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委員会会議録

委員会補足文書

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平成26年11月人口減少対策特別委員会
上智大学経済学部 教授 鬼頭宏氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/18/2014 会派名:


○鬼頭宏氏
 皆さん、こんにちは。きょうはお招きいただきましてありがとうございます。
 今、御紹介いただきましたとおり、ことしに入りまして人口減少問題に関する有識者会議の座長を務めさせていただいておりますので、きょうは人口減少対策特別委員会の委員の皆様に、現在進めております人口減少問題の課題と対策についてということで、私たちの進めてきております討議の経過を御報告させていただきたいと思います。それからまた、人口減少の抑制策として、どんなことが考えられるのか、静岡県がとるべき対応及びその方向性についても若干報告をさせていただきたいと思います。
 それでは早速始めさせていただきたいと思います。
 きょうはお手元に資料を配付いたしましたが、最初につくりましたものがごく一般論の話でしたので、余りそれは詳しくお話しする必要がないのかなと思いますが、最初に流れとして、私の考えていることを認識していただければと思い、用意させていただきました。
 それと、あともう一つ、事前にお送りしたこのカラー刷りの資料のほかに、特に静岡に関して――もう皆さん多分御承知のとおりかと思いますが――日本創成会議の資料がございますので、それを印刷して、1枚紙として追加で先ほど配付していただきました。それをごらんいただければと思います。
 スライドの1は――実を言うと私の本来の仕事なんですけれども――静岡県のあるいは静岡県地域の人口が縄文時代から現在までどう変化してきたかというのを示したものなのですが、ここでは江戸時代の終わり、明治の初めまでの約8000年ぐらいの間の変化を示しております。少し遠いところというか、深いところからお話をしておいたほうがよろしいかと思いますので、こんな図を用意させていただいたんですが、何度か人口がふえた時期があります。そして、停滞した時期がある。
 明治より前の時代なんですが、例えば縄文時代の中期には、静岡県地域だけで1万人近くいたんです。全国で26万人と言われておりますけれども、結構多くいた。ところが後半にはがたっと減ってしまう。それから、弥生時代からまた人口がふえ始めまして――奈良時代から平安、鎌倉はここで出ていませんけれども――奈良、平安と停滞するということです。私の子供のころには、稲作というと何といっても登呂遺跡ということですが、ちょうどその時代に人口が急増しているということがわかります。しかし、奈良、平安になると人口が頭打ちになると。
 次にどこで人口がふえ始めるかというと、恐らく室町時代からなんでしょうが、江戸時代が始まる1600年代ですが、ちょうどこの17世紀というのが3番目の人口の増加期なんです。ところがその後、江戸時代通じてほとんど停滞している。ざっと100万人ぐらいで停滞していたということです。こんなふうに、大きく人口が伸びた時期と停滞した時期が繰り返されてきた。日本全体もそうです。静岡地域も全く同じだということです。
 下のほうには3つの元の国、伊豆、駿河、遠江と書いてあります。これは、余り古いところをまだ推計できていませんので、とりあえず奈良時代より後だけをお示ししましたけれども、大体パターンはよく似ています。次の2ページは近代なんですが、国勢調査人口で見ましたから1920年代以後ということになります。90年間の変化です。明治の初めにはほぼ100万人ぐらいだったのが、大正に入りますと150万人ぐらいまでふえてくるんですが、そこからずっと人口はふえていく。21世紀に入ってからピークを迎えて減少過程に入るということで、これから先どうなるかというのが大きな問題です。ただ、ここでは先ほどの図とあわせて、この近代に入ってから21世紀の頭までが人口の大きな増大期であったということを見ておいていただければ結構です。
