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委員会会議録

委員会補足文書

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令和3年11月4日脱炭素社会推進特別委員会
国立研究開発法人国立環境研究所社会システム領域脱炭素対策評価研究室 高度技能専門員 日比野剛氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/04/2021 会派名:


○日比野剛氏
 それでは、これから50分ばかりお話しさせていただきます。国立環境研究所日比野と申します。よろしくお願いいたします。
 御存じのように2050年、カーボンニュートラル、実質排出ゼロという目標が国で掲げられ、私につきましては、90年代から地球温暖化問題に関わっておりまして、途中、20年目標、30年目標、また途中、この先50年をどうするんだという検討についても長いこと関わってきておりました。
 ただ、つい数か月前までは80%目標でありましたけれども、それがネットゼロという目標となり、たかだか8割から10割じゃないかという見方もあるのですが、やっぱりその最後の20%をゼロにする苦しみというか、そこからの大変さ、困難さは本当に大変なものがあります。
 ですので、やはりそこをゼロとすることの難しさ、そのために行わなければならないのは、単純に80から100、8分の10倍になるんじゃないか、一点何倍じゃないかという難しさではなくて、やっぱり最後に残るのは非常に難しいところ、困難性の高いところが残ってくるので、残り20をゼロにすることでは、本当にこの1年間でギアが変わったなという感じがしております。その辺りについて、目指す方向についてもいろいろお話しさせていただければと思います。
 今回のお話しをいただいて、前回までの議事録をいろいろ拝見させていただきました。非常に多岐にわたるゼロに向けた取組についての議論が活発に行われていて、それほど私が申し上げる点もあまりないのかなというところもありましたけれども、幾つかまだこういった視点も持ったほうがよいのではないのかなという点もございますので、その辺りを含めて全体的なお話をさせていただきますので、役に立っていただければと思っております。
 今日お話しさせていただく内容について、主に3つ考えております。まず2050年脱炭素社会実現のための必要な対策、この辺りの全体感は個別に100通り、200通り、何百通りといろんなものがあるのですけれども、やっぱり個別に見ていくといろいろ抜けや漏れも出てくるので、全体としてどういう方針で考えていけばいいかという柱的な話をさせていただきます。
 それで2つ目に、我々は長いことコンピューターシミュレーションモデルを用いて、将来の排出量がどうなるのか、そのための対策としてはどういうものが必要なのかという分析を定量的に行っている部隊であります。それで今回の2050年のゼロに向けた検討、先月に閣議決定がなされましたけれど、あれに向けての議論の際にも我々はモデル分析をしておりますので、その辺りの定量的なものと比べながら、どの辺りがポイントになってくるかを細かく部門ごとにお話しさせていただければと思っております。
 最後に、そういった数字上、対策でこういうのが必要だと分かったけれども、どんな施策を考えたらいいのかを少しお話しさせていただきたいと思っております。
 国立環境研究所には、今お話しさせていただいたシミュレーションモデルのプロジェクトがありまして、アジア太平洋統合モデルを開発しております。これは温暖化、地球環境に関わるモデルを全部統合的に扱おうとするモデルでありまして、CO2なり温室効果ガスがどれくらい排出されるのか、それが地球上でどういう分布になるのか、その結果、地球上にどういう影響が出るのかを全部一気通貫で考えるモデルの取組を行っております。
 これは昨今で急にやった話ではなくて、もう90年代から進めておりまして、90年代からこういう取組をしている研究機関は世界中を見渡してもそう多くはなく、欧米で幾つかあるという感じだったんですけれども、欧米ですとやはり自国の先進国が中心であったりしましたが、我々日本では、やはりアジアにおける日本というところもありますので、資料2頁の緑色の国々の人たちとタッグを組んで、アジア全体に特にフォーカスを当てた世界モデルを開発してきたところであります。
 それで我々は日本でありますので、日本の行政機関がスポンサーをやっていただいておりますので、当然日本のモデルが非常に充実しているところであります。その日本モデルにつきましては、先ほどお話しさせていただいたように10年目標、20年目標、30年目標、50年目標と、これまでもいろいろと検討の中で用いられてきたところであります。以上、前置きになりましたけれども、ここから2050年に必要な対策についてお話しさせていただきます。
 これは1900年ぐらいから日本のCO2排出量をプロットしたもので、将来どんな目標になっているかというところまでを書いたものです。比較的90年ぐらいからのグラフは多く存在しているんですけれども、そこから見てもすごいんですが、やはり過去からたどってきた推移を見ると、駆け上がってきた山をここからいかに急に駆け下りていくかといった困難性が見てとれるかと思います。1年前までは26%、80%という目標だったものが、昨今は46%まで野心度が上げられ、2050年についてゼロになったところであります。
