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委員会会議録

委員会補足文書

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令和3年11月25日脱炭素社会推進特別委員会
一般社団法人地域政策デザインオフィス 代表理事、千葉商科大学基盤教育機構 准教授 田中信一郎氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/25/2021 会派名:


○田中信一郎氏
 皆さんこんにちは、田中信一郎です。よろしくお願いいたします。
 それでは早速、画面共有をさせていただきまして話を始めてまいります。
 皆さんのほうに音声及び画面は映っておりますでしょうか。

○鈴木(澄)委員長
 大丈夫です。

○田中信一郎氏
 それではこれから説明してまいります。
 本日のタイトルは、脱炭素社会に向けて自治体が重点的に取り組むべき課題と施策です。
 まず簡単に自己紹介をさせていただきます。現在、私は千葉商科大学基盤教育機構の教員をしております。ちょうどこの直前も講義が入っていたので皆さんのところに伺えず、大変残念に思っております。また、一般社団法人地域政策デザインオフィスの代表理事として、全国の様々な自治体の持続可能な地域づくりのお手伝いをしているところです。また、今年の6月に発足した自然エネルギー大学リーグ――本学を含めて幾つかの大学で自然エネルギー100%大学を目指そうという大学有志の集まりで、学長たちが集まってつくったんですけれども、それの事務局長も務めております。また、先ほど御紹介いただいた長野県の環境審議会地球温暖化対策専門委員会で、長野県のゼロカーボン戦略に携わるとともに、現在、環境省の自治体向けの温暖化対策のマニュアルづくりの委員も務めているところでございます。本来ならば、皆様にお目にかかって千葉商科大学の取組など、本当はつぶさに紹介したいところですが、本日はこちらの都合によりオンラインとさせていただきますことをおわび申し上げますとともに、また機会を改めて皆様にお目にかかれることを楽しみにしております。
 それでは話し始めてまいります。
 まず、前半に話す内容です。地域を脱炭素化する3つの意義です。
 地域を脱炭素化することは、皆さんの地域にとって負担になる面がゼロではないんですけれども、さらにより大きなメリットがあるということなんです。
 特に、大きく3つあります。
 1つ目です。地域経済を活性化する。多くの地方自治体、地域にとって経済の活性化は重要な課題になっています。まずこれが1つできます。
 2つ目、住民の健康寿命を伸ばす。日本でも静岡県と長野県は有数の健康寿命の長い県ですが、まだまだ実は伸びる余地があることが分かります。それも脱炭素化を通じて実現するということです。
 3つ目です。人口減少に備える。日本全体で人口の急激な減少はもう避けられない状態になっています。国のベストシナリオにおいても、今後七、八十年先までは少なくとも人口減少が続くことが明らかになっていますので、当然、人口減少に備えた地域づくりをしなければなりません。実はこれも脱炭素化と足並みをそろえる、つまり脱炭素化と同じことで人口減少に備えることができるということです。具体的に説明していきます。
 1つ目です。地域経済を活性化する。日本のどこにおいても、日本全体と言ってもいいんですけれども左側が現状になっています。域外、日本全体で見れば海外からたくさんのエネルギーを輸入し、そして地域で消費してそれを最終的に海外に支払っているということです。
 この構図は、例えば中部電力さんとか地域のエネルギー会社さんにとっても非常に不安定な状況です。例えば、今のように原油価格がどんどん上がっていくとエネルギー会社、中部電力さんとかの収益に大きな打撃を与えます。一方、安くなっても打撃を与えます。非常に困った存在ですが、しかしそれらを輸入して電気に変えてあるいはガスに変えて地域に供給することで、一方では地域の皆さんにサービスを提供しているということです。ですから、現状のままでは少なくとも日本の誰にとっても実はあまりいいことがないということです。そしてこのお金を最終的に手にしているのは日本人ではありません。一見すると中部電力さんとか静岡ガスさんのようなエネルギー会社に見えるんですが、先ほど言いましたようにエネルギー会社の収益は、原油高とかに非常に強く影響されますので、最終的に手元にお金を手にしているのは輸出している国になります。
 例えば日本では、石油は8割をサウジアラビアから輸入しています。あるいは天然ガスであれば、主要5か国から輸入しているんですがそのうちの1つはロシアです。例えばそうした国々で油田とかガス田を所有している人たちに最終的に皆さんが日々消費しているエネルギーの代金が行っているわけです。サウジアラビアであればサウジアラビアの王族、それからロシアであればプーチン大統領とか、国益を支配している人たちになるわけです。
 一方、左から右に一歩ずつ着実に変えていこうというのが脱炭素化であり、そして地域経済の活性化です。
