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委員会会議録

委員会補足文書

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令和2年10月情報通信技術利活用特別委員会
東北大学大学院情報科学研究科 教授 堀田龍也氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/15/2020 会派名:


○堀田龍也氏
 皆さん、こんにちは。東北大学の堀田と申します。
 私は2000年頃に静岡大学の情報学部に5年ほど勤務をいたしました。今でも、自宅は浜松にございます。息子が2人おりますが、いずれも高校まで浜松で過ごしていました。今も家内は浜松で仕事をしております。
 そんな静岡県ですが、私の専門分野である学校教育の、とりわけ初等中等教育の情報化については、全国的に見れば、やや後ろ側にいるような状況かと思います。
 特に、義務教育におきましては、設置者が市町村ですので、浜松市、静岡市、あるいはそれ以外の市町村が学校を設置し、そして、研修あるいは教員採用も別々に、浜松市は浜松市で、静岡市は静岡市で、それ以外は静岡県としてやっているということでございます。
 したがいまして、県の教育委員会が義務教育に十分に介入しにくい現実もあります。したがいまして、市町村の教育委員会がどれだけこの情報化の現実を御理解いただいているかということによりまして、ICTの導入具合とか活用の在り方とかが大きく格差が出てくる状況がございます。
 今日は県議会の情報通信技術利活用特別委員会の皆様にお話をいたしますが、ぜひ、県から市町村にしっかりと働きかけていただきまして、市町の教育委員会あるいは首長、議員に強くこの必要性をお伝えいただければと願うところでございます。
 スライドに書いてありますが、私は教育再生実行会議や中央教育審議会の委員でもございまして、さらに、デジタル教科書や教育データの利活用をこれからどう進めていくかという有識者会議の座長をやっております。
 今までもこういうお仕事をさせていただいてきた関係で、また文部科学省も併任していた時期がある関係で、今も週に3回くらい文部科学省に行っていますし、萩生田大臣ともこの間も話をしてまいりました。
 国ができることは、制度をつくって指針を示すことだけですので、それを受け止めていただく都道府県あるいは市町村に御理解いただいた上で、学校現場の環境充実を図りたいと願って、今日はこの仕事をお引き受けした所存でございます。
 まず1つ目に、学校教育について、念のため幾つかの御確認をさせていただきます。
 2つ目に、教育ICTと言われる教育のデジタル化についての意義をお話しします。
 3つ目に、施策としては今、進行中ですが、GIGAスクール構想と言われる義務教育の小中学生に全て、1人1台の端末を持たせて学習に利用させるという構想につきまして、この構想の具体とあるいはこの構想が狙う次なるステップについて御説明を差し上げたいと思っております。
 そして、私のお話が終わった後は、ぜひ、忌憚のない御質疑をいただきまして、私のほうで答えられる限りの範囲で精いっぱいお答えしたいと思ってございます。
 まず、確認ですが、学校教育といってもこれは非常に広範でございます。大学院から小学校、厳密に言うと文部科学省でいう学校の中には幼稚園も含まれております。一方で、保育園・保育所については厚生労働省の管轄になります。なので、幼保一元化は制度的に案外難しいことは御存じかと思いますが、一般的に学校というと小学校、中学校の義務教育で設置者は多くの場合市町村です。県立の小中学校は一部ありますし、国立あるいは私立が一部ございますけども、原則としては市町村になります。高等学校の多くは県立でございまして、そのほかに私立があります。大学からは高等教育という言い方をしてまして、大学や大学院の情報化、科学技術への対応、データサイエンス教育、AIの教育などについては随分と進んでいるところでございます。
 例えば、東北大学でも新入生は全員AIについて学ぶことが文系でも理系でも必要になってございます。恐らく、静岡大学でもそういう取組をされているんじゃないかと思います。
