• 携帯電話向けページ
  • Other language
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • 組織(部署)から探す
  • リンク集
  • サイトマップ
  • ホーム
  • くらし・環境
  • 健康・福祉
  • 教育・文化
  • 産業・雇用
  • 交流・まちづくり
  • 県政情報

ホーム > 静岡県議会 > 委員会会議録 > 委員会補足文書

ここから本文です。

委員会会議録

委員会補足文書

開催別議員別委員会別検索用


平成27年10月地方分権推進特別委員会
株式会社経済戦略構想 代表取締役 磯山友幸氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/16/2015 会派名:


○磯山友幸氏
 磯山友幸でございます。どうぞよろしくお願いします。
 また、本日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。
 元来、ジャーナリストをやってまして、日本経済新聞というところに勤めさせていただき、そのあと独立しまして、フリーでジャーナリストをやりながら、大学の講師をやったり講演をやったり、いろんなことをやらせてもらっています。基本的にはジャーナリストでありまして、多分非常に雑駁なお話になるとは思いますが、その辺は御容赦いただければと思います。
 本日、地方公共団体が自立していくための経済政策というお題を頂戴しております。私は、先ほど委員長から御紹介がありましたように、「WEDGE」という雑誌で――幾つもある仕事の1つなんですが――地方創生といいますか、地域おこしの事例研究で月に1回連載があり、いろんな場所へ行くということをここ1年半、2年ぐらいやっております。地方へ行くと、いろいろ切り口を考えて取材をするわけですが、大体、トップダウンで町おこしをしようという方とか、あるいはボトムアップで現場現場でいろいろな町おこしをされようという方とか、人にスポットを当てた特集を組んでいくということを今やってるんですが、その際に、必ずお聞きしていることがあります。特に県あるいは市町村の首長さんとか、あるいは県議会のトップの方とかに会いますと、必ずお聞きするようにしていることがあります。何を聞くかというと、「あなたの県は自立できますか」と大体聞いております。これは、どういう意味で自立かというと、当然財政的な自立でありまして、お金の面でお宅の県は自立できるんでしょうかって大体聞くんですね。そうしますと、十中八九お答えは、いやそれは無理ですねという答えが返ってまいります。
 その一方で、その地域の方々のお話を聞いていますと、大体お国自慢があるわけでございます。例えば宮城県の場合は、仙台伊達藩ですね。仙台伊達藩というのは、有数の大藩であってというお話をされるわけですが、当時は伊達藩というのは表高62万石という大藩でありまして、享保のころといいますから、ちょうど江戸の最初の成長をががって進んで、それがピークに行く、1つ目のピークにくるのが享保年間でありますが、そのころには、実際には100万石ぐらい生産をしていて、そのうちの25万石から30万石ぐらいを江戸に出していたというんですね。ですから、つまり輸出超過の藩でありまして、もちろん天保の大飢饉とかが起きると大変なことになるんですが、基本的には通常の生産活動をしているときには、非常に豊かな県であったと。そういう話を大体されるわけですね。今でも当然、伊達政宗公は地域の象徴でありますし。
被災した後、何回も宮城県へ行っているわけですが、宮城県議会の議長さんや有力な先生にも親しいものですから会うんですが、お酒を飲んだときなんか話をすると、いやそれは宮城県が自立なんていうのは無理だと、絶対おっしゃるわけであります。何で無理なんですかと。江戸時代、第一次産業に頼っていたとはいえ、そもそも自立していたんじゃありませんかと言うと、うーんと言って黙られてしまうということであります。
 宮城県は、震災前の予算規模というのは1兆円ぐらいでありましたが、今は1兆7000億円ぐらい、一時は1兆8000億円ぐらいの予算規模になりまして、自主財源比率が46%と言っていますが、県税で入ってくるのは17%ぐらいしかないということであります。ですから、これを見ると、当然無理だというふうに言わざるを得ないということなのかもしれません。
