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委員会会議録

委員会補足文書

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令和2年11月情報通信技術利活用特別委員会
サイボウズ株式会社営業本部 蒲原大輔氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/26/2020 会派名:


○蒲原大輔参考人
 サイボウズの蒲原と申します。本日はこのような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。
 お手元に事前にお送りさせていただきました資料が配付されていると伺っておりますけれども、幾つか今回の補足として追加させていただいたスライドもございますので、詳細につきましては、こちら画面のほうに共有させていただきます資料でお話ができればと思っております。
 今回、システム内製文化の醸成によるデジタル化の推進が1つ目のテーマになってございます。デジタル庁ができるところもございまして、自治体においてもデジタル化をどう進めていくかが大きな話題になってございますけれども、その中で外注してシステムをつくってもらったり、保守をしてもらったり、どうしても外注に依存してしまう傾向がこれまで自治体ではあったんですが、最近、一部自治体でシステムの内製――職員が自らシステムをつくるといった新しい文化を取り入れる動きが起こってきておりますので、それについて本日は事例を交えて御紹介させていただきます。
 私自身がもともと自治体の職員をしておりました関係で、自治体の組織であるとか人事運営の問題解決をしていきたいと考えているところもございまして、日々、研究や事業の提案をしているところでございます。そういったトピックについても御紹介、意見交換ができればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 まず、簡単に自己紹介させていただきます。現在、サイボウズ株式会社の営業本部におりますが、自治体の人事に新しいスキームを取り入れるための取組を始めようと思っておりまして、一般社団法人の設立を準備しています。
 職歴としては、2011年に品川区役所に入庁いたしまして、そこから約5年7か月ほど自治体職員として勤務をしておりました。エクセルとかアクセスといったツールを使って、庁内の業務効率化に取り組んでいたんですけれども、なかなか既存のツールだけでは業務改革が思うようにいかないと思っていたところ、偶然、サイボウズの提供しているツールを知りまして、転職するに至った形でございます。
 サイボウズに入社して以降も、2018年にコード
・フォー・ジャパンの事業で、地域フィールドラボと呼ばれる民間企業の社員を3か月間自治体に派遣する事業があるんですけれども、そのスキームを活用しまして、今、私が住んでいる自治体でもあるんですが、鎌倉市役所に働き方改革の推進をするフェローとして派遣されております。このような形で官と民を行ったり来たりしながら、自治体のデジタル化であったりとか、より自治体職員が生き生きと働ける環境づくりをしていきたいということで活動しています。
 次に、簡単に弊社サイボウズ株式会社の御紹介をさせていただきます。
 事業内容といたしましては、スケジュールの共有ですとかメールの送信といった機能をパッケージに備えているグループウェアという製品があるんですけれども、その開発、販売、運用をしている会社でございます。もともとは愛媛県松山市にて3名で創業したんですけれども、現在は東京、大阪を初め国内に多数の拠点を構えています。
 もしかすると、働き方改革という文脈で弊社のコンテンツを御覧いただいたことがあるかもしれません。以前、キントーンというツールの広告を都内の主要駅に出していた時期がございました。また、「がんばるな、ニッポン。」ですとか、「働き方改革に関するお詫び」という形で日経新聞の一面広告を掲出したり、単純にITのツールを提供するだけというよりは、働き方そのものをどう変革していくべきかを、世の中に問いかけるといったことをやらせていただいております。
 その中で、私自身の役割としましては、行政のデジタル化を支援していくというミッションになっております。
 ノーコードという単語がございますけれども、このノーコードが、最近ようやく新聞の記事にも取り上げられるようになってきているんですが、ここはデジタル化を進めていく上で有力な選択肢になってきておりますので、今日はこのノーコードという比較的新しい概念を御紹介できればと思っております。
