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委員会会議録

委員会補足文書

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平成23年11月大規模地震対策特別委員会
参考人の意見陳述、静岡大学防災総合センター准教授 原田賢治 氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/25/2011 会派名:


○原田賢治氏
 静岡大学の原田です。きょうはよろしくお願いいたします。座って失礼いたします。
 きょう、私のほうでお話を準備してきた内容ですけれども、3点お話しいただきたいということで、津波対策といったところをメーンにきょうはお話を準備してきております。
 まず最初に、少したくさん文字が書いてあるんですけれども、今回起きた東北の事例を踏まえまして、もし大きな地震災害が起きたとき、それと同時に津波が発生した状態のときに、どういったことが起こり得るのかといった状況を少し書いてあります。大規模な地震ということになりますとこれは、静岡県の場合、東海地震というのがまず挙がりますけれども、東海地震だけではなくて、東南海・南海地震と広く続く大きな地震になった場合には、広域で被災地が広がるといったことが非常に大きな問題になると思います。これは東北の事例でもありましたけれども、外部からの支援といったものを考えた際には、広域が被災地になりますので、支援がすべてに行き渡らないといったことが十分考えられる状況かと思います。
特に、静岡県の直下で起こる東海地震の場合、地震がまさに足元で起こりますので、地震による災害と津波による災害になるかと思います。東日本大震災は、地震が実は海の方で起きています。ですから、地震による災害というのは、比較的小さかったというふうに言われています。ですが、静岡県の場合を考えると、地震の揺れプラス津波の両方を考えておかないと被害の大きさというのは、はかれないのかなというふうに思います。
 支援の入り方についても、静岡県の場合を考えますと、北のほうは山でかなり入りにくい状況にあります。もちろん通れる道路は確保されている部分が幾つかありますけれども、限られているという状況があるかと思います。加えて東西に長い地形になりますので、その東西に長くて北側からは入りづらいという状況、加えて広域の災害になった際には、西側にある愛知県のほうも被災地になるということになりますので、支援というのも状況としてはかなり厳しくなるということは考えておかなければいけないであろうと思います。加えて津波も来ますので、東北の事例を見てもわかるように、港というのは海を使った支援ですから津波によって瓦れきが出てしまいますと、すぐには使えないという状況というのは、容易に推定ができるかと思います。
 津波の災害は、特に沿岸部に集中するということがありますので、場合によっては集落すべてが被災するような地域というのも出てきかねないというふうに思います。これは、特に伊豆半島のほうにおいては、駿河湾の中で地震が起きて津波が発生するといったことになりますと、壊滅的な被害が起こる集落というのも考えておかなければいけないのかなというところです。
 加えて、津波被害の場合、建物と一緒に被災者の方も流されてしまいます。そうしますと、今回の東北の事例でもありましたけれども、行方不明者の捜索というのに非常に時間がかかります。阪神・淡路大震災のときの犠牲者の方は、ほとんどが建物の倒壊によって圧死されたという事例ですけれども、あの場合は、建物の中を捜せば犠牲者の方が見つかるということですけれども、津波を考えた際には、瓦れきと一緒に流されてしまうということですので、その瓦れきの中を一つ一つ探さなければいけないということですので、安否確認、行方不明者の捜索といったところが長期化するというのは考えておかなければいけないことなのかなというふうに思います。加えて、特に土地の低いところに市役所等の行政機関があるような地域ですと、役場も被害に遭うというようなことも考えておかなければいけないのかなというふうに思います。
 次に、津波の災害といったものを少し整理したものがこちらになるわけですけれども、津波自体は自然現象です。物理的な水の動きといったものが名前としては津波と言われていますが、そこで起こる災害といったことを考えますと、我々が住んでいるまちが被害を受ける対象になるわけですから、その被害を受ける対象がうまく準備をして被害を軽減できるだろうということが考えられます。ですので、いろいろな対策を取っていくことで、来るであろう津波の外力に対して、被害を軽減する努力というのは、十分に行っておく必要があるだろうというふうに思います。