 私の友人に、富山県庁に勤めているのがおりまして――ゼミの同期で、新幹線の誘致なんかを中心になってやってた男なんですが――富山県というのは非常に有数の豊かな県だと思います。持ち家比率全国2位とか1位とかですね。そういう、個人は非常に豊かなところであります。米の生産量は22万トンで日本一だとかですね。製造業に従事している人の割合が高いとかですね。実はちゃんと現金収入もあって、第一次産業もあって、なおかつ消費水準も高いという、非常に豊かな県なわけでありますが、そこで聞いても、いやそれは国に支えてもらわないと無理だという答えが返ってきます。最初からもう自立というのは無理だというのが前提になっているわけであります。
 じゃあ、どこが一体、日本の中で自立できるのかと。これは、もう釈迦に説法でございますが、財政力指数というのを見ると、都道府県では1つも1を超えているところはありません。つまり、東京都も一番稼いでいるように見えますが、実際上はもう財政力指数は1を割っているということで、基本的には都道府県レベルでは、財政で自立できるというところはほとんどないということになっちゃうわけですね。この数字だけを見ると。じゃあ、実際にその財政力指数だけで上下を見ると、一番トップなのは愛知県の飛島村というところでありますが、御存じの方もいらっしゃると思うんですが、湾岸地域のほとんど人が住んでいなくて、工場がたくさんあって、工場に本社を置いている中小企業、大企業がたくさんある。税収が多い割にはいわゆる行政コストが低いというところであります。あと2位、3位は、これは見てわかるとおり、原発関連施設があって、そこからお金が入ってくるということだと思います。つまり、いわゆる普通の自治体では、このランキングでは絶対に上に出てこないという不可思議なことになっているわけであります。
 当然、地方交付税交付金というのがどんどん削られてまいりまして、地域の財政というのはどんどん厳しくなっていったんですが、民主党政権のころに、一旦、切り過ぎた地方交付税を戻すということで、若干戻ったのですが、またアベノミクスで、安倍内閣になってからじりじり減っているということです。今、16兆円ぐらいの地方交付税交付金というのが全国に配られているということですが、どう見ても、この地方交付税交付金が今後どんどんふえていく見通しというのはないわけであります。その中で、どうやって財政的な自立というのをしていくのかというのが、大きな課題になっているということだと思います。
 さっきの地方交付税交付金をもらってない団体、不交付団体は60しかないということでありますね。全国に地方自治体は1,700幾つ、1,800近くあるわけですが、そのうちの60しかないというのは、本来、地方交付税交付金というのは、全体を集めて、それを分配して均等にならすと、地域の均衡ある発展をさせるために財政調整をするというのが本来の趣旨だったはずなわけでありますが、今は既に、ほとんどどこの自治体も全部もらうだけになっている。制度的にもう破綻をしている、つまりそういう調整機能ではなくなっていると。一旦吸い上げたものを上から全部下へばらまくというだけの仕組みになってしまっているということであります。
 地方交付税交付金をもらっていないところはどんなところかというのが、ここにありますが、これも当たり前のところなんですが、首都圏の近郊の市、町というところですね。東京に10市町あると。それから愛知県に14市町村あると。それから神奈川県は5市あるということで、大体大都市圏の市町が一つ、グループとしてあります。それから、原発の関連施設が立地しているところ。先ほどの北海道泊村、六ケ所村、それから新潟県の刈羽村とか玄海町といったところが不交付団体であります。それからあとは、大きな、非常に大きな税収が入ってくる事業所が立地しているところということで、浦安市は例えばオリエンタルランドがあるとかですね。それから、比較的豊かな住民が住んでいるという新興住宅街だということもあります。それから、山梨県忍野村というのはちょっと意外なんですが、これはファナックという上場企業がありまして、ほとんど人口がいないにもかかわらず、ファナックから上がってくる税収で財政が黒字になるということであります。ちなみに、忍野村はファナックの業績によって、村の財政が常に左右されるという、1社依存型の企業城下町みたいになっているところが、忍野村の人に言わせると、痛しかゆしということであります。
 ちなみに静岡というのは、以下の4市がことしは不交付団体だということが総務省の資料では出ておりました。
 これは、国の財政ですけれども、国の一般会計歳出が100兆円ぐらいありまして、税収はここへきて若干急速にふえていますけれども、このワニの口と言われていた歳出と歳入の差というのが、基本的には埋まっていないということなので、これはこのままいっても――プライマリーバランスになったとしても公債費がありますので――縮まることはない。つまり財政的な余裕がないので、これ以上歳出はふやさないから、地方交付税交付金というのはふえないということであります。
