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委員会会議録

委員会補足文書

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令和2年11月新型ウイルス等感染症対策特別委員会
静岡県立大学経営情報学部教授・静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科附属ツーリズム研究センター センター長 八木健祥氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/26/2020 会派名:


○八木健祥参考人
 皆様、よろしくお願いします。
 ただいま御紹介にあずかりました、静岡県立大学大学院ツーリズム研究センターのセンター長をしています八木と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、ウィズコロナ、アフターコロナの下での、それを見据えた静岡県の観光戦略ということで、これから50分程度お話をさせていただきたいと思います。
 今日、私のほうで説明させていただくテーマはここに上げておりますけれども、大きく分けて5つでございます。
 まずは、今、観光の現状ってどうなっているのかという話をさせていただき、それを踏まえて観光戦略。ここは、早めに対応する話と、目先、向こう1年ぐらいという話と、それから中長期的な対応と、それぞれのステージによって対応するものが違いますので、そこをやや詳しく御説明させていただきたいと思います。
 まず最初にお断りなんですけれども、実は観光については、なかなかデータ整備が進んでいない。なおかつ、出てくるデータが遅いということで、観光庁の数字でも大体今、半年遅れぐらいで出てくる状況です。静岡県はもう少し遅いです。こういう委員会で御説明させていただくときに、いわゆる私の推測とかこうではないかとかいう話はするわけにいきませんので、私のほうで今回2つ、インターネットを使って、静岡県民並びに東京都、神奈川県居住者にアンケートを取りました。そのアンケートを基に御報告させていただきたいと思っています。
 ちなみにアンケートは約300名で、年齢構成も各世代ごとにバランスを取っておりますので、男女比率も半々です。なので、数は300ですけれども、統計学の世界で300というのは一応許される水準ですので、そういった面では、静岡県の姿を100%表しているかどうか分かりませんが、当たらずとも遠からずというところで聞いていただければと思っております。
 まず、要旨ですけれども、今日お話しする話のポイントだけ、先に御紹介させていただきたいと思います。
 まず、観光の現状ですけれども、GoToトラベルキャンペーンの効果は出ています。客足は戻りつつあります。ただ、例年の水準と比べればまだまだ低い状況です。ただ、こういった中で、最近の感染拡大を眺めて、先行きの業況、商売については、慎重に見る向きが見られるのが現状でございます。
 こういった中で、これから観光戦略としてどういうことを構築していくのかですけれども、早めの対策としては、他の観光客や従業員との接触機会を一段と減らす体制整備が必要だろうということと、もしGoToトラベルキャンペーンがどこかで打切りになった後、観光需要が落ち込みますので、その辺の対策、特にホテル、旅館、観光業者の資金繰り、ここがポイントじゃないかと思っております。
 次に、短期的な対応としては、効果的な情報発信体制、それから、観光客の旅行ニーズの変化に合わせた対応が必要と思っています。
 3つ目に、中長期的な対応として、いわゆる新しい生活様式に基づくワーケーション需要の取り込み、あるいは長期滞在者の受入れ、こういうことを通じて静岡県への人口流入を増やしていく、そこに観光を使うことが望まれるかなと、これが今日の私の御説明のポイントになります。
 以下、詳しく御説明させていただきたいと思います。
 先ほど申しましたように、観光のデータは遅れていますので、今どうなっているかは、なかなか分からないです。私どものほうは、実は今年の4月から静岡県賀茂地域局の御協力を得て、賀茂1市5町における観光景気動向調査を毎月始めました。毎月、数字を見て、どういう状況になっているかを下田市を中心とした賀茂地域の商工会議所、商工会、観光協会からその傘下の会員にヒアリングしていただいて、そこから数字をもらって、統計を取っている状況です。
