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委員会会議録

委員会補足文書

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平成28年10月地方創生推進特別委員会
日本総合研究所調査部 上席主任研究員 藤波匠氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/07/2016 会派名:


○藤波匠氏
 改めまして、日本総合研究所の藤波と申します。よろしくお願いいたします。
 私、生まれも育ちも神奈川県でございまして、ただ、父親が静岡市内の出身なんですね。小さいときから、静岡県のほうにしょっちゅう来ておりまして、非常に思い出深い地域で、最近もよく来ているんですけれども。先ほど、委員長のほうから私の藤波匠という名前の御紹介いただいたときに、言い方が神奈川県内とは違い、やっぱり静岡はそう言うんだと、親戚だけじゃないんだと思いました。
 それで、特に静岡は両親の言葉を聞いてまして、両親はともに静岡県出身ですが、静岡は非常に東京に近い割に珍しい言葉が多くて、特に私の母親は島田の出身なんですね。島田と静岡ではもう言葉が違うんだなというのをよく感じることがあります。
 今、地域がそれぞれ疲弊していて、人口が減っていくということで、すごく危機感が持たれています。少し前、2年ほど前ですか、増田寛也さんが、「地方消滅」という本を書きまして、これは大変だということで、国の政策もそれに対応した形で、地方創生をやっていこうじゃないか、なるべく若い人が地方に定着できるような環境をつくっていこうよということで、動き出したというふうに言えると思います。
 きょうはその話を少しした後、その話は本当はどうなのか、本当にそのまま実行すればいいのかどうかというあたりから、少し考えてみたいなというふうに思っています。
 「人口減が地方を強くする」、これは本のタイトルなんですけれども、人口減というのは、これはもう地方だけではなくて、日本にとって大きな問題なんですね。地方を強くする、人口が減ったほうが地方が強くなるかというと、決してそんなことはなくて、人口は多いにこしたことはない。ただ、その人口減というものをきっかけとして、何か新しい活動なり新しい動きというのができるんじゃないですかというような意味合いを込めて、こういったタイトルにさせていただいたということです。
 本日、流れとしては、前半で日本の人口動態はどうなっているのか、地方はどうなっているのかということと、もう一つ、地方の話をするときに切っても切れない、コンパクトシティという話がよくあると思うんですね。地方創生の中にもこういった話が出てきますけれども、要は人口密度が低下していく中で、なるべく都市に集中して住んだほうがいいんじゃないか、暮らしたほうがいいんじゃないかという話で、それについては、私、やや懐疑的に思っているんですね。その話も少しさせていただいて、じゃあ地方はどうやってこれから持続的な地域を、社会をつくっていけばいいのかという、そういったお話をさせていただければというふうに思います。
 まず最初なんですけれども、簡単に、今、政府がやっている地方政策というのはどういう問題意識で、何をやろうとしているかということをお話します。先ほどもちょっと言いましたが、地方が衰退しますよ、東京一極集中がその大きな要因になっていますよと、これは増田さんの御意見だったと思います。若い人たちがどんどん東京に集まってしまうので、地方が持続的な暮らしができなくなっちゃうんだというような流れがあったと思います。その一つの解決策として、なるべく若い人に地方に定着していただこうということで、東京と地方の人口移動を均衡化していこうというような話です。今は、毎年、大体年間10万人ぐらいは東京に入ってくるんですね。東京といいましても東京圏で、1都3県に入っていく。当然、静岡も出ていくほうが多いわけです。それを均衡化して、20年までに、端的には、かなり厳しい目標だと思いますけれども、それまでに東京の転入超過をゼロにしていこうじゃないかというのを柱として、地方創生戦略に掲げられています。それをもって、地方の議会、皆様もいろいろと御関心あったと思いますけれども、各地域で、地方版の創生戦略をつくりなさい、人口ビジョンをつくりなさいという話があったかと思います。
 もう一つ話したいのは、先ほども言いましたコンパクトシティの関連で、限界集落というものがあって、それがどんどん発生していて、消滅していくよ、という話です。高齢化した集落があって、それが消滅していくんだということが、実際起こっているんですね。それに対して、一つの解としてはコンパクトシティという、例えば静岡市のような、こういった中心性のある都市に人が集まって住んだほうが、いろいろと持続的なことができるんだというような御議論だったのではないかというふうに思います。これについては、真実もあるでしょうし、やや懐疑的に見るべき部分というのもあると思うんです。そのあたりについて、少しお話をさせていただきたいというふうに思います。
 まず、人口動態なんですけれども、東京圏を含む三大都市圏の人口の流入量をあらわしてます。流入量といいますか、転入超過です。出ていく人と入っていく人の差し引きで、入ってくるほうが多ければプラスに出るというような形ですね。この青いのが東京圏です。一番上ですね。最大1960年代前半ですね。40万人ぐらいの人が1年間に東京圏に集まった時期がある。この時期というのは、名古屋も大阪も転入超過だったわけです。三大都市圏合わせて70万人ぐらい人を集めた年がここの大体62、63年だったと思います。団塊の世代と呼ばれている方、きょうもおられるかもしれませんけれども、その時期にわっと東京に集まったんですね。
 ところが、それが途切れたのがオイルショックですね。71年、72年あたりにどんと落ち込んできます。そして、大阪、名古屋につきましては、もうそのあと復活してないんです。ずっとゼロからマイナス。都市には人が集まってるもんだと皆さん思ってるかもしれませんが、実は大阪、名古屋はオイルショック以降、プラスにほとんどなっていないという状況なんですね。
 一方、東京はどうかというと、減りましたが、それでも復活したりというのを繰り返しながら、平均すると、大体年間10万人ぐらい、今も年間、去年あたりですと12万人ぐらい転入超過というような状況になっている。三大都市圏の中で東京だけが人を引っ張っているということで、東京一極集中という言葉が一般的に言われているんだろうなというふうに思うわけですね。そこに人口を供給しているのが、地方、三大都市に含まれないところが人を出しているという状況が起こっているわけですね。
 確かに東京一極、この中では一極に見えますが、実は細かく見てみると必ずしもそうではないというのがこちらでして、これは、地方の大都市、中枢都市と言われているようなところ、札幌とか仙台、福岡の人口流入量を見ています。
 まず、北九州を見ていただきます。戦後復興を支えた北九州というのは、この図にはないんですけれども、戦後直後、かなり人を集めた時期があると思うんですね。鉄鋼の町として栄えた部分があって、プラスになった時期もあったと思うんですが、既にもうこの70年代、産業構造が転換して、鉄としてはなかなか人口規模をふやすことができなくなっていったこともあって、大きく転出超過という状況が続いて、今もやや転出超過という状況が続いている。
 残りの都市はどうかというと、仙台は余り多くないんですけれども、札幌と福岡について言うと、安定的に転入超過、引っ張るほうが多いんですね。市のレベルで見れば、このように中枢都市と言われているようなところというのは、結構人を引っ張っている地域が多いということが言えるのかなというふうに思います。特に最近、福岡というのは勢いのある都市として皆様御存じかと思います。アジア大陸との連携ということで、いろんな企業などが進出してくる。若い人もどんどん入ってくるということだと思います。
