(知事)
私は、本日、令和6年5月9日をもって、15年間預かってまいりました、知事職を辞することにあいなりました。この記者会見を通じまして、県民の皆様方に対しまして、これまで、慣れない仕事でございまして、いろいろと御心配などをおかけしたと存じますけれども、にも関わらず、御協力、また御支援、御理解賜りました県民の皆様に対しまして、深甚よりありがたく、厚く、御礼を申し上げるものであります。ありがとうございました。
さて私が知事に就任いたしましたのは、15年前の2009年7月のことでした。知事の最大の任務は、県民の皆様の生命と財産の保全であります。就任した、翌8月の11日に駿河湾沖地震がございました。そして、1名の方が命を落とされました。それを機に、危機管理を最優先にすると決めまして、県政に取り組んでまいりました。そうした中、2011年の台風15号(正しくは、「19号」)で3名の方、2012年の台風4号で1名の方、2013年の台風26号で1名の方、2014年の大雪で2名の方、2019年の台風19号で3名の方、2020年の豪雨で1名の方、また2021年7月の熱海土石流で、災害関連死1名(正しくは、「3名」)の方を含む28名の方、2022年の台風15号では、災害関連死3名の方を含む6名の方(正しくは、「6名の方」(災害関連死ではない))、そして2023年の台風2号で、2名の方が尊い命を亡くされました。不慮の災害で尊い命を失われました、48名の御霊に対しまして、衷心より哀悼の誠を捧げるものであります。御冥福をお祈りいたします。被害に遭われ、復旧復興の途上の皆様には、1日も早く日常生活を取り戻してくださるように心から願っております。さて任期3期を全うした後、現在は4期目で来月で丸3年目となります。これまでほぼ丸15年もの間、県民の皆様に懸命に御奉仕できたことは一生の思い出でございまして、光栄の一語に尽きるものであります。私は富国有徳の美しいふじのくに作りを理念に掲げ、その実現のために、現場主義に徹する努力を重ねてまいりました。現場に出かけた回数は、15年間で県内3500回を超えておりますけれども、県内各地で仕事に打ち込めましたのは、ひとえに、それぞれの現場でお目にかかりました皆様の御協力、また御支援の賜物でございます。これまでのそれぞれの場における御厚情に対しまして、改めて深甚の感謝の意を捧げるものであります。誠にありがとうございました。
4期目の最大の公約は、南アルプスの自然環境の保全と水資源の確保であり、それとリニア工事を両立させることでございました。辞職の理由と重なりますので、お別れの挨拶の最後に、この件について申し述べておきます。南アルプスは国立公園であります。昭和39年に国立公園に認定されました。それゆえ、その自然環境の保全は、日本政府の国策でなければなりません。また南アルプスはユネスコのエコパークに認定されております。したがいまして、南アルプスの生態系を保全することは、日本政府の国際的責務であります。国の生態系に関する、いわゆる有識者会議は、昨年暮れに最終報告書をおまとめになりました。それによりますと、南アルプス山中のトンネルの上を流れる沢、渓流は、工事によって例外なく、水位が下がると報告されています。水位が下がりますと、水際に生きる生物などは、そこに水がきませんので、生死に関わる厳しいマイナスの悪影響を受けます。また、工事で出る濁った水を透明にするためには、凝固剤の使用を報告書は提案されております。凝固剤を使いますと、水質は確実に悪化いたします。この報告書の内容を一読いたしまして、一言で言いますればトンネル工事によって、南アルプスの自然環境はマイナスの悪影響を受けると。言い換えますと、工事によって南アルプスの自然環境には黄色の信号がつく、という認識を私は持ちました。それでもなお工事を敢行するということであれば、工事による南アルプスの自然環境への悪影響を、いかに小さくするかが課題であります。沢の水位が下がることで、死滅しかねない生物の保全などのために、有識者会議はモニタリング会議を提案なさいました。モニタリング会議は政府主導で、今年2月に発足をいたしました。モニタリング会議、その第1回会合2月29日、2か月前のことでございますが、基本方針がそこで確認されました。