 お断りさせていただきたいのが、この場は弊社のプロモーションの場でないことは重々認識しているんですが、ノーコードツールの一例として弊社の製品を一部御紹介させていただく部分がございます。これにつきましては、あくまでも一例として捉えていただき、御容赦いただければと考えております。
 まず、行政デジタル化の問題を解決するノーコードについて話をさせていただきます。
 新型コロナウイルス以降、一気に行政にノーコードが浸透しつつあると感じております。
 こちら、SNSのツイッターから2つほど画像を抜粋させていただいております。大阪府ではコロナウイルスの感染拡大に伴いまして、患者が増えるに従って保健所の業務のパンク寸前になってしまう事態に陥っておりました。そこで、ノーコードツールを用いて、大阪府の職員が自らこの問題を解決するシステムをつくって乗り越えたと。これを吉村知事から発信していただいたという流れになっております。
 埼玉県も同様に、保健所あるいは宿泊療養施設の混雑とかの業務負荷が問題になっていたんですけれども、これをノーコードツールを用いることによって解決していく取組が進んでおります。
 このように、なかなか自治体の首長から直接発信される機会がなかったんですが、今回、立て続けに府知事、県知事からPRしていただく形になりました。これによって、ノーコードの概念や効果が一気に行政にも浸透しているのかなと考えております。
 弊社のノーコードツールを導入された団体の数ですが、2019年は、神戸市役所、市川市役所、高山市役所の3団体のみだったんですけれども、今年に入ってからは、厚生労働省のような中央省庁、それから大阪府や神奈川県のような都道府県にも広がってきており、これはあくまでも弊社の実績ではあるんですが、着実にノーコードが普及していると感じております。
 そもそもノーコードとは何かという説明に入る前に、ここ数年の自治体の状況の変化をスライドにまとめてございます。ここ10年以上職員を一貫して減らし続けている一方で、社会課題の増加に伴って行政の仕事は増え続けております。今後も将来の人口の減少に備えて職員数は少数精鋭を維持していく自治体が大半ですので、何とかICTツールを活用して業務を効率化していきたいといったニーズが非常に高まってきております。
 そのような中、2017年から2018年頃にRPAブームと呼ばれる事象が起こっておりました。このRPAはロボットによる業務の自動化を指しております。例えば、エクセルから別のシステムに情報を書き写すといった単純作業を、パソコンの画面の中にロボットがいるイメージで、人が今までやっていたものをロボットにやらせて自動化することができるソリューションがございます。このRPAやAIといった単語がバズワードに一時期なっておりまして、自治体の業務を改革していく上での切り札という位置づけで検討されていました。
 しかし、そもそも行政の事務はまだまだ紙が多くあります。この紙からパソコンに書き写すところはRPAで行うことはできません。人の手を介す必要がありますので、まずはこの紙をなくしていかないと、RPAを導入しても、そのポテンシャルをフルに生かし切れないといったお悩みに直面する自治体が多くございました。そこで紙でやっているものをデジタルに持っていくところで、ノーコードツールを使えばいいのではないかという御相談が弊社にも増えている状況でございます。
 今、デジタル化と申し上げたんですけれども、なぜノーコードが必要か説明するために、現在の行政機関におけるデジタル化の悩み事を簡単に御紹介させていただきます。
 まず、そもそもシステム化を図っていく上で大きく2つの手法があります。1つは外注する。もう1つは内製――職員が自らつくるという方法があるんですが、両方とも今から上げる問題を抱えております。
 まず、外注についてですが、自治体の行政事務においては非常にニッチな業務が多いです。ですので、例えば紙やファクスを使っている仕事をシステム化するために、市販されているパッケージソフトを買ってこようと考えたとしても、そもそも市場に存在しない業務が非常に多くございます。ですので、外注してゼロからベンダーにつくってもらうという、いわゆるスクラッチ開発と呼ばれる手法ですが、こういった発想になります。
 しかし、私自身も前職では産業振興の部署にいたんですが、例えば事業者向けの助成金事業は年間の申請件数が数十件とか、少ないものだと数件といった小規模な事務が非常に多いです。この小規模な業務に対してゼロから開発を外注する予算を確保するのは非常に財政当局の査定ハードルが高く、そもそも予算が取れないといった問題がございます。このように外注を選択しようとすると、市場のパッケージソフトを買うこともできないし、スクラッチでゼロからつくることも難しい現状があります。