 そこを見ていただくと、このグラフですけれども、明らかにこの4、5、6月、いわゆる緊急事態宣言、外出自粛があった頃で、それが終わってから外出自粛が解禁された、それからこの後、GoToが出てきたということで、明らかによくなっている。そういった面では、水準は別ですけれども、トレンドと方向としてはよくなっているということは間違いない。逆に、この黒い線が悪いという人ですけれども、ここはもう今、ゼロです。
 取りあえず現状は、さらにどんどん悪くなっていくということではなくて、よくなっている、これが実態です。
 これはあくまで下田中心の賀茂地域ですけれども、多分熱海と修善寺、ここら辺もほぼ同様の傾向かなということは、私自身のヒアリングで確認しています。データはありませんけれども、確認していますので、伊豆半島の動きということで、御覧ください。
 GoToトラベルの評価ですけれども、やはりかなりの効果があった、それから相応の効果があったという人が全てです。なので、GoToトラベルキャンペーンによって、人が来ていることは、前向きに評価されているということです。
 実際に、宿泊動向を見ますと、これは11月1日の調査です。なので、10月中の実績について聞いております。ここを見ると、例年並み、例年を1割上回っていると答えている方が出てきているので、多少宿泊施設の立地条件とか規模、こういったことによっても温度差はあるんですけれども、総じて見れば戻ってきている。
 じゃあ、どこから来ているのかということですけれども、ここを見ていただきますと、東京都からの宿泊客は例年より1割増えている。例年並みということで、東京は戻ってきている状況です。これは10月の動きです。
 同じように、神奈川県、千葉県、埼玉県、ここら辺も例年比1割ぐらい増えている、あるいは例年並みということで、首都圏のお客さんは戻ってきている。
 じゃあ、どういう人たちが来ているのか、どういう年齢層が来ているのかといいますと、これは若年層、30歳未満ですけれども、ここが多い。実は、30歳以上、40歳、50歳、ここもほぼ同様の傾向です。ということで、若年層、それから中年層のお客さんが泊まりに来ている。
 一方で、60歳以上の高齢者は引き続き前年比1割減、3割減で、どちらかというと伊豆半島全体の宿泊客に占める高齢者の割合、それ相応のウエートがあるんですけれども、ここは戻ってきていない。ここは結局、レベルとしてまだ低いところだと思います。ただ、現下の感染状況を考えれば、なかなか年配の方が旅行に行くということについては慎重かと思いますので、こういう動きはしばらく続くのかなと思っています。
 じゃあ、ここへお客さんが戻ってきて、いわゆる観光関連業者、特に飲食店とか土産物品店とか、こういうところに経済効果が出ているのかなんですけれども、全く出ていないわけではないです。ただ、例年と比べると、まだまだ戻り切れてないという感じで、やはりこれは、特に土産物品店にお話を聞くと、観光客でこれまでもコロナの前でもお土産をいっぱい買うのは、やっぱりお年寄りだそうなんです。孫へのお土産、それから老人会へのお土産、町内会のお土産、自分の家族。若い人は、もともとそんなに土産を買わない。という面で、やはり年配の方が戻ってこないと、この辺の土産物品店の売上げも戻らないという声が聞かれています。
 こういった中で、先行きはどうかということで、3カ月先の状況について聞いています。
 10月まではぐっと戻ってきたんですけれども、11月で落ちました。この落ちた理由というのは、先ほど申しましたように、足元のコロナの感染が拡大しているから多少慎重に見ている向きがあるという状況です。
 こういう中で、今日追加で資料をお配りしましたけれども、静岡県民はどういう行動をしているのかということで、これは同じ時期に、静岡県民310名を対象にアンケートを取った結果です。結論から言うと、ここに書きましたけれども、旅行に慎重なスタンスです。このアンケートで見る限りは、意外と静岡県民は旅行していない。こういう数字が出ています。
 ここにありますように、7月から9月に旅行をしましたかということに対して、どこも行ってないと答えた人は約6割です。静岡県内を旅行したという人も3割ぐらい。県外に行った人は1割ちょっとぐらいで、そういった面では、この数字から見る限り、静岡県民が感染地域に行って、菌を持ち帰ってきたということはなかなか難しいかなという気がします。
 じゃあどこへ出かけたかといいますと、静岡県内、伊豆、東部、中部、西部なので、日帰りは除いているんですけれども、一泊二日のショートトリップみたいな感じでちょこっと出かけたということで、東京に行ったという人は3.7%、関東でも9.7%、合計13%、300人の13%ですから、30人ちょっと、こんな数字になっているということです。
 じゃあ、行かなかった人になぜ行かなかったんですかと聞いたところ、自分や家族が感染したくないと答えた静岡県民が42%。それから、もう1つ大きいところですけれども、自主的に自粛しているという人が18%、これを足すと6割です。
