本会議会議録


質問文書

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令和元年6月静岡県議会定例会 質問


質問者:

阿部 卓也 議員

質問分類

代表質問

質問日:

06/24/2019

会派名:

ふじのくに県民クラブ


質疑・質問事項:

1 近未来の静岡県の社会像について                 
(1) 第四次産業革命への対応                    
   ア 第四次産業革命とデジタライゼーション           
   イ CIO(情報化統括責任者)への外部人材の起用        
   ウ デジタル行政推進法への対応                 
(2) 高齢化社会への対応                      
   ア ふじのくに健康立国論                    
   イ 地域包括ケア体制の整備                   
   ウ 介護人材の確保対策                     
   エ 公共交通のあり方                      
(3) 教育政策                           
   ア エドテックの導入                      
   イ 県立高校の今後の教育政策と再編整備             
2 時代の変化に対応した広聴について                
3 県民の命を守るための防災・減災対策について           
(1) 実効性のある避難訓練の実施                  
(2) 避難所の環境整備と運営                    
(3) 福祉避難所のあり方                      
4 弱い立場の県民の安心・安全をより高める施策について       
(1) 高齢者の免許返納制度のワンストップ化             
(2) 児童福祉、児童保護対策                    
5 既成概念にとらわれない産業政策の展開について          
(1) マリンバイオの可能性を広げる取り組み             
(2) 新産業政策としてのアクセラレータとの連携          
(3) 海外からの高度人材の獲得                   
6 農業に取り組みやすい環境整備について              
(1) 多様な農業の学習機会の創出                  
(2) 農業における知的財産の保護                  
(3) 農業用道路における農業用車両駐停車措置            
7 ガーデンツーリズムの推進と公園の新しい価値観創造につ
 いて


午後一時三十分 再開   
○副議長(中沢公彦君) ただいまから会議を再開します。
 質疑及び一般質問を続けます。
 通告により、六十七番 阿部卓也君。
       (六十七番 阿部卓也君登壇 拍手)
○六十七番(阿部卓也君) 皆様こんにちは。私は、このたびふじのくに県民クラブの会長を拝命した阿部卓也です。浅学非才ではありますが静岡県の未来をつくる思いと情熱で精いっぱい励んでまいりますので、お引き回しのほどよろしくお願いいたします。
 さて、私たち新生ふじのくに県民クラブは多様な立場の議員で構成されています。世界はまさに排除か多様性か民主主義が揺れる時代となっていますが、こんな時代だからこそ説得力のある具体的な政策を打ち出すことがより大切になっていると感じます。ゆえに我が会派も未来志向かつ生活感と現場感覚そして大局観を持って活動を展開し、存在感のある第二会派であることが県政の発展につながると信じています。会派一同より一層精進をしてまいりますので御指導御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは、ふじのくに県民クラブを代表して通告に従い知事、副知事、関係部局長、教育長、教育部長、警察本部長に分割質問方式で質問及び提案いたします。
 まず、近未来の静岡県の社会像について伺います。
 三つの柱に大別しましたので順にお伺いいたします。
 まず第一に、第四次産業革命への対応について申し述べます。
 十八世紀のイギリスで勃興した第一次産業革命に始まり、十九世紀終盤から二十世紀初頭の第二次産業革命そして一九八〇年代から始まった第三次産業革命はパソコンやインターネットの開発、ICT  情報通信技術といったいわゆるデジタル革命と呼ばれています。そしてこのデジタル革命を基盤にして、さらに技術進化した第四次産業革命の波がすぐそこまで来ています。第四次産業革命ではロボット工学、人工知能  AI、3Dプリンター、量子コンピューター、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、先進素材、自動運転そしてモノのインターネットと言われるIoTなど社会構造の変化、ものづくり産業そのものの変革そして人間の身体の一部にまで及ぶ大変革がやってきます。
 世界経済フォーラム、通称ダボス会議の創設者クラウス・シュワブ教授はこの第四次産業革命の大変革について、これらの先進技術は現状のデジタル技術が斬新的に進歩したものにはとどまらず現在の知覚、組織、実行、移動などの方法を破壊的に一変させてしまう、これまでにない価値観の創造でもある、ゆえに先端技術についての基準と規制についてしっかり規定をしてゆかねば、人間社会は利便性という恩恵と引きかえに格差と不平等、環境破壊が拡大し、場合によっては人間の尊厳が脅かされる事態に陥る危険性を秘めている、技術の進歩が人間本位でなくなり、ひとり歩きしてしまってはならないと論じています。つまり第四次産業革命とは単なる技術の進化や機器のデジタル化ではなくて人間の高度な意識変革も含めたデジタル化、つまりデジタライゼーションの時代です。