 それでこの温室効果ガスがこれだけ上がってきたものを、こんなに一気に駆け下りることができるのか、今までできてきてなかったじゃないかというところがあるのですけれども、やはりポイントは、CO2排出量とともに、ここのバツ印で書いているエネルギー消費量です。
 それで日本は石油ショック以降、すごく省エネに力を入れ、もう乾いた雑巾じゃないかと、やることをやって、これ以上は何も絞り切るものはないじゃないかという議論が行われてきました。そうはいっても、やっぱりエネルギー消費量が増える、幾ら省エネしてもやはり必要なエネルギー消費量があって、エネルギー消費量が増えた分、CO2も増えてきてしまったのが実情で、ここは逆に乖離しちゃっているんです。2000年代に入ってからエネルギー消費量は減っているのにCO2は増えている。これは3.11以降、原発が止まって、エネルギー消費量が減っているのにCO2が増えているという事象が発生しているということです。
 確かに省エネは、日本は頑張ってきました。ただやっぱりこの期間に技術的革新でできてこなかったものが、再生可能エネルギーの利用であります。太陽光なり風力なり、まだ非常に高額なものでありましたので、幾ら普及のために力を入れても、なかなか普及してこなかったことがあります。でもここからは世界中、かなり再生可能エネルギーは安くなっております。それをうまく活用して、この山をいかに駆け下りていくかが、残り30年間の大きなポイントになってこようかと思います。
 当然、省エネのポイントは必要ではあるのですけれども、加えて今までできなかった再生可能エネルギーの活用が、この山を駆け下りていくための大きなポイントになろうかと思います。
 これは日本の排出量でございますけれども、日本に限らず先進国は主にそういう傾向にあるのですが、やはりエネルギー起源CO2の割合は非常に大きく、石灰石や廃棄物のエネルギー起源ではないCO2排出量が続いて、あと農業起源のメタン、亜酸化窒素が数%、冷媒などの代替フロンが5%という割合になっています。
 これまで8割削減という目標の中では、とかくこの農業起源のところはたかだか数%だからいいんじゃないのという見方をされてきたところはあるんですけれども、ゼロとなると98%削減では駄目で、この辺りも無視できなくなってくるので、ここに乗っかっているもの全てを減らす試みをしていかなきゃいけないのがゼロ目標に課せられた大きなポイントになってくるのかなというところであります。
 そのエネルギー起源CO2の中でも、日本は比較的その電気から発生するCO2を各部門に割り振った見せ方を多くしておりまして、日本全体で見ると産業が、運輸は現時点では電気自動車がまだまだ普及しておりませんので、電気を配分してもあまり変わらない感じなんですけれども、やはり発電起源のCO2は非常に大きくなっております。ここをいかにCO2を出さない発電にシフトしていくかが、まず大きなポイントであります。
 こういった全体感で、ここから先はやたらこの図が出てくるのですけれども、対策の柱としてこんなイメージを持っていただきたいというところで、似たような図はいろいろ国の検討の中で出てくるところでありますが、まずCO2排出量をどう捉えるかというと、まず横軸にエネルギー需要、必要なエネルギー量という長さがあって、そのエネルギーを使うとどれぐらいCO2が出るか、つまりエネルギー使用当たりに出てしまうCO2排出原単位を縦軸に取って、そうするとこの面積自体がCO2排出量を表現しているとまず考えていただければと思います。
 大まかに例えば使うエネルギーのうち電力を半分として、使うときに化石燃料を直接燃やすガソリンを使ったり、家庭で灯油やガスを使ったりといったところが半分だとすると、当然ガソリンを1リットル使うと出るCO2量、電気を1キロワットアワー使うのに出てしまうCO2排出量があると思いますけれども、その掛け算によってCO2排出量が表現されるとするのであれば、この面積をゼロにしてしまうことが排出量をゼロにすることになります。
 それで一気にこの面積をゼロにする前に、ちょっとステップ・バイ・ステップで考えたいです。まず横軸のエネルギー需要の長さを短くする取組を考えましょうというのが、この2番目の図になります。ここの横方向を減らす方策には大きく2つあります。
 1つは、具体的な例でもって次以降のスライドで御説明いたしますけれども、人間はエネルギーを使うために生きているのではなくて、エネルギーを使った先に何か、温まりたいとか移動しなければいけないという目的があるからエネルギーを使っているんだけれども、そもそも温めるためにエネルギーを使うようなことをやめましょう、移動するために自動車を使うのをやめましょうということ自体、それを使わなくて済むような社会の在り方を考えていきましょうというのが1つポイントになってきます。
 あともう1つが、エネルギーを使うのであれば省エネの技術を使いましょうという、家庭でいいますと断熱材を使ってなるべく暖房機器、冷房機器を使うのをやめましょうというのが1番だとすると、使う以上は高効率なエアコンを使いましょうというのが2番。この2つが相まって横方向を短くすることができます。
 次に、電化が脱炭素の中では非常にポイントになってきます。後ほど詳しく説明しますけれども、なぜ電化かというと、電力と燃料を比べると、どちらがゼロにしやすいかということなんです。電気については太陽光発電、風力発電というゼロにする手段、可能性がたくさんあります。ただ燃料のほうは、可能性としたらバイオマスを使うとか、太陽熱温水器を使うといったところで限定的なんです。バイオマスはあるところにはたくさんありますけれども、やはり世界中がそこに飛びついてしまったら、森林はなくなってしまう、食糧ができなくなってしまうとか、いろいろな問題が出てきます。バイオマスは限定的だとすると、電力に寄せる必要がありますねということで、電化がポイントになってきます。
