本会議会議録
質問文書
令和5年2月静岡県議会定例会 質問
質問者: | 藤曲 敬宏 議員 | |
質問分類 | 一般質問 | |
質問日: | 02/24/2023 | |
会派名: | 自民改革会議 | |
質疑・質問事項: | 1 伊豆山土石流災害について (1)行政対応検証委員会における検証 (2)行政対応検証委員会に対する知事の関与 (3)被災者に対する生活再建支援 2 砂防法による開発行為の対応について 3 熱海港旅客ターミナル及び周辺地区の再整備について 4 静岡県が持つデータの利活用について 5 社会健康医学の研究成果の実装化について |
○副議長(和田篤夫君) 次に、十九番 藤曲敬宏君。
(十九番 藤曲敬宏君登壇 拍手)
○十九番(藤曲敬宏君) 質問に先立ち一言述べさせていただきます。
二月二十日伊豆山土石流災害から一年七か月ぶりに災害残土の中から最後まで行方不明だった太田和子さんの御遺骨が発見されました。ようやく御遺族の手に届きました。絶対に諦めないという執念が探し出してくださった奇跡だと感じます。県警災害対策課をはじめ捜索活動に従事された機動隊や熱海警察署など静岡県警の皆様に心より感謝を申し上げます。これでようやく一歩前に進もうという気力が御遺族や被災者をはじめとする関係者の皆様の心に湧いてくださればと祈るばかりです。
それでは、自民改革会議所属議員として通告に従い当面する県政の諸課題について知事、副知事及び関係部局長に対し一括質問方式にて伺います。
まず、伊豆山土石流災害についてのうち、行政対応検証委員会における検証について伺います。
県議会では、昨年九月の逢初川土石流検証・被災者支援特別委員会を設置以来これまで八回にわたり行政対応検証委員会の委員長はじめ全ての委員を招致しての聴取、専門家から見た発生原因や行政手続の取扱い、被災者や熱海の支援に入った弁護士の要望意見聴取などを行い幅広く慎重に議論を重ねてきました。その結果として、二度とこのような災害を繰り返さないためにも中立公正な立場から改めて再検証が行われるべきであるという意見が委員会としての総意となりました。
特に、第三者による検証委員会のスキーム自体、土採取等規制条例に基づく届出の記載内容に不備がある状況で提出された時期を起点として、当該条例が適正に運用されていれば土石流災害は発生しなかったのではないかという点に観点を絞った内容であり、森林法、砂防法、廃掃法といった県所管の法令等が適正に運用されていれば土石流災害は発生しなかったのではないかという観点からの行政対応についてはほとんど深堀りされておらず、県と市の行政対応を検証するという第三者委員会の目的を踏まえると十分な検証がなされたものであるとは言えず報告書に対して合格点を与えられるものではないとの厳しい意見が出ました。
加えて、検証委員会として独立性をもって当時の職員からヒアリングを行うべきところ県の職員に任せていたこと、またそのヒアリングの詳細については知り得ていなかったこと、また県は初川上流の砂防堰堤建設の際の砂防指定地の指定の対応についての十分な資料提供を検証委員会に提出していなかったことなど明らかになりました。
また、検証委員会の議事録について途中から知事の指示で全て公開するという方針に変更したにもかかわらず議事録の載っていない会議の開催事実が複数回確認され、公文書同様に保管すべき関係者とのやり取りのメールを全て削除してしまった事務局の対応など行政対応の検証を行うはずである検証委員会の運営自体について大きな問題点があったことについて指摘がなされました。
この行政対応検証委員会の実態について検証委員会の出石委員は新聞社のインタビューで、事務局が森林法の解釈を示しているという点は否めない、県当局の説明を代弁しているという取り方もできるがいずれにせよ事実に意見を交ぜて説明している点は多少なりとも事務局の役割の範囲を逸脱しているのではないか、検証内容はあくまでも内部検証の延長だったと答えており、構成員である委員の方が包み隠さずメディアを通じて発信されたことは私にとっては衝撃的なことでした。