 大学の中には、教員養成大学というところがあって、静岡大学でいえば教育学部あるいは教職大学院というものがあります。
 また、静岡県の場合は、常葉大学が教員養成として非常に全国的にも有名な大学でして、常葉大学の教育学部の卒業生が静岡県の特に小学校の教員になる割合が多くて、実は、静岡大学の教育学部の卒業生より常葉大学のほうが多いという現実もございます。
 その次に学力の話ですが、学力と一言で言っても学力調査で測れるようなペーパーテストの学力以外にもいろいろなことがあります。
 最近は資質能力という言い方をします。なぜかというと、学力というと何か習得している、あるいは習熟しているテストで答えられるものを主に学力と一般的には考えられますが、問題は、知っていることをどうやって現実の問題に活用できるかということや、そういうことにチャレンジしていこうという姿勢があるかどうか。あと、学びに向かう力と国では言っているんですれけども、これから流れが速い時代ですので、生涯学び続ける必要があります。義務教育あるいは高等教育で終わりではなくて、義務教育の段階から一生、学び続ける気持ちや学ぶスキルを身につけさせておかないと、これからの時代はやっていけないということになりまして、そういう意味では義務教育の役割も、私が子供だった頃に比べると随分さま変わりしております。
 また、学力のレベルも、エリートから下位層までいろいろございますが、最近の問題は学力下位層の中に、例えば経済的な格差に起因して学力下位のままになっているという例が幾つかあります。そして、この学力格差が経済格差になり、その経済格差が学力格差を再生産している現実があります。小学生の7人に1人が相対的な貧困だと言われていますけれども、その親御さんたちが教育にあまり熱心ではない、働くだけで精いっぱいだという現実で、子どもたちが家庭でICTを使って学べないという現実がありまして、この子たちに対する底上げという観点から学校教育、義務教育でしっかりと社会に出て必要となるICTスキルを身につけさせましょうというのが、GIGAスクール構想の1つのアイデアの理由になります。
 また、リーダーシップが取れる人々が様々な層にいる必要があるというのが今日的な解釈でして、つまり、小さい事業者でも問題解決していかないと世の中に立ち行かないという時代になっていますが、問題解決はもしかしたらAIが手伝ってくれるかもしれないので、むしろ問題を発見できる人が大事ではないかというのが、最近言われていることです。
 続いて、研究開発と普及と書きましたけれども、新聞等にICTの優れた活用として掲載される、例えば静岡でいうと吉田町とかはどちらかと言うと、先端とか先進とかの辺かと思います。
 これが、たくさんある学校のうちの1つを取り出したときに、その学校でICTのことをあまり得意じゃない先生もこういうことができるかどうかのほうが重要です。先端の技術開発とか実践の開発は附属学校とか大学が中心に行っていますけれども、むしろ市町村の代表格の実践から普通の先生の実践まで、先導から一般化くらいまでが実は大きな鍵になります。
 このためには、教育委員会がかなり意図的に研修とかモデル校の設置とかをする必要があって、これが教育委員会が十分に理解しているかどうかと関係しています。
 時々あるのは、新聞に載るような先端の授業を全ての先生に教育委員会が求めてしまったがために現場の先生たちが反発して、「ICTなんか要らない」、「今までの授業の仕方がいい」と言っている例も実は散見されております。
 最後に、教員のICT親和度と書きましたが、地域の代表みたいな先生もいれば普通の先生もいます。普通の先生もちゃんと子供たちを担任していますし、その子供たちが1人1台の端末を持つわけですから、やはりこの普通の先生たちにどう理解していただくかが大事になっております。
 世界的には人口増加が続いている中、我が国は急速な勢いで人口減少社会に入っています。高齢化率が大きく問題になっていますけど、今の小学校6年生は12歳で30年後は42歳です。30年後の2050年は、彼らが恐らく社会の中心になっている頃で、日本の人口は今より3000万人減っております。そして、高齢化率は約4割になっておりまして、児童・生徒は減少していますから、さらに労働人口が激減すると、そういう時代に彼らは世の中を支えていくことになります。