 その後はどうなるのか。先ほどお配りした別紙で4つの推計をお示ししました。一番下の線が、これは社会保障・人口問題研究所が行った2013年に発表した静岡県の人口ですが、2010年から30年ですが、303万5000人まで人口が減る。70万人以上減るということが予測されています。上の線は県が独自に行った推計ですが、これだと少し減り方が小さくて済む。340万人から320万人の間ぐらいであるということです。ちなみに、この県推計1と2というのは、2というのは人口の出入りがないと仮定した場合、1というのは、県の推計で人口の出入りがあるということを仮定した場合です。これを見ていただくとかなり楽観的な予測になっている。
 それに対して、日本創成会議がことしの初めに報告したものですともっと悲観的で、途中の経過は書いてありませんが、2040年に294万人まで落ち込みます。ですから、現在からざっと80万人ぐらい人口が減るという推計が出ています。日本創成会議の推計は基本的には社会保障・人口問題研究所の推計に出生率も死亡率も依拠しているんですが、ただ1つ違うことは、社会保障・人口問題研究所の推計が府県間の人口移動を途中でもう終息すると仮定しているのに対して、日本創成会議のほうは2005年から2010年にあった人口変化がその後30年間も続くという厳しい見方をしているということです。それによってこれだけ、約10万人ぐらい変わってくるということです。どれが正しいかということは必ずしも言えないんですけれども、少なくとも2005年から10年までのパターンがこれからも続くとすれば、こうなるだろうという点ではその仮定の置き方が違いますが、言えるわけで、いずれにしても人口が少なく見ても40万人から50万人、ひょっとすると80万人ぐらいはこれから減少するという点では一致しているということです。
 日本創成会議は非常にショッキングな表現をしているんですけれども、これは20歳から39歳の女性が、これから30年の間に半分に減ってしまうという自治体の比率を示したものです。日本創成会議の推計はなかなかアピールするところがあるんですけれども、一つは消滅可能性自治体というような言葉を使ったということと、そしてもう一つは、指標として、一番子供を産む年齢に当たる20歳から39歳の女性の規模に焦点を当てたという点だと思います。これによって非常に人口減少の実態が身近に感じられるようになったということです。
 ところが次の表を見ていただくと、これは赤のほうがここでは移動が終息せずずっと続いた人口移動で過去のパターン、青のほうが移動が終息するパターンです。だから青の方が社会保障・人口問題研究所の推計ということになるんですけれども、赤のほうで見ていただくんですが、実は静岡というのはここに入ってるんです。ちょっと見えにくいかもしれませんが、20歳から39歳の女性が半減する自治体というのが全部で35のうち11あります。ほぼ3割ということなんです。これを見てみますと、ほかと比べるとかなり低いところにある。順位でどれぐらいというと、東京とか神奈川、埼玉、愛知とか、そういう減らない県の順番でいくと、上から9番目なんです。福島は除いてありますから、46都道府県のうち、減らないほうに入っているんですね。だから、安心かということなんですけれど、決してそうとは言えないということです。裏の図は地図にしたもので有名なよく見られる地図ですけれども、これを見ていただいても、伊豆半島とそれから川根本町のあたりですね。こういうところに黒いところがある。人口規模が1万人を割ってしまうというところがあるということです。次の一覧表ももう既にごらんのとおりかと思いますけれども、地域差がかなりありますということです。ここでは20歳から39歳の女性が半減する、50%以上減るところだけ線を入れていますけれども、しかし40%減るところとか、30%減るというところはまだほかにもあるわけで、これで安心していいかということがあるかと思います。あとは、御承知のとおりなので、ざっとごらんいただくだけで済ませますが、要するに人口減少は社会の持続可能性を大きく損なってしまいますと。ですから、やはりこれは何とかしなければいけませんということです。
 6ページの図は、人口が減少するだけではなくて、高齢化によって人口の年齢構成が大きく変化していくということが社会にとって重荷になる。あるいは、今一番問題になっている首都圏への一極集中、人口移動がまたその社会を空洞化させていく。いずれにしましても社会の維持が困難になると同時に、自然災害にも弱い地域になっていく可能性があるということをお示ししたものです。
