委員会会議録

委員会補足文書

平成26年10月次世代人材育成特別委員会

静岡大学大学院教育学研究科　教授　山﨑保寿氏（前半）【意見陳述】発言日： 10/21/2014 会派名：

○山﨑保寿氏
　改めまして、委員の皆様、おはようございます。静岡大学の山﨑と申します。きょうはよろしくお願いいたします。なお、私のプロフィール等でございますが、うしろから２枚目に掲載されておりますので、その辺をごらんいただければと思います。
　きょうは、キャリア教育の現状と課題ということで、皆様に、キャリア教育というものがどのように行われているのかというその現状、そしてどういう課題があるのか、今後教育行政も含めてどういう方向を目指していくのかというあたりを簡潔にお知らせしたいと思います。よろしくお願いします。スライドを用いて説明させていただきますが、お手元の資料とほぼ同じでございます。少し加えたものがありますので、加えたものについてはスライドのほうをごらんいただければと思います。
　まず、少しグラフを見ていただきたいんですけれども、大学生や無業者等の若者が就労に対してどういう不安を持っているかということでございます。特に、私は大学にいることもありまして、学生のほうに、より注目をしているんですけれども、パーセントは10％前後とはいえ、自分の能力・適性がわからないという大学生が１割以上いるわけです。そして、２番目が仕事をしたいが自分の能力に自信がないという学生、こうした学生も１割弱おります。また、少し下のほうに仕事の探し方がわからないという学生もいるわけです。
　こうした割合というのは、いつの時代でもこのぐらいいるだろうということになるんですけれども、ただ、教育に携わっておりますと、まず、中学校でそれなりに進路指導をやって高校を選ばせると。高校でも先生方は非常に熱心に大学や就職先を考えさせると。大学も実は今、キャリア教育を非常に盛んにやっておりまして、大学の出口保証というのが大学の質を証明する、そうした基準になりますし、地域貢献にもつながりますので、大学のキャリア教育というのは非常に重要になっております。それだけやっていながら、自分の能力・適性がわからないという学生が一定程度いるということは、そうしたことに携わる我々としましてもしっかりと認識しなければならないであろうと考えております。
　就職してからやめる方もいるわけです。そうしたやめる理由は何だろうかということを調べたものであります。高いものから、仕事があわない、またはつまらない、人間関係がよくないというあたりが非常に多いです。また、３番目に、これは女性ですが、結婚・出産しようとしていたという場合もあります。これはいろいろ、今後の男女共同参画の課題にもつながるかと思います。女性の離職率というのは男性とはちょっと違うわけです。20代の女性の離職率は若干男性より高いです。この辺にありますけれども、20歳から24歳のところは、男性がこのぐらいに対して女性のほうが６％ぐらい高いですよね。さらに25歳から29歳では男性より女性のほうがさらに高いというような状況です。これは社会状況からよく知られていることかと思います。
　いずれにしましても、離職の理由が、仕事があわない、人間関係がよくないというところでやめていると。こうしたあたりも大学の教育に携わっている者からすると、あれだけよく考えさせて、かなり高倍率の就職試験を突破して、やっと仕事についたかと思ったら仕事があわないということでやめていく。何とも残念なことであるという感じがするわけです。したがって、そうしたところにキャリア教育ということが、かなり小さい時期から若者の年代まで必要であるという理由になるわけです。
　これは、プリントにはないんですけれども、キャリア教育には３つの側面がございます。１つは専門高校等の職業に関する能力の向上です。専門高校、いわゆる商業高校、農業高校、工業高校、そうした専門高校では、かなりしっかりとした職業教育を行って社会に有為な人材を育成していると。そのために、高度な専門資格を取得させるわけです。簿記とか工業検定等です。そして、インターンシップも積極的に行っております。こうした専門高校が、職業に直結する能力をどのように向上させるかという、これが１つのキャリア教育の面でございます。
　ただ、専門高校に行く生徒というのは、そんなに多くないわけです。３割か４割以内だと思います。多くは普通高校に行きます。そして、そうした生徒にどうするかということが大きな課題となります。普通高校の生徒に対しては、実際、職業人にインタビューをして職業というものの実態を調べさせる。進学の生徒には大学を調べさせる。また、オープンキャンパスへ参加させるという、このような形でさまざまなことを普通校の生徒にもやっております。また、中学生、小学生にもキャリア教育というのは行われておりますけれども、その辺はまた後で、スライドでお示ししたいと思います。
　そして、３番目ですが、フリーター、ニートの問題がやはりあるわけです。フリーター、ニートの場合には、しっかりとした職業能力が育成されてないと考えられます。また、社会的な能力も乏しいと考えられます。したがって、社会人育成キャンプであるとか、若者自立塾のような形で行われることが多いです。
