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委員会会議録

委員会補足文書

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令和3年11月4日脱炭素社会推進特別委員会
静岡大学地域創造学環 教授 水谷洋一氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/04/2021 会派名:


○水谷洋一氏
 皆様、静岡大学の水谷と申します。よろしくお願いします。
 本日はこの委員会にお呼びいただきましてありがとうございます。私は静岡大学の地域創造学環という昔の言い方でいうと新しくできた学部です、そこで環境経済学、環境政策が専門なんですが、それを教えております。
 また同時に、静岡県をはじめ県下のいろんな自治体の環境審議会とか、地球温暖化対策とかエネルギー政策を取り扱う委員会の委員とか、年を取ってきましたので委員長とか座長とかを幾つか務めさせていただきました。
 その経験も踏まえてちょっと大それたタイトルなんですが、静岡県における地球温暖化対策のちょっと昔のこれまでの経緯、現時点のこと、それでこれからはどうしていったらいいのだろうかということを学識と、今までの経験と両方を踏まえてお話しできればと思っています。
 また、冒頭で委員長からは50分とお話しになったんですけれども、多分僕は50分も話す内容がありませんので、ただ皆さんの過去3回の議事録を読ませていただきましたら、本当にいろんなことについて興味関心をお持ちで、こういうことはちょっと専門家に聞いてみたいという御意見もあったようですので、私からお話ししたいこともあるんですけれども、逆に皆さんからお聞きになりたいことをぜひともどしどし出していただけたらと思います。
 ただし、私が答えられないこともありますので、タレントじゃないので知らないことを知っているように話すということはできないので、分からなければ分かりませんとお答えします。
 ただ、議員の皆様方がお知りになりたいことがあったら、たくさん私のお話の後で質問を出していただければなと思います。よろしくお願いします。
 さて、お手元に資料もあろうかと思うんですが、スライドに沿って。はじめにというところなんですが、先ほど冒頭に言いました静岡県、あるいは県下の市町における地球温暖化対策に約20年ぐらい、私が静岡大学に赴任したのが1997年、京都議定書の京都会議があった年です。まさに日本の地球温暖化対策の黎明期というか、そのときから静岡大学で環境政策の教鞭を執っていると。その中では比較的若いときから静岡県をはじめ各自治体にいろんな環境審議会とか、エネルギーとか温暖化の対策の委員にしていただきまして、今まであっという間に二十数年がたっているんですけれども、それを振り返りつつ今後の課題についてお話をしたいということです。
 静岡県の概要については皆さんにお話しする必要はないのかもしれませんが、よく3%県と静岡県は言われますけど、温室効果ガスの排出量は3%もなくて2.5%とか、四捨五入すると2%ぐらいになる感じです。一方、人口は2.7%ですから約3%だし、県内総生産も日本の3%を超えています。そうして見ると、比較的経済規模や人口と比べるとCO2の排出が比較的少ない県で、そういう大きな特徴がある。逆に平均を出すと、比較的多い県ももちろんあるんです。
 そういう大きな特徴があることをざっと押さえていただいて、基礎データなんですけれども、これも小さなグラフなので、大きな特徴だけを申し上げると、まず日本国全体で見ると2013年が温室効果ガス、二酸化炭素などの地球温暖化を起こすガス――温室効果ガスというんですけれども、その排出量が一番多い年です。2011年に東日本大震災と福島第一原発事故があって原発が止まりました。それを火力で補ったこともあって、2013年が国全体としてはピークなんです。そこから下がっているんですが、本県の場合はそれより前の2007年がピークなんです。それから東日本大震災、第一原発事故を経ても若干元に、増える局面がこの辺にあるんですけれども、基本的には2007年のピークまで行かずに、ずっと排出量が下がってきているという特徴を持っている。国よりも6年度を前にピークを迎えて、逆に言うと6年度の前に、排出量が減少局面に入ってきているという大きな特徴がある。
