本会議会議録
質問文書
令和2年12月静岡県議会定例会 質問
質問者: | 伊丹 雅治 議員 | |
質問分類 | 一般質問 | |
質問日: | 12/09/2020 | |
会派名: | 自民改革会議 | |
質疑・質問事項: | 1 パラレルキャリアによる職員の能力向上について 2 静岡県耐震改修促進計画の次期計画の策定について 3 静岡県立工科短期大学校における人材育成の方向性につい て 4 AOIプロジェクトの成果の社会実装について 5 子供の学力の伸びをはかる新たな学力調査について 6 新型コロナウイルス感染症の影響下における労働委員会の 現状と今後の取組について |
○議長 (山田 誠君) 開議に先立ち、 御報告いたします。
本日は、 説明者として尾上労働委員会事務局長が出席しておりますので御承知おき願います。
○議長 (山田 誠君) ただいまから会議を開きます。
議事日程により、 知事提出議案第百三十四号、 第百三十五号及び第百三十九号から第百五十七号までを一括して議題とします。
ここで、 後半グループの議員が退出するため休憩します。
○議長 (山田 誠君) ただいまから会議を再開します。
質疑及び一般質問を行います。
通告により、 九番 伊丹雅治君。
(九番 伊丹雅治君登壇 拍手)
○九番 (伊丹雅治君) 私は、 自民改革会議の所属議員として当面する県政の諸課題につきまして通告に従い知事、 副知事、 関係部局長、 教育長、 教育部長並びに労働委員会事務局長に一括質問方式にて質問いたします。
初めに、 パラレルキャリアによる職員の能力向上について伺います。
パラレルキャリアとは、 ピーター・ドラッカーが著書 「明日を支配するもの」 の中で提唱した新概念で会社勤めなどの本業をしっかりと持ちながらそれ以外の社会活動に取り組み、 その相互の学びを生かして自己成長していく新しい生き方のことです。 同書では教会の運営やガールスカウトのリーダーといった地元での社会活動を引き受けることが例として挙げられています。
パラレルキャリアを実践することで組織の壁を越えて多様な体験をし異なる価値観を持つ人々に接する機会を持ちます。 このような越境学習を経た個人がその体験で得た気づきを組織内に持ち帰って共有すれば組織全体の多様性につながり、 この多様性がイノベーションの原動力になる可能性があると人材育成に詳しい法政大学の石山恒貴教授は分析をしています。 職員の皆さんがその能力を最大限発揮されることは県民サービスの向上につながります。
これまで、 県では公務に求められる知識や能力を習得させるため職場研修、 職場外研修、 自己啓発の三つの柱を据えた人材育成が行われてきたものと承知しています。 しかし時代の変化が激しい中においていわゆる三本柱を中心としたこれまでの人材育成のみで今後も十分だと言えるのでしょうか。 公務に必要な知識経験だけでなく現在の職務の外にある知識経験に目を向けることは職員の視野の拡大や資質の向上に役立つものと考えます。
総務省は、 令和二年一月に営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する調査の結果等についてという通知で社会貢献活動等を含む職員の兼業の許可に適切に対応するよう各自治体に助言をしております。
営利を目的とした副業、 兼業、 これを進めることは現時点では課題が多いものと思われますが、 社会貢献活動などを含めたいわゆるパラレルキャリアという考え方に基づき職員が公務以外にも活動の幅を広げることは職員自身の資質向上という面でも地域の活性化という面でも、 ひいては県という組織や県民全体にとっても意義のあることであると考えます。
そこで、 県では広い視野を持った職員を育成するためにどのような取組をしているのか、 またパラレルキャリアの視点を人材育成に取り入れていくことは職員の能力向上に有効だと思いますが、 今後県としてはどのように考えていくのか伺います。
次に、 静岡県耐震改修促進計画の次期計画の策定について伺います。
県では、 建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づき静岡県耐震改修促進計画を策定し県内の住宅、 建築物の耐震改修の促進に取り組んでいます。
平成二十八年四月に策定され来年三月に五年間の計画期間が終了を迎える現行の計画では、 今年度末までに住宅の耐震化率を九五%とすることを目標に掲げています。 しかし直近の住宅の耐震化率としては平成三十年時点で八九・三%にとどまっており、 約八七%という全国の値を上回ってはいるものの目標の達成は極めて困難な状況であると言わざるを得ません。 次期計画においては住宅の耐震化率を引き続き目標に掲げるのか、 掲げるとしたらどのような目標を掲げるのか伺います。
