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委員会会議録

委員会補足文書

開催別議員別委員会別検索用


令和2年11月新型ウイルス等感染症対策特別委員会
静岡聖光学院中学校・高等学校 校長 星野明宏氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/26/2020 会派名:


○星野明宏参考人
 改めまして、皆様、本日はこのような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。
 静岡聖光学院から参りました星野と申します。本日はよろしくお願いします。
 私、東京の町田市出身ですが、もう教員になって16年目になります。民間経験も8年ありまして、ヘッドハンティングされて静岡に来たみたいなイメージを持たれる方がいるんですが、実は16年前、寮の舎監からスタートして、1つずつ経験を積んで今日に至っています。
 両親が熱海市と伊東市出身なものですから、そこで出会って結婚して、何年かして東京に移住したと。ですので、実家のお墓は代々御殿場にございますので、私としては静岡にずっといたいんですが、静岡がもうおまえ来るなと言われるまでは、一生懸命教育に関して頑張ってまいりたいと思います。本日はよろしくお願いいたします。
 校長になって2年目になります。昨年、ラグビーのワールドカップがございました。開催するときから、ヤマハ発動機ジュビロで監督されていた清宮さんと一緒に特別アドバイザーの任を仰せつかり、様々な活動をしていました。その前は、高校生世代の日本代表の監督も3年ほど務めておりましたが、皆様がイメージする体育教師がコーチするというよりは、マネジメントでチームを強くするといったちょっと風変わりな日本代表の監督として活動してまいりました。
 今、様々な機会を頂いておりまして、委員としては、スポーツ庁の運動部活動のアドバイザリー会議の委員もやっております。静岡県に関しましては、今年は、ラグビーの聖地化と、昨日もありました知事の諮問会議であります人づくり・学校づくりの委員もやっております。あと、スポーツ審議委員会の委員もやっております。
 この七、八年で、様々な人材育成、組織マネジメント、地方創生等のテーマで、改めて数えてみたら150回ぐらい講演等もさせていただいております。ちょっと風変わりというと、去年は警察です。静岡県警で、教育とラグビーをテーマに講演させていただいたり、3年前は、実は愛知県議会から呼ばれまして、議会開催中の年1回の講演でなぜか私が呼ばれまして、地方創生の話をさせていただいたりもしております。
 これが写真になります。ワールドカップの会場で花火が上がったんです。これは私が提案させていただいて、県庁の職員の方が実現に向けて奔走してくれたと。これにもテーマがありまして、せっかくインバウンドが来るのに、静岡のいいところを見せないのはもったいないということで、おみこしをかつぐいろんなお祭りを試合前に集めたりとか、あと花火を見せて、私のイメージとしては、袋井の花火師が、逆に海外から呼ばれる。もしくは、海外のこれに興味持った人が、花火修行に来る、そんなストーリーをイメージしてやってもらいました。そういったことも活動しております。
 もう1年前になるんですが、実は姫野選手が愛知県出身です。姫野選手が東海選抜のときに、私がちょうど監督をやっていまして、もう7年前ですかね。もう高校生のときから、プロレスラーみたいな体をしておりまして、ちょっと全然風格が違ったんですけれども、実はお母様がフィリピンの方なので骨格がやはりアスリートなんですね。お尻のところがぴっとなっているので、非常にアスリートとしてポテンシャルが高かった。今、ハーフと言わず、ミックスという表現だと思いますが、そんな選手でございました。
 最初に、今日は私の学校の宣伝では一切ありませんが、簡単に静岡聖光学院、駿河区にある丘の上のちょっと謎の学校と思われている方もたくさんいらっしゃると思いますので、御説明させていただきます。
 もともと52年前に、カナダ人の修道士によって創設されました。創設のときは、公立志向が非常に強いこの静岡県で、ミッションスクールで男子中高一貫校を誘致したいという政財界が一致して、実は当時の静岡県知事の方が旗振り役になって、本来、小鹿の丘の上は建物を建ててはいけなかったんですが、条例等も改正していただき、並みいる財界の方の御協力を得て開校された学校でございます。創立時の熱い思いをもう1回、再創立だということで、今、私が2年前から校長の任を仰せつかっております。
 今、大体1学年80名です。中高完全一貫で、高校募集をしておりません。高校募集していない学校は本校と、女子校の静岡雙葉、年によっては不二聖心です。地方の場合は、どちらかというと高校入試がメインで、私立高校はその補完校であるという位置づけが多いんですが、これが首都圏へ行くと、全く構造が違います。私立中高一貫校がとにかく先陣を切っていろんなことにチャレンジして、それに対して公立も負けじと一緒にチャレンジして、汎用性のあるものに関しては、私立の成功事例をすごく短いスパンで広げていくということで、どんどん教育と町を活性化している。静岡県に関しましては、多くの地方の道府県と同じ状態で、教育が非常にまだまだ進んでいないということを感じています。私としては、少し暴れん坊で浮くぐらいの存在でもいいから、突破して、どんどん教育の静岡、子育ての静岡を実現してまいりたいと思っています。
 あと寮生。寮が創立時代からありまして、寮生が非常に多いイメージがあるんですが、実際には30%程度が寮生です。その半分が県外生徒です。ですので、実は県外の生徒は全体の15%ぐらいしかおりません。半分の寮生は県内です。下田から湖西までです。実は85%は静岡県内の生徒という状態になっております。兄弟校は横浜の進学校の聖光学院でございます。
 正直私も、ストーリーとか、ビジョン、ミッションに関して燃え上がるものがないと頑張れないタイプですので、副校長の後半時代に、学校の戦略、戦術を全て任されたときに、どうも今までのように、進学実績をそこそこ上げて、静岡県だけで何とか生き延びられる学校というストーリーに辟易としていました。ですので、私どもは15%の生徒が県外ですので、実は首都圏の学校と生徒の取り合いが発生します。小学校6年生のときですね。ですから、そういった意味での情報だとかを精査して、静岡県のいろんな層、いろんな県民の方が幸せになることはもう当然なんですが、その中で特に突出した生徒たちを輩出していきたいというストーリーに変えました。
 なかなかエリート教育というと受け入れられがたいところがあるんですが、私は本当は育てればエリートになれる子が、正しい心を持って困っている人を助けるためにいろんな力を発揮する、そういう立場の人は絶対必要だと思いますので、そこはミッションスクールだからこそできると思って、一気にかじの方向を変えました。ICT&STEAM教育の積極的導入と、海外との交流と、あと主体性。教育の究極は、恩師が教えてあげて、その見よう見まねでやれるではなくて、勝手に世の中の課題を発見して、勝手に自分で解決策を模索して、そして勝手に仲間を引き連れて、そして勝手に解決する。これが私は教育の究極の目標だと思っておりますので、今、そちらをやっております。ただし、男子校なので、言葉はあれですが、お母様と非常に距離が近いお坊ちゃまが多いもんですから、そこを今、たくさん鍛えている状況でございます。