 地方交付税交付金に対する問題点というのを、ずっと長年言われているわけですが、一番ここで問題にすべきは、自立を阻害する役割をむしろ果たしているということだと思いますね。つまり、国依存の意識を徹底的に植えつけてしまうと。お宅は自立できますかと聞くと、いや無理だねと即座に返ってくるのは、基本的にこの地方交付税交付金というものが、我が県の場合は3割占めてると、2割占めてると、そういうことで常に国からお金がくるというのが前提になっているから、無理だということになるわけであります。
 それから、財政の健全化のインセンティブが働かないというふうに書いていますが、基本的に財政を健全化しようとして、仮に例えば黒字になると、今度は不交付団体になって交付金が入ってこないということで、基本的に財政を健全化させるインセンティブというのは全く働かなくなっているわけであります。端的に言うと、この地方交付税交付金制度というのは、自立させないための制度になっているのではないかというふうに思います。
 県はじゃあ、その中でどういう役割を担ってきたかということでありますが、やはり国の出先機関としての役割、色彩がどうしても強くて、県民をまとめた自治団体であるという意識が希薄になるという面が、どうしてもあるのではないかというふうに思います。
 そうはいっても、ここへきて、このまま国の財政がどんどん赤字になっていって、地域に自立をしてもらわないことには、国全体がもたないというのは、もう自明のことだと思うんですね。それは、小手先直しの制度改革というのをずっとやっていっても、いずれ、早晩限界にくると。税収もどんどんふえるという見通しはありませんし、結局その地域の中で完結するという単位をどうやってつくっていくかというのが、これから国全体のバランスをとる上でも必要になる。2002年に小泉内閣ができたときに三位一体の改革というのが始まったわけでありますが――最近はそんなこと一言も誰も言わなくなっていますけれども――基本的には税源の移譲と権限の移譲と、それからその一方で地方交付税交付金制度の抜本的な見直しと、それから補助金の撤廃ということが、必然的にやらなきゃいけないことになるというふうに思います。
 じゃあ、本当に、今1,800ある自治体というのは、全員、みんな自立ができないのかと、それにまず疑問を呈したところがあります。それは、大阪府、市の場合でありまして、上山信一さん――前に国土交通省にいて、自称改革屋と言っている慶応義塾大学の先生であります――が、大阪維新の会の顧問とか、大阪府市の特別顧問もやっていますが、もともと大阪維新ができる前の、大阪の關市長のころから改革をやっていた人でありまして、もともとは大阪出身の人で、大阪をどうやって自立させるかということをずっと考えている人であります。彼はこの数年の大阪改革の中で、大阪市域から上がってくる税収のうちの3分の1しか大阪市域に還元されていないということをずっと強く言っていたわけであります。これはちょっとレトリックが難しくて、この下に書いてあるように、大阪市で上がっている市税と、当然府税もとるわけでありまして、国税もとっている。それぞれの金額が大阪市税は6236億円あって、府税が5674億円あって、国税が2兆7791億円上がっているのに、それぞれ右側に書いた市へ還元されている部分というのは、これだけであると。市税は当然市のために使うわけですから全額還元されていると。府税は5674億円のうち、大阪市に使われているのは1359億円であると。国税は、大阪市域から上がった国税のうち、大阪市に使われている、多分これは地方交付税交付金を計算しているんだと思いますが、5447億円であるということで、彼らがどういう言い方をしていたかというと、大阪市民は7987億円、つまり府税と国税で大阪市に戻っていないものは、大阪市からの交付税として全国にばらまいているのであると、そういう主張をしておりました。つまり、自分たちで本来は自立できる金があるのに、それをむし取られているということですね。ですから、そもそもこういう主張を大阪府市がした1つの理由は、やっぱり大阪府市の経済的な地盤の猛烈な悪化というのがあります。大阪府市は、そもそも東京と並ぶ経済圏だったわけでありますが、府民所得はもうどんどん伸びがとまりまして、むしろ最近は減少して、今は神奈川県、愛知県に抜かれている、1人当たり県民所得はそこまでいっているということで、基本的にこのままでは、大阪府市が沈むということで、この議論を持ち出したわけであります。
 政治的に今、大きく後退をして、この改革はどうもうまくいきそうにないわけですが、基本的に彼らが持っているパッションは、日本の政府の中から自立することというのが、彼らの狙いであります。だから維新なのであったんだろうというふうに思います。
 ですから、自立をするということになると、やっぱり基本的にはこの財政の自立というのをどうやってなし遂げるかというのが、大きな大きな課題になるということであります。