 こういったあたりを見ると、結局人口流入って何かというと、結局その都市の勢い、その都市が持っている力とか勢いによって、昔は栄えたかもしれない北九州も、産業構造の転換の中ではやっぱり人が出ていくんだということですね。今、力のある福岡というのは、一つの市で8,000人とか1万人クラスの人をこっちへ引っ張るだけの力があるということなんですね。総合的な都市の持っている力の差異によって、人の流れというのはできてるんだということを、大きな前提として理解しておかなければいけないのかなというふうに私は思っています。
 実際に福岡を見ていただきますと、この図の真ん中に、福岡市があります。この2015年につきましては8,800人の転入超過でした。九州全域、福岡を除く九州全域から7,000人ぐらい、福岡市を除く福岡県内から3,000人、その他の地域、中国・四国地方からも1,000人以上の人を引っ張っているということですね。ただ、福岡市であっても、東京との力関係で見ると、やはり2,500人ぐらいの流出はあるということで、やはり都市の力の差ということによって、水が流れていくようなイメージを持っていただければいいと思うんですけれども、人の出入りというのは構成されているんだということです。ただ、福岡というのは九州だけではなくて、中国・四国地方を巻き込んだ大きな経済圏の中の中心都市として、年間8,800人の人を受け入れているということになっているのかと思います。
 じゃあ静岡はどうか。静岡市はどうかというふうに見ていただきますと、やはり転出超過なんですね、1,100人ぐらい。県でも転出超過だと思いますけれども、静岡市でもやはりちょっと転出。そこに出ていくのは何かというと、三大都市圏である名古屋、大阪とか東京に出ていく人が多少いるということですね。そのかわり、県内の静岡市を除くほかの地域から200人、その他の県から190人ぐらいということで、それほど多くはないんですけれども、ある程度ひきつける力もあるということですね。
 静岡市は人口流出が続いて、衰退の危機ということが考えられるわけですけれども、昨夜、ちょっと遅くにこの市内に入ったんですけれども、夜遅くまで、随分若い人も多く街中に出ていますし、それなりの活気はあるなというように感じました。人口規模もそこそこある地域ですので、私、以前、仕事の絡みで山梨県の甲府市に住んでたんですけれども、甲府市などは、県庁所在地でありながら、もう夜9時ぐらいになると、ほとんど人は歩いてないです。本当に地方都市というイメージがまさにぴったりの状況でございまして、そういったことから見ると、まだまだ静岡市というのは力があるのかなというふうに感じました。ただ、都市との力関係の中で、東京や名古屋に出ていく人は多少はいるけれども、それでもその地域の中では核となっているのかというふうに思います。
 こういった人口移動というものについて、私は、これはある程度やむを得ないなというのが正直なところなんですね。今、政府は若い人になるべく地方に定着してもらうということがあるんですけれども、経済的な動きであるとか、そういったものから見ると、ある程度人の移動というのが生じるのは、やむを得ないというふうに思っています。若い人がいなくなったと、特に中山間地でいなくなっているよということをよく聞くわけですね。確かに、山の方に行ってみるとお年寄りばかりというような地域というのがたくさんあるわけですけれども、最初にここだけは押さえておかなければいけないというのが、そもそも若い人ってもういないんだよという話なんですね。
 この図は、日本全体の人口ピラミッドで、男女であらわしていますけれども、ちょっと工夫してあるのが、年齢ですと40歳を超えたぐらいが団塊ジュニア、団塊の世代の子供たちという意味なんですけれども、そこを1としています。見やすいように男女ともに1にしています。それに対してほかの年齢層はどのくらいの割合でいるかということですね。一般的な人口ピラミッドですので、それほど形としてはよくはないと思いますけれども、特に注目したいのが若い人ということで、20歳代前半の人に色をつけてみました。この0.62という数字、これは何かというと、団塊ジュニアに対して20歳代前半の人たちってもう6割ぐらいしかいないという話なんですね。人口減少については、今回の国勢調査で人口減少に転じたよということが報告されているわけですね。でも、その数というのはまだまだ少ない、わずかであるということなんですが、実は世代別に見ると、団塊の世代や団塊ジュニアに比べると、もう若い人たちってすごく少ないんですよ。もう間もなく5割になろうとしているということなんですね。だから、地方で若い人いないというふうに大騒ぎされる。だけど、そもそも日本にもう若い人いないんだよということは、まず要点として理解しておかなければいけないということなんです。
 ただ、劇的に、地方に、中山間地域に行くと若い人いないよねということなんですけれども、そこには幾つか要因があって、錯覚的な部分もちょっとあると思うんですね。ちょっとこれを見ていただきたいんですけれども、さっきと同じです。20歳代前半の人たちの人口を見たいんですけれども、それを団塊ジュニアに対して見てます。こっち側は団塊の世代に対してです。
 まず、団塊ジュニアですが、先ほどの人口ピラミッドと同じイメージです。20歳代前半だけを引っ張ってきましたが、全国は0.6幾つかで、男女混合です。
 それで、まず、市部、郡部の平均を見ていただきたいんですけれども、実はほとんど変わらないんです。市部でも郡部でも、全国平均とほとんど変わらないだけの20歳代前半の人たちがいるということなんですね。郡部でも、すごく若い人がいっぱいいるところもあるから、それに引っ張られてんじゃないのというイメージもあるかもしれませんけれども、市町村単位で見たときに、市と郡を分けたときに、実は若い人ってあんまり減ってないんです。静岡、浜松を見てみると、甲府とかに比べるとちょっと少ないイメージはありますけれども、それでも全国平均よりはちょっと欠けるぐらいですかね。
 東京はもっと少ないですね。東京23区は、特に若い人がなかなか住める環境にない、家賃が高いとかですね、そういったこともあって、23区はすごく少なくなっています。ただ、ばらつきは極端に少ないです。先ほど福岡はすごい人が集まっていると言いましたけれども、それでも0.75はいかないですね。仙台は0.75を超えてますけれども。
 そして、こちらを見ていただきたい。団塊の世代との対比です。団塊の世代に対して、20歳代前半の人たちがどのくらいいるかということを見ていただくときに、注目したいのはここなんですね。さっきと全然違いますよね。ここは同じぐらいだったのに、郡部は、だんと落ち込んでると思います。こちらは0.5切ってますね、0.49ぐらいになっています。
 ちょっとテクニカルな話で、何を言いたいかというのがわかりにくいと思うんですけれども、要は、団塊ジュニア、40歳代の人たちに対して、私たちの子供の世代というのは、すごく減っているんだけれども、それは全国どこを見ても割合としては余り変わらないということなんです。ところが、団塊の世代の人たちから見ると、すごく郡部が少ない。要は、団塊の世代の人たちが、いっぱい郡部に住んでいるということなんです。要は、この団塊の世代というのは大勢人がいて、東京にもいっぱい出てきました。年間70万人ぐらい大都市に流れたという年齢層ですが、それ以上に地方にもいっぱい人が残ったということなんですね。それもあって、郡部に多くの人が残って、今の若い人との対比ですごくアンバランスな状況が生じている。
 ところが、団塊ジュニアとの比較で見ると、人口減少、地方の衰退というのは今に始まったことじゃないということなんですね。今の若い人が急に出ていくようになったわけではなくて、団塊ジュニアの人たちも同じように出ていると。今になって急に地方に若い人が必要だといっても、その流れを逆流させるというのは非常に難しいということなんですね。ちょっとテクニカルな話で難しかったかもしれませんけれども、そういったことだと思います。