 このように、外注という選択肢が難しいとなると、次に、今自治体で使えるツールを用いて内製をしようといった発想になってまいります。そうすると、内製で使えるツールの代表格がエクセルですが、表計算ソフトはあくまでも表計算ソフトであって、業務システムではないので、業務システム的に使い込もうとすると、どうしても関数であるとかマクロと呼ばれる少し複雑な設定をしていく必要があります。しかし、こういった複雑な設定をしてつくったシステムは、一時期はうまくいくんですけれども、自治体の人事運営においては、数年おきに担当者が移動するジョブローテーションの人事慣行がございます。そうすると、つくった本人がほかの部署にいってしまうと、引継ぎができなくなるといった困難を抱えております。したがいまして、外注にしても、内製にしても、なかなか現在使える武器ではデジタル化が思うように進まないといった課題に直面しているのを弊社としても日々感じております。
 そこで、ノーコードでこれらの問題を乗り越えようという発想になってまいります。従来、システム開発と申しますと、プログラミングという専門知識を用いて構築するのが一般的でございます。したがいまして、なかなか自治体の職員が自らプログラミングをして自分たちが欲しいシステムをつくるのは非常にハードルが高い現状がございます。
 一方、例えば弊社サイボウズが提供しているキントーンというノーコードツールですと、ドラッグ・アンド・ドロップのような簡単な操作のみでシステムをつくることができます。プログラミングすることを一般的にコードを書くと言うんですけれども、このノーコードツールはコードを書かないのでノーコードと呼ばれております。現場にいらっしゃる職員さんは業務のプロであると考えています。この業務のプロである現場の最前線の職員が自らデジタル化に必要なシステムをつくれるので、先ほどの問題を乗り越えることができるといったトレンドが来ております。
 従来の内製とノーコード開発を比較してみます。従来の内製では、表計算ソフト等を使う形になるんですが、やはり業務システムとしては機能が不足しております。一方のノーコード開発というツールでは、業務システムをつくるためのツールでございますので、自治体が業務を進めていく上で必要な機能を網羅したものを現場でつくることができます。
 次に、従来の外注の手法であるパッケージの導入であるとか、スクラッチ開発と呼ばれるゼロから開発を外注する手法との比較になります。自治体には単年度予算主義の原則がありますので、例えば外注したいとなった場合には、前年度から予算要求をして、やっと今年度になって発注ができる形になりますので、とにかく時間と費用がかかります。時間と費用をかけて導入するんですけれども、そのシステムを少し使いやすいように改修したいとなった場合には、また改修の予算を来年度に向けて取る必要がありますので、自分たちで自由に直すことができない、システムを改善し続けるサイクルが非常に遅くなってしまうといった問題がございます。
 一方のノーコード開発ですが、職員が自らシステムをつくれるという特性がございますので、ライセンスさえ持っていれば、素早く低コストに開発や改善サイクルを回すことができる形になります。従来の手法ではデジタル化の壁があったんですけれども、ノーコード開発による内製――職員が自らつくることを手法として取り入れることによって、現場レベルでのデジタル化が加速されます。
 具体的にどのような機能を持つシステムがつくれるかを説明させていただきますが、各社が出しているノーコードツールの製品特性によっても変わってきますので、あくまでも弊社サイボウズが出しているツールの一例であると捉えていただければと思います。
 例えばデータベースですが、自治体の業務においては紙の台帳があったりとか、エクセルにデータを管理していたりとか様々な場所にデータが分散しています。そこで、データベースをノーコードでつくって、データの一元管理あるいは複数の部署間での共有を行うことができます。
 また、自治体においてはデータの分析であるとか集計を行うシーンが非常に多いんですけれども、当然、集計やグラフ作成を自動化することが可能です。
 次に、プロセス管理と呼ばれるものがございます。これはほかの部署に対して作業を依頼したりであるとか、このデータはどの部署の人が見ていいよとか、この人は見ちゃ駄目ですといったアクセス権限を設定できる機能を持っています。
 最後に3点目、コミュニケーションということで、チャットのような画面イメージが映っているかと思うんですけれども、職員同士でのやり取りをノーコードツール上で行うことができます。