 この大変革に対応するために参考とすべきは、旧ソビエト連邦の一員であったエストニアであろうと考えます。エストニアは人口百二十万の国家ではありますが、電子行政の世界最先端を走りさまざまな制度がデジタル化されています。何より学ぶべきは国民理解からスタートした人間本位のデジタライゼーションとしての手順をしっかり踏んでいったということです。日本国政府も平井卓也IT政策担当特命大臣がエストニア友好議員連盟の会長を務めるなどエストニアから学ぶ姿勢を強化していますので、このエストニア等を参考にしつつ旧来型の産業論ではない社会全体の変革と捉えて産官学が一体となってデジタライゼーション社会をつくるべきです。それこそが静岡県の近未来の社会像を描く上でのベースとなると思います。
 そこで、まずはこの第四次産業革命の中で近未来の静岡県についてどのようなグランドデザインを描き政策展開を考えていくのか、知事の所見を伺います。
 次に、CIO  情報化統括責任者への外部人材の起用について伺います。
 静岡県は昨年三月、静岡県高度情報化基本計画・官民データ活用推進計画を策定しました。これはすばらしい内容になっています。しかし実行部隊の充足なくしては画餅に終わると危惧しています。また行政の計画にありがちな、一度決めたらかたくななまでに他者の意見を聞かないという態度が消えないようでは第四次産業革命時代のスピードについていけません。常にバージョンアップ、上書きが必要です。
 そこで、この戦略実現を率いる組織のトップとも言えるCIOについて伺いますが、現在は吉林副知事がお務めであり御本人ともお話しいたしましたが、時代の変化に即応できる体制の充足は常に必要だと感じているということでありました。政府CIO初め各県CIO及びその戦略チームはスピード感があり情報網もある外部からのチームを登用しており、本県でも外部起用の動きが必須であると痛感しています。大胆に外部の知見や多様な意見を入れた風通しのよい組織をデジタライゼーション化を推進する司令塔としてCIOを筆頭に構築すべきと考えますが、所見を伺います。
 デジタル行政推進法への対応を伺います。
 今現実的に静岡県が直面する問題としては、国会で五月に成立したデジタル行政推進法により行政のデジタル化に関する基本原則や行政のデジタル化を推進するための個別施策が定められ、地方自治体もこれに沿った取り組みをするように努力義務が課されるということです。具体的にはこれは行政改革にもつながることですが、紙ベースの資料添付を撤廃してデジタル化する行政手続のオンライン原則、そして情報通信技術を利用するための能力格差の是正を求めるデシタルデバイドの是正などが法律で定められました。これらは早急に取り組むことを迫られますが、具体的な対応についてお伺いします。
 次に二本目の柱、人生百年時代と言われる高齢化社会への対応についてお聞きします。
 人生百年時代と言われて皆さんは何を思われるでしょうか。このところ政府の諮問機関がまとめた報告書で、高齢者夫婦が九十五歳まで暮らすのには年金だけでは無理で二千万円が不足するというセンセーショナルな内容が国会で物議を醸しています。国会でのやりとりはこれ以上言及しませんが老後にお金がかかる現実、この厳然たる事実は事実として認識せねばならないことを改めて痛感する出来事でもありました。
 これを受けて、未来は暗い、長生きなんてするもんじゃないとお考えになられる高齢者の皆様がふえてしまわないように、県としては現場目線での人生百年時代の青写真を描いていかねばなりません。これまでの静岡県の健康長寿日本一を目指したふじ三三プログラムや減塩五五などの取り組みや特定検診データを活用して健康度の地域差などを見える化し課題と解決方法をわかりやすくする取り組みなどは高く評価できます。またノーベル賞学者でもある本庶佑先生の知見をもとに社会健康医学への取り組みを進めるため、社会健康医学大学院大学を設立しそこでのエビデンスや研究成果をもとに保健指導を充実させていこうとする方向性も正しいと感じています。
 あとは、健康寿命の延伸に合わせて社会のあり方を変えていくことが必要であると考えます。百年生きるためにはお金が必要なら、そのための定年の延長や元気な高齢者の軽度労働ができるような働き方改革が必要であること、高齢者が健康であればあるほど医療費や介護費用を抑制し社会保障費の削減につながるということ、第四次産業革命による技術や素材の進歩により着るだけで体調管理に直結するウエアや生活の中での行動を補助するロボットの導入などの技術革新も確実に進展すること、そして人生百年時代のための生きがい教育やリカレント教育を充実させていくことなどなど、こうした内容の健康立国論を総合的にまとめることが必要との考えが叫ばれるようになりました。
 そこで、日本の理想郷たることを標榜する静岡県としては他県に先んじる形で積み上げてきた健康延伸施策をベースに健康社会づくりを総合的に進めていくビジョンとして、ふじのくに健康立国論もしくは健康立国運動を提唱していくべきではないでしょうか。この地方からボトムアップ型でムーブメントを起すことができる健康立国論について、知事の所見をお伺いします。
 次に、地域包括ケア体制の整備について伺います。
 住まい、医療、介護、予防、生活支援を一体的に提供できる体制を構築する地域包括ケアシステムにおいて県内でも郡部など体制整備ができない、もしくはおくれている地域があります。これらの地域に対して県としてどのような対応を具体的にとっていくか伺います。
 次に、介護人材の確保対策について伺います。
 人材不足が甚だしい介護業界でありますが、そもそも介護業界は医療業界のようにキャリアパスが確立していないことに問題があります。これは介護福祉士という資格はあるものの、資格がなくても介護職に就労できることからキャリアが賃金に反映されづらく、業界の低賃金の温床をつくってしまっていると感じています。こうした状況下で県内の介護人材の高度化と職場環境の改善を目指すためには、県独自での認証制度をつくりキャリアパスの形成に役立てるとか介護事業者の企業努力に応じての格付をするなど踏み込んだ対策が必要だと考えますが、所見を伺います。
 最後に、公共交通のあり方について伺います。