さらに報告書の信憑性について述べさせていただきますと、事務局が削除したメールでのやり取りの中に残されていた最終報告書の調整状況について県から資料を取り寄せたところ、さきに検証委員会が出した中間報告の森林法に関する記述の中で、東部農林が行った一連の対応について、土地改変面積の取扱いについても――いわゆる一ヘクタール問題ですけれども――十分な根拠と実測に基づいて判断したと考えられるという内容がありました。しかし最終報告書が提出される寸前の五月六日に、検証委員会から協議にかけられたこの内容について熱海市から、県による実測は公文書の中では確認できていないとの認識で十分な根拠があるとされている根拠も不明であるとの指摘を受け最終報告書が修正されています。事務局が県当局の意向を踏まえて報告書案を作成した結果、検証委員会の委員によるチェック機能が働いておらず事実関係と全く異なった内容が根拠のある内容として記載される寸前であった一例であると思います。
このような経緯が記録されたメールや資料のやり取りを検証委員会事務局は一切削除しています。証拠隠滅を図ったと言われても仕方がありません。こうした点を踏まえると行政対応の検証を行うはずである検証委員会がまとめた報告書において公正、中立、独立性において問題があり、特別委員会として再検証が必要であるという方向で総意を示したことは検証を依頼した責任ある立場として知事は真摯に受け止めるべきであります。
知事はこれまで、被災者のために真実を明らかにしていくとおっしゃられていました。しかしこうした点を踏まえると、行政対応検証委員会のプロセスは被災者のためではなく県の責任回避のための取組に終始していたと言われても仕方がないのではないでしょうか。問題のある行政対応検証委員会の検証の実態をお聞きになり被災者に対しどのように説明されるおつもりなのか、知事のお言葉をお聞かせください。そして今後再検証についてどのようにお考えなのかお伺いいたします。
次に、行政対応検証委員会に対する知事の関与について伺います。
第三者委員会による検証委員会は議事録が作成、公開された委員会四回と議事録が未作成の二回の会議が開催されました。当初昨年三月末までに報告書を完成する予定でしたが熱海市からの事実関係についての論点や見解等の提出が遅れから三月に中間報告を出しています。その後四月二十日にようやく熱海市から見解等が出され、四月二十八日、五月十一日の二回の会議を経て最終報告書を五月十三日に提出しています。
特別委員会の中で当時の難波県理事は、川勝知事からは第三者による検証委員会の報告書は三月までにまとめてほしいとの意向が示された、自分からはまだ熱海市の見解などが提出されてないので無理だと答えたがそれでも知事は出すべきだと言われるので中間報告という形で出しますと対応したと証言されました。青島委員長は最終報告書の記者会見で、短い時間の中で資料を検討した、他の法令まで手が回らなかったと答えており、特別委員会で招致した際にも、実質的には確かに短かったと答えています。出石委員は検証委員会の報告書に対し、結果的に市の対応に焦点が当たり過ぎ県への検証が不十分であった、十分な対応ができず個人的には悔いが残っていると新聞社のインタビューにも答えており、招致された特別委員会の中でも、知事から年度内に報告書を出せと言われたらそれに沿うように検討するのが我々の役割であると思いました、ただし年度内はあまりにも拙速であることや熱海市からの資料が出てきてないので報告書を出すことはおかしいということは委員全員が言いましたと証言しています。
以上のように川勝知事が報告書の取りまとめを急がせたことが検証委員会の検証過程に影響を与えたことは否定できません。独立性、公平性が保たれるべき検証委員会に対して静岡県のリーダーとして知事の関与があったとの証言は見過ごすことができません。
知事として検証委員会の検証に影響を与えたことに対する責任をどう捉えているのかお伺いします。
また、発生原因調査委員会は検証期間を九月まで延長させた一方で行政対応検証委員会の取りまとめを殊さら急がせた意図について伺います。
次に、被災者に対する生活再建支援について伺います。