 この1番、2番、3番、それで最後にエネルギーの脱炭素化、電気に少し寄せて燃料を少なくするけれども、電力にしろ燃料にしろ、化石燃料ベースの電気ではなく、化石燃料ベースの燃料ではないものにして、この縦方向を小さくしていくのがエネルギーの脱炭素化です。ですから再生可能エネルギーの利用がここに入ってきます。
 ただここまで、4番までやっても残り30年間と考えると、なかなかゼロにし切れない、少し排出が残ってしまうところが出てくるのではないかというところで、最後に大気中のCO2を回収する対策、ネガティブ排出という負の排出の対策をして、僅かに出てしまう、場合によっては我々の計算で10%ぐらい出てしまいそうなんですけれども、その10%分を帳消しにするようなネガティブ排出技術を最後に導入しなければならないというところであります。
 これは具体的には、例えば森林吸収などは大気中のCO2を固定するのでそれに当たりますけれども、ほかにももっとメカニカルにやる方法もあります。それは後ほど御説明いたしますが、柱として1、2、3、4、プラスアルファの形で考えていただければと思います。ほとんどの対策はこのどれかに入りますので、それぞれの対策を考える上で、この柱を意識して考えていただきたいと思います。
 それで最初にお話しした社会変容によるエネルギー需要の低減があります。これが最初に口頭で御説明した例ですけれども、家庭において必要なのは灯油を使うことやガスを使うことではありません。温かくなることが必要です。そうしたら断熱性を高めて温かさを供給すれば、このエネルギーを使わなくて済むようになるでしょう。
 次に運輸においては、仕事場に行かなきゃいけない、仕事をしなければいけないのが目的であって、通勤で自動車に乗ってガソリンを使うことは、きっと目的ではないはずです。また病院に行かなきゃいけない、これは治療することが目的で、別に家庭でオンラインで診療していただけるのであれば、わざわざ自動車に乗って病院まで行く必要もないかもしれません。そういったところでITの力などを借りて、移動しなくて済むならいいじゃないかと。それでエネルギーを使わない、また都市計画でコンパクトシティにして、自動車に乗らずに歩いていける、自転車で行ける、そういったまちづくりをすることでエネルギーを減らしていく方策もここに当たるのかなと思います。
 次に産業においてなんですけれども、いろんなものがあふれていて、いろんなものを使っているわけなんですが、そのいろんな機器自体、つくることが目的じゃなくて、例えば自動車についても動くための手段であって、別に自動車を持つこと、ガソリンを吹かすことが目的ではないとするとシェアリングだったり、インフラにしても、何年たったから建て直さなきゃいけないではなくて、うまく点検を小まめにして修繕して延命させていけば、別に工事をすることが目的ではないはずなので、そうすると長寿命化やリサイクルをやっていけば鉄やセメントといったものの需要が減る。そうすると、その先にある鉄をつくるためのエネルギー、セメントをつくるためのエネルギーが節約できるので、こういった社会構造を変えていく取組が1つ大きなポイントになってきます。
 次に、省エネ技術です。省エネ技術はこれまでも何十年にもわたり日本がいろいろ取り組んできたもので、これが家庭・業務部門、運輸部門、産業部門、発電部門といろんなところにございますけれども、こういった省エネ技術の効率を上げていくのは当然引き続き必要なことになろうかと思います。
 それで先ほどポイントとして挙げたものが電化です。電化がなぜ必要かというと、繰り返しになりますけれども、やはり電力のほうが再生可能エネルギーをうまく使いやすいところがあります。太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電といろんな種類があり、また太陽光発電、風力発電、これは非常に大きなポテンシャルがあると言われているところであります。
 片や、熱を考えますと、バイオマスボイラー、太陽熱温水器といったものにどうしても限定的になってしまうところがあります。ですからこういった取組を否定するものではなくて、やはり量としてはこちらのほうが大きいので、なるべく電力にシフトしていくことがポイントになろうかと思います。ただ、やみくもに電気にすればいいというものではないところは御注意いただきたいところであります。
 じゃあ家庭で灯油やガスのストーブ、ファンヒーターを使われている方が、では全部を電熱線の電気ストーブにすればいいかというと、そういうことは全然ないです。というのは、これは例ですけれども、オフィスとかですと、灯油とかガスを使うときはボイラーでたいて、その蒸気が各部屋に回ってくる感じなんですけれども、やはりボイラーの熱、蒸気をつくる効率を考えると、必要な化石燃料が1から1.3倍ぐらい必要になります。それで電気ヒーター、電気ストーブ、電熱線みたいなものは、やっぱり1の熱をつくるのに1の電気が必要になります。
 これではほとんど得してないですし、そもそも発電自体が大本の火力発電所だと、効率がよくても半分ぐらいですので、1の熱をつくるのに2の熱を使っていることになり、電気ヒーターを使っても効率がよくないので、これでは全然ナンセンスです。
 そこで、電気ヒートポンプ、エアコンですね。これは空気中の熱をうまく活用しますので、家庭用のエアコンですと1の熱を生み出すのに0.3の電力が必要となります。非常に効率がいいです。大本の発電までたどっても、圧倒的にこちらのほうが効率がいいです。ですのでやみくもに電気にシフトするのがよいのではなくて、やはり電気ヒートポンプをうまく活用した電化が非常にポイントになってきます。