 人生百年時代において最も大切なこと。それは公共交通体制の確立なくしては社会の形が成り立たないということではないかと現場感覚で感じます。昨今高齢ドライバーによる事故が相次ぎ社会問題化していますが、御自分で危ないと感じながらも生活の足が奪われることで免許返納をできないでいる方々がいかに多いことでしょうか。また免許返納を推奨する一方で路線バスの廃止が相次ぐという、交通弱者の現場感覚からすると真逆の矛盾した事態が各地で生じているのも事実です。このままでは高齢者の社会参加にブレーキをかけることになるだけでなく人生百年時代の社会福祉費の増大、生産性の低下、消費の低迷など悪循環を招く元凶になりかねません。ゆえに社会基盤の基礎として公共交通網の整備にあらゆる形で取り組むことは喫緊の課題です。
 そこで、県としては既に県内で実績を上げている富士宮の宮タク方式や埼玉県などで実績のある路線バスの官民連携型ハブ&スポーク方式の導入を市町や事業者と協議したり、既存の交通網の維持管理や効率化、高度化を図ったり公共交通空白地域での自動運転やウーバー方式など、さまざまな形で全県を俯瞰しての地域交通・公共交通体制を確立させていくことが最重要課題であると考えています。そのために早急に公共交通利用促進計画ないしは地域公共交通条例などを策定すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 最後に三本目の柱、教育政策についてですが、目指すべき社会像を描いたとしてもその社会を担う人材育成と明確なビジョンを持った体制整備ができないことには画餅と帰してしまいます。教育のあり方についてはさまざまな角度での議論が必要だと認識していますが、ここでは喫緊の課題についてポイントを絞ってお伺いいたします。
 エドテックの導入についてお伺いします。
 教育においても第四次産業革命の波、デジタライゼーションの波が押し寄せています。皆さんはエドテックという言葉を御存じでしょうか。エドテックとはエディケーションとテクノロジーを組み合わせた造語なのですが、ITとの融合で教育に革新  イノベーションを起こそうという取り組みです。世界では既にIT先進国のイスラエルや中東諸国、またアメリカや中国でも急速に導入が進んでいます。実は静岡県でも西伊豆町立田子小学校で試験的に導入し、ゲームの要素を取り入れたエドテックでプログラミングを学んでいます。既に身近なところで動きが始まっているのです。
 エドテックの導入は、デジタライゼーションの時代の基礎知識教育の生産性、効率性を上げることができ、教える側にも学ぶ側にも大きな利点があり教師の負担軽減にもつながります。またさまざまな情報のデジタル化により、セキュリティーさえしっかりすれば生徒も親も学校関係の情報に手軽にアクセスすることができるようになり教師、生徒、保護者の三者間のコミュケーションの向上にもつながると考えますが、教育委員会のエドテック導入についての所見を伺います。
 また、現在文部科学省はモデル地区を指定して実装実験を進める準備をしているとのことですので静岡県としても積極的なモデル導入を国と一緒に進めるべきと考えますが、あわせて所見を伺います。
 県立高校の今後の教育政策と再編整備について伺います。
 既に高校教育にも大きな変革の波が押し寄せているのは御承知のとおりですが、静岡県教育委員会はその変革のスピードに対応し切れているのかという危惧を覚えています。私学のスピード感、対応力を見ていると今後は静岡県においても生徒の公立離れが進むことは必然だと痛感しています。この危機に際して必要なことは、公立高校の存在意義の確立と明確なビジョンを示すことだと思います。
 具体的には、公立高校であるからこそ過疎地域や郡部での教育機会を保証し学校を存続することを表明することや普通高校の学科やコースの特色化も急務です。また外国人生徒の増加や障害のある方、LGBTの方への対応なども求められます。
 このようなさまざまな社会情勢の変化に対応するために、今後どのように教育政策を展開していく所存でいるのか教育長にお伺いいたします。
 また、喫緊の課題として現在検討中の県立高校の統廃合計画についてですが、唐突かつ単なる数合わせに見えるがために地元の理解が得られないでいる現行の計画とやり方については遺憾の意を表します。本来ならば今申し述べたように、県内の高校教育の全体像の中で時代の変化に即応した明確なビジョンを打ち出した上で統廃合計画を示し地元の理解を得なければならないと感じています。
 現在検討中の統廃合計画も含めて、今後の再編整備計画の進め方について所見を伺います。以上、答弁を求めます。
○副議長(中沢公彦君) 川勝知事。
       (知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 阿部議員におかれましては、若くしてふじのくに県民クラブの会長になられました由、おめでとうございます。排除よりも多様性、エクスクルーシブではなくインクルーシブというのはとても大事なことだと思います。多様性の輪と言うのは簡単ですけれども、なかなかに達成は難しいと。立派に活躍されることを御期待申し上げます。
 さて、阿部議員にお答えいたします。
 近未来の静岡県の社会像についてのうち、第四次産業革命への対応についてであります。
 議員は比較的楽観的な見通しを持たれているようでありますけれども、私自身はこれはもろ刃のやいばであるというふうに考えております。第一次、これは技術的には蒸気力でした。第二次、これは電力。第三次はコンピューター。そして第四次産業革命の軸をなす技術はAI  アーティフィシャル・インテリジェンスであります、人工知能と。
 人類というのは、知性を持つ動物ということでホモサピエンスというふうに言われますけれども、ホモサピエンスよりも高い知性を持つ存在があらわれてくるとどうなるか。そうするとそれはホモサピエンスから次の段階、ホモデウスへの道であるというふうに言っている識者もいます。すなわちホモサピエンスそれ自体の存続が問われる時代になっているということでありまして、本来人間とはどうあるべきかということを考えるべき、そういう今時代に差しかかっていると考えております。
