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委員会会議録

委員会補足文書

開催別議員別委員会別検索用


令和2年11月情報通信技術利活用特別委員会
一般社団法人コード・フォー・ジャパン コンサルタント 市川博之氏 【 意見陳述 】 発言日: 11/26/2020 会派名:


○市川博之参考人
 私は、一般社団法人シビックテックラボ代表理事、コード・フォー・ジャパンのコンサルタント、静岡県で唯一の内閣官房のオープンデータ伝道師などをやらせていただいています。静岡県裾野市生まれで、高校まで静岡県にずっとおりましたので、この辺をお手伝いしているところです。
 まず、データ利活用社会の到来ということで、世界最先端IT国家創造宣言という3年ぐらい前に出た国の施策の中で、一番重要なことは、今まで2,000年ぐらいヒト・モノ・カネ・データで資源併存する社会というところから、データの上で、ヒト・モノ・カネが活きる時代に変わります。これは、社会構造が変わってきて、データが一番のインフラとなるということが言われています。人についても、マイナンバーカードを含めて全ての情報とひもづいている社会になっている。物についても、アマゾンとかで買ったときでも、配送状況が情報共有されています。同じように、お金も電子マネー等を含めて全てデータの上でくっついている状態だということです。
 このデータというのが、20世紀より前で言うところの道路や鉄道、電気に当たる部分であって、データが大量にないと、人と金と物をつなぐサービスがつくれなくなる。データがきれいに整備されていないと、がたがたの道で人と物と金をつながなきゃいけなくなる。そういう意味でも、データや情報技術が一番大事になってきますと宣言の中にも記載されているところです。なので、しきりにデータ化、データ化と叫ばれています。
 国の計画でも、電子行政、健康・医療・介護、観光、金融、農林水産、ものづくり、インフラ・防災・減災、移動というほぼ全ての行政分野がデータ利活用で重点的な8項目と言われています。なので、自治体の職員さんとかでも、うちの分野はデジタル化、データ化は関係ないよと言ってくる方もいらっしゃるんですけれども、そんなことはなく、全ての分野に影響してくるものです。
 世界最先端デジタル国家創造宣言も昨年改定されました。ここでもデジタルガバメントの実現ということで、特に行政分野については、すぐに使えて、簡単で便利なものにするということで、開始から完了までの一連の手続を、前例や慣習にとらわれない形でイノベーションしていきましょうと、パラダイムシフトしていきましょうと。今までの延長線上で一部だけを早くするのではなくて、新しい方法を使いながら、やり方を変えていこうと。このコロナ禍では特にそういうことがたくさん起こっていると思うんですけれども、今までの常識ではない新しい形にしていくこと、それがソサエティ5.0時代にふさわしいデジタルガバメントと言われています。
 私の一番得意なところのオープンデータの話をしていきます。
 オープンデータって何というのは、いろんな自治体さんとか市民の方々にお話しするとき、最初に出てきますが、行政の透明性を高める、市民と一緒に地域経済の価値を出すということで、もともとアメリカでオバマ政権の頃にオープンデータは登場しました。日本も同じですけれども、行政が全ての行政サービスを一元管理していて、データを使ってできることがあるのにもかかわらず、できない状態になっていました。膨大なサービスを提供するという一方通行型で、インフラの維持は大変だし、人口減少していて税収はなかなか増えない、行政データは未活用だし、行政サービスは減らせない。行政が全てのサービスを行うことに無理が生じているということで、オープンデータが登場しています。
 見える化によって効果を発揮するということで、透明性や信頼性の向上につながったり、市民参加や公民協働の推進につながったり、経済の活性化や行政の効率化につながります。
 市民の力を活用した市民自治への道筋でもあります。市民自らが地域課題に対して課題解決サービスをつくっていける。行政、市民、企業のトータルで地域運営をしていくのが、オープンデータの1つの役割です。
 どういうものがオープンデータなのかというと、3つだけルールがあります。1つは、営利、非営利にかかわらず二次利用――誰でも使っていいということです。2つ目が機械判読と書かれていますけれども、要はパソコンとかスマホで使える形のデジタルデータにしてくださいということ。3つ目が無償で利用できるもの。だからいろいろなところで使えるのが大きな特徴です。