 ですので、今の子供たちにどういう教育を与えるかは、戦後の高度成長で上っていくときの教育と同じではなく、むしろ1人当たりの効率をどうやってよくするか。そして、ロボットをはじめ機械に任せられる部分はどんどん機械に任せていくことをしていかないと、恐らく社会が維持できないという現実の中に、私たちは今いるわけです。
 学校の先生というのは現在、50代が37%です。定年60歳ですと、10年でいなくなる人が37%で、今この分の教員採用をしているわけで、教員採用試験は枠がどんどん広がる。しかし、教職はブラックだということで希望者は減って、結果的に質が下がる。したがって、若い先生のいろいろな不祥事が増えていることが現実にございます。
 これは非常に大きな問題で、教職を魅力ある職業にしていかなきゃいけないんだけれども、なぜブラックかと言うと、学校現場が情報化をほとんどしていないので、例えば、先生たちはネット検索をすることも仕事中にはほぼできない状況にあります。
 保護者からの欠席の連絡も電話しか受け取れていないとか、連絡帳は相変わらず紙だとか、学校全体の情報化が大きく遅れていることによって教職が魅力ない職業に見えてしまっている現実があります。
 そんな中、我が国では学習指導要領というのがあります。これは文部科学省が定めて、約10年に1回、改訂されています。この学習指導要領を定めるに当たって、中央教育審議会が答申を出します。答申を出したものに対して、文部科学省が学習指導要領を策定します。
 学習指導要領は、一番最近のものですと、2020年から小学校は学習指導要領が新しいものになっており、教科書も新しくなっています。来年度は中学校が新しくなります。再来年度は高等学校が新しくなります。
 これは10年に1回の大幅な改革ですが、今までに比べてかなり大きな改革が起こっています。
 例えば、英語が五、六年生で必修の教科になります。その分、3年生から、英語の入門みたいな形で外国語活動をやるようになっています。あるいはプログラミングの体験が小学校から入っている。英語で言うと、単語数が1.5倍くらいに増えています。
 また、投票年齢が選挙権の関係で18歳まで下りたこともあって、高等学校に公共という科目が新設されることになりました。これは、主権者教育や社会保障、社会あるいは政治とかについて明確な理解を高校生にしっかりと持たせる必要があるという背景がございます。
 また、一番下にありますが、理数系の探求ですね。これはステム教育と言われるような科学技術に対する親和性が高い教育をしていこうということで、高等学校でこういう科目が入ってございます。
 さらに、大学入試も一緒に変わっているということで、センター試験を作り直して、今年から大学入学共通テストがスタートしております。
 その次に、新しい学習指導要領が始まる2022年の高校1年生、2024年の高校3年生になりますが、この2024年からは大学入試の科目の内容も新しくなります。公共が入試科目に入ってきます。それだけではなくて、まだ決定はしていませんけれども、情報という教科を入試科目に入れるというのが、今の国の動きでございます。
 したがいまして、小学校・中学校の段階からしっかりと身につけさせておく必要が生じていることと、GIGAスクール構想で1人1台の端末が入るということはとても関係がございます。
 また、小学校の5年生や6年生はもうかなり専門性の高いことを学んでいると。
 一方で、小学校の先生は個別の教科の免許を持っているとは限らないので、専門性が高い人もいればそうでない人もいると。しかし、今の6・3・3制が決まった頃は戦後ですので、戦後の中1の子供たちというのは今の5年生くらいの発達なんですね。なので、教科担任制を一部でも小学校5年生くらいから入れていかないと、結果的に相性が合わない担任の先生に全ての教科を教えてもらうとか、専門性の低い先生に教えてもらうことによって興味を失うということが生じることもあって、小学校の高学年から教科担任制を一部導入しようというのが中央教育審議会で検討されている方針になります。
