【浜岡原発再稼動に関する住民投票について(3)】
<記者>
また同じ投票の関係で一言。制度上ですね、うまくこうしていきたいという話だったのですが、そのいろいろな意味で制度ということになると、その県政に仮にやったとして、住民投票の結果を県政上に反映できるというようなシステムにするということになっているのでしょうか?制度上というのは?
<知事>
拘束力がないですよね。結果、仮にしかし、9割の方が動かすと言われたとすると、私は「動かせる状態にないという立場」でございます。そういう判断をしています。それを9割の方々に御説明していく。それは県政の方向として、なぜ動かせないのか、ということに大きく舵を切ることになる。逆に9割の人が再開不可というふうに出た場合、再開不可だけれどもこれを浜岡原発、そこには浜岡原発360万キロワットの送電線がございます。そして防潮堤も今年の冬にはできあがる。その他非常用発電もさらにしっかりと1年かけてお造りになるということで、そこの中で一体何ができるのか。安全性というものがそれだけで確保できているのか、というとできていないということの説明をしなくちゃいけません。不可だからと言って、そこで働いている方々のやる気がなくなったりしたらですね、かえって危険でしょう。ですから、浜岡原発で働いている4千数百人の方がいます。防潮堤を作る人を含めてですけど。その方たちも一生懸命日夜、仕事されているわけですね。で、文字通り、危険と隣りあわせで、仕事されていると。こうした方々を尊重しなくてはならないと。そういう方々の、やる気といいますか、仕事への誇りと言うか、こうしたものをなくさないようにするということでですね、「不可、ハイ終わり。停止、廃炉。」という風に、ぱっと行けるようなものじゃないんですよね。廃炉の方法だって決まっていないんですから。ということで、どちらに結果がなっても、これはその結果を尊重しながら、こちらの説明義務というものが、大きく中心を移さなくてはならないという結果にはなっているわけで、そういう形で、現行の制度では拘束はないにしても、住民のご意見を、できる限り政策に、しかし住民の方々全体の安全、これを確保するための方向にもっていくために、重心の置き方が変わってくるという風には思っております。
<記者>
同じ質問で恐縮なのですが、16万という数字ですけれども、改めて知事の見方として16万という数字は、福島の事故の後の原発世論なんかも勘案して、数値としてよく集まったのか、それとももうちょっと集まったんじゃないか、という思いとかあれば。空港のときに比べて、少ないんじゃないかっていう声があったりして、16万という数字をひとつどう評価するのかというのをちょっと聞かせていただきたいのと。あと、先週ですね、知事がハワイの方に行かれている間に、県内のお母さんたちが手紙を持って、職員の方に預けていきました。週末までハワイに行かれていたので、もし目を通されているのかどうか、お聞かせいただければと思いますが。
<知事>
まず16万という数字なんですけれども、私が県知事に選ばれたときの数字が70万強ですね。それの4分の1くらいでしょう。これは大きいですよ。16万という数字は非常に大きいと思っております。それから、お母様方の手紙、これはコピーをもらいました。全員のコピーです。まあ、そこには岐阜県の方、三重県の方でしたかね。他府県の方々もいらっしゃいましたけれど、ほぼ全てが県内の方だったと。多くの方々が、小さなお子さん、子供を抱えてらっしゃる方ですね。ですから、一様に、ぜひ住民投票を実施していく方向でお願いしたいと。あるいは、小さな子供の手紙も4、5通あったと思いますが、そうしたものを拝見しまして、よ〜く分かっております。その気持ちも。それは単に手紙を読んだからというのではなくて、風評被害、がれきを処理するのについてですね、大丈夫だということを申し上げても、怖いということをいろいろな形で訴えられてきた方が、昨年来ずっとございまして、そうした同じ県民のあるいは自分の生活の安全、あるいは、子供たちの将来を考えて欲しいという切々たる思いがですね、綴られておりまして。それを拝見いたしました。
<記者>
その中でお感じになった思いなんかもやはり、知事が今回お話いただいた方針の中にひとつ、影響されているかというか、反映されていると考えていいでしょうか。
<知事>
