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委員会会議録

委員会補足文書

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平成25年10月富士山保全・活用特別委員会
参考人の意見陳述 一般財団法人静岡経済研究所 主席研究員 塩野敏晴氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/11/2013 会派名:


○塩野敏晴氏
 静岡経済研究所の塩野でございます。本日は、よろしくお願いいたします。
 それでは、きょうのテーマですけれども、「富士山の世界文化遺産への登録効果とその意義」ということでお話をさせていただきます。
 お手元の資料に、A4横の資料がありますけれども、これは本日、プロジェクターで投影する資料と同じものでございますので、数字等細かいところはこちらのほうをごらんいただいたほうが、あるいはいいかもしれません。
 それから、あとA4の縦長の資料がありますけれども、これは本日、発表のテーマとなりましたベースになるものが、手前どものSERIマンスリーという雑誌があるのですけれども、そちらの特集記事として掲載したものでございます。そちらのほうがより詳しいデータが載っておりますので、後ほど参照していただきたいと思います。
 それから、別途、「調査研究の概要」という冊子を配付させていただきました。これは、当静岡経済研究所の紹介を兼ねまして、最近こういった調査研究を行っておりますので、また御参考にしていただきまして、興味がある調査結果等ありましたら、御照会いただければと思います。
 それでは、本題のほうに入らせていただきます。
 今回の調査ですけれども、アンケートをベースにしております。アンケートの概要ですけれども、2ページ一番下にありますとおり、静岡経済研究所と山梨県に山梨中銀経営コンサルティングというコンサルタントがございます。これはどのようなところかと言いますと、山梨県に山梨中央銀行という地銀があるのですけれども、そちらの系列のシンクタンクでございます。つまり、静岡県における我々と同じ、山梨県における同業者というような形になります。
 アンケートが@からBまで3つありますけれども、集客施設、それから企業、それから個人ということで行いました。
 集客施設につきましては、富士山周辺の宿泊施設や観光施設、土産物店、飲食店などで、対象地域、今回、富士山周辺地域ということで、静岡県のほうはこちらにございますように、富士市から清水町まで9市町プラス静岡市の一部ということで対象にしております。
 企業につきましては、静岡県、山梨県に拠点がある事業所ということで、ほとんど静岡県で言えば静岡県内企業ということになるのですけれども、一部、県外の企業も含まれているということで、どういうことかと言いますと、我々が発行しております静岡県会社要覧というのがあるのですけれども、そちらのほうをリストとして使いました。
 その会社要覧には、一応、静岡県を営業基盤とする企業ということで掲載しているのですけれども、一部、県外に本社のある企業も含まれております。多くは、もともとは静岡県にあって、本社機能を東京に移したとか、あるいは静岡県内に複数の営業拠点があって、それを統括する本社機能が大阪にあったり、愛知にあったりというような企業が主です。
 エリアで言えば、東京から大阪まで、実は手前ども母体銀行の静岡銀行の営業店の配置とも重なっているのですけれども、そのエリアを対象とする企業に発送したということです。
 本来でしたら、静岡県内企業だけを対象にしようと思ったのですけれども、外部の方の意見も参考にしたいと思ってそういう形を取りました。
 個人というのは、企業に対して発送して、個人用を同封しておいて、従業員、またはその家族の方に回答していただいているということです。
 ですから、所在地ということでいえば、その企業に通勤できる範囲の人ということで、首都圏から西は兵庫県あたりまでということになります。
 調査時期は8月ということで、発送と、それから回答の状況でこのように一覧表にさせていただきました。
 全体的に、山梨のほうが少し回答率が高くなっているのですけれども、これはアンケートのとり方の違いによるものでして、うちの静岡県側のほうは全て郵送で送って郵送で返送してもらうという方法を取ったのですけれども、山梨側のほうは母体銀行である山梨中央銀行の営業店の協力を得て手渡しでお渡しして、また同じようにして回収したということで、ある程度、対象を絞り込んで確実に回収できる方法を取ったということでこのような回答率の違いになっております。