 では、それに対してどんな対策があるのでしょうかというのをごくかいつまんでお示ししたのが資料7ページの図ですが、人口が流出してしまうということについては、人口を還流させる、Iターン、Uターン、Jターン、あるいは定住計画。それから、過疎化した都市も縮小してきますから、コンパクトシティ化して住みよい社会にするということについて、規制撤廃とか、産業創生とか、今、里山資本主義というのはよく聞かれる言葉ですけれども、環境資源をいかに利用するかということで、意外と地域創生ということが課題になってきます。人口減少に対して、あるいは生産年齢人口の減少によって高齢者の割合が高くなっていって、いわゆる人口オーナスという状態が出てくるのに対して、労働力をどうするか。それから人口減少に対して出生率をどうするかということで、いろんな方策が考えられますというようなことをここでかいつまんで説明させていただいているわけです。
 詳しくはまた後ほど議論させていただきたいんですが、私の考え方では、少子化という問題がなかった1970年とか、あるいは高度成長の60年代と同じような社会に戻せばいいのかというと、決してそういうことではないのではないだろうかということなんです。先ほど、時代によって人口が伸びた時代と、減少した時代を交互に繰り返してきたということを申し上げたんですが、この人口の増加とそれから人口の減退というのは、実はその社会の基盤になる生産構造であったり、技術であったり、それから社会の制度であったり、それからどういう資源を利用するかということであったり、いずれにしましても、社会全体の仕組みが大きく変わっていく。そのときに人口がふえていったということが言えると思います。
 一番わかりやすいのは、狩猟採集経済から水稲、農耕、稲作に入っていった時代です。今まで使っていなかった資源として、稲を植えていく、田んぼをつくっていく、人口がふえる、町ができる、支配階級とそうでない階級が分かれていって国家が形成される、全国が統一されるという非常に大きな変化が起きたわけですね。それから、江戸時代の前半、恐らく室町時代からの変化は何かというと、余り言われないことなんですが――経済の上では非常に重要な話題として、誰でも知っていることなんですけれども――日本の社会の中に市場経済化が広がっていったということです。流通が非常に活発になった。これが農業の生産力を上げていくというようなことで人口もふえていくということです。そういう農業社会から産業社会への転換、これが明治維新以後本格化して、これが人口を支えていく。人口がふえて消費も労働力もふえてくれば、また経済が成長するという正のスパイラルというのでしょうか。お互いに刺激し合って人口増加と経済成長が続いたというのが明治からつい最近までのことであったということです。
 それでは、人口が減退する時期というのは共通性があるのかというと、一言で言えば、その文明が成熟してしまう。例えば稲作であれば、当時の技術とか資本あるいは労働力で、もうなかなか対応できなくなってくる。要するに土地の制約、あるいは水が足りないということもあるかもしれないし、森林資源の制約というのがあるかもしれません。そういうふうに、環境あるいはその資源の制約が起きる。それがこの人口の停滞をもたらしたのではないだろうかというふうに考えております。
 では、現在の停滞はどうなのか。これはなかなか簡単にはいかないです。説明しにくいです。多分あと50年、100年たたないとなかなか全体像は見えてこないと思うんです。しかし、これが日本だけの特異な現象かというと、決してそうでない。そのことを考えると、やはり産業文明の行き詰まりというのが一つの大きな背景にあるのではないか。少し話が大き過ぎるかもしれませんけれども、そのことを理解しておかないと、なかなか小手先ではこの人口減少を抑制することは難しいのではないかというふうに思いますので、次に簡単にその流れをお示ししたいと思います。
 資料9ページをご覧ください。少子高齢化が進む。そして人口減少が起きる。これは実は世界に普遍的な現象ということです。これは欧米先進諸国の合計特殊出生率を示したものです。日本は赤で示してありますが、日本が合計特殊出生率2を割り込んで、いわゆる少子化が始まるのが1975年以後なんです。これはスペインですけれども、このスペインを除いて、どの欧米先進国もみんな70年代に2を割り込んでいるんです。ですから、日本が特別というわけではなかったということです。そのスペインも80年代には2を割り込んでいるということです。ただ、この欧米諸国、日本も含めた先進国の中で、2つのグループに大きく今分かれています。1つがアメリカ、フランス、スウェーデン、イギリスというような地域で、これはフランス、アメリカがもう合計特殊出生率2を達成していますけれども、出生率がまた戻ってきたグループ、あるいは高どまりしたグループです。それに対してオーストリア、スペイン、イタリア、ドイツは日本と同じぐらい。1.5より低いということです。これは何か意味がありそうだということです。