 そういった面では、10月末のアンケートですけれども、非常に静岡県民自体、旅行には慎重なスタンスを示しているのかなという感じがします。
 じゃあ、10月以降どうしたかということで、GoToトラベルキャンペーンの対象に東京発着が加わったけれども東京等行きますかと聞いたんですけれども、ここについても、この赤で囲ったところです。旅行は当分しないと答えている人が46%。それから、もともと旅行に関心がない、興味がないというのが12%。これは複数回答なので、単純合計してどうこうということではないんですけれども、かなりの人がやはりGoToトラベルで東京が加わったから、じゃあ旅行に行くぞという感じではない。逆に、旅行に行きました、これから行きますよという人は、1割くらいという感じですので、そういった面では、静岡県あるいは各市町の感染リスク回避のための呼びかけが、このアンケートから見る限りにおいては県民に浸透しているんではないかと、かなり慎重な行動を取っているんじゃないかと私は見ています。
 こういった中で、これからGoToもどうなっていくか分かりません。ただ、一般的に冬は感染が広がるだろうと前々から言われていたことなので、やはりこういう中で早めの戦略ということで、何をもっても感染防止対策が大事になると思っています。
 当然、観光地で感染が広がるということになりますと、風評被害になって、後々のダメージが非常に大きい。私が御訪問して話を伺った限りでは、伊豆地域を中心に行政も観光協会も商工会も、それから個々の観光事業者も、感染防止にはかなりナーバスになっている印象でした。
 それで、8月時点の調査ですけれども、早急に対応が必要な事項は全てこの夏までに完了していると見ております。これは、あくまで早急に対応が必要な事項ですので、これで全部終わったということではないんですけれども、取りあえず最低限のことはできている。
 こういう中で、宿泊客は宿泊施設の中でどういう行動を取ったのかを、コロナの発生前と比較してみますと、皆様方も同じかと思いますけれども、やはりなるべく人と接触をしたくないと。これは、他の観光客もしかり、従業員もしかりということで、非常にその辺、何か接触するとリスクが高まるのではないかという意識が強い。接触機会減少につながるような感染防止対策をこれから取っていかなきゃいけない。ここはまだ必ずしも十分できているというわけではないんです。
 宿泊客の行動変化を見ますと、一番多かったのがマイカーです。公共交通機関を使って来ていません。以前であれば、駅に行きますと旅館の方が出迎えに来ていて、紙を持っていて、それで何とか旅館さんはこの車にお乗りくださいとか、そういうのが熱海でも伊東でも下田でも見られたんですけれども、今はそういうことはない。ほとんど皆さん、車。逆に、町の中の有料パーキングはほとんどいっぱいで、地元の人が止められないということが土日に起きている状況です。
 次に、特徴としては、外出するお客さんが非常に少ない。夕方、ちょっと食事までの間に、散歩、町の中を歩こうかとか、あるいは夜、2次会で飲食店へ行こうかとか、こういうお客さんがいたそうなんですけれども、ほとんどそれはないので、ホテルに来て、風呂に入って、食事をして、もうずっと部屋に閉じ籠もると。風呂も大浴場ではなくて、貸切り風呂から先に予約が埋まる。こういう状況に今はなっているようです。
 それから、食事にしても、従来であれば、お酒を飲んで、つまみを頼んで、そこで2時間とかゆっくりリラックスして過ごすお客さんが多かったんですけれども、ともかく食べたらすぐ戻る、こういう形で、相当その辺はナーバスになっている。
 じゃあ、このように、お客さんの宿泊施設内での行動が変わってきたことで、どういう戦略を取っていけばいいかということになるんですけれども、ともかく接触機会を減らしていかないと、なかなかお客さんのニーズと満足感、納得感は得られない。
 こういうことになるので、1つはやはり、今はやりのAIあるいはデジタル化、こういったものを使って、なるべく人と人が接触しない、特に従業員の方とお客さんが接触しない仕掛けをつくっていく必要がある。例えば無人のチェックイン、チェックアウト機械を導入するとか、あるいは、スマホのアプリを利用して部屋の鍵を開ける、閉めるとか、あるいは客室コンシェルジュサービスのスマホアプリ化だとか。それから、個室の風呂、食事どころの用意とか、こういったことかなと思います。ただ、いずれもお金がかかるので、これは可能なのかどうか分かりませんけれども、例えば県の補助金だとかあるいは制度融資を利用して、宿泊施設が設備投資できる環境整備も必要なのかなと思っています。