 早速、結果のほうを簡単に説明させていただきます。
 まず、3ページ集客施設のアンケートで、ことしの7月、8月、この2カ月間の観光客の動向がどうだったかというところで、一番多いのが真ん中です、前年並みというのが一番多かったわけです。左から、増加した、1割前後、2割前後。右側にいってマイナスの1割、2割となっていますけれども、全体的に若干左から右に押しているということで、増加したほうが少し多かったということで、一応、文化遺産登録後の増加という効果は見込めたということです。
 一方で、客単価ですね、これはお客さんがどれぐらい使ったかということですけれども、こちらのほうはもうほとんど6割以上が前年並み、しかも、ほぼど真ん中に位置しているということは、あまり客単価の増加は見込めなかったということになります。
 具体的に、数字で計算してみたのですけれども、単純に回答率、1割前後はプラス10%、マイナス1割はマイナス10%という数字を回答率で加重平均を取って計算したところが、静岡県に関していえば、利用者数はプラス3%、微増という表現をさせていただきました。客単価はほぼ横ばいです。プラス0.3%、辛うじて増加したというところです。山梨側はどうも左のほうに押していますので、客単価は少しマイナスだったようです。
 次の4ページに行きまして、集客施設の取り組みで、ことしの6月に文化遺産登録が決定しましたけれども、それを受けて何かやったかと、どのようなことをやったかということで、実はこれ、何もしていないというのが静岡県、山梨県ともに4割前後ということで一番多かったということです。
 何かやったという中では、新商品や新サービスをつくった、静岡県では32%。それから、のぼり旗やポスターを掲げるというのが27.5%ということで、このあたりのほうが多い取り組みだったということです。
 静岡県と山梨県で差が出たのが勉強というところです、富士山について勉強を始めた。世界文化遺産の勉強を始めた。こちらのほうは山梨県のほうがかなり10ポイント近く多い回答率になっています。山梨県のほうが構成資産が多くて、しかも勉強する必要があるような難しいところもあったというのがあるとは思うのですけれども、山梨県のほうが意欲的であったと。
 山梨県のほうが意欲的というのが、実はアンケートの中、随所に出てきますので、また追って説明させていただきます。
 次の5ページからは、企業あるいは個人の意識調査ということです。
 まず、世界文化遺産に登録されたこと自体をどのように捉えているかということで、好ましいというのが7割弱、どちらかといえばというのまで加えると、もう9割方は好意的に受けとめているということです。
 企業、個人、同じ質問をしているのですけれども、企業、個人の別なく個人については出身地別ということでクロス集計しましたけれども、地域の別なく大体おおむね好意的であると。
 どういう意味で好意的か、その理由を聞いたところ、図表は省略させていただいたのですけれども、企業に関しては、地域への経済効果が期待できるからというのが、静岡、山梨余り差がなく5割以上の回答で一番高かったと。
 一方、個人については、地元や日本の象徴だから単純にうれしいというような、そういうような結果、どちらかというと、広域的な観点から歓迎しているということです。
 企業にとって、「地域への」というのがみそなのですけれども、自社のビジネスチャンスにつながるといったような、そういう回答というのは実は少なかったということです。
 個人のほうでも、自分が勤めている会社の利益につながるとか、地域の経済効果につながるというような回答はどちらかというと少なかったということです。
 ただ、強いて言えば、個人の勤務先や地域への経済効果につながるというのは、実は山梨のほうが若干高くて、これが静岡県の単純にうれしいというのが45%だったのですけれど、山梨県のほうは勤務先の経済効果につながるということで歓迎しているのが30%で一番多かったということで、やはり山梨県のほうが商売気があるというような、そういう結果が見られております。
 それから、次6ページへいきまして、ビジネス面での富士山の利用ということで、今現在、富士山を、これは企業に対するアンケートですけれども、何らかの形で利用しているかという質問に対しては、これも実を言うと、アンケートの選択肢の一番最後に「特にない」というのを設けておりまして、こちらが実は静岡、山梨とも66%ということは、3分の2は「特にない」ということで、何か利用しているというのは3分の1だったということです。
 その3分の1がどういう形で利用しているかというのが、ここのグラフですけれども、企業、社報や会社紹介パンフレットにイメージ写真、イラストとして利用しているというのが一番多かったと。