そして第2回会合が先月、失礼しました、3月29日のことでございまして、その会合で、丹羽氏を新社長とするJR東海は、南アルプストンネル静岡工区の事業計画について、これまで知られていなかったデータを公表されました。世間はあっと驚きました。私も同様であります。曰く、高速長尺先進ボーリングに、3か月から6か月。工事ヤードの整備に、3か月。トンネル掘削に10年、ガイドウェイ設置に2年という事実の公表でございます。その数日後に、曰く、岐阜県は恵那市のトンネル工事に40か月、すなわち3年と6か月(正しくは、「3年と4か月」)、長野県は飯田市の高架橋の工事に70か月、すなわち5年と10か月、山梨県は駅の工事に80か月、6年と8か月がかかるという公表をなされました。昨年までのJR東海の、前の社長の体制のもとでは、一貫して静岡県の工事の遅れだけが繰り返し強調されていました。そのことからいたしますと、隔世の感がございます。今回の2度にわたる事実の公表で、静岡県のみならず、岐阜県、長野県、山梨県でも工事が遅れていることがはっきりといたしました。これらは、いわば不都合な事実と言うべきものであります。臭いものに蓋をするといった感のある従来のJR東海の姿勢が一新したというふうに思います。不都合な真実とはいえ、正直に、事実を、有り体に公表された現在のJR東海の丹羽社長の姿勢には感じ入っております。正直に
勝る徳目はありません。正直な丹羽社長に対しまして、敬意を表するものであります。さて、南アルプストンネル工事について、工事に要する年数を単純に足しますと、12年から13年ということになります。重なるということなので、11年というふうになっているようでありますが、しかしながらそれをモニタリングをしながら、言い換えますと、順応的管理で工事を進めるというということです。順応的管理、すなわち工事中に何か問題が生じますと、もう1回その工事が良かったかどうか、フィードバックして考え直して、計画を立て直すということでありますが、こういうやり方が、順応的管理というものであります。したがってこういうモニタリングをしながらの工事となりますれば、ここで挙げられている工事年数を超えることが十分に予想されます。それは何を意味するんでしょうか。南アルプストンネル工事自体に、黄色信号がともったことを意味すると思います。工事をすれば、南アルプスの自然環境に黄色信号がつくというのが、有識者会議の最終報告書の内容だというふうに私は認識しております。そしてまた今回、工事自体にも最低10年以上かかるということでございますので、これも青から黄色に信号の色が変わったというふうに捉えております。信号が黄色になれば、道路交通法に従いますれば、進んではいけませんけれども、中には強引に突っ込む方もいらっしゃいます。強引に進むのか、あるいはとどまるのか、まさに岐路に立ったということでございます。それをどうするかについては、モニタリング委員会(正しくは、「リニア中央新幹線静岡工区モニタリング会議」)の御見識次第であります。私は以上のことをもちまして、4期目の公約に関わる仕事に、1つの区切りがついたと判断いたしました。これまでJR東海さんに対しまして、かなり厳しいことも言ったことに対しましては、改めて申し訳なく存じますけれども、同時に丹羽社長の正直な姿勢に改めて敬意を表する次第でございます。御立派でした。なお2018年6月、今から6年前ですが、JR東海さんと静岡市との間で締結なされました、いわゆる三ツ峰落合線の5kmのトンネル工事は、丸6年経ちました現在、掘削すら始まっておりません。丹羽社長は、ぜひ、この約束は、約束通り実行してくださるようにお願いをいたします。富士山と南アルプスは、いわば父と母のような存在であります。この霊峰と、赤石山脈とは、生命の水を供給することで、静岡県民を、またそこに息づく生きとし生けるもの全てを、何世代にも渡って養ってまいりました。水資源を保全するためにも、南アルプスの自然環境は保全しなければなりません。そこに住む私達の、それは使命ではないかと思います。県民の皆様を信頼申し上げております。私はこれをもちまして、ふじのくに、愛するふじのくにを後にすることになります。ありがとうございました。皆様方の御多幸をお祈り申し上げます。
(当局)
知事ありがとうございました。それでは質疑に入ります。幹事社様、よろしくお願いいたします。