 弊社ではこのデータベース、プロセス管理、コミュニケーションをチームで仕事を行う上での3要素と定義しているんですけれども、この3要素が備わったシステムを自分たちが手元でつくることができるのがノーコードの特徴となっております。
 ノーコードツールを用いていきますと、何でもつくれますので、自治体によってつくっているシステムは千差万別になります。その千差万別なものを大きく3つの方向性に分けたのがこちらのスライドになります。
 1つが省内業務のデジタル化ということで、庁内に存在している紙やファクス、エクセルのようなものを使っている非効率業務を改善するためのプラットフォームとしてノーコードを活用しています。こちらは、最近、神戸市が日経新聞の特集でも取り上げられていましたけれども、この後、御紹介させていただければと考えております。
 2つ目が行政サービスのデジタル化になります。最近、LINEから各種手続の申請ができるとか、ウェブフォームからオンライン申請ができますよといった取組が増えております。
 また、3点目、関係機関との情報共有化ということで、こちらは厚生労働省が使っている使い方になります。ノーコードツールは、いわゆるクラウドサービスで提供されていることが非常に多いです。クラウドサービスの特徴は、インターネットに接続できればアクセスできるので、例えば厚生労働省は全国1万以上の医療機関との情報共有基盤としてクラウドサービスを用いています。そのように自治体と自治体を取り巻く各種関係者との情報共有も、現在はメールやファクスという情報共有がしづらい方法が多いんですけれども、こういったものも、ノーコードツールを用いることによって、スムーズな官民連携を実現する事例も出てきています。このような形で、自治体の業務における様々なシーンとして、対市民、対庁内、それから対関係機関で活用できる事例が出てきております。
 ここまで簡単にキントーンでシステムがつくれると御紹介しましたけれども、具体的にどれくらい簡単にできるのかを一度御覧いただいたほうがイメージ化しやすいかと思いますので、御紹介させていただきます。
 なお、重ねての御案内になりますけれども、あくまでもこのキントーンは一例として御認識いただければと考えております。
 こちらがノーコードツール上で、システムをつくるための画面となります。
 例えば職員向けの研修を実施して、その研修のアンケートをいまだに紙で集計されている自治体が非常に多いんですけれども、このシステムを使ってデジタル化して効率化していきましょうというシナリオで御紹介いたします。
 例えばこの研修アンケートアプリとシステムの名前を決めます。そうすると入力画面をつくれるんですけれども、例えば左側に文字列や数値といった様々な種類の項目がございます。アンケートを実施したいとなった場合は、例えば研修を受講した日付を回答する方に入力してほしいと思いますので、日付という項目を配置していただくと、カレンダーから日付を選択できる項目を追加することができます。次に、受講した職員の氏名を書いてほしい場合には、文字列という項目を配置しまして、自由に名称を変更することができます。この繰り返しでドラッグ・アンド・ドロップと簡単な設定変更の流れでシステムをつくっていくようになります。
 例えばどの研修を受講したのかを回答してほしいシーンがあると思います。そういった場合には、ドロップダウンを配置して、受講した研修の種類と設定して、下に選択肢をつくることができます。例えば接遇研修ですとか財務会計研修のような形で選択肢をつくることができます。
 そして、この研修の感想を書いてほしい場合には、文字列の複数行といったものを配置すると、フリーテキストで感想を入力できるようになります。
 添付書類も一緒に出してほしい場合には、添付ファイルを貼り付けると、最大1ギガバイトまでであれば、PDFであれ、画像であれ、何でも貼付けができる場所をつくることができます。非常に簡単ではあるんですけれども、このように作成をして、公開ボタンをクリックすると、これだけでこのシステムを使い始めることができます。
 今、多分3分ぐらいでつくったと思うんですけれども、こういった簡単なシステムをつくるだけでも、外注しようとすると、予算要求しなければとか、仕様書を固めて調達しなければといった形で非常に時間がかかるんですけれども、こういったノーコードツールを用いると、プログラミング経験のない現場の職員さんが自分でシステムをつくることができますので、現場で素早く業務改善を行うことができます。
 今日はあくまでも概要だけ御紹介できればと思っておりましたので、これ以上の御説明は差し控えますけれども、このようなイメージで、現場にいらっしゃる職員の方々が自分でシステムをつくれるところにノーコードの特徴がございます。
