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委員会会議録

委員会補足文書

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平成21年10月障害者雇用促進特別委員会
参考人の意見陳述 非営利活動法人くらしえん・しごとえん 代表理事 鈴木 修氏 【 意見陳述 】 発言日: 10/28/2009 会派名:


○鈴木修氏
 おはようございます。
 御紹介あずかりましたNPO法人くらしえん・しごとえんと申します。代表をしております鈴木と申します。よろしくお願いします。
 きょうは、あわせまして私の横ですが、事務局長の水野――私と一緒になって現場支援、第1号ジョブコーチとして現場支援を行っております。そういう2人できょうはお邪魔させていただきました。
 きょうのこの委員会ということで、非常に私自身緊張しております。今までの1回目、2回目、3回目の議事録も読ませていただきました。それで、委員の皆様方の質問とか――特に3回目のいろいろな県の行政に対する質問――私自身もそういうのにかかわっておりますけれども、またそういうのを受けて、今回、私たちがこうして委員の皆さんに意見をということは、ある意味、非常に言葉の重さというのを感じております。そういう意味で緊張しております。                
 早速ですが、皆様のお手元に配った資料と、――写真とかを入れてあるのは省略してありますので、――主にプロジェクターで御説明していきたいと思います。
 最初にですが――今さらということではないんですが、私たちジョブコーチの養成研修機関としまして、いろいろ必ず触れていくところを申し上げます。特にディーセント・ワークという言葉――働きがいのある人間らしい仕事の欠如という問題というのは、やはりILOなどでも非常に問題にはなっているわけですけれども、特にこれは現場支援者の人たちに対して言うところであります。1番は、働く能力に関する誤った思い込みというのがあるんではないかと、この言葉を非常に強調しております。それは、ほかでもない私たち自身に対する戒めでもありますし、本当に働けるのか、働けないのかという、支援者によって本当に決まるという部分であります。
 特に、――いろんな意味で判断を迷ったり――、私たち障害者のかかわりで知的障害・精神障害・高次脳機能障害、いろいろかかわっておりますけれども、どうしてもやはり判断に迷う。そうしたときに、学校の教員もそうです。その一言というのが非常にどれだけ重い意味を持つのかということで、そういう意味で、私たちとしてはここの言葉、ちょうど2007年に出されたもので、150ページほどの報告書の前文に書かれてあるところです。
 そういうところで、これは私たちといいますか、きょうの話の中でも一番基本に私の原点にある、――根底にある言葉だというふうに思って、あえて一番最初に載せさせていただきました。
 そういう意味で、ちょっと「くらしえん・しごとえん」ということにつきましても、一応、一言簡単にですが、実際、法人ができたのは2006年11月なんです。3年ということなんですが、そこにある「暮らしを支援する」ということと「仕事を支援する」という――ややこしい名前といいますか、そういう名前です。
 ただ、その中で、私たちが後ほど触れますけれども、「ジョブコーチ」という言葉――きょうのキーワードにもなりますけれども、ジョブコーチということで、専門職としては確立していない分野であるわけですね。
 ですから、そこのところで、私と水野ですが、実際、くらしえん・しごとえんは、助成金を活用しての事業というのはやっておりません。時としては、養成研修の委託事業だとか、国のジョブコーチ養成研修も、あれも助成金とか、そういうのが出るわけではなくて、全部、自分たちの受講料からでのやりとり、それとあと現場支援、ジョブコーチ支援、あとは企業との独自の契約というような形で、ですからここの部分で仕事をきちんとできなければこれはいけないということを考えております。
 ですから、ジョブコーチ専門職、さらにはPTさんとか、PSWだとか、いろいろそういう人たちを含めた専門家集団の確立というのは、これはやはり絶対必要だろうという思いでつくっています。