 こちらに少し絵がありますけれども、災害リスクと書いてありますけれども、簡単にイメージするには、津波によって起こる被害といったものを考えていただけるとわかりやすいと思います。ハザードと書いてあるものは、津波自体です。津波によって水につかるところと社会の脆弱性と書いてあるのは、我々が住んでいるまちのある位置という関係になります。ですので、津波がきたところと我々が住んでいるところがちょうど重なったこういったところで災害、被害というのが起こるという説明になります。ですので、こういったどこの部分に被害が起こるのかといったところは、ハザードの部分、津波を評価して、我々が住んでいるまちの強さといったものを評価することが可能になるということです。
 こちらは、内閣府の中央防災会議でまとめられたデータですけれども、今回の東北の事例で犠牲者の方の集計が一番左にあります。津波によって溺死した人が9割を超えているというのが今回の災害でした。ですけれども、関東大震災ですとか、阪神・淡路大震災を考えた際にも同じような集計ができるわけですけれども、それぞれ災害によって、特徴が大きく違うということがわかるかと思いますが、関東大震災については、10万人の方が亡くなられたうちの87%が火災によるものです。これは、当時の建物の基準がそれほど火災に強くなかった、まちの構造が火災に強くなかったといったところが大きな原因だというふうな分析がされています。阪神・淡路大震災のときにも、建物の強さといったものが揺れに対して十分でなかったといったところで、建物の倒壊によって亡くなられた方が非常に多かったということになります。ですけれども、津波の場合を考えてみると建物と一緒に津波に飲み込まれて、流されてという被害の形態ですので、津波に飲み込まれないように避難をするですとか、津波に流されない建物をしっかりと準備していく、流されない避難場所を準備していくといったようなことが、この津波の場合の90%を超えるおぼれ死ぬといったことに対応する直接的な被害を軽減する方策として考えられるのではないかというふうに思います。
 津波の被害と防災力というふうにここに書きましたけれども、要は津波がやってきたときに津波が及ぼす影響力といったものが地域の持っている防災力――これは津波に対抗できるような対策の強さであったりするわけですけれども――そういったものがどのくらいの力関係にあるのかなといったところで被害が出るのかどうかということが決まってくるであろうというようなことが一般的には言われています。
 具体例を見れば、津波の高さというのが津波の外力になりますし、それに対応する防災力というのが堤防の高さになります。津波の外力の強さといったものを取れば、建物についてみれば建物の強さといったものが、それにどれだけ耐えられるのかといったところで、防災力といったものがどのくらい不足するのか、それとも十分なのかといったところが評価できるということになります。
 こういったことを考えますと、津波の大小といった大きさですとか、地域の防災力の大小といったようなものがどういった関係にあるときに被害が起きやすいのかといったことを少し整理することができます。もちろん、津波が大きくて防災力が小さいとき、つまり、大きな津波が来たけれども堤防が小さかったらやっぱり被害が出てしまうというのが、この右上の黄色の部分になります。ですけれども、それ以外の場合にもいろいろと被害が起きそうなことというのはあります。特に問題になりそうなのは、一番右下の部分ですね。防災力の限界までは被害がない。つまり、防災力である堤防をある程度高くしたとしても――想定をしてそれに対応するような堤防をつくっていたとしても――今回の東北の事例のように、それを上回るような津波が来てしまった場合には、被害が甚大になってしまうということになります。ですので、この限界を超えてしまった場合も、どういうふうに対応、被害を軽減する策といったようなものも準備しておかないと、津波の災害を考えたときに、被害軽減というのを十分にできないのではないかなというふうに思います。
 こちらの表ですけれども、これもこれまでよく使われている表になります。内閣府の中央防災会議でも使用されていますし、静岡県の津波の被害想定でも使われている表になるんですけれども、真ん中のところに木造家屋というのがあります。大体津波の高さ、これは津波で水につかる厚さになるんですけれども、それが2メートルを超えると木造の建物は流されてしまい、建物と一緒に中にいる人も流されてしまうという基準があります。それで、この2メートルというのを超える、超えないといったところが、先ほどの防災力と津波の外力の力のバランスの限界といったようなことを見ることができる数字になります。ですので、こういった被害の出方というのも、いろいろな条件によって変わってくるといったことになります。
 こちらにあるようなシミュレーションの技術、富士常葉大学の阿部さんもいろいろ研究されていますけれども、こういったシミュレーションの技術をうまく使って、地域にやってくる津波の大きさが、いろいろな条件を設定したときにどのように変わるのか、そのときにどのくらいの被害の大きさになるのかといったところをいろいろと評価して、それに対して一つの基準だけではなくて、いろいろなレベルに合わせて、対策を取っていく必要があるのではないのかなというふうに、最近私は思っています。