熱海土石流災害をめぐり、犠牲者の遺族や被災者などが熱海市と静岡県に対して六十四億円余りの賠償を求める裁判が昨年十二月十四日から静岡裁判所沼津支部で始まりました。熱海市と静岡県は法的責任を争って請求の棄却を主張しています。このような裁判における原告である被災者との全面対決の姿勢が警戒区域の用地交渉を行っている今後の静岡県の河川整備、熱海市の復興まちづくり計画に影響を及ぼすことがないのか危惧するところです。実際に用地交渉のための立会いさえ拒否されている被災者もいらっしゃるとお聞きしています。熱海市も静岡県も引き続き復興に向けて誠意をもって被災者の生活再建支援を続けていくことが切に求められています。
さて、発災から一年七か月以上がたった現在でも被災した伊豆山岸谷地区は逢初川上流部の落ち残り盛土の崩落の危険性があり警戒区域として指定された住民はいまだに自宅に戻ることができません。今年一月末現在百三十二世帯二百三十五人が避難生活を続けているのが現状です。早急な上流部の安全確保を求められる中、県では落ち残りの盛土撤去作業を行政代執行で進めており夏前には撤去が終わる予定になっています。また既存の砂防堰堤のしゅんせつが完了し三月までには国の直轄事業として建設を進めてきた砂防堰堤も完成予定であり、夏以降実施が予定されている警戒区域解除に向けてようやく被災者に復興の道筋が示されるようになってきました。
そこで、今後県として災害救助法の適用期間終了後の住宅支援や税制上の減免措置など、元の場所に戻ってもう一度生活を送ろうとする被災者の皆様の生活再建に向けてどのような支援を考えているのかお伺いします。
次に、砂防法による開発行為の対応について伺います。
当時副知事であった難波氏は昨年五月の記者会見で、熱海市伊豆山で土石流の発生した初川上流の砂防ダム設置時の一九九九年に規制区域を上流域全体とせずダム付近に限定した国と県の対応は適切だったと説明しています。
しかし、砂防堰堤等の砂防設備の設置に伴い新規に砂防指定地に指定する渓流においては、原則として指定する必要がある上流域を面的に指定することになっています。逢初川の上流域全体は国が砂防指定地の指定基準に掲げる土石流危険渓流でした。また国は通達で都道府県に対し土石流危険渓流の面的指定を促しています。
当時難波副知事は、砂防法に基づく砂防指定地の指定というのは国の法定受託事務となっており指定方法の解釈権は国にある、国と調整して県の考え方を整理すると弁明するとともに、他の法令で対応できた、県としては大きな問題と捉えていないともつけ加えました。その後昨年六月二十七日に県議会建設委員会で当局は、盛土という人工物の土砂流出に関しては開発行為を規制する砂防法関連以外の法令で対応すべきと述べ、人工物である盛土への対応は砂防部門の所管ではないとの見解を示しました。ただ他県では砂防法関連の法令でこの残土の崩落に対応した事例があり、国も開発が行われたり予想されたりする区域で土地の形質変更が行われる場合に規制の範囲とするように基準を示しています。
初川上流の開発行為の場合は、旧土地所有者の鳴沢川流域から始まった宅地造成目的の切土、盛土、その後の崩落現場付近の森林法の開発行為である森林伐採、盛土、残土処分場など土地形質変更が行われた形跡が公文書から判断できます。また盛土造成前の土地の形質変更に伴い表面浸食が発生し伊豆山港が濁ったという記録も残っています。したがって盛土の造成前の段階から砂防法における治水上砂防に支障を来す恐れのある行為に当たるとみなすのが合理的な判断と考えます。
行政法に明るい専門家も、砂防堰堤と上流域の開発抑制は一体的に管理し下流域を守っていくものであり関係法令は重複適用されてもいいと述べています。このように県の見解は国との整合性が取れていないと新聞報道で指摘されています。
また、今年になって新たに静岡市葵区の藁科川上流杉尾・日向両地区で大規模な不適切な盛土が造られていた問題で、県警は砂防法の規制区域砂防指定地に無許可で土地改変行為をした疑いがあるとして造成業者への捜査に着手し二月七日に社長と元社長が逮捕されたとの報道がありました。