 あとは、山梨県のほうで若干多かったのですけれども、商品サービスとして直接利用している。直接利用というのは、つまり富士山の観光業を商品にしているとか、あるいは富士山の形のお菓子とか、富士山サブレのようなそういう直接利用というのが、静岡県で7.9%、山梨県では13.1%ということです。それから今後利用する可能性がある、今は利用していないけれども今後利用する可能性があると回答したのが、ごらんのとおり山梨県のほうがかなり意識が高くなっているということで、社報や会社の紹介パンフレットあるいはロゴ、マークや社員の名刺等に入れるというような、こちらのほうでも山梨県のほうが、何か利用してやろうという意識は高く見られたという結果になっております。
 それから続きまして、7ページ富士山の存在意義ということです。これは個人に対して質問しました。その質問というのが、あなたにとって富士山とはどのような存在ですかという質問もしました。返ってきた、選択肢がこのグラフの真ん中、こういったような選択肢で、地域の誇りや象徴である、姿を見ることが楽しみである、以下観光・レジャーの対象、災害が怖い、信仰の対象、こういったようなものを選択肢という方式でしたのですけれども、結果はもうほぼ二分されたと。地域の誇り・象徴であるというのと姿を見ることが楽しみであるというのが2つ、2大回答ということになりました。
 この2つの回答をさらに出身地別、個人回答者の出身地別で比較してみたところ地域によって大きな差が出ました。地域の誇り・象徴であると回答したのは、こちらの静岡県の東部、静岡県の中でも地元が58.6%、一番高かったのが山梨県で64%、やはり地元で誇りや象徴と回答した人が高い比率だったと。一方で、これらの2つの地域では姿を見ることが楽しみというのは2割前後しかいなくて、比較的少ない、比較的というかかなり少ない結果になっています。
 一方で、姿を見ることが楽しみであると回答した人を出身地別に見ると、一番高かったのが北海道、東北で65%、以下近畿以西、こちらがやはり6割前後で高くなっているということ。つまりは富士山が見えない地域の出身地で高い。同じ県外でも関東とか東海、比較的近場の人は地元に比べれば高いですけれども、比較的低目で、こういった遠くのところで姿を見ることが楽しみということで、これは出身地別で非常に意識の違いがあらわれたということです。
 1つ考慮に入れておいていただきたいのが、これらの県外の出身者ですけれども、その人たちは今現在どこに住んでいるかというと、これはアンケートの対象はほとんど静岡県内、山梨県内でとっていますので、今現在はこれらの人たちは富士山が見える地域に住んでいる人がほとんどであろうということです。つまりどういうことかというと、社会人になって静岡県外の企業、山梨県外の企業に就職した、あるいは東京に本社のある企業で今現在静岡県内の支店に勤務しているとか、そういうケースが多いと思うのですけれども、そういうふうに、これで考えるとやはり富士山が見えるところで生まれ育って当たり前のように見て育った人たちと、そうではなくて成人してから富士山が見える環境になった人との意識の違いというのがここで言えるのではないかということです。
 次8ページへ行きまして、これも個人の回答者の方に聞いたのですけれども、富士山の登山経験について聞きました。全体的に富士山の山頂まで登ったことがあるというのが3割前後です。静岡県の出身の方が34%ということで一番高くて、意外に多いなあという感じがします。5合目までということでいいますと山梨県の方のほうが多いわけでして、5合目までを加えると、かなりの7割、8割ぐらいの人は少なくとも5合目ぐらいまでは行ったことがあるということです。
 今後の富士山観光について最も興味があるものを選んでくださいということで、選択肢はこのようになっていまして、これは実は一番上が山頂です。下へ行くほどだんだん周りに広がっていくようなアンケートの設計にしていますけれど、5合目それから構成資産、きれいに見える場所、周辺観光地という形で、一番人気はやはり山頂までの登山というのが、どの出身地の方も一番多かったということで、根強い人気があるということです。
 2番目が、これが出身地別に見たところが若干差が出たということで、静岡県出身の方はこの周辺の温泉地・観光地への訪問が一番興味がある。山梨県の方は構成資産が一番興味がある。県外出身の方はきれいに見える場所が、先ほども見るということに対して意識が高かったのですけれども、県外出身の方はきれいに見える場所ということです。