 実は、この出生率が落ちるということは、先進国では1970年代に始まりましたが、国連は世界全体に波及していくというふうに見ています。アジアはかなり早い時期に合計特殊出生率が下がり始めます。ラテンアメリカはもちろん早いんですけれども。アフリカですら――今はまだ出生率が非常に高いんですけれども――80年代の後半になりますとじわじわと落ちてくる。21世紀の終わりには非常に限りなく2に近づいていくという可能性を国連は示唆しています。ですから、21世紀という時代そのものが人口がふえにくい時代になってきたということが言えると思うんです。資料11ページが世界人口の増加率がどんどん低下していますということを申し上げていることです。資料12ページでは世界の人口も中位推計でもって100億を超えますけれども、だんだん伸びは緩やかになっていくと考えているということです。
 出生率がどうして下がるかというのはいろいろ説があります。資料13ページでGDPと合計特殊出生率及び死亡率の代表として寿命をとって、その関係を示しているんですが、豊かになると出生率は落ちる、あるいは豊かになると死亡率が低下して寿命が延びるということを見せています。次の14ページの出生率と死亡率の関係を見てみますと、かなりきれいなつながりがあって、寿命が延びるところでは出生率が落ちてくる。要するに子供をそんなにたくさん産まなくてもいいんだというような考え方がだんだん社会にしみわたると出生率が落ちてくるということです。これは日本はもっときれいに出ていまして、資料15ページで1920年代から最近、2010年までの寿命と合計特殊出生率を示しているんですけれども――これは女性の寿命なんですが――非常にきれいな相関があるんです。だから、これはある意味では自然現象であると言ってもいいかもしれない。ただ、これは行き過ぎる場合があるということで、この日本の場合だと1975年を過ぎると2という数字を割り込んで下がり過ぎている。これがちょうどバランスよく人口を維持できる水準に戻るかどうか。それがかぎになっているわけです。
 実はその兆しがないとは言えない。一番最後のところをごらんになっていただきたいんですが、少し上がってます。2005年というのが一番出生率が低かったときですけれども、そこから今、少し戻りつつある。これはどうも人間も生物の一種として、本能的にバランスをとる方向にあるのかと思いますが、ただそれを待っていたのではかなり人口が減ってしまうということです。ですからそこを何とかしなければいけないということです。ただ、これは何度も申し上げますように、人口減少を阻止するということは、何が何でも70年以前の状態に戻せというわけにはなかなかいかないので、新しい文明をつくり上げるという覚悟で臨まなければいけないということです。
 資料17ページで3つの論点を書きましたが、これは先ほどもう既に一般論としてお話ししたことでして、明治以後、21世紀の頭までの人口増加というのは、新しい産業文明への移行に伴って起きたものであるということですが、それが今、世界的に先進国では峠に差しかかっているというか、峠を過ぎたと言っていいので、政治局面に移行したということです。ですから、人口をめぐる議論には非常に長期的な視点というか、大きな変化をどう受けとめるかというこの根本的な考え方を変えていかなければいけないということだろうと思います。資料18ページは世界の人口でも日本と同じようなことがありましたということを申し上げています。
 資料19ページは先ほど、静岡県の人口でお話ししました。それと同じことを日本の人口でも波がありましたということを書いてあります。その背景に何があったか。これは静岡の人口と同じことで、社会のシステムが変わっていったということです。資料20ページは少し理論的な話ですから省略しますが、人口とそれからここでは文明システムと呼んでいますが、この社会の変化がどういうふうに変わっていくかということをお示ししたものです。この現在の出生率の低下というのは、実はもう既に40年前に予見されていた。あるいはもっと積極的に言えば、期待されていたと言っていいと思うんです。