 これは当局からの説明をお聞きになったと思うんですが、今2005年を基準年として排出削減量を静岡県の場合は発表しているんですけれども、それで見ると18.2%削減になっているということです。それで2021年目標は21%なので、大体これが達成できそうだというお話を聞かれたんじゃないかと思います。
 ただし現状は、国としては2013年が一番多かったので、日本国全体としては2013年から何%減らすんだという目標を立てているんです。国としたら菅首相が表明なさった、今は46%削減なんですが、これは2013年の国として一番多いときからなので、県は2013年から見ると2007年から2013年までに排出削減して、8%が全部キャンセルになっちゃって、また2013年から減らさなきゃいけなくなるので、例えば同じ数字で見ても、2013年比率と考えると、県の場合はそれまでに8%減らしていることを踏まえて見てあげないと、数字を単純に比べてもいけないところもあるんじゃないかと思っています。
 それでどの部門が減っているかというと、簡単に言うとどの部門も減ってきています。2007年のときは平成19年ですが、平成19年のときから見ると当時はまだ業務部門と言われる、こういう建物やビルでのエネルギー消費によって、建物やビルということはこの県議会もそうだし、銀行もデパートも病院も、モールと言われているショッピングセンターもみんな建物の中ですけど、そこの排出量は増えていたんですが、全体としては2013年はもう減ってます。
 家庭も増えていたんですけれども、家庭の排出量も、もう2013年から減少傾向になって、最近は全般的にどの分野からも大きく減るようになってきた。排出が減ってきて、ただ片一方これだけは増えています。これは後で御質問があるのかもしれませんが廃棄物処理です。ただ廃棄物処理はここで見ると全体がもともと3%で大きくないんです。大きくないんですが、ここが今増えてきていると。これは廃棄物の中に含まれているプラスチック類、もともとは石油なので、これを焼却することは燃料で燃やしたようにCO2が出るんです。それが増えているという特徴がありますが、大口の排出の部門はどの部門も減ってきていることが特徴です。
 それで大口と言いましたが、これを見ると産業部門と書いてあるのが大体工場です。工場以外の業務系というと、さっき言った業務と書いてある、これはビルの中、家庭の中です。ただし自家用乗用車はこっちの運輸に入っている。運輸といっても鉄道も航空もここに含まれますけれども、大体は自動車です。
 こういうことで、後で出てきますが県条例の計画書制度で報告された排出量を見ると、この産業部門と業務部門で大口の排出事業所が県内で584、600弱ぐらいあるんです。県内の事業所数は約18万ですから、約18万の600ぐらいなので、大口と言われているのはたった0.4%で本当に僅かなんですけれども、ただしこの産業部門、業務部門の半分ぐらいのCO2の排出量を出してますので、この大口の排出事業所の削減対策が重要かなと。
 ただ日本全体で見ると大口の排出先は、一番は火力発電所、特に石炭火力発電所なんです。お隣の愛知県にある碧南石炭火力発電所が日本で一番排出量をたくさん出しています。それで次に、高炉を使う鉄鉱石から粗鋼をつくるような鉄鋼業、これが2番目に多いです。
 昔は清水に石油火力発電所があったんですが、今は太陽光発電所に変わっていますし、石炭火力は最近は富士市にできた。あれが計上されてくるとまた変わってくるんですけれども、でも富士市の石炭火力はあまり出力が大きくないので、全国的にいうと静岡県には一番排出量を出している大型火力とか、高炉型の鉄鋼業があまりないという特徴はあるんです。それでもやっぱりいわゆる業務部門というか、経済活動から、もっというと企業の経済活動から出しているCO2のうち50%以上は、ほんの0.4%の事業所から出ているという特徴がある。これは全国的にもそうで、静岡県独特の特徴ではないんですけれども、排出量というのは多いところ、排出量をたくさん出している事業所もあればそうじゃないところもあるという特徴です。