 さて、第四次産業革命とデジタライゼーションについてでありますが、議員御指摘のとおり第四次産業革命による技術革新と社会実装による社会経済を変革する取り組みの進展は、世界的な大潮流として本県にも大きな変革をもたらそうとしております。こうした技術革新は人口減少などで顕在化している地域課題の有効な解決手段としても、また既存産業の高度化や新産業創出の旗手としても期待されております。これを受けて県といたしましてはより高度な経済、より豊かな生活を実現できる社会を目指した取り組みを積極的に推進してまいります。
 具体的には、三次元点群データを活用し地域課題を解決する社会実験を推進いたします。伊豆半島地域におきまして官民が連携し、人口減少社会にも適応できる自動運転による移動支援、災害対応の迅速化、インフラの維持管理などの実証、実装に取り組みます。これは国のスマートシティーモデル事業に採択されました。全国を牽引する先駆的な取り組みとして高く評価されたところであります。
 また、データ駆動型の研究開発や産業応用を機軸としたAOIプロジェクト、またMaOIプロジェクト、IoTなどに必要不可欠な要素技術を提供するフォトンバレープロジェクト、最先端のデジタル技術によるゲノムデータ解析と応用を進めるファルマバレープロジェクト等々、革新的技術を活用した新産業の創出にも積極的に取り組んでいるところであります。
 さらに、第四次産業革命がもたらす技術革新を活用していくには膨大なデータを処理する人材が必要不可欠であります。このため昨年度ふじのくにICT人材確保・育成戦略を策定いたしました。本年度はトップ人材を呼び込み県内企業との協業を促す、TECH BEAT Shizuokaの開催などを進めてまいります。
 加えて、企業や研究機関等の皆様に革新的技術を実証できるフィールドを提供していくことも重要です。社会の多様なニーズにきめ細かく対応し年齢、性別、言語といった違いを超えて質の高いサービスを提供いただけるようさまざまな分野の実証実験を支援いたします。
 今後とも、第四次産業革命がもたらす本県の将来の姿をしっかりと見据え人間本位の視点に立って、県民の皆様が物心ともに豊かに暮らすことのできる地域の実現に全力を傾注してまいります。
 次に、高齢化社会への対応についてであります。
 ふじのくに健康立国論についてでありますが、本県の健康寿命は男性が七十二・一五歳、女性が七十五・四三歳となっておりまして男女ともに全国で、言いかえると世界でトップクラスの健康長寿県であります。本県では平成二十七年六月に女性の健康寿命相当年齢である七十六歳までを壮年といたしました。社会で元気に活躍できる世代であると位置づけたわけであります。こうしたふじのくに型人生区分を提示いたしまして、人生百年時代を先取りする形で高齢者の社会参加を促進してまいりました。
 また、健康寿命のさらなる延伸を図るために平成二十九年度から、静岡県で暮らす、働く、育つと元気になれる「働いてよし 住んでよし」というのをコンセプトといたしまして、企業の経営手法の一つである健康経営の視点を取り入れ、企業だけでなく地域も家庭も対象としたしずおかまるごと健康経営プロジェクトを展開しておりまして、県民の健康づくりを推進しているところであります。さらに昨年度からは健康長寿の要因を分析し科学的知見に基づいた効果的な疾病予防対策、健康増進施策を展開するため医療ビッグデータの活用や疫学研究など社会健康医学に基づく先進的な研究に取り組んでおります。
 こうした研究で得られた成果を県民の皆様が主体的に健康づくりや疾病予防に向けた活動として日常的に取り組んでいただけるようにするには、継続的に研究を深化させていくとともに地域の実情に応じた有効な施策を展開することが重要です。このため京都大学高等研究院の本庶佑特別教授の御指導のもと、本年三月に社会健康医学大学院大学の設置に係る基本構想を策定いたしました。この基本構想に基づき研究の深化と地域のリーダーとなる人材育成を進めるため、知と人材の集積拠点となる大学院大学を設置することといたしました。これらの取り組みにより健康寿命の延伸を図り、県民の皆様お一人お一人が健康で生き生きと生活することが医療・介護給付費の適正化につながるだけでなく実質的に生産年齢人口も増加する、いわゆる活力ある高齢社会を実現できることになります。ふじのくには健康立国として国内はもとよりアジア諸国のモデルになり得ると考えております。
 県といたしましては、県民の皆様が生涯現役であるという価値観を共有し人口減少・超高齢社会にあっても誰もが明るい希望を持って元気に幸せを実感しながら暮らすことのできる、世界から憧れられるような健康長寿ふじのくにとなるよう、県民の皆様と一丸となって取り組んでまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 鈴木経営管理部長。
       (経営管理部長 鈴木宙志君登壇)
○経営管理部長(鈴木宙志君) 近未来の静岡県の社会像についてのうち、第四次産業革命への対応についてお答えいたします。
 CIO  情報化統括責任者への外部人材の起用についてでありますが、デジタル化の進展に対応していくため副知事を本部長とする高度情報化推進本部におきまして情報化の推進に取り組んでおります。平成二十四年度からは総合調整を行うCIOを設置し、情報化を含め県全体の課題を熟知している副知事がこれに当たっております。
 平成三十年三月には、急速に進展するAIやIoTなどに的確に対応していくためICT戦略二〇一八を策定いたしました。策定に当たりましては各分野の有識者七人による懇談会を設置しICTの種別ごとに実用化の効果などを掘り下げ、将来を見据えたICT利活用の方策を各部局に提示したところであります。今後外部人材を活用した事業評価を行い、必要に応じて見直しをしてまいります。
 また、平成三十年度からは情報通信技術に関する専門的知識を有し懇談会委員でもありました金田康正氏にICT戦略顧問を委嘱しており、システム調達の指導に加えふじのくにICT人材育成協議会委員長への就任やプログラミング教育に係る実践的な助言をいただくなど、CIOと一体となってこの戦略を強力に推進しております。