 ですので暖房を、直接燃焼させるストーブ、ファンヒーターからエアコンにシフトさせていくこと。あと給湯についてもガス給湯器から電気ヒートポンプ給湯器に替えていく。ちょっとここに問題があるのは分かっています。また後で御説明いたしますけれども、そういった取組が重要になってくるところであります。
 次が最後の4つ目の柱ですけど、エネルギーの脱炭素化で、まず電気の領域については再生可能エネルギーを使う。CO2が出ないという意味では原子力発電もそこになってきます。あと火力発電所にCO2を回収する仕組みをつけていく、これはCCSと、これは次のスライドで御紹介いたしますけれども、こういった取組もあろうかというところであります。
 次に、どうしても電気にシフトするのが難しいところをどうしていくかが1つポイントになってきます。1つはバイオマスを使う、そしてこの辺りが最近にわかに脚光を浴びてきている新燃料が出てきています。
 どういう領域が難しいかというと、産業の中でも非常に高い温度を使うような、高温の領域を使う鉄鋼業みたいなところは、なかなか電気では難しい領域になってきます。あと難しい領域としては、運輸部門ですと貨物輸送です。乗用車は電気自動車でいけるんじゃないかと思いますが、貨物になると燃料電池自動車、場合によっては水素なりを直接燃焼させる。それでなかなか車体の切替えが難しい場合には合成燃料、これは今の燃料と一緒のものを水素からつくろうという取組で、化石起源ではなくて水素からつくろうという取組です。
 また、アンモニアですが、水素は非常に軽くてエネルギー密度が薄くて、運搬がすごく難しいですので、国内で融通している分にはいいですけれども、海外から持ってこようと思ったら、1回アンモニアにして海上輸送して運んでくる取組も考えられるのではないかということで、昨今、アンモニア火力発電とか、船舶にはアンモニアを使う動きが出ていたりします。
 このCCUSと言われているものですけれども、回収する装置が大規模になってきますので、大規模なプラントにしかなかなか設置が難しいところで、火力発電所や鉄鋼業、セメント、石油化学から出たCO2を、こういった大規模なところに回収装置をつけて、その回収したものを地下に埋めたり、またここから燃料をつくったり、新たな建材などをつくる動きが出ております。
 次に水素なんですけれども、水素、水素と言われておりますけれども、水素には3つ種類があったりします。グレー、ブルー、グリーン水素と言われていて、グレー水素と言われるものは昔から取組があったりするんですが、化石燃料自体に、炭素分であるCや水素分であるHが含まれておりますので、その中のH分だけを取り除いてCO2は外に出してしまう。こうやってつくった水素は、この水素自体にはCO2はないんですけれども、つくる過程でCO2が出ちゃっていますので、これは脱炭素にはほとんど何の意味もないんじゃないかということになります。
 次に、ブルー水素になると、化石燃料から取ったCO2を地下などに埋めて、水素だけを使いましょうというところで、これは一応CO2は出ないことになります。日本ではなかなか地下に埋める場所もそう多くはないので、国内でやろうと思ったら、あまり有意な取組ではないんですけれども、オーストラリアみたいに化石燃料もまだあるし、地下にも埋めるところがあるところではこういった取組を熱心に、今、採算がどうかと一生懸命に検討しているところであります。
 それであと、今国内でやっていくとしたらこれなんだろうなというのがグリーン水素です。再生可能エネルギー発電がありますけれども、これはどうしても電力が余ってしまうタイミングが結構あります。九州では余って捨ててしまう時間帯がゴールデンウィークとかで発生したりしています。そういった余った安い発電エネルギーから電気分解して水素をつくって、それを使っていこうといった取組がうまくいくと結構日本の中でも融通ができて、なかなか電化が難しいところにもうまく供給できてくるかと思っております。
 これがフローなんですけれども、まず電力を使って水を分解して水素をつくります。こういった水素が燃料電池に使われたり製鉄に使われたり、直接燃焼したり水素発電に使われたりします。それでこの水素から、水素だけではHしか入っていないので、今のガスと同様のメタンをつくろうという取組です。
 そうすると、水素にCO2をくっつけないと駄目です。そのために、その大本のCO2が何かというのは、実は大きなポイントになってきて、せっかく水素を使っているのに、化石燃料から取ったCO2をくっつけたら、結局また使うときにCO2が出てしまうので、本当だったらなるべくこのバイオ起源のCO2をくっつけた合成燃料を使いたいところであります。
 あともう1つは、水素に窒素をくっつけてアンモニアにして、火力発電や船舶用の燃料にするといった取組。これはやっぱりアンモニアをつくる段階、また戻す段階で損失が発生しますので、あまり国内でつくるのはメリットがなくて、これは運びやすさに大きなメリットがあるので、やっぱり輸入用燃料がほぼ主体になってくるところであります。それでこちらについては輸入もあるんですけど、国内で結構つくっていきたいところであります。
 この辺りがやはり今はまだ実用化まで至っていないところでありますので、今一生懸命に実用化に向けた技術開発なり実証検証をして、30年以降は爆発的な普及を見込んでいかなきゃいけないポイントになってくるのかなと思います。