 またさらには、これは文部科学省の公表したデータですけれども、コロナにより3か月くらい学校がお休みになった間に、同時双方向型のオンライン指導ができた学校は15%です。小学校だけで見れば8%、中学校は10%、高等学校が割合を引き上げていますけど、義務教育で言えば8%とか10%くらいの数値だということです。
 このことはかなり学校教育に対する社会の信用を失った部分があるかと思います。最初は仕方がないとはいえ、3か月も休みがあったのに、どうしてオンラインの授業すらしてもらえないのかと、特に教育熱心な保護者ほど思ったと聞いております。
 しかも、この数字は、文部科学省が市町村の教育委員会に調査した数字です。したがいまして、この8%というのは、うちではやっている学校があったよというところが8%ですので、その市町村全てがやったわけではないので、実際の値はもっと低かっただろうと。これは世界的に見れば、いわゆる開発途上国並みの割合です。この先進国の、豊かな日本において、みんながスマホを持っていてLINEでテレビ電話ができるような時代に、学校にはオンライン授業すらできる環境がなかったというのはかなり大きな話です。
 これは、ネットワークの速度が遅かったとか、学校にオンライン中継できる設備がないとか、あるいは子供たちに貸し出すコンピューターが足りないとか、学校にあるiPadを家庭に貸し出そうとしたら、学校でしか使えないようにソフトが入れてあって、細かくセットアップされているがために取り外して使えないということが起こっていたということです。
 悪いことには、ある学校が「オンライン授業に挑戦したい」と言ったときに、「あなたの学校だけやるというのは困る」と言って、教育委員会が止めてしまった例があります。これは一見、教育の平等性のためのようにも見えますが、1校、2校から突破していかないとノウハウはたまらないので、これはあしき横並びが露呈した例ではないかと私は考えております。
 学校教育はこの数年の間に大きく変わりつつあり、課題がたくさんある一方で、現実の学校の教育環境は大変、厳しいものになっている。とりわけ情報化が進んでいないことによって学校現場がブラックだと言われたり、先生たちは教えたいことをネットから持ってきたりすることすらできなかったり、あるいはオンライン授業のような緊急時の対応すらできなかったりしています。
 では、2番目の教育ICTの意義について、話をさせていただきます。
 まず写真からお見せいたしますが、これは長野県です。長野県の中山間地にある喬木村という村の学校です。静岡県にも同様の市町があるかと思いますけれども、これ、テレビ会議をやっているのが分かりますか。テレビに映っている側が第一小学校、今、手前にいる7人の子供が学んでいるのが第二小学校です。この第一小学校と第二小学校は、合併ができないくらい離れた距離にあります。そして、第二小学校のお子さんはたった7人でいつも学んでいるんですけれども、この2つの学校の子供たちはいずれ同じ中学校に進学します。
 そのこともあってこの村では、第二小学校と第一小学校の子供たちをいつもテレビ会議でつないで、特に算数のようないろいろな考えを知ることが大事な教科では、いつも遠隔合同授業をやっています。
 全ての子供たちのところにパソコンがあるのが分かりますか。タブレットで子供たちが書き込んだことが一覧できるようになっていて、一覧はテレビ画面で一覧できるんですけれども、第一小学校と第二小学校が論理的には同じ教室であるように合計四十数名分が一覧できるようになってるんですね。ですから、第二小学校の子も第一小学校の何とか君の考えを僕はもっと聞きたいですみたいなことが言えると。そうやってだんだん仲よくなっていく仕組みがあります。
 遠隔授業というのは、要するにインターネットを使ってテレビ会議をすることです。こういうことを日頃からやっているところは、オンライン授業で何も苦労しなかったんです。子供たちはパソコンを使い慣れているし、遠隔で授業をすることに先生も慣れているんですね。ですから、この学校の子供たちはコロナ禍でもしっかりと授業を受け続けることができます。
 一方で、皆さんの地元の自治体はどうだったのかということで、これは都会か田舎かは実はあまり関係なく、教育委員会がそういう意気込みで整備をしてきたかということに関係しています。