 ですから、その2006年にできる前は、私も水野も、後ほど触れますが、県のジョブコーチの制度でのジョブコーチ支援だとか、そういうのもやっておりましたし、私自身はもう2005年ですか、5年ほど前、浜名特別支援学校と浜松盲学校の職場開拓員という形で1年間かかわったりとか、スポット的にそういうものはやってきておりました。ただ、そういう中での、やはりこの就労支援という形できちんとした仕事ができるようにならないといけないというふうに、そういうふうに思っております。
 そういう中で、特にジョブコーチ養成機関として、和歌山県から委託を受けて6日間にわたる研修を行ったりとか、また国とジョブコーチの養成研修もやったりしております。
 その後、これはジョブコーチの養成研修機関、国の研修機関は、ちょっと小さいんですが、全国には、東京のジョブコーチネットワーク、大阪障害者雇用支援ネットワーク、あと私どもと、もう一つ、全国就業支援ネットワークという4カ所という形になります。受講修了生は、今、全部で200名ぐらいおります。北海道から沖縄、九州まで受講生はおります。来年2月には、和歌山県でも開催をしてほしいということで、和歌山県で開催をすることになっております。
 特に、その中でも、2号は35名ということで、非常に少ないです。要するに企業内のジョブコーチ――これはさまざまな理由もありますけれども、少ないのが現状です。
 ただ2号の方たちの中でも、大きなところで言いますと、トヨタ自動車のトヨタループスさんでありますとか、西友さんでありますとか、中部電力でありますとか、関西電力のそうした特例子会社の方たちなども受講して修了しております。そういう人数でございます。
 その中で、いろいろ現場での支援写真と、もう一つこれも資料にはございませんけれども、全国障害者スポーツ大会でありますとか、これなどは2006年のマレーシアのクアラルンプールのフェスピック大会ですね、そこに日本チーム、――一応、私もコーチとして行ったりとか、今、その後、非常に膨張し続けて、とても走るような状況になっておりませんけれども、――こうした方たち、盲・聾重複の人たちと一緒にかかわったりとか障害者とのかかわり、水野も私も障害者スポーツ指導員の方とかかわったりしております。それが、私たちの法人ということです。
 いよいよ本題に入りますけれども、ジョブコーチという言葉――ここのところがやはりキーワードになりますが、ジョブコーチは静岡県だけではなくて、県単・市単のジョブコーチ、全国にもいろいろございます。
 また、静岡県では、京丸園さんが園芸ユニバーサル農業ジョブコーチです。ジョブコーチという言葉は確かに現場支援者として非常に大きなものとして位置してくるようになっているということで、じゃあジョブコーチというのはそもそもということを、もう一回、今、確認しないといけないんではないかと思います。ジョブコーチという言葉だけがひとり歩きしているところがあるんではないかということは、私たち全国の養成研修を、全国各地の情報を仕入れながらやっていると、そこのところに行き当たります。
 まず、もともと日本のジョブコーチ制度の中で、これは一つありますのは、アメリカのSupported Employment、援助付き雇用という制度が1986年にありましたが、そこから日本に輸入といいますか、取り入れたのが、今のジョブコーチ制度であるわけです。今までは福祉のサイドにいて、シェルターの中にいたのが、そういう中で、人を援助をつけて雇用していく、それが一つの形なんだということで、職業リハビリテーションという形で行われていると。
 ですから、国の制度、その州の制度として職業リハビリテーション、援助付き雇用というのをきちんとしていこうというところが一つでございます。
 そうしたときに、こういう言い方をされています。1番は、この広義のジョブコーチ、広い意味でのジョブコーチ、要するにEmployment Specialistという言葉と、もう一つは、狭義のジョブコーチ、ジョブトレーナー、要は職場内での支援に限定したジョブコーチです。雇用専門家――要するに広義のジョブコーチ、エンプロイメント・スペシャリスト――の全体的な統括のもとに現場での実務を担う狭義のジョブコーチです。この2種類、大きくわけたらあったわけです。
 それが、今、日本の中でも、結局どういうふうになっているかと言いますと、職業準備訓練があり、そしてアセスメントをし、職場開拓をし、支援計画を策定し、そしてその後に実際の現場での支援というのがかかわってくるわけです。