 昭和49年の日本人口の動向という人口白書は、当時の世界の人口爆発というのを背景にして、国連が人口抑制に乗り出した年なんです。世界人口会議というのを74年の8月の終わりにブカレストで開くことになっていた。この白書のほうもそれに対応して、先進国の日本も人口を増加させ続けるわけにはいかないので、サブタイトルにあるように静止人口を実現しなければいけないということを言うわけです。つまり、人口増加をゼロにしろと、ふえも減りもしない状態にしろということです。さすがに白書の中では、それ以上踏み込んではいませんけれども、一つの推計として、あるいは見込みとして、合計特殊出生率という概念は当時余り使われていなかったんですが、人口を維持できる出生率の水準よりも、4%出生率を下げれば、昭和85年までは人口がふえるけれども、それ以後は減少に転じるんだということを予測してるんです。この昭和85年というのはいつかと言いますと、西暦ですと2010年なんです。ですから、このとき期待したとおりのことが日本の社会では実現できたということなんです。ですから、これはある意味で期待されていたことなんです。
 ただ、その間にバブルの時代があったり、それからリーマンショックがその後襲ったりということで、非常に経済が大きく変動していきました。その中で、出生率をどうするかという議論がほとんどなされないままに、高齢化とか外国人労働力とか、家族の形とか、そういう少し離れたところの議論がずっと続けられてきたんですけれども、さすがに90年代に入って、これでは大変だということで、エンゼルプランから始まって次世代育成支援対策推進法のようなものが生まれたり、そして来年の4月から動き出す予定ですが、子ども子育て支援法に基づく育児支援というのが始まるということになったわけです。ですから、出口戦略を練るのが少し遅過ぎたということは言えると思いますが、ただ人口増加をストップさせようという時代があったということは、現在の背景を考える上でやはり忘れてはならないことだろうと思います。
 では、どのように向かっていくか。もう余り県の人口減少問題に関する特別委員会の報告の時間がなくなってしまうといけませんので、少しここでその話と重ねていきたいと思うんですけれども、課題は減少抑制、減少停止戦略と、縮減社会適応戦略と、この2通りあると思います。資料24ページは将来の人口がどうなるかということで、資料25ページは合計特殊出生率の仮定値を示したもの、資料26ページは私がつくった図なんですけれども、これから日本の合計特殊出生率が上昇していくとすると、どういう可能性があるかということなんです。ここでは2通りの可能性を示しているんですが、2005年が1.26と一番低くなった年です。2013年に1.43まで戻りました。もしこのペースがずっと続いたとするとどうなるかというのを示したのがこの予測のBという緑色の線なんです。つまり、この流れがずっと同じペースで続いてきたとすると、2050年ごろに――ここでは2053年と計算してるんですが――2.07という合計特殊出生率に到達する可能性がある。これは少し早いのではないかということで、2001年から21世紀の増加で計算し直してみますと、もっと遅くなって、2072年ということになるんです。ただ、これは何もしないで、今までのパターンでそのまま上昇しますよというふうに考えた場合です。
 しかし今、日本創成会議は違った数字を出しています。その考え方をベースにして、「選択する未来」委員会というのが11月になった先週、最新の委員会の報告書を出しました。それから、まち・ひと・しごと創生会議、ここも11月6日に長期ビジョンの骨子案をまだ案の段階ですが、出しました。いずれも共通しているんですけれども、考え方のベースに多分日本創成会議かあるいは日本経済研究センターの考え方が強く反映されていると思いますけれども、当面の目標として、合計特殊出生率1.8を目指そうではないかということを言っています。日本創成会議は希望出生率というような言い方をしています。これはなかなか巧みな表現なんですけれども、だけどそのままだとまだ人口は減りっぱなしになりますから、これは実ははっきり書かない、はっきり書けない事情が多分あるんだろうと思います。この会議の中でもいろいろあったんだろうと思いますが、ただ図表を見ますとはっきりわかるんですけれども――そして首相も一時期そのことを口にされたことがありますが――2060年ごろ、今から大体50年後ぐらいまでに合計特殊出生率を2.07にするということを前提に考えています。そうしますと、2090年ごろには9600万人ぐらいでしたか、1億人を少し切るぐらいで人口が安定期に入るということを言っています。ですから、今、政府の委員会で議論されていることは、この出生率の上昇をもっと早めようと。2030年ごろまでに2.07に引き上げると。かなり傾斜が急になりますけれども、そうすれば21世紀の終わりには人口が安定化するということを、非常にうまい表現で言っております。