 あと最後の柱におまけ的についてきた柱ですが、ネガティブ排出対策があります。現状もある程度は期待されているものは当然森林吸収でありまして、大気中のCO2を森林が吸収するものであります。ただやっぱり、これだけを頼っていけばいいかというと、それはアメリカぐらいの国土面積がある国であれば別ですけれども、日本の国土面積からすると、なかなかこれだけではペイ、オフセットできない難しいところがあります。
 そのほかいろいろなものが技術開発されていて、1つはバイオマス発電から出たCO2を回収して地中に埋めてしまう取組だったり、大気中のCO2を直接回収してそれを地中に埋めてしまう、これができればいいんですけれども、やっぱり大気中のCO2濃度は非常に薄いので、400ppmの世界なので、それを回収するためのエネルギーは結構ばかにならないので、なかなかここまでは短期的には行けないのかなというところであります。
 そのほか、ブルーカーボンと言われている、湿地や沿岸部の再生で、大気中のCO2を生物に固定させていく取組や、バイオマスを炭化させて、それを地中に埋めてしまう取組、土地を耕すと地中の炭素が出てきちゃうので、それをやめるような取組。あと長い間の鉱物が風化して、それが大気中のCO2と結びついて、石灰石として固定させることを推進していくとか、いろいろな技術が今はオンゴーイングで研究されているところですけれども、これがあるから大丈夫といったものはないので、なるべくこれに頼らない、最後は技術開発がうまくいったらこれに頼ろうぐらいな気持ちで、この技術を見届けていければなと思っております。
 それでこういった柱を基に我々がシミュレーションしたところがありますので、簡単に御紹介させていただきたいと思います。モデルの構造なので、詳しくは御説明いたしませんけれども、端的には各部門の技術の選択によってどの程度、省エネなりエネルギー需要が発生するかを分析する技術モデル。それとともに電源モデルというのがありまして、ここがすごくこの先難しくなってきて、太陽光発電、風力発電は非常に大きなポテンシャルがあるのですけれども、どうしてもお天気任せ、風任せで気まぐれに発電されてしまうところがあるので、あれをいかにコントロールして利用していくかが問われてきます。
 ですので毎時間毎時間の需給バランスを見た上で全体感を見ていかなきゃいけない。ここがゼロカーボンの計算の中で非常に問題になってくるところです。
 それでここから部門ごとの話に移ります。家庭・業務部門の脱炭素に向けた対策の柱で、先ほどの4つの柱を具体的に家庭部門や業務部門に当てはめてみると、どういった対策がそこに当てはまるのかを書いております。
 家庭部門では、ほとんど述べたものでありますけれども、やはり社会変容という意味では住宅や建築物の高断熱化を進めていく。その中で動かす家電製品、業務機器を省エネにしていく。ZEH、ZEBといった取組がなされて、家庭内のエネルギー収支をゼロにしようという住宅がありますけれども、あの中はどうしても軀体、空調なり照明までは入っているんですが、その中に入ってくる冷蔵庫なりテレビとか、そういった家電製品、オフィスにおいてもエレベーターぐらいまでは入っていますけれども、そこに入ってくるOA機器などは入っておりませんので、やはり省エネは引き続き非常に大きなポイントにもなってきます。
 電化については、やはり電気ヒートポンプをうまく活用していく。空調なり給湯を電気ヒートポンプにしていくことが重要になろうかと思います。それで脱炭素エネルギーとしては、太陽光発電を設置するところを戸建て住宅ではやりやすいですけれども、なかなか高層建築物は難しいところがありますので、そういったところは低炭素の電力を購入するといった取組ができるのかなというところであります。
 また、将来的には水素や合成燃料をうまく使って、電化できなかったところを何とかやっていこうというところであります。
 家庭部門・業務部門の排出量といった閉じた見方では、なかなかその中の削減には直接貢献してこないんですけれども、やはり重要なポイントとしては木造住宅建築物を使うことは間接的に鉄やセメントの需要を抑えられ、それをつくるためのエネルギー、産業部門、もっと言ってしまうと鉄やセメントを使っている事業所はなかなか静岡県内にはなく、静岡県の取組にもつながらないかもしれないですが、やはり日本全体、世界全体の削減まで考えますと、この辺りが大きなポイントになってこようかというところです。
 これは国の例ですが、具体的に家庭部門だけをお見せしていますけれども、化石燃料は石油やガス、灯油や都市ガスをかなり使われているところであります。それが2050年、少し残っているのは、やっぱり残り30年間で全部を電気にするのは難しいでしょうし、先ほど私は給湯も電気ヒートポンプと申しましたけれども、電気ヒートポンプ給湯器は大きな貯湯槽、お湯をためておく槽が必要となって、今あるマンションなりアパートにおいて、ガス給湯器はこれくらいのものが添えてあるだけなので、それを熱交換器、貯湯槽に置き換えるのは難しいところが出てくるのかなと、やはりどうしてもその辺りは少し残ってしまうのかなというのがあります。
 でも残りつつも供給されるガスについては合成燃料をなるべく使ってもらいたいところもあって、2050年には水素からつくった合成燃料で、そういった給湯器が動いていることを考えております。
 用途別に見ますと、やっぱり断熱化やヒートポンプ化によって、かなり暖房、給湯といった割合が減ってきている姿になっています。
 続いて運輸部門です。運輸部門では社会変容によって、いかに業務や通勤移動を低減することができるか、コンパクトシティやICTの活用で減らすことができるか、物流をいかに効率改善していくかがポイントになってくるかと思います。
