(記者)
読売新聞と申します。リニア問題の現在地について、1合目よりは少し進んだかなという感じというふうにおっしゃいましたけれども、登頂は何年ぐらいを目指してらっしゃるんでしょうか。
(知事)
それはですね、当初は様々な状況に照らして、2027年までに東京品川間(正しくは、「品川名古屋間」)というふうに言われておりましたね。それが果たしてできるのかどうかということが問われてますし、最終的には2035年(正しくは、「2037年」)に大阪まで繋げるという案でございました。それからまた、いわゆる長期債務残高ですね。これも一定額に抑えなければ難しいとされてました。さらにまた、当初、品川名古屋間は5.5兆円で作ると言っておられましたけれども、それが1.5兆円追加されて7兆円になっております。こうした事態はですね、これは公共事業じゃないので、審査対象になりませんけども、しかしながらこれは公共事業でないにしても、国策というふうに、あるいは国家的プロジェクトと言われているものでありますから、したがってですね、JR東海さんとしては、こうした新たな事態、さらにまた今、資材が高騰しております。こうした中で、どのようにタイムスケジュールを管理されていくのかというのはですね、されねばならないと。ですから、何か2027年が最終ゴールになっていて、そこにこの静岡県のゴールが、静岡県の設定するゴールがですね、どこあたりかと言われてもですね、ちょっと困るところがあって、われわれとしましては、2010年に突然あのルートが提示されまして、それで初めて、われわれは通過県になったわけですね。通過県になったことによって、したがってわれわれとしてはこのいわゆる建設促進期成同盟会にですね、入る権利を持ったと思うんですが、それに入れていただいたのはもうつい最近のことです。それを入れていただいて、調査研究・広報啓発もしなくちゃなりません。また同時に、それが規定になってるからですが、請願とか要請も期成同盟会としてやることになっておりますので、私は副会長としてですね、そうしたことをできる限り皆さんに納得いただけるようにしてやっておりますけれども、もう1970年代からある期成同盟会が、ようやく私達が入ったのは、異常事態ですよね。2010年に突然ルートに入れてこられたからです。したがってそれ以前にずっと調査されたようなものがですね、同じぐらいの調査がされていないことが、47項目のこの検討項目になっているわけですね。70年代からあったということはルートがはっきり決まっていて、それらについて当然調査されてきたわけです。したがって、仮に1980年ぐらいから調査を始めたとしてもですね、われわれは30年以上遅れて、参加する形に、国がお決めになったということでございまして、全幹法によって決まったということでありますから、それぐらいの時間間隔がですね、前のルートにおいては、元のルートにおいてはあったんだということは、皆さんにもですねしっかり理解していただきたいと思います。
(幹事社)
他にありますでしょうか。
(記者)
すいません、テレビ静岡です。同じくリニアについての質問なんですけれども、1合目から少し進んだというお話がありましたけれども、なかなか山頂まではまだ長い道のりで、知事の任期は残り2年を切っていると思いますけれども、知事の任期中にこの問題をある程度方向性をつけるというのは、2年半で1合も進んでないという状況から見るとなかなか難しいというように客観的に思うんですけれども、そこはもう知事の任期中にこの問題の方向性を、静岡工区の問題に対して解決するというのは不可能だとお考えでしょうか。
(知事)
静岡空港のことを言われましたね。
(記者)
静岡工区です。静岡工区の問題を知事の任期中に解決するのは不可能という認識でしょうか。
(知事)
これはですね、私、聞き間違って静岡、富士山静岡空港のことだと思ったんですが、あの問題は、反対者が当時ですね、私が知事になった時には、ライフワークとしてこの木は切らないと。木ではなくて今度は竹が生えてきたわけですけども、それはですね、信頼が出来た途端に、一丁にして解決しました。8月16日にお目にかかりに行きまして、平成21年8月16日、それまでこの竹は木の高さまでなってたわけですね。それを切らないとおっしゃったわけですが、お話をいたしまして、そして20日までにですね、ブルドーザーが入って全部切っていただいたわけです。その結果、2,500mの全長で飛行機が離着陸できるようになったと。それまで2,000mでしたから、木々あるいは竹が邪魔してたわけですね。ですからですね、人の心というものもありますし、現実が今どうなってるかということについては皆共有してるわけですから、意思決定者は今、基本的にこれは民間会社で、しかも交通政策審議会小委員会におきまして、当時のJR東海の宇野さんもあそこにいらっしゃったと思いますし、金子さんもいたかもしれませんが、そこでですね、はっきり明言されてるわけです。JR東海は民間会社であると、経営の自由と投資の自立性、これを貫徹するのはもう金科玉条であるという旨をですね二度ばかり言われております。