 それでこれまで関わってきた静岡県の地球温暖化対策の過去、現在、未来と話を進めていくんですけれども、過去は県の当局の報告資料にもあったんですが、本県は、ふじのくにアジェンダ21で、平成8年、1996年に最初の地球温暖化対策の計画を立てているんです。ただこれは言ってはなんですけれども、あまり内容がなくて、国のそのときの地球温暖化防止行動計画という格好いい名前の計画も、目標も内容もあんまりでお寒い状態だったんです。
 それで本格的に地球温暖化対策が進んできたのが、やっぱりさきに言った1997年に京都会議があって京都議定書が採択されて、国際法として発行した、国際的ルールとして効力を持つようになった2005年なんです。この辺りから日本も6%削減という、京都議定書で約束した目標を達成しなければいけなくなって、日本全体的にも本格的に地球温暖化対策が始動してきたんです。それで国では京都議定書目標達成計画という格好いい名前の計画を策定している。こういう中で本県における地球温暖化対策も本格的に始動してきた。
 それでその前に例えば2002年、富士地区なんですけれども、煙突ゼロ作戦という名前をつけられた天然ガスコージェネレーションの導入促進。これは難しいんですが、それまで富士地区の特に製紙の会社は、いわゆる重油とか場合によっては石炭とかLPガスをボイラーに使っていたんです。それを天然ガスに切り替えて、コージェネレーションといって熱だけじゃなくて電気も同時につくるというシステムにすると、推計の仕方によるんですが3割から4割ぐらいのCO2を排出削減することができるという、当時の非常に先進的な技術だったんですが、これを積極的に特に富士地域で導入しようという施策が、当時は国のNEDOの補助金と県の補助金を上乗せして、あと富士市が独自に補助制度を導入して、全国的に見ても非常に導入量が多いというか、非常に注目された対策が2002年度から始まった。
 それで、静岡県地球温暖化防止活動推進センターという長い名前の組織なんですが、これは特に家庭部門の普通の県民のいろんな取組、普及啓発とか取組促進をやるために県知事が、当時は石川県知事だったんですけれども、石川県知事がNPO法人アースライフネットワークを、この静岡県地球温暖化防止活動推進センターに指定して、県行政と二人三脚というか車の両輪になって、特に県民に対する普及啓発とか、排出削減のためのアクション、どういう取組をしたらいいのかを進めていきなさいとした。その後、2006年に国の計画の策定を受けて、その年度の終わりにストップ温暖化しずおか行動計画が策定されたのが、本格的に始動というところです。
 実は私はここから参加していまして、このときに、国は京都議定書は2008年から2012年の5年間平均で、基準年の1990年と比べて6%減らすという目標だったんですが、県は中央年の2010年度、2008年から2012年の真ん中の2010年度をターゲットとして、1990年度比12%を削減する目標です。国が6%ですので、12%はその倍です。だから非常に積極的な目標を掲げたのですが、実際にこれには裏話がありまして、二酸化炭素じゃなく今は代替フロンと言われているガスで、HFCという名前ですが、これを強烈に排出する事業者が清水港近くに立地していて、ここで県の7%とか6%を激しいときは出していたんです。
 その会社が対策をなさることをもう読んでいて、本当に温暖化を強烈に引き起こすガスなので、それをちゃんと管理してください、最終的にはその製造工程を廃止なさったんですが、そこがあるだろうと見込んでちょっと高めの目標を掲げています。このときは国が6%で県が12%なので、比較的注目されました。それで実際実績は8.2%削減で、国の6%と比べれば実績等もちょっと高めの実績です。
 国も実は8.4%で、これは外国から排出した量を買ってくる京都メカニズムというのも合わせて8.4%だったんですけれども、県の場合はそんなこともなくて、実質排出削減で達成したことに当時は意味がありました。