 市町村は、財政が苦しい状況がございますけれども、地方交付税交付金はありますので、ほかにもいろいろな課題がある中で教育にもしっかりと使おうじゃないかと思っている自治体は、コロナ禍でも困らなかったという現実があります。
 また、資料を御覧いただいているかと思うんですけれども、これはスマホで予備校の授業が受けられるものです。昔は、大学受験を目指す浪人の人たち向けにやるのが予備校だったんですけど、最近は、学校の補習とか現役率が高くなっていて、あるいは児童・生徒数が減っていますので、今、小学校からこういうものが普通に使われています。1か月1,980円で、教えるのが上手な先生の授業をいつでも繰り返し、止めたり、巻き戻したりして見ることができるということです。
 こういう授業がいつでも家庭で見られる状況の中で、学校では相変わらずICTは使われてないというのは、世の中の現実と学校現場がずれてるということです。
 プログラミング教育の話を先ほどしましたが、これからの時代、必要に応じてロボットに支援してもらいながら暮らす時代に入っていきます。介護でもベッドが自動的に上がったりするのがありますよね。起床時間になったら背もたれがだんだん上がって起こすとか、カーテンがセンサーで自動的に開いて朝を知らせるとかも、全部ロボットの一種です。こういうものは全部、誰かがプログラムを組んでセンサーとつなげてやっていることなんですね。子供たちもトイレに入るとき自動的に照明がつくとか、自動ドアが開くとか、信号が一斉に青になるとか、こういうことを体験していると思うんですけれども、そういうのはみんなプログラムを作っている人がいて、世の中をよくするためにこのプログラムが動いているんだということを理解させる、これがプログラミング教育の目的です。
 ですから、プログラマーにするわけではないので、プログラムの難しいことを小学生から教えようという話ではありません。私たちがロボットと共存していく時代に、ロボットの仕組みをちゃんと知って、使う側になる教育がプログラミング教育の目標です。
 こういう時代にあって、1つ皆様にお伝えしておきたいことは、世界的に見ると我が国の子供たちのICTの活用は大幅に遅れているということです。これは、PISA調査というOECDがやっている国際学習到達度調査で、OECD加盟国で3年に1回行われています。
 この調査は、次は2021年にやることになっていますが、この結果が大体1年くらいかけて分析されて出るんです。2018年の結果が2019年の12月に公表されます。大体、1年くらい前ですけど、それがPISAショックと言われるようなショッキングなデータです。
 世界的に見ると子供たちの学力が下がり始めているのは、コンピューターでテストを受ける経験が日本の子供たちにはないからだと特徴づけられる結果が出ています。
 さらには、PISAの調査では、ICTをどのくらい授業で使っていますかという質問があって、我が国が最下位なのがお分かりですか。OECDの平均が真ん中あたりであって、1位のデンマークやスウェーデンなど北欧は非常に教育が充実してます。OECD平均よりはるかに下にルクセンブルク、ギリシャ、フランス、日本。日本はフランスに比べても段違いに低いのがお分かりでしょう。
 つまり、日本の子供たちはこのくらい授業でICTを使ってないということです。ですので、アメリカ、オーストラリアが上位にあり、韓国がOECDの平均くらいですが、こういうところと比べると、どうしても差がついているということです。
 学力は今のところ上のほうにいますが、これは先生が教えるのがうまいから受け身の授業を受けていれば学力は高いのですけれども、さっきも言ったように先生は50代が一斉に抜けて、若い先生も減っていく中で、恐らく教えるのはうまくなくなっていくと思います。
 しかし、ICTを使って自分でいろいろな情報を見て学ぶことが日本の子供たちはできません。ほかの国は、仮に日本と成績があまり変わらなかったとしてもICTを使って勉強していますから、高校や大学を卒業してから自分で学び続けることがしやすくなります。このことが多分、大きな問題なんですね。
 学校外での宿題も同じような結果です。日本は全部が最下位かというと、実は1位もありまして、ネット上でチャットをすることと、ゲームが1位です。