 静岡県は、県と県下35市町の全てのまちがオープンデータを出しています。これは5年間ぐらいかけて一緒にその政策をやらせていただいていて、ほぼ手弁当で、私がいろんな自治体さんへ行ってオープンデータ化していきました。
 次に、公民連携の新しい形としてオープンガバナンスという言葉もあるんですが、市民と自治体でつくり上げていくのがオープンガバナンスと呼ばれています。1つが行政の情報のオープン化と市民の情報を活用した課題への関与です。データという同じ土壌を見て皆さん判断しましょうねと。同じデータを見て、いい、悪いはそれぞれの判断なのでいいんですけれども、当然、市民より自治体の担当者のほうが情報量が多いので、判断できることは多いんです。そういうところも含めて、市民と自治体で同じデータを見て判断できるようにしていかないと、これから先、何か判断していくときに、市民は感情で来る、自治体側はデータで来るとぶつかってしまうので、そういうことをなくしていきましょうということです。
 もう1つ、シビックテックという活動が、大きく取り上げられています。市民とテクノロジーを合わせた用語で、テクノロジーを活用しながら自分たちの身の回りの課題を解決していこうという考え方です。もともとこれも行政サービスを使いやすくということで、コード・フォー・アメリカの人たちが始めたことです。アメリカも、当時、行政サービスが二、三時間待ちとかなのに、アマゾンとかはスマホ決済で買えると。この違いは一体何なんだということで、自分たちでつくりやすいものをちゃんとつくっていこうと始まったところです。こういう活動を日本に取り入れているのが私の働いているコード・フォー・ジャパンであったり、私はコード・フォー・ふじのくにという静岡県の団体の代表もやっていまして、実際に地域で活動を繰り広げているところです。
 ちなみに東京都の今年のテーマの中にもシビックテックが書かれていて、デジタル化するには市民側の協力も非常に必要だというので、いろいろな自治体さんが動いているところです。
 地域にはいろんな課題を持たれている方がいらっしゃって、NPOさんとかもたくさんおられます。その方たちもすごく頑張ってやっているんですけれども、今までと違うのは、補助金とは違う形で、住民と協力できる原動力になるのがオープンデータです。データを渡すことで、本当に対処しなきゃいけないところが分かったり、必要であればツールをつくることで、自分たちで課題解決ができていく。それが1つの自治体が持っているデータという宝物を市民側にあげて、活動を行っていく。ただし、全てのデータをオープンにはできません。個人情報は、自治体の人たちが政策立案をするのに使って、政策、行政サービスの形でデータを活用していく。どちらにしても、データが地域の血液となって、自分たちで使えるデータは自分たちで活用して課題解決していく。行政も施策を検討するのは、当然データを利活用して施策を検討していく。
 透明性とか信頼性が上がるとどういう効果があるかというと、皆さんは、静岡県の新型コロナの対策サイトは見たことありますか。これ、実は私がつくっているんです。東京都でつくられたオープンソースのサイトを利用して、静岡県版に改造しています。県の担当の方からも、静岡県内もコロナが増えてきているので、問合せが多くて、こういうところを変えられませんかと、毎日のようにメールでやり取りしています。これは1円ももらわずに、我々が市民活動としてやっているところです。4月に立ち上げたときは、1日5万から8万アクセスぐらいあって、それだけ自治体に問合せがあったのが、サイトをつくることで非常に減ったと。今、どういう状況なのかというデータを見られるサイトをつくることによって透明性が上がる。透明性が上がることによって県民一人一人が安心できるし、自治体も本業であるコロナ対策に力を入れて、電話応答から力を抜くことができた。
 また、私がお手伝いしている北海道の名寄市立総合病院の事例ということで、そこもオープンデータをそんなに出していなくて、私が行って、オープンデータの研修をしたところ、まず自分の管轄している部門からということでオープンデータを公開してくれました。その内容が、診療材料仕入れ単価と電力使用量だったんですけど、そんなデータを何に使うんだろうなと思っていたら、公開したことによって、ほかの業者の皆さんから、仕入れ単価を公開したことで連絡があって、年間の購入費用が100万円以上削減できるようになりました。なので、データはアプリで使うとかグラフを書くだけではなくて、透明性を示すものでもあります。こういうことはなかなか大きな自治体でないとできないんじゃないのという話もあるんですけれども、そうではなくて、小さな自治体でも、提供することによって価値を出せるのが透明性の1つのポイントです。