　それぞれ向いている方向が違うわけですけれども、割合として一番多いのは、このＢのところです。これが一般に言われるキャリア教育という、我々教育界ではキャリア教育と言っております。ただ、Ａのところ、こうした職業高校はもっとキャリア教育じゃないかというふうに考えられて、そのとおりキャリア教育そのものなんですけど、ここはもうカリキュラム上、その職業に関するさまざまな科目とか資格を取りますので、自動的にキャリア教育が行われるわけです。これはこれで、Ａのところは重要なんですけれども、教育界で今キャリア教育が重要だ、職場体験が大事だと言われているのは主にＢのところです。一般の多くの生徒に対してキャリア教育をどうするかということでございます。また、一方Ｃのところは社会問題によくなるところでありまして、さまざまなニート等の問題がテレビ等で取り上げられております。そのような３つの側面がキャリア教育にはございます。
　この後の内容でございますけれども、主にこうしたことでお話をさせていただきたいと思います。最初は小中高等学校の学習指導要領にキャリア教育が位置づけられております。そのところを説明させていただければと思います。
　学習指導要領、学校には必ず学習指導要領があるんですけれども、その中にはこのように書かれておりまして、総則という学習指導要領の根幹を定めた規則の中に、小学校では各教科等の指導に当たって、児童が学習活動や課題を選択したり自らの将来、これについて考えたりする機会を設けるということで、小学校低学年ですと私の夢であるとか、お父さんはどんな仕事をしているだろうか、お母さんはどんな仕事をしているだろうかといったような形で将来を考えさせる、あるいは調べさせるというようなことが行われております。これは教育として大変大事なことなんですけれども、こうしたキャリア教育につながることが、平成20年に改定されました。平成20年に改定されて、23年から実施されているんですけれども、その中で従来以上にキャリア教育が体系化、系統化されて行われるようになってきております。また後でスライド等お見せしたいと思います。
　さらに、さまざまなところで小学校の学習指導要領にキャリア教育につながるとこが述べられているということで、総合的な学習の時間という、かなり子供たちが熱心に行う時間があります。これは１週間に３時間程度行われておりまして、小学校３年生から高校３年生までの全学年で行っております。その中に自己の生き方というようなことを考えさせるということになっております。
　以下、ざっといきたいと思います。中学校も同様でありまして、職場体験活動やボランティア活動ということが学習指導要領に明確に述べられております。同様ですね。特別活動という学校行事等の中に勤労生産・奉仕的行事というものが位置づけられております。高校も同様でありまして、高校生となりますと将来の職業をしっかり決めて、それを選択していかなければならないということで、さまざまにキャリア教育が示されております。このように就業体験の機会――インターンシップ――を設けると。それから、総則にも、このようにずばりキャリア教育という言葉を使って学習指導要領の上でそうした指導を進めるということになっております。
　以上のように、小中高の学習指導要領の全てにおいて、キャリア教育が体系的に位置づけられているというような状況になっております。これは、今回の学習指導要領からです。以前の学習指導要領も自己の生き方等の表現はあったんですけれども、このようにキャリア教育という言葉が明確に使われたのは平成20年から、高等学校は平成21年に学習指導要領が変わっておりますので、高校は21年からということになります。以上、学習指導要領です。
　そうしたキャリア教育に対する取り組みは、文部科学省をはじめさまざまな省庁が取り組んでおりまして、文部科学省の取り組みを中心に御説明いたします。
　平成15年ぐらいからのものを取り上げておりますけれども、もっと前からも行われております。平成15年には若者自立・挑戦プランが立てられまして、産業界と連携した総合的な人材育成対策が打ち出されておりまして、地域等と連携したキャリア教育を進めることになっております。それがさらに名前をかえていろいろな形で行われてきております。平成16年には若者の自立・挑戦のためのアクションプランというような形であるとか、次の年には、その強化ということで農林水産大臣等も加えた協議がなされております。国のほうも総合的にこうしたキャリア教育の支援や推進を行っているということになります。平成17年にはキャリア・スタート・ウィークということが始まりました。神戸の大震災があったわけですけれども、その復興の際に、子供たちに地域の復興や商店街の活性化の体験活動をさせようということで、神戸のほうで始まり、それが非常によかったので、全国的にも、今、全中学校で職場体験学習を３日から５日間程度行うことになっております。このキャリアスタートというのは職場体験の意味なんです。
　そして、そうした動きは現在までずっと続いておりまして、平成18年にはそうしたことを指導する教員向けのいろいろな手引き等が出されておりまして、学校の先生方も、こうした手引きを参考にキャリア教育を進めることができるという、そういう環境整備が行われております。そして、先ほど言いました平成21年には高等学校の学習指導要領の改訂がありました。小中は、この前の年の平成20年に改訂されております。
　なお、特別支援学校、いわゆる養護学校等の特別支援学校ですけれども、その特別支援学校も平成21年に学習指導要領が改訂され、キャリア教育は非常に重視されておりまして、障害を持ったお子さんに、いかに職業生活をきちんと行うことができる能力を高めさせるかということもいろいろと行われております。