また、 住宅の耐震化率を向上させる県の施策の柱である木造住宅の耐震補強プロジェクト 「TOUKAI―0」 では全国に先駆けて木造住宅の耐震補強に対する補助制度を創設し市町への助成を行ってきました。 全国第一位の二万四千戸を超える成果を残していることは評価をしております。
しかしながら、 プロジェクト開始から二十年近くが経過し耐震補強に意欲的なほとんどの方は既に実施済みであることや、 耐震化が必要な昭和五十六年五月以前の旧耐震基準で建てられた住宅は所有者の高齢化が進んでいることに加えその多くが築四十年以上と住宅自体の老朽化が進んでいることから、 耐震補強してまで住み続けるだけの価値が見いだせない方が多く残っているとも推察されます。 そのため耐震化率の向上には今まで以上の困難が予測されます。
このような状況を踏まえて、 次期計画においては今までと違う切り口の取組が必要と考えます。 次期計画において住宅の耐震化の促進にどのように取り組むのか伺います。
次に、 静岡県立工科短期大学校における人材育成の方向性について伺います。
本年五月に国会に提出されたものづくり白書においては、 二〇二〇年一月以降の新型コロナウイルス感染拡大をはじめとした様々な要因により我が国製造業を取り巻く環境はかつてない規模と速度で急変しつつありかつ極めて厳しいものとなっているとされ、 この不確実性こそが我が国製造業にとって大きな課題となっているとされています。 そして白書の中ではこうした不確実性の時代に取るべき戦略としてデジタル技術革新に対応できる労働者の確保・育成を行い、 付加価値の創出による個々人の労働生産性をより高めることの重要性が提起をされています。
こうした中、 私の地元の東部地区にある沼津技術専門校が清水技術専門校とともに静岡県立工科短期大学校として新たに開校することとなると伺い、 その行く末に多大な関心を持つとともに大いなる期待をしているところであります。
現在の技術専門校は、 ものづくり現場において即戦力となる人材を育成している学校として一〇〇%の就職率を維持し地元の産業界から期待をされていることは承知しております。 しかしながら先ほど申し上げましたとおり、 IoTをはじめとした急速な技術革新の状況、 世界の製造業の現状に目を転じますと従来と同様の人材を育成しているだけでは社会の変化には対応できないことは自明のことであり、 このような不確実性の時代では本県のものづくり県としての地位も決して盤石であるとは言えないものと認識をしております。
そこで、 新たに開学する工科短期大学校では入学する学生をどのような人材として育成をしようとしているのか、 その目的を伺います。 あわせてどのような教育内容とするのか、 その方針についてお伺いいたします。
次に、 AOIプロジェクトの成果の社会実装について伺います。
新型コロナウイルス感染症の拡大により日本の農業の課題が浮き彫りになりました。 世界の食料貿易システムが大きく崩れる中、 国民への食料の安定的な供給確保が脅かされました。 また生産者の販路の固定化も懸念されました。 さらには外国人技能実習生の来日が途絶え、 農繁期を迎える現場は人手不足の深刻さが増しました。
一方で、 国産農産物こそ大切な一番頼れる存在ということを国民が再認識する機会につながったり、 生産者がインターネット販売を始めることで販路の多角化が進んだり、 労働力不足を解決するためにスマート農業が普及したりとこれまでの農業における言わば負のサイクルを断ち切るチャンスに遭遇しているとも言えます。
そのような中で、 私がコロナ禍における本県農業のピンチをチャンスに変えると期待するのがAOIプロジェクトであります。
県では、 平成二十九年からAOI−PARCを拠点に農業の飛躍的な生産の向上や農業を軸とした関連産業のビジネス展開の促進を目的としたAOIプロジェクトを推進しておりますが、 研究開発に取り組む中、 機能性表示の生食用ケールや高糖度トマトの安定生産を実現するポット栽培システムなどの成果が出始めております。 本年一月にはAOI−PARC周辺の六JAと連携協定を締結し開発成果の普及に向けた取組も始まっていますが、 最も重要なことは実際に研究の成果をどのように産地や生産者へ普及をさせていくのかということであります。 そのためにはAOI−PARCの資源を活用し先端農業技術を活用できる人材の育成、 これも必要になります。