今回の砂防指定地管理条例違反の疑いについては、県はこれまで十七年間にわたって行政指導による注意はあったものの土砂の撤去命令を出した記録はなく、今回の捜査も県による措置命令によるものではなく県警によるものであったという点について違和感を持ちます。そして熱海の土石流災害後もこの災害の教訓が十分に生かされず静岡県の消極的な姿勢が続いていたことに大変驚いています。特に山間部における切土や盛土などの開発行為については県は砂防法における対応が極めて鈍かったと言わざるを得ません。
上流部の危険性に対して下流部の住民の安全を守ることができるのか極めて重要な問題であると考えます。改めて砂防法における開発行為の認識及び対応について、今後の県の考え方を伺います。
次に、熱海港旅客ターミナル及び周辺地区の再整備について伺います。
熱海港は、県下最大の船舶乗降客数を誇るとともに、観光のみならず初島に住む人々の生活を支える重要な社会インフラの一つであります。またコロナ禍においても昨年は三回大型クルーズ船「にっぽん丸」が入港しており、富士箱根エリアの海の玄関口としてさらなる観光資源としての可能性が見いだせるエリアであります。
熱海市では平成三十年に熱海港湾エリア賑わい創出整備計画を作成しており、一日も早い県と連携した事業着手が待たれています。中でも熱海港湾エリアの核となる旅客船待合所は昭和四十年代に建設され既に五十年以上経過していることから施設の老朽化が見られ旅客が出発するまでの待ち時間のサービス機能も必ずしも十分とは言えません。また防災の観点からも熱海港における観光客などが津波から速やかに避難できる空間の確保の優先性は高いと考えます。今後熱海市の計画と並行して熱海港湾エリアがにぎわいと魅力ある地域へと進化するため、老朽化が進む熱海港旅客船待合所及び周辺地区の再整備が求められています。
熱海にとって魅力あるエリアだけに民間活力を取り込む事業スキームの導入を期待しますが、今後どのような取り組みを検討しているのか伺います。
次に、静岡県が持つデータの利活用について伺います。
このたびの個人情報保護法の改正に伴い、行政機関等が保有する個人情報を特定の個人を識別できないように加工し民間事業者による利活用が可能になります。これは行政機関等が保有するデータが新たな産業の創出、活力ある経済社会や豊かな国民生活の実現に資するものであるということを踏まえたものであります。同様に昨年三月に作成したふじのくにデジタルトランスフォーメーション推進計画の基本理念を実現させるためにも、行政自らが保有するデータを分析、共有し新たな企画立案や行政サービスの高度化を図るなど積極的に利用していくべきだと考えます。
県では、長引くコロナの影響を受けた観光支援策の一つとしてリージョンペイという電子決済を利用した静岡元気旅の実施やこの一月までLINEを活用した食べとくキャンペーンのプレミアム付電子食事券の配付等取組を実施してきました。いずれも新型コロナの影響を受けた関連事業者を支援する目的ではありますが、県内の消費行動等を映す貴重なデータも得られたのではないでしょうか。県は施策を実施する過程で膨大なデータを入手しており、これらの情報を集計、分析することで次の政策につなげることが可能になるはずです。
個人情報の取扱いには十分配慮することは当然でありますが、デジタル戦略局がリーダーシップを取りつつ産業や観光分野に限らず県民生活のあらゆる分野において行政が持つデータの分析及び利活用を促進し、さらにはその情報を部局横断的に共有することは県の施策全般を進める上で必要な取組と考えますが、今後こうしたデータの利活用をどのように進めていくのか、県の所見を伺います。
最後に、社会健康医学の研究成果の実装化について伺います。
