本会議会議録
答弁文書
令和2年12月静岡県議会定例会
阿部 卓也 議員(ふじのくに県民クラブ)の 代表質問 に対する答弁
(質問日:12/04/2020番目)
答 弁 者 | : | 知事 |
○副議長(良知淳行君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) ふじのくに県民クラブを代表しての阿部卓也議員の堂々たる物論に感じ入りました。数々の御質問並びに建設的な提言に加えて私に対する苦言も呈してくださり、思い当たる節もございまして深く自省をして改めてまいりたいと思っております。
まず、私の政治姿勢についてのうち、新型コロナウイルス感染症対策についての御質問にお答えいたします。
感染症の世界的な流行をはじめ地震、風水害等の災害、気候変動による食料難など人類が今さらされている逆境においてこそ我々は一人の人間としてまた共同体の一員として静岡県民の一人として、そして日本国民の一人としてその真価が問われているのであります。議員はイスラエルの若手の歴史家ユヴァル・ノア・ハラリさんの御著書を読まれたとのことでございますが、驚嘆すべき本でございまして進化論的な観点に立っていると思いますが人間が動物からホモサピエンスを経て神になるというふうに考えているというふうに受け取ることができました。
人類がなぜホモサピエンスになったのかと、それはコグニティブ・レボリューションですか、彼の言う認知革命によるとこれは旧約聖書に言うところの知恵の実を食べたということではないでしょうか、それが神の怒りを買いしかも原罪とされ人類の祖先は楽園から追われたと。その中に恐らく強欲とか無知とか憎悪というものもはらまれていたのでしょう。しかし旧約聖書は神の怒りを中心にしていますけれども新約聖書の基になったイエス・キリストは人類の愛を説いています、仏教は利他を説いています、儒教は仁愛を説いています。強欲に対しましては困っている人に対する共感を、そしてまた無知に対しては英知を磨くこと、そしてまた強欲に対しましてはむしろ利他の心を我々は併せて持っているというふうに信じております。
今年は偶々ベートーベンの生誕二百五十年ですけれども善への信頼、正義への信頼、それを実現しようという人類の勇気をたたえる精神というものは脈々と今日の現代人にも受け継がれているのではないかと思います。
こうした視点から、私は今年四月コロナに関わる最初の全国知事会の中におきまして我が国の生命科学分野における世界最高水準の研究人材、また世界最高水準の科学技術を活用して治療薬、ワクチンの開発で世界の人々の安全と安心の提供に貢献するべきであるということを国に訴え、以来再三再四この点を提案して今日に至っております。具体的には国内製薬会社や研究機関への治療薬、ワクチンの早期開発、製品化に幅広く活用可能な基金の創設を求めるものであります。基金不足のために、投資不足のために海外にワクチンを依存せざるを得ないようになっているのが現状じゃないでしょうか。
現在、新型のコロナウイルスのワクチンは欧米の製薬会社などが治験の最終段階にあるなど先行しておりますが、国内での研究、開発の加速化は今後の新たな感染症や治療法が未解明な病気の克服にもつながりますので引き続き提言してまいります。
我が国の新型コロナウイルス感染症対策は、国と地方自治体が連携し感染拡大防止と社会経済活動の両立ということに取り組んでまいりました。これは強制力を持たない法令や感染症対策の経験不足ということもありまして医療提供体制が迫して、この両立への葛藤の中で厳しい対応が迫られているのが現状です。今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による甚大な影響は国民の生命のみならず経済、社会、さらには人々の行動、意識、価値観にまで及んでおりましてまさにこれは国難というレベルであります。これらの状況に照らせば国民を疫病から守る防疫は防衛、防災と並ぶ国防の三本柱と言うべきであると存じます。
休業要請や補償、入院患者対策など国と地方自治体の役割分担が目下のところ曖昧であります。外出自粛など社会活動の私権制限の課題も明らかになりました。こうして現行法制の枠組みは限界を迎えているという認識を持っております。このことから国は早急に防疫対策のよりどころとなるべき理念や対応方針等を明示した感染症に関する基本法等の整備を検討するべきであると存じます。
また、感染症に関わる業務は複雑多岐にわたっています。現在の感染症のような世界規模の蔓延への対応には高度な専門性が求められます。防疫体制の抜本的な強化に当たりましては我が国でも、アメリカ疾病予防管理センターの例がございますのでこれらを踏まえまして発生時の対応、公衆衛生、医療体制、研究活動等々が一体となった平時でも機能する組織を構築して感染症医療に精通した人材の育成を進めるなど新たな防疫体制を整備することが必要であります。これらの国の施策に対する提言は、何度も開かれております知事会等を通じて全国の都道府県知事にも御賛同を賜り認識を共有しながら国に対して要請を続けてまいります。