 それからもう1つ、これはあってはならないことなんですけれども、万が一、宿泊施設内で感染者が発生した場合を想定したシミュレーションは必要だろうと思っています。その場合、宿泊施設は、新型コロナ感染BCP体制を構築して、例えば感染者の隔離、それから他の宿泊客に連絡をするのか、しないのか、それから、館内の消毒はどうするのか、そういう役割分担です。それから、外部関係機関との連絡調整をどうやってスムーズにやるのか、こういったものを会議形式でいいので、定期的に訓練をして、従業員の方、あるいは経営者の方とのコミュニケーション、それから役割分担を確認することが必要かなと思っています。
 ある面、感染症というのは、一種、自然災害に似た特性があると思うんです。いつ、どこで、ひょっと起きるか分からない。そういった面では、静岡県内でも、地震をはじめ自然災害に対するBCP体制は着実に進捗しているかとは思うんですけれども、とりわけ観光地では、やはり感染症が起きたときの対応がきちっとできるようにしておくことが必要なのかなと考えています。
 それから次は、全然観点が違う話ですけれども、GoToトラベルがいつまで続くのかということです。ワクチンが開発されて、感染が完全に終息することになればいいんですけれども、それがなかなか進まない。爆発的な感染はないにしても、感染が一定水準続くことを考えると、その中で、GoToをどうしていくかという問題があるかと思います。
 国の財政を考えれば、このキャンペーンを永続的に続けるわけにはいかないだろうと。そうすると、どこかで打切りになる、終了になることを念頭に置いた対応が必要だろうと考えています。
 今の伊豆を中心として、観光客が増えているのは、やはりGoToで安いから来ているということだと思います。これは、将来の旅行需要の前取りです。なので、例えばどこかで打切りになったら、その打切りになった瞬間に、旅行需要が全部消えていくということで、言ってみれば、消費税の引上げ前の駆け込み需要と同じような現象が観光で起きているんじゃないかと考えておく必要があるんではないかなと思っています。
 そういった面では、どこかでGoToが終わったら、その反動が来る、落ち込むということで、ホテル、旅館の経営者の方はかなり心配をしているんですけれども、そうなったときに、果たして、これは静岡県だけではなくて、全国の観光業が持ちこたえられるのかという問題があります。ホテル、旅館、こういった観光は、言ってみれば日銭商売です。なので、毎日キャッシュが入ってきて、それで支払いに充てている。こういうことをやっているので、入り口が止められちゃうと、もうどうしようもない。じゃあ、止められても耐え得るだけのキャッシュのストックがあるかというと、業種特性でほかの例えば製造業とかと比べると、キャッシュのストックが少ない。そうすると、例えばお客さんが3カ月、半年来ない、少ないということになってくると、途端に資金繰りが苦しくなるということで、やはりこの春先にやったように、監督官庁、関係機関を通じ、取引先金融機関に観光関連事業者への資金繰り、それから経営動向をきめ細かくフォローしてもらって、専門家も交えながら適切な、的確な資金計画をつくらせるという指導、経営支援を継続的に行わせる対策、体制、指導が必要ではないかなと思っています。これが、目先の早めの対応です。
 次に、目先の対応ということで、幾つかお話をさせていただきたいと思います。
 1つは、最近よく新聞に出ていますけれども、マイクロツーリズムであります。これは、コロナの感染が終息しないと、あるいは世界的にも継続するという中にあっては、インバウンド、外国人観光客は来ません。それから、日本人の団体需要、ツアー旅行だとか、それから接待旅行、慰安旅行とか、こういった法人需要も期待できない。そうすると、残った旅行需要のターゲットは、日本人の個人旅行に限定されるということです。
 実は、これまでの日本の観光というのは、インバウンドでもってきたところもあって、日本人の観光需要って、そんなに増えていません。そういう中で、なおかつ遠隔地へ旅行するということは、それだけ感染リスクにさらされることになるので、近場の旅行が好まれる。そうすると、静岡県民及び周辺の近隣他県の居住者をいかに静岡県内の観光地に連れてくるかという戦略を、目先、取っていく必要があるということになります。
 それで、冒頭、言いましたけれども、静岡県民、それから東京、神奈川居住者を中心にアンケートを取ってみました。その結果を御紹介させていただきたいと思います。
 まず、静岡県内観光地への旅行需要ですけれども、ぜひ行ってみたい、どちらかと言えば行ってみたいと回答した割合は全体の7割です。そういった面では、潜在的に静岡県民の静岡県内への旅行需要は強いと認められるかなと思います。
