの。グループ学習が入ったりですね。しっかりと調べていないので、何とも言えないのですが、現場の先生に聞くと、やはりグループ学習をすることによって、より自分のうまくいかなさが際立ってしまう子供たちが出てきている可能性はあるかと。先生方からもそう見えていると。当然、そういう子供たちがいるという特別支援教育の理念的なものが浸透した結果ということも考えられるのですが、それにしても、これだけの数、数%増えていることに対しての説明になるかということがあると思います。ここは、もうちょっと詳しく調べていかないといけない。
 それから両方の調査とも、学年を追うごとに、支援が必要だと言われる子が減っているんですね。先生が考える支援が必要な子が減っているんです。これも恐らく、先ほどのデータと合わせると、学校に行けなくなっている可能性が当然あるということが見えてきたということです。
 ということで、駆け足で、いじめと不登校の、私がやっている範囲で、研究の成果等、説明させていただきましたけれども、何をしていけばいいのかということに関しては、なかなか難しいのですが、まず、いじめや不登校に関する先生方、保護者、子供がまだまだしっかりとした理解が進んでないというのはあるかと思います。だから、現場を含めて、啓発を、もっともっとしっかりとやっていかなければいけない。加えて、いじめや不登校に関して、子供たちにしっかりとした心理教育も必要だろうと考えられます。何か、当然新しいプログラムをやることも、文科省は求めてきますし、当然、効果はあるとは思うのですが、現場はすごく忙しいし、現場の先生はすごく一生懸命やってますので、これ以上仕事を増やすって、なかなか難しいのかなというのが、現場に関わっている感覚です。だとするならば、今やっていることを丁寧にちゃんとやっていくことが重要ではないかと。
 加えて、今何かやるとしたら、ICT等を活用した実態調査や相談というのは、かなり効果がありそうだということが分かってきています。例えば、既にいじめのアンケートを導入している市を見ますと、ICT、認知件数が増えているんですね。すごい増えている。増えているから、すごい困っちゃってるみたいな意見も聞かれるのですが、認知件数が増えるというのは、それだけ捕捉できてるということなので、実はとってもいいことなんですね。
 調査で見えたように、中学校で3割、小学校で5割程度経験があるわけですから、認知件数を増やすことによって、いじめという視点でしっかりと見ることができて、重大な事態を防ぐことにもつながるのではないかと思いますので、今までの紙ベースの調査に加えて、こういうICT等を活用した調査というのも重要なのではないかなと。
 あと、不登校の子供たちに対しても、紙ベースのアンケートが1,500枚まいて、二百何十枚返ってくるわけですから、ウェブで取ったら、恐らくもう少しいろいろな意見が集約できると思っています。当事者に対して意見を聞いていくことは、こども基本法でも求められていることですので、こういったツールを活用して、調査や相談等につなげていただけるといいのではないかと。
 あと、不登校に関して言えば、まだ調査はしてないのですが、今、私、社会福祉協議会と連携して、福祉サイドでの居場所づくりについて取り組んでおります。昨年度から、静岡の清水区の社会福祉協議会と一緒に、福祉サイドから不登校の子供たちの居場所づくりをやっていると。そこで感じたのが、教育と福祉の連携が、不登校に関してはほとんど行われてないということでした。発達障害などの支援だと、結構行われている。例えば放課後児童会のほうで、学校から放課後デイとか、そのつなぎなどは福祉連携もかなり進んでいるのですが、不登校支援に関しては行われている気配があまりないと。例えばフリースクールみたいなものが今できていて、不登校の支援をしているところもあると。福祉の現場は、子供の貧困対策で子供食堂プラス学習支援という形で始まったところが結構数があると。
 そうしたことが連携をして、情報が集約されることで、子供たちが居場所とか、行く場所として選べるようになるというのが、物すごく大きなメリットではないかなと考えていますので、既にあるものをいかに活用していくのかという視点だと、こうした連携が大事なのかなと思います。
 あと、まだこれも取り組んでないのですが、貧困について、今年度、いろいろ調査が入っています。貧困問題について言えば、例えば、脱落型不登校と言いますけれども、登校問題については2000年ぐらいからそういう貧困を背景にした不登校の子供たちがいるんじゃないかとすごく言われているのですが、対策としては、子供たちに何か支援をするという形にやはりなってしまうんですね。要するに、学校に行けなくなるぐらい事情を抱えたお家、貧困を抱えていても、支援としては子供に何か勉強を教える。支援策と原因がずれているというのは、随分指摘されているところで、その貧困問題に対して、そういう支援というものも必要なのではないかなと感じているところです。
 あとは、先ほども言いましたように、貧困をどのように経験しているのかという視点は結構重要で、学校現場で、例えばうちの暮らし向きは厳しい、でもみんな学校現場ではすごく優しくしてくれるとか、そういう学校でできることも、実は結構ありそうだと分かってきているのですが、これも実は実際の貧困を解決するものではないので、ずれてしまうんですけれども、そういった視点で、学校現場もできることがあるのではないかなということで、今後も調査等を進めていきたいと考えてますので、参考になるか分かりませんが、いじめと不登校について、研究上、分かっていることについてお話しさせていただきました。どうもありがとうございました。

○鳥澤委員長
 様々な視点からの御発言をいただきまして大変ありがとうございます。
 以上で、太田様からの説明は終わりとさせていただきます。
 これより質疑に入ります。
 委員の方にお願いいたします。質問はまとめてするのではなく、一問一答方式ということでお願いいたします。また、私の指名を受けてからの御発言ということでよろしくお願いいたします。
 それでは、御質問、御意見等がございましたら、御発言をお願いをいたします。

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