 市民参加と公民協働の推進というテーマですが、これは、デジタル化で結構有名な会津若松市の例です。会津若松市は雪の多く降る地域で、年間1,000件以上の除雪の問合せが来るんですけれども、除雪車がどこまでやったかは分からないんで、職員さんが実際に見に行って、その確認をすることが非常に多かった。それが非常に手間で、市民にも返事が遅くなってしまう。そこを除雪車にGPSをつけてデータを公開することで、どこまでは除雪が入っています、入っていませんと地図上で分かりやすく見られるようにしてあげた。この結果、問合せが減って、職員さんがそれに対応する時間をほかのことに充てられるようになりました。さらに、これをつくったのは地元のソフトウエアの会社で、これをつくったことによってその運営資金を頂いているので、今まで単に職員さんが除雪されているか見に行っていたのが、地域の産業の1つになってくる。こういったところでもデータを一緒に活用することで、市民も分かりやすく利便性が高まる、自治体職員さんの仕事も減る、地域の産業にも活用できる。こういうところも含めて、データの利活用で地域の人たちと連携してどうするのかが大事になってくるところです。
 市のホームページを見たら、いろんな情報が置いてあると思うかもしれないですけど、実際はホームページの下にコピーライト何とかシティとか書いてあって、サイトの情報は自分のまちの権利ですよと書いてあるんです。そうすると、誰も使えないんです。多分、自治体の人にこのサイトのこの写真を使わせてと電話をかければオーケーと言ってくれるんですけれども、例えば静岡県下35の市町にその許可を取ろうと思ったら、35回電話しなきゃいけないんですよね。そんなことを業者だったらやれないんです。
 スマートスピーカーは、いっぱいあると思うんですけれども、いろいろ質問すると、たいていの場合、ウィキペディアの情報が出てくるんです。うなぎパイって何と聞くと、ウィキペディアからの情報が出てくるんです。なぜかというと、ウィキペディアはオープンデータだからです。スピーカーで検索する時代が来たときに、ウィキペディアにない記事は世の中にないものと同じになってしまう。地元の有名なものとかがなかったことになってしまうんです。これは、この前、論文にも載っていたんですけれども、とあるまちでウィキペディアの記事をきれいに正しい情報に書き換える実験をしたことがあって、そのときに観光客の量が20%から40%増えた。皆さんも旅行へ出かけたときに、この辺りに何があるかなとグーグルで調べて、ウィキペディアの記事を見て大したことがなければ、そこへは行かない。そういうところも含めて、オープンデータは知られざるところでたくさん使われているということです。
 なので、我々もそういう活動として、沼津市で学芸員さんと一緒に文化財の記事をつくって、QRコードを設置しました。なぜかというと、看板は1個立て直すのに10万円くらいかかってしまうので、文化財課の人は予算がないので立て直すことがなかなかできない。しかし、発掘調査報告書は毎年更新しているので、その最新の情報がいつでも見られるように、QRコードを貼ることで、見られるようにしました。沼津市は日本で初めて文化財にウィキペディアのQRコードを貼ったまちとしてウィキペディアにも書かれています。
 同じく私の地元の裾野市でも、ウィキペディアを活用した情報発信の推進に関わる覚書を締結して、情報発信をして市民自らシビックプライドを高めるため、地元のものをしっかり記事に残していく活動もしています。こういうことで地元のオープンデータが増えていくことで、地元に行きたい人、検索した人が増えてくる。
 例えばグーグルで裾野市と検索すると、右側に、4行ぐらい説明が出てくるのですが、これはウィキペディアから取られているんです。ウーブン・シティの話が出たときに、裾野市のウィキペディアの閲覧数が一気に跳ね上がったんです。去年の秋ぐらいにあった、狩野川台風の再来だと言われた台風が来たときも、狩野川台風の閲覧数が40万ページビューぐらいあったんです。そのようにちゃんと情報が残っていれば見られるんですけれども、残ってなければ見ることができない。そういうところも含めて市民と協働しながら地域のものを残していくことで、当然、地域の価値を上げていくのもオープンデータの1つの仕事です。