 それでその後に、2007年に静岡県地球温暖化防止条例を県議会で制定していただいて、この条例の原案をつくる部会にも私は入っていて、多分部会長だった気もするんですが、あまり記憶がないんですけれども、ここで温室効果ガス排出削減計画書制度をつくったんです。先ほど申し上げたように、静岡県内に約18万ある事業者の中で、その0.4%を占める584の事業所で半分ぐらいを出しています。それでこの584の事業所に対して、排出削減計画をつくってもらえませんかと、それを県に提出してもらえませんかという条例をつくりました。
 これはもう既に先行で、京都市、京都府をはじめ幾つかの県でこういうのがあって、実績を収めていたこともあり、静岡県でもつくっていきたいということで、今もこの制度があって、先ほど申し上げた五百何十社の企業が、自分がどれぐらい温室効果ガスを排出しているのかを自分で算定してもらって、それとともに将来に対してどのぐらい減らしていくのかという計画も立てていただいて、計画の結果、どのぐらい排出削減したのか報告もしてもらうというのをこの2007年からずっと続けています。
 あともう1つは、県民運動ストップ温暖化アクションキャンペーンと当時はいいましたが、前回審議の中で当局も、県民運動ふじのくにCOOLチャレンジ、その中でクルポを紹介して議題にもなっていたんですけれども、その前身です。
 このときに地球温暖化防止のための県民運動をやろうといった県は静岡県が一番早くて、この後、全国にもこれをモデルにして普及していったこともあって、静岡県地球温暖化防止活動推進センターが事務局をやって、今でもそうですが県内のいろんな企業とか自治体が実行委員会をつくってやっていっている。
 あと当局の発表だったんですが、大口の企業じゃなくて、中小の企業向けのエネルギー診断をして、こういうところでCO2がたくさん出ていますよと、こうしたら減らすことができそうですよということを診断して、それで実際にその取組をするときには温室効果ガス削減対策事業費補助金という制度をつくりました。
 基本的な本県における地球温暖化対策の枠組みというか骨組みがこの時期に始まったということです。これが過去です。僕も当時は結構わくわくしつつ新しいことが始められるぞと、それでなかなか効果もそれなりに出ていて、本当に県でも地球温暖化対策が始められていくぞと、わくわくしたのが記憶にございます。
 当時つくったストップ温暖化しずおか行動計画の表紙なんですが、見ていただくと、後で見てもらう今の計画と表紙から違って、内容的にも報告書は、硬い分かりにくい報告書というよりも分かりやすい、内容的にはちょっとぶこつなところもあるんですけれども、非常に分かりやすい計画になっていて、特にこれは見づらいんですけど、重点施策がここに6つ並んでいるんです。それで排出削減目標が、計画の推進のためにどうしていくかということがここに1、2、3、4と書いてある。これは後で最新のやつと比べてもらうとこの特徴が分かるんですけれども。こんな感じで、表紙からいって県民の人に本当は見てもらいたいという内容とか、具体的にこういうことをやるんだというのがよく分かりやすく書かれた計画を当時つくったということです。
 次に現在ですけれども、現在というのは去年ぐらいまでと思っていただいたらいいですが、タイトルが政策の中心課題から外れた10年という、ちょっとショッキングなタイトルなのかもしれませんが、当時は国レベルで、いわゆるリーマンショックに端を発した世界金融危機がありました。それでやっぱり経済、環境よりも経済、温暖化よりも経済だという、まず経済を立て直さなきゃいけないというのもあったし、京都議定書後の迷走がありました。
 京都議定書には第一約束期間が2008年から2012年だと書いてあります。だから当然、第二約束期間、第三約束期間とあることを当初は想定されていたんです。だけど第二約束期間をつくるかどうかとか、結局はできたんですけど、日本はそれには参加しない。ほぼEU諸国ぐらいしか参加しなかったんです。となって2020年目標をどうするんだと、かなりこの経済的な世界金融危機があって迷走しました。
 それで結局、当時つくったのは2020年の新たな目標が2005年比で3.8%削減という、2005年まで増えているので、3.8%というのは誰が見ても、前は6%だったのに今度は3.8%なのか、下がったじゃないかという印象です。