 これは、津波の来襲の状況ですけれども、津波がやってくる際には、浜松などの西の方は、こういった形で東からやってくる場合が、大方多いかなというような状況です。こういったものをいろいろシミュレーションの工法を使って計算をして、どのあたりが水につかるのか、そこにある建物はどうなのか、そこにいる人はどうなるのかといったところを考えた上で対策をどう打っていくのかといったところが重要になってくるかと思います。
 こちらもシミュレーションの結果の一部ですけれども、地震が発生後、駿河湾の中で考えますとすぐに津波がやってくるといったことになります。ですので、人間の命を守るような避難を考えた場合には、限られた時間、非常に短い時間の中で、海に近いところから安全なところに行かなければならない。しかも、安全なところというのは、津波が来ても流されない命が助かるところといったところで、そういった場所も確保していかなければならないといったところが重要な対策になってくるのかと思います。
 こちらでは、そのいろいろなシミュレーションの結果を少し紹介しますけれども、これは、過去に東大の地震研の先生方が研究された成果ですけれども、東海地震・東南海地震・南海地震の3つの地震を考えたときに、その地震が時間をおいて発生した場合に、津波がどこで高くなるかという点を検討しています。東海地震・東南海地震・南海地震という3つの地震ですけれども、その地震が発生する時間がずれることによって、津波は海の中を伝わってくるわけですので、地域によっては時間がずれたことによって、遠くからやってきた津波と近くで発生した津波が重なり合って、すごく高くなるといったような現象が起こります。それが、この赤いグラフで書いてあるものですけれども、赤いものがずれて、時間がずれて発生したときには、津波が10メートルを超えるようなところが出てくる。ずらさないと6メートルぐらいだけれども、10メートルぐらいまで津波が高くなることもあるんだと、そういったことも想定の中に入れて検討しておく必要があるのではないかといったところです。特に、この研究では、赤い部分がまさにこの御前崎の周辺で10メートルを超えるだろうといった計算結果を出しているものです。
 今、いろいろな津波の現象ですとか、何が必要なのかということをお話してきましたけれども、それを防ぐ対策といったようなものの基本的な考え方を大きく分けると2つしかないというのが現状かと思います。それは、1つは防ぐ、入ってくる津波の水を防ぐといった対策、もう1つは津波を避ける、これは、津波が来るまでに逃げるといった、避けるという意味と、津波が来ないところに普段からいるという2つの避けるという意味があります。なかなかこの2つ目の津波が来ないところに住むといったものは、現在、東北の復興計画の中でもいろいろ検討されて問題があるところなんですけれども、この対策は一番効果があるというふうに言われています。
 我が国、日本における津波対策の方針というのが、1997年に地域防災計画における津波対策強化の手引きというものにまとめられています。これは、当時の国の機関で海岸を所轄する省庁すべてが集まって、議論をしてつくられたものですけれども、そこでもやはり、大きく分けると3つあって、1つは、津波を食いとめる、建物、生命、財産の被害を抑止するために構造物をつくって津波を食いとめるというのがありますし、2つ目としては、まちをつくる、高地移転ですとか区画整理でうまく津波に強いまちをつくりましょうというのが2つ目に挙げられています。それで、3つ目には、避難をうまくして、命を守りましょうといったような対策がやはり基本として挙げられているところです。こういった対策を考えるフレームとしてここで書いてあるのは、災害マネジメントサイクルという、これは、あるモデルですけれども、地震及び津波が発生する発災の前後に分けて、どのように準備をするのかといったこと、少し概念を整理してやっていきましょうというようなモデルがあります。
 事前の対策については、リスク・マネジメントといったように呼ばれますけれども、地震・津波が発生して被害が出てしまった際には、それにうまく対応して被害を拡大させないですとか、復興を速めて、被害からの立ち直りを早くして、全体の被害を抑えようといったようなクライシス・マネジメントと呼ばれている2つのマネジメントがあるというふうに言われています。
 ですけれども、このどちらか一方があればいいというわけではなくて、両方があって全体としての被害を軽減できるということになりますので、この両側からの準備といったものも、今後の対策を考える上では必要になってくるかと思います。
 次に、ここに挙げているのは、先ほど見てもらったリスク・マネジメント、事前対策の部分だけを取り上げていますけれども、その中で災害を起こらないようにする対策、抑止とここでは書いていますけれども、起こらないようにする対策と軽減、起きたとしても小さくする対策といったようなものを少し分けて書いてあります。