 今後、日進月歩で進展するICTを利活用し産業、医療福祉、教育などさまざまな分野の課題解決につなげていくためには外部の専門家の知識や経験がますます重要となってまいります。CIOを含め外部人材の起用によるデジタライゼーション化の推進体制につきましても検討してまいります。
 次に、デジタル行政推進法への対応についてであります。
 行政のデジタル化を推進するため、県では個々の手続、サービスが一貫してデジタルで完結するデジタルファーストの考え方をICT戦略二〇一八に盛り込み、オンライン化やデジタル化に取り組んでおります。行政手続のオンライン化につきましては、産業廃棄物関係の実績報告や職員採用試験の申し込みなど七百以上の申請手続を行うことができる電子申請システムなどさまざまなサービスを提供しております。今後もスマートフォンを活用した手続の拡大を図るなど、利便性の向上とあわせて紙書類の削減も図ってまいります。
 また、今後マイナンバーカードを利用したオンライン手続の拡大も見込まれICTを利用できる人とできない人の格差の解消を図る必要があることから、市町と連携しながらマイナンバーカードの活用を支援する体制を構築するなど誰もが利用しやすい環境を整えてまいります。
 県といたしましては、今後も利便性の向上と行政運営の効率化の両立を目指しAIの活用など新世代ICTの積極的な導入を進めながらさらなる県行政のデジタル化を推進してまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 池田健康福祉部長。
       (健康福祉部長 池田和久君登壇)
○健康福祉部長(池田和久君) 近未来の静岡県の社会像についてのうち、高齢化社会への対応についてお答えいたします。
 地域包括ケア体制の整備についてでありますが、県内における体制の整備状況に差がありますことから県では地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを推進するため毎年全ての市町に個別のヒアリングを実施し、市町単独では解決が困難な課題に重点的に取り組むこととしております。
 昨年度のヒアリングでは、必要なサービスを提供する事業所が地域内にないことや交通機関の撤退などにより家事援助や外出支援など在宅生活での援助を必要とする方が増加しているという課題が明らかになりました。そこで今年度は民間事業者等がサービスの不足する地域に参入できるよう市町とのマッチングを行うほか、地域の人材と資源を活用した移動サービスの立ち上げを行う市町を支援する仕組みづくりに取り組んでおります。
 県といたしましては、今後も市町が抱える個別課題を把握し関係団体から助言や協力をいただきながら広域性、専門性等の点から市町が必要とする支援策に取り組み、誰もが住みなれた地域で最期までその人らしく暮らし続けられるよう地域包括ケアシステムの実現に取り組んでまいります。
 次に、介護人材の確保対策についてであります。
 今後増大する介護需要に応じた介護職員を安定的に確保していくためには、やりがいを求めて介護の仕事を選んだ皆様が将来展望を持って長く働き続けることができるよう生活の見通しが可能な賃金水準の改善や適正な処遇が必要であると考えております。このため昨年度、能力、資格、経験に応じた給与、処遇体系を定めるキャリアパス制度の導入や処遇改善加算などについて社会保険労務士が百四十七の介護事業所を訪問し相談に当たり、現在約九割の事業所で加算を取得するなど給与水準も改善されてきております。
 また、本年十月の介護報酬改定において経験年数の長い介護福祉士を中心とした月額八万円程度の処遇改善と資格を持たない職員の給与加算が予定されており、県でもこうした職員全体の賃金の向上につながる制度を周知し加算取得を推奨してまいります。
 さらに、キャリアパス制度の導入、資格取得支援などの人材育成や育児との両立、休暇制度の取得などの労働環境の改善を行っている介護事業所を働きやすい介護事業所として県が認証する制度を昨年度から開始いたしました。これまでに百四十六事業所を認証し、介護分野での就職を希望する皆様に向けて広く周知することで新たな人材の確保につなげております。
 県といたしましては、資格を持たない方を含めた全ての介護職員が働く意欲を高める処遇の実現と生き生きと働き続けることができる職場環境の整備に積極的に取り組み、介護の現場を支える人材の確保と定着に努めてまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 宮尾交通基盤部長。
       (交通基盤部長 宮尾総一郎君登壇)
○交通基盤部長(宮尾総一郎君) 近未来の静岡県の社会像についてのうち、高齢化社会への対応についてお答えいたします。
 公共交通のあり方についてでありますが、公共交通は県民の日常生活及び社会生活の基盤であり、高齢者を初めとした地域住民の移動手段の確保は早期に対応すべき課題となっております。このため県内各地でさまざまな取り組みが行われており、県も参画いたしました富士宮の公共交通活性化会議での議論を経て運行しているデマンド型タクシーが有効な手法として他の市町にも拡大しております。また高齢者への対応が深刻な状況となっている伊豆地域におきましては県が中心となり協議会を運営し、関係市町や交通事業者等とともに利用者の目線に立ったきめ細やかな取り組みによりバスの利便性向上のための施策を実施しているところであります。
 今後のさらなる高齢化に対応する公共交通の対策に関しましては、地域それぞれに環境や課題が異なりますことから県が国や市町、交通事業者等に呼びかけて新たな組織を立ち上げ、他県で実施している先進的な事例や自動運転などの新たな交通の導入も含めこれからの時代に適した公共交通の施策の検討を積極的に進めてまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 木苗教育長。
       (教育長 木苗直秀君登壇)
○教育長(木苗直秀君) 近未来の静岡県の社会像についてのうち、教育政策についてお答えいたします。