 今日はこの3つの順番でお話をさせていただきます。コロナ禍で学校に何が起きたのか、ウィズコロナの学校で何が起きているか、そしてこれからの学校、静岡県について、お話をさせていただきます。
 コロナ禍で学校に何が起きたかというのはですね、3月2日です。全国一斉休校したときから大体6月、7月ぐらい、分散登校が始まるまでの期間の話です。そして、ウィズコロナに関しては、もう分散登校も全て終わった9月以降、今、実は学校現場で何が起きているか、そんなお話をさせていただき、それから、この後です。大切なのはこの後。この世の中の教育が実はどうなっているか、お話をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、私どもは寮のある学校で、インフルエンザの罹患者が2月末に大分増えてきました。ですので、コロナと関係なく、安倍総理の記者会見の3日ぐらい前に、インフルエンザ対策で休校にすることを実は決めておりました。
 なので、ほかの学校よりも早く、日本で一番早く、3月2日にオンライン授業ができたんですけれども、私がトップとしてこだわっていたこととして、まず1つ目はマインドセットです。マインドセットには、グロウス・マインドセットと、フィックスド・マインドセットがあるんですが、フィックスド・マインドセットは、とにかく今までこれができたけど、あれはできないよねって決めつけてしまうマインドセットです。グロウス・マインドセットは、まだできるはず、まだやり方あるはず、まだ何か可能性があるはずだと考えるのが、グロウス・マインドセットです。私学の場合、教員が替わりませんので、たくさん会話をしたり、研修をしたりして、そういう風土をつくってました。コロナ禍であったときに、できない理由をたくさんつらつら並べる会議とか教員ではなくて、とにかく1回全部オンラインでやろうというところから、どうやってやるかを考えられる風土づくりをやっておりました。
 学校現場は、公立の場合は三、四年でどんどんローテーションで替わっていきます。会議といっても、私は6人以上集まるのは、もう会議としてなかなか厳しいと思います。心理学的にもです。それが30人とかの職員会議で話すと、そもそも日本の風土で同調圧力がある中で、結局声の大きい人に全て振られてしまうというのが、職員室の日常光景です。ですので何も決まらない。よってリスクも負わない、新しい発見もないということがありましたので、そこをまず変えました。
 2つ目がバックキャスティングです。昨日も私、提言させていただいたんですが、心理学の用語で、フォアキャスティングとバックキャスティングという言葉があるんですが、フォアキャスティングはエビデンスベースです。昨日、去年はこうやっていたから、じゃあ明日はこうやればいいんじゃないかなということです。通常業務では、こういうことが大切です。前例踏襲ですね。
 バックキャスティングというのは、静岡の未来、教育界の未来って、こうなったらすてきだよねと。みんなが移住してくる。今はリモートワークOKで、ワーケーションもあります。今まで移住するハードルは、雇用と子育てと教育、この3つがあったと思います。ところが今、雇用があまり重要じゃなくなってます。ワーケーションでできますし、リモートで働ける。なので、今、転校できないかと非常に問合せが来ています。会社は東京のまま、静岡に移住して、リモートワークで1週間だけ東京の会議に出て、子育てはじっくり、この大自然に囲まれた静岡でやりたいというのが、この1週間転校の話だけでもう3件来ています。
 そういったところで、私はバックキャスティングなので、今まではこうで、タブレットしか配ってないから、これぐらいはできるよねではなくて、いきなり最初に100%オンラインで学校機能を再現しようと最初にテーマを掲げました。そうすると、当然、まず調査から入ります。AプランからZプラン。今、学校行事でも非常に大変です。Aプランというのは、去年同様、フルで修学旅行に行ける。Zプランは中止。Bプラン、Cプラン、Dプラン、Eプラン、Yプランとかですね。ここを模索しながら、状況に応じて前後していくことを考えていこうとやっていました。結局、本当は中止にしなくても、これぐらいのところはできるのに、中止にしてしまったほうが楽という発想になるんですが、ぎりぎりまで考えようと。修学旅行もオーストラリアに行っていたんですが、Aプランはオーストラリア、Zプランは中止ということで、いろいろ考えました。Zのすぐ手前のYは日本平ホテルで日帰りとかですね。結果的に、石川県とか長野県を回って帰ってこようというのは、生徒と一緒に決める。この発想を常にやっていました。何か会議をやると、Aプランはこう、Zプランはこう、この間で模索してくれということを、リーダーとして言いました。
 あと4つ目です。これは、正しい、正しくないではなくていろんな考え方があると思います。救えるところから救う形と、全員が救えてからやろうと。どちらも正しくもあり、正しくないという言い方もできると思うんですが、私はまずその発想で、救えるところから救おうということをやりました。そして、大切なのは、救えるところから救ったときに、こぼれ落ちてから対応するのでは遅いので、こぼれ落ちそうな人たちをあらかじめ予測して、それに対して同じサービスをいかに提供するかを考えなさいという指令をしました。こちらが少数派のときだけ、それができると思います。こちらのリソースを効率よく使って、余っている人員とか労力をこちらにたくさん注入するという形でやりました。
 当初の予定では、タブレットは全員に配っていたんですが、Wi−Fi環境が整ってない家が恐らく20%ぐらいあるだろうと、これはなかなかハードル高いねという調査をしました。そうしたら、実際には6%ぐらいしかWi−Fi環境のない家がなかったんですね。ただ、そのときは、20%のWi−Fi環境のない人に対して、Wi−Fiを契約できるところまでどうするか、Aプラン、Zプランで考えなさいという話をしました。
 残念ながら、公立の小学校はそこで一気にZプランでした。もうプリント配付で終わり。私はその中でも、授業を録画して、DVDで焼いて、毎日渡しに行けば、1日遅れだけども授業は受けられるよねと。それに対して提出はプリントと、これはもうYプランのちょっと上ぐらいです。もしくはメディアと連携して、ちょっとしたそういう放送をやってもらうとか。東京なんかはMXテレビと提携して朝のホームルームをやったりしていました。TVK、テレビ神奈川でもやりました。
 最後、5つ目ですね。予測不能、複雑な課題は目的を分類して考える。オンライン学校って、じゃあ結局何というところです。オンライン学校というのは2つあると。
 1つはメンタルのケア。それは学校のホームルームとか面接です。
 もう1つは授業です。これも混在して考えると、できない理由ばかりがたくさん羅列してしまいますので、分けて考えさせました。なので、会議の内容も、必ず分けてやるようにさせました。