 これが富士山の登山経験別にクロス集計をしたのがこの右側でして、これで山頂までの登山に一番興味があると回答したのが5合目までの登山経験がある人が一番高かったっていうのは、これはそうであろうというのは想像がつくわけですけども、一方で山頂までの登山経験がある方でもやはり山頂までの登山に一番興味があるのだというのが21%ということで、これはかなりの比率になるのではないかということで、1回登ったけど、またやはりもう1回行きたいっていう方が結構多いということです。それだけリピート性も高いということが言えると思います。
 一方で、特徴が一番登山経験で出たのがここの部分です。構成資産で実は富士山の登山経験がある、山頂までの登山経験があるという方で一番回答率が高かったのがこの部分です。構成資産で23.5%、次いで富士山がきれいに見える場所とあるのですけれども、やはり山頂まで登った人は次には構成資産に目を向けるという傾向がうかがわれます。一方で登山経験のない人は構成資産に余り興味を示していないです。ですからやはり富士山というのは非常にリピート性のある集客力の高い観光アイテムと言うこともできるのではないかと。山頂に1回登った人は山頂にも登りたいし、次には構成資産にも目を向けるというような、そういう傾向が見てとれます。
 次9ページへ行きまして、富士山の文化遺産の登録効果ということで、文化遺産の登録を受けてどのような効果があったかというのをできるだけ数量的、計量的に試算をしてみたいということで試みたのがこの部分ですけれども、3つに分けて考えました。まず1つが経済波及効果、これは一番簡単にわかりやすいのですけれども、つまり富士山が世界文化遺産に登録されたことで観光客がまず増加すると。そして、消費単価も上昇する。つまり世界遺産、ブランドがそれだけついたということで、いつも以上にお金を使ってくれる。これはアンケートでは余り出なかったのですけれども、この2つの効果が考えられるということです。これは経済波及効果ですので、実際のマーケットに反映される効果であるということです。
 2番目に潜在的景観価値の上昇ということで、これは実際のマーケットには反映されない部分でありますけれども、価格的には同じだけども文化遺産に登録されたことで以前より価値が上がる、価値観、感覚的に上がる、満足度が上がる、高級感が高まると。これを金額で換算してみようということを今回やっております。
 それから、これは観光という上での価値ですけれど、3番目が文化遺産に登録されたこと自体を評価する、価値があると。これは先ほどの意識のところでも象徴として評価している、日本の象徴だからうれしいというようなこともありましたけれども、別に観光もしないし経済的にも何も変わらないけれども、登録されたこと自体が非常に評価する、うれしい、金銭的にお金にはかえられないけれど、お金にかえたら幾らになるかということを今回やっております。
 順を追って説明しますけれども、10ページまず経済波及効果です。富士山が世界文化遺産に登録されたことに対する経済波及効果、これは1つ注意しなければいけないのは、この富士山というのは別に登録されたから経済波及効果、それでふえるというのがあるのですけれど、登録される前から経済波及効果というのは生み出しているわけです。富士山というのは有数の観光地ですので、観光客がたくさん訪れてお金を落としていくという経済波及効果が発生している。それが登録によってどう変わったかということなのです。
 登録前の経済波及効果がどうだったかというのもまず試算しています。それがこの表の左の部分です。どのように計算したかといいますと、まず観光客数、これは2390万人、年間で訪れているというふうに試算しました。ベースになった数字というのは、県で公表しております観光交流客数です。対象となった地域が先ほどと同じですけれども、沼津市以下9市町プラス静岡市は三保松原だけを加えてありますけれども、これらの地域の観光交流客数で、対象が直近の観光交流客数、平成23年度まで公表されておりますけれども、年によるばらつきも考慮いたしまして、21年度からの3年分の平均値をとっております。
 この観光交流客数なのですけれども、県が公表している数字は宿泊客数と観光レクリエーション客数と2つありますけれども、実はこれは2つとも延べ人数です。つまり宿泊客数というのは延べ宿泊人数で、観光レクリエーション客数というのは、対象となる観光施設というのが幾つかあって、それの入り込み客数を足し込んだものです。ということはどういうことかといいますと、1人の旅行者が2泊の旅行で3カ所の施設に立ち寄ったということになりますと、5人分カウントされている数字であるということになるわけです。ですからそれを実人数に換算するという作業を行っております。どうやって換算したかという、使ったデータがこの観光流動実態調査、これは同じ県で出しているのですけれども、アンケート調査です。この中で旅行者の平均宿泊日数とか平均立ち寄り施設数とかありますので、それを使って延べ人数を実人数に換算するという作業を行って、その結果がこの富士山周辺地域で年間の観光客数2390万人であるということです。