 どこへ行きたいかというと、圧倒的に伊豆です。熱海、伊東、伊豆高原、これが4割ぐらいを超えている。それから次に、下田、南伊豆、西伊豆、それから伊豆東海岸と続く状況に今はなっています。
 じゃあ、静岡県民で、静岡県内の観光地へ行ってみたいと思わない人が65人いるんですけれども、こういう方たちに、どうして静岡県内の観光地に行ってみたいと思わないんですかと聞いたところ、声として大きかったのが、この赤で囲った3つです。
 1つは、静岡県内の観光資源の魅力が乏しい。それから県外の観光地のほうが魅力的だと。それから県内の観光地には関心がない。65人の回答はこういうところに集中しているということです。
 でも、本当に果たして、この人たちは県内の観光地のことを十分理解した上でこういう回答をしているのか、私は疑問に思っています。特に、相対的に県外の観光地が魅力的だとか、観光資源の魅力がないとか、何を根拠に言っているのかと思うわけです。
 それで、やはり1つの要因として、静岡県内の観光地に関する効果的な情報発信が弱いのではないか、県民に届いていないことがあるんじゃないかなと思っています。これは、静岡県民の先ほどのアンケートの中で、他県の観光地にあって静岡県内の観光地に足りないものは何ですかというところを310人に聞いたんですけれども、一番多かった答えは、公共交通機関の利便性だと。これはなかなか短期では解決しないですけれども、次に、行ってみたくなるような観光地情報の発信がない、ここなんですよね。つまり、静岡県民でも、マイクロツーリズムで近場の観光に行きたいという需要がある。行きたいんだけれども、どこに行けばいいのか、どこへ行ったら楽しいのか、どこへ行ったら満足するのかという情報がないことを回答している。
 実際に、静岡県民に静岡県の観光情報に関するインターネットとか、SNSの情報を見たことがありますかと聞いたところ、ほとんど見たことがない、それから、あまり見たことがない、これを合計すると6割いるんですよ。今、もうネット社会なので、こういう観光情報は基本的にネットサイトから取る。それは宿泊予約サイトもあるでしょうし、観光のサイトもあるでしょう。なので、昔のように、私も学生時代、社会人の初めは、例えば旅行ガイドブックだとか、あるいはJTBだとかこういった旅行会社の店頭に行って、パンフレットとかチラシとか見て、そこで相談して旅行するとかって、今はこういう時代じゃないんですよね。そうすると、いかにインターネットを中心に効果的な情報発信ができているか、できていないか。ここで、静岡県民の目に届くかどうかが大事になってくるわけです。
 それで、実際に観光情報サイトを見たと答えた人が4割いるんですけれども、この人たちに、他県の観光のインターネットのサイトと比較した場合の感想を尋ねたところ、欲しい情報になかなか届かない、それから、行ってみたいと思わせる情報がない、観光地の魅力が伝わってこない、滞在中の過ごし方に関する情報提供が少ないということです。やはり私は、静岡県民が行かない観光地に、どうして他県の人が来ますかと。まずは、県民がそこの観光地を見て満足して、そこの観光地を好きになって、評価して、それが口コミとかで伝わっていくものだと思っています。他県の人が来て、観光資源を掘り起こすなんていうことは、あまりないと思っています。そういった面では、まず静岡県民に愛される観光地づくりをしないと、なかなか人は集まってこないと思います。
 そういう面では、やはりインターネット、それからSNSを通じて、これから旅行に行こうと思っている人が行ってみたくなる観光地の情報を発信していくことが大事かなと思っています。
 先ほど申しましたように、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えると、団体旅行とか法人需要はないですので、そういった面では、静岡県内の観光地は個人客に選ばれる観光地になる必要がある。そうしたときには、観光地が観光事業者のサイドに立って情報発信するのではなくて、消費者サイドに立脚して、消費者が今、どういう観光ニーズを持っているのかを把握して、その結果を踏まえて、的確なマーケティングを行う。それで、それにヒットするような情報を流していかないと、なかなか消費者と観光事業者との間の一致は出てこないと思っています。
 ちなみに、首都圏の居住者は、もっと強烈で、観光情報の入手媒体はインターネットの観光サイトと答えた人が47%、口コミサイト17%、インターネットの観光地のサイトが34%と、この赤い部分ですけれども、もう圧倒的です。
 もう1つ、これも首都圏の居住者に、事前に伊豆旅行を計画したときにどこと比べたか、どこと比較検討して伊豆に行こうと思ったかを聞きました。