 エドテックの導入についてでありますが、AI等の先端技術を含むエドテックの効果的活用は子供たち一人一人の関心や理解度に応じた学びの提供を可能とすることから、国におきましてはその導入に向けて実証的な取り組みを進めております。
 県内では、昨年九月から袋井市において経済産業省の未来の教室実証事業によりエドテックを活用した小学校での授業に取り組んでおります。一人一台タブレットパソコンを用いて個々の児童の習熟度に合わせた問題をAIが出題するなど、いわゆるアダプティブラーニングを可能とする新しいスタイルの授業を実践しております。また日大三島中学校では、タブレットを用いて観光の専門家など外部の有識者とオンラインディスカッションを実施することでより活発な議論を行い理解を深める授業を展開しております。
 こうした動きを踏まえ、県教育委員会では本年七月に先端技術を活用した教育に関する専門部会を設置する予定であります。金田ICT戦略顧問やマイクロソフト社の助言をいただきながら最新技術の活用に係る検討を進めていくこととしており、議員御提案の文部科学省の実証事業につきましても部会での検討を踏まえ積極的に活用を進めてまいります。また八月には市町のICT教育担当者を対象とした教育情報化推進ワークショップを開催し、国の政策の動向や実証事業の取り組みを広く周知していくこととしております。
 県教育委員会といたしましては、未来社会に生きる子供たち一人一人がみずから課題を見つけ解決に向けた学びを実践できるよう、市町教育委員会と連携しながらエドテックなど先端技術を取り入れた教育環境の整備に取り組んでまいります。
 次に、県立高校の今後の教育政策と再編整備についてであります。
 少子化やグローバル化の進行に加え、AIやIoTなどの技術革新の急速な進展等社会が大きく変化し、今後ますます予測困難な時代になると言われております。そうした中にあっても全ての子供たちに生きる力を身につけさせることは、教育に課された大きな使命と考えております。とりわけ高校は社会に羽ばたく前に自分の道を定める極めて重要な時期であり、確かな学力等の育成とともに、社会の実情や多様化する価値観等を踏まえ将来を見据えた教育の実践が求められております。
 県立高校につきましては、昨年三月に策定したふじのくに魅力ある学校づくり推進計画におきまして十年間を見通した基本的な方向性を示しております。生徒一人一人の能力や適性を最大限伸ばすとともに、多様な生き方や価値観を受け入れグローバル化や情報技術の発達した未来社会で活躍できるように教育内容を充実させていくこととしており、今後教育を受ける機会の確保と特色ある高校教育の具現化を図ってまいります。
 また、県立高校の再編整備につきましては計画で示した方向性を踏まえ新構想高校として位置づけており、今後とも地域の実情に配慮しつつ同窓会、PTAなどの学校関係者や地元自治体などの御意見を丁寧に伺いながら魅力ある質の高い教育環境の整備に向けて取り組んでまいります。
 県教育委員会といたしましては、変化が激しく予測困難な未来社会においても子供たち一人一人がみずから課題を発見し、学び、考えて行動できるよう時代の要請を踏まえた人づくり・学校づくりに邁進してまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 阿部卓也君。
       (六十七番 阿部卓也君登壇)
○六十七番(阿部卓也君) 御答弁ありがとうございました。
 それでは、要望を二点、再質問を二点お願いします。
 まず要望ですが、CIOの件ですがこれCIOだけでなく、庁内外の能力が融和をして最大限の力を発揮できるチームづくりが重要だと先ほども申しました。ぜひスピード感のあるチームづくりを意識して作業をお願いしたいと思います。
 もう一点要望ですが、教育についてですが私学とのこれから競合が予想されます。その中でこれ未来を担う子供たちのために私学とけんかをするのではなくて、お互い切磋琢磨して時には協働して静岡県の教育の向上を目指していただきたいと、この二点要望とします。
 再質問二点ですが、冒頭の第四次産業革命について知事がもろ刃の剣とおっしゃったこと全く同感でございます。これ、わざわざ私がこの中にデジタル推進法も取り上げましたが、その中で言われているようにデジタルデバイド、いわゆるデジタル化に対してついていけないでいる人たちに対してどうするかということが大切でありまして、エストニアを事例に出したのはエストニアはまず九割の人が今その電子行政に参加していますが、参加できる土壌、風土づくりをしっかりしたということであります。だからこそモデルにしなきゃいけないということで申し上げたので、ぜひそういう学びを静岡県としても国がやっているだけじゃなくて、静岡県が一番現場に近い静岡県や市町ができるような体制づくりが必要だと思いますが知事の所見、改めて伺います。
 もう一点、再質問します。
 健康立国論でございますが、例えばふじ三三プログラム等先ほど申し上げたんですが、これ物すごくいい施策で惜しいと思っています。もうちょっとでムーブメントになります。健康立国論にすることでもう一つ先ほど言った公共交通がなくては人生百年時代、成り立ちませんよと申し上げたように、そういうものもトータルに含めた健康立国論をビジョンとして固めることこそが大きなムーブメントを起こす手段になるだろうということでの提言であります。それについて改めて知事の所見を伺います。答弁を求めます。
○副議長(中沢公彦君) 佐藤政策推進担当部長。
○政策推進担当部長(佐藤典生君) 第四次産業革命とデジタライゼーションについての再質問にお答えいたします。
 今、議員からも御指摘がありましたとおり第四次産業革命による技術革新、これは社会をそして私たちの暮らし、生活そのものを大胆に変えていくものだと認識しております。このため県の施策にですね、反映する際に適切に反映、取り組んでいくことが非常に大切であります。
 今、議員からもお話がありましたとおり、ついていけない人、適応が難しい人ということが当然出てくると思います。我々といたしましては人間のための技術進歩そして技術革新である。技術の進歩を人間の社会、人間のために役立てるということが非常に大切だと思っております。