公園の近くに住む人はそうでない人に比べ一・二倍頻繁に運動する。歩道が歩きやすいまちでは認知症リスクが半減する。前期高齢者において、町内会など地域活動の非会員は一般会員よりも認知症リスクが二二%高く、逆に地域活動組織の役員等は一九%低い。これらの情報は長年全国の自治体から収集したデータを分析し社会的、生理学的リスク要因と健康状態との因果関係について社会予防医学の観点からエビデンスとして論証し、さらに全国の自治体と組んで高齢者の健康状態の改善を実証してきた千葉大学予防医学センターの近藤克則教授のお話の一例であります。このような取組は、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会の実現のための健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目指す厚生労働省の進める健康政策健康日本21と一致しており、統合医療における社会モデルとして注目を浴びています。
静岡県でも社会健康医学大学院が二年前に開設され健康寿命の延伸をメインテーマに掲げながら市町と大学、県による様々な研究や報告会が実施されています。特に昨年は県や市町の保健師、管理栄養士らと共に健康課題の解決に向けた意見交換会を実施してきたと伺っています。その中で同大学の田原教授は、県内自治体と一緒に取り組むことが効果的であると述べています。
今後、さらに食生活の改善をはじめ適度な運動や社会参画が県民の健康課題の解決に向けてどのような因果関係にあるのかをエビデンスを基に実装化する具体的な取組を進めるため、学識経験者と保健師や栄養士などの各市町の関係者、加えて県内企業など産学官の連携を深める必要があると考えますが、県の取組をお伺いします。以上、答弁を求めます。
○副議長(和田篤夫君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 藤曲議員にお答えいたします。
伊豆山土石流災害についてのうち、行政対応検証委員会における検証についてであります。
逢初川土石流災害につきましては、盛土の崩壊が土石流発生の要因であることから検証委員会ではこの盛土の造成に関わる行政手続の経緯や事実関係を基に県及び熱海市の行政対応について評価、検証頂いたものであります。
検証委員会の委員の皆様は特別委員会の場で、検証期間が短いと感じられていたとの認識や会議の議事録がないことは妥当でないとの見解を示されつつも、最終報告における検証委員会の考えは我々としては適正に出したとの認識を示されていると承知しております。
このことから私としましては、検証委員会による検証結果と災害発生の抑止等に向けた御提言につきましては適正にまとめられたものであり、これを全面的に受け入れ尊重するという立場に変わりはありません。御遺族や被災者の皆様にもこの点御理解を願いたいと考えております。
今回の特別委員会における議論の結果が、再検証が行われるべきとの方向であることにつきましては、委員の皆様の再発防止への強い思いによるものであると認識しておりまして大変重く受け止めております。
今後の再検証についてでありますが、特別委員会の報告書が提出されましたらまずはこれを精読いたしたいと考えております。その上で検証委員会報告書の内容と比較、精査するとともに、昨年十二月に審理が開始された逢初川土石流災害に係る損害賠償請求訴訟との関係等を整理するなど慎重に対応を検討する必要があると考えております。
今回のような災害を二度と発生させてはならないという思いは私も同じであります。不適切な盛土に対する指導監視を強化するとともに、盛土条例と新たに施行される盛土規制法を適切に運用するため来年度には組織体制も強化いたします。また今後も市町等との緊密な連携を図るとともに、職員の意識改革、行動変容に向けた取組を推進するなど不断の努力を継続することで県民の皆様の生命財産の保護に全力で取り組んでまいります。
次に、行政対応検証委員会に対する私の関与についてであります。
検証委員会は、当初報告時期を令和四年三月末に予定されていました。私はそのことを踏まえまして、熱海市からの報告が遅れているという事情は聞いておりましたけれども御遺族や被災者の皆様のお気持ちを考えますと当初の予定どおりの時期にその時点で分かっているできる限りの状況を説明したほうがよいのではないかと考えをお伝えいたしました。これを参考として検証委員会において検討された結果、令和四年三月にその時点の状況について中間報告という形で説明することが決定されたと認識しております。私はこれでよかったと。何がまだ検証不十分として取り残されているかということが、この中間報告でも分かったからであります。