 ではその静岡県というのは自立できないのかと。静岡県のホームページに載っていますあの静岡の財政状況というところには、大体人口が書いてありまして、面積も書いてありまして、全国10番であると、県内総生産も全国10番であると。1人当たり県民所得は全国2位であると、非常に豊かな県であるということを声高にアピールしているわけでありますが、じゃあこんな豊かな県が、何で財政の自立ができないのかと。
 自主財源比率が52.3%であると平成25年度の決算では出ておりました。歳出1兆1574億円で、歳入1兆1804億円あって、自主財源は県税と地方税で6173億円あると。そのほかに地方交付税が1558億円で、国庫支出金、いろいろな補助金ですね、1451億円あるという。そのほかは当然、差額分は公債費でありますが、じゃあ静岡県域で上がっている国税の徴収額、これは税の決定額ですけれども、どれぐらいあるのかと調べてみましたら、8930億円あるんですね。つまり、静岡県域から上がっている所得税、法人税、消費税、それから相続税、酒税、たばこ税という国税は8900億円ぐらいあります。これは国税庁が地域別に都道府県別の国税徴収額というのを出してますので、すぐにわかります。
 8900億円のうちの4割が所得税で、2割強が法人税で、3割が消費税ということで、ここで注意しなきゃいけないのは、消費税は地方消費税分がダブルカウントされていて、県に入っている自主財源とダブるので、その分を本来は差し引かなきゃいけないということですが、基本的に大きな税金というのは、その3つであります。
 地方分権で税源の移譲というのが常に議論になるんですが、消費税を地方税化するというのは、いろいろな政党から案として出されたり、あるいは政府の委員会の中でそういう議論がされたりしています。ざっと9000億円、静岡県域から上がるお金があるとして、消費税が3000億円とすると、自主財源と合わせると、ざっと大体県の歳入歳出は賄えるということだと思います。それは頭の体操でありまして、実際上、本当にそうなるかどうかというのは別なんですが、基本的にどの税源を県あるいはその地域に持ってくると、地域として自立ができるのかという頭の体操をした上で、その中でバランスがとれる収益構造というか、財政構造に変えていくという努力が必要だと思うんですね。
 消費税を移すという議論が出てるのは、何で消費税かというと、一番安定的な税で、ぶれが少ないから地方財源を賄うにはいいんだという議論が、国のほうで今されているわけです。けれども僕は、所得税とか法人税が地方のものになって、いろいろ税制を変えることで地域間が競争できる仕組みのほうがいいのではないかなというふうに思います。消費税を例えば地方税化したときに、静岡県は消費税は5%だけど、隣の神奈川県は15%ということにするのも1つの方法でありますが、それをやると、毎日県境を越えて買い物に行かなきゃいけないとか、生活としては非常に不便なことになるというのと、あとはEUとか、私がいたスイスという国なんかも、基本的には消費税というのは国内一律を維持しているところが多いということです。アメリカは州によって、税、当然消費税が違うということがあるんですが、あれはそれぞれ州が国みたいなものですから、そうなっているということで、本来は所得税なり法人税というところで競争ができるというのが一番望ましいのではないかなと思っています。
 自立型の経済を強固にするという意味で、さっきのその税源のほかに、じゃあどうやったら経済が自立していくのかというのを考えていきますと、結局、地域の経済の中でどうやってお金が回っているかという仕組みをつくるということで、これはもうどこの県も、あるいはどこの自治体も昔からやってきたことでありますが、例えば地産地消で、県内自給率というのをどうやって高めるかとか、あるいは県産品をどうやって拡大するかとか、県産品をなるべく使って、あるいは県外へ出していくということをどうやってやるかという、これが伝統的な手法でありまして、これも大きな意味があるというふうに思います。ただ、その場合には、実際その県産品、あるいは県の経済を回すために、どれだけその財政支出をするかという部分と、それでその県に入ってくるメリットの費用対効果の検証というのを厳密にやらないと、単純に県内に対する優遇のばらまきになるという可能性があるということだと思います。
静岡県の場合、かなり行政コストの計算も綿密にやってますし、それなりに行政改革が進んでいる県だというふうに思いますが、例えばこの県産品の地産地消なんかをさらに進めていくというのは、1つの大きな手だというふうに思います。