 その根拠になるのは国立社会保障・人口問題研究所が言っています出生動向基本調査なんですが、資料27ページの緑の線が理想の子供数、それからこの赤い線が平均予定子供数なんですが――これを表現を変えて希望子供数と言っているわけですが――これは40年間大きな変化はないんです。最近さすがに下がってはきていますけれども、まだ2を維持している。ですから、これを根拠に今、女性で生涯結婚しない方が10%ちょっとなんですが、9割の方が結婚するんだと仮定すると、その合計特殊出生率を2.0と読みかえていきますと、1.8というのが子供を産みたい人だけが産むとなると、そのぐらいの合計特殊出生率が適当であろうということで、当面の目標として1.8というのを希望出生率というような言い方で目指そうとしている。これはどの委員会も同じ数字を採用しています。そして、将来的にはもっとそれを上げて、人口が維持できる水準まで引き上げようと。そんなことが今もくろまれているということです。
 数値目標のことは、「選択する未来」委員会の中でも言及されていますけれども、私も読売新聞の記者の方といろいろ議論したんですが、1カ月ぐらい前までは県で数値目標を出しているのが12県しかなかったんです。静岡はその筆頭の1つです。沖縄なんかはもう2.幾つという非常に高い出生率です。静岡県は2020年までに合計特殊出生率2を目指しましょうと、計画の上ではっきりと示している。ただ、少し前まではこの数値を出すということが、特に女性に対して大きな圧力になるのではないか、子供を産む、産まないは人権の問題であると。だから、行政あるいは政府がその数値を目標値として出すのはよろしくないという考えがあったようですけれども、先週までの段階で少し様子見の県が考えを変えまして、政府が何も指示しないからというふうに答えたところが数字を出すようになりました。現在では19県が数値を出しているそうです。いずれはPDCAのサイクルにのっとって、政策検証ということを含めると、やはり何らかの数値目標が必要ではないですかというようなことは、この報告書の案の中にも出ております。そういう点では、多少の誤解を恐れずに目標値を出した県の対応というのは決して間違っていないのではないかと私は考えています。
 ただ気をつけなくてはいけないのは、やはり40年前と違うのは、40年前というのはほとんどの男女が結婚する社会だったわけです。ところが現在はそうではないと。女性でも10%を超える方が生涯未婚であると。男性だともっと多い。そういう   コース、人生の道、どれを選ぶか、結婚するかしないか、子供を持つか持たないか、これはやはり個人の自由に任せるしかないんですけれども、そこのところが非常に難しいところです。産める方はもっと産んでくださいと言っても、希望子供数が2ぐらいだとなかなかそうはいかない。理想の子供数の2.5ぐらいまで持っていかなければいけない。だから、3人目を産める社会にするということが非常に重要になってくるかと思います。これが今までの社会全体の、あるいは多少歴史的なことも加えてお話ししたいことです。
 後は少し別の話になりますので、きょうは割愛させていただいて、残った時間で県の人口減少問題有識者会議の現状の報告をさせていただきます。
 資料がどこまで開示されているか、ちゃんと聞いてくるのを忘れてしまって、承知していないので申しわけありませんが、現在までに2回の会議が開かれました。7月とそれから先月、開催されました。そして委員の方々に自由に議論していただいて、結構膨大な会議録になるんですけれども、それを今、企画広報部で整理していただいております。そして12月の委員会に、静岡県の人口減少対策への提言書としてお示しする。その素案を出して委員のメンバーの先生方にまた見直しをしていただくということで、今その素案の素案ですから、まだドラフトもいいところなんですけれども、これを今準備しております。