 次に、経済の活性化、行政の効率化というところで、WELMOという九州のスタートアップの企業ですけれども、ミルモというサービスをしています。ケアマネジャーに介護の計画の依頼が来たときに、その人にあった介護施設を探すと時間がかかって、適切な施設を探すのに3日かかってしまったこともあったようです。それをオープンデータで介護施設の情報を出してもらい、この会社が検索できる仕組みをつくって、それを使って調べることで30分でできるようになる。ケアマネジャーも助かるし、スタートアップ企業の新しいビジネスにもなる。
 政府CIOポータルという、我々オープンデータ伝道師も関わっているサイトですけれども、公共データはプラスアルファで新しいビジネスになります。自治体が持っているデータはたくさんのビジネスのチャンスにつながっていることがある。そういうところも理解していただきながら、地域の活動の発展につなげていくのが大事です。
 ですので、実は、企業はオープンデータをたくさん使っています。例えば、ポケモンGOの裏のデータは、ゼンリンさんの地図ではなくて、オープンストリートマップというオープンデータの地図を使っているんです。これは地図のウィキペディアと呼ばれているんですが、みんなで地図をつくっていきます。
 ですので、ポケストップがどれだけあるかは、その地域に地図を整備してくれる人がどれだけいるかに関わっていて、例えば、静岡市とか裾野市だと航空写真をオープンデータとして出しているので、家の形とかも入力しやすくなっていて、そういうところは非常に発達している。そのように実はいろいろな企業さんがオープンデータを活用しながら、様々な事業をしています。
 さっきのミルモというサービスも、データがない町は使えないので、誰も使っていないからといってデータを出さないとそういうサービスの対象にならなくなる。そして、その地域はますますサービスがなくなっていく。データがないとサービスはつくれないので、データが公開されていない町ほど住みにくい町になっていく。企業もそのようなデータが使えることを知らなければ新しいビジネスチャンスがなくなる。そういう地域になってしまうと、活性化しようとしても何もできなくなってしまう。データの活用のベースとして、地域にデータがあるかがすごく大事なところです。
 私は総務省のお仕事で2017年度と2018年度にデータアカデミーというデータを活用した政策立案のプロセスづくりをやっていました。これは総務省の地域におけるビッグデータ利活用促進に関わる事業の請負ということで、データ利活用スキル習得カリキュラムと教材の開発をしました。開発した教材を活用した職員向け研修の実施ということで、この三、四年間で多分七、八十ぐらいの自治体にこの研修をやっていて、昨日も大阪の枚方市に行っていました。
 実際に、データ活用型公務員の育成もやっていて、自分たちで研修を実施して、自分たちで政策立案まで使っていきましょうというものです。課題を明確に設定して、その解決に向けてデータを活用した業務改革に取り組める研修を実施できる職員の育成。自立的に検証を可能とするということで、研修プロセスを設定できるガイドラインを作って、自立的、継続的に人材育成ができるような地域での運営・講師を含めた実証や広域自治体での活用などをやっています。
 静岡県内でも講師として既に裾野市の職員さんが何人か自分たちで研修できるようになっていますし、広域自治体の事例でも静岡県と一緒に賀茂地区の1市5町で移住定住のデータベースをつくるのにどうしていくべきかを一緒にやらせてもらったりしています。
 私がこの事業をやっていたので静岡県内で実証実験を結構行っています。もともと自治体の職員に何でこのカリキュラムを作ったかというと、データ利活用の負のループがあります。データを何に使っていいのか分からないから活用できない。活用できないからデータの整備もしない。データの整備をしないから蓄積されずノウハウが何も残らない。だから、勘と経験と思い込みで今までどおり対応している。これを昭和の時代からずっと繰り返していたのでそれをやめさせて、データ利活用の価値のループを逆転させたいと。ループを逆転させる突破口として、データ利活用の意味を知るということで、データアカデミーの研修をやっています。