そこで、 AOIプロジェクトの成果の社会実装に向けたこれまでの取組と今後の展開について伺います。
次に、 子供の学力の伸びをはかる新たな学力調査について伺います。
小中学校では、 全国学力・学習状況調査が小学校六年生と中学校三年生を対象に実施され、 児童生徒の学力や学習状況を把握、 分析して指導に生かし調査問題を活用した授業改善を行っていると伺っています。 また県教育委員会におきましても県内の結果や調査問題を活用して様々な学力向上施策に取り組んでいるものと承知しています。
全国の自治体で実施されている学力調査は、 都道府県別の結果が公表され話題になりますが、 受検者が毎年変わるため一人一人の児童生徒の成績の経年変化ははかれません。
一方、 埼玉県では小学校四年生から中学校三年生までを対象として県独自の学力調査を実施しています。 この調査は子供の個々の学力の伸びはもちろん非認知能力の変化もはかれるもので、 それらを活用して学力の向上に一定の成果を上げていると聞いています。 学力調査の平均点だけを見ても学校の真の教育力は分かりません。 学力を伸ばしている学校がいい学校であります。 学力の伸びを経年で把握できる学力・学習状況調査の必要性を感じています。
また、 学校は学力を向上させることに加え自制心や自己効力感といった非認知能力を伸ばす場所でもあると考えます。 国際機関のOECDも非認知能力を重要視していますし、 新学習指導要領にも教育の柱の一つとして生きる力が明記されました。 これからの学力・学習状況調査は非認知能力にも注目すべきです。
新たな学力調査は、 埼玉県を皮切りに福島県、 鳥取県、 高知県、 宮城県白石市、 東京三鷹市、 広島県福山市、 島根県益田市など全国に拡大しており大きなトレンドとなっています。 本県でも県独自の学力調査を実施することにより子供の個々の学力の伸びや非認知能力を今以上に正確に把握、 蓄積し、 それを各学校がPDCAサイクルの中で活用することで学力や学習意欲等の向上が期待できるのではないかと考えます。
また、 来年度からはGIGAスクール構想下における一人一台端末が実現することもあり、 この独自調査にコンピューターを利用し、 効率的かつデータ分析が容易にできる試験方式でもありますCBTを積極的に導入することについても検討すべきではないかと考えています。 このことにつきまして県教育委員会としての所見を伺います。
次に、 新型コロナウイルス感染症の影響下における労働委員会の現状と今後の取組について伺います。
新型コロナウイルスの感染拡大は雇用情勢にも大きな影響を及ぼしております。 雇用情勢を表す指標の一つでもあります有効求人倍率については十月の県内における数値が〇・九三倍となっており、 六月から五か月連続して一倍を下回るなど厳しい状況が続いております。 また厚生労働省の発表によれば、 新型コロナウイルスの感染拡大に関連して解雇あるいは雇い止めをされた方は十二月四日の時点で見込みも含めまして全国では七万五千三百四十一人と七万人を超え、 県内におきましても千六百人以上に及んでおります。
産業別に見ましても製造業、 宿泊・飲食業、 小売業などをはじめとした多くの業種において解雇や雇い止めが増加するなどその影響は大きく、 今後の雇用情勢はさらに予断を許さない状況になると考えられます。
これらの雇用を取り巻く環境の急激な変化の中で、 県内におきましても新型コロナウイルスの感染拡大の影響による派遣先の業務縮小に伴い突然職を失う事案などが起きているとのことであり、 こうした労働者と使用者との間におけるトラブルはこれからますます増加していくことが懸念されます。
このため、 労働組合と使用者との間、 あるいは労働組合を介さない個人の労働者と使用者との間に生じた紛争の結果に向けて支援を行うという労働委員会の役割の重要性がいつにも増して高まっているものと考えられます。
そこで、 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、 労働委員会として現状をどのように認識しているのか、 また今後どのように取り組んでいくのか、 そのことについて伺います。 以上、 答弁を求めます。
○議長 (山田 誠君) 川勝知事。
○知事 (川勝平太君) おはようございます。
伊丹議員におかれましては、 冒頭ドラッカーのパラレルキャリアについて御紹介頂きました。 日本には昔から農業の傍ら副業をすると、 あるいは農業の傍ら公務員になると兼業というのがございまして実態としてはパラレルキャリアというのがあったと思いますけれども、 ドラッカーの意味合いは議員の御指摘のとおり社会貢献活動というそういう意味合いを持たせていると存じます。