ですからその意思決定者がこの今の事態をどのように考えてるかですね。私はJR東海の当時の社長に、皆さんが見てらっしゃる前でですね、もし厳しくなったと、つまりちょうど山に登っていて、天候が悪化したとき、引き戻さなくちゃいけないということがあります。そういう状態なったときにどうなさいますかって言ったら、そういう状態は考えていないとおっしゃいましたですね。それは僕は間違ってると思います。ですから、やはり国策である南アルプスの自然環境の保全、国家的な責務である、あるいは国際的な責務であるユネスコのバイオスフィアリザーブ、日本語で言うエコパークですが、これをですね、保全するというのは、これはですね文字どおり国家が関与してることなわけです。ですから、これとですね、この民間会社がやっている経営の自由、投資の自主性という自由ですね、ここをどう両立させるかというのの、このボールはですね、JR東海さんの方にあると僕は思っております。決してこれは、決定はですね、鉄道局も国交大臣も、あるいは総理大臣もですね、なされる形では、法律上なってないわけです。民間企業がやってるわけですから。ですから、そのあたりのところはですね、新しい、私は丹羽社長さんには柔軟性があると、信頼できる方だと思っておりまして、今回流域の首長さんもリニアの技術を体感されたわけですね、乗られて。ですから、いかにその技術が日本にとって重要なものであるかということはですね、私も含めて、流域市町の首長の大半の方たちもですね理解してるはずです。と同時にやはり、この命の水の源泉になっている南アルプスも、それからそこに息づいている動植物も保全するのはですね、これは国策であり、国際的責務であると。そのことをJR東海はどう考えてるのかと。この47項目についても、これぐらいの時間がかかってると。決して私達が遅らせてるんではありませんから。ですから、民間企業の、いわば決定のですね、自主性みたいなものを明確に出していただきたいと。ただただ足を引っ張ってるというふうな言い方をですね前の社長さんがされておりましたけど、そういう議論は通じません。そういう考えでおります。
(記者)
ちょっと質問の角度を変えますけれども、知事4期目に当選されたときに、報道の質問に対して、リニアに対してはある程度の道筋をつけたいということをおっしゃったと記憶しておりますが、残り2年切っている、任期としては2年切っているわけで、その中で現状その道筋は、議論は一定程度進めてる進んでいるとさっきおっしゃいましたけれども、道筋はたっていない状況だと考えます。残りの2年弱の間で、道筋は当初の知事がおっしゃった通り、道筋を立てれるのでしょうか。それとも、それは不可能でしょうか。
(知事)
もし私が、これ大きなビッグイフですけど、JR東海の意思決定者であればですね、現在の川勝と膝を突き合わせて話してですね、その場で解決策を出せるという自信はあります。
(記者)
その自信はどこから来るのでしょうか。
(知事)
現状を分析しているからです。
(記者)
わかりました。今、例えばいろんな問題ある中で、丹羽社長と、丹羽社長の方も知事と一度面会しましたけれども、今後トップ同士での交流を密にして、話の着地点を探るみたいなことを頻繁にやるとかですね、そういうリニアの早期実現に向けた、足並みを揃えていくということも、もちろん下の議論は下の議論であるとしてですね、そういうことも考えてらっしゃいますでしょうか。
(知事)
もちろんです。考えておりますし、実行して、水面下でではありますけれども、インフォーマルな形でのですね、意見交換などもですね、1つずつ重ねていきたいと思っております。
(幹事社)
他にありますでしょうか。
(記者)
静岡新聞と申します。すいません、リニアの関係でちょっと質問させてもらいたいんですが、9月の26日に国の有識者会議が開かれまして、そこで国土交通省がこれまでの議論のまとめと評するような報告書案というのを出しましたけども、先ほど知事としてはその森副知事が出した意見書の中身を述べられて、応えられてないっていうふうにおっしゃったので、現状あのまま、その報告書案がまとまることについては、知事としても反対というお考えでしょうか。
(知事)
いやこれは有識者会議の中村委員長、座長さんの、また委員の皆様方の同意によるものじゃないでしょうか。これはですね、基本的に有識者会議は、われわれが懸念を持っております47項目全部を議論するってことなっております。そこの議論は尊重するっていうのが基本です。それを持ち帰ります。そして、この47項目の懸念を出した専門部会で改めて議論をすると、こういう筋道になっております。ですから、その有識者会議では、それなりの見解を出されると、はい分かりましたというものではないということです。
(記者)
ある程度有識者会議には、これまで静岡県の専門部会で県側とJR東海が議論してきてなかなか議論が前に進まないっていう状況があったので、それを前に進めるような役割も求められているかと思うんですが、そういったものにかなうような報告書案ではできそうだっていうような現状、期待はあるんでしょうか。
(知事)