 例えば、地元の工務店さんに断熱リフォームをお願いする。そうすると、例えば10年分、20年分のエネルギー代金、本来なら光熱費として支払うはずだった分をリフォーム代として地元の工務店さんに支払うことと一緒です。当然10年、20年で元を取った後はどんどんエネルギー費が削減できることになります。地元の工務店さんがエネルギー代金として外に出るはずだったお金を手にすれば、当然地元で消費し、そしてその人たちが豊かになり、また地域の経済が回っていくことになります。あるいは灯油の代わりにチップとかまきを使って熱を供給する、もしくは熱を手に入れれば地元の山を持っている方だとか森林組合にお金が行きます。あるいは静岡県でも中山間地域とか風力発電を海岸域でどんどん発電して、それを東京とか名古屋とかの大都市に売れば大都市からお金が静岡県に入ってくることになります。大都市も今まで海外から買っていたエネルギーの調達先を静岡県とかに切り替えるだけですので、別に損をするわけではありません。つまり、日本国内でお金が回る、日本全体の経済も活性化することになるんです。
 じゃあどれぐらいできるのかですが、例えば1998年を御覧ください。日本全体で石油、石炭、天然ガスを購入するのに5.6兆円支払っていました。一方、原油高となった2014年は27.6兆円も支払っています。じゃあ5倍使うようになったのかというと違う、本当にそのまま原油高です。単純に石油の値段が石炭、天然ガス、そして様々な鉱物資源にも影響を与えますので、単純に石油の値段が上がった、国際価格が5倍に上がった、そして日本から流出する資金が5倍に増えちゃったということです。ですから例えばこの27.6兆円の1割を減らすために省エネルギーとか再生可能エネルギーに投資をすれば、当然新たに国内で2兆7600億円のマーケットが生まれる、所得が生まれることを意味するわけです。日本国内でそれをやって損する人はいないわけです。
 実際どれぐらい流出しているのか、これは環境省の地域経済循環分析システムで静岡市のものを持ってきました。静岡市の総生産3兆631億円ある中で、エネルギー代金の流出が1500億円ぐらい上っています。それから、下の民間投資の流出を見てください、469億円出ています。つまり、静岡県内に投資する元手のお金がないわけじゃないんです。静岡県内に投資先が少ないので、静岡県民のお金が469億円も静岡県外へ投資されちゃう。
 一方、エネルギー代金を減らすために投資する、再生可能エネルギーや省エネルギーに投資すれば流出代金は減りますし、この外に出ていったはずの投資が地域内、市内に回ってきて静岡市内に資本が蓄積されて、そして県民、市民が豊かになることを意味しています。ですから、このようにきちんと実際のお金で見ても先ほど言ったことは明らかだということです。
 2つ目です。脱炭素化で住民の健康寿命を伸ばす。これはどういうことでしょうか。交通事故死も溺死も統計上、事故死として扱われます。それでは皆さんは、交通事故で亡くなる人と溺死で亡くなる人、日本ではどちらが多いと思われるでしょうか。正解は交通事故よりも溺死、溺れて亡くなる方が1.5倍多いです。静岡県でも皆さんの地元の市町村でも交通安全の対策はやっていると思います。しかし溺死対策をやっているでしょうか、溺死対策課とか静岡県庁にあるんでしょうか。普通はないですよね。実は日本で溺死対策課などを設けているところは1つもありません。担当している公務員が1人もいないんです。
 具体的に見ていきます。これは日本全体の不慮の事故死の月間死亡率を1月から12月まで並べたものです。ブルーが交通事故です。1月から12月まで大体横ばいといいますか、季節変動はないです。一方、溺死は灰色です。1月、2月が多くて、7、8、9月が少なくて、11月、12月が多い、これはどういうことでしょう。つまり寒い冬の時期に溺れて亡くなる人が多いわけです。これは太平洋で寒中水泳して亡くなる人が多いからでは当然ないですよね。海水浴で寒中水泳をしている人はほとんどいません。皆さん何となく分かったと思いますが、別の数字を見てみましょう。これは日本の四大死因を同じように1月から12月まで並べました。1位はがんで横ばいです。2位は心疾患、いわゆる心筋梗塞です。これは冬に多くて夏に少ない。3位の肺炎も冬に多くて夏に少ない。4位の脳血管疾患、これは脳梗塞ですけれどもこれも冬に多くて夏に少ない。つまり、1位のがんは死因の季節変動がないんですが2位、3位、4位のいずれも溺死と同じ傾向を示しているわけです。皆さんお分かりになったと思います。いわゆるヒートショックという問題です。静岡でもこういう報道があったようですが、要は急激な温度変化によって血圧が大きく変動して、例えば心筋梗塞とか脳梗塞とかが起きる、ここに記事がありますね。静岡市消防局によると、2013年から16年に市内で浴室や脱衣所で倒れるなどして病院に運ばれた救急患者は924人、中でも1月、2月と12月の寒い時期が376人と多く、4割以上を占めた。同消防局によれば、ほとんどはヒートショックだった、8割以上は65歳以上の高齢者だったということです。
 日本全体でも多く、もちろん病名ではなく、あくまで心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすきっかけなので、ヒートショックで直接何人亡くなっているかは分からないですが、東京都健康長寿医療センターの研究所によると、1年間で約1万7000人がヒートショック関連で死亡しているのではないかと推計されるとのことです。
 これは患者さん御本人、それからその御家族にとって大変なだけじゃないんです。もちろん患者さん御本人が突然亡くなる、あるいは亡くならないにしても後遺症を負うことはもちろん大変なことで、患者さん御本人にとっても家族にとっても不幸なことなんですが、地域にとっても不幸なことなんです。これは疾病分類別1人当たり医療費のグラフで、長野県のものですが、灰色が全国ですので灰色を見てください。