 そして、その後、フォローアップ――これは後ほど触れますけれども、2号のジョブコーチだと、企業内の障害者雇用にかかわることですけれども、福祉サイドや学校サイドで言ったら、訓練から支援計画の策定、ここまでが非常に重要な要素を占めております。そして実際、現場の支援については、今、日本各地――自治体の単独の事業でもそうですが、職場の支援――狭義のジョブコーチと、もう一つは、この全体をフォローアップ、アセスメントからやる、先ほど言った雇用専門家――広義のジョブコーチとで、役割を分けていると。これは、日本でも今でも変わりません。
 ただ、そうしたときに、今、日本の中で、静岡県よりもっと後にできたいろんな県のジョブコーチ、市のジョブコーチという中で、狭義のジョブコーチ――現場での支援というのに非常にポイントが当てられ、確かに大変なんですが、非常に出てきているわけですね。予算の関係もあるとは思います。
 そして、ほかには、アメリカの、職場開拓員――ジョブデベロッパーだとか、いろいろまた制度としても予算をつけてというようなこともあります。
 また、中には、これはアメリカですけれども、通勤訓練専門員とか、フォローアップの専門員とか、こういうのもなかなかあるということは聞いております。
 そうした中で、雇用専門家――エンプロイメント・スペシャリストの、現場支援と対になった支援が、今、実際のところはどうなっているか。やはり、欠落している部分があるのではないかというのがまず一つの問題提起です。
 要するに、現場支援と雇用専門家が対になってジョブコーチ支援というのがあるんですけれども、どうしても単年度の予算とか、いろんな課題があると思います。そういう中で、どうしても現場支援者、現場は大変だという形で、現場に、現場にというのが、実情だと思います。
 もう一つの、大事なアセスメント化から全体を統括する部分がどこなのかというのが、非常にきょうの意見の中でも私自身はちょっと強調したいことではあります。
 よく当たり前にかかわろうよとか、それこそノーマライゼーションとか、そういう言葉があります。今まで学校で訓練とか教育の利用者、生徒、患者であった者がだんだんだんだん主体的な労働契約に基づいていくわけですよね。私自身ずっと私立の高校で教員をやりながら、就職担当もずっとやってきました。だんだんだんだんちょっとずつ変わっていって、次のところに――一般企業に入っていったりしていくわけです。それは、別に障害のあるなしにかかわらず、私たちすべてが同じはずですよね。ですから、ここのところにやっぱり意識の転換というのは物すごくあるわけですよね。ぱっと今まで生徒だったのがある日を境にぐるっと変わっていくわけです。
 私も大学を卒業し、教員になったときに、高校ですけれども、3月31日まで学生だった私が4月1日になったら先生になってしまうという、これは自分自身は何ら変わっていない。だから、意識の中でやっぱり大きく変わっていく。そうしたときに、現場支援の重要性というのはやっぱりあるわけですね。
 特に、養護学校卒業時であるとか、リハビリテーション病院から外へ出たとか、いろんな新しい障害を受傷した後に、よしもう一回と言ったときに変わっていく。だから、現場支援者というのは、これはこれで重要なんですね。
 ただ、今まで個別支援計画に基づく支援だったのが雇用契約に基づく労働に変わっていったときに、単に現場だけの話ではなくて、そこに持っていく訓練・教育期間から、その後の部分というのはどういうふうに構築していくのか。それは、先ほどの表で言うアセスメントとか、支援計画だとか、本来、表面にあらわれない部分がいかに重要かということなんですね。
 だから、むしろジョブコーチ、現場支援というのは、先ほどの狭い意味でのジョブコーチ――狭義の現場支援じゃなくて、仕事のコーディネーター――ジョブコーディネーターという、こういう大きなところをつなぐ場所ないしは人、専門家、専門機関というのが非常に必要だということです。それがお伝えしたいことです。
 ですから、ジョブコーディネーターと、別にジョブコーチだけでなくてもいいです。これは、ある意味では、病院のケースワーカーでも、特別支援学校の進路指導主事であっても、いろんな企業の中の雇用担当者であっても、要は、そういう仕事のコーディネートをできる人たちがきちんと見て、その上に立って現場というもの、問題・課題が出たときにどう対応するのかという意味で、狭い意味ではないということを思っております。