 実際このときは麻生政権で、麻生政権は短かったんですけれども、これは本当に排出削減目標になるのかというぐらいの数字を掲げた時期で、そのときに、日本自体も経済社会的に少し落ち着かない混乱した状態で、県政としても地球温暖化対策は、私の立場からは重要だと、引き続き重要だと言いたいんです。でも県政には重要な課題はたくさんありますよね。だから地球温暖化対策はいつも中心というか、スポットライトが当たるわけでもないことは十分理解できるんですけれども。
 地球温暖化対策から見ると、政策の中心課題からちょっと外れて、このときは経済対策とか、雇用とか失業対策というところが中心になっている。そのときに、2011年につくられたふじのくに地球温暖化対策実行計画は、ふじのくには静岡らしいですけど、あとは漢字ばかりが並んで、法定に書いてある計画そのものだったんです。
 これが2015年と2020年に一部が改定されまして現在に至るんですけれども、現在の最新のものは2021年の排出量、今年度の排出量なんですけれども、これが確定するのが技術的な問題で2年遅いんです。2005年比で21%削減という目標を掲げています。
 これは国の目標と比べるとかなり高い目標で、さらに前の目標を引き継いだような目標をここに立てている。目標の数字はとてもよろしかったと思うんです。それでこれを達成できるんじゃないかという現状にあると、最初にお話ししたんですが、これはよかったと思うんですけれども、ただしこの時期は地球温暖化対策が県政の中心課題から外れて、人も金も政策的熱意も全てがスリム化してしまったなというのが実感で、大体そのときは県で、いろんな予算項目を7%から10%ぐらい毎年削っていきなさいという時代で、人材的にも減っていくし、政策的なスポットライトが当たっていないこともあって、人材の人事異動でもそれなりの人事異動ということになって、あたかも地球温暖化対策の問題が一段落ついて、対策が終わったとまでは言わないんですけれども、ある意味では停滞してしまった。ここにスリム化と書いたんですけれども、そうした時代です。
 それで排出削減は進んでいたんですが、これは過去に打ち出した政策が、国のも含めてじわっと効果を現してきて、この時期で排出削減が進んできたんですけれども、まさにこの時期に新たな対策を打たないと、ここから先の排出削減が進んでいかない。今日対策をやって明日削減するわけではないので、ここの新機軸がこの10年間は打ち出されてないということが、これからじわじわと排出削減が進んでいかないという効果になるかもしれないと思っているんです。
 ただし一方、市町レベルでも地球温暖化対策の計画をつくるところがあって、中には特徴的な裾野展開もするようになってきた。これは私が関わったものだけを書いてあるんですけれども、今では17ぐらいに、もっとたくさんになってきています。
 特徴的な施策の展開は、やっぱりさきのゼロ作戦でやった富士市とか掛川市とか、静岡市もやろうとはしているという意味で静岡市とか、浜松市も浜松電力を使ってとか、幾つかあります。県では新機軸は打ち出せずにいるんですが、市町での対策が一周遅れてというか進んできて、県全体の排出削減もまた後押しするようになってきているんじゃないかなと思いますが、いずれにしても現在はこの去年ぐらいまでですが、まだこの状態だと思っています。
 次に、このときにつくった計画です。見てもらえれば分かるように、本当に行政文書で、タイトルが書いてあってこんなので、目次を見るとこの重点施策というのはここです。さっきはここに6項目が並んでいたんです。内容はあるんです、もちろん。だけど項目立てするほどのものではないといったら怒られるかもしれませんが、そんな感じです。
 あとどうやって進めていくかも、さっきは4項目あったんですけれども、この1項目になっている。見るだけでもさっき言った政策的熱意が後退してしまっているのが分かるような表紙ですし目次だと思います。
 それで未来ですけれども、再始動、存在価値が問われる10年となっています。まず国際レベルで、国レベルでも、もう世の中の状況は変わってきています。国あるいは首長による脱炭素宣言が、カーボンニュートラル宣言と最近は言うように定着してきたんですが、今ではもう静岡県内でも、最新のデータだと14市町が静岡県も含めてしています。脱炭素というと二酸化炭素だけと思うかもしれませんが、温室効果ガスというのは二酸化炭素以外にもありまして、さっき言った代替フロンとか、最近話題になっているメタンとか、それも含めて静岡県の場合は2050年までに実質排出量をゼロにすると。