 左から3番目の悪性新生物の3倍かかっている病気があります。これが循環器系疾患です。心疾患や脳血管疾患は、結局詰まるところの病名ですので要は心臓と血管の病気になります。これを総称して循環器系疾患といいます。皆さんも御存じのとおりだと思います。
 これは後期高齢者になりますが、1人当たり医療費が群を抜いて高い。調べてみると、静岡県でもぜひ調べていただきたいんですが、長野県では後期高齢者で1人当たりを見ても、総額で見ても、それから国民健康保険で1人当たりの総額で見ても実は循環器系疾患が高いんです。1番なんです。ということは、循環器系疾患が医療費を押し上げる主因になっていることが明らかです。
 今度こちらは何かといいますと、要介護度別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合です。要介護3、4、5の重いほうがポイントになります。この重い1位は認知症ではないんです。脳血管疾患なんです。特に要介護5、全国平均で33.8%が脳血管疾患から要介護5になっているんです。つまり亡くならないまでも重い介護状態になってしまうということなんです。認知症が18.7%ですから、実は介護保険を押し上げる、介護費を押し上げる要因、主因も循環器系疾患だということです。ですから、循環器系疾患は患者さん御本人と御家族にとって大変なだけじゃなくて、実は医療費や介護費を当然市町村や県から分担拠出していますので、この分担拠出金が大きくなることで地域の人にとっても痛みをもたらしているということです。ですから、循環器系疾患を当然発症しないようにしていくことが大事なんですが、その大きな引き金の1つがヒートショックなんです。
 このように見ていくと、当然日本全体で冬に亡くなる人が夏に亡くなる人よりも多く、そして冬の死亡率が夏の死亡率よりも全国都道府県どこを見ても高いんです。ただ、都道府県差があります。つまり冬の死亡率がそれほど夏よりも上がらない県では10%しか上がりません。一方、どんと上がる県は25%も上がるんです。これは明らかに、地域で何かすべき課題だということです。
 それでは、最も冬の死亡率がどんと上がる県はどこでしょうか、あるいはほとんど上がらない県はどこでしょうか。具体的に見てみましょう。
 最も上がらない県は何と日本で最も寒い北海道なんです。一番左側です。左が夏の死亡率と冬の死亡率を差引きして増加する分が10%しかないことを意味します。じゃあ最も上がる県はどこか、一番右側です。栃木県です。栃木県、茨城県、山梨県、この北関東エリアとか、山梨県は北関東エリアではありませんがこうした関東甲信越は寒い地域が多い。静岡県はよかったねって皆さんは思っているかもしれません。しかし栃木県、茨城県、山梨県と次を見てください。4位は愛媛県です。6位は鹿児島県です。そして何と、7位が静岡県なんです。愛媛県、鹿児島県、静岡県、要はミカンの名産地、あったかい地域、日本全体の中では温暖でミカンが取れる地域なのに、北海道よりも冬の死亡率がどんと上がるんです。これはどういうことでしょう。つまり外気温の問題じゃないです。静岡県だと冬の夜は10度ぐらいかもしれません、それでも十分人が亡くなるということなんです。ですから、外気温の問題じゃなく、住宅の問題です。住宅を全館暖房して居間も廊下も脱衣所も寝室もトイレも24度の北海道、そして居間は24度あるけれども脱衣所や廊下、トイレ、場合によったらあまり暖房をしない寝室も10度ぐらいの静岡県。少なくともトイレと廊下、脱衣所はしていないと思います。そういう静岡県のほうがどんと亡くなるということです。これは明らかに外気温の問題じゃありません。私は北海道ニセコ町とか下川町のお手伝いをしています。でも北海道の下川町は、以前、数年前の2月に行ったんですけれども外気温がマイナス21度でした。迎えにきた役場の方に、今日はマイナス21度なので寒いですねって言ったんです。今日は暖かい日で、昨日はマイナス25度でしたよと。そういう北海道のほうが何でマイナスにもならない静岡県より人が亡くならないんでしょうか、明らかに家なんです。じゃあ全館暖房すればいいじゃないか。そうです、全館暖房すればいいんです。じゃあ何で静岡県は全館暖房しないんですか。それは光熱費がもったいないから、つまり全館暖房すると光熱費がどんどん逃げていく、だからしない。じゃあ住宅の性能を高断熱・高気密にしたらいいじゃないか、つまり脱炭素型にしたらいいとなる。
 そして3つ目です。人口減少。日本は歴史が始まって以来ずっと人口が増えるかせいぜい横ばいだったんです。特に明治維新後、急激に人口が増えています。ですから、静岡県だけではなくて日本全国、国も含めて人口が急激に増えていくことを前提に様々な社会システムがつくられています。それは年金をはじめ、いろんな社会システムが人口が増えることが前提なんです。しかし現実では人口は減っているわけです。
 静岡県も御多分に漏れず、ベストシナリオであっても人口の急激な減少は避けられないことです。これは静岡県の人口ビジョンです。