 ただ、実際問題として、若い人たちが出ていくというのは、地方にとって大きな問題だというふうに言われています。じゃあ、実際どのくらいの影響があるのか。10万人が東京に入っていくんだけれども、それがどのくらいのインパクトがあるかということを考えてみたいと思います。
 これは、1歳刻みの人口ピラミッドなんですけれども、東京圏への転入超過を1歳刻みで書いているんですね。こっちにいけばプラスで、転入超過。要するに、人が入っているということですね。見るともうおわかりのとおり、18歳から大体少なく見ても、30歳ぐらいまでに東京への転入は終わってるということなんですね。これ以外の、この上とこの下を足し合わせてもほぼゼロなんです。ということは、10万人、あるいは12万人の転入超過というのは、この世代だけ見ていると、大体完結しちゃうということなんですね。学生さんが大学に行ったり、就職したりということで、大都市に、東京に流れていく。大学を卒業して、地方に戻る人もいますし、就職して転勤していく人もいるということで、大体この間を見ておけば、若い人たちの移動、日本人の移動の実態は見えてくるだろうということで、それがどのくらいインパクトがあるかというのはこちらでございます。
 これは、17歳の人口なんですけれども、2010年、前回の国勢調査のときに17歳だった人たちというのは、全国に120万人いました。この人たちというのは、まだほとんど動いてないんですね。移動が始まってないんです。ですからそこを基準に考えたいということで、2010年に17歳だった人は、東京圏に30万人、地方圏に90万人住んでましたということなんですね。そして、18歳になると、人が動き始めます。毎年10万人ずつ人が動くということを考えると、この世代だけで30歳までに10万人が移動するということなんですね、地方から東京に移るということです。要はこの黄色い部分が、30歳までの間にここへ移ってくるということを意味しています。
 10万人が移動した結果として出てくるのが、もともと30万人だった東京圏が40万人、若い人がいるようになる。90万人だった地方圏には、80万人の人口になるということなんですね。これを見てどう考えるかということなんです。確かにこの10万人は東京に移っている。これは大問題だということで、今、これをこっちに戻そうという動きが出てきてるということですね。ところが、これをやるのにどれだけお金がかかるかと。後でちょっとお話ししますけれども、特に地方の問題というのは、この10万人が奪われていることじゃなくて、私が考えるに、残った80万人に付加価値の高い仕事なり、給料の高い仕事というものが提供できていないことにこそ、問題というのがあるんだろうなというふうに私は考えているんですね。実際、地方に、しっかりとした仕事、持続的な仕事があれば、こうやって出ていくこともないかもしれない。ここに残っているかもしれないということですね。それがない状態で、何とかこれができないかということを考えているのが今の地方創生じゃないかなというふうに思っています。
 1ページ飛ばしますが、今、東京と地方の全体的な話をしましたけれども、これは都道府県別に見ています。横軸にとっているのが、1人当たりの県内総生産ですね。経済力の一つの指標だと思いますけれども、経済力が高い地域ほど、やっぱり転入超過になっているということですね。東京圏、滋賀、名古屋圏、そういったところというのは、少し転入超過です。福岡もそうですね。静岡は、1人当たりの県内総生産が結構高い割に、ちょっと出ているということです。けれども、大体右肩上がりになってまして、やはり経済的な力というのは、第一に大きいのかなというふうに思っています。
 それで、今、政府は何とか仕事をつくるとか、いろんなことで逆転させていこうと、地方にも若い人たちが定着できる環境をつくっていこうということだと思います。本当にそれができるのかということなんですね。実際、結論から言うとできるんですね。できるというのは、一時的には可能だと言ったほうがいいのかもしれません。
 これは、先ほどから出てきている東京圏の転入超過数で、赤い棒グラフであらわしています。横軸、これは何かというと、東京都の有効求人倍率なんですね。80年から見て、バブルがあって、バブルが崩壊して、ここに注目していただきたいんですけれども、やはり求人倍率がぐっと下がったときというのは、東京は出ていってるんです。ここはマイナスゼロですので出ていっている。戦後、東京圏が転出超過になったのは、この94年、95年の2年間だけということなんですね。このときというのは、やはり明らかに有効求人倍率が低かったということなんですが、このときの有効求人倍率というのは、ちょっとこちらの軸を見ていただくとわかるんですけれども、特殊な統計処理をしているんですね。単に有効求人倍率ではなくて、これは全国平均との乖離を見ています。例えば、有効求人倍率が2倍といったときに、全国平均は幾つか、その差はどのくらいあるのかというのを見ています。全国平均より高ければプラスに出ますし、低ければ下に出るという、そういった統計処理をしているんですけれども、この時期というのは、有効求人倍率が下に突き出てるんですね。これは何があったかというと、公共事業は、全国で大体、15兆円から20兆円ぐらい毎年やられているんですけれども、バブル崩壊の景気対策として、それが35兆円から40兆円ぐらいまでふえた時期というのがまさにこの時期で、それに引っ張られた形で、東京ではなくて地方で仕事ができている。地方のほうが仕事があったので、若い人たちが主に地方に流れた時期です。こういうことがあれば、一時的にせよ、若い人たちというのは地方に出てくるということになります。
 このグラフは、横軸は公共事業費で、縦軸が有効求人倍率ですね。やはり公共事業がふえていくと、主に地方で公共事業というのは打たれていきますので、荒いですけれども、何となく右肩下がりになっていって、東京都の有効求人倍率は下がっていくということになります。
 普通は、公共事業費は20兆円ぐらいなんですね。それを35兆円、40兆円と、ふやしていくというようなことをすれば、また地方に人が流れるじゃないか。あるいは、同じような需要創出効果、公共事業だけじゃなくて、いろんな仕事を生むようなお金の使い方をすれば、有効求人倍率がぐっと下がっていって、地方で定着できるんじゃないかということなんですね。できるはずなんです。ですが、この20兆円分ふやすというのが、実際どのくらい大きなお金なのか。何となく大きいお金だというのはわかると思うんですけれども、実は、計算上は15兆円でやっていますけれども、15兆円分を地方にまくということは、そのときの雇用創出効果というのは200万人分あるんですね。私たちは、10万人を動かそうとしているのに、それを動かすために200万人もの雇用を創出するだけのお金をまかないと、地方に定着できないということなんですね。これは考えてみれば当たり前のことで、まず、地方で仕事、公共事業をつくったとしても、東京の会社が受けちゃうことって結構ありますよね。結局お金は東京に流れていくのかみたいな、公共事業なんかよく多いんですけれども、そういったことがあるということ。あともう一つが、地方で仕事が生まれたとして、すごい高給の仕事が生まれたとしても、誰が手を挙げるか、誰がそれをとるかということなんですが、多くの場合、地元の人がとるんですね。大体仕事ができたら、その近距離のところで需要が相殺され、うまく埋められていきます。東京から引っ張るというのは、いよいよ人が足りなくなってくるということが生じたときで、少々の金額で人を引っ張ろうと思っても、なかなかそれだけでは引っ張るだけの力というのにはなってこないということだと思います。