 ここからは神戸市の事例を御紹介させていただきます。
 最近、日経新聞にも、職員総SE化で挑むDXといった記事が出されておりました。こちらは御覧になった方も多いかなと思うんですけれども、弊社のノーコードツールも活用しながら、神戸市ではDXを進めておられます。
 神戸市がすばらしいのは、単純に最新のシステムを導入したからうまくいっていますという形ではなくて、DXを支えるアナログな部分である、組織の体制とか、民間から人を連れてきたり、コミュニティー化されたことが成功要素になっておりますので、そこを中心にお話しできればと思います。
 神戸市は弊社サイボウズと連携協定を締結しているんですけれども、その目指すところとしましては、内製文化の醸成となっております。下にございますのが神戸市の組織体制を簡単に表現した図になります。情報化戦略部という部署が全庁のデジタル化を推進している部門になります。この部署がノーコードツールを活用して現場の業務改善を支援するスキームになっております。この情報化戦略部には民間人材が多数登用されておりまして、デジタル化専門官といった名称で民間のスキルのある方が入っておられます。
 今、簡単に内製文化を目指すと申し上げたんですけれども、蓋を開けてみると難しいことがございます。神戸市はこの難しい部分をどう乗り越えるかというところで面白い戦略をつくられています。
 こちらの図を御覧になったことがある方も多いかなとは思うんですけれども、マーケティングにおけるキャズム理論と呼ばれるもので、新しい製品が市場に投入された際の消費者の反応を5つの区分に分けて説明しているものになります。
 中央にアーリーマジョリティーであるとかレイトマジョリティーという形で大きく山になっているところがあると思います。こちらが全体の68%を占めるんですが、マジョリティーと呼ばれる多くの方々は、新しい製品が市場に出てきたときにすぐには買ったりしない方々を指しています。この方々は、新しい製品を率先して買うというよりは、先に買った方々の反応を見て、良さそうであれば自分も買うといった購買行動をする方々になります。
 逆に、イノベーターとかアーリーアダプターといった全体の約15%に該当する方々は、例えば新しいスマートフォンが発売されたとすると、そのストアに行って列に並んででも早く買おうという購買行動を起こす層になります。
 このノーコードツールを用いた内製文化の醸成についても、これと全く同じことが当てはまることを神戸市の情報化戦略部では考えておられます。いかにノーコードツールがいいものですよと庁内に発信していっても、それを受け取ろうとする職員の方々は、必ずしも好意的な反応ではないんですね。ただでさえ仕事が忙しいのに、そんなえたいの知れないツールを用いて失敗したら嫌だという心理が働きますので、多くの方々はノーコードツールを触ってみようという行動はしないことが多いです。そこで、全体の15%であるイノベーターであるとかアーリーアダプターの方々は、新しいツールを用いてでも業務改善していきたいといった考えを持っていらっしゃるので、まずはこういった職員と一緒に情報化戦略部としてタッグを組んで成功事例をつくり、それを庁内に発信していくことによって、多数派のマジョリティーを巻き込んでいこうといった戦略をつくられております。
 最初の事例として、保健福祉局保健課でノーコードを用いた業務改善事例を創出していただきました。
 次に、全庁展開フェーズということで、ここからが非常に重要ですけれども、モチベーションの高い方々と業務改革事例をつくったとしても、自治体様は縦割りの文化がまだまだ残っているところが多いので、放っておいてはなかなか優れた取組が横に広がっていかないところがあります。そこで、神戸市では庁内広報に非常に力を入れていまして、例えばDESIGN OUR WORKという庁内向けのブログメディアを立ち上げて、そこで保健課のノーコードでの成功事例をどんどん掲載して発信していくといったオンラインの施策が行われています。
 また、KOBE GovTech見本市という庁内イベントを企画して、関係者にプレゼンテーションしてもらうことによって、ノーコードによる業務改善事例を多くの方に知ってもらう機会を多数創出されています。このように非常に地道な取組ではあるんですが、庁内広報に力を入れていきますと、いろんな部署に業務改善に対する関心が高い職員さんがいらっしゃいますので、その方々が刺激されて、私たちもノーコードで業務改善したいですという声が集まるようになってきます。そのタイミングで研修やワークショップといった事業を展開することによって、全庁に内製スキルの向上を図っています。