 それでは、この人口減少が当然七、八十年先まで続くとして、人口増加を前提としてきた社会システム、そして地域まちづくりを当然人口減少前提に変えていかなきゃいけないんです。では、人口減少・少子高齢化にふさわしいのはどういうまちでしょうか。ふだんの買物や食事にAのどこへ行くにも車が必要なまち、それともBの大体のところへ歩いて行けるまち、どちらでしょうか。当然大体のところへ歩いて行けるまち、Bですよね。そうじゃないと結局、高齢者免許返納問題とかも地域で課題になるわけです。
 問題は人口が増えるときはどこも、まちの中心部から周辺部に広がっていきました。皆さんもそういう歴史を子供のときに見ていたと思います。では、人口が減るときはその逆に周辺部から中心部に向かって人口が減っていくんでしょうか、違いますよね。隣で空き家、向かいで空き店舗という形で虫食い状で減っていくんです。つまり、例えば5万人のまちが10万人に増えた、再び5万人に縮小していくときに、一回10万人に広がった後を10万人分の道路とか水道のインフラを保有したまま5万人で暮らしていくことになるんです。それが虫食い状態で人口が減っていくまちの未来です。当然、維持管理費が足りなくなって、至るところで工事中だとか、使えませんという公共施設あるいはインフラも増えていくことになります。より具体的に見ていきましょう。
 虫食い状態で人口が減るとこういう問題が発生してきます。もう既に1つ、空き家・空き建物が増えて結構課題になっています。2つ目、商業施設・サービス産業・病院が撤退していきます。これらは商圏半径10キロとかを設定して、その中に何人住んでいるかで立地するわけです。当然、そこの人口が減れば撤退せざるを得ないことになります。3つ目、買物困難者・生活困難者が本当に増えてきてどこの地域でも課題になっていますね。4つ目、訪問・宅配サービスの撤退です。これはどういうことかというと、今まで例えば1日10件、訪問サービスを回っていたとします。これが同じ走行距離で1日5件とか6件になっちゃうと、当然コストが一気に上がっていって、民間のサービスは撤退せざるを得なくなってきます。そして、公共交通やインフラの維持困難ももう既に顕在化しています。場合によっては地域固有の課題もあるかもしれません。このように、虫食い状態で減っていくまちは何とかしなきゃいけないです。当然、ある程度どこかの都市に集約するよりもまちの中心部だとか集落の中心部に集まるという住み方なんですけれども、それを絵にするとこの国立環境研究所の作成した絵になります。つまり過密でもなく過疎でもなく、車に過度な依存をしない街です。
 繰り返しますけれども、これは例えば静岡県内の人口を静岡市に全部集めてしまおう、そういう発想では全くないということです。静岡市内でも浜松市内でも例えば下田市内とかでも、あくまで市の中心部だけではなくて、市の中心部は当然市の中心部で空き家とかが発生しないように固まって住む。あるいは農山村の集落は集落で、集落の中心部で固まって住む。ですから、集落をやめようとか農山村を切捨てるということじゃないです。
 これを実際にやってるのは富山市です。お団子と串のまちづくり、聞いたことがあると思います。つまり、こうした拠点となる集落とか町場とかを公共交通で結ぶことによって、今までの集落を維持したまま快適に住んでいこう、農山村もできるだけ維持しようという発想です。
 こうしたことは、いきなり地域で提起しても当然うまくいかない。苦いデータをまずは共有する必要がある、苦い現実を共有する必要があります。実は、こうしたまちづくりがそのまま車に過度な依存をしない街ですから、当然脱炭素型のまちになることを意味しています。
 さて、次のテーマに移っていきます。次は、長野県においてどのように脱炭素目標を設定したのかという話をしていきます。これは長野県の今年度決定したゼロカーボン戦略の中から持ってきました。温室効果ガス総排出量の削減目標です。
 2010年度、これを基準年度にして2050年度までに90%減らしていこうということです。これをどう導いたかですけれども、ちなみに90%出て残りの10%は森林吸収量と再生可能エネルギー生産量が上回るので実質ゼロになる計算です。
 大きく2つの考え方が、このシナリオをつくるに当たってありました。1つはエネルギーの総消費量を減らす、もう1つは地域内での再生可能エネルギーの生産量を増やす、この2つを基本に考えています。もちろん、森林吸収とかエネルギー起源CO2以外の温室効果ガスのほかの要素はあるんですけれども、まずはこの2つが非常に大きなウエイトを占めていますので、この二大要素をクリアしてから別のことを考えていきました。
 まずエネルギー消費量を減らすシナリオです。これも2010年度比で2050年までにマイナス76%にしていきましょうということで、それを直線的に現在まで引っ張って目標にしています。
 ポイントは、単にエネルギーを減らすんじゃないんです。エネルギーから享受している便益――エネルギーサービスといいますが、例えば照明の明るさが別に電気の照明じゃなくてもいいわけで、日の光でも明るさは明るさだと。この便益を低下させず消費量を減らす。ですから我慢の省エネルギーではないということです。我慢をしない、むしろ県民生活はよりよくしていく、だけれどもそこにかかるエネルギー消費は特に化石エネルギーを含めて減らしていきましょうということです。