 実際問題として、地方創生ということで既に2年ぐらい前から、相当少なくない金額が地方にも落ちてきていることは実感されているかもしれませんけれども、じゃあ去年の転入超過はどうだったかというと、東京圏はふえてるんですね。結局、少々地方にお金があっても、東京にお金が戻っていくということもありますし、東京のほうがより有効求人倍率が上がっていく。特に今、東京は人手不足ということで、東京の有効求人倍率は高いんですね。地方も今、人手不足という状況になって、有効求人倍率1倍を超えてきましたけれども、東京はさらに伸びているということもあって、東京への転入超過はとまらないということだと思います。
 今、人口の移動の話をしましたけれども、私は、最終的な目標としてはいいと思うんですけれども、そこを何とかしたい、目先で何かをやっていこうということをやっても、なかなか解決しないんだろうなというふうに思っています。
 視察に行った方もおられるかもしれませんけれども、徳島県の上勝町にいろどりという組織がございます。葉っぱビジネスで有名で、つまものを出荷することで、すごく稼ぐおばあちゃんがいますよということを御存じかと思います。ここは、若い人がどんどん入ってるんですね。この葉っぱビジネス自体にはなかなか入れないんですけれども、そのサポートする組織であったり、あるいは関連する組織に結構若い人が入ってきて、地域活性化の1つの手本とされている町です。けれども、その上勝町ですら、これは町の人口動態なんですけれども、転入、転出で見ますと、転入超過はこれゼロです。ほとんどの年で転出超過、時々ぽんぽんと入って、これは、何か仕事があって、若い人たちがどっと入った年だと思うんですけれども、それでも大抵は転出超過なんですね。特にここは自然減が大きいもんですから、なかなか人口減少というのはとまらないということなんですね。
 じゃあ、これをもって上勝町が余りうまくいってないかというと、そうではなくて、所得が上がってますし、日本全体で見れば、若い人というのは減っているわけですから、そうしたことを考えていくと、成功例の1つではあろうというふうに思います。ですから、目先で転入、転出を逆転させていこうとか、ゼロに持っていこうということを焦るのではなくて、地道な取り組みが必要なんだろうなということの1つの例かなというふうに思っています。
 では、人口の総数の話というのは、ここでちょっと置いておきまして、コンパクトシティの話をします。私は、都市の活性化を考える上で、やはり人口密度というのはすごく重要だなというふうに思っているんですね。今、決まった面積に人が減っていくわけですから、人口密度というのは当然低下していくわけで、コンパクトシティというものは必要だよということを言われています。そのとおりで、これは間違ってない発想だと思うんですね。私もコンパクトシティというものが大好きで、ヨーロッパなどに旅行に行きますと、イタリアの小さな都市に、城塞都市のようなところがあって、その周りに庭園が広がっているという景色が非常に好きです。ぜひ日本もそうなってほしいと思うんですが、事はそんな簡単じゃないよというのは、行政関係者であれば、皆さん何となくわかるんじゃないかなというふうに思います。
 これは山梨県の地図でして、ちょっと下のほうが欠けてますけれども、この黒い線が山梨県の形なんですね。甲府がここにあります。赤と青に四角く塗ってるところがありますが、これは何かということなんですけれども、この一つの四角が1キロ四方です。1キロメッシュというやつです。この赤い点は何かというと、右上のほうに書いてありますけれども、2000年と2010年の国勢調査の時点で、その2期間を比較してるんですけれども、赤は人口がいなくなっちゃった地域、消滅した地域ですね。青は何かというと、10年前には人が住んでなかったところに新たに住み始めた地域です。
 限界集落とか消滅集落とか、以前、NHKスペシャルでも人口減少の話を取り上げており、山奥で限界集落があって、もうそこが維持できないという話がすごくクローズアップされていました。確かにこういうふうに、かなり山深いところに、ぽつぽつと人がいなくなっちゃった地域というのがあるんですね。ところが、注目すべきはやはり青ですよね。人の都市の暮らし方というのは変わっていて、人のいなくなるスペースよりも、人が進出しているスピードのほうが圧倒的に速いということです。この点を山梨県内だけで比較すると、赤1に対して青は10あります。例えば、ここはどうでしょうか。これ、富士北麓なんですけれども、赤の隣に青がすぐあります。こういったところもそうですね。私たちは往々にして、特にコンサルタントは、限界集落などもう消滅しちゃう、これは大変だ、何とかしなきゃということで、この前のNHKスペシャルのようなつくりをしていくわけですね。ところが、1キロぐらい離れたところに、もう人が住み始めているんです。よくそういったところというのがあるんです。要は、確かに人口減少で消滅する地域はあるけれども、私たちの暮らしの場というのはどんどん広がっています。しかも薄く広く、昔は集落が構成されていたかもしれない、何十軒という家があった地域かもしれないけれども、こういったところというのは薄く広く、1軒、2軒、小規模開発みたいな形で、薄く広く都市が広がっていくという状況が随分山奥まで広がっているということです。
 先ほど、山梨県を出しましたけれども、静岡県も全く同じですね。道路沿い、天竜川沿いに赤いところもあるけれども、圧倒的にどんどん青が入っていくと。これは、1軒だけかもしれないし、別荘として建てた家に住み始めちゃっただけかもしれません。だけれども、結果としてこういった形で、人の暮らしの場というのがどんどん広がっていっているというのが現状で、国土交通省なんかは、無住地区が日本のほとんどを占めてしまうというような報告書を出しているんですけれども、実態は恐らくそうじゃない。どんどん、人がばらばら住み始めるという状況が生じているのかなというふうに思います。昔ながらの集落というのは消滅するかもしれませんけれども、新しい暮らし方というのが生じています。
 これは、数えると1対10です。それが、どの県もそうかはわからないですけれども、静岡県と山梨県については、1キロメッシュで見ると1対10という形になっています。
 ちょっとここの作図上、下の方が欠けていますが、静岡県でも、藤枝市のこの辺とかもすごくいっぱい入ってますね。何で入っているのか、私もわからないんですけれども。こういった状況が生じているということですね。
 伊豆半島なんていうのは、別荘地みたいなところに住み始めた人たちが多いというイメージじゃないでしょうか。
 それと、消滅集落の話をもうちょっとさせていただきますと、総務省と国土交通省は連携して、集落のアンケート調査をやっています。全国で4割ぐらいの市町村に過疎集落というのがあり、その集落は全国で6万5000あるというふうに言われていますけれども、将来的に、そこがどうなっていくかというのを調査してるんですが、定期的に、4年、5年ぐらいおきにやってるんですね。そのたびに、10年以内に消滅しちゃうというふうに考えられる集落というものをラべリングしていくんですね。そうすると、大体、400、500ぐらいが調査のたびにピックアップされます。それをもって、じゃあ10年以内と言ってましたけれども、例えば4年後に調査しに行ったらどうか。実際に消滅していたのは35、存続していたのは388です。10年の調査と15年の調査を比較したときは、これも450ぐらいありますけれども、10年以内に消滅すると考えられていたものでも、5年間で消滅したのが41、存続は411ということで、意外と消滅していないよねということなんですね。
 これ、結局、Iターンとか、Uターンとか、ぽつぽつ帰ってきたりとか、入ってきたりということもありますし、もうこの人たち出ていっちゃうよねと思われていた御高齢の方が頑張っていたりということで、人口減少という大きな流れは変わらないんですけれども、集落の消滅スピードというのは意外と遅いんだというふうに考えられていて、国土交通省とか総務省の担当者もそんなようなことを報告書でまとめています。意外と粘り強いということなんですね。
