本会議会議録


議会補足文書

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平成30年2月静岡県議会定例会
知事提案説明
発言日: 02/20/2018
会派名:


○議長(杉山盛雄君) 議事日程により、知事提出議案第一号から第八十六号までを一括して議題とし、知事の説明を求めます。
 川勝知事。
       (知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 平成三十年度の当初予算案並びにその他の議案を提出するに当たり、その概要を御説明申し上げ、あわせて当面する県政の課題について所信の一端を申し述べます。
 本年は明治維新から百五十年の節目の年であります。また明年には平成の世も改まり新しい時代を迎えます。東京時代を総括するとともに、人口減少や高齢化など立ちはだかる大きな課題の克服に向け新しい国づくりを考える時を迎えております。
 こうした課題をしっかりと踏まえ、新しい十年に向け世界から見たふじのくにという視点に立ってさらに魅力のある地域づくりを進めるため、静岡県の新ビジョン富国有徳の美しい“ふじのくに”の人づくり・富づくりを策定いたします。これまで県議会を初め総合計画審議会や県民の皆様から幅広い御意見をいただきながら策定を進めてまいりました。さらに今議会での御議論、御意見を踏まえまして成案を得てまいりたいと考えております。
 新ビジョンが目指しているのは、居心地がよく誰もが努力をすれば人生の夢を実現し幸せを実感できる地域社会の実現であります。本県の地域資源、人材群は焼津市出身で「プラサ ヴェルデ」や富士山静岡空港展望デッキの設計に携わった建築家の長谷川逸子氏が今月十二日英国の王立芸術院建築賞を受賞したほか、静岡文化芸術大学がアジアで初となるフェアトレード大学に認定されるなど平成二十五年六月の富士山世界遺産登録から実に一カ月に一件を超えるハイペースで次々と世界的な評価を得ており、現在六十七件となっております。また観光交流客数は平成二十八年度には一億五千万人を超え、四年連続で過去最高を更新いたしました。
 今後、ラグビーワールドカップ二〇一九、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックの自転車競技と、世界の注目を集める国際大会が本県で開催されます。まさに静岡県は世界のひのき舞台に立ちつつあります。この機を逃さず、世界的な魅力にあふれた美しいふじのくにづくりに全力で邁進してまいります。世界中から多くの人々が夢をかなえるために集まる、徳のある豊かで自立した地域、すなわちドリームズ カム トゥルー イン ジャパンの拠点として新しい日本のロールモデルを目指してまいります。県議会の皆様のさらなる御支援、御協力を賜りますようお願いを申し上げます。
 初めに、平成三十年度当初予算案と組織定数の改編についてであります。
 基本理念は、富国有徳の美しい“ふじのくに”づくり、世界の静岡のスタートダッシュであります。静岡県の新ビジョンをスタートダッシュで一気呵成に展開し富国有徳の美しい“ふじのくに”づくりを本格始動させるため必要な予算を編成するとともに、これを推進する組織定数の改編を行いました。平成三十年度の一般会計の歳出予算総額は一兆一千八百七十二億円で、政令市への税源移譲の影響を除く実質ベースでは前年度当初予算を六十四億一千万円、率にして〇・五%上回る予算を編成いたしました。また組織定数につきましては、新ビジョンに掲げる政策を着実に実行するため喫緊の政策課題への対応とともに効果的かつ迅速に政策を実現する組織体制の強化を行いました。
 予算編成と組織定数改編の基本方針の一つ目は、人づくり・富づくりのための重点的な取り組みであります。以下新ビジョンの八つの政策体系に沿って御説明申し上げます。
 政策の第一の柱は、命を守る安全な地域づくりであります。
 地震などのあらゆる災害から県民の皆様の生命財産を守ることは県政の最優先課題であります。このため新ビジョンでは政策の筆頭に命を守る安全な地域づくりを掲げたところであります。
 初めに、危機管理体制の強化についてであります。
 新ビジョンのスタートに当たり、県内四つの圏域において危機管理を総合的に推進するため現在の賀茂地域に加えて東部、中部、西部の危機管理局と支援局を統合し新たに四つの地域局を設置するとともに、危機事案を統括する危機管理監を配置いたします。危機管理と地域支援を一体的に推進することによりこれまで以上にきめ細かく地域行政を展開し、平時から復旧・復興まで安全・安心で魅力ある地域を築くため万全の体制を整えてまいります。
 南海トラフ地震に関する新たな防災対応につきましては、昨年十一月国は予知情報などの東海地震に関連する情報にかえて当面の措置として南海トラフ地震に関連する情報を発表することといたしました。これまでと比べて不確実な地震予測に基づく情報となりますが、これに適切に対応し多くの県民の生命財産を守るための新たな防災対応を構築してまいります。来月中旬にはライフライン事業者、学校関係者、学識経験者等の多様な関係者で構成する静岡県防災会議の専門部会におきまして県民の事前避難や受忍可能な期間、事業者の営業継続などの基本的な考え方を御議論いただき、三月末までに新たな防災対応の骨子案を作成することとしております。来年度はこの骨子案につきまして御意見を幅広く伺い、社会全体の合意形成を図りながら全国のモデルとなる新たな防災対応を構築し地域防災計画に反映させてまいります。
 地震・津波対策の根幹となる地震・津波対策アクションプログラム二〇一三につきましては、策定から五年を迎え十年の実施期間の折り返し地点となります。これまでの進捗状況でありますが、既に完了した五十八アクションを含む百五十五アクションは計画どおり進捗しております。一方でおくれている二十一アクションにつきましては段階的、補助的なステップ目標を新たに設定し進捗を図ることといたしました。また新たに三アクションを追加し避難対策を強化するなど、想定される犠牲者の八割減を目指しアクション達成への道筋を明確にいたします。このアクションプログラムを推進するための経費として平成三十年度当初予算案に二百九十二億円を計上したところであり、ソフトとハードの両面から着実かつ迅速に対策を進めてまいります。
 防潮堤の整備につきましては、静岡方式の大前提となる地域住民の皆様との合意形成を加速し計画期間内の完了を目指してまいります。レベルワンの津波に対して地元で合意された防潮堤の高さを満たす整備率を計画期間内に海岸では六八%、河川では三六%に引き上げることを目指し、十八海岸、二十河川について防潮堤や水門などの津波対策施設の整備を進めてまいります。来年度は十三海岸、二河川の工事等を進めるとともに、その他の河川等につきましても地元における合意形成を加速し目標達成に向けてスピード感を持って取り組んでまいります。
 また、中東遠地域ではレベルワンを超える津波に対しても被害の軽減を図る防潮堤の整備が急速に進捗しております。県におきましてもこの取り組みと連携して防災林の再整備を進めてまいります。