 2つ目の柱です。再生可能エネルギーの生産量を増やす。これは誰が使うかはさておいて、とにかく県内でつくられる再生可能エネルギーの量を増やしましょう。そして第1段階、当面の目標としてネット――消費量と生産量の比較で、消費量よりも再生可能エネルギーがつくられている量が上回るようにしましょう。ですから、これは例えば長野県ですと長野県内にある公共電力や中部電力、関西電力の水力発電所も含まれています。いいんです。誰が使うかはさておきとにかく長野県内でつくられている量を長野県内で使われている量とまずは同じまで持っていきましょうということです。それには消費量を減らすし生産量を増やす。ただこれから大きな電力会社がたくさん、そうした発電所を造ることは考えられませんので、今後は太陽光とか小水力発電を地道に増やしていくことを考えています。
 それでは、今度は具体的にエネルギー消費量を減らすとか再生可能エネルギーを増やすために、どう考えていけばいいんでしょうか。大きく4つに分けて考えるとやりやすいです。
 1つ目は移動のエネルギー消費量を減らしていく、2つ目は家庭のエネルギー消費量を減らしていく、3つ目は企業のエネルギー消費量を減らしていく、4つ目は再生可能エネルギー生産量を増やしていく。ほかのことはこれらにもっとめどがついてから考えても遅くはありません。
 脱炭素化の方向性・シナリオのポイントになります。長野県でもこのように考えました。
 1つは自動車の総走行距離を減らしていくことです。これは先ほど言いましたように住民の便益を減らさないわけです。ですから、例えば公共交通に転換するとか、10年、20年、30年かけて都市計画だとかまちづくりでコンパクトアンドネットワークのまちづくりにして、農山村の集落も維持して大都市もいろんなところへ歩いていけるまちづくりを少しずつ、これまでの自動車中心のまちづくりからそちらへ転換していくことによって、自動車の走行距離を減らしていく。そして残りを電気自動車――EVに転換していくことです。これによって一定のエネルギー消費量が減っていくシナリオを数字で出したわけです。
 2つ目、家庭のエネルギー消費量。住宅を高断熱・高気密にする、それによって全館暖房をしても今までよりエネルギー消費量が少なくて快適に過ごせる、健康寿命も伸びる。それから、そこで使う家電、照明を高効率化していく、これによって家庭のエネルギー消費量は大幅に減ります。
 そして3つ目、企業のエネルギー消費量。これはビルを高断熱・高気密にして、空調とか照明をうまく活用する。そしてビルの消費エネルギーを最小化する。もう1つは、今度は生産設備を高効率化する。省エネルギー政策あるいは工場とかの屋根に自家消費の太陽光パネルをぽんと乗っけてある程度消費を賄うといったことです。
 4つ目、再生可能エネルギー生産量を増やす。例えば山の斜面を削って太陽光パネルを乗せるとかじゃないんです。森林を削って太陽光パネル、それも違います。大事なことは、建物の屋根に置く分には何の問題もありません。ですから、全ての屋根で太陽光発電、熱利用をやっていこうというのは1つ、長野県の方針です。もう1つ、農業用水路で小水力発電をやっていけば地元の水利組合とかの収益になります。そして、熱をたくさん消費する施設、例えば温浴施設とかでは重油ボイラーからバイオマスボイラーに変えていこうということです。そして最後、地域と調和した風力発電・ソーラーシェアリング、これは田んぼとか畑の上に、細い形でスリットが入った太陽光パネルを入れて、太陽光が7割ぐらい届いて3割を発電に使うような仕組みです。見たことがある方もいると思います。これらは地域と調和した形でやろう、地域の景観とか住民が利益になるように、調和した形でやろうというもので、このようにやればおおむね脱炭素化はできるということです。長野県はこのようにシナリオをつくっています。
 このときに、もちろん行政側には様々なデータがありますが、議員の皆さんにも扱いやすいデータあります。1つは株式会社E−konzalさんがつくって、無料で提供している全国の地域ごとの、市町村ごとの温室効果ガス排出量データ、自治体では取ってないところもあるんですけれども、ここも環境省の方針で統一で全部公表してます。
 それからもう1つ、千葉大学の倉阪教授が開発したカーボンニュートラル・シミュレーター。これは国の支援で開発したものなんですが、どこの自治体でどう太陽光とか断熱住宅が普及していけば、どのぐらいCO2が減ってくるか分かるものです。これを使えば、地域の例えば、県会議員の皆さんも地域のお付き合いのある市町議会の議員さんとか市長さん、町長さんとかと一緒に話ができる、共通の土台ができます。
 このように私がいろいろ話をしていると、じゃあ何からやればいいんだ、そんなにいろいろあってもできませんよということになるんで、ぜひお勧めしたいことがあります。それは公共施設から始めることです。これは総務省のデータになりますけれども、1970年代で公共施設はどっと増えたわけです。これが2020年からどんどん築50年を超えていく、当然これから建て替え、改修が本格化していきます。そのときに合わせて脱炭素化すればいいんです。そうすると、最小の投資で最大の効果を得ることができます。