 それで省エネはそれぞれ自動車のみならず鉄道、船舶、航空、こういった機器の効率改善、電化については電気自動車、燃料電池自動車といったところ。鉄道でも非電化のところについては燃料電池車両を動かしていくこともあるのかなということであります。脱炭素エネルギーについては、先ほどの家庭と同じであります。
 また外に出してますけれども、自動車のシェアリング、自動車2台を1台に減らしたからといって、同じような需要がある限り、別に特にエネルギーは直接は減りません。だけど今まで2台持ちしていたものが1台に集約されてくるということ自体、やはり自動車製造に関わる部門のエネルギーが減ってきますので、この辺り運輸部門ではないですけれども、やはりこういった取組も運輸部門の中で考えていく必要があろうかといった取組になると思います。
 それで運輸部門はかなりドラスティックにエネルギー消費量が減ります。ほぼ今はガソリンしか使っていない。僅かに電気がありますが、これは鉄道分です。自動車についてはほとんどガソリンです。それがもう2050年にはほぼガソリンはなくなっており、電気か水素か合成燃料かといった社会になっており、やはり効率が電気自動車は非常によいですので、乗用自動車についてはかなりドラスティックにエネルギー消費ベースは減ってきます。
 最後に産業部門の脱炭素の柱であります。産業部門についてはそもそも物を使わない、物に依存しない社会自体をつくることができれば、そもそも生産に必要なエネルギーは減ってきます。それで省エネといった意味では、工業炉、ボイラーの効率改善、モーターの効率改善。あと産業の中でも製造段階でヒートポンプを使って、今までの化石燃料をたいているボイラーから、いかにこれに置き換えることができるかがポイントになってきます。
 それで脱炭素エネルギーは同様でありまして、他部門の先ほどの運輸部門の削減や、家庭部門の削減が産業部門の削減につながってくるところであります。とはいっても、やはりなかなか産業部門は高温熱の領域とかがあって、家庭や運輸に比べるとドラスティックには減らし切れてないんですけれども、それでもかなり石炭、石油、ガスといった化石燃料の割合は減っている姿になってきています。
 こういった各部門の取組を柱に応じて御説明いたしましたけれども、各部門の合計で見たエネルギー需要という意味では、かなり化石は減り電力が増え、あともう1つ新燃料の割合が増えています。
 この結果、電力需要がどうなるかというと、ここの紫のところを見ている分には、それほど大きな変化はないんですけれども、実はこの新燃料、水素をつくるところに非常に大きな電力が必要となります。
 何から水素をつくっているかというと、水を電気分解して水素をつくるので、水素をつくる際に電気がすごく必要となって、それを表しているのがこちらの図になります。
 今までの産業、業務、家庭、運輸、これらが必要とする電力量。電気自動車が普及したからといって、それによる電力のインパクトはそれほど大きくないです。水素をつくるとなると、ここにすごい電力需要が発生します。ですので、このまま今の状態では、日本全体で1兆キロワットアワーの電気を必要としているんですけれども、それが多分、1.4倍、1.5倍になる可能性があるのではないかなと思っております。では水素をやめればいいじゃないかという話かもしれないけれども、やっぱり水素がないとどうしても電化できないエネルギーには必要となってきます。
 ただ、1つあるのは、太陽光発電、風力発電といったものがたくさんできてくると、どうしても暴れますので、余っている時間帯が結構出てきます。今は例えば九州電力で必要以上に太陽光が発電してしまった時点では、出力抑制で捨てています。この先もっともっと増えていくとそういうことが起こるんですけれども、その余っている時間をうまく活用して水素製造に回すところがポイントになってこようかと思います。
 それでここから発電の話に変わっていきますけれども、発電のポテンシャルは非常に大きくありまして、環境省の調べでは経済性を考慮した導入ポテンシャルでも、今は1兆キロワットアワーの需要がありますけれども、例えばそれが1.5倍になっても賄い切れる、2兆6,000ぐらいのポテンシャルがあるという推計もなされているところでありますので、ここら辺は組合せ次第かなというところであります。
 環境省で都道府県別にどの程度のポテンシャルがあるかを住宅用太陽光、公共系等太陽光、陸上風力、洋上風力、それぞれありますので、比較的静岡県は太陽光については立地条件もよく、他県に比べますと比較的あるほうなのかなと見て取れるかと思います。
 発電のコストも国でいろいろ検証しておりまして、太陽光発電について、今までの計算がどんどん安くなってきておりまして、火力発電に勝てない時代があったんですけど、今や安さでいったら太陽光発電は火力発電をかなり下回る安さまで、30年時点でも見通せてきているところでありまして、世界的に最も安い発電は太陽光と位置づけられるところまで来ています。
 それで、この発電の難しさのポイントを書いております。今の発電はガス火力が全体の調整をしています。石炭や原子力、水力がベースになり、再エネが暴れているところをガス火力がうまく補って、電力需要にうまくマッチするように調整してます。
 ところが将来、天気がいいとき、風況がいいときは再エネが増える。でも夜になると太陽は照らないので発電量は低くなってしまうなど、すごく暴れ出します。それに対して電力需要が貼りついている中で、いろんな対策、今までになかった対策をいろいろと講じていかなければ、この需要のマッチはなされなくなってきます。