 これらの人たちが消費支出をするわけですけれども、それがこの費目のもとになった消費単価というのもこの観光流動実態調査です。アンケートで1人1回当たりの旅行で幾ら使っているかという数字がありますので、それを掛けてやった結果がこの消費支出額の計、合計すると1537億円、年間消費支出が発生していると。それで、その下が経済波及効果になるのですけれども、この直接効果というのがありますけれども、直接効果が何かといいますと、この消費支出額、お客さんがそれだけ消費したと、その消費したものを県内産業が売上額として受け取ったのが直接効果になるわけです。
 これらは県内における消費ですから、本来は全て県内産業の売り上げということになるのですけれども、そうではない部分が若干あるというのがこの部分です、買い物・土産です。例えばお客さんが1,000円のおまんじゅうを買いましたといった場合に、まずその1,000円分のおまんじゅうの誰がその売り上げとして受け取るかというときに、それは商店から買っているわけですけれども、それをその商店に納入した製造業者というのがいるわけです。それをまず割り振っているわけです。例えば1,000円のうち400円が商業者の取り分だと。その400円については県内の商業者の売り上げになるけれども、残りの600円については県内でつくられたとは限らない。県外の製造者がつくって、それが県内に流通してきて売られてる、チョコレートみたいな流通商品はそうだと思うのですけれども、そういう県内自給率という数字が産業連関表という統計にあるのですけれども、それを使って統計的に処理したところが真水部分です。この商品のうちの県内産業の売り上げに直結した部分というのが1233億円になるということです。それだけ県内産業の売り上げがふえますと、取引関係を通じてさらに原材料の需要が発生して、さらにその先の原材料ということで、この産業間の取引関係を通じてほかの産業に波及していくわけです。波及した先ではさらに従業者さんに給料というのが発生しますから、それがまたさらに消費に回ってというのがこの2次波及ということになるのですけれども、これは産業連関分析で計算して、経済波及効果、これが1891億、これがこの富士山の観光客による消費指数がもたらした県内産業の生産額の合計、経済波及効果ということになるわけです。
 これが世界文化遺産に登録前の平均的な形なのですけれども、登録によってどう変わったか。まず観光客数が先ほどのアンケートで3%増。これは7月、8月を対象とするアンケートでしたけれど、仮にこれが1年間続いたと仮定しています。消費単価についても0.3%ふえたと。消費単価ですから交通費だけは外しましたけれども、ほかの費目については0.3%増加した。これが世界文化遺産登録後の経済波及効果、年間で換算すると、同じやり方で計算したところが観光客数が2462万人になると。経済波及効果は1952億円になるということで、差額をとりまして61億円の増加になったということです。
 これをどう評価するかということですけれども、61億円もあったという見方もできるかもしれませんけれども、もとが1891億ですから、ベースがこの数字ですから結局3.何%かの増加になるのですけれども、もとのボリュームを考えると微増という表現をさせていただきました。
 その要因としてはこういうことが考えられるのではないか。もともと登山客自体はもう飽和状態に近くて、ふえる余地がなかったわけです。周辺の観光施設についても、これは山梨側の分析でそういう分析をしていたのですけれども、この7月、8月というのはもともとがトップシーズンですので、富士五湖あたりの宿泊施設はもう満室状態で、増加する余地がそんなになかったというのがそもそもあったということです。
 ことしに関しては文化遺産に登録された直後ということで、観光客もふえるだろうというのを観光客側で察知して混雑を回避したというのもあろうかと。特に弾丸登山はやめましょうという自粛の働きかけもありましたし、特に山梨側の登山ルートはマイカー規制が強化されて登山者数自体は減ってるというデータもありますので、その辺も影響したのかなと。あと猛暑だったとかガソリンが上がったとか、あるいはこれはアンケートでもあったのですけれども、施設側もそんなに積極的な受け入れ態勢をしなかったというのと、あと間に合わなかったというのもあると思うのですけれども、決定がもう6月二十何日かでしたから、そこからすぐ対応というのは難しかったというのもあるかもしれませんけども、経済波及効果はこういう結果になったと。