 住宅・建築物の耐震化につきましては、国は木造住宅の耐震化について集中的な支援により大幅に加速する必要があるとして、来年度予算において耐震補強工事に対して国と地方の助成により一戸当たり最大百万円を支援する制度を創設いたします。
 県におきましては、市町と連携して所有者の負担を軽減するためこの国の新制度を最大限に活用し、プロジェクト「TOUKAI―0」総合支援事業におきまして耐震補強計画と補強工事を一体的に支援し基本的な補助額を大幅に拡充した新制度を創設いたします。住宅の耐震化率は現在八二・四%であります。これを九五%とする目標の達成に向け、これまでの制度に加えこの新制度を活用して県民の皆様に早期に耐震補強に取り組んでいただけるよう市町や業界団体等とともに働きかけを強め、全力を挙げて木造住宅の耐震化を促進してまいります。
 次に、安全な生活と交通の確保についてであります。
 性犯罪・性暴力被害者支援につきましては、被害に遭われた方のプライバシーや心身の状態に十分配慮したきめ細かな相談を初め医療機関での迅速な対応、心理的、法的ケアなど多岐にわたる支援が必要であります。
 このため、本年七月を目途に産婦人科医、臨床心理士、弁護士、警察などの関係機関が連携し被害者のさまざまな相談にワンストップで対応する支援センターを静岡市内に開設いたします。センターでは二十四時間三百六十五日いつでも相談を受け付け、関係機関には相談員が同伴するなど被害者に寄り添ったきめ細かな支援を行ってまいります。
 安全・安心な暮らしの確保と交通安全の推進につきましては、県民の安全で安心な生活を守るため犯罪の発生状況に即した効果的な犯罪抑止対策を推進いたします。県民に不安を与える犯罪やテロの未然防止に努めるほか、警察活動の拠点となる仮称浜松西警察署、湖西警察署の整備を計画的に進め官民協働による犯罪の起きにくい社会づくりを推進いたします。
 平成二十九年の交通事故発生件数は三万二百四十四件で前年に比べ一千二百七十四件減少いたしました。さらに交通事故の少ない安全な社会を実現するため信号機や標識等の交通安全施設の整備に取り組むとともに、高齢者の交通事故の防止や発生状況を踏まえた取り締まりの強化など総合的な交通事故防止対策を推進してまいります。
 政策の第二の柱は、安心して暮らせる医療・福祉の充実であります。
 初めに、安心医療の確保充実と健康寿命の延伸についてであります。
 医師の確保につきましては、ふじのくにバーチャルメディカルカレッジの運営により現在百九十二人の医学修学研修資金利用者が県内の病院に従事しております。引き続き専門医研修プログラムの充実や本県地域医療の情報発信を進め、一層の医師の確保と偏在の解消を図ってまいります。
 看護職員の確保につきましては、質の高い看護教育を実践する養成施設への支援を初め勤務環境の改善による離職防止や県ナースセンターによる潜在看護職員の再就業支援などにより看護職員の育成と確保に取り組みます。また地域包括ケアシステムを機能させるためには在宅医療の充実が不可欠であります。高度かつ専門的な知識や技能を生かした在宅での療養を支える看護師の育成にも取り組んでまいります。
 助産師の確保につきましては、東部看護専門学校助産師養成課程の平成三十一年四月開設に向けて準備を進めております。校舎の増築など必要な施設設備の整備を進めるとともに、授業料等を定めるための条例改正を今議会にお諮りしているところであります。
 社会健康医学の推進につきましては、健康寿命のさらなる延伸に向け、現在ふじのくに地域医療センター理事長として本県の医療政策に御尽力をいただいております京都大学高等研究院の本庶佑特別教授を委員長とする社会健康医学基本計画策定委員会におきまして検討を進めてきたところであります。先月二十四日に開催した第五回委員会で取りまとめられた社会健康医学研究推進基本計画――仮称――案には四つの基本方針である研究の推進、人材の育成、成果の還元、拠点となる仕組みの構築に沿って早期に研究に取り組みその成果を県民の皆様に還元することや、長期かつ継続的な研究と人材育成のため研究体制を充実し将来的には大学院大学の設置を目指すことなどが盛り込まれております。本年度中に基本計画を策定し来年度から県立総合病院の先端医学棟に設置したリサーチサポートセンターを中核として社会健康医学の研究に着手し、その成果を県民の皆様の健康寿命の延伸につなげてまいります。
 次に、地域で支え合う長寿社会づくりについてであります。
 団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年を見据え、人生の最後まで住みなれた地域で安心して自分らしい暮らしを続けることができる地域づくりが重要です。医療、介護、生活支援などのサービスを一体的に提供する地域包括ケアシステムを構築し、地域で支え合い安心して暮らせる長寿社会を実現してまいります。今後も増加が見込まれる認知症の方々への支援を充実するため早期発見、早期支援体制の構築を支援するほか、来年度から新たに認知症疾患医療センターの職員が認知症の方やその御家族のところに出向いて相談に応じ適切な医療・介護サービスにつなげる活動を支援するなど、地域全体で温かく見守り支える地域づくりを進めてまいります。
 また、医療を必要とする方々が住みなれた地域で療養生活を営むためには在宅医療を支える地域の診療所の果たす役割が重要であります。このため在宅医療を行う有床診療所が非稼働の病床を稼働するための取り組みを新たに支援することとし、地域の在宅医療の体制を強化してまいります。
 次に、障害のある人が分け隔てられない共生社会の実現についてであります。
 障害者スポーツにつきましては、障害のある方にとりましても開催が迫る東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックは自信やスポーツに取り組む意識を醸成する絶好の機会であります。来年度は本県ゆかりの障害者アスリートに対する支援について指定強化選手数を拡大するとともに、障害者スポーツ応援隊による実技指導などを通じて障害者スポーツの裾野を広げる取り組みを進めてまいります。
 障害のある方の文化芸術の振興につきましては、演奏、絵画、陶芸などさまざまな分野で才能を発揮する障害のある方の文化芸術活動を支援するため障害者文化芸術活動支援センターを開設いたします。
 今後、国内外の多くの皆様が直接に文化芸術に触れるオリンピック・パラリンピック文化プログラムを初めさまざまな文化芸術活動への参画を促進し障害のある方々の社会参加を広げてまいります。
 政策の第三の柱は、子供が健やかに学び育つ社会の形成であります。
 本県の将来を担う子供たちは社会に希望と活力をもたらす一番の宝物であり、子育ては命をつなぐ幸せの愛を育むとうとき仕事であります。県民の皆様が望む数の子供を安心して産み育てることができるよう地域ぐるみ、社会総がかりで子育てや教育を推進いたします。
 初めに、安心して出産、子育てができる環境づくりについてであります。