 職場適応援助者――私たちが行うジョブコーチ養成研修なんかの支援の特徴ということで幾つかありますが、特にナチュラルサポートを目指すということがあります。要するに、職場内での自然なサポート体制の確立です。いつまでも、学校の先生、福祉の支援者がいるべきではないわけです。
 どうそれをつくっていくのか。これは最後の方でも触れますけれども、合理的配慮という言葉とも関係してきます。配慮をどうつくるかということです。
 そういう中で、この支援の目標のところで「フェイディング」と書いてありますが、いかに消えるかということ、それを重視します。
 私たちは現場にも入っていきます。現場支援に入ったときから、どうやって消えていくのかというのを考えるということです。
 今の国の制度のジョブコーチ支援の中では、いくつかのタイミングがあります。ただ、養護学校・特別支援学校の実習のときとか、もっと前のときはどうしようかと、それは課題として残っていると思います。
 それと、一応、現場に集中支援という形で入って、移行支援に、その後、どう消えて、フォローアップするかというようなスパンでやっております。
 対象者、事業主、家族の三者に対する支援ということです。特に、事業主支援というのは非常にポイントになってくると思います。後ほどこれは説明したいと思います。
 そういう中で、ここにありますように、これは別に障害のある人たちだけではないということをやはりもう一回考えないといけないということ。実際、訓練・教育・治療の先の仕事は、20年、30年のスパンの話ですよね。
 今、現場支援と言ったときに、1カ月とか、短いスパン――3カ月とかです。実際、そこの中でずっと働いていく人たちが、また働き続けるためには何があるんだろうかと。私たち自身も必ず問題というのは、起きるわけじゃないですか。絶えず誤解とか、ずれとか、意図しない出来事があったりとか、もちろん、現場支援が必要になってくることはあります。
 ただ、問題というのは、これは本当に悪いことなのか。よく現場から「また問題起こしたよ」なんて、そんな電話も入ってくることもあります。形としては、本人がわっとパニックを起こしたとか、そういうのになるかもしれませんけれども、問題は、本人が起こしたというよりも、その環境の中で問題が起きているんですね。起こすんではなく、起きるんです、必ず。それはいろんな要因があると。
 でも、それというのは、決して悪いわけではないと――私自身そうであったと思いますけれども、特に福祉施設職員の人たちには強調します。社会・世界の広がりがあるからこそ、いろんな新しい課題にぶつかるということは、特に福祉施設職員の人たちに強調します。ずっと同じことをやっていって安定している。確かに、いいかもしれない。でも、いろんなことが広がるからこそ問題があって、そうしたときにやっぱり次のステップに上がる、ステージアップしていくために必要なんであって、就労の場所で言ったら、働くようになって、福祉の施設のところは、家庭の支えとして、支援機関であり、主体は事業所なんだと。だから、何かあったときにも、いつでも臨戦態勢じゃないですけれども、その現場に駆けつけられるようなものがあるにしても、中心は、そこで働く人たちとパートの方たちです。人生をしょっているのは障害者だけじゃないわけですので、そこに働くすべての人たちが人生をしょっていて、いろんな人たちの――100人の企業の中の1人になっていく、それが逆に言ったら当たり前であるし、その中でどうかかわっていくのかというのが、ノーマライゼーションにつながっていくんではないかと、そのように考えます。
 そういう中で、ちょっと駆け足になってしまいますけれども、現場支援者――狭義の狭いジョブコーチといいますか、現場支援のところも、やっぱり非常に問題はいろんなところで出るわけですので、瞬間性とか計画性とか柔軟性とか専門性が、極めて短い時間だけれども、非常に重要な要素を持っていると。
 ただ、そういったときに、障害者就労における救急救命士的な――医療行為ができる、できないにあわせると、救急救命医という存在も必要でしょうし、専門医も必要でしょうしと、そうしたトータルのことが必要ではないか。
 だから、現場に入っていく人たちが非常にふえていくというのは重要ですけれども、あわせてその後ろのところ――特に現場支援者というのは、職業生活を維持するときに直面する諸課題に対して、極めて短い時間をつなぎ合わせるんだよと、それが現場支援者なんだというような言い方をしております。