　そして、学校の先生方が非常に参考にするのが、この答申であります。平成23年に中教審の答申が出ました。題名は「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」という答申でございまして、この答申によってキャリア教育でどのような方向を目指すか、どのような能力を育成するか、発達段階等も示されております。
　このように、教育行政では学校のキャリア教育を支援するためのさまざまな取り組みがなされているという状況でございます。
　さらに、今日に影響のあるものとして、御存じのように昨年度第２期の教育振興基本計画が閣議決定され動いております。その中にもキャリア教育が明確に位置づけられております。具体的には、成果目標４のところに「社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成等」ということがありまして、その中に職業的自立であるとかキャリア教育ということがこのように示されております。これは国のほうの教育振興基本計画でありますので、国としては、これに基づいて計画的に推進していくということになります。もちろん、静岡県も有徳の人の育成ということを目指し、第２期の教育振興基本計画の中にキャリア教育がそれなりに位置づけられておりました。各県、それぞれの教育振興基本計画の中にキャリア教育をいろんな形で位置づけております。このような状況で、さらに県の下の市町におきましても、キャリア教育を教育委員会レベルで位置づけております。
　これは国のほうの続きでありますけれども、第２期の教育振興基本計画の中に基本施策13のところにもキャリア教育がさまざまに位置づけられております。このような状況でございます。
　以上が国、県等の行政的な動きでございます。そうした行政的な動きは当然行われているんですけれども、現実に学校でどんなことをやっているとかということになるわけであります。
　このような取り組みがテレビで報道されました。これは、小学生が１日ショップを行いました。遠鉄の百貨店で浜松の小学生が行ったものでございます。こんなふうにして売っているんですけれども、売っているものは、ここにあります草木染です。ハンカチ等を草木染めして、その草木染め自体は学校の中でやるんですね。草木染めの専門家の方を招いて子供たちが草木染めをします。それを百貨店の協力によって販売させていただくと。非常に一生懸命やってまして、このお子さんなどは、最後は感きわまって涙を流して頑張ったというようなことでありました。上手にやると大変一生懸命子供たちも行います。
　また、私は附属の校長を３年間務めていたときがありまして、その附属でもこのように職業インタビューをしております。主に夏休みですけど、６年生の夏休みに主に保護者のところへ行って一生懸命インタビューをしているわけです。この方は弁護士さんです。御存じの方もいらっしゃるかもしれません。アナウンサー、動物園とか、こうしたところへ行くわけです。一般の普通の学校でもこれに類した活動をよく行っております。
　中学校もあるんですけれども、これは高等学校です。富士市立高校、私はここのコミュニティースクールの準備委員になっておりましたので、この写真をお借りしました。御存じのようにこの学校は、元は吉原商業高校で、商業高校だったんです。ですので、商店街の活性化ということは、学校全体としても大変関心のあるところでして、活性化するにはどのようにしたらいいだろうかという、こういうマッピング、ウェビングですね、クモの巣のようにウェビングをして生徒が発表をしております。こうしたこともキャリア教育の一環として行われております。
　先ほどは商業高校的な活動でしたけれども、これは進学校です。進学校のキャリア教育は難しいんですね。結構レベルの高い大学とかに行く学校です。病院へ行って幾つかインタビューをしたり、遺伝学研究所で少し実験をさせていただく、静岡放送へ行くというような、その学校の進路先にあったようなキャリア教育を行っております。ただ、一般的に進学校はやはり難しいです。学業がかなり優先されますので、学業につながるといはいえ、外へ出るために時間もかかり難しいんですが、積極的に取り組んでいる学校もございます。
　この学校は岐阜県の学校で普通程度の進学の学校でございます。赤ちゃんふれあい体験、こういうのは結構一生懸命やってくれますね、生徒は。保育園、それからこういう講師を招いて皆が聞くというような、こういうことも行われております。１年生、２年生、３年生と系統的に行われるわけでございます。
　これは、岐阜県の同じ学校で、こうした体験的な職業活動を行うということです。写真だけでは説明が不十分ではありますけれども、このように体験的に行うキャリア教育が適した高校もあります。けれども、先ほどのような静岡県のこの学校は、病院では体験はちょっとできないですよね、医師の仕事は。やはり観察ですね。遺伝学、これも実験の体験はできますけれども、職業そのものの体験というのはやはりできないところであります。放送局もそうでしょう。そうしますと、生徒の進路希望によってキャリア教育がさまざまでございまして、体験ということが非常に適した生徒さんもおれば、体験というよりもやはり観察しかできない特殊な免許が必要であるというところもあるわけです。そうしたあたりがさまざまなキャリア教育の現状でございます。
　この辺までが、まずは現状なんですけれども、ここまでで何か御質問はございますでしょうか。

○渥美委員長
　今、現状について先生から御説明がありましたけど、ここまでで何か委員の皆さんから質問等ありましたらお願いしたいと思います。
　続けて説明いただいていいですか。

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