 そうしたところ、全体の5割近くの人は、特に比較検討した先はないということで、この回答だけを見ると、伊豆の単独指名というか、伊豆の観光ブランド力があって、やっぱり伊豆に行こうという人が多いんですけれども、ただ1つ注意しなければいけないのは、その次に来るのは、実はこの赤い傍線、箱根なんです。なので、やはり東京、神奈川サイドから見ると、箱根に行くか、伊豆に行くかを迷っている人はそこそこ潜在的にいる。そうなると、伊豆の観光地について言えば、箱根に対して優位な、箱根よりも伊豆を選んでくれる観光戦略をしていく必要があるだろうなと思っています。
 今回のアンケートで、観光客のニーズはどういうところにあるのか聞いてみたところ、これはあくまで宿泊サイドから聞いたんですけれども、やはり、今まではどちらかというと観光地に来て、アクティビティ――例えば伊豆だったらマリンスポーツするとか。そういう体験を1つの楽しみに来ている人も多い。あるいは観光地めぐりです。こういうのはあったんですけれども、こういう環境の下で、やはり癒やしだとか、のんびりだとか、コロナの環境から抜け出して、伊豆の新鮮な空気を吸ってリフレッシュしたいという人が増えている。だから、別に外に行かなくても、ホテルの中で景色見てればいいと。こういうことになるわけです。そうすると、癒やしだとかのんびりだとかといった観光客の旅行ニーズを念頭に置いた観光戦略の策定が必要になってくると思います。
 そうすると、癒やし、のんびりを満たすような場所だとか、そういうメニューを観光情報として、インターネットのサイトで周知していくことが必要になると思います。多分、そのときの静岡県のキーワードは富士山、海、ここだと思います。そういう面で情報をうまいこと発信して、全国の人に届ければ、観光客は増える、静岡県の観光地がにぎわう可能性はかなりあるんじゃないかなと思っています。これは短期的な話ですけれども、中長期的においてもそういった取組は必要だと思っています。
 最後に、中長期的な対応ということで、幾つか話をさせていただきたいと思います。
 これは、11月1日時点で、下田を中心とした賀茂1市5町の商工会議所、商工会、観光協会を通じて取ったアンケートなんですけれども、いわゆる県外の人で、伊豆半島にテレワーク拠点、それからワーケーション、移住、新しい生活様式への移行を踏まえてこういうものを考えている人がいるか、あるいはそういう動きがあるかを聞きました。結果、75%はそういう動きはないと答えています。ほとんど4分の3は動きがないんだねと思われるかと思うんですけれども、実は、残りの25%が非常に重要です。多分、コロナの前にこのアンケートをやったら、ほぼ100%に近いところ、せいぜい90%がないと答えてきていると思います。
 こういうことを言ったら、地元の先生方には大変申し訳ないんですけれども、伊豆半島の先端です。伊豆急で熱海からまだ1時間半かかるわけですね。こういう先端のところでも、テレワーク拠点とか、ワーケーションだとか、移住という話が出るということは、もっと手前の熱海とか伊東はもっと出ていると考えていいと思っています。そういった面で、伊豆での新しい生活様式を考えている人が潜在的にいるというところで、戦略を打っていく必要があるんではないかなと思っています。
 実際に、4月から11月までの動きの総括なんですけれども、例えばテレワーク拠点が増加したとか、ワーケーション滞在者が出てきたとか、長期滞在者が出てきたとか、それから移住に関する相談が出てきたとか、やっぱりまだミクロ的な動きで、これが大きな流れとなっているわけではないんですけれども、でもこういう芽が出てきているのを潰してはいけないと思うんです。なので、この芽を育てていくというか、これをさらに花のように開いていくことが必要だと思うので、今がチャンスだと思っています。
 ただ、いきなり移住と言ったってそれは無理なので、ステップアップをしなきゃいけないということで、まずはやはり伊豆に来てもらって、静岡県に来てもらって、ここのよさ、ワーケーション、長期滞在に過ごして、こういうところに来たら空気もきれいだし、景色もきれいだし、海もきれいだし、山もいいし、富士山も見えるし、温泉もあるし、食べ物もおいしいしということで、やっぱりここで満足する。毎日コロナのことを気にしなきゃいけない東京の都心にいるよりは、こっちのほうがよっぽどいいやと思ってもらうことが必要だと思うんですよね。そういった面では、やはり今、首都圏在住者の意識は変わってきているので、集中的かつ精力的な取組が必要だと。