今の中村先生のまとめ方は、いかにも中村先生流だなと。良い意味でも悪い意味でもですね、そういう、ともかくまとめていこうという姿勢は明確ですから、それが、細部を落としてても、ともかく全体をまとめていこうという、そういう姿勢が見えますね。それは先生流ですからそれでよろしいんじゃないでしょうか。しかしそのことは問題点が解決したこととは全然違います。そこで出てきた報告書を、今度は県で、JR東海と向かい合って、このいわゆる地質構造の委員会と、それからこの生物の多様性に関わる委員会で、もんでいくということに相成ります。そしてまた、それらを関係者にお見せして、そして理解するだけじゃなくて、それを納得するということになって初めてですね、工事ができるということになります。そういう手続きはですね、決して今、私が勝手に言ってるんではなくて、一番最初にまだ私自身がいわゆる期成同盟会に認められて、加入が認めなかった時にですね、自民党さんの特別委員会に招かれまして、それは秘密だったわけですね。こう書いてなかったわけです。そこで委員長、今も委員長である古谷先生がですね、有識者会議の意見を尊重するかと言われたので、もちろん尊重しますと。それと同時にあわせて、これは、そこで出たまとまりを、まとまった意見を、専門部会に持って帰ってそこで議論するというふうに申し上げたんですが、その当時、記者会見で、古谷委員長が専門部会の、失礼しました、有識者会議の結論を尊重すると川勝知事は言ったと。これが最高の成果だというふうに言われたので、ありがたいことに、テープが取られていたんですね。ですから正確に申し上げまして、ですからこれは特別委員会のリニア推進の自民党さんの委員会の委員の先生方も、今申しましたことは共有されてるはずです。
(記者)
これまで森副知事が、国土交通省に対して鉄道局に対して出した意見書の内容が、反映してくれと言いつつも反映されないまま、報告書案がまとまってしまう可能性もあるかと思うんですが、その場合でも、そのまとまった報告書案っていうのは、その県とJRの議論を進めるのに資するような内容になるっていうような御認識でしょうか。
(知事)
これを無視することはできませんね。前の流量の件に関する、全量戻しに関する意見もですね、それなりに皆読んで、それに関して議論をしていくうちに、田代ダム案というのが出てきたわけです。ですから、田代ダム案は中間報告で出てきてませんよ。ですから、これは持って帰ってきて、果たして本当に大丈夫なのかというところから出てきたものですから、同じようにですね、今回の中村座長さんの、この有識者会議のどういう形で出されるか知りませんけども、同じような対応がなされる、そういう有識者会議の案になるであろろうと見ております。
(記者)
水問題の方では田代ダム案というものは書いてなかったけども結局田代ダム案っていうことが専門部会で出てきて、それが議論の前進にも繋がってるわけですよね。同じようなことが南アルプスの自然環境の保全に関する議論でも、期待できるっていうことですか。
(知事)
そうですね、その可能性はありますね、もちろん。有識者会議ではここまでしかできなかったと、あるいはここまでしていただいたとそれを専門家が時間をかけて資料を見ながらやっていただいたものですから、それを尊重する姿勢は全く変わりありません。一貫してます。それはしかし、解決っていうことにならないということですね。有識者会議の位置付けは、専門部会に戻してきて、もう1回、先ほど申しました繰り返しですけれども、そこで議論をし、これは公開でやってやっておりますから、利水関係者、また利水関係者だけじゃなくて、生態系は声なき声を発してるですね、生き物にも関わるものですからですから、ここは丁寧にしなくちゃいけないと。流量だって、水質の問題がありますからね。濁水をどうするんですかと。これを化学物質で固めるといっても、化学物質は化学物質ですから、それでこの水質も変わりますので、ですからですね、実際10kmだぞということが横行してますけど、静岡工区だけでもですね、そこに導水路トンネル11.4kmとか斜坑とか、あるいは工事用トンネルとか、本坑と先進坑と合わせると40kmを超えるトンネルな訳ですね。ですからトンネル本体の工事はあるかもしれないけど、それに関わるトンネルを掘らないとですね、静岡工区っていうのは完成しないんですよ。そうしたことをわれわれ知ってますから、ですから1つ1つですね、懸念を払拭していかなくちゃいけないと。その議論が今までの有識者会議でなされているとは思っておりませんので。
(記者)
すいません、最後ですけど、確認ですけど、なので国の有識者会議の報告書案で、難波市長とかがおっしゃってるような、重要種とか指標種、生物に対するその影響の評価が十分されていないとしても、それは報告書がまとまった後に県の専門部会で議論すればいいというふうにおっしゃってる。
(知事)