 そうすると、最初に授業よりも、ズームを使ったホームルームはすぐできるよねという話になりました。ないんだったら、LINEの動画でも全然話ができるわけですね。場合によっては、電話でもいいから、声は聞かせられるはずだという話もしました。
 私としては経営者なので、場合によってはコミュニティFMと提携して、私学全体でそういう朝のホームルームをやってもらうとかですね。1分間でもいいから癒やしの言葉をかけるとか、そんなことも考えました。あとはオンライン授業。  あとは、学校では実は、ベテランの教員もたくさんおります。私も今47歳ですけれども、大体私より年上の部下が3割以上いる学校ですので、正直、タブレットで写メを撮るところから研修を始めました。
 それで今日、御紹介が遅れましたけれども、ICTの推進をしたメンバーが来ています。私が言ったのは、君たちは町の電気屋さんになりなさいと。大手の電気屋ではなくて、町の電気屋って、私たちが子供のとき、皆様のときもあったと思うんですけれども、私たちのお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが、テレビの映り悪いのよって、町の電気屋を呼ぶ。いろいろ見てもらったら、単にコンセントが抜けていた。それでも来てくれるような、そういうよろず屋になりなさいということで、人員を配置しました。当然、そうすると働き方改革が厳しくなりますので、授業時間数も圧縮したりとかマネジメントをやりました。とにかく不得手な人を基準に考えなさいと。
 全国の学校、公立私立含めても、1つの学校で二、三人のオンラインがうまくやれるスター教師みたいなのがいるんですけれども、果たしてそれが学校全体、地域全体でやれているかというと、やれていないところが多いと思います。掛川西高校も非常によく頑張られていますけれども、どこまで本当に汎用性があるかというのは、私もいろいろ会話させていただいている中で、なかなか現場の先生はもっと広げたいのに、ボトルネックになっている部分があるという悩みも伺っております。
 コロナ禍でこういうことになりました。
 本校の場合は、たまたまインフルエンザで休校があったので、教員に対して2日間準備期間がありました。
 なので、最初は調査を始めました。配付しているタブレット、これも配付と言いましたけれども、私学の場合は購入です。ちゃんと保護者会をして、保護者に説明して、理解をもらって、6万円の投資をして買ってもらっています。ですから、本音を言うと、公立学校が本気出されたら、私立はひとたまりもないんですね。1年がかりですごく説明して、やっと3年前に買ってもらいました。なのでそろってます。その確認をまずしました。
 あと、ネット環境の確認もしましたし、とにかく保護者の理解を求める文書を細かく細かく、動画も含めて発信しました。あと、定期試験がすぐにありましたので、その辺の連携もすぐやりました。あと教員の研修もすぐにやりました。
 これは、学校のホームページに載せたところです。今、見てみれば当たり前のことが書いてあるんですが、ホームルームや面談と授業や課題をしっかり分けて提示しました。最初の1週間は、とにかくメンタルケアなので、朝のホームルーム。これは3点あるんですけれども、制服を着て、タブレットの前で、おはようございますから普通にホームルームをやる。あと、帰りのホームルームですね。15時。それも設定してやりました。これがメンタルケアです。
 あと放課後は、勤務時間以内に収まるように、1日何人かの面談を入れました。ズーム面談ですね。むしろリアルなときよりもズームがあったおかげで、生徒とたくさん面談できました。通常だと部活もあって、なかなか生徒と面談する時間が取れないんですが、オンラインの中で、逆にコミュニケーションが増えました。
 あと授業は、いわゆるオンライン授業には2種類あって、オンデマンドでやる授業、もう1つはリアルタイムでやる授業とあるんですね。リアルタイムでやる授業は、要は今、私が話しているやつを、単純に映像でリアルタイムにテレビのように配信する。実はですね、古い授業のやり方、チョークアンドトークの先生でも、ズームのやり方だけ操作してあげればこれはできるんですね。
 オンデマンドというのは、5分とか10分の動画を作って、それを配信して、それを生徒が見たいときに見て、その後またメールとかで来た課題を書いて、メールで提出する。これがオンデマンドの授業です。最初はオンデマンド授業からやりました。実はオンデマンド授業のほうが、教員としては高度なスキルが必要になります。皆様に、今、例えば何かお話を30分してくださいという形でできないので、5分で動画にまとめてください。そして、皆さんに質問したいことをタブレットで、メールでやってください。これがオンデマンドです。非常にハードルの高いところからスタートしました。
 あと、これが実は、いわゆる若者の言葉で言うバズるという言葉で、3月2日からいきなりこれをやったのが日本で初めてだったので、ホームページが一気に拡散して、全国のネット番組とか雑誌から取材が殺到しました。このホームページです。進めながら修正していくことになりますので、うまくいかないこともありますが、御理解、御協力をお願いします。みんなでよいシステムができるよう、走りながら改善ですね。まさにコロナ禍に必要な走りながらの改善を最初に提示したということです。
 あと、Wi−Fi環境が9名整っておりませんでした。最初の1週目は間に合いませんでしたので、そのことに関しては、プリントを最初配付しました。それでも駄目なら、DVDなのか、もしくはWi−Fiをレンタルしてお貸しすることも考えました。そういういろんな手だてをやって、とにかくその9人の家族を救おうとやったんですが、結果的に1週間足らずで、家庭で早めに契約してくれました。そこで、もうほぼ2週間目から、全校生徒のWi−Fiが整ったということになっています。
 そして、土曜日の午前中に授業がございますので、1日半、といっても各日1時間ずつ、生徒への研修をしました。今回、本当に全国の学校が大変だったのが、たしかあれは、木曜日の夕方に安倍総理がいきなり会見して、土曜日休みですよね。金曜日だけで何とかしろとなったわけです。これは無理です。もしやれと言われたら、木曜日に夜いきなり管理職が集まって、金曜日の朝5時ぐらいに全教職員を集めて作戦立てないと、手だては何もできなかったんですね。私はもう1回、安倍総理がやり直せるんだとしたら、せめて2日ぐらい前に発表する。もしくは3月2日スタートじゃなくて、3月5日スタートとかにしていれば、全国の状況は間違いなく変わっていたと思います。なので、全く準備できないまま、もうとにかく生徒だけ家に帰したというのが、このコロナ禍のスタート段階のお話になります。
 すぐにチーム編成をしました。8名です。ICTが得意というよりも、マインドセットが非常にできて、町の電気屋さんができるメンバー。結局我々も知識がないので、彼らは全部ウィキペディアで調べていました。分からないものは全部調べて。なので、ある1つのすごいシステムを使ったというよりは、これはこれ、あれはこれ。この部分はVHSのビデオを使って、この部分はラジオを使ってと、そういうのを組み合わせてどんどんやっていきました。
 あとは朝の健康観察も、アンケート形式で取ったりしてやりました。