 こども医療費助成につきましては、子育て家庭の経済的負担の軽減を図り安心して子供を産み育てられる環境を整備するための重要な施策であります。これまで全国に先駆けて中学生まで医療費の負担を軽減してまいりましたが、さらに高校生世代の子供を持つ御家庭の経済的負担の軽減を図るとともに、子供たちが安心して勉学やスポーツに励んでいただけるよう市町と連携し本年十月から対象者を十八歳まで拡大いたします。
 少子化対策につきましては、保育所等の待機児童ゼロの早期実現に向けてふじさんっこ応援プランに基づき保育所や認定こども園を整備する市町を支援してまいります。来年度は二十一カ所、九百五十七人の定員増加を図ってまいります。必要となります保育人材につきましては、能力と経験が処遇改善に結びつくキャリアアップ制度の普及によりその確保と定着を促します。また新たに子育て経験者に保育の仕事のやりがいを実感していただく機会を提供するなど、新たな人材を確保してまいります。さらに出生率の向上や出生数の増加につなげるため、ふじのくに少子化突破戦略の羅針盤の分析に基づき市町が地域の実情に応じて実施する取り組みを引き続き支援してまいります。今年度採択いたしました二十二市町六十三事業につきましては、効果や課題を検証し改善を図りながら県と市町が連携し取り組んでまいります。子育て中の方々が子育てを幸せに感じられるように社会全体で子育て家庭を応援してまいります。
 次に、全ての子供が大切にされる社会づくりについてであります。
 生活困窮世帯の子供を対象に、生活習慣の改善に加え仲間と協力する大切さや創作することの喜びを感じるものづくりの体験などを通して楽しみながら学ぶ力を身につけ、将来の夢や希望を育てることに取り組んでおります。来年度はその対象を高校生世代まで拡大するなど子供たちの自立に向けた支援体制を強化してまいります。
 また、子供たちの居場所づくりを促進するためコーディネーターによる立ち上げ支援や専門性を向上するための研修会を開催いたします。さらに児童養護施設や里親の元から就職や大学等に進学する子供に対する一時金を拡充するなど子供たちの将来が生まれ育った環境に左右されない、全ての子供が大切にされる社会づくりを実現してまいります。
 次に、文武芸三道鼎立の学びの場づくりであります。
 魅力ある学校づくりにつきましては、高大接続改革や学習指導要領の改訂に伴いこれまで以上に思考力、判断力、表現力などが重視されております。また生きる道としての仕事をきわめることの大切さを子供たちに伝えていくことも重要な課題となっております。このため三つの柱で施策を展開し魅力ある学校づくりを進めてまいります。
 まず第一に、技芸を磨く実学の奨励であります。
 本県の公立高校には四十二の実学をきわめる学校があります。企業で即戦力となる人材を輩出できるよう専門性の充実に取り組むとともに、スポーツ科、演劇科、観光科といった新しい専門学科の設置に向けて研究を進めてまいります。
 第二に、知性を高める学習の充実であります。
 学力向上や英語教育などにつきましては、外部機関との連携等を通して静岡県全体の学力向上を図ってまいります。
 第三に、グローバル教育の推進であります。
 海外の高校生との交流や国際バカロレアの調査研究などを進め、国際社会で活躍できる人材を育成してまいります。
 今後、総合教育会議並びに地域自立のための「人づくり・学校づくり」実践委員会の意見を踏まえ関係機関と連携を図りながら魅力ある学校づくりの実現を目指してまいります。
 ICTを活用した教育の充実につきましては、次期学習指導要領に掲げる主体的、対話的で深い学びの視点からの授業改善を推進するため教員のICT活用指導力を向上するとともに、全県立学校に無線LANアクセスポイントを導入するなどICTを効果的に活用した授業を展開してまいります。
 次に、特別支援学校の教育環境の充実についてであります。
 特別支援学校では、児童生徒が増加する中、施設の狭隘化や長時間の通学による児童生徒の負担の解消が課題となっております。喫緊の対策が必要となっている三島・田方地区と浜松地区につきましては三年後の開校に向けて施設整備を進めてまいります。また健康に不安がある児童生徒におきましても、安心して学習に取り組むことができるよう平成三十一年の夏までに全ての普通教室に空調設備を設置することとし、必要となる経費を当初予算案に計上したところであります。
 次に、いじめや不登校等への対応についてであります。
 いじめや不登校が年々増加傾向にあり、その背景も一層複雑化する中で児童生徒一人一人に寄り添った支援が急務であります。
 このため、相談業務の専門家であるスクールカウンセラーや福祉機関、保護者等との橋渡し役となるスクールソーシャルワーカーの配置を拡充し学校における支援体制を充実してまいります。特に児童生徒数や困難事案の多い地区に対しましては、新たに常時配置型のスクールカウンセラーを配置しよりきめ細やかな相談体制を構築してまいります。あわせて私立の小中学校、高等学校等におきましても、学校法人が行うスクールカウンセラー配置などの取り組みを支援するなど教育相談体制の充実や不登校児童生徒の学習機会を確保してまいります。
 政策の第四の柱は、誰もが活躍できる社会の実現であります。
 初めに、次世代人材の確保・育成についてであります。
 雇用情勢につきましては、昨年十二月の有効求人倍率は一・六〇倍で十カ月連続で国の平均を上回っております。その一方多くの産業分野で人材不足が顕在化しており、本県経済が持続的に成長していくためには産業を支える人材の確保と育成が急務であります。
 このため、官民を挙げて取り組む人材確保・育成施策の方向性を示す産業人材確保・育成プランを今年度中に策定いたします。今年度補正予算で取り組んだ中小企業の採用活動を支援するコーディネーターの配置や経済団体等が行う人材確保に関する取り組みへの支援など、緊急的な対応が求められている取り組みを引き続き実施してまいります。
 進学などで首都圏に転出した若者のUターン就職への支援を強化するため、これまで二年の間に十九大学と就職支援協定を結びました。この取り組みをさらに拡大し学生に対する情報発信を積極的に行ってまいります。また首都圏の新規学卒者から社会人まで幅広い年齢層の県内就職を支援している静岡U・Iターン就職サポートセンターにつきましては、就職相談員を増員し相談体制を強化いたします。
 さらに、大学等を卒業後、人生を見詰め直す時期となる三十歳前後の若者をターゲットとして「三十歳になったら静岡県!」をキャッチフレーズにSNSを活用して情報を発信するなど重点的にUIJターン就職を促進してまいります。
 静岡県は、ものづくり、観光、農林水産業など全ての産業がそろう産業のデパートであり、その仕事も多種多様であります。誰もが静岡県で望む職業を選択し、努力すれば夢がかなう環境づくりを進めてまいります。
 技術者育成の中核機関である技術専門校につきましては、沼津技術専門校及び清水技術専門校を一体として短期大学校化することとし三年後の開校を目指してまいります。ものづくりの習得に加え、次世代自動車の生産など産業構造の変化にも対応できる専門的知識を持つ現場のリーダーを育成してまいります。