本県の現下の感染状況はまさに第三波の真っただ中にあります。クラスターの連鎖が広域で発生しており医療提供体制を迫させる大変憂慮するべき状況であります。私は県民の皆様の命を守るため医療提供体制の確保に最優先、お医者様を最も大切にする、最後のよりどころと見るということでございます。これを最優先で取り組んでいるところであります。感染者数の増加に合わせた病床の確保を進めますとともに軽症者、また無症状者の宿泊療養施設を拡充し医療提供体制への負担の軽減につなげてまいります。また感染リスクの高い行動の抑制など県民、事業者の皆様の御協力を得ながら感染防止行動の徹底に全力で取り組んでまいります。
さらに地域により感染状況に差があります。また現場に精通するのは地元市町ですからその地元市町と危機感を共有することが大切です。こうした形で全体の方針を決定し現場の実情に応じた適時適切な判断に努め、地域の感染拡大防止と医療提供体制の確保に向け市町と密接に連携をしてまいります。
次に、リニア中央新幹線整備への対応についてであります。
私はこれまで大井川流域の多くの方々の御意見に耳を傾けてまいりました。流域の首長の皆様方と意見を交換することをはじめ地元市町議会、商工会議所、商工会、自治会の代表、各種の団体が知事室に足を運んでこられ、リニア工事による水問題では一歩も譲らぬようにという強い要請を受けております。
大井川流域住民の皆様は、トンネル工事に伴って大井川の水が減ったり地下水に影響が出ますと日常生活に支障を来しますし産業活動ができなくなります。将来の暮らしがどうなるか分からないという不安を抱えておられるわけです。何かあったときの補償が欲しいということではないということであります。住民の皆様が真に求めておられるのは大井川の水に影響が出た後に何かするかということではなく影響が出ないようにするということであります。
問題解決に当たりましては、大井川の水資源や南アルプスの自然環境の特殊性を踏まえた適切な環境影響評価の実施、また地元に寄り添った姿勢と分かりやすい説明を事業者であるJR東海に引き続き求めてまいります。また広く会議を興し万機公論に決すべしという五箇条の御誓文の第一条のこの精神にのっとりましてJR東海との対話の状況などは広く皆様に公開するとともに、記者会見あるいは動画配信などで県内外に本県の考え、また南アルプスの特殊性、希少性を広く伝えてまいりたいと考えております。
水の問題は命に関わる問題ですから決して譲ることができません。絶対に譲れないという姿勢をこれまでも、またこれからも貫いてまいります。
リニア中央新幹線南アルプストンネルは約二十五キロでございますが、JR東海はこの区間を山梨、静岡、長野の三工区に分け工事を行うとしております。このうち静岡県内の工事の延長は約十・七キロメートルとなります。その全てを静岡工区とするのではなくそのうちの一・八キロメートルは山梨工区、長野工区で実施することとしており、両工区の山梨県内、長野県内では既に工事が着手されております。これらに対しまして議員の御指摘のとおり上善は水のごとしという老子の知恵にも学び、またほかに中国の古典には水は方円に従うあるいは知者は水を楽しみ仁者は山を楽しむとあります。知者、すなわち学徳が高いことが大切であると。また仁者、思いやりを持つことが大切であると。水と山は山水で一体です。我々にとって山は南アルプス、水は大井川です。この両方を守らなければならないという姿勢であります。
JR東海が設置した工区に制約されるのではなくトンネル工事により本県内の水資源、南アルプスの自然環境には影響を及ぼすことがないように議論、対話を行っているところでこれを続けます。
そうした中JR東海は昨年八月、先進坑がつながるまでの工事期間中山梨、長野両県へトンネル湧水が流出し一定期間は水が戻せないと表明しました。しかし国の有識者会議や県の専門部会におきましてどれくらいのトンネル湧水が流出するのか、流出するトンネル湧水をどのように戻すかについてまだ納得できる説明はございません。今後国の有識者会議におきまして県外へ流出するトンネル湧水についても議論が行われると存じますが、そのためには山梨工区、長野工区の静岡県外の区間も含めどのような工事が行われるのかを確認し工事の進状況やそこで生じている問題、一部御指摘頂きましたけれどもこれらを把握する必要があると考えております。
JR東海に対しましては、山梨工区、長野工区の工事の状況等につきましても詳細な情報の公開を求め県民の皆様の不安が払拭されるように努めてまいります。
次に、令和三年度当初予算編成についてであります。