 このことからも分かるように、我が国では子供たちはICTが使えないわけではない。ICT機器にはなじんでいるんだけど、遊びでなじんでいる。なぜならば、学校現場にICTが十分に普及してなくて、諸外国に比べると学習においてICTを道具として使っていない。その結果、学校でも家でも勉強でICTを使うことがないので、遊びで使い続ける。そして、不適切な事案に巻き込まれ、ネットの情報をどう読み取ればいいかも国語の授業でやってないので、結果としていろいろな情報モラル案件に巻き込まれ、生徒指導上の様々な不適切なことに巻き込まれていく。そして被害者になっていくことがあります。
 ですから、それは生徒指導の問題で、勉強とはあまり関係がないとよく言われるんですけれども、それは逆で、学校で適切なICTの使い方を指導してないがための裏返しとしてああいうことが次々に起こっている現実があります。
 こういう見かねた状況があって、国会議員の方々が随分動かれて、GIGAスクール構想が立ち上がりました。2019年12月5日に細かいことまで公表されましたので、これはコロナ禍によって起こった話ではありません。
 これは、林文部科学大臣の頃からずっと用意されてきて、1年かけて概算要求を仕込んできたもので、最初2618億円で、補正予算で12月にさらに2318億円です。この補正予算の後にコロナが生じて、コロナ補正の第1次でさらに2292億円がつきました。
 当初は1人1台の端末を令和5年までに整備する計画でした。
 しかし、コロナのこともあり、OECDのPISAの調査の結果もあって、令和2年度中に全て端末を用意すると。大量調達すればコストダウンも見込めるということで、都道府県が音頭を取って大量調達をしたところはコストが下がった。奈良県がそのいい例だと言われています。
 端末整備の予算の約3000億円だけではなく、ネットワークの整備も1367億円ついていますが、これは端末の数が増えれば、そこから動画とかを見るわけで、学校のネットワークが遅いとせっかく購入した端末が使い物にならなくなります。ですから、本当はこのネットワークの回線が物すごく重要なんですけど、教育委員会によってはそのことにあまり気づいてなくて、端末をたくさん入れることだけ頑張ってしまったところもあります。
 国の予算では、ネットワークの整備も強化していますし、GIGAスクールサポーターといういろいろ助言するアドバイサーの人件費もあります。あと、家庭のモバイルルーターとかも見ていまして、厚生労働省からも就学援助で経済的に厳しいお子さんには教材費としてルーターのお金を出すことも既に制度化されています。しかし、教育委員会によってはこれを十分に承知できていなくて対応が遅れているところが幾つかございます。
 実際の調達の状況として、資料は国のレポートですけれども、黄色いところは今年度中に納品です。静岡県はほとんど黄色で、赤はありませんね。青いところは年内に入るということです。ですから静岡県は順調に自治体が頑張って整備したということですが、これは端末の話ですから、ネットワークが本当にそうなっているかは、ぜひ県議会から市町に働きかけていただければと思います。
 といいますのは、今回のGIGAスクール構想の端末整備とネットワークの整備は、今までの学校にパソコンを入れる考え方と決定的に違います。今の時代、クラウドが前提です。クラウドというのは、ネット上のサーバーにいろいろなデータがあって、常にそれにアクセスしながら情報を取り出したり保存するということです。
 したがって、実は端末は安価なものでよく、問題はネットワークが高速じゃないと、クラウドにある音楽、動画、データを使うことができない。さらには、ワープロとか表計算のソフトとかパワーポイントのようなツールも、クラウドにあるものを使うという考え方です。これが結果的に災害に強いとか、セキュリティーが高く守られるというクラウドの効果なんですが、クラウドを禁止している自治体もあって、そういうところは自分たちの町の中にサーバーを置き、ハッキングされないようにとにかくお金をかけて人件費もかけて、サーバーも値段の高いものを入れているんですけれども、クラウドにしたほうがコストが圧倒的に下がり、10分の1くらいになることが知られています。