 次に、働き方改革についてであります。
 平成二十八年の県内の正規労働者の年間総実労働時間は二千六十時間を超え、平成二十二年以降全国平均を上回る状況にあり、その改善が求められております。また子育て、介護などさまざまな事情を抱える方々が意欲を持って働き、誰もがその能力を発揮できる環境の整備も進めていく必要があります。
 このため、社会総がかりで働き方を見直し仕事と家庭の両立支援に取り組み、働きやすい職場づくりを進めてまいります。企業の経営者や人事担当者などへの実践的なセミナーによる意識改革や年齢、性別、国籍などによらず誰もが活躍できる環境を整備する、いわゆるダイバーシティー経営の導入を促進してまいります。
 女性の活躍につきましては、社会経済の活力を維持向上させるため最大の潜在力でもある女性の持つ力を発揮できる環境づくりが極めて重要であります。女性が働き続ける意識を醸成するため、就職前の学生と県内企業で働く女性の意見交換を通じてライフデザイン形成のための支援や女性が活躍するロールモデルを発信いたします。
 引き続き、女性が活躍できる環境の整備を加速し、男女がともに暮らしやすい社会づくりを目指してまいります。
 政策の第五の柱は、富をつくる産業の展開であります。
 初めに、産業成長戦略の推進についてであります。
 本県の景気は、設備投資や輸出が増加するなど回復しつつあります。日銀短観における県内企業の業況判断指数も九月、十二月調査と二期連続で全国を上回っております。こうした本県経済の回復の動きをより確かなものとするため、産業戦略推進センターオープンイノベーション静岡を中心として本県経済を牽引する力のある地域企業を集中的に支援してまいります。アドバイザリーボードによるすぐれた技術や製品を持つ地域企業の新たな事業展開などへの目ききに加え、販売戦略支援ワンストップセンター――仮称――を新たに設置しマーケットニーズを捉えた売れる製品づくりや販路開拓などを強力に支援してまいります。
 次に、静岡新産業集積クラスターの推進についてであります。
 富士山麓に医療城下町の形成を進めるファルマバレープロジェクトにつきましては、本年四月からプロジェクトの中核支援機関としてふじのくに医療城下町推進機構が本格的に活動を開始いたします。医療健康産業のさらなる集積を目指し、ゲノム医療などの最先端の技術開発や超高齢社会に対応した医療福祉機器の開発などを積極的に進めてまいります。またオープンイノベーションの戦略拠点施設である静岡県医療健康産業研究開発センターを最大限活用し、地域企業の医療健康分野への新規参入と成長を促進してまいります。
 食品関連産業等の集積を進めるフーズ・サイエンスヒルズプロジェクトにつきましては、フーズ・サイエンスセンターに化成品・加工機械コーディネーターを新たに配置し付加価値の高い機能性食品や化粧品、生産効率化に資する食品加工機械の開発を促進するとともに、生み出される成果品の販路拡大を進めてまいります。
 世界をリードする光の都を創生するフォトンバレープロジェクトにつきましては、地域の大学などが持つ知識や技術を活用し中小企業の試作品開発の早期化を図る新しい仕組みを創設いたします。フォトンバレーセンターを中心に、浜松市や周辺市町とも協力して光・電子技術を活用した地域企業の製品開発や生産性向上に向けた取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、新たな成長産業の育成についてであります。
 世界的に進むEV化や自動運転などの急速な技術革新への対応につきましては、自動車メーカーや県内部品メーカー、国、大学の専門家で構成する研究会を新たに設置し、産業界や関係機関と連携しながら産業構造の変化への対応が課題となっている自動車産業等への支援を強化してまいります。また浜松地域イノベーション推進機構に設置される次世代自動車センターを通じて地域の産業特性に応じたEV化への対応を支援してまいります。
 セルロースナノファイバー――CNF――につきましては、昨年静岡大学に設置した寄附講座により研究開発と人材育成を強化いたします。また個別の商談やマッチングなどを目的とした総合展示会などにより県内企業による製品開発や販路開拓を支援するとともに、県東部地域を中心として製造拠点の形成を進めCNF産業の集積を図ってまいります。
 本県が、我が国のCNF産業を先導し世界的な拠点となるよう引き続き総力を挙げて取り組んでまいります。
 航空宇宙分野につきましては、ブラジル航空技術大学及び航空機メーカーのエンブラエル社との連携を進め航空機関連産業の人材育成や県内企業の海外でのビジネス創出につなげてまいります。メンテナンス、リペア、オーバーホール、いわゆるMROビジネスにつきましては静岡エアコミュータ株式会社が世界的なヘリコプターメーカーであるイタリア・レオナルドヘリコプターズと業務提携いたしました。平成三十一年四月の稼働を目指し、レオナルドヘリコプターズの世界戦略拠点として同社のヘリコプターを整備する日本で最初のエクセレントサービスセンターを富士山静岡空港ターミナル地区西側に設置することが決定いたしました。こうした動きをはずみに県内企業の航空機関連産業への参入や事業拡大を促進してまいります。
 海洋由来の資源を活用するマリンバイオテクノロジーにつきましては、産業分野への応用が大いに期待されております。これに着目し、県といたしましても新たな取り組みとして県内外の大学や研究機関、民間企業と連携し駿河湾の資源を活用した革新的な技術、製品の開発を促進するプラットホームを構築してまいります。この取り組みをさらに発展しマリンバイオテクノロジーを核としたイノベーションによる富の創出を目指してまいります。
 次に、富を支える地域産業の振興についてであります。
 地域企業は、地域産業や雇用を支える担い手として重要な役割を果たしております。地域企業の活躍は地域経済成長の原動力となります。本県経済の活性化に向けて地域産業を担う企業の経営力や生産性の向上、経営基盤の強化を促進してまいります。中小企業の経営力を向上するため、経営革新に取り組む中小企業に対して従来の新商品開発や販路開拓に加え新たに生産性向上に向けた取り組みを支援してまいります。またITを活用した取り組みなど工夫、改善により経営力の向上に取り組む小規模企業に対する助成を拡充いたします。さらに専門家の派遣により中小企業が抱える経営課題を解決するなど中小企業、小規模企業の支援を一層充実してまいります。
 経営者の高齢化が進む中、事業承継への支援ニーズが高まっております。後継者不在による廃業を防止するため今年度に立ち上げた事業承継ネットワークを中心として県、商工団体、金融機関などが連携し事業承継に関する支援体制を強化してまいります。本県の地域企業が誇るオンリーワンの技術やノウハウを守り次世代に引き継いでまいります。
 次に、農林水産業の競争力の強化についてであります。