令和三年度の財政収支試算におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による税収減等によりまして財源不足額が本年度当初予算の二百四十億円から三百五十億円に拡大する見通しです。財源が限られている中、令和三年度当初予算編成におきましては例年にない知恵と創意工夫が求められております。厳しい財政状況ではありますが感染症対策は最優先です。そしてそれとともに経済再生、生活者・事業者支援など県民の皆様の生命、暮らしを守ることに全力で取り組みます。さらにコロナ後を見据えフジノミクスによる経済の拡大、ふじのくにライフスタイルの創出により新しい静岡県づくりにも取り組んでまいります。当初予算編成におきましてはこれらの施策に必要となる経費に財源を重点配分いたします。
また、県立中央図書館、遠州灘海浜公園篠原地区野球場などの施設につきましては、総点検を踏まえた見直しの方針に沿ってウイズコロナ、アフターコロナ時代にふさわしい施設の在り方を検討し整備を進めてまいります。その一方、優先度の低い施策は大胆に削減するビルド・アンド・スクラップ、私の敬愛するシュンペーター的に言えばクリエーティブ・ディストラクション――創造的破壊でございますがこの精神でもってこれまで以上に思い切った選択と集中を進めてまいります。これは昨年度策定した予算編成五箇条、これを練ったのは佐藤政策推進担当部長でございますがこれの柱にもうたわれております。加えましてイベントの見直しやリモート化による施策の見直しなどの見直し方針により徹底した歳出の削減に取り組みます。
貴会派から御提言を賜りました三つの政策の柱、すなわち環境・SDGs、多文化共生、女性・若者、これら三つの政策の柱や規模の縮小や予算の削減を求める事業などの事業見直し提言、これらを参考にしまして事業の優先化と重点化を図り例年以上にめり張りのついた予算を編成してまいります。
次に、コロナ禍での地域外交についてのうち、外国人百人会議開催についてであります。
本県の地域外交は、徳のある豊かで自立した国際的に存在感のある地域を目指し重点国・地域を中心に交流のネットワークの構築、深化に取り組んでまいりました。現在新型コロナウイルスの感染が拡大しておりますので海外との対面による――フェース・ツー・フェースによる交流事業の多くが中止もしくは延期を余儀なくされておりますが、積極的にウェブを活用いたしまして関係の維持ないし情報発信に努めております。
例えば、これまで孔鉉佑中華人民共和国駐日本国特命全権大使、またリドワン・カミルインドネシア共和国西ジャワ州知事など各国の要人とのウェブ対談を実施いたしまして今後の交流継続などを確認しております。このほか毎週県内企業や観光事業者などへ海外の最新情報の提供、海外駐在員事務所による現地に展開する県内企業の要望を踏まえたセミナーの開催等々ウェブのメリットを生かした取組を進めているところであります。
一方、人口減少、少子高齢化等により経済成長が鈍化しておりますが、今後も本県の活力を維持するために海外の人材や外国企業を取り込むことは海外とのネットワーク、情報を有する地域外交の重要な役割であります。特にコロナ禍の現状では国内の大都市圏に集住している外国人からも選ばれるふじのくにとなるための環境整備が必要と考えております。
国内の企業ではありますけれども、世界的企業であるトヨタが富士山の麓に「ウーブン・シティ」を設置すると、来年の二月二十三日から建設を始めるということをお決めになったことはこれは本県が選ばれる、言わば地域であるという条件を備えているということのあかしではないかと思っています。
このため、議員の御提案も踏まえまして世界から憧れられる地域であるという自信を持って対面とウェブを併用し定期的に在住外国人のお声を聞く機会も設けてまいりたいと思います。具体的には本年度中に県内外にお住まいの外国人から本県が選ばれる環境整備に関する知見を得て人、企業、技術・サービスなどの海外の活力を効果的に取り込んでいくためのプラットフォームを立ち上げます。さらにインターネットを活用し大都市圏在住の外国人を対象に本県が取り組むべき環境整備の課題を明らかにするアンケート調査を実施し今後の施策に生かしてまいります。多文化共生が基本的な姿勢で、県内にいらっしゃる方は国籍、文化、肌の色、宗教、一切差別しないで県民として一緒に生活できるようにするというそういう姿勢でまいります。
県といたしましては、コロナ禍におきましても多文化共生施策と連携しながら地域外交が目指す姿の実現に向けて新たな視点、手法を取り入れた施策を推進し県民の皆様や県内企業が多くの恩恵を享受できるよう着実に地域外交を展開してまいります。
その他の御質問につきましては、副知事、関係部局長及び教育長から御答弁を差し上げます。
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