(幹事社)
はい、よろしくお願いします。ただいまの、本日、幹事社質問ございませんので、各社様に御質問を、今後していただきたいと思います。ただいまの知事の発表に関しまして、質問のある社はお願いいたします。また時間が限られておりますので、1社様なるべく1問で、簡潔によろしくお願いいたします。では質問のある社様お願いします。
第一テレビさんお願いします。
(記者)
第一テレビです。15年間本当にお疲れ様でございます。川勝県政の15年振り返りますと、まず最初に知事になられたときに、今の発表にもありましたけれども、ここを日本の理想郷にするとおっしゃいました。ふじのくに理想郷という言葉もすごく印象に残っていまして、実際この15年が経って、ここは、静岡県はそのふじのくに理想郷になったのか、知事が実現できたとお思いでしょうか。いかがでしょうか。
(知事)
理想郷というのは、理念なんですね。ですからそれを、その旗をですね、下ろしてはなりません。そして、このふじのくに静岡県は、今は山梨県も入っておりますけれども、ふじのくにと、両者が称してますので。これは十分に日本の顔、そうなれる。したがって、富士山が世界文化遺産でありますように、世界クラスの地域になれる可能性を持っております。そういう可能性、この場の力が、それまでからも徐々に出てきましたけれども、この15年間にも顕著に表れたというのは、世界クラスの地域資源の人材群が、この丸11年ですね、富士山が世界遺産になってから丸11年になりますけれども、確か150件を超えてるんじゃないかと思います。だから11年間というのは月数に直すと132件(正しくは、「132月」)ですから、1月に1件以上の割合で、世界クラスになっているというのはですね、かなり理想的なのではないかと思いますし、またウクライナ、あるいはガザにおける、ああいうひどい惨状に比べますと、ここは人々が訪れてよし、住んでよしということで、移住希望地も、3年続いて日本一ということでございますから、そういう意味ではですね、多くの人がここがいいなと思ってくださると。理想郷とは心の中にあるんですね。ですから、それを私は一貫して持ち続けておりまして、それを持ち続けられたってことは、この場において、仕事してきて、それができるからという確信があるからだと思います。
(記者)
ありがとうございます。富士山の名に恥じないような県政運営をということもよくおっしゃっていたかと思うんですけれども、その富士山の名に恥じない、その成果、今おっしゃっていただきましたが、一方でもし富士山に何かこれができなかったこれを反省しているということを言うとすればどんなことでしょうか。
(知事)
まあともかく、28名の方がですね、突然、土石流に命を奪われたと。このことは痛恨の極みであると。厳しい反省でございます。私個人に即して言いますれば、その現場近くに複数回行っているにもかかわらず、七尾団地にお邪魔したわけですけれども、そのすぐ左手に川が流れてるわけですね。そこに違法の盛土がなされたわけですね。現場を見る機会をどうして持たなかったのかっていうのは、悔いても悔いきれないところがございます。
(記者)
ありがとうございます。
(幹事社)
はい。冒頭の発言以外に関する御質問でも大丈夫です。各社様いかがでしょうか。
はい、静岡朝日テレビさんお願いします。
(記者)
はい。静岡朝日テレビと申します。15年間お疲れ様でした。先日、リニアを争点にする会が、川勝知事再出馬を求める署名活動を行って、1987名の署名が、実際に川勝知事のもとに届けられて、アポイントメントはありませんでしたが、知事もお会いになったと思います。改めてそういった署名が集まることへの思いも含めて、これまでですね、県民に多くの負託を得たというところでの県民への思いも聞かせてください。
(知事)