いや、いつも、今回の手紙に触発されたのかというよりもですね、それこそ、3年前の8月11日の、駿河湾の地震以来ですね、ともかくいつ東海地震が起こっても不思議でないと。まあそれが理由で、浜岡原発の停止要請も首相から直々になされたというこがありますので、危険なところにいると、いう風に皆様が認識していただいて、同時に、これはこれまで日本人が、歴史的に我々知っているだけでも、貞観の噴火とか、安政の地震だとかこないだの袋井市などを直撃した南海地震だとか経験はしていつつですね、やはりいかにして被害を小さくするかということを考えなくちゃならないのは、もうこの3年間危機管理部を設け、危機管理監をいってみれば全てのものに優先させる、エリート集団にするといいますか、その危機管理というものを全ての部局に浸透させる防災先進県としての自覚をもつという、そうしたことを進めてまいりましたので、むしろ県民の方々にそういう危機意識を持っていただいたのは大変ありがたいことでございます。ただですね、がれきの問題、あるいは風評の問題がそうでしたけど、自らが風評を作るということになってはいけない、というふうに思っております。我々はお茶の風評被害に非常に苦しみました。一方がれきは、がれきと聞いただけで、あるいはセシウムと聞いただけで、危険だとか、そういう一歩退いて正確になぜそれは安全といえるのかとか、これは危険であると、危険でないと言えるのかという、そこまで全ての多くの大人の方々、また中学生以上の少年少女も含めてですけども科学的な知見というものを今ほど日本、静岡県が必要とされている時はないということで、あそこが安全でないから止めてほしい、なら、どうしたら安全を確保できるのかということについて小さな一歩でもいいので、新聞記事でも切り抜くなり、取っておけますから、本を買わなくてもできる方法はいくらでもあるはずです。そうしたきっかけになればと思っております。今回の手紙を拝見しますと、全体論調は同じですが、中にはかなりよく知っている方と、子供さんのように放射能が怖いからお願い知事さん守って、というそういうものもございまして、これは当然とはいえ、私どもはそうした付託は県民全体日本全体のものとして受け止めておりまして、とりあえず、70名くらいだったらすぐ読めますので、ざっと目を通したと。ものの2、30分あれば一つ残らず全部読めたということで。そのことによって大きく影響されたということはありません。一貫して同じです。
<記者>
重ねて、この住民投票の件で1点だけお願いします。
今、専門家の方で防災・原子力学術会議でさまざまな議論されていると思うのですけれど、その導いてくる、その会議が導く答えとの整合性といいますか、県民投票の結論とどちらが優先されるのかという点を教えていただけますか
<知事>
科学者の客観的なデータに基づいた意見というのは根拠がありますし、その根拠がもし間違っていれば反論することもできます。ですからここはイデオロギーじゃないんですね。我々の防災・原子力学術会議というのはなぜ津波が21メートルで来た場合には18メートルの防潮堤ではダメなのかということについて、理屈をきっちりと言える方がいらっしゃいます。
例えば今村先生ですね。その先生に反論しようと思ったらなかなかですよ。
だからあなたの言うことだったら嫌いということでもあれば別ですけれども、科学者あるいは技術者の持っている知見というものは尊重されねばなりません。ただしその方たちも万能ではないということでございますので一人の意見だけを聞かないと言うことです。
同じデータを見ながらそのデータの判断というものはどこかにその方の価値判断というものを免れないということを思っていますので、ですから我々公開にしてます。
例えばプルトニウムを処理する方法としてもトリウム、賛成派の亀井先生と、どちらかというと非常に慎重派の山名先生。みんなの前で激論していただきました。
そのことを通してしかですね、我々にはそれは判定することはできない。ただし、それを注目をもって見てくださるかどうかはまた別問題で、ですから多くの方々がそういう知見を我々はなるべく多くの方に共有してもらえたらということで、会議を設け、かつオープンにしておりますので、判断の材料というものにはしていただきたいと思います。今のところ科学者の会議によって出てきている暫定的結論は津波対策は不十分ということですね。ただし、従来の15メートルの津波に対しては、18メートルで防ぐことができるということは、これまた科学者、技術者がきちっと計算し、そしてモデルをつくって実験をして、そこで証明しているので15メートルの津波に対しては、18メートルの防潮堤で耐えられるということはこれは一方で正しいんです。正しいというか、それを反論することは非常に難しいです。別の実験結果でも示されない限りです。そうしたことでございますが、これは後に21メートル、それに近いもので襲うということになりますと、前提が違うからそれはあなた方の言っていることは間違いだと言えると、防潮堤を作ったってあそこに地震がきたらどうするのと、という話にもっていくのとまた違うんですね。もうきっちり1つ1つですね、なぜかということを言っていくと、これが科学をする心と、この心を私たちは持っているということを判断される場合ですね、住民投票などをされるときにお心得いただきたいというふうに思っております。