 この実質といっているのは何かというと、森林等が成長する過程で吸収してくれている二酸化炭素があるので、これはマイナスなので、排出量をプラスとして吸収量をマイナスとして、プラスマイナスでゼロにするぞということです。
 静岡県だとこれはだんだん減少していくのが将来的に大きな課題。約3%ぐらいは吸収してくれますので、ゼロにしなくても排出量を3%ぐらいまで落とせば、後は森林が吸収してくれているので実質ゼロになるということです。
 日本だけではなくて世界の主要国で今カーボンニュートラル宣言をしていないのは、今COP26をイギリスのグラスゴーでやっていまして、インドの首相が2070年だけど一応カーボンニュートラル宣言をしましたので、主要国でしてないのはロシアぐらいですか。あと新興国だとブラジルとかはしてないんですが、多くの国がしてきた。
 あと企業のほうも、この後に中井さんが呼ばれているんですけれども、この方の取組でSBTとかRE100の取組が広がってきている。つまり県を取り巻く状況は大きく地球温暖化サイクルからさらに新たな段階、もう6とか20とかじゃないんです、目指すものがゼロですから、徹底的に温暖化対策を進める段階にある中で、県はさあどうしようかというのが今、現段階なんです。
 ここで改めて考えることは、県レベルで何ができるのか、何をすべきかということなんです。これは私も審議会などで悩ましいところなんですが、恐らく先生方もお考えになっていると思うんですが、まず人・金・情報・権限、どこにも優位性なしというのは申し訳ないんですけど、これは誰と比べてというと、例えば国と比べて権限と金は、やっぱり県は圧倒的にないです。では人があるかというと人も、例えば人や情報も企業と比べると、やっぱり圧倒的に少ない。多分、優位性があるのは行政情報、国の対策動向に対する情報は、県はさすがに一歩先んじてつかんでいらっしゃったり、徹底なさったりしているんですけれども、それ以外は行政機関として、国やあるいは具体的な地べたに沿った対策というのは市町と比べても、ここで県行政が優位性があるぞという分野があまりないんです。
 これが認めざるを得ない状況で、じゃあその中で何をするかをちゃんと考えて、あたかも人も金も、情報も権限もあるかのように、こういう対策もああいう対策もやれと言っているとか、あるいは計画に書いてしまうと、それはできないことを書いてしまってもあまり意味がないかなと思っている。
 それでこの中で重要なのが方針提示、仕組みづくり、市町への支援。
 これは、市町への支援は県しかできない分野でもあるし、県内の仕組みづくりはもちろん県だけだし、あと県民とか県内の事業者、特に中小の事業者、県をベースに活動している事業者の方、県民の方、あるいは市町の事業者に対して方針を提示するというのも大きな役割なんです。ここを今こそやるべきだと思っていて、つまり京都議定書が発効したときに、京都議定書を達成するために、県がこういう方針で行くと。つまり目標もあったし具体的な施策もあったところを今後はギアチェンジしてというか、もう一段階上げて今やっていくべきだと思っています。
 1つは2050年脱炭素ふじのくに未来像、県知事が脱炭素宣言をなさいました。それに呼応するかの形で各市町の首長もたくさんなさってきたけれども、次に、皆さんも県議会で御質問なさるかもしれませんが、市町に今言われているのは、どうやってやるのかと言われるんです。それは議員に言われるし、市民にも言われるし事業者の人にも、それが必要だということは大体ニュースとかを見て分かる。それで目指す方向はいいけど、どうやってやっていくんだと言われるんです。
 それで少なくとも2050年カーボンニュートラルとか、脱炭素の静岡県、ふじのくに、あるいは市町はどういう姿だと考えているんだということを次には提示してほしいわけです。その次に、そこまで行くロードマップ、道筋はどう行くのか、その道筋を整理するために選んだ施策対策はどういうものか積み上げていかなければならない。そこが今誰にも分からず混沌とした状態なんです。