はい。 有言実行ということでございますので、1つ区切りがついて、リニアの工事に黄色信号がともっていると。これどうするかというのはですね、多くはやはり、その南アルプスの恵みを享受してこられた県民の皆様の意思にかかってると思います。今回、その署名活動、私は辞任するってことをおそらくですね、確実に再出馬することがないってことがおわかりになりながら、なおかつですね、このことは重要であると、それを訴えるためにもですね、署名をされたのではないかと思いまして、その方たちの使命感に対しましては、立派ですと。志を同じくしてくださってる方たちがいたのだなと、わずか10日あたりでですね、街頭に立っての署名活動ですから、健康を害された人がいなかったらよかったなと思いますが、その方たちに対しまして、お1人お1人ですね、御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
(記者)
改めて多くの県民の方々に支持もされてきたと思いますけれども、県民への思いもいかがでしょうか。
(知事)
すごいですよ。やはり僕は学問をしてきました。どちらかというと、座学だったわけですね。僕は実学の重要性を、一貫して、15年間、訴えかつ実践してきたつもりです。実学すなわち農業とか、あるいは工業とか水産業とか、第一次産業、こうしたところで人材を養成されてる方々にしか知事賞を出さなかったんですね。そういう意味でですね、自らも実学をするという意味で、静岡県、これを自分の、言ってみれば、愛する対象にしてですね、人は愛していると、やはりもっと理解したくなるんじゃないですか。もっと知りたくなりますよね。知りたければ知りたくなるほど、また何をして差し上げればいいかということもわかってまいります。そういう関係だったわけですね。ですから、非常に深い愛情をですね、ふじのくに静岡県に、思っておりまして、今はそのふじのくにが奥座敷、表玄関のふじのくにの静岡県と奥座敷の山梨県にまで広がっておりまして、そうした心が1つになってることも含めてですね、いやいいところだというのが、勉強した、勉強したというか、自分なりのフィールドワークをしてきた今の考えであります。
(幹事社)
各社様、いかがでしょうか。読売さんお願いします。
(記者)
読売新聞です。先ほどの冒頭の知事の話で、あのリニア問題についての言及があったかと思うんですけども、その中で強引に突っ込むか、あるいは留まるかどうかの岐路に立っているというような表現をされていましたけれども、今回、今日、知事選が知事の辞職に伴って、告示されてですね、主な候補の中には推進の立場を取る方もいれば、反対の立場をとる方もいるんですが、この辺の論戦、リニア問題についての論戦について、知事どのように見てらっしゃいますか。
(知事)
はい。モニタリング会議っていうのは、これまで2つの水資源に関わる有識者会議、それから生態系に関わる有識者会議、委員の中身を変えてですね、論じてこられました。したがってそれはよく勉強していただくことが大事ですね。おそらく一番いい形にしてくださるであろうと。選ぶのは主権のある有権者、県民ですから、よく主張をお聞きになってですね、同時にまたモニタリング会議の行方をこれから注視するという、そういうきっかけにもしていただければと思います。
(記者)
すいません。それであの告示された知事選なんですけれども、今のところですね、史上最多の6人が立候補を届け出てるんですけれどもいろいろ報道されてですね、何か気になる候補とかがいれば、お話を聞きたいのと、あと何ていうかその、知事選に向けて、出馬される方に何かエールとか、そういったものがあれば、お話を。
(知事)
はい。皆、有権者、同時にまた被選挙権を持ってる方がですね、自由に立候補できるってのは、日本ならではの、民主主義の国柄でありますので、そのことは非常に、多くの方が立候補されたというのを大変喜んでおります。あとは、できれば50%を超える投票率になればいいというふうに願っております。やはりどんな会議でも、やっぱり2分の1以上出席してないと会議成り立たないんじゃないですかね。そういう原点に戻って、やっぱりあの5割以上の方たちが関心を持って投票されると。仮にいない場合には、適当な人がいなければいないと書けばいいわけですね。それも無効票になるじゃないですか。だけど投票率の中には、それは入りますのでね、自分の意思を表示するというきっかけであると。大事な大事なきっかけで、ある意味でそれしかですね、一般庶民は政治的意思を表明する機会がないと、それは言えます。あるいは、最も重要な意思表明の機会であるということなので、いない場合でも、いないって自分の意思を書けばいいと。これすごく大事なことだと思います。 |