 さらに、神戸市では神戸市の中で完結せずに、周りの周辺5自治体を巻き込んでこういったワークショップを業務時間内に開催されています。このように自治体の壁を超えてコミュニティー化を図っていくことによって、多くの自治体に共通している業務がございますので、ノウハウの共有であったり、お互いに刺激し合いながら成長していくといったモデルを構築されています。
 そのほか、組織風土や人事を考えていかないと、なかなかチャレンジングな風土がつくれないので、ここもかなり積極的にされております。例えば民間人材からデジタル化専門官を積極的に登用したりですとか、あるいは業務改善コンペや民間主催イベントへの職員参加ということで、これは弊社サイボウズが企画している幕張メッセで行っているイベントに登壇して発表する機会をつくることによって、登壇している方はまだ23歳の若手職員ですけれども、若手でもどんどんチャレンジして、対外的に出ていけるんだというところを示しています。
 そのほか、組織に横串を刺すコミュニティーの立ち上げということで、神戸市ではKOBE TECH LEADERSというコミュニティーが立ち上がっています。これも非常に重要でございまして、日々、チャットでコミュニケーションしたり、集まって勉強会を開催する活動を通じて、部署の壁を超えてノーコードツールの活用であるとか、内製文化の醸成を進めています。
 神戸市では公用車運転日報アプリをつくられております。従来は公用車を運転した後に、職員は行き先や何キロ走ったかを紙で報告する必要がございました。この業務に年間5,000枚ほど紙を使っていて、非常に業務効率も悪いですし、紙を無駄にしている状況がございました。そこで、職員がノーコードツールを用いて公用車運転日報アプリをつくられまして、これによって年間5,000枚の紙がゼロになった事例が出てきております。これは神戸市の一部署で始まった取組ですけれども、ほかの約30の部署が同じことをしたいということで、今、この公用車運転日報アプリの神戸市内での横展開も進んでいます。
 このように内製文化をつくることによって、最初は各部署でスモールにスタートするんですけれども、汎用性があるものについてはどんどん横に広がって、全庁を巻き込んだ取組に拡大していくといったところが見て取れます。
 さらに庁舎関連情報アプリということで、神戸市が保有している庁内の各種施設の維持補修を毎月行っているんですけれども、そういった工事や修繕の情報も基本的には紙の台帳で管理されていました。どうしても紙ですとなかなか集計に時間がかかりますし、将来的にどれくらいコストがかかるかをぱっと把握できない問題もございます。これも職員さんがシステムをつくられて、簡単に集計ができたり、将来的な見通しも立てやすくなった事例も出てきております。
 弊社サイボウズと連携協定を締結したのは、2019年ですけれども、ノーコードツールにより既に300以上のアプリがつくられております。また、このノーコードを活用する職員の数も当初は10人ちょっとだったんですけれども、現在は、庁内広報や研修を積み重ねた結果、400人超にまで拡大しています。
 単純にノーコードツールを入れたらこれほど広がるという話ではなくて、あくまでもコミュニティーをつくったり、情報化戦略部が旗を振って様々な仕掛けを行った結果ですので、アナログな部分とデジタルが合致して初めてDXが成り立つことを感じていただけたのではないかと思っております。
 先ほど大阪府の事例を御紹介させていただきましたが、都道府県の事例ということで気になる方もいらっしゃるかと思いましたので、こちらも御紹介させていただきます。
 こちらはノーコード導入前の新型コロナウイルスの対応フローとなっております。基本的には感染者が発生すると、保健所の職員が感染者に電話で健康状態を聞き取って、それをエクセルにまとめて、府の担当職員に送る形になっていましたので、感染者が増えれば増えるほど保健所の負担が増える構造になっておりました。
 そこで、ノーコードを用いて大阪府の職員が構築を開始したのが今年の4月6日の話です。ここから約1週間でシステムをつくり切って、次の1週間で運用ルールを整備したり、各種保健所への周知を行ったりして、トータルで2週間で運用開始までに至ったというスピード感で動いています。従来のシステム開発の手法では、これほど短時間で稼働することは難しいんですけれども、ノーコードのスピード感と現場を巻き込んでシステム開発ができる特性を生かすことによって、こういった実績が出てきております。
 配付資料にはないんですけれども、デジタル化に成功する自治体の共通項を簡単にお話させていただければと思います。