 ですから、本当になくなっちゃうと思われていたところでも意外と残っているわけなんですけれども、じゃあこれって何かというと、相対的な流れですね。人の暮らし方があって、江戸時代とか、それが近代文明の中で都市化がどんどん進んで、中心性というものが明確になって、静岡市のように人が多く集まってくる。ところが、モータリゼーションなんかによって郊外化が進んで、真ん中が少し空洞になって、ドーナツ化現象とともに、ぽつぽつと点のように人が住み始めると。非常に色は薄いかもしれませんけれども、郊外にぽつぽつ人が新しい集落をつくって住んでいくということが起こっています。これは1回こうなってしまうと、不可逆性は高いと思います。なかなかもとに戻すのは大変で、今さら、この人たちをこっちに持ってくるというのは極めて大変だというふうに思います。
 そういった新しい集落、私は、勝手に新僻地集落なんていう言葉を使っちゃって、申しわけないんですけれども、そこに住んでる人たちって、結構ばかにならないよという話で、先ほどの山梨県の地図で、ここら辺に北杜市というところがあります。これは南アルプスの東側、八ヶ岳の南麓に位置して、風光明媚といいますか、富士山もよく見える別荘地みたいなところなんですね。ここにすごい勢いで、点々と青いのが入っている。要は別荘地がわりに建てた家に住んでるような人たちというのがすごくふえて、林の中にぽつぽつ家が建ってるという状況なんですね。こういった形で、わずか10年で新僻地集落がどんどんふえてるんですけれども、2010年の北杜市の総人口は4万8000人くらいなんです。市としては結構いるかなと思いますけれども、ただ、もう減ってるんです。わずか10年で1000人ぐらい減ってるんですが、その新僻地集落というところに住み始めた人たちは、10年前には住んでなかったのに、10年後行ってみたら既に4,500人住んでる。人口の10分の1、11分の1が新僻地集落の住人になっているということなんですね。これは特殊な例かもしれませんけれども、実態的に人の暮らしというのはどんどん野方図に広がっているというのが大きな原因です。特にここは、都市計画の区域に入ってないんですね。ですから、基本的に農地以外であれば、比較的容易に家が建つということもあって、こういったような状況になっているということです。
 私はコンパクトシティというのが大好きで、コンパクトシティ論者でもあるんですけれども、現実問題として、今の制度上、限界があるんですね。コンパクトシティをどんどん進めなさいという人もいます。富山とか青森のように実践されている地域というのもあります。明文化してなくても、コンパクトシティというのは一般的にやっていきましょうよという共通理解も各地域にあると思いますけれども、実際に農地転用面積というのは、意外とばかにならない。毎年農地転用されていくわけですね。全部が住宅になるわけではないですけれども、例えば1,848ヘクタール農地転用があって、これは住宅地向けですね。これは、単純計算では6万8000世帯分の住宅が供給されている計算になります。
 これは富山市郊外です。コンパクトシティを実践している富山市の郊外でも、こういった住宅というのが神通川の河川敷にできてくるということですね。若い人から見れば、こういった住宅が安価で手に入るのであれば、こっちに行きますよという話ですね。今、ここはまだバスが走ってないので、将来的には何とかしていかなきゃいけないという危機意識は、市のほうでも持っているようですけれども、こういったところはやはりぽつぽつと出てくる。富山市でも、人の住むという意味でのコンパクトシティというのは余りまだ成功しているとは言えない状況にありまして、まだまだ郊外に住宅地が広がっているという状況なんですね。
 なぜ、こういった暮らし方ができるようになっているのか。昔はみんな集落に住んだじゃないと。田舎に住んだって大体みんな人は集まって住んだよね。何で今、そうやってばらばらに住むのということなんですが、よくも悪くも、私はこの3つのネットワークの恩恵だというふうに思っています。1つは道路ですね。これは異論ないかと思います。道路のないところには基本的に人は住んでないというふうに思います。先ほどの天竜川の上流も、道路沿いに人が、住宅が入っていくということだと思います。
 あと最近の流れでは、やはり物流ネットワークとインターネット、この2つが進化したことによって、どこにでも住める環境が提供されているということなんですね。よくも悪くもそういうことだと。インターネットで物を頼めば、もう大抵次の日には届く、都市であればその日に届くという状況が構築されていくという流れの中で、移住した人なんかに聞くと、全く不便はないということなんですね。行政としてはコスト負担はふえていくという発想はあるかもしれませんけれども、その人たちの暮らしを考えてみると、全く不便はないよと。特に運転ができる人にとってみると、不便はないという話が聞かれるわけです。
 ただ、行政コストは、どんどん上がってきますよということなんですね。ここに書いてますが、道路、インターネット、物流の3つのネットワークがどんどん整理されていくことによって、人を都市や集落に縛らなくなっているというのが現状であって、こういった社会の環境の変化が人の暮らし方にインパクトを与えるということは、今に始まったことではないんですね。
 例えば、戦国時代から江戸時代に社会が変わったときに、天下泰平というのが訪れて、余り争いごとがなくなっていく。時代劇でも、戦国時代は隣の村が襲ってきて、食べ物をとっていっちゃうよということがよくあったわけですけれども、そういったことが江戸時代になって急激に少なくなっていく流れの中で、例えば富山県の砺波平野では、散居村という暮らし方が一般的になってくる。新田開発をした地域で、人が集まって住むのではなくて、自分たちの田んぼの真ん中の一番いいところにその1軒家を建てる。また何キロか離れて、自分たちの畑の真ん中に家を建てる。散居という形で、一応村とは言ってますけれども、見た目は独立した集落というのが形成されていく。社会の環境変化によって暮らし方が変わっていくというのはままあることであって、急に今変えるというのは、非常に難しいのかなというふうに思っています。
 私もコンパクトシティ論者ではあるんですけれども、それが非常に難しいよ、効率的でないよというのがこのグラフから言えるんですね。横軸に人口密度をとってます。縦軸がサービス業の1人当たりの実質県内総生産です。都道府県別でぽつぽつ打ってるんですね。なぜサービス業で取り上げているかというと、製造業などと違ってサービス業というのは相対の取引が基本なので、集まって住んだほうが効率的なわけです。同時性の壁というふうによく言うんですけれども、人と人が同時にそこに集まって取引をすることがサービス業の原則なので、集まっていたほうが移動距離が短くなったり、物を運ぶ距離が短くなって効率的ですよということなんですね。ですから、サービス業というのはコンパクトシティが望ましいということです。経済白書とかにこの似たようなグラフ出てますけれども、人口密度が高まれば高まるほど生産性が上がるよということを言ってるんですね。これは、東京のほうなんですけど。右肩上がりの線になってます。
 ただ、私は、ここで2001年と2010年を見てるんですね。ばってんが2010年、2001年が青なんですけれども、どちらにしても、直線を書くとyイコール0.0835xプラス何とかということになります。ちょっと数学的な話をしますけれども、これの傾きというのは、弾性値と言われているものなんですね。弾性値って何かというと、人口密度が10%上がったときに、この傾き、弾性値が1だとすると、密度が10%上がると、生産性も10%上がるよと。0.1だと、10%上がったときに1%上がるよ。そういうことを意味するんだというふうに理解してください。そうすると、0.0835ということはどういうことというと、たとえ人口密度が倍になったとしても、0.8%しか生産性が上がらないよということなんですね。確かに右肩上がりなんだけれども、その効果というのはすごく小さいということです。