 民間も中央省庁もみんなクラウドはデフォルトです。今、自治体のクラウド化が1つの大きな課題になります。学校のパソコンですけれども、今まではクラウドを前提にしてないし、ネットワーク回線が細かったので、結果的にソフトウエアは全部、パソコンの中に入れるしかなかった。入れるのに人手がかかる、お金がかかる、たくさんのソフトウエアを入れられるようにハードディスクも大きいもので、たくさんのソフトウエアが動くようにCPUもいいものでないといけないということが起こっていた現実があります。
 しかし、パソコンの考え方が決定的に変わったのがGIGAスクール構想です。
 子供たちに1人1台の端末が行くと、例えば、教科書もデジタルでいいのではないかという方向に向かって少しずつ動いています。教科書がデジタルになると自由に拡大できたり書き込みができたり保存ができたりしますし、あるいは機械音声で読み上げたりできるので、目が見えないお子さんや色弱のお子さんとか、あるいは発達に障害のあるお子さんとか、外国籍のお子さんも義務教育を受けるに当たって合理的配慮が必要になるわけですけれども、これも今、グーグル翻訳とかで、ポルトガル語とかの翻訳ができますので、教科書もデジタルにしたほうがいいということで進んでいます。
 デジタル庁もできるので、早ければ2024年の教科書からデジタル教科書を無償にして、紙は有償にしてはどうかという意見が出ています。これは教育再生実行会議でこれから議論するんですけれども、もしそうなると、デジタル教科書はみんなクラウドに置かれますから、クラウドにどんどんアクセスして学習できるようなネットワーク環境がないと使うことができない。ですので、学校現場の整備は非常に重要ということになります。
 あと、学習指導要領に教育の目標がいっぱい書いてあるんですけれども、今その教育の目標に全部ナンバリングをしています。
 これは、教科書のこのページは学習指導要領のここにリンクしているということを全部明示できるようになるので、世の中のいろいろな塾の教材とか問題集とか、博物館にあるアーカイブなどが全部学習指導要領のコードをもとにつながることができて、子供から見ればいろいろなリソースにアクセスできることになります。これは紙ではできなかった。
 さらに、学習ログが取れますので、この子は教科書のこの辺でつまずいているとか、この問題集のこれが解けてないということは、教科書のこのページの復習が必要だとかが推定できるようになります。こういう学習ログのような情報を本人にどうやってフィードバックするか、保護者にどうやってフィードバックするか、あるいは先生たちの指導改善にどうやって使っていくか、学校ごとの学力的な弱点をどうやって見抜いていくか、そして、どう改善していくか。あるいは大学等がビッグデータを匿名で集めて、算数で難しい領域はどの部分なのか、4年生で習っているこれは難しいから5年生にしたほうがいいんじゃないかを解析していく時代になっていくわけです。今、こういう検討が進められています。
 さらに、学力テスト――全国学力学習状況調査を1人1台端末があるんだからコンピューターでやるという検討がスタートしていまして、これは早期に実現すると思います。来年度は、実験校でやることになっています。
 なぜかというと、人手でやっているんで、学力調査に何十億円もかかっているんですね。だけどコンピューターでやれば、隣の子と違う問題をランダムに出すことができますし、その子の学習結果は受験直後に分かりますし、学校の集計もオンタイムでできます。
 例えば、4月に受けて7月に受けて、また2学期に受けることができます。ですので、これは教育の充実のためにも進めるべきだということで、今進んでいます。
 さらに、この先には大学入試共通テストをCBTにしていくことが、大学入試センターで検討がスタートしています。
 あと、健康情報をPHR――パーソナルヘルスレコードというんですけれども、子供たちが1歳や3歳のときに検診しますが、そのデータはマイナンバーで突合されているんですけれども、学校に入ると学校の健康診断、保健診断、歯医者の方が来て診断するのは紙で記録しているんです。だから学校にいる間の情報はデータが十分につながらない。