 起こらないようにする対策として、具体的には堤防や水門をつくって津波の水が入ってこないようにするという対策です。回避する対策というのが、これは、まちづくり、高地移転ですとか、避難をうまく使いましょうといったようなことです。
 被害軽減のもう一つの方法ですけれども、転嫁、これは地震の保険ですとか共済制度といったようなものを使って、起きてしまった被害を補てんする対策、こういったところもしっかりと準備しておかないと、起きてしまった被害が放置されてそこから立ち直れないということになりますので、こういったものもしっかりと準備をしていかないといけないということになろうかと思います。
 最後の4つ目は、この需要ということですけれども、災害が起きてしまったあと、被害を最小限にするための対策ということですけれども、これは、起きてしまったあとの対策に続くものとして応急対策ですとか、実際にそこで対応するための準備ということになりますけれども、入ってしまった水を排水するポンプ等を準備しておくですとか、防災無線等で起きてしまったあとの事後処理をちゃんとできるようにするといったような対策といったことになります。
 これまでこういった対策がいろいろとられてきてはいるんですけれども、それもやり方としては、最初に先ほど見ていただいたようなシミュレーションをかけて、それに基づいて被害がどうなるのか、それを減らすためにはどうしよかといったところで、堤防をつくったり、避難の計画をうまくやったりというふうな流れできていたと思います。ですけれども、これまでの想定というのは、被害の想定のところが1つだけのシナリオで評価されていますけれども、実際の災害というのは想定したとおりには起きないというふうにして、準備をしておかないといけないのかなと思います。
 対策をとるといった場合にもいろいろな対策がありまして、先ほど見ていただいたような災害が起こる前と後の対策もあります。これは、時間軸に沿って、対策を羅列したものですけれども、事前の対策、もしくは津波が来たときの対応、そして被害が起きてしまったあとの復旧・復興の過程といった段階で、さまざまやらなければいけないことが起こってくるということになります。ですけれども、こういったものの一つ一つをどういったタイミングでやらなければいけないのか、どういった準備をしておかなければいけないのかといったところを総合的にしっかりと把握しておかないと、個別にやっていくだけではいざというときの対応はなかなか難しいというのが、今回の東北の事例でも出てきたことですし、これまでの事例からもわかっているところかなと思います。
 時間軸だけではなくて、それをだれが主体的にやるのか、担当する人はだれなのか、国がやるのか、都道府県がやるのか、市町村がやるのか、地域集落がやるのか、それとも個人ベースでやるべきことなのかといった、時間軸とだれがやるのかといったことをしっかりと整理した上で、それを抜け漏れ落ちなく実施していく、準備しておくというのが対策として重要になろうかと思います。
 津波に強いまちをつくるといった例を取ってみたときに、港を考えてみますと、船があったり、船に入れる燃料があったり、積み荷があったりもするわけですね。そうすると、火災が起こりやすいということになります。今回の津波の事例でも気仙沼で大きな火災がありました。そういった形で港の周辺では、津波の後、火災が起こるかもしれないということも非常に重要なポイントとして考えておかなければいけないものです。
 港というのは、先ほども少し出ましたけれども、特に静岡県の場合、被害に対する海からの支援というのも十分考えておかなければいけませんので、漂流物、瓦れきといったものをいち早く取り除いて、港を物流の拠点、支援の拠点として使っていくといったようなことを考えておかなければいけないのかなというふうに思います。
 次に、津波災害にどうやって備えるのかといったことなんですけれども、具体的に考えますと、目標というのをまず考えますと、安全な社会をどうやって構築するのかといったところが最終目標になるのかなというふうに思います。長期的に見てみますと、津波災害による危険性が低い社会といったものを目指すというのが、防災対策・津波対策を取る上での目標になろうかと思います。
 ですので、そういった長期的な面を見るのも重要ですけれども、短期的に実現できる対策も重要かと思います。長期・短期での全体を見た戦略的な計画をつくって、時間軸を見ながら対策を進めることが重要になってくるかと思います。これは、1つの例ですけれども、時間軸という短期的・緊急的に行うべき対策といったことで、今いる人々が安全に逃げられるようにすることが、まず、短期的に実現できなければいけないのかなというふうに思います。