 ここにあるように、食糧自給率は静岡県の場合、金額ベースで54%だそうでありまして、カロリーベースでは18%。カロリーベースはもう最近意味がないというふうに言われていますが、実際上は野菜とかお茶みたいな、換金作物で収益性の高いものというのは、どちらかというとカロリーがない、低いものが多いので、カロリーベースでやるとどうしても低くなる。カロリーベースで静岡県で100%を目指す必要は全くないと思うんですが、金額ベースで県内自給率というのをさらに引き上げていくような施策というのは意味があるというふうに思います。
 ちょっと今脱線しましたが、県内の中で回るお金をふやすことで、何を求めるかというと、最終的には県に落ちるお金、税金をどうやってふやすかということを考えないと、最終的に県の財政には寄与しないわけであります。当たり前のことでありますが、ここにあるように、所得税をふやすには、人口をふやすか、1人当たりの所得をふやすか、その両方をふやすかしかないわけであります。これだけ日本全体の人口が減ってくる中で、勤労者数をふやすというのは非常になかなか大変なことであります。これは伝統的にやってきた、例えば工場を誘致するとか、企業を誘致するとか、そういう政策で実現しようとしてきたわけですけれども、これを今後も続けて、続けるべき政策ではありますが、なかなか難しいと。
 それから、法人税をふやすには、当然のことですが、法人の数をふやすか、法人の利益をふやすということであります。県内に置いてもらう法人の数をどうやってふやすかというのは、何らかの優遇をしてその法人立地をふやしていくということもあります。あとは県内の企業にもうけてもらう、当然のことですね。
 それから、資産額をふやして資産税をふやすには、資産価値を上げるということしかないわけですが、そのためには資産価格をどうやって上げていくかということですね。総資産額と資産の価値というのをどうやって上げていくかということだと思います。それから、消費税は当然のことながら、県内の消費をふやしていくということであります。
 先ほどの国税分が地方税に移ってくるとして、じゃあどの税金がどれだけ移ってきたときに、どこをふやせるのかという頭の体操をしておくことが大事ではないかなと。
 これも税制の話でありますが、私、日本経済新聞にいるときにスイスに駐在していたんですけれども、スイスの場合、26州があります。準州というのも含めて26あるんですが、それぞれごとに税率が違います。税率が違うというのは、法人税、所得税は州が独自に決めることができます。連邦税はたしか7%ぐらいと思うんですが、一律であります。州税は、基本的に自分たちの財政状況によって決めることができるということになってるんですが、資料の下にあるように、所得税で言うと、それぞれのレイヤーごとに税率がばらばらであります。例えば、所得税で一番高いのは、ヌーシャテル州というフランスに一番近いところの州でありますが、そこは22.7%、年収2500万円以上だとかかると。それに対して、スイスの中心部にあるツーク州というところは、10.08%であると。所得税だけで、スイスという国は面積で言うと九州ぐらいの大きさのところですから、そこに700万人しか住んでないんですけれども、そこに26も自治体があって、それぞれが独自に税金を決めていて、所得税、法人税が違うということであります。この税率について、実はUBSという銀行が――クレディ・スイスもやってるんですが――州ごとに全部の税率が書かれた小冊子をつくっています。その小冊子をお金持ちが見て、ことしはここの税率が低いからこっちへ住民票を移そうとか、企業を移そうとかいうことをやるわけであります。実際、22.7%と10.8%、これだけ違うと、2500万円だと250万円ぐらい、あっという間に違ってしまうわけですから、当然、税率でもって動くわけであります。
 ちなみに、チューリッヒ州とツーク州というのは、ほとんど境を接するぐらいのところにありますので、チューリッヒからちょっと動いてすぐツークに移るという、お金持ちはたくさんいます。ですから、チューリッヒ州で仕事をしている会社のオーナーでも、ツーク州に住んでいるという人がたくさんいるわけであります。
 ここでおもしろいのは、例えば一番右の5万スイスフラン以下のところで見ると、チューリッヒ州というのは4%なんですが、ほかのレイヤーでは一番税率が高いヌーシャテル州は3%と、そのチューリッヒ州よりも低いんですね。つまり、この州は、5万スイスフラン以下の所得の低い人たちに対する負荷を低くして、より金持ちからたくさん税金を取ろうという、そういう政策をとっているということがわかります。ヌーシャテル州というのは、基本的にフランスに近くて、時計産業がたくさんあるところでありまして、すごい山の中なんですが、実際上、超高級時計ですね、1個何百万円というような、そういうものがつくられている企業がたくさんあるわけであります。ですから、それだけ所得格差が大きくて、たくさん金持ちもいる一方で、本当に農村に住んでいて所得が少ないという人もいるわけであります。ですから、そこを、その格差を縮めるという税制をとろうとしているというのがわかります。