 本県は、温暖な気候や豊かな自然を生かし多彩で高品質な農林水産物を生産しており、その品目数は全国トップクラスを誇っております。その一方、国内外との産地間競争に勝っていくためには生産性や収益性の向上、担い手の確保などが課題となっております。
 農林水産分野の富の創出に向けて、質の高い農林水産物の生産拡大や人づくり、農山漁村の再生など農林水産分野のルネサンスに取り組んでまいります。来年度の組織改編では交通基盤部から農地局を経済産業部に移管し、生産基盤の整備から農業経営体の育成までを一体的に推進する体制を構築し農業の競争力をさらに強化してまいります。
 農業につきましては、AOI―PARCを拠点とした産学官金の多様な参画を得てオープンイノベーションによる飛躍的な生産性向上と関連産業のビジネス展開を促進いたします。また東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックへの食材の提供を見据え、GAP――グッド・アグリカルチュラル・プラクティス――認証の取得を促進してまいります。さらに首都圏の高い需要に対応するため、新たに専門チームを設置しマーケットインの考え方に基づきマーケットと産地を直接結びつける農芸品の生産拡大と供給体制の構築に取り組んでまいります。
 本県の農林業の担い手を育成している農林大学校につきましては、高度な実践力と豊かな創造力を兼ね備え農林業経営に革新を起こす人材を養成するため、仮称静岡県立農林環境専門職大学として二年後の移行を目指し準備を加速してまいります。
 林業につきましては、県産材の需要と供給を一体的に創造するふじのくに森林・林業再生プロジェクトに取り組んできた結果、本県の木材生産量は十九年ぶりに四十万立方メートル台に回復するなど飛躍的に増加しております。
 今後は、これまでの利用間伐主体の木材生産に加え、切って使って植える、主伐から再造林までを一体として行う低コスト主伐、再造林を進めてまいります。
 さらに、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックを契機として世界基準の認証林の拡大と認証材の供給体制の整備を促進いたします。認証材などを使用した県産材製品の需要拡大に取り組み、本県林業の成長産業化を加速してまいります。
 水産業につきましては、高度な衛生管理が可能となる荷さばき施設などの整備を促進する生産、加工段階の支援に加えて本県に対する旺盛な観光需要を踏まえ高品質な地場水産物を県内に流通させる体制を構築するなど、流通、消費段階までを含めた総合的な対策を進めてまいります。
 政策の第六の柱は、多彩なライフスタイルの提案であります。
 本県がドリームズ カム トゥルー イン ジャパンの拠点となるためには、本県に暮らす人々が自然や歴史に根差した美しい景観の中で心の豊かさを感じることのできる快適で質の高い生活を送り、個性に応じた多彩なライフスタイルを実現できることが極めて重要であります。自然と調和した豊かな暮らし空間の創出や日本一多彩な農林水産物を生かした食・茶・花の都づくりなどにより国内外の人々を引きつけ暮らしてみたいと思われる魅力ある静岡の人々の暮らし方、すなわちシズオカ・ウエー・オブ・ライフを創出してまいります。
 初めに、ふじのくにの景観形成についてであります。
 文豪川端康成は、「伊豆序説」で伊豆は詩の国である、日本歴史の縮図である、南国の模型である、海と山のあらゆる風景の画廊である、一つの大きい公園であると記しております。これは静岡県全体の姿にも通じ富士山、南アルプス、駿河湾、遠州灘、浜名湖などの絶景があるふじのくにはまさに海と山の風景の画廊であります。そしてそれぞれの地域には先人が築き上げた文化があり、人々の生活があり、産業があります。人と自然が織りなしてきた歴史が景観となります。いわば景観とは生活様式そのものであり、その地域の人々の暮らし方が美しさを表現しているものであります。この豊かに恵まれた本県の美しい景観と人々のさまざまな営みを見て、体験し、楽しみながらめぐることができるのが本県の目指すふじのくに回遊式庭園であります。
 来年度は、伊豆半島や大井川流域・牧之原大茶園のエリアにおいて市町と一体となって広域景観づくりに積極的に取り組んでまいります。また回遊式庭園の実現に向けては県民の皆様の景観づくりへの積極的なかかわりが欠かせないことから、専門知識の普及啓発のため静岡文化芸術大学、静岡大学等と連携して景観形成を担う人材の育成を進めてまいります。
 次に、“ふじのくに”のフロンティアを拓く取り組みについてであります。
 これまで、内陸のフロンティアを拓く取り組みとして防災・減災と地域成長が両立した八十四の多彩な取り組みが県内全域で展開され、新しい産業の集積やゆとりある住まいづくりなど目に見える成果としてあらわれ始めております。これらの取り組みをさらに加速し早期に成果を発現させるとともに、地方創生を牽引する広域的な取り組みへと進化させていく必要があります。
 現在、これらの取り組みを盛り込んだ来年度から五年間の第二期基本計画を策定しているところであり、名称を“ふじのくに”のフロンティアを拓く取り組みに改め県議会、市町、経済団体、県民の皆様からの御意見を踏まえまして本年度中に成案を得てまいります。
 これに伴い、内陸フロンティア推進区域を対象とした各種の支援制度につきましても計画期間に合わせて延長することとし事業の早期完了を促してまいります。その成果を活用して地域間における人・モノ・情報の双方向の流れである対流を促進することにより都市や農山漁村、沿岸や内陸など県内のあらゆる地域で多彩なライフスタイルが選択でき物心ともに豊かさを実感できる、県内外に開かれた活力ある圏域づくりを推進してまいります。
 次に、茶の都づくりについてであります。
 茶を飲む文化が健康的なライフスタイルとして世界的に普及しつつある中、世界各地のお茶の需要に対応したマーケットインの考え方に基づく静岡茶の生産体制の強化や新たな戦略的取り組みを推進してまいります。
 来月二十四日には、島田市に茶の都の拠点となるふじのくに茶の都ミュージアムを開館いたします。国内外から訪れる皆様をお茶でおもてなしするとともに、ここを拠点に日本のお茶から世界のお茶までお茶にまつわる歴史、文化、産業などの情報を集積しその魅力を発信することにより、本県ならではのお茶を楽しむ平和で豊かなライフスタイルを国内外に広く発信してまいります。
 政策の第七の柱は、ふじのくにの魅力の向上と発信であります。
 東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック自転車競技とラグビーワールドカップ二〇一九という二つの世界的なスポーツイベントが間もなく本県で開催されます。まさに世界のひのき舞台であり、世界中の人々が本県に注目する絶好の機会となります。大会の開催に向けて全庁を挙げて取り組むため、その司令塔として新たにスポーツ担当部長を設置するなど組織体制を大幅に強化いたします。また両大会の組織委員会への派遣職員も増員し、ラグビーワールドカップ二〇一九では県内に地域支部を開設するなど国や組織委員会とより緊密に連携を図りながら大会の成功に向けて着実に準備を進めてまいります。