 ではどうやって公共施設の脱炭素化をやればいいのか。ついつい建物に再生可能エネルギーを乗っければいいんじゃないのって考えがちなんですが、そんなに単純なものではありません。まず一番最初に検討すべきは立地なんです。せっかく建て替えたり大規模改修するんだったら、立地から検討する。なぜかというと、実は温暖化対策の世界ではスコープ1、2、3とあって、スコープ3がその施設を利用する人たちが移動してくるときのCO2を算出することになります。当然、その立地によって公共交通じゃなくて車でみんながやってくるようなところはこのスコープ3の部分でたくさんCO2が出ることになってしまいます。スコープ3まで含めてCO2を減らしていくのが脱炭素の公共施設となると、当然、立地を検討します。長期にわたる利便性がきちっと確保される、つまり公共交通で多くの人が長期にわたってアクセスできる場所でしょうか。2つ目、立地する場所が車を利用できない市民にとって利便性が高いでしょうか。3つ目、冗長性。当初の想定や機能を変更しても対応できる場所でしょうか。例えば学校としてはいいけれども病院としては駄目な場所だと困るわけです。100年後、200年後も別の想定機能であってもここは使える。どんな公共施設も使いやすい場所が一番いい場所です。そして人口減少の考慮。今は急激に待機児童とか一時的に需要が増えているものは例えば賃貸でも対処できます。これも1つの方法です。
 2つ目です。床面積当たりの稼働率を高める。脱炭素型の公共施設を造っても誰も使わなかったら意味がないんです。できれば徹底的に使い回されるような公共施設こそ脱炭素であるというのがあるべき姿です。となると、稼働率の高い施設を造ることも重要です。
 1つ目、用途の併存。2つ目、時間の併存。3つ目、立地の併存。4つ目、空間の併存。空間の併存も後ほど説明しますが、結構建物には間仕切り壁がそのまま建物を構造・構成する耐力壁になっている例があります。こうなると、なかなか空間を広げることができない。将来、別の用途に使いたくてもこの壁はぶち抜けない、じゃあどっちにしろ取り壊してしまおうかということになりやすいんです。ですので、こういう点もしっかり検討しておく必要があります。
 3つ目です。建物の寿命を伸ばす。例えばその公共施設を新しく建てるあるいは大規模改修するにしてもその後何年使うのかが大事になります。結局、10年後に廃止するんだったらどんなにいい建物を造ってもそれは資源とエネルギーが大量消費されてしまう。一方、多少資源、エネルギーを使ったとしても100年、200年、300年使えばこれは非常に、ほとんどごみが出ない、廃棄物が出ないという点で非常に優れた環境性能の高い建物になります。ですから、寿命を伸ばすことは非常に重要です。
 1つ目、構造劣化の防止。具体的に説明していきますが、今はまずポイントだけお聞きください。構造劣化の防止はコンクリートが弱くならないようにしていく。2つ目、定期的なメンテナンス。これはよく行政は財政が苦しくなるとメンテナンス費を削ることをやります。ところが、メンテナンスが不要な建物は地球上に存在しません。ですから、メンテナンス費を削ることは、単純にその建物の将来にわたる価値を棄損して、その建物が使えなくなる時間を早めているだけです。それは結局、資産価値を削っているだけですので、財政上は意味はないのです。3つ目、用途変更への対応。大抵の建物は用途変更に対応できないという理由によって使用者によって壊されるんです。つまり、以前は病院として使っていました。しかし、ほかの用途に使いたいので、これは結局病院としてしか使えないから取り壊して建て直すことになるわけです。こういうことが多いので、やはり建物そのものは軀体とかを、先ほどのように耐力壁とかをなくしてシンプルにしてどのような用途にも使えるようにすることが100年、200年使っていく上での重要なポイントになります。次は4つ目、長期的な状況変化への対応余裕。恐らく20年前に造った建物は気候変動の対応によって、今後、脱炭素化しなきゃいけないなんてことは一切考えないで建てているはずです、10年前、20年前は。でも、実際はこのようなことが起きるわけですね。そして予見もされていました人口減少も同じです。ですから、やはりそれを見据えていかないとその場しのぎで結局高い買物になってしまいます。最後、経年減価を言う人はいます。これは税法上の概念ですから意味はない。建物としての物理的な意味はないということです。コンクリートの中性化とは何かといいますと、コンクリートは表面が二酸化炭素に触れるとだんだん中性化していって、それが真ん中の鉄筋に達するとさびを引き起こす原因になります。鉄筋がさびれば構造上、地震に耐えられなくなりますのでその建物は使えなくなります。あるいは、空気によって膨張したりするのでそれによってひびが入ったりする、それでも駄目になります。そのため、コンクリートの建物は本来ペンキで外側を全部被膜を覆って直接CO2に触れないようにする、そしてそのペンキを10年から20年に1回塗り直すわけです。特にマンションなんかは当たり前のようにやっています。
 一番いいのは、内側のところはペンキでいいんですが、外側は断熱材で覆うのが一番いいんです。厚い断熱材で覆えば、先ほど言った気温による収縮も抑えられますので非常に長もちします。
 一方、一番やってはいけない公共施設の造り方はコンクリートの打ちっ放しです、これは最悪です。ほとんど税金の無駄遣いの最たるもので、コンクリートの中性化をお勧めしてるようなもんです。
 ついでに言うと次に駄目なのはタイル貼りです。タイルは10年ぐらいでどんどん剥離していきますので同じことです。むしろ、防災上の問題があります。ということで断熱材や塗装が重要です。