 そういう中で、ちょっと高次脳機能障害の人達を例にした話になりますけれども――例えばいろいろ支援機関があるわけですけれども、脳外傷友の会というので、10年来ずっとやっています。聖隷三方原病院に、今、片桐ドクターという――私たちの養成研修の講師もやっていただいているんですが、この方が浜松に戻ってからずっと月1回、10年間にわたって家族会というのをやっています。そして、そこの病院のOTさん、作業療法士とか、そういう方とソーシャルワーカーさんが一緒になってやっている、ずっと支え続けている。
 そうしたときに、ことしからこの高次脳機能障害の拠点機関に「みどりの樹」がなった。そういう中で、遠州病院とか、私たちくらしえん・しごとえんも、何かあったら相談をしたり、そしてその中の1人をほかの就労移行支援事業所にというようなこともやっております。
 皆さんのお手元にはないんですが、例えば53歳の男性の去年の例なんですが、36歳で発症して、そしてずっと1993年に退院するまで、ある病院にずっといたんですけれども、92年からずっとあいまいな状態のままで在職でパート的なお金をもらって、結局、この間、ずっと何とかずるずる来て退職してしまうと。退職した後は、仕事が覚えられず、郵便局、花博とかで働いて、奥さんがずっと支えてる。発症してからもう10年ぐらいなんですね。その方が、2008年に転院して、この浜松リハビリテーション病院に入ると。
 それで、就労する場所はないだろうかとかという形で私たちにも相談があった。障害者職業センター、そこで職業評価というのをやってもらう。そしたら、やっぱり10年の、空白の期間というのが余りにも長過ぎる。
 そういうことで、やはりすぐさま働くというのは厳しいでしょうということで、結論としては、就労移行支援事業所を紹介する。でも、奥さんにしろ、だんなさんにしろ、そういう福祉機関なんて全然知らない。ですから、私と水野で、この後、3カ所、4カ所、一緒にそういう施設センターを、紹介して、結局は、A事業所という就労移行支援事業所に今行きました。
 この方は、現在、働ければいいなという準備をしておりますけれども、私たちも現場なんかに行ったり、ほかの企業の方に行ったりしたら、「ちょっとこういう人がいるけれど」なんてことをやったりしながら、いつでもこの――今はA事業所が中心になっていますけれども――就労移行支援事業所――職業センターとか、くらしえん・しごとえんの1号ジョブコーチで現場支援に出られるような準備体制は整えているつもりです。
 ですから、この方、あとは聖隷浜松病院なんかで今かかわっている人なんですけれども、結局、脳挫傷でということで、事業所でずっと、労災ですので、リハビリ中よりずっと相談を受けている。急性期の病院は聖隷浜松、そして今、聖隷三方原ということで、ここにはずっと家族会の支えがある。もう2年ぐらいですね。そこに、高次脳機能障害者のコーディネータ――みどりの樹ですね、そこに相談があり、今、私たちがかかわり、また職業センターの方で職業評価をやり、実はついこの間なんですが、事業所、病院、職業センター、ジョブコーチ、もう全部総動員で復職に向けてのプログラムをつくりましょうよということになりました。ただ、現時点では、企業の思惑、家族の思惑――ここの御家族の中に2歳と4歳のお子さんがいます――そういうようないろんな家庭の事情があって、すぐさま行けるわけじゃない。これは、やはり職業評価のところをきちんとやりながら職務を再設計したりとか、本人の今まで自分ができていたことと自己像をきっちり一致させるだとか、いろんな課題があります。だから、復職に向けてテーブルには着いたけれども、この先というのは、まだ半年、1年とか、もしかしたら2年ぐらいのスパンがかかるかもしれない、そういう例でございます。
 それで、もう1人、今度は、21歳の女性――知的障害の女性のケースですけれども、2007年に特別支援学校を卒業しました。高校卒業、特別支援学校卒業イコール即就労というのではない、まだ準備時間とか、やっぱり必要だなというケースなんですけれども、親元を放そうということで、入所の更生施設に入りました。それで、そのときからずっとかかわりがあるわけですけれども、一応、更生施設、B型で、「企業就労は無理でしょうね」みたいな言い方をされていて、本当にそうなんだろうかということで、私たちに相談がありました。ですから2年前からかかわりを持っています。