 最初は、オンデマンドでやりました。もうぐちゃぐちゃな状態だったんですね。教員側は、結構自己満足している感じでした。彼らを含めて我々はほかでやっていないことをやれているよねと。でも、私、ちょっと疑問に感じたんですね。これは果たして本当に、生徒、保護者の満足度があるのかなと。取りあえずやっているだけで、我々の自己満足じゃないのかなと思ったので、アンケートを取ってくれました。そうしたらなかなかやはりアンケート、私学なので手厳しい意見がいっぱいありました。ホームルームは評判が非常によかったです。非常に満足が44%、おおむね満足が38%ですので、大体80%以上の方がやってくれてありがとうと言っていました。
 ところが、授業に関しては満足がちょっと低かったんですね。4分の1。これを見逃しちゃ駄目だと。とにかく我々はスタートはとにかくやってみよう。漏れる人をとにかく救おうと。その後はPDCAをしっかり回して、課題ができてきたのを1個ずつ改善していくんだと。全体主義ではない中でしたので、ここが気になりました。
 よって、2週目からは、先ほど申し上げました単純にテレビ中継と同じ形の、いわゆるリアルタイムのライブ配信のオンライン授業に変えました。これによって、ベテランの先生のストレスも大分軽減されたんですけれども、これはなぜかというと、アンケート結果で、オンデマンドで自由なときに見ていいだと集中できないとか、いまいち気合が入らない。
 実は、静岡高校のある教員とも話していたんですが、学力が高くて、自分で勉強ができる子は、実は全然オンライン学校でよかったみたいです。もう学校にこのまま行かなくていいやと。
 ところが、ちゃんとこうしないと集中できない。自分の家で勉強できないんだというお子さんの御家庭は非常にストレスフルでした。そういう部分でも、今回非常に二極化したと思います。ですので、勉強に関しては進学校の子は、実はあまりストレスに感じてなかったと思います。そうではなくて、まだ自分でなかなか勉強できるスキルがない子に関しては、このオンライン化は、非常に大変な状況だと思います。しかも家庭で共働きとか、あと小学校に関しては給食の問題とか、いかに学校がしょわされているものが多くなり過ぎていたか。しつけとか、ライフラインとか、夫婦の問題とか、全てを背負っていたのがはっきり見えたのが、この状況だと思います。
 ですから、学校に対しては皆さん何とかしたいと思っているんです。特に公立学校の先生は何とかしたいと。必ず職員室に二、三人、熱意のある先生がいるんですけれども、その声が上がっていかないのが実情だと思っています。
 聖光の場合、私のようなふざけた校長がおりますから、いいからやれやれでいくんですけれども、そこをぜひ救って、私も小学校の娘がいる立場として、誰も悪くないんだけれども、誰も突破しようとしなかったのが正直なところ。社会構造として複雑化していますので、道理にかなったことではないんですが、学校にこれ以上の負担はもう無理だというのは、私も分かりました。
2週目からはこういった形でやりました。
 その都度、授業時間も変えました。50分を6時間、最初張り切ってやらせたら、目が真っ赤になっちゃいました。調べました。そうしたら、20分に1回は1分の休憩が必要とか、5分の休憩が必要ということで、また授業の時間も変えました。中学生は、50分を40分にしました。高校生は45分にしました。そういうことで、どんどん軽減させていきました。
 そこで言われるのが、学習指導要領があって、現場の先生は真面目なので心配するんですが、このコロナ禍においてそんなことはいいと。まずは優先順位として、生徒の学びと生活を守るんだということですね。私学なんで、最後は校長決裁でいくからと言えたんですが、なかなか公立の先生たちにはそこまで言い切れる権限がないと思います。正直私は、公立の校長先生は、会社で言うと部長ぐらいの権限しか与えられていないと思います。公立の先生に仲間もたくさんおりますので、切なさを感じて見ておりました。
 だんだんコロナが大変な状況になってきました。4月になると、もういよいよ緊急事態宣言も近いなという雰囲気になってきたとき、次に私が考えたのは、教職員の安全と家族への安全ですね。働き方の部分を考えました。
 何をやったかというと、緊急事態宣言イコールロックダウンではないですけれども、なったときに、もう学校に来れなくなると。そうなると、学校の教室でオンライン授業配信もできなくなるということなので、私たちが3月の春休みに備えたのは、自宅で授業ができる環境を整えさせようということをやりました。場合によっては、罹患の可能性がある教員は、自宅待機しながら、発症しなければ授業も配信できるんじゃないかとかですね。御家族で御高齢の方がいる場合は、学校に来なくさせるとか、そういう備えが必要だと思ったので、春休みに2週間かけてそこをやりました。
 調査して、家には黒板がないというのであれば、学校中にあるミニホワイトボードをかき集めたり、家にWi−Fi環境ないんだといったら、学校にあるレンタルWi−Fiポケットを配ったりとかですね。そんなことをもう本当に手作業でやりながら、準備をしました。
 結果的に、あえてそういう期間をつくって、全時間、管理職以外は学校に来ないで、全部自宅から授業配信というのもやりました。これはコンプライアンスの問題が出ます。後ろでよろしくない雑誌が見えても駄目ですし、子供が走り回っても駄目ですから、そこもちゃんと、そういった教育もしてやりました。
 それでも、どうしてもその環境が整わない人に対しては、場合によってはホテルの部屋を借りてとか、まさにAプランからZプラン、そういうことまでやろうを前提にどんどん進めていきました。
 あとは、ズームがあったことで本当によかったのは、職員朝礼と職員終礼が毎日できました。教員が50人、事務職員入れると70人いる、いわゆる中小企業の学校なんですけれども、70人が一堂に会するのは、年に1回だけです。あと職員会議を3週間に1回やってるんですが、まさにこう50人で密室でやるんですが、これをズームでやると10分だけとかが毎日できるんですね。10分で何が起きたかって、PDCAの回すスピードが異常に上がりました。課題があれば、すぐぱっぱっぱと、ちょっと5分集まろうというのはズームでできます。
 なので、今、職員会議も全部ズームでやっておりますけれども、非常にこれはありがたいです。
 あと、県外の姉妹校であります横浜聖光学院の先生もズームに入れます。ズームに関しては、本当にメリットしか感じない。県大、静大の授業も、普通に生徒は受けています。海外の国際交流をやっている学校ともズームで交流しています。
 実際、オンラインで授業できるのかということなんですが、授業できるのかというのは、そもそも教育改革について、文科省がちょっと頓挫していましたけれども、このまま絶対いくわけがないんですね。日本がずっとやってきた、私たちが習ってきたのは、巻末にある答えをなぞるのが上手な人の偏差値が高くなる教育を受けているんです。ところが、22歳で大人になったら、何か開発しろとか、ないものを作れとか、この物をいきなり売ってこい。そこで、どうやって売るんですか。そんなの自分で考えろ。参考書がないことをやらせる。まさに皆様がその最前線で、本当に私たち県民のために動いていただいていると思うんですが、答えも参考書もないんですね。だけど、22歳までは巻末の答えが書いてあるとおりのことをやれば、いいわけです。そんなことやっているのは、高度経済成長のときの私たちだけです。アジアもそうではないです。クリエイティビティで、今ないもの、答えのないことをちゃんと論文で書かせる、それをテストで出す。だから大学のゼミみたいな授業を、もうどこの国も小学校からやっています。それはまさに、コロナのこのチャンスを使うべきなんです。