議員の皆様方もそれぞれのお仕事をお持ちの方もいらして、 それプラスアルファこの地方の議員を務められると。 これは広い意味での社会のため人のためにする行為ではないかと同時にそれがキャリアになっているということだと思います。 皆様も私も一種のこれは人のため世のためにする、 そういう意味でのキャリア形成になっているかとも思います。 特にこういうコロナという厳しい時代におきましては、 余裕のある方は人のため世のために何ができるかということを考えるそういう時期になっているということでこの考え方は公務員にも、 当然これは基本的に公僕ですからその方たちが何ができるかということを併せて考えるというのは極めて重要であるというふうに承りました。
私は、 数ある質問の中で静岡県立工科短期大学校における人材育成の方向性についてお答えをいたします。
本県は、 我が国有数のものづくり県であります。 近年AIあるいはIoT、 ロボットといった先端技術の著しい進展を背景に、 ものづくりの背景には大きな変革の波が押し寄せております。 加えまして新型コロナ危機の到来は自動車産業などのサプライチェーンを寸断し本県の産業全体に大きな影響を与えています。 危機に直面してデジタル技術を活用した柔軟な生産供給体制の構築などが喫緊の課題となっている中、 こうした変化に対応できる人材が求められていると存じます。
清水技術専門校と沼津技術専門校の教育内容を高度化いたしまして来春四月に新たに静岡県立工科短期大学校を開校いたしますが、 これはこうした変化に的確に対応できる人材の育成を目指し現場に立って自ら考え行動できる人材を育成すること、 言わば実学を身につけた才徳兼備の人材を育成するというこれが基本理念となっております
この基本理念の下目指すべき人材の姿といたしましては、 まずは現場主義に徹し多様な人々と協働できる人材であります。 そして社会の変化に対応できる能力を培い高い現場力を持った人材を養成してまいります。 さらに学び続け成長していく人材を育成することが重要です。 ライフステージに応じた職業能力の開発を行い、 ものづくりに誇りを持てる教育を実践してまいります。
本校は、 機械・制御技術科あるいは電子情報技術科など六科から成っておりまして、 百三十名の学生を二年間で本県産業を支える高度な技術人材として養成してまいります。 具体的にはAI、 IoT、 ビッグデータの活用など最新技術を各科のカリキュラムに盛り込みまして次世代のものづくりに対応した人材の育成を進めてまいります。 また幅広い知識と確かな技能を身につけるため、 少人数で実習等を重視した実践的な教育、 実学を行いまして社会人として豊かな教養、 またコミュニケーション能力を養ってまいります。 加えて地元企業の技術者を講師に招くなど地域企業と連携した実務教育の充実を図ってまいります。
このように、 静岡県立工科短期大学校はものづくりの基礎技能から最先端の技術までを丁寧に学び、 次世代のものづくりに対応できる実践的な才徳兼備のリーダーを養成する機関でございます。
県といたしましては、 静岡県立工科短期大学校が高度産業人材の養成機関としてだけでなく、 ここで学ぶ若者にとりまして確かな技術を身につけ自らの夢を実現する飛躍の舞台となるよう高い志と理念を掲げてその教育内容の充実に取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、 副知事、 関係部局長から御答弁を差し上げます。
○議長 (山田 誠君) 難波副知事。
○副知事 (難波喬司君) AOIプロジェクトの成果の社会実装についてお答えをいたします。
ICTやロボットなどの先端技術を活用して高付加価値化、 省力化などを実現するスマート農業の導入が進むなど農業は大変革期にあります。 そこに新型コロナウイルスによる社会経済環境に大きな変化が加わったことで健康に寄与する農産物の機能性向上や人手不足の解消など新たな先端農業技術の開発、 普及に対する期待がこれまで以上に高まっております。
こうした中、 本県では先端の科学技術を農業分野に活用し生産性の飛躍的向上と産学官金連携による新たなビジネス展開を推進するAOIプロジェクトに取り組んでまいりました。 その結果機能性の高い農産物や低コストで品質を高める栽培技術などこれまでに十件の研究開発が実用に至りました。 重要なことはこうした技術を早期に実用化し社会実装と言われる生産現場への普及を進めることです。 これによって生産性の向上や生産者所得の増大につなげていくことが重要です。