 ただ経済波及効果だけではないだろうということで考えたのが、次11ページのこの景観価値の上昇効果です。これは経済的には市場価格とかは全然変わっていないけれども、文化遺産に登録されたことで、ことしについてはいつも以上にひとしおよかったというようなことです。これはアンケートで聞いたのですけれども、どういうアンケートだったかといいますと、ことし富士山が世界文化遺産に登録されましたけれども、あなたは登録されたことでどのように価値が上昇したかと感じますか。例えば同じ宿泊飲食、同じ1万円だったとしても、ことしは登録されたということでひときわ富士山がきれいに見えるとかで1万2000円ぐらいの価値があると感じた場合には20%と書いてくださいというような、そういう形で記入してもらったのですけれども、3つ項目、宿泊施設と飲食施設と展望施設、富士山がよく見えるという条件で答えてもらった結果がそれぞれ15%から20%、ことしについては価値が増加したということです。
 これを先ほどの経済波及効果のベースになった宿泊費、飲食費、入場料、これに掛けてやったところを金額であらわすと、合計すると104億ということで、実際に発生してないバーチャルな価格ですけども、104億円分の景観価値が上昇したという形になったわけです。
 もう1つが12ページ、これが世界文化遺産として登録自体に対する価値の評価ということで、これもアンケートをベースにしています。先ほどの一番最初のは実際に行動をとった経済波及効果、2番目はマーケットの大きさは変わらないけれども、観光客が富士山を見たときに感じる価値観としてはかったのが先ほどの2番目、今回のものは別に旅行もしないし富士山も見ないけれども、文化遺産に登録されたこと自体をどう評価するかということです。
つまり象徴として世界に認められてうれしいというのをどう評価するかなのですけれども、これは仮想評価法という公共財の費用便益のときにとる手法ですけれども、仮想評価法というのをとっていまして、アンケートで聞くわけです。下に説明しましたけれども、どういう聞き方をしたかといいますと、ことし富士山が世界文化遺産に登録されましたと、仮にこの世界文化遺産の登録を維持するために国民の負担が必要であるとしたならば、あなたの世帯では1年間幾ら払いますかという質問をしたのです。そうして集計した結果が静岡県の世帯で3,000円ちょっと、山梨県のほうが高くて4,000円ぐらい。両県以外ですとちょっと安目になるわけですけども、それぞれ結構いい値段をつけてくれたなという感じがするのですけれども、それぐらいだったら払ってもいいよ。これは富士山そのものの価値ではなくて、あくまでも文化遺産の登録を維持するための評価額なのです。それぞれを世帯数で掛けてやったところが静岡県については43億円、山梨県13億円、両県以外は全部45都道府県全て当てはめたとすると1197億円っていうことで、日本全国で考えると1254億円の評価額になったということです。
つまりは世界文化遺産の登録、それ自体経済的には何の価値もないもので、別にユネスコからお金が来るわけでも何でもないのですけれども、この登録というブランド、例えばお金を出して買うとしたら幾らの値がつくかという数字だと思うのです。それが日本全国でいうと年間1254億円、これぐらいの評価をしていると、価値があるものだという結果になったということです。
 それらの結果も受けた上で最後、今後の富士山のあり方ということですけれども、これも実はアンケートをもとにしていまして、アンケートの一番最後14ページをごらんいただきたいのですけれども、今後の富士山のあり方についてあなたはどう思いますか、これは企業と個人と両方聞いています。似たような回答結果になりましたので個人のほうだけ掲載していますけれども、やはり一番多かったのが一番上、入山規制等により登山者数を制限し、環境保全を最優先する。これがやはり一番ということで、環境保全が一番最優先であるということです。
そのためにことしは1,000円の入山料というのを試験的に行ったわけですけども、これについて聞いた結果も妥当であるがもう5割以上で、いや、1,000円では安過ぎるという人を加えますともう8割以上の人は1,000円以上は取ってしかるべきであるというふうに回答しているということで、それだけ環境保全に対する意識が高いということになるわけです。
 それでは富士山の本体のほうは環境保全を最優先するとして、では、文化遺産になってふえていく観光客についてはどうするかということですけれども、これはやはり景勝地など周辺地域に誘致するのが一番いいであろう、これもアンケートでは3番目、いずれの地域も17%前後の回答率があったのですけれども、周辺地域に誘致するということです。