 静岡県庁も各行政の方も、いろいろな形でアプローチ、プロモーションしていることは承知しております。せっかくの機会なので、東京事務所経由のアプローチにとどまらず、例えば首都圏所在法人との取引パイプが太い静岡銀行を通じて、首都圏の取引先企業に働きかけるとか、あるいは、静岡県内にオフィス、支店を構えている、首都圏に本部のある企業に一段とプロモーション活動をするとか。やはりここは、行政任せではなくて、行政と産業界が一体となって誘致に努めていく必要があるかなと思っています。
 あわせて、観光の現場においても、実際に受け入れられるための設備を整えなければいけないと思いますし、楽しみ方のメニューも開発していかなきゃいけないと思っています。長期滞在、ワーケーションをしてくれる人が増えてきたということになれば、次のステップとして、静岡県内への移住を働きかける。これがうまくいけば、県内からの人口流出に歯止めをかけられると思っています。
 例えば、東京を起点としたときに、東京から100キロ、あるいは公共交通機関で1時間というところはどこかと円を書くと、静岡県では熱海となります。山梨だと甲府です。長野は軽井沢です。栃木は日光鬼怒川です。そうすると、この円を見たときに、例えば日光鬼怒川にしても、軽井沢にしても、甲府や石和にしても、どうひいき目に見なくても、熱海、伊東のほうがいろいろな面で優れている要素はいっぱいあるわけです。なので、そういった面では、例えば仮に移住までいかなくても、ここに長期滞在して、どういう働き方になるのか分かりませんけれども、週1回は東京のオフィスへ行って、あと4日は熱海、伊東で仕事をすることが可能なわけです。しかも、新幹線は30分に1本走っている、1時間以内で丸の内まで行けるわけです。
 じゃあ、それが例えば、同じ100キロ圏内で日光鬼怒川とか甲府でできますかといったら、もっと時間がかかる。そういう面では、やはりこの首都圏からの近さという地理的メリットを生かしていけば、もっと人は集まるという気がしています。今がチャンスだと思います。
 それからもう1つ、私どもが注目しているのは食べ物です。やはり静岡県産の食の魅力は、大きな武器ではないかなと思っています。先ほどの首都圏の居住者向け300名のアンケートで、伊豆旅行で楽しみにしていることは何かということを挙げたところ、この緑のところです。飲食店の食事、宿泊施設の食事が結構多い。あとは、いわゆる自然、景観とかですね。それから温泉とか、海の美しさとか、こういう自然現象です。その次にくるのが食事なんですよ。ということは、静岡県民は、ふだん当たり前だと思って食べているものが、実は首都圏の方からすると、おいしいというか、舌感覚の違いみたいなのがかなりあるんじゃないかという気がするんです。
 それで、実はこのグラフは、去年の10月、ラグビーのワールドカップがエコパスタジアムであったときに、外国人の観戦客300名に、私どもの大学で取ったアンケートの結果です。インバウンド需要の回復は少し先になると思うんですけれども、外国人も静岡に来る楽しみ、要するに、ラグビーの試合の観戦以外に静岡に来ることで何が楽しみでしたかと聞いたところ、やはり食べ物なんです。もちろん、温泉とか富士山はありますけれども。実際に満足しましたかと、どうでしたかと聞いたところ、この赤い部分ですけれども、食べ物がおいしいと答えた人が14%いる。ほかには気候が温暖だとか、人が親切だとか、風景が美しいとかってあるんですけれども、やっぱり食べ物なんです。
 ということで、静岡県民が何げに普通に食べているものも、実は他県の人から見ればかなりおいしいということです。これも私がこの場で言う話ではないですけれども、静岡県では県内で生産、収穫される農水産物が多様多種で、かつオンリーワン的な食材も結構あります。静岡県民の健康寿命は、全国の中でも相対的に高い。それは、県産の食材の摂取と素朴な調理方法が長寿につながっていることもあるんではないかと、そういったことを県外に情報発信していくことが必要ではないかと思っています。
 実は、伊豆半島の下田や伊東、あるいは清水ですね。清水と似通ったロケーションにあるのが、実はスペインのサン・セバスチャンというところなんです。ここは人口17万人のスペイン北部、大西洋に面した町なんですけれども、10年前までは単なる港町です。下田のようなイメージです。現在は、この町に年間70万人以上の観光客が来て、世界の美食の都になっています。
 何でこんなことになっているかというと、ここに州と市が運営して地元企業が出資する料理専門大学をつくったんです。これが大学のキャンパスなんですけれども、調理実習室みたいなところなんですけれども、ここでシェフを養成する、それを世界中に供給する。また、その弟子がここに来て勉強すると、こういう流れで、いわゆる科学的に裏づけられた料理を出していく。単に経験値だとか、舌感覚ということではなくて、観光客もここの食事はおいしいということになっているところです。