 だから、何で学力が定着しないのか、要は定期試験がゴールになっているからです。なぞり上手のコンテストをやるのがゴールになっているからですね。だからそこを変えるいいチャンスだとも思いました。
 英語なんかも交流してやったり、家庭科の実技系、どうするんだって言ったんですけれども、実技系もズーム使って、やり方を教えて、マスクを家で作らせたりとかですね。体育なんかは、最近、近畿大学の体操する先生、静岡高校ラグビー部出身の彼がやったりしていますけれども、そんな授業もやってました。
 結果的に、5月に確認しました。授業計画等進んでいないんじゃないかと思ったら、ほぼ同じ状態で進んでいました。授業をサボる生徒もほとんどいませんでした。これも新たな生徒指導で、ズームで授業を受けているふりしているけど、明らかにこっちでゲームしていることが分かるんですね。もう明らかに分かるんです。あと、こうやって携帯いじっている子。保護者がちょっと電話してきます。ちゃんと受けてないわよと。私はこういう性格なので、いやお母さん、たまたま分かっちゃっただけで、あの子、学校に来ているときも、もっと妄想してますよと。たまたま家だからゲームやっているだけで、ちゃんとしつけもよろしくお願いしますねなんて逆襲しちゃったりするんですけれども。あとは、中学1年生なんかだとかわいくてですね、こうしゃべっていて先生が冗談言うと、どうもその1人の子が笑っている声より多いんですね。ちょっと聞いてみたら、画面に映らないように両親がいて、両親がいるならまだいいんですよ。おじいちゃん、おばあちゃんまで授業を聞いているんですね。5人ぐらい聞いていて、これよかったです。
 何がよかったかというと、学校の先生の授業ってブラックボックスなんですよ。よくない先生の教育って、めちゃくちゃ難しいんですね。ところがこれだと、巡回するふりをして、私、全ての先生の授業を見学できました。経営者としては、かなりリスク管理しました。あの先生、この先生、多分保護者からクレーム来るなと。保護者にも、静大の教授とかいっぱいいますので、やばいなと思ったら、思ったより先生頑張ってクレームはなかったんですが、こういうブラックボックスがオープンになったというのも、このコロナが持ってきた。教員にとっては負担になりますけれども。
 あとは、そもそも学びって何なのということを考えさせられるということですね。どうしてもこういった会とかで皆様とお話しすると、枝葉の部分の話になりがちですよね。実際、暗記ものはどうするのとか、テストの点数はどうするのかと。そもそもそうじゃないんです。全体が変わってきてしまっているわけですからというところです。
 ところが、やはり定着率は低かったです。授業は進んでいたんですが、定着率が低くて、暗記ものとかはできていませんでした。模試とかの点数も低かったです。なので、学校が再開されつつあった7月の段階で、私たちもたくさん小テストをやらせました。それは課題があったからです。
 部活なんかも、ミーティング。これはラグビー部ですけれども、ラグビー部は実は9月末まで練習できなかったんですね。1カ月だけで練習したので、今度は負けてしまいましたけれども、ラグビー部が負けたのは私の責任です。部活を再開させなかったものですから。
 あと、町の電気屋さんでよろず屋になりなさいと言ったので、ホワイトボードにベテランの先生とか、ちょっとした困ったことに関してはすぐ書かせて、ICTチームのメンバーがどんどん解決する。図書館とかでありますよね。この本欲しいです、今度仕入れましたとかですね。あとスーパーなんかででもQ&Aってあると思うんですけれども、そういったこともやりました。
 教科指導の効率化というところでいきますと、ティーチングに関しては、オンラインで十分だと思います。ティーチングというのは、要は暗記しなさいというやつです。今、これはティーチングです。ディスカッションは全くないです。私が伝えたいことをただお伝えしている。テストがあった場合、皆さんは私が話したことをちゃんと再現できる。ティーチングは絶対できます。ティーチングに関してはオンラインのほうがいいと思います。今まで50分、こうやってやっていたのが、オンラインでぎゅっとやること、もしくはオンデマンドで動画を作ることによって、その時間が究極に短縮されます。ほかの時間をアクティブラーニングとかICTを駆使したものとかに使えると思います。
 ところが、理科の実験とか実務系です。これに関してはやはりリアルが重要です。
 なので、学校を再開して、意外に英語、数学、国語は生徒もストレスなかったです。ところが理科、体育、あとアドベンチャープログラムみたいな課外活動。これが非常にニーズが高かったです。いわゆる人と人との本当にコミュニケーションですね。そういったところが、実は学校の中で重要だったんだと。今までそれがおまけだったんですね。部活にしてもおまけだったんですよ。だから、非常に法律的にも中途半端で、放課後にやる、もしくは特別行事として、課外活動でアドベンチャー・プロジェクト、例えば、一緒に壁をどうやって協力して登るかとかですね。
 でも私は、本当に教育改革と働き方改革を両立するんだったら、部活で得られる力とか、アドベンチャー・プログラムで得られる力を、9時から4時の1時間目、6時間目のところに入れるべきだと思います。体育の授業も、いつまでたってもうまくならない。皆さん、体育の授業でうまくなりましたか。私、いまだに泳げないんですよ。サッカーも蹴れないんです。単に学習指導要領どおりやっているだけなんですよね。英語の授業でしゃべれなかったですよね。日本人の悪い癖で、まさにフォア・キャスティングで順番にやるんですよね。だから、最初は読み書きで入って、最後、しゃべるところまでいかないで大人になっちゃう。
 私は社会の免許を持っていますけれども、皆さんが日本史で一番詳しいのは縄文時代のはずです。順番にやるからです。進学校でも、近代史はあとやっとけなんですよね。これを変えようというので、教育改革で地政学、地理を必修化したんです。皆さん、何で地理を必修化だよと思いますよね。まず、私たちにとっての地理は、奥羽山脈をどうやって覚えようとかですよね。違うんですよ。地政学なんです。今、なぜヨーロッパでこういう問題が起きているか、中東でこういう問題が起きて、なぜ東アジアに緊張感があるのかというのを提示してから、地理と歴史の部分。あ、でも待てよと、今、フランスで起きている課題って、300年前のどこどこの国に近いよね。そのとき初めて歴史をひもとけばいい。そういうことを今、教育改革はやろうとしているんですが、なかなか文部科学省の方も中途半端で、跳ね返されてしまっていると。
 英語もそうですね。何で順番にやるんだと。4つ同時にやればいいじゃないかというのが、私の考えている英語の教育改革なんですけれども、そんなことがいろいろとはっきりしました。