 私が見てきた中で、自治体の方々がITによる業務改革に失敗するパターンが2つほどございます。1つが、そもそも業務改革を支援する部署がないパターンです。完全に業務の効率化は現場任せで、取りあえず残業時間を前年比10%減にしなさいとか、18時になったらパソコンはシャットダウンしますと強制的に落としていくなどしても、現場のデジタル化は進みませんので、一向に効率化しないですし、サービス残業も横行してしまうといったパターンがございます。
 次に、業務改革を支援する部署はあるんですが、ITの活用がうまくいっていない、IT人材がいないパターンがあります。この場合、業務量をコンサルに調査委託したり、業務量が多い業務についてはアウトソーシングするといった提案を各部署にすることはできます。したがいまして、アウトソーシングできる仕事については効率化に成功することができます。一方で、アウトソーシングで結構やり切った感があり、残った業務をどう効率化していくかが課題になっているんですけれども、IT活用が進まずに、残存業務は非効率なままいった構造が見て取れます。
 成功している自治体はどうかと申しますと、まず業務改革を支援する部署があり、そこにIT人材がいる。神戸市では民間から人材を採ってきています。この方々がITを導入するだけではなくて、コミュニティーを運営してみたりとか、地道に庁内広報をしたり、教育を展開したりといった草の根の活動を行うことによって、現場の部署に徐々にノーコードを活用する内製スキルが高まっていって、現場主導の業務改善が回り始めますので、ツールを入れたらよくなるという話ではなくて、組織の体制であるとか、人材の登用が重要であると考えております。
 ノーコード活用の肝どころをまとめさせていただいております。現在の状況として、市区町村に多い、例えば住基とか、生活保護とか、国民健康保険といった基幹業務については既にかなりしっかりと構築されたシステムが稼働しています。
 一方で基幹に収まらない周辺業務が非常に多いんですけれども、なかなかシステムが入っていなくて、メールやオフィスソフト、それから紙でやっているケースが多いです。ノーコードツールは基幹システムとして使うのは非常にハードルが高いんですが、簡単なシステムを素早くつくれるところに特徴がございますので、メールやファクス、オフィスソフトを使っている業務を巻き取っていくためのプラットフォームとして活用することができると考えております。
 ここまでは、自治体のDXの実例について御紹介をさせていただきました。
 最後に、補足的な内容にはなるんですけれども、私のほうで、今、取組を始めている内容を簡単に御紹介させていただければと思います。
 こちらに自治体の人事に関する内容についても独自に取り組んでいる内容がございますので、御紹介をさせていただきます。
 地方公務員カタリスト事業になります。私自身が自治体職員の出身ということもありまして、地方公務員の人事制度に対する関心が非常に高いです。レンタル移籍構想であるとかジョブ型公務員構想といった、幾つかの人事制度に関する提言を行ってきたんですけれども、これを事業化したのが地方公務員のカタリスト事業になります。
 私どもが感じております自治体の採用競争力に関する問題をお話させていただきます。自治体では民間企業との採用競争で非常に苦戦しているところが多くございます。まず、人材を確保する部分での苦戦としましては、日経新聞にも職員採用に苦戦する自治体が増えていますという記事が出ていたりとか、例えば北海道で合格者の5割から6割が辞退してしまう問題があります。
 一方、優れた人材の辞職も非常に進んでいまして、例えば広報分野で非常に活躍している職員であるとか、ふるさと納税の日本一を実現した職員であるとか、力のある職員が最近は次々と辞職しているといった状況があります。
 なぜここまで人材確保に苦戦したり、あるいは既にいる人材が離れてしまうのかを私自身の経験からまとめたのがこちらのスライドになります。
 正直申しまして、私が公務員になった頃は、まだまだ公務員イコール安定という意識を私自身も持っておりました。ここがある種、公務員になる1つのインセンティブだったのかなと感じているんですけれども、現在は官民ともに終身雇用という社会的前提が崩れている認識が広まっていると考えております。
 例えば奈良県生駒市の小紫市長も、自治体でも終身雇用は難しいと著書でおっしゃっておりますけれども、公務員だからといって終身安定ではない。さらに言うと、人生100年時代と言われる中において、60歳や65歳まで働いたとしても、その後、どうするのかという問題もありますので、今はどちらかというと、公務員であるといった所属によって安定を得たいという需要よりは、どこに行っても通用するスキルを身につけることによって生き抜く力をつけたいといった感覚が20代、30代を中心に広まってきていると日々感じております。