 実は、保育園に実習、現場に行かないとわからないよということで、やりました。ところが、実習場所は本人の出身保育園で、これはお母さんが見つけてきたんですね。だから、働く場所としての実習と言うよりは、昔、自分の保育園にいた何々ちゃんが帰ってきたねというような感じで、よく来たねという、そんな感じでしたので、結果としてはうまくいきませんでした。
 そして、その後、福祉施設に、私たちが主体で、じゃあ3日ぐらいビシッと私たちがかかわるからやってみたらということで、働けるか働けないかちょっと見てみるよといったときに、私と水野の感触としては、一般就労は可能だと。確かに、受け答えとか不器用なところはあるけれども、それと働けないというのはまた全然違うということで、そんなことで、ことしの3月にやってみました。
 それで、6月になると、今度は別のところから、福祉施設なんですが、「ちょっとだれか雇用しないといけないんだよ。だれかいない」なんて話があるんですね。そこで、Cさんはという形で、テクノカレッジ、ハローワークの提案――事業主委託訓練をまずやってみて、本人ともう一回確認してみようよということの提案で、テクノとかハローワークとか職業センターに関係機関としてかかわってもらって、実はこの9月から委託訓練というのに取り組み始めて3カ月になります。そして、これもついこの間なんですけれども、結局、12月1日から一般雇用ではなくて、トライアル雇用でやってみましょうというところに行きました。
 ですから、これなども、本当に2007年卒業からずっと、育成会関係もありますので――私自身育成会の理事もやっていますので、その中のお母さんの相談なんですが、ずっとやはり1年、2年、そうしたスパンの中で、実際、この後に、先ほど来言っている現場支援となったら、このトライアル雇用の中から入って、私と水野が1号ジョブコーチとして現場支援に入っていく予定、そういうような計画でいます。
 ですから、こういうようないろんな形のスパン、先ほどの高次脳の方もそうですが、いろんな長いスパンということがあるんだということです。
 そういう中で、一般就労を支える人材育成のあり方ということで、実は厚生労働省の研究会の冊子も出ております。そういう中で、一番言われているのは、就労支援員とか、就業支援担当者――就労支援員というのは、この就労移行支援事業所の担当者、また就業支援担当者というのは、これは就業生活支援センターの担当者のことです。あと、1号ジョブコーチ、2号ジョブコーチ、現場の支援者というふうな形になりますけれども、これはもちろん国の制度の話ですので、県のジョブコーチとか独自のものは入っておりません。
 ただ、大事なのは何かと言うと、結局、就労支援員にしましても、就業支援担当者にしましても、資格要件がないんですね。ですから、大学卒業して、何の経験がなくても、一応、ある日、「あなたはきょうから就業支援ワーカーよ」となったら、なれるんですね。就労支援員もそうです。
 だから、私自身もそうですが、ある日を境にいきなりジョブコーチとか、それとか大きな法人だと転勤とかありますので、いなくなっちゃったから、次が来るまで、とりあえずあなたはきょうからジョブコーチをやっておいてみたいな、とりあえず就労支援員とか、そういうのはやっぱり事実あるわけです。それが今の現状です。
 ですから、そのところで、何とか1号ジョブコーチ、2号ジョブコーチ、私たちのジョブコーチなども、研修については、受講の基準も一応は持っております。
 その後、1号ジョブコーチの助成金をもらうにはいろいろあるわけですけれども、そこの中にどんなスキルが必要なのか、職務は何なのかと、ようやくこういう整理が去年されたということなんですね。
 だから、ジョブコーチというような形でいろんなのが出てきたのは、やはり日本の中では、五、六年です。自立支援法が出てきて、本当にジョブコーチイコール現場支援者となっているのが、やっぱり今の現状です。
 そういう中で、この研修体系というので、もっと基礎的なスキルも必要じゃないか――フォローアップも必要じゃないかという、きちんとした、支援者本人のキャリアアップという形でのキャリア形成という、そういう視点でもっともっとやっていかないといけないんじゃないかということです。
 こんなスキルが必要だということがあります。これに基づいて私たちも研修をやっております。
 その中で、就労支援のみならず障害者の支援を行う重要な知識、スキルということで、やっぱりどんな人でもカウンセリングだとか、面談手法だとか、コミュニケーションだとか、ビジネスマナーはみんな必要なんだぞということは――基礎的なベースとなる部分として必要だということは指摘されています。