 実際問題として、人口密度は倍にできますかという話なんですね。今、人口密度は多くの地域で下がってます。下がっているにもかかわらず、生産性は上がっています。要は、人口密度じゃない、いろんなところで私たちは生産性を高めているということなんですね。例えばITを使ったりとか、物流を変えたりとかして、やり方を変えたりして、私たちはその生産性を引き上げているという状況があるということなんです。ですから、人口密度を上げるのは確かにいいことだけれども、それよりも、もっと考えるべきことってあるんじゃないのかというのが、このグラフからも言えるのかなというふうに思っています。
 ここに書いてあるように、コンパクトシティが難しくても、無秩序な拡大というのは回避していくというスタンスは必要だと思うんです。都市計画とか、適正立地化計画とか、今、そのためのツールというのは少しずつ整っています。もともと都市計画に入ってない地域というのは難しいんですけれども、こういったような発想というのは必要かなと。急に人を移住させてまでコンパクトにできるかというと、そのためのコストは物すごく高いと思います。それよりも、例えば限界集落と呼ばれているような地域をどうやったら持続的な地域の場、暮らしの場にしていけるのか。例えば、技術革新を取り込んでいく、インターフェイスを改善して、技術革新をお年寄りにも提供していくようなこと。あるいは物流革命によって、お年寄りの生活を何とか改善していけないかというような発想が必要ではないですかということです。ドローンとか、最近もう新聞で見ない日ないですね。ロボットとか、ドローンとか、自動運転のような新しい技術、ちょっと前には夢物語だったものが、もしかしたら簡単に手に入るかもしれないという状況にまできているということです。
 こういった話はよく聞かれるかもしれませんが、限界集落で独居で残されてしまったお年寄りの暮らしをどう維持していくかです。将来的にはロボットが1台、これは人型ですけれども、壁の埋め込みタイプでもいいと思います。そういったロボットなどが入ってくることによって、見守りをしますよ、話し相手にもなりますよ、健康管理もしますよ、投薬管理もしますよ、さらにスケジュール管理をして、何か外出とかがあれば、自動運転の車を手配していく、相乗りを手配していくというような形で、移動も全く問題なく、ストレスなく行いますよということが可能になるかもしれません。何かトラブル、急に心拍数が上がったとか、息できなくなったということになれば、すぐに病院とかそういうところに連絡が入るよという状況をつくっていくというのが一つではないでしょうか。意外と要素技術だけ見ると、これってそんな遠くない時代に実現可能なはずです。自動運転がやっぱり一番ちょっとネックになるかもしれませんけれども、技術的にはそれほど難しくないのかなというふうに思っています。
 これはITじゃないんですけれども、やり方を変えていくという方法が1つあるかなと思っています。笠岡諸島の例を今言おうとしているんですけれども、岡山県に笠岡市というところがございまして、そこに笠岡諸島という、6つか7つぐらいの有人の小さい島があって、高齢化率が65%と極めて高齢化率が高い地域があるんですけれども、そこでの暮らしを支えるために、かさおか島づくり海社というNPO組織が立ち上がってるんですね。ここの特徴は、地域の暮らしに必要なことは何でもやりますよというのが基本です。デイサービスもやります。これは、もともとあった民間の企業が提供していたんですけれども、それが撤退したのでここがやるようになりました。それから、公設民営で保育園も運営してます。また、買い物支援をしてます。島ですので、船で荷物を運んでくるんですけれども、いろんな情報端末から、こういったものが欲しいというふうに入った情報が入り、スーパーのほうで船に乗せてくれます。それをこの会社が仕分けして各戸に配達します。また、有償運送、空き家対策、特産品開発、いろんなことをやっています。実は範囲の経済という考え方があって、効率性を保っていく。それぞれ1個1個は、デイサービスも民間企業が撤退するぐらい、実は生産性が低い、商売にならないものなので、この会社がこれだけやってたらやっぱり同じような結果になるんですが、ほかの仕事を一緒にたくさんやることによって、効率を高めてるんです。
 例えばどういうことかというと、一番わかりやすいのはこういったトラック、バスですね。普通の路線バスのようにして使うときもあれば、保育園の送迎に使ったりとか、お年寄りの送迎にも使ったりとか、もういろんな形で使っていく。もちろん人材もそういった形で使い回していくということを徐々にやろうとしています。それによって、全体として収益性を高めていく。特に高齢者に関するものについては、介護保険などから公的なお金が入ってきますので、ある程度息がつげるビジネスではあるということですね。こういうのを範囲の経済って言うんですね。規模の経済というものをよく聞かれると思います。たくさん物をつくることによって生産性を上げていくことです。そうではなくて、範囲の経済というのは、需要が限られるようなところに対して、いろんなサービスを提供することで生産性を上げていくという考え方です。恐らく人口減少地域、将来的には静岡市内もそうかもしれませんけれども、こういったところが活躍してくる時代になってくるのかなというふうに思います。
 これについては、私などが今さら言うまでもなく、実は静岡県もこういった仕組みをやってるんじゃないかなというふうに思うんですね。これは、高知県の例なんですけれども、高知ふるさと応援隊という組織があって、何でも屋さんというものを各集落に置いていきましょうということを高知県がいち早く始めたんですね。恐らくこういった成功例というものがあって、それを静岡県でもこういったものをやっていこうという話を、私、報道ベースですけれども聞いたことがあります。それが1年以上前ですから、恐らく少しずつ形になってきている地域もあるのではないかというふうに考えています。特に、こういった取り組みというのは、民間参入が重要なんですね。これはまだまだ行政が主導して、行政のお金で回していこうという発想なんですけれども、中には株式会社大宮産業という、民間企業が受けている会社もあります。四万十川の奥のほうに大宮地区というところがあるんですけれども、そこで住民組織が立ち上げた株式会社で、もともとはガソリンスタンドの運営から始まっている会社ですね。農協撤退によってガソリンスタンドがなくなるということで、大宮産業を住民が立ち上げてそれを運営していくと。高知県でのこういった仕組みの1つとして、すごく民間参入が重要だと思うんですね。
 なぜ民間参入が重要かということですが、少し話が変わるんですけれども、これは、東京都の多摩ニュータウンでの新しい取り組みです。クロネコヤマトという会社がございますね。宅配便のヤマトですね。そこが新しい取り組みをやっているので、ちょっと御紹介したいと思います。
 まず、ヤマトはコミュニティ拠点というものを真ん中につくるんですね。多摩ニュータウンというのは、御存じのように、高度成長期に建ち上がった住宅地ですので、高齢化が著しいんですね。将来的には荷物の量も減るかもしれない、サービスとしても、家事サポートなど、買い物支援などが必要になってくるかもしれないということで、まずコミュニティ拠点をつくって、そこに対して家事サポートとか、あるいは買い物支援とか、こういったサービスを提供し始めました。もともと、家事サポートというのは、引っ越しのノウハウで、部屋のクリーニングだとか、そういった専門部隊を持っていたので、非常に入りやすかったという話でした。また、買い物支援というのはもともと物流ですので、こちらも非常にやりやすかったということだと思います。