 それから、法人税の場合も、大体倍ぐらい違うということであります。法人税はこれだけ違って何をやるかというと、企業の経営者とそれぞれ州の税務当局がネゴシエーションをして税率を変えたりすることができます。それは、税務当局の権限として認められているということですね。
 スイスでおもしろいのは、これだけ税金のとり方が多様なわけですが、それによって相当人が移動していると。国内で人が移動しているだけじゃなくて、例えばツーク州というのは、ドイツから大量に移民が来ているということもあります。ドイツの、それもお金持ちがここを目指してやってくると。法人税も低いので、ツークに登記上の本社を移して、そこで自分も所得税を払うという人が多いです。税制によって人が移動するということが起きているということであります。
 ちなみにスイスは、自治体でお金がなくなると、例えば公共事業なんかも、今年度の予算がなくなると工事が途中でとまったりしますね。だから特に国はお金がなくて、連邦税が7%ぐらいで各州から集まるわけですけれども、国は高速道路をつくったりもしていますが、高速道路のトンネル工事なんていうのは、途中まできてお金がなくなると、とまります。また翌年、予算がつくと工事が始まるという、お金がないのに工事が進むということがないという、非常に政府の権限の弱い国であります。
 あと、基礎自治体に関して言うと、例えば今度新しい学校を建てかえるから、このためには税金、住民税を引き上げなきゃいけないという、単年度だけ引き上げたりとかも自由にできます。特に直接民主制の国なので、それに対して賛否を問うということもやります。基本的にはそうですね。課税をされるというのは、自分たちにどれだけお金が戻ってくるかということと裏表になっているので、住民が非常に税のあり方に対してシビアになっているということでもあります。
 じゃあ、今みたいな話というのは絵そらごとかというと、実は日本でも無縁の話ではないのであります。都道府県税とか市町村税というのも、一定の幅で当然、もう微々たる幅ですけれども、上下させることが認められているわけですね。東京都は、いわゆる都道府県税部分だと、6.0%が本則でありまして、大半の道府県は5.8%ということになっています。それに市町村税も14.7から12.3の幅で、大体14.7に張りつくか12.3に張りつくかということになっていますが、組み合わせによって、東京の20.7から、一番低いところだと17.幾つという差があるわけですね。それを目指して、実は法人登記を変える人たちもいます。東京都から軽井沢にたまに登記を移す会社がありますが、それは住民税が安いということだと思います。
 この一定の認められる幅というのをもうちょっと大きくすれば、そういう税を目当てにした人の移動というのが起きるということです。今は、税率に幅を持たせているのは、単純にその歳入と歳出の財政の問題で、歳入の観点から税率の調整というのを認めているわけですけれども、実際上は、企業を誘致する、あるいは住民を誘致するということでこの税が使えると、もうちょっと効果があるのかなと。だから、この税率の幅をもう少し認めろ、弾力化させろという要求を国にしていく、あるいは特区で認めろということは、やり方としては今後出てくるのかなという感じがします。
 それから、話は変わりまして、今度はシンガポールの例なんですけれども、これも有名な話ですが、富裕層を引きつけるためにさまざまな制度をとっておりました。最近はちょっとやめちゃってるんですが、やめたというか、基準を厳しくしているんですけれども、一定金額以上の資産をシンガポール国内に外国から移してきた場合には定住権を与えるというプログラムを、2000年から2010年ぐらいまで、積極的にやりました。中央銀行がその音頭をとってやってたんですけれども、彼らは営業マンさながら、日本の例えば富裕層のところにダイレクトにやってきまして、シンガポールに来ませんかと、5億円持ってきたら永住権あげますよというのを、日本の例えば創業系の企業経営者なんかのところにダイレクトに来てやっていました。金持ちに移住してもらうと、それぐらいメリットがあるということであります。富裕層が移住すると何が起きるかというと、彼らは大体、その周りにいる人たちも所得が多い人が多いもんですから、当然所得税もふえると。それだけじゃなくて、高額消費をするために、消費税分もふえるということであります。