 これは、長期的に見ればいろいろな施設をつくって、安全性を高めていくといったことを考えることができますけれども、地震・津波というのは、いつ起こるかわかりませんので、まずは、今そこで危機に直面している人たちの安全をいかに確保するかといったところが短期的に必要な対策で、少し中期的に見れば、ここでは体質改善的な対策というふうに挙げていますけれども、今後、避難する人で問題になりそうな――問題になるというと言葉がよくないですけれども――例えば、要援護者といったような人がたくさんふえてしまうと、避難を考えた際に大きな課題になりますので、要援護者の人をなるべくふやさない、これは自分で逃げられる人をふやすといったような、時間をかけて健康な人を増やしていくといったことも1つの避難対策になろうかと思います。加えて、学校での防災教育、これも釜石でうまくいった事例がありますけれども、防災教育というのも1回やって終わりではなくて、かなり時間をかけてやっていかないと実現性がないものかと思いますので、中期的な課題というふうにここでは挙げています。
 少し時間をかけて行う対策、根本的な改善ができるような対策というのも、社会の安全性を高めるといったところでは必要ではないかというような形で、時間軸を見ながら、かつ必要な対策は何なのかといったものを見ながら、それぞれ対策を取っていくのが必要になってくるかと思います。
 これは、今回被災がありました田老町の事例ですけれども、昭和の三陸の津波のときにもまちが流されてしまいました。その後、地域の皆さんの努力で10メートルの堤防がつくられまして、その背後にまちがこのようにあったわけですけれども、皆さんも御存じのようにその背後にも津波が流入して、被害があったということになります。ですけれども、この堤防には、残った堤防と壊れてしまった堤防の2つありますけれども、残った堤防の裏側というのは比較的被害が軽微であったというふうに言われています。津波を受けて堤防自体が壊れてしまった地域の背後は、まさに何もなくなってしまうといったような形で流されたという状況になります。
 それで、こういった形で見ていきますと、津波対策を取ったときに、どういうふうにその効果を求めていくのかといったことも考えていかなければいけないというふうに思います。その効果を評価していく1つの案としまして、ここでは、クリフエッジ効果というような言葉を挙げました。これは、この言葉自体は原子力災害の評価の際に用いられている言葉ですけれども、入力の小さな変動、つまり津波の高さの少しの変動で状況が大きく変わるような、被害が急激に大きくなるような対策ではまずいであろうといったことです。簡単なイメージ図でいきますとこの赤と青の線になるんですけれども、赤い線、津波の外力、津波の高さのようなものが少し大きく変わる、大きくなるだけで被害の割合がぐっとふえてしまう。こういうような対策ではまずいであろうと、少しぐらいの津波の大きさがふえたとしても、全体としての被害率の増加というのは、なだらかに変化するような対策を取っていかないといけないであろうというふうに考えられます。
 それで、それを具体的な例で考えますと、全面的な破壊を起こさない堤防ですね。先ほどの田老町の事例のように、越流、堤防を越えて津波が流入したとしても、堤防自体は形をとどめている。 
そういった対策をしっかりと取ることによって、堤防を越えた時点で堤防が破壊されて、被害が全面に広がってしまう、赤いラインのような形ではなくなってしまうというのではなくて、堤防が残ることによって、青い線のように被害をなだらかにすることができるであろうと。もう1つの例でいけば、避難ビルの例ですけれども、屋上に避難するタイプのビルの場合、その避難ビルの高さを超えた津波がやってきて、今回流されてしまった事例というのがたくさんあったと聞いていますし、実際そうでした。それで、そこにもし津波から逃げることができるようにシェルターのような施設が屋上についていたとしたら、その中に入れば、命だけは助かったかもしれないといったことが考えられます。この場合も、津波の高さと避難ビルの高さの限界が少し超えただけで一気に被害が出てしまうという事例ですので、屋上にシェルターのようなものをつくるだけで、被害の出方というのが大分なだらかになるのではないかなと、そういったようなことが考えられます。それ以外にも、幾つかいろいろな対策で急に変わるものではなく、なだらかに被害の出方が変わるものといったようなものに変えていく必要があるのではないかなというふうに思います。
 これも先ほど、少し出てきましてけれども、現状としては、1つの地震を想定して、あなたの地域は何メートルの津波が何分後に来ますよといった数字が来る、それに基いて対策が取られていると思いますけれども、先ほどシミュレーションを見てもらったものがありましたけれども、あれも、いろいろな条件、地震が起こる場所、地震の起こり方、津波の起こり方、津波の発生が高くなるところを変えるといったことをするだけで、津波の高さ、来る時間というのがいろいろ変わります。そう考えると、いろいろな条件が変わる中でも、必ずある程度の防災対策効果が出るといったような対策を考えていかないと今回の東北の事例のような想定外といったような言葉が示すように、考えていた想定を超えてしまった場合には、被害が出てしまうということになります。想定外であったため被害が出てしまうといったことは、これは、やはり対策を考えておかなければいけないということかと思います。一番下に書いてありますけれども、想定というのは、被害や対策を考える1つの目安として有効な数値、条件ですけれども、絶対の条件ではないというような考え方で、今後考えていく必要があろうかと思います。