特にこれは先ほどのアンケート結果でありましたけれども、県外出身者は非常に富士山を見るということを強く意識しているわけです。ということはアンケートで県外出身者といっても多分静岡県、山梨県に近いところの県外出身者が多かったと思うのですけれど、45都道府県で考えてもそうだと思うのですけれども、やはり県外の人は見るということに対して非常に特別な思いというのがあると思うのです。
これは実は富士山を見て生まれ育った、当たり前のように見ていた人には余りわからない感情かもしれないです。ということは、もっと穴場的なビュースポットみたいなものがあると思うのですけれど、そういうところももっと誘致する余地があるのではないかということです。多分地元の人の感覚でいうと、確かに富士山はきれいに見えるけれど別にこんなところ何もないよと言っている場所が、県外の人にとってみたらそれがいいんだよということになるという可能性もあるわけです。
 ただ、そこでお金を使わせるにはまた別の考え方も必要かもしれません。ということで、集客施設側にも関連商品のマーケティング、それから冬季の需要創出です。特に見るっていうことになりますと、富士山は登山シーズンはもう夏だけで終わってしまうわけなのですけれど、見ることに関していうと冬場がベストシーズンということになるわけですので、冬場の見る観光、これをもっと需要を創出する工夫をしてはどうかということです。
 あともう1つが構成資産です。これは富士山に関していえば未利用資源ということにもなると思うのですけれども、知られていないというのは現状としてあると思うのです。余り観光の対象としてアンケート結果からも高い意識はされていなかったようですけれども、知られていないというのもあると思いますので、情報発信を強化して、そういう構成資産に周遊させるルートも有効であろうと。特に富士山に登ったことがあるという人は、次に目を向けるのが構成資産だったというのがありますので、その辺も有効な手段ではないか。
 あとは文化遺産ということを考えますと、これから外国人観光客もふえるであろうということは、日本の伝統文化につながる富士山の絵画でありますとか短歌、俳句等もあるわけですけども、そういった文化も合わせてPRしていくのがいいのではないかということです。
 では、富士山本体はどうするかというところですけれども、環境と美観の保全に配慮した登山道の整備というところで、今後のあり方でも実は2番人気なのです。一番上とは相反する答えなのです。一番上は入山規制、登山者数を制限してでも環境保全を最優先する、こちらのほうは増加する登山客に対応できるようにするというのが20%ということで、やはり何だかんだ言っても登りたいというのが強い意識としてあるのです。
ということはどうしたらいいかというと、やはりそうすると環境保全は最優先しつつも登山のマナー、こういったものやモラル、こういったものを徹底して啓発する。やはりごみ1つ落ちていないような、きちんと環境が整備されていると、ごみも捨てづらいです。周りの登山客がマナーよくモラルを守って登っていけば、おのずとほかの人たちも襟を正すっていうようなこともありますので、そういうマナーやモラルの象徴、日本の象徴でもあるけれど、そういったモラルを守った登山の象徴を目指してもいいのではないかと。これが歩き方、登山道の整備、登山の対象としてのあり方としてはそういうことが考えられるのではないかということです。
 最後、環境保全と観光振興の両立をということで、これはやはり富士山がそもそも世界文化遺産に登録された意義は何かというと、やはり後世に遺産として残していく、保全していくというのがやはり第一義なのです。ですから私はこういう調査をして言うのもなんなのですけれども、登録されたから経済波及効果云々というのは、実を言うと少し違うのではないかというのもあるのですけれども、そうは言うもののという点がありまして、なぜこんなに熱心に登録を目指したかというと、そういった地域活性化的なところに期待する面というのも大きいということがあります。こういった観光、周辺の観光地に誘致することが本体を守るということにもつながりますので、そういった観光を振興しながら本体のほうは環境保全を守りながら、両立しながらこの富士山の美しい姿を後世に残していくのが求められているというところで結論にさせていただきました。以上です。

○小長井委員長
 以上で、塩野様からの意見陳述は終わりました。
 それでは、これより質疑応答に入ります。
 委員の方にお願いをいたします。質問は、まとめてするのではなくて、一問一答方式でお願いします。
 それでは、御質問・御意見等ありましたら御発言願います。

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