 初めに、スポーツの聖地づくりについてであります。
 東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックにつきましては、本県で開催する自転車競技の成功に向けて昨年十一月十日に設置した東京オリンピック・パラリンピック自転車競技静岡県開催推進委員会を中心として輸送・セキュリティー対策、機運醸成、国内外からの来訪者に対するおもてなしなどの準備を進めてまいります。特に輸送につきましては大会が観光シーズンと重なる夏に開催されることから、地域の交通状況を把握し住民の日常生活や観光誘客への影響を最小限に抑えられるように交通輸送対策を進めるほか、国内外からの来訪者に対応するため交通誘導や観光案内を行う都市ボランティアの育成に取り組んでまいります。
 また、今月三日のIOC理事会におきましてオリンピック自転車競技ロードレースのゴール及び個人タイムトライアルの会場を小山町の富士スピードウェイとすることが承認されました。この結果オリンピック自転車競技四競技のうち三競技が本県で開催されることになりました。大会の成功に向けて市町等との連携をさらに強化し万全の準備を進めてまいります。
 あわせて、県内への事前キャンプの誘致につきましてはより多くのキャンプが実施されるよう市町の誘致活動を支援し、全県を挙げて東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みを推進してまいります。
 サイクルスポーツの県づくりにつきましては、オリンピック・パラリンピック自転車競技が開催される東部・伊豆地域におきましてバイシクルピットや矢羽根型路面標示の設置などサイクリストを受け入れるための環境整備を進めております。また他の地域に先行して官民が協働してサイクルスポーツ県づくりを実践する取り組みが進められております。
 来年度は、この東部・伊豆地域で実践する取り組みを中部、中東遠、西部の三地域にも広げ各地域の特色を生かした事業を展開し、静岡県全域をサイクルスポーツの聖地として国内外に発信してまいります。またサイクルスポーツの聖地の実現に向けたビジョンを市町や県民の皆様と共有しながら、ハードとソフトの施策を総合的に進める指針となる自転車活用推進計画を策定してまいります。
 ラグビーワールドカップ二〇一九につきましては、先月大会チケットの先行抽選販売が開始されました。来月十九日からはエコパスタジアムで開催される試合について県民の皆様を対象とした開催都市住民向け先行抽選販売がいよいよ始まります。エコパスタジアムでは日本対アイルランドの一戦を初め強豪国による熱戦が繰り広げられます。「四年に一度じゃない。一生に一度だ。」という大会キャッチフレーズのとおり、世界最高峰のラグビーを体感する大変貴重な機会であります。満員の観客でスタジアムが埋め尽くされるよう多くの皆様にお越しいただきたいと思います。
 来年度は、大会の成功に向けて準備を加速してまいります。大会ボランティアの募集や主要な駅などの都市装飾を行うほか交通輸送や警備などの計画を策定いたします。また本年五月には大会開催の五百日前イベント、九月から十一月にかけては一年前イベントを実施するほか、ラグビートップリーグの選手を講師として招き小学校で出前授業を行うスクラム先生プロジェクトを展開するなど大会の機運醸成を図ってまいります。会場となるエコパスタジアムにつきましては仮設トイレや記者席などの改修の設計に新たに着手するほか、可動席や競技用照明など大会の開催に必要な施設整備を着実に進めてまいります。
 競技力の向上につきましては、昨年開催された国民体育大会の総合順位は十七位と目標とする八位以内に向けては道半ばであります。このため来年度は得点力向上につながる競技種目の強化活動を重点的に支援するとともに、大会での活躍が有望なアスリートや優秀な指導者を雇用して本県の競技力の向上に協力する企業などを支援する仕組みや競技団体への支援内容に競技用具の整備を追加するなど、新たな取り組みを加えてスポーツ王国しずおかの復活に取り組んでまいります。
 高校生最大のスポーツの祭典である全国高校総体、いわゆるインターハイにつきましては本年七月から八月にかけて本県を含む東海地区の四県で開催されます。先月の第二十六回全日本高校女子サッカー選手権大会では本県の藤枝順心高等学校が全国制覇し大きな盛り上がりを見せたところでありますが、本県では女子サッカーが藤枝市、自転車競技が伊豆市で実施されるなど県内各地で六競技八種目が開催されます。各県の代表をおもてなしの心で温かくお迎えして、選手が最高の力を発揮し多くの県民が熱い感動を覚える祭典となるよう大会の準備に万全を期してまいります。全国から多くの選手、観客が訪れるこの大会の盛り上がりが東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックの機運醸成につながるものと期待しております。
 次に、文化芸術の振興についてであります。
 オリンピック・パラリンピック文化プログラムについてでありますが、オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典であるとともに文化の祭典でもあります。二〇二〇年に向けて文化プログラムを着実に展開し文化の振興を社会で支える仕組みを構築してまいります。県内各地域で文化プログラムが効果的に展開されるよう来年度からプログラム全体を統括する総合プロデューサーに静岡県舞台芸術センターSPACの宮城聰芸術総監督をお迎えし、静岡県文化財団とも連携を強化するなど文化プログラムの成功に向けて着実に準備を進めてまいります。推進委員会が企画する地域の文化資源を生かした現代舞踊や大茶会などのプログラムの制作を進めるとともに、SPACの舞台芸術活動やグランシップ音楽の広場、県立美術館の企画展示などを充実させてまいります。
 加えまして、市町や民間が取り組む文化活動を文化プログラムとして認証するなど二〇二〇年に向けて県内津々浦々でさまざまなプログラムが多層的に展開されるよう取り組んでまいります。
 文化力の拠点の形成につきましては、東静岡駅南口県有地に図書館機能を中心とした公的施設を先行整備する方針に基づき、現在難波副知事をリーダーとする部局横断的なプロジェクトチームにおきましてその機能、規模、民間活力を導入した事業手法などの具体的な検討を進めております。来年度は拠点の価値を高める事業スキームを構築するための調査検討や先行施設にかかわる整備計画の策定などを実施してまいります。本県の持つ高い文化力を発信し、多様な交流やにぎわいを生み出す魅力ある拠点の早期実現に向けて取り組んでまいります。