 公共施設を何年使うのか、例えば今年建てた建物を50年使うと2071年まで使うんです。恐らく七、八十年使うんであれば、最低2100年ぐらいまで使うでしょう。そして場合によって100年使えば2120年、150年使えば2170年まで使うんです。当然、公共施設はあと二、三十年で恐らく既存も含めて国から脱炭素化の既存適格を求められるはずです。なのに、今これから造る公共施設が脱炭素を考慮してなかったら、そのうち大規模改修とか何らかが必要になってきます。そのときに財政的余裕がないでは遅いわけです、もう分かっているからです。ですので、公共施設を何年使うのか、常にしっかり確認してほしいということです。最低でも50年使う、最低でも100年使う、そうしたことを全ての公共施設で決めておく必要があります。しかし、日本の公共施設はほとんど全て決めていないはずです。こういうこともポイントになります。
 さて、こちらにAとB2つの形の建物があります。1つはデザイン性が高い、例えば有名建築家が造るようなデザイン性が高い、すばらしい建物と思ってください。Bは立方体あるいは長方体のシンプルな建物、どちらがトータルコストが低いでしょうか。これはBです。理由があるんです。なぜ日本の公共施設によくあるデザイン性が高い建物がトータルコスト、財政支出が高くなるんでしょうか。1つ目です。建築費の増加。形状の複雑さに比例して建築費が高くなる、それと足場構築費が高くなります。2つ目、稼働率の低下。形状の複雑さに反比例して空間の応用度が低下します。つまり、空間の応用度が低下するということは、結局、各用途に使いにくい、あるいは使っててもちょっと状況が変われば使いにくいことを意味します。3つ目、維持管理費の増加。10年、15年、20年に1回、足場を当然組むわけですけれども、デザイン性が高いほど足場構築費は高くなります。4つ目、光熱費の増加。実は、形状が複雑なほど表面積が増えることになります。それは熱が逃げる面が増える、車のエンジンとかラジエーターを想像していただくと分かると思うんですが、形状が複雑で表面積が多いほど熱が逃げやすいわけです。ですから、光熱費の増加につながります。また、熱橋といいまして接合部とかの断熱が非常に難しいんですけれども、この熱橋対策が難しい部分がいっぱい増えて結構熱が逃げやすくなるといえます。そして最後、長寿命化対策も難しくなります。
 あともう1つ、2つの種類のゼロエネルギービルがあるんです。ものすごい税金がかかるゼロエネルギービルと税金が最小限に抑えられるゼロエネルギービルです。Aの通常の断熱・気密に多数の高効率設備のビルは、維持管理費、メンテナンス費、更新費がどんとかかる、税金がどんどん出ていくゼロエネルギービル。Bの高断熱・高気密で最小限に高効率設備を導入するビルは、税金の支出をほとんど最小限に抑えられます。なぜかといいますと、高効率設備といっても耐用年数があるからです。LED照明は8年から10年、空調とかは10年から15年、太陽光パネルであっても20年から40年です。一方、断熱とか軀体はきちんとメンテナンスさえしていれば100年なら100年、200年なら200年、建物を使う期間ずっともつわけです。ですから、ゼロエネルギービルであっても設備に頼ると定期的に多額な設備更新費がかかります。しかし、日本のゼロエネルギービルのほとんどがA型、つまり設備更新にお金がかかるZEBになっていますので、ZEBというだけでは要注意だということです。
 最後、建物でエネルギー性能を高める方法です。これは単純です。この順番で検討すればいいんです。一番最初に最高レベルの断熱を盛り込む、次に最高レベルの気密を盛り込む、最高レベルの日射コントロールという形で盛り込んでいく。当然予算からオーバーします。今度は予算からオーバーした分を予算に達するまで引き算していきます。引き算するというのは逆です。再生可能エネルギーは電気から出てくる。次に熱を引く、設備を引くという形で引いていくと予算に合った脱炭素建物が造れる、エネルギー効率の高い建物が造れるんです。これをチェックするぐらいは議会でも十分できると思いますので、これ以上先は当然建築の専門知識等が必要ですが、これは当然議会質問でも十分にできると思います。
 さて、断熱・気密には正しい方法があります。AとB、これはどっちも正しいんです。ただAとB、この2つしかないんです。A、外側を全部断熱材で覆う、もしくはB、内側を断熱材で覆う、どっちかだけです。外断熱が正しくて内断熱が間違っている、そんなことはありません。どっちも正しいんです。だから、外断熱では外断熱で徹底しなきゃいけない、内断熱では内断熱で徹底しなきゃいけないだけです。一方、間違ったものがあります。壁を外断熱、天井と床を内断熱は、ある大手ハウスメーカーの住宅は実際にこういう仕様で造られていて結構トラブルになっていると聞きます。また、壁の中に外気を取り入れる、これも結構あるんですよ、問題です。大事なことは、さっき言った正しい方法しかない。だから、窓が結構問題なんです。建物の窓、特に住宅なんかだと6割が窓から熱が逃げていきます。熱貫流率というんですけれども、熱が逃げていく率だと思ってください。日本で多いアルミの1枚ガラスが6.51、紙ペラ1枚ぐらいです。そして、日本で今多いアルミのペアガラスが4.65です。日本で最高等級のものは2.33以下で、大体樹脂のペアとか樹脂のトリプルになります。2.33といったら樹脂サッシのペアガラスだと思うんですが、ちなみにドイツではビルとか住宅とかに使っていい窓は熱貫流率1.3以下しかありません。しかも普通に売っている物が1.0以下なので、日本で使われているこういう窓はほとんどないんです。こういうことを国が決めることによってエネルギーの浪費、ドイツはロシアに頼っていますがロシアに行くお金を減らそうとしています。