 どういうことを進めてきたかといいますと、このメンバーの中には、人口問題の専門家、それから静岡県で青少年の取り組みをされている方、あるいは里子制度、養子制度、あるいは看護の関連で詳しい方、それから人口、地理、移動の問題をやってらっしゃる方、それから都市問題をやってる方、大勢いらっしゃる。本当に先鋭ぞろいなんですが、特にその中に日本創成会議の増田先生が入ってらっしゃって、それから実際にそのもとで人口推計された明治大学の加藤さんも入ってらっしゃるということで、もう本当に最先端をいく提案をされている方々ばかりの委員会です。私が少し後ろ向きで歴史的な立場から参加しているということなんですが、非常にいい意見をたくさん賜っております。
 この人口減少問題に関する有識者会議では、2つ大きな柱をつくりました。それは、一つは戦略の1として、人口減少の抑制戦略ということで、端的に言えば出生率をどうやって上げたらいいのかということを課題にして、議論しております。それからもう一つが、人口減少社会――なかなかいい言葉がないんで借り置きなんですけれども、人口減少を続けるという意味ではないので――人口が減少した後、減少がストップするんですが、そのときに人口が何十万人か減る可能性があるわけです。日本創成会議のものでも80万人ぐらいは減ると。ですから、当然その都市の中にはシャッター街が生まれたり、農村では人口がいなくなってしまったというところが出てくる可能性もあるわけで、そうやって人口が減った社会への適応戦略、これはどうしたらいいか。その両面作戦でいっています。そしてそれは同時に時間軸を踏まえた対策の推進ということでもありまして、つまり直近のところでは、とにかく出生率を上げて人口を維持できる水準まで到達するために、若い人たちにどういうふうにして働きかけるか、あるいは子育てをどうやって支援するか、そのインセンティブをどうやって生むかということが大きな課題になりますし、それから数十年後を見据えた視点として、人口が減少していったときにも快適に暮らせる社会はどうつくったらいいかということもテーマとして組み込んでおります。
 ですから、非常に幅広いし時間の幅も長いということで、なかなかこれといった名案が出てこないんですが、簡単に申し上げますと、まず人口減少ですが、自然減対策ということで、死亡数を減らして出生率を上げるということですが、社会総がかりで次世代育成を促進しようということが第一に挙げられます。それから、若い方がなかなか相手が見つからないんだということがあるので、夢を持って安心して家庭を築ける環境を整備しようではないかと。家族を持ちたい、あるいは持てる、そういう社会をつくろうということが1つ。それから希望の出生数をかなえるために環境を整備するということで、片親でも安心して子育てできる、あるいは女性が安心して出産できる環境を整えていきましょう。それから、子育て支援をもっともっと充実させていきましょう。もちろんその中に待機児童ゼロも入りますし、質の高い保育、教育環境を提供するということもありますし、地域というか、職場の協力をもっと得ていくということが入ってきます。それから死亡率を下げるということは、これはどの社会でも共通の課題とは思いますけれども、健康長寿というのを取り込んで、これも今まで以上に推進していくということで、自然減をとにかく抑制していきましょうということです。
 ただ、ことしになって急遽、人口減少問題に関する有識者会議が生まれた背景には、昨年の静岡県の人口減少が非常に大きかった。北海道に次いで大きかったということが問題になったわけで、その理由が出生率そのものではなくて、人口移動であるということがわかりました。特に外国人の流出が大きかったということです。それで急遽、各市町にお願いしまして、転出者の転出の理由をアンケートで答えていただくということもこの一環として調査をしていただきました。その結果はやはり、職場あるいは仕事上の都合というのが圧倒的に多かったわけです。ですから、これも調査の時期が5月以後ということでしたから、本当に転勤する3月、4月の頭の時期とはちょっと違うので、実態から離れているという可能性もあるんですけれども、それでも仕事の都合というのが非常に大きかったということがありますので、県内での働く場所をどうやってつくるかということが大きなテーマになります。