 静岡文化の世界への発信につきましては、SPACが本年九月に開催されるフランスのコリーヌ国立劇場のこけら落とし公演に招聘されるとともに、十一月二十日から二十五日の間にパリを中心に展開される日本文化を紹介するイベント、ジャポニスム二〇一八の公式企画として公演を行うこととなりました。このSPACのジャポニスム二〇一八での公演に合わせてパリ市内で富士山、お茶、日本酒、伝統工芸、食文化など本県が有する世界クラスの豊かで多彩な文化資源を紹介してまいります。本県のブランドイメージの向上や海外誘客、県産品の販路拡大を目指すとともに、本県の演劇の都としての魅力をも世界に向けて発信してまいります。
 富士山世界遺産センターにつきましては、昨年十二月二十三日の開館以降連日県内外から多くの皆様に御来館いただいております。逆さ富士とも称される周囲を覆う富士ヒノキの木格子が目を引く逆円錐形の建物が正面の水盤に映り、その姿は何とも美しいものであります。また建物に入ればらせん状のスロープを上って疑似登山を体験し上りついた最上階からは遮るものがない壮大な富士山の姿を望むことができます。楽しみながら富士山を学ぶことができる拠点として子供からお年寄りまで大変な人気を博しており、当初の予想を大幅に上回り開館二カ月余りで来館者数十万人も視野に入ってきたところであります。
 富士山の日である今月二十三日からは、全国各地の富士と名のつくふるさと富士を集めた写真展を開催するほか来月には富士山学を拓くと題した国際シンポジウムを開催いたします。引き続き世界遺産富士山の保存管理、情報提供の拠点として富士山を「守る」、「伝える」、「交わる」、「究める」活動を展開してまいります。
 政策の第八の柱は、世界の人々との交流の拡大であります。
 初めに、世界クラスの資源を生かした観光交流の拡大についてであります。
 外国人観光客の誘客促進につきましては、昨年一月に設置した静岡ツーリズムビューロー――TSJ――をインバウンド施策のかじ取り役とし、本年度からインバウンド戦略の策定や外国人旅行者向けワンストップウエブサイトの開設など海外誘客事業を本格化いたしました。昨年十一月にはこうした取り組みが評価され観光庁の日本版DMOの第一弾に登録されたところであります。我が国への旺盛なインバウンド需要をさらに本県に取り込むため米国、豪州におけるTSJの誘客活動の強化を図るとともに、県内各地に設置が進むDMOなどと連携しながら旅行者のニーズに合った体験型旅行商品の開発を促進するなど本県の持つ世界クラスの資源を生かした魅力ある観光地域づくりを進めてまいります。
 国内最大規模の観光企画であるデスティネーションキャンペーンにつきましては、平成三十一年四月から十九年ぶりに本県で開催されます。昨年十二月には静岡文化芸術大学の学生たちを中心に制作した本キャンペーンのキャッチコピー「アッパレしずおか元気旅」とロゴマークを決定いたしました。今後さまざまな媒体などで活用し、多くの方々の目に触れることで本県への旅行需要を喚起してまいります。
 また、平成三十一年の本番に向け本年四月からプレキャンペーンを開始いたします。五月には静岡市内において全国宣伝販売促進会議を開催し、全国から参加する約八百名の旅行会社等の関係者に対してふじのくに静岡の魅力を大々的にPRし本県への誘客につなげてまいります。
 引き続き、市町、観光・交通事業者等と連携し県内各地域の観光素材をさらに磨き上げ県内の機運醸成と本県を訪れる方々へのおもてなしの体制を整備してまいります。
 日本平山頂シンボル施設につきましては、世界一美しい駿河湾越しに富士山を望む日本平山頂において「日本平からの海と山 歴史と詩歌の通い路」をコンセプトに最大の魅力である三百六十度の眺望と歴史や文化の展示、くつろぎの空間を備えたシンボル施設の整備を進めております。また今議会におきまして開館時間や休館日など施設運営の枠組みを規定する条例をお諮りしているところであり、施設の整備と並行して開館に向けた管理運営体制づくりに取り組んでまいります。誰からも愛される施設となりますよう静岡市とも連携を図りながら本年秋の開館を目指して着実に事業を進めてまいります。
 次に、地域外交の深化と通商の実践についてであります。
 地域外交につきましては、友好的互恵・互助による善隣外交の精神に基づき本県が全国に先駆けて展開してまいりました。人的交流を中心に幅広い分野で着実に実を結んでおり、新たなステージで相互に裨益する関係を構築する段階になりました。現在見直し作業を進めている新たな地域外交基本方針では人をつくり、富をつくり、平和を築く地域外交の展開を重点的取り組みに掲げ、来年度は人材育成、通商の促進、友好協定周年行事などの事業に取り組んでまいります。
 人材の育成につきましては、昨年覚書を交わしたインドネシア・西ジャワ州の政府職員やブラジルを初めとする南米からの長期研修員の受け入れにより本県と交流先とを結ぶかけ橋となる人材を育成してまいります。あわせて県内大学でアートマネジメントを学ぶ学生をブラジルに派遣し、日本文化の情報発信を行うジャパンハウス・サンパウロでの日本文化紹介のインターン体験等を通じて若い世代におけるグローバル人材の育成にも取り組んでまいります。
 通商の分野では、県内企業の現地展開や販路拡大を支援するため東南アジアにおいてインドネシア、タイ、ベトナムの投資促進機関や商社、金融機関などとのパートナーシップの構築を進めてまいります。また世界第二位の人口を有し高い経済成長率を背景に県内企業の有力な投資先の一つとなっているインドを新たに重点国に位置づけ、今後の交流に向けた現地調査や協議などのため相互訪問を行います。
 また、来年度は韓国・忠清南道との友好協定締結五周年の記念すべき年であります。双方において記念式典を開催するとともに、県立大学が主催する日韓次世代学術フォーラムの開催支援などを通じ地域間交流を推進してまいります。
 県産品の輸出拡大につきましては、本県農芸品の輸出拡大を図るため新たな海外市場への販売にチャレンジする事業者を支援してまいります。県産品の輸出に意欲のある事業者同士が協力関係を築き県産品を幅広く輸出する体制として輸出促進コンソーシアムの構築に取り組むとともに、コンソーシアムと個々の事業者をつなぐ輸出促進サポートチームを設置し県産品の輸出促進機能を担うプラットホームを形成してまいります。
 また、通商の取り組みを推進するため県産品の販路拡大の可能性の高い台湾にふじのくに通商エキスパートを設置し県内事業者や市町の輸出の取り組みを支援してまいります。
 海外展開を図る地域企業の支援につきましては、企業の多様なニーズに応えるため進出意欲の高いタイ、ベトナムなど六カ国に設置したサポートデスクにおいて国内からも相談を可能とする支援メニューを追加し企業の検討段階に即した支援体制を充実いたします。海外派遣人材の育成や海外見本市への出展費用の助成などと合わせ、引き続き駐在員事務所や海外展開支援機関と連携し企業の海外展開を支援してまいります。
 次に、交流を支える交通ネットワークの充実についてであります。
 富士山静岡空港につきましては、空港機能と利便性の向上に向けて十月の完成を目指し旅客ターミナルビルの増築・改修工事を着実に進めているところであります。昨年一月から十二月までの富士山静岡空港発着便の搭乗者数は国内線、国際線ともに堅調に推移した結果六十五万九千二十人で、暦年では開港以来二番目に多い搭乗者数となりました。来月二十五日からの平成三十年夏ダイヤにおきましてはフジドリームエアラインズが昨年と同様に札幌丘珠線を毎日運航することに加え、山陰地方への初めての路線となる出雲線を毎日運航することとなりました。