 社会に出ると、健康診断を受けさせるというのは会社の義務になっていますが、例えば成人病は実は小学校のときから予兆は出ているので、小学生に早めに処遇することが、小学校の健康診断情報がデジタル化すればできます。あるいは、身長や体重の伸びが少ない子は虐待が疑われることも分かっています。
 しかし、今は紙なので、先生たちの勘でしか見抜けないことになっています。こういうことから、様々な学校のデータを情報化していこう、デジタル化していこうという動きがあります。もちろんプライバシーの問題があるので、慎重に議論しながら大胆に進めていくというのが今、方針ということになります。
 さらに、個人情報保護条例2,000個問題と言われていますが、条例は自治体が定めるわけですけど、この2,000個の少しずつ違うものが共通化できないかと総務省が動き始めたということです。どうなるかまだ分かりませんけれども、3日前の新聞では、ルールを共通化する方向になっております。
 最後に、教室で学ぶことの意義をお伝えしていきたいんですけれども、資料にあります縦軸が「一緒にいる」か「いつでもいい」という同期、非同期、横軸の右側がみんなその場にいるという「対面」、左側が「オンライン」です。普通の教室はみんな一緒に一斉に学んでいるので右側の緑色のところになります。
 今回、休校になって多くの学校が目指したのは、左側の「同時双方向」です。対面できないのでオンラインで、でも一緒に授業を受けるということです。
 しかし、本質的にオンラインのメリットは、オンデマンドと言いますけど、いつでも自分に合った動画を自分のペースで見ることができる。時間をかけてレポートを作成でき、人によって10分で終わる人もいれば1時間かける人もいる。デジタルで、その子の学力に合わせたドリルができる。あるいは学習のログを可視化して自分の学び方をリフレクションできる。距離が離れていてもできるということは、例えば、海外の日本人学校、僻地校、あるいは不登校児童や病院内学級の子供たちもできるとか、いろいろ考えられます。
 したがいまして、このオンデマンドをもう少し強く学校に取り入れていくべきではないかというのが私の主張です。先ほど、生涯学び続ける時代と申し上げましたけれども、この学びはほとんどオンラインの動画や講座を受けるか、あるいはオンラインでネット検索していろいろなものを学ぶかです。学校に行ける場合は行けばいいんですけれども、学校に行けないことが多い社会人の学びは、ほとんどオンデマンドです。
 ですから、学校にいるうちに対面とオンラインとオンデマンドを全部体験させるということが非常に重要だと思います。
 文部科学省は、身につけるべき資質能力を3つに分けているんですけれども、知識及び技能は、オンラインでオンデマンドで学べることがたくさんあります。むしろオンデマンドのほうが本人のペースや学力に応じた学びが保障できる部分です。この部分は、もしかしたら宿題とかに使うことができるし、CBTがいろいろ出てくることが想定されます。
 一方でいろいろな人の考えを聞いて、「ああ、そういうやり方もあるんだな」と知っていくのが、教室でやることです。
 さらに、学びに向かう力は、一人一人自分が学びたいことはだんだん広がっていきますし、自分のキャリア、能力、興味、関心、自分の置かれた立場を考えながら、自分の学びを自分で推進していくという主体的な学習者になっていかなきゃいけない。これは先生たちが細かくケアしていかないと、こういう力は身につかないので、少人数学級が話題になっています。
 私からのお話、少し長くなりましたが、あとは皆さんの質疑をお受けしたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。

○落合委員長
 ありがとうございました。
 以上で、堀田先生からの説明は終わりました。
 これより意見交換に入ります。
 委員の方々にお願いいたします。
 質問はまとめてするのではなく、一問一答方式でお願いいたします。
 それでは、東北大学大学院堀田先生に質問や御意見等ありましたら、御発言願います。

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