 ですから、柱だけ申し上げますと、産業雇用の振興及び創出、これをどうやっていくか。それから女性や健康な高齢者が働ける場所、活躍する社会をどうやって実現していくか。それから、やはり教育の充実、整備というのも重要であろうということで、多様な教育が選択できる。あるいは高等教育の機能をもっと充実させて、県内でいろんな教育を行って、そして県内に残る、あるいは他の県から県内で教育を受けるという方をもっとふやしたいということです。それからどこでも今、始めたことですけれども、観光などを通じた交流人口と、それからIターン、Uターンを含めた移住、定住をもっと促進して、静岡県に大勢の人に住んでもらおうではないかという取り組み。そしてやはりアンケートで最初危惧したことは、将来予測されるような大地震あるいは津波、あるいは富士山の噴火、こういうものに対してどう取り組むかということです。幸いアンケートでは、そのことを理由に県外へ転出される方は1割にも満たなかったので、そんなに影響はないだろうということなんですが、やはり安心安全な地域づくりというのは非常に重要だと思われますので、これも力を入れていこうではないかというようなことで、現在進めております。
 最後になりますが、今も人口が減少し始めているわけですけれども、将来規模が300万人ぐらい前後へと縮小していくわけですから、それでも快適な、そして生産力の高い静岡県をどうやってつくるかということで、人口減少下でも持続的な成長ができるような生産性の向上を図るというのが第一に挙げられております。それから、多様な働き方、人生の上でも多様なコースということを申し上げたんですが――いわゆるダイバーシティということなんですが――働き方ももっと自由に、子供を育てている時期には短い労働時間で過ごすとか、それから有給休暇をしっかり休むとか、ライフスタイルの変化に的確に対応すると。そういう社会をつくるべきではないかというのが一つの柱になっています。それから、子育てもそうですし、高齢者の介護の問題もそうなんですが、地域社会がもっと機能するべきなのではないかということで、地域における新しいきずなをつくっていく、そういう形で支え合えるような社会をつくっていくということが一つの目標になっています。それから、行政につきましても、都市の規模が小さくなっていったときどうなるかというのは、我々の検討する範疇から大きく外れると思いますけれども、行政運営を効率化するとか、連携を進めていくとか、何か新しい枠組みも必要なのではないかというようなことでございます。
 以上、特に資料も御用意しないで、人口減少問題に関する有識者会議の提言書をこんな構成で今考えていますということを申し上げた次第ですが、ちょっと歯がゆいところは、我々がいろいろ会議で細かい事例のこういうのがあるよというのを、やはり盛り込めないんです。これはやはりこの会議の性格上、基本的な視点で戦略と方向性をお示しするということで、恐らく終わるのかなというふうに思っておりまして、これを県内の各部局であるとか、県内の市町がどうやって受けとめていただいて、そしてそれを具体的な策として、地域に合ったものを構築するか、そこを期待するしかないかというふうに思っております。ただ、共通して我々いつも言っておりますのは、とにかく静岡の特性を生かした魅力の最大化ということなんです。では静岡の特性って何なんだということになると、実はまだよしこれを看板にしようということが出てこないんです。これが我々の弱いところです。それは恐らく、この有識者会議のメンバーのほとんどが静岡県外に住んでらっしゃるということで、余り本当のよさというのを実感できていないところにあるのかもしれませんので、これはむしろそれぞれの地域を代表されていらっしゃっているこの特別委員会の委員の先生方にぜひ御提案いただければ、我々もそれに取り込んで具体的な提案として出していきたいというふうに思っております。
 少し抽象的なことと、少し大きな話に時間を割いてしまいましたものですから、有識者会議の細かいところまで御説明できなかったと思いますが、12月にその報告書を最終的にまとめるという方向で今進んでおりますということで、私の説明を終了させていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。

○池谷委員長
 ありがとうございました。
 以上で鬼頭様からの意見陳述は終わります。
 これより質疑に入りたいと思います。
 委員の方にお願いをいたします。質問はまとめてということではなくて、なるべく一問一答方式でお願いをいたします。
 それでは委員の皆様、御質問、御意見等がありましたら御発言をお願いいたします。

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