 なので、今静岡県は新たな地球温暖化対策の計画をつくっているんですけれども、僕はその中に2050年に脱炭素した、ふじのくにの未来像とはこういう像なんだということを明確に示したいと言っているんです。その像は未来のことで、預言者じゃないので、これだと1つには確定できないんだけれども、幾つかのパターン、あるいは在り得べき1つの姿はこういうものだと、それが技術革新とかイノベーションとかに進んでいくことによって、どんどん進化することはあるけれども、現時点でどういうものかというのをちゃんと示して、その一里塚としての2030年の目標を提示することが必要だといっているんです。
 だからそれを見て市町も、静岡県全体でこうやって目指すんだったら我が市の場合、我が市の気候風土とか、得意なところや苦手なところがあるので、我が市はこうしていくとか、企業や事業者もそのように進めていくんだったら、自分のところの経営方針としては何年ぐらいにこうなって、次にはこうなっていかなきゃいけないぞとか、あと県民もですが、そこに向けてこういう取組が必要だと、何年からはこういう取組が必要だとか、そこに向けて自分たちも行くんだと。だからどっちに向かって進んでいくのかが明らかになる。
 それで企業は特にそうだけど、そっちに向かって進んでいくんだったら、そこに市場ができる。例えば建物や住宅の断熱性ができる、電動車が普及していくとかの市場ができていくので、その市場に向けてイノベーションを先んじてやっていけば、新たな市場に先駆けできるということです。
 なので方針提示とここに書いたんですけれども、こういう姿を目指して我が県は行くんだよと。これが日本全体なのは、日比野さんも前半にお話ししたように、日本全体は大体あるんですけど、先ほど言ったように日本全体は北海道から沖縄もあって、気候風土も全然違う。北海道では再生可能エネルギーの状況もいろいろ違う中で、産業構造も違う中で、日本全体のことを言われても、県民や県内の企業や事業者は、それではピントがぼけてよく分からないけれども、我が足元の静岡県はどうなるかを提示してもらいたいと思っていると思うんです。
 これが非常に重要なのは、何でヨーロッパなどで地球温暖化対策がこれだけ進んできたんですかと、よく質問されるんですが、やっぱり環境教育ですかとか、国民の意識ですかとか言われるんですけれども、それはそうなんですが、一番大きいのは国が、政権が代わっても確固とした方針をずっと貫いていることなんです。
 2050年カーボンニュートラルに行く前からです。そうすると安心して取組もできるし、イノベーションを進めていけるところもあるし、時代の流れに抗しても仕方がないのもあるかもしれないと思います。
 あともう1つ、これと反対のように見えるんですけれども、太陽光発電等の不適切な立地を回避するための制度づくりです。
 これは国の制度づくりがとてもまずいんです。再生可能エネルギー発電の買取制度が日本でも2012年から始まりました。これはヨーロッパで約10年前に成功を収めてきている政策を当時は民主党政権時代ですが、日本にも導入したというか大きくなったんです。そのときから我々専門家はヨーロッパを見て、ヨーロッパはそのときに立地規制みたいなものがちゃんとしているんです。
 例えば日本でいうとそんな急峻な山はないんですけれども、急峻な山で自然災害を起こしそうなところに構造も十分じゃないものを建てられないとか、あるいは景観とか住民に迷惑をかけるようなところに大きな風車が建てられないとか、ちゃんと地域住民の合意を得た上でそれをつくっていく制度をセットにしてるんですが、日本はそこがなかったんです。そのときの政権状態が非常に不安定だったということもあるかもしれないです。
 そのときに幾ら環境省が、官公庁や公共施設の屋根の上がこれぐらい空いているとか、開発してまだ使えてないとか、これぐらい空いていると試算しても、最も立地コストが安いところに事業者は立地する。これは市場経済では当たり前のことです。
 それで日本で最も立地コストが安いところというのは、規制があるようでほとんどない、やっぱり森林なんです。熱海のあの事例でも分かるように、規制があるようでほとんどないようなところなんです。実際にああいうような盛土とか、産廃を埋めなくても、本当に森林を切って太陽光発電を1ヘクタール以下つくるんだったら、ほぼ何もないに近いんです。だから皆さんもこんなところにつくって大丈夫かと思うようなところに、皆さんの地元にもどんどんできているんです。