 そうなったときに、自治体においてはまだ画一的な人事異動で、強制的なジョブローテーションで、自分がやりたい仕事が必ずしもできない現状があります。
 一方、民間においては様々な職種がありますし、転職という選択肢もありますので、自分のキャリアをデザインしやすい特性がありますので、キャリアデザインのしやすさで、自治体は民間に水をあけられていると感じています。
 この地方公務員カタリスト事業は、この問題を解決するための取組として始めようとしております。自治体職員にプロフェッショナルという選択肢をと書いているんですけれども、私自身は前職で産業振興の業務に従事しており、産業振興のプロとして生きていきたいと当時は思っていたんですけれども、なかなかそういったキャリアを選択することは難しい。数年後には異動することが見えていましたし、異動先も、希望はもちろん出せるんですけれども、どこになるかは分からない状態でしたので、将来的に自分で生きていける市場価値がつくのかに不安を感じて転職したといった側面もあります。とはいっても、いきなりこのジョブローテーション、いわゆるゼネラリスト育成型の人事制度を完全にゼロにするのはかなり現実離れした議論かなと思っておりますので、折衷案としてカタリスト事業というものを考えております。
 例えば産業振興の主任をやって、次に税務の主任、それから福祉の係長といった形で、様々な部署を転々とするスキームはそのままですけれども、一方、カタリストとして週1日、他自治体の支援を行うことができるようにしたいと考えています。これによって、ほかの部署を転々としているんですけれども、週に1日だけはほかの自治体の産業振興のアドバイスをするという働き方をできるようにしたいという趣旨でございます。これによって、例えば所属している自治体において課長に昇進するときに、産業振興課長になりますというと、それまでほかの自治体を支援してきた経験も生かすことができますので、これによってその所属自治体にとってのメリットも出すことができると考えております。
 カタリストプラットフォームを一般社団法人として用意していきたいと考えております。
 カタリスト事業参画自治体というのが、この事業に共感して協力する旨を表明してくださっている自治体になります。この自治体では、カタリスト事業があるので登録したい人は手を挙げてくださいと庁内に募集をかけていただいて、例えばある職員さんがほかの自治体の支援をしたいです、この分野でプロになりたいですという表明をしていただきましたら、その方をこのプラットフォーム上に登録していく。この登録された職員のリストを見て、支援希望自治体が、この人に支援してほしいと指名をすると、我々事務局が間に入って両自治体の覚書の締結であるとか事務回りをサポートする。両自治体の合意が取れたら、その職員が週1回リモートで当該自治体の支援を開始するといったスキームを考えております。
 ここで、カタリストという言葉に込めた意味ですけれども、カタリストは触媒という日本語になります。カタリストは、ほかの自治体を支援するときに、単純に使い勝手のいい作業丸投げ先になってしまうと意味がないので、あくまでもその職員が持っているプロフェッショナルなスキルや思考法を支援先の自治体に移植することに注力することによって、支援先自治体自身の問題解決能力を上げていくという意味でカタリストと命名しています。
 ここで申し上げたかったことは、自治体における人材の採用競争力の問題は、少なからずこの人事異動が職員の思うようにならない、キャリアデザインができないところに根差しています。それによって人材が採れなかったり、今いる職員がいなくなってしまうと、各自治体のパフォーマンスが低下することにつながってしまいますので、このように自治体職員自体がキャリアデザインできる人事スキームを考えていく必要があるかなと考えております。その選択肢の1つとして、我々としましてはこのカタリスト事業を進めていきたいと考えております。
 私からのお話としては以上とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。

○落合委員長
 ありがとうございました。
 以上で、蒲原様からの説明は終わりました。
 これより、意見交換に入ります。
 委員の方にお願いいたします。
 質問はまとめてするのではなく、一問一答方式でお願いいたします。
 それでは、サイボウズ株式会社の蒲原様に質問や御意見等がありましたら、御発言願います。

お問い合わせ

静岡県議会事務局議事課

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