 このため、人間が暮らしやすい社会をつくるという視点に立って政策グランドデザインを描いていきたいと思います。その上で取り残すことがないようにしっかりとした体制を市町、民間の方々とともにつくっていきたいというふうに考えております。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 池田健康福祉部長。
○健康福祉部長(池田和久君) ふじのくに健康立国論に関する再質問にお答えいたします。
 健康寿命の延伸につきましては、健康福祉部のみならずですね、今お話のありましたように地域の交通であるとか、あるいは企業ぐるみで健康に力を入れていかなければいけませんので、経済産業部であるとか関係部局と連携いたしまして、静岡県の健康づくりに当たっていきたいと考えております。以上でございます。
○副議長(中沢公彦君) 阿部卓也君。
       (六十七番 阿部卓也君登壇)
○六十七番(阿部卓也君) 御答弁ありがとうございました。
 それぞれ深掘りしたいところですが、具体的に施策展開がされることを期待して次の質問に移ります。
 時代の変化に対応した広聴についてお伺いします。
 現在の広聴は、県政モニターやパブリックコメント制度など限られたツールにとどまっています。これでは限定的な意見聴取しかできないと感じています。
 そこで、幅広い世代や多様な県民の皆様の意見を聴取していくためにSNSの活用などを織りまぜた広聴の手段を検討すべきだと考えます。例えばユニセフがウガンダで導入したU−Reportなどの事例も参考になると思いますが、デジタライゼーション時代に対応した広聴のあり方についての所見をお伺いいたします。
 次に、県民の命を守るための防災・減災対策について伺います。
 時代がいかに変化しようとも命の大切さは不変のものです。静岡県は自他ともに認める防災先進県であったはずですが、先日内閣府の防災担当参事官から静岡県はハード整備ではトップですがソフト面でのおくれが他県に比べて目立ち始めましたよと手痛い御指摘をいただきました。これは県民一人一人の防災意識の低下やマンネリ化についての御指摘であり、災害を自分のことだと認識しない限り防災活動や災害時に主体的な行動ができず、それが命を失うことにつながりますよという警告であったと思います。けさも地震がありましたが、改めてもっと鋭く防災・減災対策について切り込まねばと痛感いたしました。
 そこで、以下三つの観点からお伺いいたします。
 最初に、実効性のある避難訓練の実施についてです。
 静岡県では十二月に全県での防災訓練を町内会単位で実施していますが、この訓練にこそ指摘された問題点が凝縮していると感じています。訓練では消火器での消火訓練、常備した災害食による炊き出し訓練というようなメニューが定番です。決して無駄とは言いませんがもっとそれぞれの地域の危機に即応した具体的な訓練が必要です。
 まず、現時点では地震対策訓練と規定されているものを河川の氾濫や崖崩れ対策などそれぞれの地域に合ったより実効性が高い訓練にするなど防災訓練の目的、内容の多様化に努めるべきと感じます。
 また、知事認定資格であるふじのくに防災士やふじのくにボランティアコーディネーターにももっと協力を仰ぎ実践的な訓練にすることや、中高生も災害時は大きな戦力になり得る存在ですので防災訓練のときのメニューに工夫をすれば地域全体の災害に対する意識や知識、対応力を高める機会にできるはずです。さらにあえて言葉を選ばずに申し上げますが、県の災害時の死者想定に入っている方々には失礼ながらそういう状況なので一緒になって命が助かるための方法を考えましょうと直接語りかける場にしていくことも自分のこととしての防災意識につながり、市町の対策の進展にもつながると考えます。所見をお伺いします。
 次に、避難所の環境整備と運営についてですが、これもソフト対策のおくれの一つだと感じています。避難所は多くが小中学校の体育館などが指定されていますが、現場の関係者からは水害が心配なところだけれども大丈夫だろうかなどという危惧や発災時に避難所に衣がえするだけの資機材の備蓄が不足しているところもあります。これらは現場本位の運営訓練をすればおのずと見えてくる課題でもありますし、実際の避難所運営については未知数なところが多いので誰がどんな役割を果たし指揮命令系統がどうなっているのかなどという現場感覚での運営訓練を実施し、その上での避難所整備と運営を考えていくべきと思いますが御所見を伺います。
 次に、福祉避難所のあり方についてですが、福祉避難所とは高齢者や障害のある方、妊産婦や乳児など要支援者の二次的な避難所です。指定や協定を結んだ県内三十五市町七百五十八施設の内訳を見ると大部分が既存の高齢者施設、障害者施設、児童福祉施設となっていますが、これらの施設には既に入居者や通所者がおいでになられて新たに要支援者を受け入れるには職員のマンパワーやスペースの面での無理があると感じます。これらの課題を解決するために他県では新たな施設を指定したり、現場ごとの課題を洗い出すために要支援者を含めた避難訓練を実施するなど福祉避難所のあり方について工夫をしています。
 静岡県でも、まずは地域の要支援者の状況をしっかり把握し個別の対応策を講じるための個別計画の作成や訓練を行う中で福祉避難所の実効性の検証を行い、他県の事例を参考にしながら新たな指定等を図るべきと思いますが所見を伺います。
 次に、弱い立場の県民の安心・安全をより高める施策について伺います。
 最初に、免許返納制度の促進策を返納者目線で考えて提案をいたします。
 現在、免許の返納は警察署及び運転免許センターで行われておりますが返納に際して経費の助成や代替交通チケットなどを配付する市町があります。ところがこの助成制度を受け取るには市役所や町役場に行かねばなりません。ここで免許返納してしまうと市役所に行けないからと返納を取りやめる方も実際いらっしゃるという切実な事情もお聞きします。この問題は抜本的には先ほど提言した地域公共交通条例などで生活の足の確保策をトータルに考えていかなければならないことは明白ですが、ここでは当面の解決策について警察本部長に提案いたします。