 日射コントロールは、窓から入ってくる太陽をうまく活用したいわけです。夏は防ぐ、冬は取り込む、ところが太陽の光は反射したところで熱を生むので、部屋の中でカーテンとかブラインドで反射するとカーテンとかブラインドそのものが熱を持っちゃうんです。ですから、本当はその外側で反射させたい、そして冬の日射をうまく太陽の傾きの違いを利用して入れたい。この外付けブラインドは国産がなくて輸入品しかない。日本でこういう産業を育ててこなかったので国産品がないという残念な状況になってます。でも非常に重要です。
 それからそうして造った建物、特に公共施設なんかは24時間熱交換換気をする必要があります。つまり、空気はきちんと新鮮な空気を入れるんですが熱は逃がさないものがあるんです。これが重要だということ。そしてよく環境に詳しいと称する建築家が、通風が大事だ、風の通りが大事だと言うんですが、これはあくまで窓を開けたときだけです。窓を開けない建物、あるいは窓を開けたときはきちんと風が抜ければよくて、いっぱい窓があっても風が抜けなかったら意味がないわけですし、窓を開けない建物とか固定式の窓では通風は関係ありません。
 このような考え方で造られた建物、公共施設が最近、北海道ニセコ町で竣工しました。国内最高レベルの超高断熱、高気密の建物で、重油より炭素係数が低いLPGを使って、災害があったときも熱とか電気を役場に供給できます。そして、それは将来、今のシステムを使ったままエネルギー源だけはLPGから再生可能エネルギーガスに切り替える予定になっています。ですので将来はゼロカーボンになるということです。
 それから、これは旧西ドイツではなく旧東ドイツで、30年前まで社会主義だった人たちが造った小学校です。これはなぜ造ったのかというと子供たちの学力を高めるためです。旧東ドイツは旧西ドイツに比べて所得が8割ぐらいしかないんです。ですから、子供たちの学力を高めていい所得を持ってほしいというのが地域の人たちの願いです。それには集中して勉強できる環境が重要だということで、二酸化炭素濃度がきちんとコントロールできる、それから湿度がコントロールできる、そして室温がコントロールできる、つまり一年中快適に集中力を持って勉強できる環境をいかに安く造るかと考えた結果が、プラスエネルギー小学校、高断熱・高気密の小学校だったんです。これによって通常より建設費が10%増えましたが、エネルギーコストが66%減ったので最低50年間は使う予定です。その50年間のトータルコストが21.5%減ったわけです。ですから、単年度予算では増えたんですがトータルコストは減っているわけです。当然こっちのほうが住民にとってもお得だということです。
 長野県でこういう施策を進めていくために、全ての建物は新築時にエネルギー性能を検討する義務がかかっています。それによって国の省エネ基準を上回る建物が、長野県では新築住宅の8割以上になっています。実際、工務店に説明をしてもらうわけです。一般住宅では例えば長野市だと年間光熱費25万円、国の省エネ基準だと14万5000円、この工務店さんの標準グレードだと光熱費5万5000円ですよと。こういうのを選べるわけです。また、ほかの工務店さんにも聞けることが大事です。省エネ改修も工務店さんと協力して勧めるソフトをつくったりしています。
 高校とかでも最近小学校でもやったんですが、断熱ワークショップをやって、子供たち自らが学校を断熱化して寒い学校を暖かくすると同時に、これを通じて気候変動とかエネルギー、いっぱいいろんなことを学んでいく機会にもなっています。
 もう1つ重要なことを最後にお伝えしていきます。
 再生可能エネルギーはあまり雇用を生まないんです、ビジネスは。けれども利益を生むんです。そのときに、その利益は事業所得になります。ということは、出資した株主、経営者、そして事業に融資する金融機関、ここが実際その利益を得るわけです。ですので、地域の人たちが出資して地域の人たちが経営して、地域の金融機関が融資すれば地域にその利益が絶え間なく留まる。一方、アメリカとか外部から会社がやってきて、静岡の風で風力発電を造っても、ほとんどお金、収益がアメリカに逃げていくわけです。そのことを外部主導型といいます。地域の人たちが中心になると地域主導型といいます。一方、外部の企業がやってきて地域に寄附をしたり地域に出資を募ったりするやり方を協働型といいます。ですから、やはり自治体としては地域主導型とか協働型を促進していくのが重要になります。
 実際、これは長野県上田市で市民出資でやっているソーラーシェアリングですが、田んぼ2反で有機米の売却益10万円です。一方、電気の売却益は200万円です。これだと農家の人たちも子供たちを大学にやれるんです。こういうことが大事です。長野県はそれをSDGs計画として国に提出し、認定もされています。
 ということで、最後になります。今日の参照になるような話をこちらに提示した本により詳しく書いてありますので、ぜひ御覧いただければと思います。私や私の仲間たちの本です。

○鈴木(澄)委員長
 田中先生、ありがとうございました。
 以上で田中先生からの説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。委員の方にお願いします。
 質問はまとめてするのではなく、一問一答方式でお願いをいたします。
 それでは御質問、御意見等がありましたら御発言願います。

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