このため、 AOI−PARC周辺の六つのJAと連携協定を締結いたしました。 それらJA管内の生産者に協力頂いて開発成果の社会実装を加速化させることにいたしました。
まず、 現在開発しております光合成の量の最大化などによりイチゴの収量を増加させる技術について生産現場での実証試験に着手しました。 さらに開発成果であるGABAを安定的に含むソフトケールの栽培手法やトマトの糖度を高める栽培手法について収益性の強化につながる効果を検証するとともに、 産地の実情に合った生産技術体系を確立するための現場実証も始めたところです。 こうしたJAや生産者と連携した取組を研究開発機関や農林事務所などと積極的に支援することで広く県内に展開をしてまいります。
また、 これらを進めるためには議員御指摘のとおり先端農業技術を活用できる人材の育成が大変重要です。 このためには農林事務所や農業団体の指導員などが率先してスマート農業に対応した技術力を高めていく必要があります。 このため、 これらの指導員などを対象に高度な環境制御技術やデータを活用した農業技術についてAOI−PARCの研究者や施設を活用して研修を実施してまいりました。
加えまして、 今年度開学した農林環境専門職大学ともデータを活用した農業や研究に関する人材育成についての連携を開始いたしました。 今後はAOI−PARCの研究者による最先端の研究開発に関する講義を大学で実施するなどAOIプロジェクトに集積した知を次世代の人材育成にも生かしてまいります。
県といたしましては、 本プロジェクトを着実に推進し持続的なイノベーションの創出とそれが社会実装されそれを進める人材が育ち、 それによってまたイノベーションが生まれるという好循環を形成してまいります。 以上であります。
○議長 (山田 誠君) 杉山経営管理部長。
○経営管理部長 (杉山浩一君) パラレルキャリアによる職員の能力向上についてお答えいたします。
これまで、 県では民間企業等での実務に従事する派遣研修ですとか異業種との交流研修などを通じ幅広い知識・技術、 コスト意識や経営感覚の習得による職員の資質向上を図ってまいりましたが対象者は限られたものであります。 また職員の兼業につきましても地方公務員法の規定を厳格に運用してまいりました。
しかしながら、 令和二年一月の総務省通知の趣旨にありますとおり多様な働き方の実現等の背景を踏まえ職員が地域社会のコーディネーターとして活躍するなどパラレルキャリアを実践することは職場では得難い知見の獲得や人生の豊かさにもつながるものであり、 今後推進していきたいと考えております。
具体的には、 地方公務員法に定める兼業許可に当たり一定の条件を満たせば従事できる事例を収集しあらかじめ可視化するなど職員が公務外の社会貢献等に参加しやすい環境を整えてまいります。
県といたしましては、 職員が公務以外の業務や活動を経験する機会を持つことができるよう後押しすることで広い視野と柔軟な発想を身につけた人材の育成を図ってまいります。 以上であります。
○議長 (山田 誠君) 市川くらし・環境部長。
○くらし・環境部長 (市川敏之君) 静岡県耐震改修促進計画の次期計画の策定についてお答えいたします。
次期計画は国の基本指針を踏まえて年度内を目途に策定を進めており、 住宅の耐震化率の目標は専門家の意見も参考に現行計画の目標九五%を五年間延長し令和七年度の目標に掲げたいと考えております。
全国に先駆けて耐震補強への補助制度をスタートしたプロジェクト 「TOUKAI―0」 は、 多くの方に活用され補助実績は本年十月末時点で二万四千四百二十二戸となりました。 しかしながら議員御指摘のとおり耐震補強に関心のあるほとんどの世帯は既に耐震補強を終え、 今なお耐震性のない住宅にお住まいの方の命をどのようにして守るのかが課題となっております。
そこで、 今後の取組といたしましては各世帯の事情に応じ建て替えや住み替え、 それも困難な世帯には耐震シェルターや防災ベッドで命を守るというように耐震補強以外の対策も併せて推進してまいります。
県といたしましては、 コロナ禍で在宅避難の重要性が高まっていることからも引き続き住宅の耐震化の促進に取り組むとともに、 高齢者などの災害弱者を守るという観点も踏まえ市町や地域の防災組織などとも連携しながら各世帯の事情に即した様々な対策を提案し、 一人でも多くの命を守る取組を総合的に推進してまいります。 以上であります。
○議長 (山田 誠君) 長澤教育部長。
○教育部長 (長澤由哉君) 子供の学力の伸びをはかる新たな学力調査についてお答えいたします。
子供たちに確かな学力を身につけさせるためには、 学力や学習意欲の状況等を把握、 分析し指導を行うことが重要であります。