 今まで揚水発電とか火力発電をうまく利用して対応していただけでよかったんですけど、今後は蓄電池、水素を使ったり、あと企業でも工場の操業時間や事務所の時間みたいなものは、場合によってはちょっと考えなければいけないことが出てくるかもしれないですし、いろいろ普及してきた電気自動車、電気ヒートポンプ給湯器をうまく活用して電力需要を変化させていく取組も必要になってきます。あと人々においても天気のいい日、天気の悪い日も意識しながら、ライフスタイルを考えていく取組も出てくるのかなというところであります。
 それで発電については、ほぼ再エネが大きな割合を占めてくる姿になります。それで風力、太陽光が主体の姿になってきます。そのほかCO2以外のものについてもいろいろ取組がなされなければならず、農業部門の対策、廃棄物の対策なども重要になってきておるところであります。
 こういった組合せによってどういう結果になったかというと、ちょっと時間がありませんので右側だけで説明させていただきます。
 1割ぐらい温室効果ガスが出てしまいます。出たCO2を地下に埋める、そういったいろんな取組をしても、どうしても今の1割ぐらいは温室効果ガスが出てしまう計算になります。だから9割減が限界かなというところであります。
 ですのでそれをオフセットするためにも、森林吸収やバイオマス発電で出たCO2を地下に埋めるとか、先ほどいろいろあったマイナスの排出対策技術ですが、まだまだ研究開発途上でありますけれども、そういったものをうまく活用してオフセットしていくことが必要になってくる姿になっています。
 では莫大な投資額が必要かというと、我々の計算では年当たり2040年から50年で10兆円ぐらいが必要になります。10兆円は非常に高い金額でありますが、その分、実は化石燃料の輸入額も大きく減ってきて、2050年をスポットで見ますと、今より10兆円ぐらい減る可能性も出てきますので、そういった取組だけでもある程度ペイはできてくるというところであります。
 時間が押してきましたけれども、今話させていただいた脱炭素を実現するための政策の方向性について、4点お話しさせていただきます。それで全てとは思っていないですけれども、重要なポイントでありまして、そのポイントを御説明させていただきます。
 柱で4つ話しましたけれども、社会変容――社会自体を変えて脱炭素社会を実現する可能性を向上させるといったところであります。
 先ほど断熱材を入れる、自動車に乗らないようなまちづくりをする、ICTを活用してなるべく自動車依存を減らしていくみたいな、社会を変えていく取組は、実は定量的に見ると全体の削減量は、やはり再生可能エネルギーに頼るところが大きくて、それに比べると正直少ないです。イメージとしてはここが技術による効果だとすると、社会変容の効果はこれぐらいのボリューム感かなと思います。
 それで今までのような3割減らしましょう、4割減らしましょうという目標であれば、大きいところから順番にやって、やっぱり費用対効果がいいところが重要ですよねという話になるんですけれども、ゼロにしなければいけないとなってくると、最後に残る難しいところ、お金のかかるところ、技術開発が現時点では十分でないところがやはり非常に難しくなってきて、それが残ってしまう可能性があります。
 それを和らげるために、ここが非常に効いてきます。これは技術の普及段階を書いてありますけれども、太陽光や電気ヒートポンプ給湯器、電気自動車はまだまだ普及していませんが、それでも既に普及段階にあるといっていいかと思います。
 こっちにあるものがもっと難しくて、鉄を水素でつくりましょうとか、貨物の電気自動車、新燃料をつくるだけではなくて輸入してきましょうとか、CO2を地下に埋めましょう、こういったものは非常にまだまだ開発段階で、不確実性が高いところであります。
 こういった不確実性が高いところに対しての依存をいかに減らしていくかといった意味で、脱炭素技術の依存を低減するために、シェアリングやインフラの長寿命化により鉄やセメントの需要を減らす、オンライン会議によって航空利用を低減させる、住宅の断熱化で暖房需要を減らしていくなどの取組が、結局難しいところに非常に効いてきます。鉄やセメント、こういったものの革新的技術はまだまだ難しいですし、航空を減らすと、航空はやっぱり水素を使ったり、バイオマスを使うところになってきますので、その辺りも需要を減らします。あと住宅断熱は直接的にエネルギーを減らすだけではなくて、先ほどのこの非常に暴れていく中で、何が難しいかというと、実は冬の寒い日の朝がポイントになってくる可能性がある。というのは冬ですので、静岡県はそんなことないですけれども、日本全体を見るとやはり雪が積もっているところがあったりして、太陽光の状態がよくない日が続く可能性があって、しかも朝ですので、まだ太陽が出てくる前で電力需要がすごく必要となるタイミングの可能性がある。
 でも暖かい家に住んで、断熱性がしっかりした住宅に住んでいれば電力需要は抑えられます。といったところが結局は系統安定化につながってくる副次効果もあります。そういったところを和らげる意味でも、今後は非常に社会変容の取組が重要になってきます。
 次に、早めに取り組まなきゃいけないところであります。まだ2050年は先だよね、2030年はいいよねという話ではなくて、地球全体からするとCO2が大気中に積もっていくので、途中の経路も重要ですけれども、それだけではなくて、早めにしないと2050年に間に合わないよという話があります。
 電気自動車は、とかく最後は何%普及しているかという保有ベースの話に行きがちなんですけれども、やはり販売ベースでどれくらい普及していくかが最後につながってきます。