 もう1つここのポイントは何かというと、一括配送をやってるんですね。新聞などに出ていたので注目されている方、多いかと思いますけれども、例えば、佐川急便と郵便局がこのコミュニティ拠点に配達する戸配用の荷物をここまで持ってきます。ここから先、各家庭への配達というのを、ヤマトが一括で請け負うというサービスを提供し始めました。ヤマトさんは、これによって、目の見えるサービスが提供できると、いつも同じ人が来るので、いいサービスが提供できるとか、あるいは見守りができますよ、いいことがいっぱいありますよということで始めましたというのが表向きであるんですけれども、私の考える実際の狙いはそうじゃなくて、実は将来的に人口が減っていって、荷物の量が減っていく可能性がある中で、いかに持続的なサービスを提供するかということで出てきた1つのアイデアかなというふうに思っています。要は、荷物の量が減っていけば、3社がともに配達していたら、絶対赤字になっていくわけですね。特にこの最後のワンマイルと言われるところというのは非効率性が高いわけですから、そこをいかに効率性を高めていくかというのは重要なポイントで、結局3社の分の荷物を1社が運ぶということで、運ぶ側は荷物の量を確保できる、あとの2社から見れば、不採算な事業から撤退できるということで、お互いのメリットがあったことによって実現したのかなということなんですね。恐らくこういったサービスというのは、今ここでは実験的にやってますけれども、全国でこういったのは広がっていくだろうというふうに思います。
 なぜ民間の力かということなんですが、要は、様子見をしながらどんどん進んでいってしまうんですね。これ、完成したシステムじゃないです。というのは、幾つか問題があって、まず冷凍温度、クール宅配便の保証温度が3社それぞれ違うらしいんですね。ですから、それをまず統合しなければいけない。1度か2度、各社違うらしいんですね。それをまず統合しなければいけないということと、荷物のバーコードをそれぞれ読み取れないという問題が出てきています。ただそれでも、将来的にこういったサービスが必要だということで、今は常温のものしか運べないんですけれども、とりあえずやっちゃおうよということで、もう既にこの4月からサービス提供は始まってます。恐らく、クロネコヤマトさんが言うには、近いうちにそのバーコードの問題を解決していくということです。要は、佐川急便で発行したバーコードで、そのままヤマトの荷物として運べるような形にしていくと。もしここでできれば、恐らく全国展開はすぐなので、そういった仕組みというのは整っていくだろうと。あと、温度帯なんていうのも、もうそれは最低のところに合わせるとか、実際必要なところに合わせていけばいいだけの話なので、様子を見ながらどんどんもうできるところから始めていくという意味もあるようです。これが民間の力ではなく、行政主導でやったらどうだったか。いろいろ問題は列挙するものの、実態的にはなかなか問題あってできないということになりかねないですね。商売のために民間が考えれば、何とか打開策を見出していくということではないかというふうに思います。
 コミュニティサービスを民間が担うべき理由ということで、技術革新のスピードとか、雇用調整の容易性とかがあります。やはり人口がどんどん減っていき、雇用調整というのが絶えず必要になっていく中で、行政が一旦雇ってしまった人たちというのは、なかなか調整できない。だけど、民間だったらほかへの配置転換というのは比較的容易にできますので、こういった点もあるかなと。
 あともう1つ、根本的なこととして、国内の自治体の半数に及ぶ800ぐらいの自治体に過疎集落というのがあり、そこに暮らす人たちというのがいるわけですね。そういった人たちの暮らしを全部が公共で支えていくのが正しいのかどうかということです。可能な限り民間に任せていって、民間のこういった力をうまく活用しつつ、必要なところにお金を注入していくという発想が必要なのではないかなというふうに思っています。
 さっきの笠岡の島づくり海社では、1億円ぐらい売り上げてるんですね。そうすると、17名ぐらいの直接雇用ができますよということです。雇用規模を少なく見積もっても、1社当たり10名雇えば、新規雇用が6万5000人ということで、これは林業の従事者よりも規模としては大きいということで、こういったことが必要なのかなというふうに思います。
 特にこれからは、人の移動について、どうやっていくのかということですね。先ほどは自動運転という一足飛びの話をしましたけれども、バスやタクシーでは利用者が減っている、それは大きな問題なんですけれども、それ以上に担い手がもういなくなってきているという地域が多いんじゃないかと思うんですね。サービスを提供できない。では、例えば最近話題になっているウーバーという相乗りシステム、海外のシステムですけど、これがサービス提供したいよと言っても、こういったところが抵抗勢力になるんですね。そうではなくて、この人たちがやればいいんです。今までの業態に固執するということが、恐らくこれからはできなくなっていく。どんどん自分たちのパイが小さくなっていくわけです。民間というのは、そういったときに新しいビジネスに出ていく力が本来あるべきものなんですね。ところが、バスもそうなのかもしれませんけれども、何となく自分たちの圏域を守ろうというところに入ってしまっていて、なかなか新しいビジネスに打って出られない。将来的には自動運転とか相乗りが普通になっていくよということであれば、そういった新しいビジネスモデルに自分たちが参入していくぐらいのイメージですね。自動車のオペレーションをやるとか、車の管理をやるとか、そういったことで稼いでいくということが必要なのではないかというふうに思います。
 重要なポイントは、1人当たりの付加価値を上げていくということなんですね。1人当たりの要するにもうけ、収入をふやしていくということが何より重要なことで、人が低収入でもふえたほうがいいよねという発想を、多分捨てるべきなんだろうな、そういう時期に来ているんだろうなと思います。いる人の所得をなるべく引き上げる、あるいは入ってきてくれる人たちの所得をなるべく引き上げてあげるというようなことを考えていくべきです。それは東京にも、もちろん言えることなんですね。
 このグラフで縦軸とってるのが、1人当たりの県内総生産の伸び率です。どのくらい所得が伸びたかと考えればいいと思うんですけれども、大体10年間ぐらいの平均をとってますけれども、東京圏はここにあります。この緑の丸が成長率なんですけれども、すごく低いというのがおわかりいただけると思います。実は東京って、経済規模としては大きい、所得も高い、けれどもその伸びがどうかというと、ほとんど伸びてないんです、この10年間。これはもう日本全体として大きな問題なんですけれども、ほとんど伸びていない。
 その伸びを要因分解して、青と赤に分けている。何によって伸びているか。青いのは人口要因、赤いのが生産要因ということなんですね。青が下に突き出ている。これは何を意味しているかというと、人口がふえているということを言っているわけです。要は、パイが同じであれば、人口がふえたら1人当たりの所得って下がりますよね。下向きに押し下げるほうに伸びてますよ。生産は多少ふえてますけれども、それと同じくらい結局人口がふえている。要は、人口がふえた分しか経済規模が大きくなっていないということです。ほとんど1人当たりの伸び率というのはないんだということで、これは東京の大きな問題なんです。これによって今、東京、日本全体の低成長というものが生じてきていると言っても過言ではないんです。
 じゃあ、地方はどうかというと、実は地方のほうが、この10年間、2000年代は経済成長したんですね。1人当たりの所得が伸びたはずです。例えば静岡県を見ていただきますと、平均1.5%ぐらい伸びてきているということなんですね。給料に反映されたかどうかは別として、県全体のパイとしてはふえてきているということで、人口が少し減ってますので、それは人口が減るということは、1人当たりの所得という意味ではプラスに影響するということなんですね。
 問題は、2000年代、多くの場合、製造業が押し上げたんですね。製造業というのは、人員を減らしながら生産性を上げていくということをずっとやってきています。製造業は、2000年代というのは地方では活性化している。ところが、サービス産業中心の東京というのは、伸びられなかったということで、恐らくこの2010年以降、2020年ぐらいまでは、徐々にこの地方の成長というのはサービス業に求めていかざるを得なくなってくるという産業構造の転換の時期にきていますので、いずれ東京と同じような苦境に立っていく可能性は高いということだと思います。非常に厳しい状況なんですね。そういったことも踏まえていくと、地方においてサービス産業主体の成長というのをどうやって模索していくのかというのは、一つの大きな課題だと思います。