<記者>
住民投票の関係で、議会が通れば先ほど6か月以内という話がありましたけれども費用の面で例えば県知事選挙と来年同時期にやるというお考えは知事にありますか。
<知事>
ともかく今は県全体で財政が非常に厳しいということですが、何のために県政をしているかといえば県民の生活のためですから、その県民が住民投票というかたちで条例を求められているということであればそれを尊重するのが民主主義ということでございます。ですから、これが今の単純計算でいくと10億円くらいかかると言われているのですけれど、どう捻出するか合わせて考えなくてはいかんということはありますね。しかし、それがいらない理由にはなりません。大体私の選挙は、あるいは県知事選挙以外にも、あるいは市町の、あるいは県議の、あるいは国政も大変なお金がかかりますので、そういう意味では、残念ながらこういう投票というのは金がかかると。ただ、条例のときはですね、市町にお願いしなくてはならないのです。だから市町の方でノーと言ったら非常に困りますね。できなくなりますから。その場合にはこちらで何から全部準備しなくちゃならなくなりますので、いろいろと克服すべき課題というものがあります。そうしたことも、県議の先生方と議論していく中で明らかになるだろうと。ですから今回署名された方々にもですね、住民投票をするってことが実際上どういうことなのか、単に、イエス、ノーで済まないで実際は県税の使い方にかかるのみならず、また県として実施するといっても、市町にお願いするというのが現在の制度でありますので、市町との調整というものがございますよと。というものも含めて住民投票の実態について学習する機会にもなるかなと思っております。要するにお金が高いからやらないという、そういう理由にはならないと、また、県知事選に引っ掛けるというのは今のところ選択肢の一つとして出てくるかもしれません。しかし、これは県知事選は来年の夏ですよね。だからそのときには浜岡原発は動いていませんのでね、それから更に半年経って、さあどうなさるかということについては、まだ未確定要素が高いわけですからね、その前後で中部電力として言うべきことを言われたときには、この住民投票の結果であるとか、住民投票をそのときのタイミングでするとか、ということが、本当は望ましいと存じますけれども、今はちょっと、住民投票を最初行おうと思った後ですね、ほぼ人数が確定しつつあるときに、中部電力があたかもそれをみはからったかのようにですね、安全性のために、高台における非常用電源の建屋を免震性にするということを理由に1年間延ばされたわけですね。非常にいいタイミングで言われたなと。この住民投票の結果をはぐらかすためにはいいタイミングだったかと思います。しかし一方で、去年の夏、去年の冬、この5〜6月は1888年以降、気象庁がデータを取って以来、最大の暑さと言われた、この夏、間もなく終わろうとしています。それから今年の冬、来年の夏というのを、原発を動かさないで、なおかつ余剰電力があったということになりますと、それ自体が今回の中部電力の御発表の本当の狙いと、安全性だと思っていますけれども、そのあたりに影響するだろうと思っています。
<記者>
同じテーマなのですけれども、知事、これまで私どもがこの会見で、4月頃から、住民投票をどう思われるかという質問に対しては、前回までは一貫して、慎重、少なくとも、賛成を後押しするような発言は、ひとつとしてなさらなかったのが、今日、この日になって、賛成を明言された理由として、心境の、気持ちの変化があったのかを教えていただきたいということと、もうひとつ、この前の発言で非常に印象に残っているのが、議会でおそらく否決される公算が高いと仰っていましたが、改めて現状を、自民党の一存でほぼ全てが決まるんですけれども、否決可決をどのように思っているのかお聞かせください。
<知事>
一番最初に申し上げたのはですね、再開か再開の是非を問うというかんたんな問題ではありませんよということを、一貫して申し上げている。今でもこういいます。すなわち、安全性というものが、再開の場合は言うまでもありませんけれども、再開しない場合でも、確保できていません。それを踏まえて皆様方、署名をするならしてくださいと、署名しないということでも、安全性を重視するので心配はいりませんと、そういうメッセージを出したつもりです。がしかし、結果として、十何万近い御署名をされて、今日1時間後には県政のところへ。それを踏まえた上で、わたくしの発言を聞いておられたのかどうかは知りませんけれども、出てきたということがありますね。これは民主主義ですから、その部分についてできる限り尊重するということです。ですから私の姿勢は、安全性ということでやるので、今回の再開のイエス、ノーということに関わらず、安全性は確保できませんよと、これを最優先でやっていますよというメッセージを出し続けたわけでございます。