まだまとまってませんのでね。ですから、難波市長さんがおっしゃるように、まとめる前に、これどうなってるのかなってるのかというようなこと言われるのは当然で、われわれの方も対策本部長の名前でですね投げかけてるわけです。ですから、国交省は仕切ってられてるわけですから、ぜひ丁寧に、何て言いますか、対応していただき、御指導いただきたいと。5項目のお約束をしたわけですね。これは全47項目を議論すること。それからですね、全面公開すること、それから、座長は中立であること、委員も中立であること、こういうわけです。ですからですね、これ約束なわけですよ。しかし生態系ですから、本来なら環境省が関与しなくちゃいけないのにオブザーバーだと。それからまた更に言うならですね、これは国家的プロジェクトで、特に岸田首相がですね、年頭の記者会見で、夏までにそれなりのことを発表すると言われましたが、もう10月です。言ってみれば、あれはどうなってるのかと。前回、朝日の方からその質問が出ましたけれども、そういうこともありまして、やはりあの、いろんなことが遅れてるのはわれわれの方ではなくて、政府の方であり、環境省であり、国交省であり、そしてですね、JR東海であるというふうに思っています。
(幹事社)
他にいかがでしょうか。すいません私から1点。中日新聞です。先ほどのテレビ静岡さんの質問の関連なんですけど、先ほど知事、もし私がJR東海の意思決定権者であれば、川勝と膝をつき合わせて、解決策を話す、というような主旨のことをおっしゃったと思うんですけど、その前には南アルプスの保全というのは、文字通り国策であって、民間の経営の自由というのと、どう両立するかということを決める、そのボールがJR東海にあるということから考えると、やはり、そこから導き出されるのは、ルート変更か、部分開業かというこれまで知事が主張されたところかと思うんですけど、そのような解釈を私はしたんですがいかがでしょうか。
(知事)
ともかくですね、意思決定者というのが、従来は、葛西さんであったわけですね。固有名詞があるわけです。あるいは山田社長、柘植社長、金子社長、現在の森社長(正しくは、「丹羽社長」)と。もちろん取締役会等々でお決めになるでしょうけども、記者会見などでですね、社長さんの言われることは極めて大きな影響力を持ちます。そういう中で、大きな推進者であった葛西さんが逝去されまして、それを後押しされた安倍元首相もですね、悲劇に遭われたということで、そして、またこういう資材も高騰していると。しかしこの技術は、やっぱり継承しなくちゃいけないと、この様々なことを勘案しながらですね、やるときに、本当に必要なのはリーダーシップじゃないでしょうかね。だから、従来の決めたことをそのまま、もう、脇目も振らず邁進してですね、場合によっては●●(音声不明瞭)が前に崖があるのを知らないでですね、突き進んでいって崖下に落ちるようなことにならないように、私自身ももちろん静岡のことを一番に考えておりますけれども、日本のことをずっと考えてきた人間の1人です。しかも、特に、国土審議会の委員をですね20年も勤めまして、日本の国土はどうあるべきかということも考えてきました。したがってですね、非常にこの件については憂慮しております。一貫して。そんなこともありまして、今、ボールは丹羽社長、あなたにあるということで、期待するところは大です。
(記者)
最後に1点ですけど、今知事の方から国土審議会の話も出まして、知事の著作を読ませてもらうと、分散化という方向に日本を向かうべきだというような、大雑把に言うとですね、かと思うんですけど、そこに対して、そのリニアというのは、その東京と名古屋の台形を結ぶ、あるいは大阪までですね、結ぶ、一時期はスーパーメガリージョンといった地域をつくるということだと思うんですけど、その集中というものと、知事の考える、その分散というところは、根本的に違うんじゃないかなと思うんですけど、そこはいかがですか。
(知事)
そうですね、集中と分散はですね、二者択一ではありません。例えば、われわれの歴史で言えば、幕藩体制と。幕府というのは国防、あるいは外交、通貨の管理。こうしたことに専権を持つわけですね。だけど、その他もろもろの国内の行政に関わること、財政に関わることは300諸侯がやってたわけです。ですから、これを幕藩体制といって二元体制とも言いますが、この日本は、明治以降ですね、一極集中型でやってきて、それの弊害も出てきてるわけですね。だけど、その一極集中のメリットもあります。それをどのように、どの方面で生かしていくかということがあります。やはりインフラというのはですね、生活の基本で、分散化して、それが孤立すると良くありませんので、今はその孤立させない方向で、もちろんこうしたスーパーメガリージョンをつくる巨大なインフラっていうのもありますと同時に、新しくデジタルトランスフォーメーションということで、このネットワーク化ということで、この何て言いますか、分散化と集中が両立できると。ただし、やっぱりネットワークであってもですね、やっぱりフェイス・トゥー・フェイスっていうのの重要性は相変わらず変わりません。ですから、この両立をさせるということが問われているというふうに思います。どちらかの側に立っているという、そういうことで私は、私の立場はそういうものではありません。はい。
(幹事社)
ありがとうございます。その他の質問に移ろうと思います。他に質問ある方。 |