県教育委員会では、 全国学力・学習状況調査終了後の各学校における採点結果を踏まえた授業改善と結果公表後県全体の分析、 検証を生かした授業改善によるW−PDCAサイクルにより学力向上に取り組んでおります。 加えて各学校で実施している単元テスト、 定期テストの結果を学校全体で共有し経年的な変化をつかむことで指導の充実を図っております。 また全国学力・学習状況調査の 「人の役に立つ人間になりたいと思う」 などの非認知能力に関する質問の回答状況を学校にフィードバックし、 さらに各学校におきましては毎年実施しております児童生徒等へのアンケートにより非認知能力の状況を確認し生徒指導体制の見直しや学校行事の工夫等に反映させております。
近年の全国学力・学習状況調査におきましては、 こうした取組の成果が現れておりますことから県独自の調査の導入につきましては他県の状況やその効果を確認し研究してまいります。 またCBTの活用につきましては国における全国学力・学習状況調査への導入の検討状況を注視してまいりますが、 来年度から小中学校に一人一台端末が整備されますことから端末を利用した学力や学習状況の効果的な測定方法等について検討してまいります。
県教育委員会といたしましては、 引き続き学校及び市町教育委員会が児童生徒の学力や学習状況等を適切に把握し児童生徒一人一人の資質、 能力を確実に伸ばす教育に生かすことができるよう支援してまいります。 以上であります。
○議長 (山田 誠君) 尾上労働委員会事務局長。
○労働委員会事務局長 (尾上景子君) 新型コロナウイルス感染症の影響下における労働委員会の現状と今後の取組についてお答えいたします。
労働委員会は、 労働組合と使用者との紛争である不当労働行為の審査事件や労働争議のあっせん及び労働者個人と使用者との紛争である個別的労使紛争のあっせんを行っております。
当委員会のあっせん制度は、 三人のあっせん員が公共の利益、 労働者、 使用者それぞれの立場から粘り強い説得により歩み寄りを促し解決に導くことが大きな特徴であり、 新型コロナウイルス感染症の影響による労使紛争の解決にも役立つものであります。 今年度の取扱件数は十一月三十日現在前年同期並みの十八件でありますが、 そのうち新型コロナウイルス感染症の影響によるものは雇用調整助成金などの効果もあり労働争議のあっせん三件となっております。
しかしながら、 今後の感染拡大状況によりましては雇用情勢のさらなる悪化を招き申請件数が増加することも考えられます。 このため事務局職員が飲食業の多い静岡市及び浜松市、 宿泊業の多い伊豆地域の市町や商工会議所、 商工会の労働相談窓口を訪問しあっせん制度の周知を図り、 相談からあっせんによる解決につながるよう取り組んでいるところであります。
労働委員会といたしましては、 懸念される新型コロナウイルス感染症の影響による労使紛争の増加に的確に対応し労使紛争の円満な解決に向けた支援を行ってまいります。 以上であります。
○議長 (山田 誠君) 伊丹雅治君。
(九番 伊丹雅治君登壇)
○九番 (伊丹雅治君) それでは要望を一点、 再質問を一点させていただきます。
まずは要望ですが、 AOIプロジェクトの成果の社会実装についての要望であります。
このAOIプロジェクトのゴールは私はやっぱり栽培の技術の開発とか品種の開発ではなくて、 やはり一人でも多くの農業者に普及をさせて産地化をさせていくことだと思います。 そのゴールに向かうためには実際に農業者が取り組むその成功モデルを示す必要があるというふうに考えます。
では、 何をもって成功と私が考えているかと言いますと私はもうかる農業を実現してこそ初めて成功と呼べるというふうに思います。 そのため社会実装が現在行われていますこのトマトとソフトケールこれをしっかりと成功させるということが重要だと思います。 そのためには販路の開拓というのが欠かせないというふうに思います。
AOIプロジェクトは、 ビジネスマッチングというのは非常に得意としているというふうに私は思いますが、 販路の開拓までというふうになりますとやや少し難しいのかなというふうに私は思っています。
そこで、 経済産業部のマーケティング課というすばらしい課がありますので、 ぜひその力をお借りし連携していただいて販路をしっかりと開拓していただいて、 そして本当の意味での成功に導いていただきますよう強くこれ要望したいと思います。