 実際の課題を使って課題解決のため新サービスを活用する。費用対効果の向上、住民サービスの拡充などを含めてやってみる。データが使われるようになると使っていくデータを整備する、制度の整備にはどういうデータを出したらいいのか、このデータはどういう使い方をしないといけないのかなど、自治体の中の整備が進む。裾野市とか、静岡県の情報化推進計画も手伝っていますが、どんどんデータ整備が進められるようにやっていく。これが蓄積されると次の担当にも使ってもらえるようになる。そこも含めてぐるぐる回していけるようにやっているところです。
 政令指定都市から1万人未満の町まで裾野市とか、賀茂地区でも研修をやっています。政策でアウトカム――価値を出すには適切な目標と課題設定が必要ですけれども、目標をつくるときにはデータも必要ですと。データ分析自体は政策ではありません。データ分析をすると事実が分かるだけでそれをどう反映させていくのか。政策をつくるときに、そこには血の通った人がいるので、AとBの案があるときに、Aのほうが価値が高いけれども、それは気質として地元の住民とあうのかも含めて考えてもらわないといけない。データが全て決定するのであったら、自治体の職員は要らなくなってしまうがそうではない。現場のことを加味した上でどう政策として決めていくのかを学んでいただいています。
 データ分析のスキルを上げるとなると、エクセル講座とかもあるんですけれども、ツールの使い方ではなくて、課題解決のプロセスとして覚えてもらっています。
 なので、7つのステップとして、課題と仮説を立て、データを確認し、分析手法を決定する。自分でエクセルとかを使えるんだったら自分でやる。情報部門の人にやってもらわないとできないとか、統計部門の人の力が必要という話であれば庁内で分析する。大学の先生とかに手伝ってもらう必要があれば外部に分析してもらう。まず、課題の設定と分析対象を決めないと、これをこういうふうに分析してほしい、多分こういう結果が出ると思うんですというのがないと外部の人にも委託できない。
 私も大学の教員をやっているのでよく話に出てくるのは、多分、うちの町は課題があると思うので何か分析してみてくださいと、課題も何もなく丸投げして委託されそうになることがあるんですけれども、そういうのは何も出てこないんです。現場にいるからこその課題感とかを含めて考える力をつけていかないといけない。
 自分が仕様書を出したので、結果を評価するのは大事です。結果として、100人いることが分かりましたではなくて、それは分析対象が1万人中の100人なのか、200人中の100人なのかは当然違います。評価をちゃんとして政策立案する、費用対効果を見ることをプロセスでしっかり覚えさせていくことで、いろいろな計画を立てるときに自分たちで考えてやることができるようになる。
 よく計画を立てるときに、コンサルに丸投げしてしまうのをたくさん見ていて、市町村の名前を変えたら、ほかの町でも全く同じように見える金太郎あめみたいな計画は幾ら立ててもしょうがないので、自分の町のために何が必要なのかをしっかり考える職員を増やすのがデータ利活用の本質だと思います。
 静岡市でも働き方改革としてデータアカデミーをやっていまして、在宅ワークとか、RPA、モバイルワークに本当に価値があるのかやりましょうというのが去年の事例です。
 実際に、3役レクができるように報告シートも作って、3年間でどうなるのか、どういう進め方で何が変わるのか、職員のメリット、市民のメリットは何か、課題と対策もどうするのか、しっかり施策として落とし込みながらやっています。
 ちなみに、これを静岡市でやったおかげで、もともとタブレット導入に全体的には否定的だったんですけれども、このデータアカデミーの結果、タブレットを導入すると非常に効果が高いので、3役の方々も入れなさいというお話が出て、50台ほど今年の4月に入れていたんですけれども、そのおかげでコロナが来たときに、タブレットが物すごく役に立ったそうです。何かが起こる前にそういう価値を実際に計算していたので、同じような行動が取れるようになった。後からタブレットを増やしたところとその前から業務フローをしっかり考えて作っていたところでは多分動き方が全然違う。そういうところでもやはり自分たちの業務を自分たちで考える力をつける職員を増やす。これは非常に大事なところです。
 デジタル裾野研究会は、私が東大を連れてきて裾野市と一緒にやっているデジタルツインといわれている事業ですけれども、東大と裾野市が提携を結んでデジタル裾野研究会をつくって、データ利活用によるまちづくりの推進をしています。
 東大のプラットフォームに、裾野市の3Dのデータや橋のデータ、事業者のバスのデータやソフトバンクとかがもっている交通流動のデータ、静岡県庁から出していただいている点群データ、工事のデータなどを入れ込むことで、今後取り組みたい課題に対してシナリオを立ててシミュレーションをしながら政策立案することをやっています。