 これが静岡でできないかということで、実は私ども、内閣府まち・ひと・しごと本部からの補助事業で、静岡ブランド健康食というプロジェクトを今、展開しています。静岡市内を中心に複数の飲食店の御協力を得て、静岡県食材を使用した健康によい食事の開発に取り組んでいます。来年4月ぐらいから商品化できるかなと思っていますが、健康食というと、何となく病院の入院食のように思われる方もいらっしゃるかと思いますけれども、そういうことではなくて、いわゆる健康な人が、見栄えのよいおいしい料理、なおかつバランスが取れてカロリーが低いものを出していく、もちろん静岡県食材を使うと。こういうことで、一つ観光の武器にならないかなと、今、チャレンジをしているところでございます。
 それから、もう1つは公共機関の利便性確保。ここはやはり、乗り継ぎの問題なんです。例えば新幹線で駅に着いても、そこから行く電車が分からない、あるいは本数が限られていることもあります。やはり新幹線、あるいは在来線とシームレスにつながっていく交通網の整備が必要です。その点では、現在、伊豆東海岸、それから静岡市内で実証実験が行われているMaaS――モビリティ・アズ・ア・サービス、これが有効だと思っています。ただ、このMaaSには、当該地域内で交通手段を提供している全ての事業者が参画しないとシステムとしての効果が出ない。そういった面で、伊豆の場合は、伊豆急、JR東日本、東海バス、全部入っています。なので、うまくやれば効果が出る。
 ところが、静岡県東部、中部、西部においては、問題はJR東海です。JR東海がここに参画してこなくて、今も静岡鉄道が限られたところでやっているので、本当に静岡県全体の交通整備を考えるのであれば、JR東海を巻き込んでMaaSのようなことをやれば、利便性の確保はできるかなと思っています。実際に、首都圏の居住者のアンケートでも、他県の観光地と比べて伊豆で一番物足りないものということで、公共交通機関の利便性案内というのが出ています。
 海外はどうなっているか、スイスの例を1つ御紹介します。スイスは幹線鉄道の車両の出入口にディスプレーがついてるんです。次の駅、例えば静岡だとすれば、静岡駅に着く直前に、静岡駅から乗り換えできる全ての交通機関のダイヤがこのディスプレーに表示されます。例えばこれが新幹線だとしたら、在来線もそうですし、静鉄のバスもそうです。高速バスも全部出ます。なので、利用客がこれを見れば、乗り場も出ていますので、どこから何に乗ればいいかすぐ分かる。
 日本はどうかというと、御承知のとおり、次は静岡、静岡、こちらのドアが開きます、これだけの表示。これでは全然、交通機関の利便性、それから消費者、観光客にとっての利便性提供にはなっていない。やはりこういったことをやっていかないと、ヨーロッパはかなり進んでいるんですけれども、それによって観光客を集めている。要するに観光客の、車から公共交通機関へのシフトを促しているということで、これは観光政策だけではなくて、地域住民においても、こういうことをしていくことが、将来的には必要かなと思っています。
 最後、まとめということで、まず対象は日本人の個人です。しかも近場なので、今、御紹介させていただいた静岡県民、それから首都圏、場合によっては名古屋圏、こういうところで、どういう静岡県への観光ニーズがあるのかをきっちり把握した上でマーケティングしていくことが必要だろうなと。そのターゲットとなる層を決めなきゃいけない。高齢層でいくのか若年層を観光客と引っ張るのか。それによって、当然、高齢者の観光ニーズと若い人の観光ニーズは違うので、どっちでやるかもきちっと明確化してやっていかないと、なかなか思うように人は来ないと思います。その延長線上で、情報発信だとか、さらには先ほど言いましたワーケーションだとか、長期滞在者も取り込んで、静岡県にとって悲願となっている県外への人口流出に歯止めをかけることが、最終的にウィズコロナ、アフターコロナを見据えた観光戦略の終着点、目的地と私は思っています。
私の説明は以上にさせていただきます。どうもありがとうございました。

○藪田委員長
 ありがとうございました。
 以上で、八木様からの説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 委員の方にお願いいたします。
 質問はまとめてするのではなく、一問一答方式でお願いいたします。
 それでは、御質問、御意見等がありましたら、御発言願います。

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静岡県議会事務局議事課

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