また最終報告につきましては、検証委員会の委員の皆様が特別委員会の場で検証期間が短かったとの認識を示されておりますが、検証に誤りがあるとは思わないと発言される委員がいらっしゃるなど検証結果そのものは否定されていないと承知しております。
加えまして、発生原因調査委員会と検証委員会の両委員会の委員を兼ねておられる小高委員が特別委員会の場で、発生原因調査委員会は盛土崩壊の発生原因の科学的な解明に令和四年九月まで時間を要したが検証委員会は令和四年五月までで十分に検証ができていたとの趣旨の発言をされております。
これらのことを踏まえますと、令和四年五月の最終報告の時期も検証委員会において適切に判断されたものであり、検証結果も適正にまとめられたものであると認識しております。
検証委員会の委員の皆様が短期間に報告書をまとめてくださったことにつきまして大変感謝しております。こうしたものはだらだらとやるべきではありません。厳しい現実を生きている被災者の人がいらっしゃいますので緊張感を持って集中的に検証するべきものであるという考えも私は持っております。
私の責任は、今回のような災害が二度と起こらないよう行政対応の改善を確実に進めていくことであると考えております。
その他の御質問につきましては、関係部局長から御答弁を差し上げます。
○副議長(和田篤夫君) 高畑くらし・環境部長。
○くらし・環境部長(高畑英治君) 伊豆山土石流災害についてのうち、被災者に対する生活再建支援についてお答えいたします。
多くの方々が今も応急的な住まいで避難生活を送られています。その方々が災害救助法の適用が終わる今年の八月以降も自宅に戻ることができない場合には県営住宅の入居について必要な期間、家賃の免除を延長することを検討しております。また住まわれていた場所に戻り住宅の新築や改修をされる方に対しては融資の利子補給も含め住宅再建の支援策について検討してまいります。
住宅新築時における不動産取得税の減免は、被災から三年以内としておりますが住宅再建の状況を注視しつつ適用期間の延長を検討してまいります。
被災者生活再建支援制度の期間延長につきましては、住居が警戒区域内にあり支援金の支給を受けるために必要な解体作業が行えない世帯があることを踏まえ、昨年八月に申請期間を一年間延長しております。期間延長につきましては今後も被災された方の実情に合わせて柔軟に対応してまいります。
県といたしましては、被災され自宅に戻ることを制限されている皆様の早期の生活再建が図られますよう熱海市と協力して引き続き被災者支援に全力で取り組んでまいります。以上であります。
○副議長(和田篤夫君) 太田交通基盤部長。
○交通基盤部長(太田博文君) 砂防法による開発行為の対応についてお答えいたします。
砂防法の目的となっている治水上砂防とは、降雨や流水で山地斜面や渓流内の侵食によって生産される土砂を抑制することやせき止めることなどにより災害を防ぐことであります。砂防指定地は、この目的を達成するため砂防堰堤などの設置や一定行為を制限する区域として国土保全の観点から指定するものであり、開発行為を規制することを目的として指定するものではないと認識しております。
県では昨年七月に、逢初川上流域は他法令によって管理されている区域であることから、砂防堰堤を設置すれば砂防法による行為規制という私権の制限を行わなくても治水上砂防の目的は達成できるとの見解を公表しております。なおこの見解については国も同様の考えであることを確認しております。
今後も、新たに砂防指定地を指定する場合には当該箇所を含む流域が治水上砂防の意義に照らし土地の地形、地質等や他法令等に基づく土地利用に関わる規制の状況を考慮した上で指定の範囲を判断してまいります。また砂防指定地に影響を及ぼす区域において不適切な開発行為が行われている場合などでは、最悪の事態に備え高い危機感を持って関係機関に働きかけを行うなど連携して対応してまいります。
県といたしましては、治水上砂防の観点から現地の状況に応じた区域指定を行うとともに、既に砂防指定地となっている区域においては適切な管理により県民の皆様が安全・安心に暮らせるよう県土の保全に努めてまいります。