 だから、ティーチングに関しては、オンラインで全然いけます。あとは、いろんな意見を組み合わせたり、アクティブラーニングとか、プロジェクト・ベースド・ラーニングとかで、答えのない課題をやったりするのは、なかなかこれでは厳しいです。
 ところが、オンラインでも少人数会議はできるんですね。50人一斉授業をやっていても、ブレイクアウトルームというのがあると、例えばこちらの3人はAという部屋で、ズームの中でそこで小ミーティングができる、そんな機能も実はついております。
 このお答えとしては、教科指導の効率は、もう極めて進みました。ただ、既得権とか、今までのやり方を変えたくない人たちが抵抗しているだけだと思います。全国の学校の先生はみんな薄々気づいています。今までのチョーク・アンド・トークに50分使ったらもったいないんだということには、皆さん気づいていると思います。
 ところが、アクティブラーニングがうまくいかなかった。あと、総合学習の時間がうまくいかなかった。先生たちは、教育学部とかではやっぱり新しいものを考えるトレーニングを受けておりませんので、そのパッケージをあげないと動けないんですね。それがまさに、日本国内の今日現在の状態ですね。
 コロナに関しては、本質の顕在化について今、お話をしました。もう1個は現象の二極化です。
 言い方は悪いですけれども、経済的な話で言えば、勝ち組、負け組がはっきり分かれました。私は静岡県の教育行政は、決して勝ち組になっていないと思います。今、広島県の教育長の平川さんがいるところとか、熊本県とか、そういうところをまさにモデルケースとして、いっぱい視察に行っています。静岡の教育行政を視察に行こうって、聞いたことないです、私は。これは、静岡県の人のマインドを変える必要があると思います。みんな真面目な方が多いんで、フォアキャスティングなんですね。
 皆さん、職員の人も、じゃあ視察へ行ってきますって、どこへ行くかというと、日本の中で結構頑張っているところへ視察に行くんです。ところが、本当に県民のことを思えば、世界の潮流も見るべきだし、私立公立の壁なんて関係ないので、私たちのところにも視察に来ていただければよかったわけです。でも、そういう動きはない。1番、2番のところを調査して、それを何年も後にまねしてやる。これでは、いつまでたっても優秀な人は静岡県に集まってこない構図です。
 言葉は悪いですけれども、どんどん縮小して、シャッター商店街と一緒です。ところが、外にはもっとすごいことをやっている人も、みんな知っている。だけど、お互いのお店で買物しようねと。だけど裏ではアマゾンで買って、休日はショッピングモールへ行く。そういう状態になってしまっている。そうではなくて、そこにも新しい知恵とか優秀な人材を入れて大きくしていくことを、これから静岡県の教育界はやっていかなきゃいけないし、私もその一助になればと感じております。
 もう前のような学校には戻れないよと、ベテラン教員も言っていました。
 学校という場の再定義が突きつけられているんですが、今まで先生たちが大切にしてきたものは、全然無駄ではないです。それがもっと効率化できるということだし、もっと深くできるということですね。ICTを使ってごまかすのではなくて、あえてチョーク・アンド・トークをやっている先生のプレゼンがもっとよくなるとかそういうことで、本当はもっと頭を使っていただくと。
 今、実は学校で何が起きているかというと、これはかなり生々しい話です。メンタルケアが非常に重要になっています。芸能人の方の訃報等ありましたよね。竹内結子さん。あの前後は、大人も子供も、ちょっと様子がおかしかったです。正直、ちょっと自殺願望があるような子の表現が出てきたりとかですね。あのとき、私、かなり危機感を感じました。二、三週間前からまた明るくなってきましたけれども、9月、10月は、実はどの学校でも非常に危うい生徒、教師、あと実は危うい保護者、家庭、たくさんあったように思います。
 自殺というのが報道されている。自殺っていう選択肢があるという人間の深層心理になってしまうんですね。あ、この手があったかみたいになってしまうわけです、悩んでいる子は。そこは非常にきわどいところがありました。これに関しては、公教育のほうがカウンセラーとか、いろんな行政サービスが本当に羨ましいぐらい学校にもありますので、ぜひこの部分もヒアリングしていただいて、より手厚い支援をしていただけたらと思っています。
 あとは、一番重要なのは、元どおりに戻したい人。やっと戻ったから、普通のチョーク・アンド・トーク、50分やるぞという人はいて当たり前だと思います。元どおりに戻りつつあり、安心している人、これもたくさんいると思います。ただ、教育行政として拾っていかなきゃいけない、ピックアップしなきゃいけないのはこの3つ目、進化の流れが止まり、現場で途方に暮れている人です。掛川西高校の先生もそうだと思います。そういう人をもう1回引上げていって、ちゃんとそこを全体に汎用性がある形で、県全体に広げていく。そういう活動を実は今、やらなければいけないと思います。
 今、安心した振りをしていますが、ロックダウンが今起きたら、どれだけオンライン授業を静岡県の小学校、中学校、高校ができるんですかという話です。47都道府県でまたプリントを配る県があると思います。静岡県は、コロナで感染者がずっと24番目ぐらいだったんですね。今、13番目ぐらいなんですよ。なのに、後ろのほうに来てるはずです。非常に、情けない話だと思います。
 だから、ずっと性善説――こうあってほしいなって、2月や3月のときも、卒業式をやりたいと。そんなこと今、誰も思いませんよね。無理ですよね。みんな、今、よくないほうに全ていっているわけです。リスクマネジメントというのは、最悪の状況から、ZプランからAプランを考えることですので、これは本当に危ない状況です。年末ぐらいに、場合によってはあり得ますよね、緊急事態宣言。またプリントを配りますかという話です。私はもうDVDでもいいから焼くべきだと思います。DVDのハードがなければ、民間に頼めば、今、3,000円で買えますから、寄附を募れば全然配れると思います。
 あと、現場の先生たちです。すごく進化しているものを掛川西高校の先生も持っていると思うんですが、それを発表する場もないし、多分職員室の中で、もういいから、今、落ち着いているから、元に戻っているからとなっているのが学校の現場だと思います。
 ということで、混在しましたけれども、第4波以降への備え、マネジメントですね。
 テストの評価なんかも、もうどうするんだなんて言っている場合じゃないんですね。テストできないというのを前提にして、授業自体の評価を変えるべきです。これはロールモデルがあります。大学の授業です。大学の授業で一発試験って、大学の一、二年生の必修だけですよね。そこを変えていくと。並行してやっていけばいいと思います。本校もそれをうまく並列させながらやっています。まだ10人ぐらいが学校に来れていませんので、そういうこともやります。
 あとちょっと前後しましたけれども、不登校ぎみの子にとって、オンラインはすごくよかったです。私学なので、小学校6年生のときに不登校ぎみだった子の受皿にもなっているわけですね。具体的には5名ぐらいおりました。その子たちは、基本的に4名はオンラインのおかげでスムーズに入れて、9月以降、毎日学校に来れてます。これがコロナの前だったら、多分その子たちはかなり苦戦しながら家庭訪問しながらだったと思うんですけれども、できました。