 こちらのスライドですけれども、もう一歩、次の一歩へというふうに書いていますけれども、被害を小さくすることを目的にするといったスタンスに立てば、特定のシナリオの条件をクリアするといったことが、施設設計や対策を考えるための条件ではなくて、いろいろな対策を考えた上で、ある程度の基準をもって、堤防の高さを決めるですとか、避難の準備をしていくといったようなことをして、100%被害を防げなかったとしても、事前の策として被害を減らす対策といったものを十分に行っていかなくてはいけないだろうというふうに考えられます。
 こちらのスライドは、現在、土木学会で検討されている案の1つですけれども、土木学会ですので、いろいろな土木施設をつくる際の基準を考えましょうといったことが、今、検討されてきています。その中で、海岸保全施設――これは堤防などを含む海岸保全施設ですけれども――そういったものをつくる際には、レベルを2つ考えましょうということが行われています。
 1つ目のレベルとしては、津波を完全に防げるといったようなレベルを考えて、そのレベルに合わせて堤防をつくりましょうと、ですが、それを超える場合も考えて避難の計画もあわせて全体の対策としてやっていきましょうと、まさに津波が想定を超えた場合のことも考えて、その場合にも被害を減らすための努力をやっていきましょうといったことが、今、検討されつつあります。ですので、こういったことも今後検討していき、被害を減らすための努力といったものをいろいろな場面でやっていかなければいけないのかなというふうに思います。
 それで、もう少しスライドと飛ばしましたけれども、これは、幾つかあるほかの地域の事例ですけれども、これは兵庫県の南あわじ市、淡路島の一番南で徳島に近いところですけれども、鳴門海峡の面しているところです。福良港というところに行きますと、こういった防災ステーションというのがありまして、まちの中まで津波がやってくる想定になっているんですけれども、そこが堤防の開口部を遠隔操作で開閉する施設になっています。それだけではなくて、津波の情報を発信する場所であったり、緊急の避難場所や備蓄庫にもなっています。また、この施設には兵庫県内のすべての小学校と中学校の子供たちが、防災学習を受ける場にもなっています。ほかにも、まちづくりといった視点で地域の人たちが集会をしたり、地域のイベントですね、お祭り等のイベントの場所にもなっています。さらに、観光施設の情報発信基地にもなっていて、先ほども言ったように鳴門のうず潮を見に行く遊覧船が出ているところですが、その施設には、遊覧船にはどういったものがあるとか、そこの地形のこととか、地域の環境や歴史のことなどが紹介してあって、そういった地域の情報も一緒に発信する、防災の情報も学べるといったような複合的な施設として取り組んでいる事例の1つです。こういった取り組みを継続的に行っていくことで、地域の人たちの防災に対する意識ですとか、地域の防災以外のまちの取り組みといったものも高められるということです。
 こちらは、和歌山県の事例ですけれども、避難対策について非常に熱心に取り組まれています。和歌山県では、こういった避難困難地域といったものをすべての津波の浸水想定地域に対してつくっていまして、どうやっても津波から逃げることができない地域があるんだといったことを全域公開しています。地域の人たちに対して、あなたの地域は何メートルの津波が何分後に来るので、津波が来るまでに逃げられませんよという地域を明示しています。それで、その地域に重点的に避難ビルですとか、避難するための施設といったものを整備したり、避難のための対策として避難訓練連ですとか、そういったものを順次行っていて、津波対策の中でも特に避難対策について熱心にやっている地域です。ですので、こういったいろいろな地域があるといった中で、静岡県の被害が想定される地域に対して、どういった対策を取っていけるのかといったところは、こういった地域を参考にしながら、ぜひ進めていっていただけるといいのかなというふうに私のほうでは思います。
 きょう、準備してきたスライドは以上になります。どうもありがとうございました。

○中谷委員長
 どうもありがとうございました。
 以上で、原田様からの意見陳述を終わりといたします。
 これから、質疑に入っていきますが、なるべく一問一答方式でお願いいたします。
 それでは、御質問・御意見等ありましたら、発言を願います。

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