 今はほとんど販売ベースはゼロに近いですけれども、それをいかにここ何年かで持ち上げていくかであります。2035年ぐらいから2040年までに販売ベースで100%まで持ち上げられれば、何とか2050年にはほぼ100%ぐらいまでたどり着けますねと。これをのんびりと2050年に販売ベースで100に持っていけばいいよねなんていうペースでやっていると、やはり8割ぐらいまでしか届かないことになります。
 あと住宅の断熱材ですが、当然自動車の比じゃないくらい住宅は寿命が長いですので、今から2030年に向けて、ZEHは今これぐらいの普及ですけれども、一気に2030年に持ち上げたとしても、2050年は4割ぐらいの普及にとどまってしまいます。2030年に、販売ベースで100に持ち上げるのはすごく大変ですけれども、そこまでやっても4割しかいかないのがポイントになってこようかと思いますので、とにかく早急に。
 それで先ほどの電気ヒートポンプ給湯器ですが、戸建て住宅に極端なことをいうと義務化ぐらいまでして、電気ヒートポンプ給湯器の普及率は見えてくるかと思いますので、とにかく早めに早めに手を打ち、特にこういう一般の消費者が買うような商品については、早め早めに手を打たないとゼロに達しない、もしくは寿命の途中で取り替えてくださいといったことを強いることになってしまいます。
 あと2つですが、地域を越えた取組です。ものによっては県内に効果をもたらさない取組が出てくると思うんです。途中でもお話しさせていただきましたけれども、シェアリングとかインフラ寿命といったものは必ずしも鉄やセメントの製造業を抱えていない静岡県内においては、なかなか直接的に排出削減につながらないことがあります。ほかのところに発生してしまう、効果が出てくるところはあるかと思います。
 また静岡県の豊富な森林資源や紙パルプ産業との連携で、こういう脱炭素マテリアルを生産して、それを普及させていく取組が、もちろん県内でもこういう効果も出ますけれども、日本全国で取り組んだとしても、県内の削減にはつながらないかもしれないです。でもそれは他県、日本全体の削減には当然寄与してきますので、こういったところも積極的に取り組んでいただければなと思います。
 また、脱炭素エネルギーの生産についても静岡県で生まれた脱炭素のエネルギーを他県にうまく融通することで、他県の削減にも寄与できますし、また県によっては非常に条件がよくない県は当然たくさんあります。そういった企業をうまく誘致して、日本全体で経済活動を維持しつつ脱炭素化につなげていく取組ができればなと思います。
 あと最後なんですけれども、個人の取組です。いろいろ話を聞いていると話は分かる。地球規模で大変だから話は分かるんだけど、私たちは何をやったらいいのか、もうやることはやってきているという話をよく聞きます。
 それは今までの個人の取組の枠を自ら狭めて考えてしまっている面があるのかなと思います。ですのでここに書いていますけれども、従前の心がけ対策を超えた個人の取組が必要になってくると考えています。
 それでこの星をつけたところ、これは比較的今までの普及キャンペーンでもいろいろ言ってきた、国でもチーム・マイナス6%から始まって、いろいろ普及してきた対策であります。
 無駄遣い、無駄な電気の消費はやめましょう、小まめにスイッチを消しましょうとか、省エネ家電を買いましょう、徒歩を活用しましょう、いい自動車に乗りましょうと言ってきたかと思いますけれども、これを超えて太陽光発電、高断熱の住宅を選択しましょう、脱炭素な電気を購入しましょう。こういったことにはお金がかかるから、これは困りますという話もあるんですが、それも超えて、今度はさらに脱炭素な企業を選択する。商品を買う場合、自分の資産を運用する場合、そういったときにもこういった企業を選択することまで目を向けていただきたいですし、シェアリングや製品の長期な利用、食ロス、電気自動車や給湯器を買ったらそれをうまく蓄電して、地域全体として脱炭素のエネルギーの中の消費者だけではなくて、自ら電気を融通する供給側の取組にもなってほしいです。というところでも脱炭素電力の供給があります。最終的には、脱炭素なまちづくりの担い手、そういったものに積極的に参加していただきたいところであります。
 個人の取組を今までの規制の枠にとらわれずとはいっても、例えば高断熱住宅の選択といって、新たに建てるのではなくて、例えば賃貸で借りようとしたときにどれが高断熱の住まいなのか、そうじゃないのかというのは不動産屋に行ってもなかなかそういった指標がないとか、製品を買うごとにこの企業はどうなのかとか、この製品はどうなのかという情報がない。それは我々研究者もそういったプラットフォームを提案できていませんし、国もそういった政策ができていないという問題はあります。やっぱりこの辺りは今後クリアにして、もっと国民の皆さん、県民の皆さんが脱炭素社会づくりに貢献できるようなことを考えていかなければならないと思っております。

○鈴木(澄)委員長
 ありがとうございました。
 日比野様からの説明は以上でございますが、これから質疑に入ろうと思います。
 委員の方にお願いしたいと思います。
 質問はまとめてするのではなく、一問一答方式でお願いしたいと思います。
 それから、今から大体40分ほどの時間で収めたいなと思っておりますが、できるだけ多くの委員の皆さんに御発言を求めたいと思いますので、そこも御配慮いただきながら、少しお時間のほうをコントロールさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
 それでは、御質問・御意見等がありましたら、御発言願います。

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