 あと、オンラインのいいところは、こういったところだと、声の大きい人とか目立つ子がどうしても主役になります。でも、オンラインだと声のトーンが一緒だし空気が読めないので、ふだんおとなしい、いわゆるボリュームゾーンの中間層の子がいっぱい発言できる、そういう発見もありました。あと、チャットがあるので、しゃべるのが苦手な子も、チャットで物すごい思慮深い話をしてくれたりとか、そういう発見もありました。
 これからの学校についてですが、ジャック・ウェルチが言っていました。変革せよ、変革に迫られる前にということです。社会構造の話は皆様には釈迦に説法ですが、構造も変わってきております。今はSociety5.0、超スマート社会と呼ばれるものです。これは、超スマート社会だから大変だねということではなくて、1から2、2から3、3から4、4から5が、期間的にどんどん飛躍的に圧縮されているということです。1から2は何千年とかかっているのに、4から5はもう本当に数年できています。また、5から6、私たちが知らないSociety6.0という言葉もどこかであるわけです。
 私たち教育は、本来は今まで積み上げたものを、昨日と同じ教育を明日やるんではなくて、この子たちが大人になったときに、どういう世の中になっているから、逆算して、今、この力を備えてやろうというのが、私たち教育の本当は役目だと思うんですね。私たちが未来を予測していかなきゃいけない。そこにはもちろんリスクはあると思うんです。けれども、私たちが今の常識を教えるんじゃなくて、未来の常識を先駆けて準備させて教えていく、つくっていくのが、本来の教育だと思います。
 これは通常の学校です。明治初期に学校制度が確立されて、寺子屋とかの役割が終わって開智学校の様子です。全く変わってないんです、施設として。これをいつまで日本だけやってるんですかと。海外へ行ったら、インド、インドネシアの学校はこんな感じです。普通にみんな寝そべってアクティブラーニング。なぜなら、寝そべることはよくないけど、自由闊達な意見をだすなら、リラックスしたほうがいいよねという逆算から、こういう教室なわけです。別にふざけているわけじゃないんですね。真面目にやる教室も当然あります。こういう形ですね。もう動いています、世の中は。
 異質性を伸ばす方向に大きく転換し、失敗を恐れず調整する習慣を身につけさせるべき。基礎的なリテラシー、文理分断からの脱却、トップ人材の育成等の観点から、教育の在り方を見直すべき。私たちは静岡県の中で、ここの部分の役割を担いたいと思っていますし、それが自己満足とか、私立内の競合ではなくて、ミッションスクールでマン・フォー・アザーズですので、誰かのためにで、公教育のみんなもやる。公教育の人も頑張って、私たちも刺激を受ける。
 特にICTに関しては、デバイスというのは、パソコンとかタブレットのことです。デバイスをとにかくみんなが持って、みんなが勝手に使い始めると、テクノロジーは異常なスピードで上がるんですね。一部のマニアックな人が、システムエンジニアみたいな人が専門的にやるんではなくて、みんなが。アマゾンがキンドル――タブレットで読む本を無料で配布したのはそういうことです。無料で配布すると、失敗もいっぱいあるけれども、どんどんPDCAが回るので、物すごいテクノロジーが上がるんですね。早く静岡県民も全員がタブレットを当たり前に持って、当たり前にトライ・アンド・エラーする。当然、いっぱいいろんなことがあります。アダルトサイトにいってしまうとか。そこでいじめが起きたりとか。だけど、新しい概念として、それも受け入れる土壌もつくりながら、どんどん走っていく必要があると思います。究極は立ち直れれば、それはリスクじゃないと思います。何かいじめがあっても、立ち直れる風土だとか、それを支援する人たちがいれば、それは前進になると思います。なぜなら、今の子供たちが大人になったら、当たり前にそれを使いこなす時代になります。小中高それをやらずに、いきなりネット社会で、SNSで誰か誹謗中傷して逮捕されたら、それはアウトなわけですね。ぜひその関係をつくっていただきたいと思っています。
 また、今の教育に足りないのは、これはケネス・J・ガーゲンという心理学博士が言っているんですが、ほとんどの人にとって、どうすれば一緒にアイデアをつくれるかについての練習が少な過ぎると。小学校、中学校、高校の教育で解決策をみんなで探りましょうという授業は、ほとんどなかったです。理科の実験も、落ちが分かっている理科の実験だから全然楽しくなかったです。唯一あったのが、帰りのホームルームです。誰かと誰かがけんかした。これ、みんなでどうやって解決するの。1時間ぐらい帰れないときってありましたよね。学校がいろんな社会課題とか、そういうことを話し合うのが今の世界の潮流です。
 なので、今いろんな施設を造ったりして、私学だからと言われるんですけれども、全て自前で、全て寄附集めをしてやっています。このまんま、本当に生徒がどんどん減っていったら、私たちも潰れざるを得ません。ただし、私はその組織を残すことではなくて、私たちがこの静岡県と地方の中でチャレンジするというスピリッツだけは残していきたい。学校は潰れたとしても、その理念が残ればいいと。寺子屋にしても、松下村塾にしても、今はないですけれども、その理念が残って、今、この国をつくってくれている。そういう存在でありたいということを、校長になったときに、内外的にも宣言させていただきました。
 ということで、最後です。いろんなお話をさせていただきました。国際交流もいっぱいやっています。
 あと、バカロレアというのがあるんですけれども、今、私たちがやっているのが、ケンブリッジ・インターナショナル・プログラムというんですね。バカロレアはフランスとスイスがどんどん世界進出をしていく中で、子供たちが世界に散らばるので、みんなが同じ国の大学にいないから共通認定試験みたいなのをつくったわけです。文部科学省がそれを輸入して、今、躍起になって広げようとしているんですが、世界にはもう1つ大きな柱で、イギリスが中心になっているケンブリッジAレベルという、同じ卒業認定試験みたいなのがあります。私たちは、日本で最初にできたエージェントと最初に業務提携しました。ですから、これから静岡県には、バカロレアだけじゃなくて、Aレベルが取れる学校があるぞと。これに関しても、私たち生徒数が少ないので、増えないんですね。この間も県の教育委員の方にお会いして、ぜひ公立でも検討してくださいというお知らせは、もう既にさせていただいています。これはまさに、日本で一番最初に取り組んでいることになります。
 しかも、バカロレアは放課後3時間オンラインで受ければ、2年間でその資格が取れるんですね。学校のカリキュラムの中に入れるので、ダブルスクールみたいになって人件費も大変だし、お金もすごくかかる。加藤学園暁秀高校では月々10万円ぐらいかかるわけですね。そういうところです。
 あとはもう英語も小学校で必修はいいんですけれども、英語嫌いの子も入ってきてしまっています。一方で、英検1級の一次試験に受かるような子が、今、中1におります。英語教師よりも英語がしゃべれるような子が入ってきた。いるんです、静岡県には。ところが、静岡県の教育機関にその受皿がないんで、大体県外のエリート学校に転出します。もしくはインターナショナルスクールに転出します。じゃあ、静岡県にインターナショナルスクールができたら、その人材が静岡県に集まるかというと、集まらないと思います。もうとっくに進んで、とっくにいい学校がいっぱいありますから。