 静岡で言うと、静岡県東部にはたくさん別荘地帯があるわけですけれども、そういうところに来る人たちをふやして――熱海なんかの場合は、高齢者で働いていない人がふえると、社会保障費ばかりふえて財政的に大変だという言い方もされるわけですが――何かちょっとした工夫をして、お金を全部こっちへ移してもらうとか、あるいはその資産をなるべく移してもらうという、何かインセンティブを与えることで、静岡県全体の富をふやすインセンティブを働かせるということができるかもしれないなと。ここに、冗談めかして書いていますが、例えば地域通貨付ゼロクーポン県債みたいなのもあってもいいと思うんです。地域通貨でクーポン分、その金利分をお支払いしますと。基本的には表面クーポンはゼロですと。そうすると県から出ていく県債の金利分はなくなるわけですが、そのかわりに商品券を配って、商品券は静岡県でしか使えないということにすれば、お金が自動的に戻ってくるという、例えばそんなお遊びみたいなことですが、そういうことでも、お金をこっちへ持ってくるインセンティブが働くんだと思います。
 日本の場合、別に資金移動も自由ですし、人の移動も自由なので、本当に静岡県の銀行、県内銀行にお金を持ってきたからって、それでそんなにメリットがあるのかと思われるかもしれませんが、実際上は県内の銀行の資産残高が大きくなっていけば、当然、県内企業に貸し出しできる余力もふえるということで、今は金余りと思われていますが、いずれデフレから本格的に脱却するようになれば、資金不足の時代もやってくるということでありますので、インセンティブを与える方法はあると、意味はあるというふうに思います。
 それから、ふるさと納税を使うと、何かおもしろいことができるんじゃないかなと思います。ふるさと納税のインセンティブというのを、例えば20%ぐらいを地域通貨で返すとか、実質的な減税をすれば、それでどーんとふるさと納税がふえるわけであります。実際に似たようなことをやっているところがありまして、資料の下に書いてあるように、北海道の占冠村というところが、1万円について5,000円の商品券あげますという、もうとてつもないことをやっています。その商品券は占冠村の中でしか使えないということですね。それから南木曽町というところでも共通商品券で、この場合は1万円から5万円で2,500円分を返すと。それから、ほかの自治体では、QUOカードをあげたり、イオン商品券をあげたり、Tポイントを付与するなんていうことをやっているところもあります。
 基本的に御承知のとおり、ふるさと納税というのは別に納税ではなくて寄附なので、本来は寄附でなきゃいけない。何か経済的な利益を目当てに寄附をすると、それは寄附税制の対象にならないという所得税法とか地方税法の規定がありまして、本来だったら単純にふるさと納税をして、静岡茶が送られて来るっていうのも本当はアウトなんですが、もうここまでなし崩しになると、これはもう法律違反とは言えません。唯一、最近の新聞でアウトと言われたのが、京都府の宮津市というところが、1000万円をふるさと納税してくれたら、750万円相当の土地を無償で差し上げますということをやったんですね。そしたらさすがにそれは総務省が、おまえ、待てと。750万円の利益供与をしているので、こんなのは寄附に当たらないということで、これは宮津市はたしかやめたはずでありますが、75%還元するのはアウトだけど、占冠村のように50%還元するのはいいという線引きがなぜできているのかという、多分法律的には全く何にもないと思いますね。
 ですから、地域通貨を出すということは、財務省はもともとは非常に抵抗しておりまして、基本的に認めないという方向だったんですが、最近、例のふるさと商品券も花盛りでありまして、なおかつそれをディスカウントで販売するということも起きているので、もうもはや制度的になし崩しになっていて、実はこのふるさと納税制度というのをうまく悪用とは言いませんが、活用すると、今までの国の仕組みに穴があいていくのではないかというふうに思います。
 ふるさと納税は、基本的には自分が意図したところどこにでも納税できるわけですから、別にそこに居住がなくてもいいということなんで、自治体にとってはただでお金持ってきてくれるわけで、こんなにうれしい話はないということで、取り合い状況になっているわけです。これを戦略的に使って、地域通貨というと財務省が怒るので、ふるさと商品券を1万円につき2,000円返しますというのをやって、期限は半年以内でその2,000円は静岡県内でしか使えませんと言っておけば、全部そのお金は静岡県に戻ってくるということであります。実質的な減税をすることで静岡県にお金がやってくるということで、本来は静岡県に住んだり静岡県の資産を持つとそういうインセンティブが与えられるということですが、いろいろ考えると、さっきスイスで起きていたようなことが、実質的に日本でもできちゃう可能性はあると思います。