次に、熱海港旅客ターミナル及び周辺地区の再整備についてであります。
熱海港旅客ターミナルは、観光客など多くの皆様に御利用頂いておりますが、議員御指摘のとおり施設の老朽化が進むとともに周辺の公園や駐車場、飲食店と一体的に利用されていない状況であります。
一方、隣接する熱海港海岸渚第四工区で実施中の海岸環境整備事業が完成いたしますとサンビーチから続く新たな回遊動線が誕生することから、旅客ターミナル及び周辺地区におきまして人の滞留につながる再整備をしていくことが熱海市が目標に掲げる港湾エリアのにぎわいの創出に寄与するものと考えております。
このため県では、熱海港旅客ターミナルの建て替えを計画し調査予算を本議会でお諮りしているところであります。調査に当たりましては、熱海市の賑わい創出整備計画も踏まえ関係者等に広く意見を聞きながら旅客ターミナルや周辺地区を含めた官民連携手法の導入や周辺の民間投資との連携による事業の相乗効果、津波避難への活用に関しても検討してまいります。
県といたしましては、旅客ターミナル及び周辺地区が熱海港湾エリアのさらなる観光振興やにぎわいの場として地域の発展につながるよう熱海市など関係者と共に当地区の再整備に取り組んでまいります。以上であります。
○副議長(和田篤夫君) 山口デジタル戦略担当部長。
○デジタル戦略担当部長(山口武史君) 静岡県が持つデータの利活用についてお答えいたします。
県では、ふじのくにDX推進計画の政策の柱にデータの分析・利活用の推進を掲げ、オープンデータの拡充やアイデアソン、ハッカソンを通じた新たな価値の創造に加えデータに裏づけされたエビデンスに基づく政策立案、いわゆるEBPMの推進に取り組んでおります。
具体的には、県民の皆様から信頼される施策を展開していくためにデータサイエンス講座をはじめEBPM推進のための体系的な講座を実施しデータを用いて事実や課題を把握するための総合的な知識を備え分析手法を活用できる人材育成を図っているところであります。またデータを活用した施策として観光情報アプリTIPSを用いたデジタルマーケティングの取組を進めております。
来年度はこの一月に連携協定を締結したソフトバンク株式会社から人材を受け入れ新たに設けるデジタル専門官と共に伴走支援を行い各部局のデジタル技術を活用した取組を加速させるほか、産業や観光、福祉、教育、文化など県民生活のあらゆる分野において保有するデータを分析、可視化し共有できるシステムの導入を進めてまいります。
県といたしましては、デジタル戦略局がリーダーシップを取ってデータサイエンティストを育成するとともに、民間とも連携しながら行政が持つデータの分析や利活用を積極的に推進してまいります。以上であります。
○副議長(和田篤夫君) 八木健康福祉部長。
○健康福祉部長(八木敏裕君) 社会健康医学の研究成果の実装化についてお答えいたします。
本県では、県民の健康寿命の延伸を図るため健康長寿の三要素である運動、食生活、社会参加に着目した健康増進施策に取り組むとともに、令和三年四月に開学した静岡社会健康医学大学院大学や市町、企業等と連携し科学的知見に基づいた取組を進めております。
具体的には、国民健康保険に加入する県民の健診や医療・介護のレセプトデータを活用し地域の健康課題解決に向けた市町職員との意見交換会やデータ分析に関する研修会を開催しております。また昨年度から賀茂地域一市五町で実施してまいりました住民の健康状態の経年変化を調べる静岡多目的コホート研究事業の成果として、転倒防止のためのバランス機能や筋力の維持改善などに効果的なかもけん!体操を考案し市町や地元団体の御協力も頂きながら普及啓発に取り組んでおります。
さらに、今年度は高血圧対策として同大学院大学の先生方に御助言頂きながら外食企業との連携により、健康に無関心な層でも手に取りやすい野菜を多く使って満足感のある野菜マシマシ餃子の開発に取り組むとともに、働き盛り世代の健康意識の向上と生活習慣の改善を図るため事業所の御協力を頂きながら家庭で血圧を測定することが従業員の習慣となるよう取り組んでおります。