 あとは安比高原に、ハロー校という、イギリスのハリー・ポッターのところですね。ジョンソン首相の前の首相の出身校です。ハロー校の日本校が安比高原に造られます。ところが、これはチャイナマネーを狙っています。日本人じゃなくて中国人の受皿。そんなのがいっぱいあるんです。そこはもう、さっき言った創造性あふれる授業ばっかりやるんですね。そんな中で、英語は私立ではもともと週7時間あります。公立は4時間です。3時間は自由に使えるので、その3時間で、インターナショナルスクール姉妹校から派遣されている教員と、こういった2対1のオールイングリッシュの授業を特別扱いしてやっています。こういう発想がこれから必要になってくると思います。
 公立で頭がいい、附属中学へ行って、静高へ行って、中部地区ですとね。西部地区だと浜松北高へ行って。多分それで満足しない層が、たくさんの若い世代が、小学校に保護者としています。この子たちを本当に県外に流出させてしまっていいのか。流出させたところに、県外から優秀な人が来るか。来ないと思います。そういうところは、またぜひ情報交換させていただいて、私たちは中小企業ですので、ちょっと生徒数が集まれば安定しますので、それよりももっともっと広げていきたいし、皆様がやりにくいところをチャレンジしていきたいと思います。
 あと、静大の留学生もアルバイトで雇って、1つの授業で6人ぐらい来てくれています。男子校なので、ちょっと女子大学生が来ると、どきどきしちゃって全然しゃべれないんですけれども、半年ぐらいすると慣れてきます。
 高大接続、これは京都大学とコラボして、ズームだからできました。そんなこともやってます。
 あと、クラウドファンディングでお金集めですね。静岡市内でも賤機中小学校が1学年1クラスしかないので、タブレット買うためにクラウドファンディングをやりましたね。ただ、まだ、クラウドファンディングをやると、二、三件苦情の電話がきます。あんないかがわしいのでお金集めしてどうなんだと言われるんですが、世界中では当たり前にやっています。
 これは音楽の授業ですが、作詞作曲とか普通にやるんですね。まさに黒板で授業ではなくて。
 田宮模型さんとコラボして、創造力、手を使うとかです。静岡県の財産なわけですね、ものづくりというのは。そういうこともやると。
 いろんな模型の開発とかで、模型の人をただ持ってくるんじゃなくて、共同開発することで、田宮さんにとってもメリットがあります。田宮さんもユーザーである中学生、高校生の生の声を聞きたいので、田宮の社内会議に我々の中学生が参加するなんてことも、今、検討しています。こういうことができる時代なんですね。
 今、何か大人側が分からないのにパッケージをつくって、それを学校に売り込む。なんちゃって産学共同プロジェクトみたいなのが多いです。ところが、高大接続も、県立大の竹下学部長っているんですけれども、テレビとかにも出ています。ラグビーで懇意にしているので、その授業に普通にオンラインで参加する。そのままオールイングリッシュのエコノミックの話とかができる時代です。もう、なんちゃってじゃ駄目だと思います。
 最後になりますけれども、一応本校は首都圏の意識高い系の保護者が読んでいるプレジデントファミリーで春に、学力を育む学校トップ10に東京以外で唯一入っています。これはありがたいんですけれども、今、県外で、うちすごく人気が出ています。でも静岡県内だと何か変なことやっているみたいな感じになってちょっと残念なので、変なことはやっていませんよと。私、本当に公立の教育もよくしたいし、ただ静岡人を強くしたいんだという、私もルーツが静岡県ですので、そういう思いで今、必死に動いているというところでございます。
 最後になりますが、9月になってまだ東京の子で来れない子がいましたが、あとはほとんど来れています。9割来れていて、1割来れていない。そうなると、ズームでやる授業が難しくなるんですね。1割の生徒のためにここで説明して、リアルでいる子にも声がけする。それは大変だねということで、彼らにお金は出せない。1割の生徒を救うためだけにはお金は出せないから、すごく安い価格で教室にカメラをつけて、なおかつ授業をやる側が両方に対してストレスない形、家にいる子はテレビモニターもつけて、クラスの様子が家からも見える、仲間ともおおーとかやれる。休んでいる子がここに顔が写って、一緒に授業を受けている。そういうインタラクティブな部屋を造りなさいと。ただし、この半年間、私立だからできたよねとさんざん言われた悔しさがありましたので、公立でも使えるぐらいの安いお金で業者を仕切れってやりました。結果的に1部屋20万円。PCとかはもちろんなきゃ駄目ですけれども。カメラをつけて、テレビモニターもつけてと、インタラクティブなものを開発しました。県教育委員会の方も先月は15人視察に来ていただきまして、こういうのもどんどん導入してくださいと。
 これは、例えば東京の子が1人来れてなかったとしたら、これは別に10人でもできるわけです。彼からすると、教室の姿も見れる。一番難しい黒板の写し方なんかも、うまく開発してですね。これまた、御質問あればお答えできますけれども、テレビカメラのリモコンみたいに、ウィーンっていってここを写したり、ウィーンっていってここを写ったり、ズームしたり、ズームアウトしたりという仕組みもつくりました。なぜ20万円かというとですね、補助金とか入れて10万円、あと10万円は、例えば地域からの寄附とか、クラウドファンディングは分からないですけれども、そういうことであれば不可能じゃないはずだという勝手な仮説です。
 全教室でなくても、各学年1教室、この設備を6教室造れば、120万円ですね。ズームの授業は録画できますので、休んでる子が授業をもう1回受け直せるんですね。これもすごいです。だからこれを、やせ我慢して1年間やれば、1年分の教材が完成するんですね。来年、教師がいなくても、その授業はオンラインでできるようになるわけです。今すぐその設備を造って、すぐ録画してくださいと。1年分ためてくださいというのは、本当に切なる願いとして私も持っています。そういうことが今、できる状態なんですね。
 不登校の子も当然見れますし、あとはいろいろ障がいを抱えている方なんかも、ちょっとずつその子の進度に合わせた形で、その動画を使ったりできる時代になってくるわけです。
 私のほうから、今、学校で何が起きているかということに関して御説明させていただきました。一旦、こちらで区切りにしたいと思います。ありがとうございました。

○藪田委員長
 ありがとうございました。
 以上で、星野先生からの説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 委員の方にお願いいたします。
 質問はまとめてするのではなく、一問一答方式でお願いいたします。
 それでは、御質問、御意見等がありましたら、御発言願います。

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