 そういう中で、人材育成の課題という形で、この研究報告書にもまとめられているのは、ここに幾つかあって、1番「専門人材以外の育成」が出ているんですが、要するに、いかに障害者の就労とか支援にかかわる人たちのすそ野を広げるかということです。ただ広げるだけではなくて、研修としての共通基盤を形成していかないといけないと。
 もう一つは、就労支援のキャリア形成を踏まえた育成ということで、これは最後の方で触れますけれども、県とか自治体独自となると、どうしても単年度予算になると、この間の緊急雇用対策とか、人がいろいろ現場に入っていく人たちがふえている。それ自体は決してマイナスではないけれども、じゃあその人たちとか、その就労をトータルでコーディネートする人たちのキャリア形成――来年、再来年、5年後、10年後を見越した、そういう支援者の育成というのは非常に重要なんだということがもう一つ、「専門人材以外の育成」と対になるべきものです。
 ですから、狭義のジョブコーチと広義ジョブコーチじゃないですが、ジョブコーチという言葉で言うならば、本当にそういう人たちの育成、あと大学教育における取り組み、人材への処遇、そして専門職としての資格制度、こうしたものが課題として指摘されております。
 それで、自治体独自のジョブコーチの問題ということで――この静岡県も、早くから独自制度を導入しましたけれども――和歌山県とか兵庫県なんかはいい例なんですが、自立支援法前後で自治体独自の根本的な見直しがされている。兵庫県では、県のジョブコーチをここ一、二年は募集の、ボランティアジョブコーチと変えてしまいました。要するに、通勤支援だとか、そういうところへちょっとかかわる。むしろ、現場支援とか、そういうのはもっと1号、2号とか、そういう人たちによってきちんとやっていこうと。そういうような形で、兵庫は変えた。
 和歌山県でも県のジョブコーチの制度をつくって、ジョブサポーターというふうな言い方をしています。これは、最初は県下全体の一つのNPO法人に委託していたのを自立支援法の制定とともに、就業生活支援センターに、地域の福祉圏域ごとに割り振っていった。そこが管轄していくという、そんなケースです。
 あと、自立支援法後に導入したのは、東京都ジョブコーチ、広島だとか、山梨だとか、京都府などでも、いろんなジョブコーチ、ジョブサポーター、ジョブライフサポーターというような形でやられています。
 ただ、共通するのは、どこでもやはり単年度、今年度ということと、やはり本人に対しては謝金とかというような形にならざるを得ないということですね。
 それで、自治体独自のジョブコーチのうち、「学生ジョブコーチ」というのは、これは立命館大学なんですが、学生さんがジョブコーチをやるという――これはもちろんボランタリーですね、授業の一環として、そういうのもあります。「えっ、学生さんがそんな現場に入って、企業に入っていくの」、「うん」なんて思う反応もたくさんありますが、これは学会に発表されております。
 静岡県に期待することは、やっぱり「現場支援者のあり方」ということで、県独自のジョブコーチもそうですけれども、本日の一番最初から言っている、現場支援者と、もう一つ対をなす地域とか支援機関のあり方、そこをどう位置づけるのか。就労支援者――ジョブコーチと言われている私たちだけではなくても、就業生活支援センターであったり、地域のセンターであったり、実際、就業生活支援センター自体が圏域1個ずつあるとは言っても、決して十分な機能を果たしていないというのが実情です。
 そうしたときに、サブセンターじゃないけれども、きちっとした地域を守る、地域を見続ける、――学校の制度の中では、養護学校、特別支援学校を卒業した後の二、三年しかできない――そこも含めて、トータルの地域を支え続ける、そういう人を配置することよりも、そうした地域支援機関のこと――産業部と厚生部ですか、そうした縦の形ではなくて、もっと横断的なもののあり方ですね。
 2番「支援計画を立てる人材、組織体制」、これは現場支援者のあり方の見直しと関係しますけれども、サービス管理責任者というのは、自立支援法では位置づけられています。ですから、こういうような人たちが――きちんとアセスメント化から丁寧にやれる人たちをどう育てていくのか。