 要は、実際の社会で実証実験をするのではなく、仮想の空間に箱庭をつくって、そこでもしこういうバスルートをつくったらどうなるだろうかとか、この橋をもし修理しなかったとしたら、どの程度影響が出るんだろうかなどのシミュレーションをしながらやっています。今年度はファシリティーマネジメント、立地適正、公共交通、道路保全、産業観光に分かれて検討していただいているところです。
 12月に3回目の勉強会をやるんですけれども、公共施設のワーキンググループであれば、2040年までの人口動態を含めて計算したときに、どういうまちづくりをしていくのがいいのか。立地適正にしても、これから育てていきたいところが3か所あるけれども、どこに本腰を入れたら一番効果が出るのか。産業振興に至っては、帝国データバンクのデータとかも使って、どういう取引が多いのか、実は東北のエリアと取引しているけれども、近くで同じようなものを作っているところがあれば、そこから買うとコストも安くなるし、より近隣の産業が強くなるのではないかということを分析したり、道路は東大のシステムとカメラのデータを使って、自動でポットホールとかを見つけられるようにしている。人流のデータを使って、この辺の人たちが今後免許を返納したら医療難民になる可能性があるという分析をやったりする。まさにこれがDXだったり、データを活用したまちづくりの施策づくりのところです。
 今までだとどうしても声の大きな人の意見が反映されてしまうところを、しっかり自分たちでシナリオを立てて、シミュレーションして、どのシナリオが一番良さそうなのか実験した上で、市民の人たちにこんな結果が出たけれども、どの方法が一番いいですかとしっかり話せるようにする。エビデンスベストが政策立案です。
 最後がDXと働き方改革についてです。DXするのに一番重要なのはサービスデザインです。私は東京造形大学でデザインを教えているんですけれども、デザインの観点が今までのまちづくりには結構抜けていました。市民目線を入れてあげることが今後の行政のサービスの向上につながります。
 サービスデザインを用いた働き方の改革は、今までの目標と価値を考えずに、ただ単に仕事の時間の短縮とか、職員の時間をつくるというのが働き方改革ではないです。今のいろいろな自治体の働き方改革を見ていると、AIやRPAを使って何時間削減できましたというものばっかりですけれども、それは市民にとっては何も価値が追加されているわけでもないし、目標が変わっているわけでもない。
 本質は、今ある目標と価値を再設定する。目標を今に合わせて再設定し、価値を最大化できるように、今ある方法、やっている場所、活動している時間、業務の理解、ユーザーと職員のマインド、そして業務のデザインを変えていくこと。ここでイノベーションを考える人材を増やすのが一番大事なことです。人が育たないと、いつまでも新しいツールができたから予算を取って導入することの繰り返しになってしまう。そうではなくて、自分たちで課題を見つけて、これに対してどうするべきかという人たちを増やすことが働き方改革で一番必要なところです。
 内閣官房情報通信技術総合戦略室からもサービスデザイン実践ガイドブックベータ版が出ていたり、経済産業省からもサービスデザインの報告書がたくさん出ています。サービスデザイン自体は利用者目線で仮説をつくり、プロトタイプをつくって検証し、繰り返し改善を重ねながら具体的な創造的なプロセスとして、市民が何で苦しんでいるか、本当はどこで何をしたいのか、表層的なところではなくて心因は何なのか、ちゃんと問題を再定義して、ニーズを発見して、そこに対して施策のアイデアを考えて小さくプロトタイプを作って事業を投入していく。
 中央政府も同じような話をしていますが、実証実験から始めなさいというのは、必ず正解がある時代ではないので、いろいろな実証実験をやっていくことで、みんなで正解に近づいていくことも必要になっています。
 サービスデザインをする理由は、1つはスピード感です。今までの世の中みたいに、先にサービスの内容をきっちり決めて、実施するというのは合わなくなっています。昔であれば構想3年、構築2年、実施に5年というペースでもあったかもしれませんけれども、今はそれができません。5年後にLINEがあるかどうか分かりませんし、10年前はやっていたミクシィを今みんな使っていないわけです。コロナが起こったから3年間待ちましょうといっても待てないわけですよ。スピード感が必要です。