また、 初期投資のコストダウンですね。 これも知恵を絞っていただきたいというふうに思います。 生産現場の実際にソフトケールと高糖度トマトの現場を見てきましたけれども、 やはり彼らはそのプロジェクトの技術というのを最大限に生かすために生産者がそれぞれ数千万円のハウスを新設しています。 もちろん彼らの判断でこれやっていることでありますが、 やはり日本の農業を現実的に支えているのは九五%以上の家族経営体であります。 この家族経営体に普及させなければ産地化というのはまだまだ今難しいと思います。
そういった中でやはり少しですね、 ハウスに数千万円というのはやはり今後普及させていくにはネックになるのかなというふうに私は思っています。 こういったことも社会実装をすることに当たり見えてきた課題だと思いますので、 ぜひ初期投資のコストダウンという部分、 リースの検討とかも含めて少し知恵を絞っていただいて意識をしていただきますよう要望いたします。
それでは再質問でありますが、 新たな学力調査について再質問いたします。
埼玉県のですね、 私が御紹介した学力調査についてはほとんど御答弁の中に触れていただけませんでした。 改めて御紹介をさせていただきますと、 ポイントを絞ってお伝えさせていただきますと、 これまでの学力調査というのは受検者は当然毎年変わります。 一人一人の児童生徒の成績の経年変化ということは、 つまりどれだけ学力が伸びたか、 また反対に伸びなかったかというのはこれははかれません。
一方で、 この埼玉県の学力調査は小学校四年生から中学校三年生までの児童生徒を対象に学力の変化を継続的に把握できる調査を行っています。 このため一人一人の子供たちがどれだけ伸びたかという部分を把握できる点が大きく異なります。
OECDが実施しているPISA 国際学力到達度調査と同じですね。 IRT 項目反応理論というテスト理論を採用して問題も難易度をそろえているため、 同じ子供の変化を継続的に把握できるデータが取れるそうであります。
もう一つ画期的なのが、 自制心や自己効力感、 勤勉性、 やり抜く力といったいわゆる非認知能力を調査し学力との相関をはかっている点であります。 先ほどの御答弁では非認知能力を既に調査をしているということでありましたが、 果たして十分なものと言えるでしょうか。 現在の調査には私課題が二つあると思います。
まず一点目は、 一人一人の児童生徒の非認知能力を経年で追いません。 二点目は埼玉県では学問的な裏づけに基づいて調査項目をセットしているということですが、 本県の調査は学問的な裏づけをもって調査しているのでしょうか。 非認知能力に注目しもう少し踏み込んで調査をする必要があると考えますが、 今後の方向性について改めて伺いたいと思います。 以上、 答弁を求めます。
○議長 (山田 誠君) 長澤教育部長。
○教育部長 (長澤由哉君) 新たな学力調査につきまして再質問にお答えをいたします。
非認知能力につきましてでありますけれども、 議員からも御質問にございましたとおり小学校で今年度から全面実施となった新学習指導要領におきましても主体的、 対話的で深い学びというものが示されています。 この中で日々の学習を通して主体性ですとかコミュニケーション能力といった非認知能力の伸長が期待されております。 これにつきましては私ども県教育委員会といたしましても非常に重要であるということを認識をしております。
先ほど御答弁申し上げましたように全国学力・学習状況調査、 それから日々の学校のアンケートこういったものをきちんと分析をしていくとともに、 議員から御紹介頂きました先進県で取り組んでいるような取組状況の情報収集と研究をさらに進めまして、 よい取組、 効果的な取組があるようでしたらそういったものを取り入れる形で子供たちの非認知能力が伸長できますよう市町教育委員会や各学校を支援してまいりたいと考えております。 以上でございます。
○議長 (山田 誠君) 伊丹雅治君。
(九番 伊丹雅治君登壇)
○九番 (伊丹雅治君) 福島県の教育委員会と埼玉県の教育委員会は義務教育の充実に関する連携協定というのを結んでいます。 その中で新しい学力調査を通じた新しい自治体間の連携というのも進んでいます。 高知県では県の学力調査とはまた別に小規模学校を対象とした中山間地域への支援事業の中で実施をしています。
不確実性の時代であります。 そして変化の激しい時代であります。 そういった時代を子供たちが生き抜いていくために非認知能力にもぜひ踏み込んでいただきますようお願い申し上げまして私の一般質問を終わります。 (拍手)
○議長 (山田 誠君) これで伊丹雅治君の質問は終わりました。
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