それから、県議会ではですね、こちら条例、賛否両論、当然あるかと存じますけれども、しっかりやっていただくということに尽きますね。ただ、前回の空港に関わる条例が否決されたと、その理由を見ますとね、理由は制度的になじまないということなのです。ですから、間接民主主義を信じなさいということに尽きると存じますけれども。ですから、このままだと、せっかくの制度が活かされないなと危機感は持っていますね。憲法改正には国民投票が必要ですけれども、そういうものが制度上活かされないようじゃあ具合が悪い、しかも間接民主主義と言いますか、現在の国会議員のはっきり言って体たらくの議事運営をみたりしていたりしますと、やはり国会議員あるいはその他政治家の方々だけに任せておけないという危機感はあるという風に思っております。そうした政治家に対する一種の信頼喪失というなかで出てきておりますので、できる限りそういう人たちの意見を汲み上げたいと、私自身はですね、県民あるいは国民の政治家不信ということもございまして、他の方法で、制度的に許される方法で、意思表示ができる、そういう道があるなら、これは十分に尊重しなければならいない、ということでございます。
<記者>
以前、否決の公算が高いとまでおっしゃっていたのは、なにか理由があったのか。今現在その理由は乗り越えられそうなのか。どのような見通しであるのか。
<知事>
この間の否決の理由についての報告書がでていますので、御覧になればお分かりになると思いますけど、制度的になじまないということが大半の理由になっている。ですから、もしそういう理由でなさるなら、内容いかんに関わらず、あるいはまた内容も、ここまでもそうでしたけど、こういう原発問題にはなじまないという風に言われてしまえばですね、もうそれで通らないと。ですからこれは県議会議員の先生方によく考えていただいて、議論を深めていただきたいと思います。否決をするなら否決をする。仮に賛成するなら賛成するでこれがやるものになるためには、おそらく県議会議員の先生方も非常に関心を持ってらっしゃる。ですから修正案も当然でてくると思いますね。そうしたことを通して県民の方々の前に、この議論をですね、よく聞いていただいて、原発問題というのは本県にとってどういう風にすれば安全性を確保できるのか、また、こういう方向について知見を深めていただけるきっかけになればと思っています。
【イコモスによる現地調査について】
<幹事>
ほかに幹事社質問関連でありますでしょうか。
なければそれ以外の質問をお願いします。
<記者>
以前もすみません。現場でコメント出していただいたんですが。イコモスが明後日から調査に入りますが、改めて今試験を受ける立場としてのお気持ちですとか。教えていただけますでしょうか。
<知事>
試験を受ける、につきましては、百点満点をとるという準備でやってきましたので、どうぞ御覧くださいという感じですね、ですから、やるべきほどのことはやったと思っています。ただやはり世界をよく御存知のイコモスの委員ですから、また自然の中にお入りになるので、天候にも左右されますね。富士山の頂上もですね、世界文化遺産の構成資産に入っていますので、できる限りいい天候に恵まれて、健康にもまた支障のない形で、例えば御来光などを御覧にいただければですね、なぜ、日いづる国がこの富士山における御来光を大事にしてきたのかということも、体で感じていただけるというふうにも思っておりますし、それをベースにしたいろいろな芸術の源泉としての紹介にも担当者から聞かれると思いますので、決して一日二日の行程じゃないので、それなりの御知見いただきまして私は自信という意味では100パーセントこれは通る。失敗しないと思っております。世界自然遺産で失敗したでしょう。あるいは失敗する理由があったからだと思います。富士山を世界文化遺産へというこの登録は、実は、世界自然遺産(への登録の動き)も生きているのですよ。世界自然遺産として登録するという運動もまだ生きてはいるのです。しかしこれを世界文化遺産として登録するということに組み替えるについては、私自身も勉強して、こうでなければならん、と思って、たまたまその学術委員会、静岡県の委員長にもなり、かつ今は県政を預かる形になって、山梨県とはこの件についてはもう本当に二人三脚で長くやっていますから。おそらくこれ以上の準備はできなかったというふうに思っています。あとはイコモスの方の見識に期待したいと思っています。
<幹事社>
他にございますでしょうか。無ければ本日はこれで
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