 2つ目が利用者目線。作り手の考えでつくったものは使われない時代になっています。自治体でつくったサービスとかシステムは、つくったけれども利用者がいませんというのをたくさん見てきています。これは利用者を観察して、利用者が何を使いたいのかをサービスとして考えていないからです。なので、機能の提供ではなくて、ターゲットのニーズにあっているサービスを提供する時代がきたということです。
 あと、コロナもそうですけれども、今までなかった新しい課題が出てきているので、前例がないから分かりませんでは済まされない。だから、走りながら改善を続けてニーズに合わせたサービスを提供し続けることがDXにつながってくるところです。だからこそサービスデザインが必要な時期がきましたと。サービスデザインは人間中心設計であり、機能をつくる時代から、サービスをつくる時代になりましたというのがポイントです。
 行政でもメニューがありますではなくて、市民に使ってもらえるサービスをつくりますというのがこれからのやり方です。なので、ビジョンなくしてDXなし。業務改革――DXのときに、ちゃんとゼロベースでビジョンを考えましょうと。
 今までは行政のサービス、行政の仕組みは建て増し式だったんです。昭和のときにつくったルールに対して、こういう制度ができたから上乗せしようと、目先の課題を潰すために、いろいろなルールをつくって、いろいろなシステムをつくって乗せてしまっている。そうすると、パッチワークになり過ぎて、目標に到達できない。運用が複雑で、五つも六つもシステムを使わないといけない。システムでできない領域は手作業でしなければいけないし、本当は必要ないんだけれども、入力しないと次のページにいけないから入力しないといけない仕事もある。なので、今やるべきことは、総務省でも提唱されている話ですが、引っ越し式です。目標をもう一回ちゃんと定めて、今出ている先の課題を潰し込んで施策をできる仕組みをつくり出す引っ越し式に変えていかなければいけない。システム導入をするときには、特にこの形を意識しなければいけない。
 もう1つは、業務フローを見直ししない電子申請システムはありません。政府が電子申請のシステムを統一化しようとしていますが、そこまで待つのは愚の骨頂です。
例えば、死亡、相続についてはたくさんの行政サービスがあって、今も自治体に行っていろいろな窓口に回されてしまうんですけれども、同じように1つ1つをばらばらに電子申請することにしてしまうと、同じことがインターネット上で起こるだけです。1個のサービスになっていない。だから、今ワンストップで死亡・相続の業務をやれるように船橋市、松坂市がやっているところですが、業務を先に整理しておかないと、後からデジタル化するときに、今困っていることがそのままデジタルの空間で同じことが起こってしまう。だから、今、業務の整理をしっかりしなければいけない。業務の整理をしないでデジタル化したものは同じことが起こります。データ化、デジタル化の潮流はツールの導入ではないですし、システムの導入でもありません。デジタルも使ってユーザー目線の業務につくりかえることが一番大事なところです。今までのアナログをただデジタルにするだけだったら同じ課題がまた残ってきます。
 次に、人材育成の例です。東京都庁と袋井市のデジタル人材教育の話を最後にしておきます。
 デジタルデータ利活用の最新の動向としては、Chief Digital Officerの募集が盛んになっています。DX人材の争奪戦はもう既に口火は切られて、いい人材はいろいろなところに行っています。東京都庁は今ものすごく人を採っています。進みの早い自治体はDXフェローという名前だったり、アドバイザーという名前だったり、CDOという名前をつけて、様々な人材との連携を進めています。
 今までとの大きな違いは、学識経験者のような頭脳ではなくて、現場を動かせる実践者として、東京都庁の今の副知事の宮坂さんは元ヤフーの社長ですし、現場が分かっていて任せられる人になってきている。時代を走りながら変わっていくので、学説的にどうかではなくて、共創の実践者が伴走型の実走をしていかないと素早くできない。役割にあったマインドチェンジも必要で、自治体の中でも役割を分けて、BPRやDXを促進しないといけない。自治体の中の経営層はちゃんとビジョンを明確化するとか、チャレンジを評価する仕組みをつくるという、組織全体のことを考えていかなければいけないですし、管理職は担当者が動きやすくなるために何が必要か、組織を変えたり、アドバイスをする観点をつける。