 引き続き、空港機能の拡充を見据え、より一層の利用拡大と新規路線の開拓による航空ネットワークの充実に向けて積極的に取り組んでまいります。
 清水港周辺のみなとまちづくりにつきましては、県と静岡市は昨年三月、JR清水駅東口周辺及び清水港江尻地区から日の出地区までを清水都心ウオーターフロント地区と位置づけ地区の目指す姿として開発基本方針を取りまとめました。また周辺地域におきましても民間団体が中心となって策定した折戸湾再開発プランなど官民双方から新しい開発の構想が示されてきたところであります。
 こうした機運の高まりを捉え、みなととまちを一体の資産として最大限に生かし地域を活性化する地域経営を担うため、県と静岡市は民間事業者とともに清水港及び周辺の具体的なグランドデザインを描きその実現に取り組む公民連携組織を本年四月に設立いたします。今後この組織の活動を通じまして地域総がかりでみなとまちづくりを実現してまいります。
 クルーズ船を活用した交流拡大につきましては、昨年一月から十二月に清水港を訪れたクルーズ客は前年の約二・八倍に急増し五万人を突破いたしました。クルーズ船を活用した交流人口をさらに拡大するため乗船客をターゲットにした寄港地観光コースを造成いたします。またクルーズ船社のキーパーソンに直接訪問しさらなる誘致を働きかけてまいります。さらにアジア最大のクルーズ船社であるゲンティン香港と連携し清水港におきましてハード・ソフト施策を通じた官民連携による国際クルーズ拠点の形成を目指してまいります。
 引き続き、清水港を初めとする県内各地域のクルーズ船誘致組織等と連携し富士山、駿河湾、伊豆半島など本県の類いまれなる場の力を生かしながら県内各港にクルーズ船を誘致しクルーズ船の寄港を通じた地域振興を目指してまいります。
 基本方針の二つ目は、生産性の高い持続可能な行財政運営であります。
 初めに、政策の推進に向けた組織体制の強化についてであります。
 組織定数につきましては、県政の重要課題に迅速かつ的確に対応できるよう見直しを行いました。新ビジョンをスピード感を持って実行するため財政課を知事直轄組織に移管することにより政策の推進と予算編成を一体的に行うこととし、これらを所管する政策推進担当部長及び政策推進局を設置いたします。また経営管理部に働き方改革チームを設置し、推進組織のイクボス会議とともに県庁の働き方改革を推進してまいります。
 このほか、次世代産業の創出や本県農業の競争力強化に向けた施策を強力に進めるため経済産業部の再編、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック、ラグビーワールドカップ二〇一九の開催に向けた体制強化など誰もが努力をすれば夢を実現し幸せを実感できる地域の実現に向けた施策を戦略的に展開する体制を整備いたします。
 次に、将来にわたって安心な財政運営の堅持についてであります。
 三十年度の当初予算編成におきましては、好景気を背景とした税収の増加などにより昨年度を上回る一般財源総額を確保いたしました。加えて徹底した歳出のスリム化と歳入の確保に取り組んだ結果基金の取り崩しにより歳入不足を補う財源不足額は二百十八億円となり、二十九年度当初予算編成に比べ二百三十八億円圧縮いたしました。また新ビジョンを着実に推進するため、二十九年度の県税収入の増収などを活用し二月補正予算でふじのくにづくり推進基金を二百億円積み増すことといたしました。
 さらに、将来の財政運営に備え三十一年度以降に活用できる基金につきましては三百十三億円確保したところであります。
 引き続き、健全な財政運営の堅持と効果的な事業執行により収支均衡の姿を目指してまいります。
 次に、行政経営の推進についてであります。
 富国有徳の美しい“ふじのくに”づくりを着実に推進していくためには、さまざまな現場に即した効果的な取り組みを実践する現場主義を徹底するとともに、最少の経費で最大の効果を生むよう効率性が高い行政経営を推進していくことが重要であります。
 このため、新ビジョンでは政策の実効性を高める行政経営を掲げ、現場に立脚した生産性の高い行政経営に取り組む方針や目標数値を明示したところであります。これを実現するための具体的取り組みにつきましては分野別計画である静岡県行政経営革新プログラム案に盛り込み、新ビジョンとともに今議会での御議論、御意見を踏まえた改善を加え成案を得てまいりたいと考えております。
 次に、特別会計及び企業会計についてであります。
 特別会計は、公債管理特別会計予算外十一会計で、新しく国民健康保険事業特別会計を加え総額八千百六十四億七百万円、前年度当初予算比七二・一%の増となりました。また企業会計は工業用水道事業会計予算外三会計で総額七百一億八千六百万円、前年度当初予算比一五・九%の増であります。
 次に、予算議案を除く平成三十年度関係のその他の議案のうち主な案件について概要を御説明申し上げます。
 第十八号議案は、本庁に置く部の分掌事務の見直しに伴う条例の改正であります。
 第二十一号議案及び第二十二号議案は、静岡がんセンター職員、教職員の定数等の改正を行うための条例の改正であります。
 第三十一号議案は、公職選挙法の一部改正に伴い県議会議員選挙における選挙運動用ビラの作成を公費負担するための条例の改正であります。
 第三十五号議案は、住宅宿泊事業の実施を制限する区域及び期間を定める条例の制定であります。
 次に、平成二十九年度関係の議案につきましてその概要を御説明申し上げます。
 一般会計の二月補正予算額は、百五十六億五千百万円の増額であり、この結果平成二十九年度の最終予算額は一兆二千二百八十三億七千五百万円となります。生産性革命、人づくり革命、TPP等関連政策大綱実現に向けた施策など国の補正予算に伴う二百十九億二千七百万円の増額補正やふじのくにづくり推進基金への積み増しを行うとともに、災害復旧費などの減額をあわせて行うものであります。
 特別会計及び企業会計の補正は、事業費、財源の確定等に伴うものであります。
 二十九年度関係の予算以外の議案につきまして、主な案件について概要を御説明申し上げます。
 第六十四号議案は、静岡空港の滑走路等の運用時間に関する経過措置を延長するための条例の改正であります。
 第七十三号議案から第七十五号議案までは、建設事業、土地改良事業及び流域下水道事業に対する市町の負担額の変更についてお諮りするものであります。
 第七十六号議案から第七十九号議案までは、土木工事等の契約及び変更契約についてお諮りするものであります。
 以上で私の説明を終わりますが、適切なる御議決をお願いする次第であります。
○議長(杉山盛雄君) 以上で説明は終わりました。

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