県民の健康課題の解決に向けましては科学的知見の下、県、静岡社会健康医学大学院大学、市町、企業等が連携し一体となって取り組むことが重要であると考えており、今後は産学官連携の健康づくりに関する好事例の情報発信などを通じてこれまでの連携をさらに強化しオール静岡で県民の皆様の健康寿命延伸に取り組んでまいります。以上であります。
○副議長(和田篤夫君) 藤曲敬宏君。
(十九番 藤曲敬宏君登壇)
○十九番(藤曲敬宏君) 答弁ありがとうございました。
それでは、意見を一つ、再質問を一つさせていただきます。
まず、意見です。検証委員会の再検証について知事から今答弁頂きました。再検証については明確な回答を頂けませんでした。特別委員会の報告書を確認してからということでしたのでぜひそれを待ちたいと思いますけれども、このまま終了するということになると先ほど私質問の中で言いましたけれど報告書自体の信憑性についても問われているということもぜひ確認していただきたいというふうに思います。
このまま終了するようなことがあればですね、裁判対策の保身のための報告書と取られても仕方がないのかというふうに思います。トップの姿勢が問われています。県の組織文化を変えられるのか今後の知事の決断をしっかりと見極めたいと思います。
それでは、再質問です。砂防関係で、もう一つ再質問させていただきます。
今、答弁を頂きました治水上砂防の話の考え方をお話聞きましたけれども、それによると開発行為、自然行為を問わないで治水上砂防に支障を来すおそれがある場合、下流域の住民の生命を守るために今後砂防指定地の見直しを含めて検討する用意があるというふうに私はその今の答弁から受け取ったんですけれども、そのような考え方でよろしいでしょうか。以上、答弁を求めます。
○副議長(和田篤夫君) 太田交通基盤部長。
○交通基盤部長(太田博文君) 砂防法の適用、砂防指定地についての再質問についてお答えいたします。
議員御指摘の治水上砂防の観点、これが砂防指定地の指定に当たる大前提となりますのでこの観点から流域の荒廃状況でありますとか、これは盛土の有無あるなしにかかわらず流域の発生源である上流域の荒廃状況でありますとか、そこの崩壊地の状況についてチェックするとともに、その渓流における土砂の浸食、河岸の浸食状況や堆積状況、それを総合的に判断して治水上砂防の必要性があるかないかをそこで判定します。
それに対する対応策として砂防施設の設置あるいは行為の規制ということなり、どういった手段を取ればそれに対応できるかということを次に検討し、その対応を必要とする範囲について砂防の指定を行うと、そういう流れになります。その際上流域で他法令で森林法の適用を受ける、例えば五条森林であるとか、砂防のですね、保安林がかかっているとかそういった状況がある場合はそちらの管理者とそちらの法令での対応も併せ持って検討し最終的に指定を考えていくと、そういう流れで進めてまいりたいと考えております。以上であります。
○副議長(和田篤夫君) 藤曲敬宏君。
(十九番 藤曲敬宏君登壇)
○十九番(藤曲敬宏君) ありがとうございました。
今までよりちょっと一歩進んだのかなというふうに思います。砂防法非常に難しく、捉え方、この解釈の仕方ってあると思うんですけれども、私たちは今回の災害のこと、犠牲者のことを考えたときですね、砂防法で何が守れるのかということを、そういう視点で判断をしていくということをぜひしていただきたいと思います。県民の命を守るために変えていくべきこと、またできることを、何ができるか、そういうことをぜひやっていただきたいというふうに思います。
ぜひ再発防止の観点から、不適切盛土百九十六か所まだ県内にあります。これについても今お話のようにですね、本当に治水上砂防において必要があれば砂防指定地の見直しも含めてぜひ再点検していただきたいというふうに思います。以上、質問を終わります。(拍手)
○副議長(和田篤夫君) これで藤曲敬宏君の質問は終わりました。
議事の都合により休憩します。
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