 コンパクトシティがだから必要なんだと言う人もいますけれども、コンパクトシティというのはそんなに容易じゃないよということですね。
 実は、これは同時性の壁と言われているもので、サービス業の生産性を上げていくためには、人が近くにいたほうがいいよ、それを同時性の壁といいます。ところが、ICTとかAIによって、この壁というのは今、急速に低くなっています。ここを考えずに、昔ながらの発想でコンパクトシティと言い続けるよりも、コンパクトシティをやりながらも、こういったものをうまく活用していくということで、生産性を高めていく方向にこれからは切りかえていかなければいけないということです。逆に人口減少というのは、人手が足りなくなります。人手が足りないということは、こういったものを導入しやすいということなんですね。
 最近、女性の研究者が、「武器としての人口減社会」という本を書いてますけれども、まさにそういった視点なんですね。人口がふえてるときというのは、こういうのがなくても成長できるんです。
 人口減少になって、働き手が急速に減っています。実は、生産年齢人口というのは、もう2000年代に入ってずっと減っています。そうした中では、もうこういうものをどんどん導入していかないと、生産性が上がらないということなんですね。よく人がこういったものを入れると、仕事を奪っちゃう発想があります。例えば、私が原稿を書く場合に、それをキーパンチャーみたいな人に渡すという作業が、恐らく高度成長期というのはあったと思うんですね。でも私は今、ワープロで文章を打って、考えながら直してということをやっていく。2人の人が働いていたときよりも、何倍も速いスピードで本というものができていく時代になっていくということです。ですから、特に人口減少時代には、こういったものの導入を恐れずにどんどんやっていくことによって、新しい仕事を生んでいくということが必要なんだろうというふうに思います。
 往々にして、例えば介護というのは、人と人とのふれあいのサービスなので、こういったものをすごく拒絶する雰囲気っていうのがあるんです。その気持ちはもちろんわかります。だけれども、もう人手が不足している、圧倒的に不足してくるということが見えている産業で、こういったものの導入を拒んでいたら、コストばかりがかかっていく。それ自体がもう持続的でなくなってしまう可能性がある。できるところからこういったものを入れていくという発想が必要なんだろうなと。特に、限界集落というところでは、ICTの恩恵がすごく大きいと思います。自動運転とか、お年寄りの見守りとか、チャレンジングな形でこういったものに導入を試みていくということが必要かというふうに思います。
 ちょっとこの写真はあんまり関係ないんですけれども、やはり昔ながらの企業というのは変えられない、変わらないですよね。もう一部上場してしまっているような大きな会社に新しくイノベーションを起こせといってもなかなか起こせないという中で、やはり起業というものに少し期待していくということは必要なのかもしれません。高度人材が地方に移住していくという動きも多少なりとも出てきていますし、ICT環境、どんな山奥でも今、こういったものは整っています。起業するといったときに、クラウドファンディングですね。インターネット上でお金を募る仕組みもできています。もう静岡県などにもあると思います。地域プラットフォームといって、起業したいという人たちを支援する組織、こういうのも整ってきている。一昔前、10年前に比べると、こういったのがもう劇的に変わってきている。新しくチャレンジしようという若者を支援していこうという仕組みというのはすごくできているというふうに思いますので、ぜひ、先ほどの笠岡の島づくり海社じゃないですけれども、そういったような組織を支援していく、あるいはクロネコヤマトみたいなところで、中山間地域でサービスを提供したいというような組織が出てきたときに、それを支援していくというようなスタンスが必要なのかなというふうに思っています。
 最後、まとめといたしまして、都市問題としては、東京悪玉説、一極集中で東京がだめなんだ、悪いんだ、東京から人を奪い返せというような発想だと、なかなか前に進まない。単純に地方の空き家対策みたいな話になってしまって、短期的に入ってきてくれるかもしれないけれども、なかなかそこで暮らしが続かないというパターンもあると思いますので、それよりも地道に雇用を創出していく。ちょっときょうはこの話、あんまりしませんでしたけれども、こういったことも必要かなと思います。
 あとはコンパクトシティですが、必要なんだけれども、これだけが解じゃないよということですね。ICTとか技術革新で乗り越えられる部分もあるんじゃないかということですね。
 それから、中山間地域の経済ということで、1つポイントとして私、言えるのは、家庭やコミュニティが担っていたサービスを外出しするという発想です。ヤマトの先ほどの家事サポートとかは、一昔前で言えば、自助あるいは共助と言われている部分で解決していた部分ですよね。中山間地域に行ったって、雪かきとか、あるいは屋根の雪おろしとか、そういった共助という形で解決していくわけですけれども、それだと、そのサービス提供が持続的な状況にはなかなかないんじゃないかなというふうに正直、私は思っているんですね。地域に住んでいる人たちがみんな高齢化してしまっている中で、本当にそれが持続的なのか。それよりも、そういったものにちゃんと対価を払っていくという、外出しして商売にしていくという発想も必要なのではないか。ですから、ヤマトの家事サポートもそうですし、あとは笠岡の島づくり海社もそうかもしれませんけれども、経済として回していくような仕組みをうまくつくって、それによって若い人たちが住める環境、要するに収入が得られる環境というのもつくっていくということではないかというふうに思います。
 あとは、仕事を集約することで、1人当たりの所得を伸ばすということです。タクシーとかバスの運転手さんというのは、非常に低賃金ですね。特に中山間地域に行くと、とても暮らせる金額ではありません。ですから、今のままタクシーとかバスを走らせていると、若い人はそこに入り込めないんですよね。そうじゃなくて、新しいビジネスに乗り出していくことで、若い人たち、例えば自動運転とか、そういった才覚のある方、能力のある方が入ってきて、その車両管理とかコントロールをしていくというような仕事をつくっていくことで、全体として見ると、運転手をたくさん雇っていたときに比べると、雇用量は減っているかもしれないけれども、その1人の所得は上がってますよという環境をつくっていくということです。それが地道に雇用を創出するということの一つなのではないかと思います。
 もう既に、農業というのはこっちに動いてますよね。昔は、米だけでは食えない農家がいっぱいいたわけです。このままだと、今、若い人がIターンで入ってきても食えないわけですね。そうじゃなくて、農地を集約して、その農家が将来一本立ちできるような形で支援をしていく。地元の支援が必要だということではないかというふうに思います。
 ちょっと長くなりましたけれども、私のほうからは以上で終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

○佐野委員長
 藤波様、どうもありがとうございました。
 わかりやすい資料、また分析をもとにしたお話、大変参考になったと思います。
 この後、質疑に入りたいと思います。
 委員の方、一問一答で、質問をお願いしたいと思います。

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