(記者)
同じくリニアについてなんですけれども、先ほど白紙撤回もありうる中で、今回一定程度の全量への文言が返ってきたということで、今後は協定案についてはどのように進めていく予定なのか。
(知事)
今回、ようやくトンネル工事で出てくる湧水を戻すと、それが湧水全部を戻すという当たり前のことについての認識を持たれたということは評価します。そんなことはいろはだと思いますね。自分たちが傷をつけたものはちゃんと元通り直しますよというのは当たり前のことです。
しかし、よく考えてみればですね、何のためにそれをするのかと、静岡県にとって何のメリットがありますか。水が減ることは間違いないと、できるだけその減った部分は返そうと思っていますと、できるだけというのは、これは客観的ではありません。要するに、何のメリットもないわけですね。この工事自体が。そもそもリニアが静岡県を通るということも、天から降ってきた話です。
ここを通すことについて、その前にですね、静岡県に話があったわけではありません。私自身はリニア新幹線の関係する委員会がございます。長野県に住んでおりましたので、長野県の学術委員会代表の、たった1人なんですけれども、出て行ったわけですが、各県から1人委員出ているんですよ。静岡県から誰も出てこなかったし、静岡県を通るなどということはですね、平成23年の3月だったでしょうか、あのときに突然、その案が決まりましてですね、それで初めて知ったということなんですね。当然そこを通るということになれば、前もって相談もあるべきであります。なかったんですよ。
私は、言ってみれば長野県側の当事者の1人として、それを知っています。ただですね、私自身の認識不足もありまして、これは前の記者会見でも申しましたけれども、リニアが通れば、既存の新幹線の活用方法が変わりますね。いわば二つルートができるわけですから。その結果、既存の新幹線において、ひかりとこだまの本数が増えると、さらにまた報告書にはですね、実質空港の下に駅を造るということもうたわれているんですね。ですから、これは静岡県にメリットがあると思ったわけですが、そのときに私自身の認識不足は、水の問題についてですね、全く認識していなかったということです。
改めまして、気が付けば済むことなのですが、気が付いて、早川町に大井川の上流で水がかなりの分発電のために流れ、人工的に流量が変えられているんですね。それを元に戻せないかどうか、現場を見に行きました。それは難しいということも分かりました。早川町の町長さんともお話をいたしました。そうした中でですね、一方こういう利水に関わる関係者がいかに多いかということも知ってですね、それからまたエコパークにも認定されたということが分かってですね、実は最大の問題は、既存の新幹線の活用で静岡県にもメリットがあるということにも増して、そんなことはもう第二、第三のことでですね、一番肝心の水というものが、水源地が場合によっては一部枯れると、そして影響がかなりのところに出てくるということでですね、これはもう捨て置けないということであります。その認識は恐らく、柘植社長あたりはですね、あまり厳しく捉えられていなかったんじゃないでしょうか。私ですらそうでしたから。
ましてもっといろいろ考えてらっしゃる、静岡県だけじゃなくで、他の地域のことも考えてらっしゃる方にとっては、10キロだけ掘るだけだったぐらいのつもりだったんじゃないかと思いますね。だけど、われわれにとってはこれは死活問題なんです。メリットなしということです。デメリットだけだと、静岡県370万、天下の大井川、傷つけてですね、何が公共事業かというふうに思っています。
(記者)
リニアの関係で11月24日のJRの会見においては、社長がおっしゃったのは、県が求めているのはトンネル内の湧水の全量であるということを分かっているということをJR東海がおっしゃったのであって、トンネル内の湧水全部を戻すということはJR東海はまだ約束していない状況だと思うのですけれども、今JR東海が言っているのは、減った分の全量を戻すという従来の主張のままだと思うのですけれども、この状況で、県として利水者側とJR東海の間に立って協定の交渉を前進させるってことは、今の段階で可能だと考えてらっしゃるのか、無理だと考えてらっしゃるのか、いかがでしょうか。
(知事)
記者さんが今言われたとおりですよ、現状は。全量というのはトンネル工事でできる湧水全部だということは分かってると。だけど一方で減った分だけ戻しますよと言ってる。だからこれ乖離しているんですね。そんなところでですね、協定を結ぶために県が調停をするということはあり得ないです。
あなたもそう思ってらっしゃるでしょ。ご質問が実際そういうご質問ですよね。いかにひどいかということですね。相手の姿勢が。白紙撤回に近いところにまで、まだ私たちは立場を持って、本当にこの工事これでいいのかというふうに思っております。
大井川はですね、実は非リプレイサブルなんですよ、取り替えが利かないんですね。ところがですね、リニアはルートでもう公案が出されてですね、いろいろとものすごい議論がありました。だから実は代替があるんですね。代替案というのが。
だけどこちらはないんですよ。水が失われると、これによって失われる産業、あるいは場合によっては生活、あるいは町、村、農場などがあるんですね。あるいは小水力発電もあります。こうしたものが全部台無しになるということでございまして、そういうことになればですね、代替案があるルートと、全く代替が効かない大井川という自然の賜物と、どちらが大事ですかと。このかけがえのないものは、きっちり守らなければならないという、そういう考えでおります。
(記者)
今のお話ですと、現状ですと、静岡を通らないでいただいて結構だと、そういうような思いでいらっしゃるということかと。
(知事)
そこまで言うとね、せっかく長い議論されてお決めになったことですから、ですからもう一度頭冷やして考えていただきたいと。工事をする前にやることもあるでしょう。関東平野を掘る、あるいは名古屋から伊奈の方にまで掘っていくという、いくらでもやることはあるわけです。
難工事から始めると、しかも、それを人の迷惑も考えないでやるというような状況ですから、できることから先にやったらどうでしょう。私は別にリニア新幹線に反対しているわけではありません。そもそもその促進論者の1人でありましたし。しかし、この問題とそれとは違うと、リニアに反対しているわけではありません。大井川の流量が減るということについての認識に甘さに対して、厳しく指弾しているということであります。 |