 特に、その中で、3番「働き続けるために企業支援体制」ですか、これは雇用率の問題ではないと思います。雇用率というのは、障害者の雇用率の制度の問題では、やっぱり雇用するきっかけであって、実際はその中で働いていく人たち、私たちと水野は職業生活相談員の資格認定も持っております。ですから、本当にその中で働き続けるために必要な人の育成、そちらにこそやはりもっと手厚く視点を向けるべきではないのかと。むしろ、企業内の雇用納付金の話ではなくて、2号にもっとたくさん研修に来る人が有効だよということです。
 あと、それと「横断的・専門的なトータルコントロール機関」ということで、「責任の明確化」と「第三者評価」と書いてありますのは、よくジョブコーチの支援などで、県のジョブコーチも――国もそうですが、「これはただです」「ただです」「無料です」というふうに言います。でも、実際は、それは利用者にとって無料、企業にとって無料であって、実際、それは税金であったり、雇用納付金を使っているわけですね。むだなお金とか絶対ないはずです。だから、そうした制度に対しても、現場支援者、最初に「支援者によって将来が変わる」と言ったのは、どうしてもひとりよがりになりがちです。個々のジョブコーチとか、いろんな人たちに対して、きちんとしないとだめな人はやっぱりだめだと思うんです。
 私たちも、私自身も、教員生活を一方で私立などでやってきましたけれども、人のいい先生たちはたくさんいます。でも、人にかかわる以上、その責任というのは非常に重要であって、やっぱりそれは、だめはだめでしょうという、その厳しさは絶対必要だと思います。ここのところは非常に重要だと思います。
 そういう中で、本当にちょっと5分ほどオーバーしてしまって申しわけないんですけれども、県に期待することという、そういうことがありますが、まとめとしまして、配慮とか、私たち現場支援、ジョブコーチという、「ジョブコーチ」という言葉が私自身余り使うのはちょっとためらったりしながらいるんですけれども、現場支援とか、いろいろ障害者の就労にかかわっている者の一番の支援者の役割というのは何かと思いますけれども、これはちょっとパワーポイントの資料にないんですが、「配慮」という問題ですね。
 結局、配慮というのは、合理的配慮というのがこの間出ていますけれども、結局、心遣い、気遣いであって、それは一人一人の個々人に起因するものです。
 だから、結局は、支援者の役割というのは、障害者の働く場所だって、個々人に一人一人違う気遣い、心遣いをどう本当に組織化していったり地域化していくのか、それが支援者の役割ではないかと思います。
 ですから、障害者というのは、最初に入り口かもしれません。ですから、障害者その人を通して、その人につながる人たち、その地域、周り、現場であったり、そこのところにやはり配慮をどう社風にするかとか、その地域の文化にするかとか、そういうところまで見据えたような形で配慮というのをだんだんだんだんどうつくっていくか。そして、配慮が当たり前になっていったら、そこに新しい配慮が生まれるわけじゃないですか。配慮のステージアップというか、レベルアップというか、そう言ったらいいんでしょうか。それが結局、ノーマライゼーションとか、そういうのにつながっていくんではないのかなというふうに私自身は考えております。
 本当にあちこち話が飛んでしまいましたけれども、私自身が障害者のジョブコーチの養成研修機関として、また現場でかかわっている者として、一番やはり新しい局面に来ているんだろうなというふうに思います。
 そういう意味で、何か言葉足りないところもいっぱいあったかと思いますけれども、もし何かありましたら御質問くださればというふうに思います。
 済みません、時間がちょっと延びてしまいました。申しわけありません。以上です。

○藤田委員長
 さすがに最前線で取り組まれている、そういう見地からのお話でしたので、貴重なお話をいただいたというふうに思います。ありがとうございました。
 したがいまして、以上で鈴木さんからの意見陳述は終わりといたします。
 それでは、これより質疑に入ります。
 委員の皆さんにお願いをいたしますが、質問は、いつもの常任委員会のようにまとめてということではなくて、一問一答方式でこの際質疑を行いたいというふうに思います。
 それでは、委員の皆さんから御質問・御意見等の御発言をお願いを申し上げます。

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