 担当者については、今回の研修を生かして、庁内のプロジェクトを浸透させていったり、自ら課題を設定して、再構築できる職員をつくっていこうというのがあって、集団研修ではなく、実践型の研修が必要ということはすごく言われています。
 なので、都庁でも自治体DXについて、人材を育てながらプロジェクトを推進することをやっています。副知事の宮坂さんも来て、リーダーシップで変えていくことも大事。情報を使って世界のクオリティー・オブ・ライフに対応していくこと。
 情報を作るときにこれからはデジタルファーストで、デジタルデータをデジタルのままで移して、紙に印刷するとかアナログに戻すことはやめましょうと。次にデジタルトランスフォーメーションをしていきましょうねと。サービスのデジタル化をして、今回のコロナで分かったように、来れないときにはバーチャル都庁でやっていく。当然、リアルな都庁にいないとできない人もいるから、そういう人たちのためのリアルな都庁も作っておく。なので、密から疎へ、今までみたいに集合して何かをする、場所に行って何かするのではなくて、オンラインでそれぞれが結合していくことも必要です。同じくサービスデザインを使って市民の目線を使って考えていかなければいけないということも非常に説かれています。
 都庁の場合は管理職研修をやってくれという宮坂さんの強い希望で、なぜ行政がDXで失敗したのかという問いについて管理職の方々に考えてもらいました。本質的な課題は何なのかを自分たちで考えていって、自分たちは何をやっていかないといけないという宣言をしてもらう。管理職がマインドチェンジしないと、幾ら担当者がやりたいといっても、俺らが分からないからそれは駄目だと言われてしまうと止まってしまうので、やはり管理職もセットで研修して変えていく。DXに必要なのは管理職のマインドチェンジも必要です。
 これは袋井市です。袋井市も4年間かけて100人のDX人材、BPR人材をつくりたいということでお手伝いしていますが、目標はもう職員がサービスデザインを利用したBPR研修により実践につながるプランをつくれることです。職員自らが能力をつけることで庁内の横展開が可能な状況にする。今年度の結果を見て、次年度こういうのがあったら参加したいという職員がどんどん現れているということで、プランも幾つもできて実際進んでいますし、来年度以降もこれは続けましょうとなっています。
 5回のセットで最終の市長プレゼンまでして評価してもらうところまでやっています。これは人事研修の1つとしてやっています。データとデジタルとデザインがありますが、順番としては、まずはデータです。よくデジタル化したいという話を最初に受けるんですけれども、デジタル化するためにはデータがないと動けないんです。箱だけあってもデータがなかったら何もできない。なので、まずはオープンデータの整備をやったり、庁内データの整備、町のデータの整備をしてデザインする。ユーザー目線でサービス導入を何度も繰り返しながら市民が必要なデータは何だろうか、どう使ってもらえるんだろうかと考える。次にデジタル化。ICT知識の向上と働き方改革として、いろいろな仕組みを使いながら効率化していくことについてもデザインを考える。ただ単に置き換えるのではなく、何のためにやるのかをしっかり考える。最後がDX。デジタル化された1つ1つの機能に対して、API連携などで連結して活用することで破壊的なイノベーションを起こしながら、複数の課題を同時に解決してサービスを向上させることがDXです。
 ですので、課題や状況に合わせて変化して対応できる自治体の職員、地域をつくっていくことがすごく大事です。それができるところと、ただ受け入れて後々でやっていくところでは相当差がつきます。なので複数の課題を同時に解決してこそのDXです。攻めのDXは、業務の新たな価値を出していくというプラスの価値を生み出す。守りのDXは、今作業が遅いからもっと早くしよう、もっと高速化しよう、もっと効率化しようということ。両方合わせながらどうしていくかを考えていくのがこれからのICT人材としても必要なところです。お話は以上です。これから質疑応答のほうを皆さんから頂ければと思います。

○落合委員長
 ありがとうございました。
 以上で市川様からの講演は終わりました。
 これより意見交換に入ります。
 それでは、市川様に質問や御意見等がありましたら御発言願います。
 6番委員。

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