 森林は二酸化炭素を吸収してくれる、温暖化対策に必要なものを切って太陽光というのはそもそも矛盾しているし、それで自然災害とか、これから地球温暖化による異常気象とかが増える中で、それに脆弱な地域が増えてしまっているので、こういうのを回避するための制度づくりがとても重要です。
 県でも少しずつガイドラインとか要綱とかをつくりつつあるし、実際に地元で困っているのは市町なので、市町で条例をつくったり要綱をつくったり、私が関わっているところも幾つもやっているんですけれども、この制度づくりで新たに、専門的になりますが地球温暖化対策推進法の中で、地域脱炭素化促進事業促進区域の設定に関する環境配慮基準、簡単に言うと太陽光とか風力とか、再生可能エネルギーの発電施設もこの地域脱炭素化促進事業なので、それを設置するときに、ここに促進区域、ここに設置してくださいよ、ここだったらいいですよという区域を指定するということ。
 本来は、ここは駄目ですと言いたいんです。ここは駄目ですと言いたいんだけれども、日本はそうするといろんな法律を触らなければいけなくなって難しいので、ここは駄目ですと言うんじゃなくて、ここに立地してくださいと促進区域を指定するようになっています。それで指定するのは市町なんだけど、そのための環境配慮の基準をつくるのは都道府県の役割とこの法律に書いてあるんです。
 これを迅速に効果的、効率的なものをつくってやると、市町への効果的な支援になる。仕組みづくりにもなりますので、こういうのが今当面の課題になっている。
 市町としては、その制度ができれば不適切なところへの立地を規制しつつ、本来その再生可能エネルギー発電施設が立地してほしいところを促進区域に指定して、今のような問題を回避するような制度づくりができるので、市町の仕組みづくりの支援という意味でも、今ここが2本の柱として、県でやることがとても重要になってきています。
 30分もしゃべらないといって、僕はかなりしゃべってます。すみませんちょっと熱が入ってしまって、でも最後です。
 それで政策形成は民主的に選出されたトップによる判断というんですけれども、どんなことでも経営判断は、組織のトップがするというのは、企業でも自治体とかでも同じだと思うんです。なのでトップの役割とか責任というのは非常に大きい。
 だけど県行政とか県の政策の場合は、トップは民主的に選出された県知事なので、自分の独断と偏見というわけにはいかないわけで、トップの方にいろんな、その選んだ人たちですが、県民とか企業や事業者とか、皆さんのように議会が情報とか声とか科学的根拠とかを届けて、トップの判断に影響を与えるということが、今とても重要なことだと。
 県知事が非常に聡明な方で、非常にすばらしい政策を立てられるということもあるし、県の職員の方がそれなりの有能な方ということもあってそうなるかもしれないんだけれども、民主主義の正当なプロセスというのは、やはり僕が思うには県民とか事業者とかの代表である議会の方がトップにどのような政策形成を今すべきかをちゃんと声を届けて影響を与えて、新たなステージの段階での静岡県の地球温暖化対策を形づくっていくことが、これからの未来としてとても重要な局面になっている。
 この重要な局面とは本当に今なんです。今から10年間という人もいます、2030年と。でも多分10年じゃないかもしれない。もっと短くて、本当にこの局面は今年度、来年度ぐらいの局面でとても重要な政策判断になってきて、その結果が10年後、20年後の温暖化対策とか、あるいはそれによる異常気象とか気象災害とかいうものの程度や頻度や規模を決めていくのかなと考えています。

○鈴木(澄)委員長
 以上で、水谷先生からの説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 委員の方にお願いいたします。
 質問はまとめてするのではなくて、一問一答方式でお願いいたします。
 それでは、御質問、御意見等がありましたら御発言願います。

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