 あるいは真正面から、例えば特区、法人税ゼロ特区というのが、学者さんが言っているのがあるんですが、それを財務省が認めるかどうかは別として、ある一定の地域に限って法人税をゼロにするとか、あるいは所得税をゼロにするとか、固定資産税をゼロにするとか――固定資産税は地方税ですので、地方税としてやれるかもしれませんね――何か特区の中でそういう税制をやらせろというのを、真正面から提案してみるというのも、国の制度を大きく変えるにはおもしろいかもしれないというふうに思います。
 今度、企業版ふるさと納税制度というのができるそうでありまして、実際に、あれがどれだけの効果を与えるか、よくわからないのであります。実際上、損金算入した部分と同じ金額を税金で減税をするということなので、ふるさと納税をした部分との費用対効果みたいな部分がよく見えにくいのですが、これも、もしかすると動き出すとおもしろいことになるかもしれないというふうに思います。もともとこれ、コマツの坂根正弘さんが産業競争力会議の議員だったときにそういう提言をしたんですが、そのきっかけは、もともとコマツという会社が、創業地は石川県の小松市なんですが、本社を東京に移してもう長いという中で、何か小松に税金を落とす方法はないかという中で、コマツの本社を小松市へ移してしまおうという本社移転の検討を、彼が社長、会長のときにやれと言ったんですね。いろいろ調べてみたら、登記上単純に本社を移しても、実は余り小松市の税収はふえないと。今、本当に法人税の計算って超微細になってまして、従業員数とか事業所の数とか、工場と普通の事業所でインセンティブが違うとか、非常に厄介なことになってるんですが、実際上、その本社機能を移しても余りメリットがないというので、やめたと。じゃあ何かちょっともっと各地域に直接メリットを与えられる方法はないかということを産業競争力会議で言ってまして、それを、今の菅官房長官が取り上げて、ふるさと納税企業版というのをつくろうということになったわけであります。菅さん自身、総務大臣のときにふるさと納税をつくったというふうに、自身が産みの親であると自認をされているので、今の安倍内閣がひっくり返らない限りは、このふるさと納税が縮小されるということはないであろうというふうに思います。
企業版のほうは、どういうインセンティブを与れば、どうなのか。例えば何か入札で便宜を与えるのはけしからんとか、いろんなことを早速言われていますが、そこら辺も、もしかするといろんな抜け穴がたくさん出てきて、静岡県にふるさと納税する企業に何らかのインセンティブを与えるという道が開けるかもしれないし、県の中で完結する仕組みというのをいかにつくるかというのが、すごく大きな今後の課題だというふうに思います。自立というのを、最初から無理だというふうに思うのではなくて、どうやったら自立できるのか、いろいろ抜け穴を探っていくと。抜け穴で無理なところは、やっぱり政府に真正面から改革を求めていくということで、自立の芽が見えてくるのではないかというふうに思います。
 ちなみに、よく市場調査をするときは静岡県で市場調査すると言われますけれども、静岡県をその改革の実験場にしてみて、静岡県をその税制の特区にしてみるとかということを正面からやってみたら、日本の中で非常に新しい生き方が見えてくるんじゃないかなという気がします。やっぱりこの静岡県ぐらいのところで自立ができないということになると、国全体が赤字なんですから――全体がどこを切っても赤字になるのは当たり前だという議論もあるんですが――やっぱり一つ一つの小さな単位でプラスになって、自立していく単位を少しずつふやして積み上げていかないと、全体を足したときにも財政の自立ができないということなのではないかなというふうに思います。
 最後のほうにあります県民資産をふやすというのも大きなことでありまして、県内への投資を引っ張り込んで、資産価値を向上させて県内が豊かになる、イメージアップや景観保持というのも、実は県にとってはプラスになるんだということであります。
 非常に雑駁なお話でしたが、持ち時間がほぼ終わりましたので、ここでとりあえず終わりまして、何か御質問がありましたら、またお答えしたいと思います。どうもありがとうございました。

○阿部委員長
 ありがとうございました。
 以上で、磯山先生からの意見陳述は終わります。
 これより質疑に入ります。
 委員の方に改めてお願い申し上げますが、質問はまとめてするのではなくて、できるだけ一問一答方式でお願いします。
 それでは、御意見、御質問等がありましたら、御発言願います。

お問い合わせ

静岡県議会事務局議事課

静岡市葵区追手町9-6

電話番号:054-221-3482

ファックス番号:054-221-3179

メール:gikai_giji@pref.shizuoka.lg.jp