 既に、掛川署では掛川市と連携し警察署で免許返納の際の助成制度の受け渡しの代行を行っているとのことですので、この際関係する全警察署等において市役所、町役場へ行かなくても助成制度の手続ができるワンストップサービスを行うべきと考えますが、警察本部長の所見を伺います。
 また、免許返納に対しての助成制度を実施していない市町については県民の生活の足の確保と高齢者の交通事故防止の観点から助成制度導入の検討を県や警察サイドからも働きかけるべきと考えますが、あわせて所見を伺います。
 次に、児童福祉、児童保護対策についてですが、六月十九日に国会では改正児童虐待防止法、改正児童福祉法が成立をいたしました。法改正により児童相談所の体制強化などが盛り込まれますが、もっと現場感覚に即した対策が必要だと私は考えます。
 そもそも虐待事件の背後関係を調べると対応が属人的であり、かつ関係者が多く所管ごとに情報が分断されたりすることで対象児童の切迫した危機に対応できず悲劇を招いてしまうという事例が多くあります。この複雑なリスク情報を一元化し虐待の早期発見などにつなげる対策を講じねばなりません。
 そこで、所管を越えて打開策を探るためにデジタルリスク管理ソリューションの導入を提案したいと思います。これはリスクをスコア管理し、AIを使って判断補助をするなどして対応おくれの防止や危険の兆候を発見したりするものです。つまり児童虐待の兆候や通学路の危険箇所や登校状況などのリスクに関する情報が一元化され、情報セキュリティーで守られた上で学校、教育委員会、役所、児童相談所、警察、支援NPOなど多岐にわたる関係者がアクセスすることができ、対応を協議できるシステムを構築するという最先端情報管理、情報分析技術です。これもデジタライゼーションの一環ですが、何よりも大切な命を守るためのツールとして検討すべきと考えますが所見を伺います。
 次に、既成概念にとらわれない産業施策の展開について伺います。三点提案します。
 最初に、マリンバイオの可能性を広げる取り組みについて提案します。
 本年度より静岡県のマリンバイオテクノロジーを活用したプロジェクトがスタートしますが、現在世界的に問題になっている海洋プラスチック対策にもこのマリンバイオ研究を生かすべきと考えます。世界中で海洋プラスチックを分解する海洋微生物を探すことが緊急課題となっており、日本の各種研究機関も血まなこになって探索をしていると聞いていますが、駿河湾は日本一の水深と多くの熱水口を有するまさにマリンバイオの可能性を秘めた海であります。
 そこで具体的な提案ですが、経済産業省の外郭団体に製品評価技術基盤機構、通称NITEという組織がありますが、ここには世界有数のバイオテクノロジーの研究と微生物のストックを持つ研究所があります。そして清水港を準母港とする海洋調査船「ちきゅう」を持つ海洋研究開発機構、通称JAMSTECも巻き込んで、三者で連携して駿河湾を舞台に海洋プラスチックを分解する海洋微生物の探査を兼ねたマリンバイオ研究をすべきと提言いたします。所見を伺います。
 次に、新産業政策としてのアクセラレーターとの連携について伺います。
 皆さんはアクセラレーターを御存じでしょうか。イギリス英語ではペダルを意味するこの言葉は日本語に直訳すると加速するものとなります。ITの分野では機器やシステムに追加して機能を向上させるハードウエアやソフトウエアの総称でもありますが、ここでは主にベンチャー企業や人材の成長を加速させる仕掛けをする組織、企業、個人のことを指します。アメリカやイスラエルではこのアクセラレーターの手法や組織が目覚ましい成果を上げており、新産業育成のエンジンになっています。
 静岡県にはf−Bizのようなインキュベート組織、スタートアップ組織が育ちつつありますが海外への視野も広げさまざまな可能性へのチャレンジができるように海外のアクセラレーターとの提携を模索してみたらどうでしょうか。既に神戸市はアメリカのアクセラレーター、ファイブハンドレッドスタートアップス社との提携をしてシリコンバレーからの人材の派遣を受けている事例もあるだけに十分検討の価値があると思いますが所見を伺います。
 海外からの高度人材の獲得について伺います。
 今年度、モンゴルとインドネシアでは静岡県内企業と高度人材のマッチングのための合同面接会が開催されます。これでこそ地域外交の成果が生まれると期待しているところであります。
 さて、隣国韓国では大学、大学院卒業生が極度の就職難に陥っているとのことであります。韓国政府もこれに対して海外での就職を奨励しておりますので、この機会に韓国でのセミナー等の開催も計画して高度人材を獲得しさらなる県内企業の人材確保策としたらどうかと考えますが所見を伺います。
 次に、農業に取り組みやすい環境整備について伺います。
 農業の世界にも第四次産業革命の波が押し寄せ、さまざまな先端技術が入ってきています。AOI−PARCはまさにその農業先端技術の研究開発のフィールドと言えますが、県内にはさまざまな角度で農業についての勉強をしたい方々がおいでです。これからの農業を考えたとき、そのようなさまざまなニーズに応えていくことこそが県の果たすべき役割ではないでしょうか。
 県の関係機関だけではなく、JAさんや民間の農業会社と協働したり県内各地でのセミナーや現地研修会、時には視察ツアーを組んだり、場合によっては海外先進地や研究所への留学制度を拡充するなど静岡県の農業のさまざまな可能性を見つけ、引き出すための動きを積極的に展開していくべきと考えますが御所見を伺います。
 次に、農業における知的財産の保護について伺います。
 農業従事者の中でたくみと称される方々がおいでです。ミカンの糖度を瞬時に見分けることのできる方、適地適材の最適農業土の生産ができる方、今こんなたくみのもとにもIT技術による農業分析が入っています。
 例えば、三ヶ日町のミカン農家ではミカンの選別作業をカメラで撮影し、データ化し分析、AIを使ってたくみのわざの判断基準を見える化する研究が進んでいます。この技術がデジタル化され一般に開放されれば、素人でも場合によっては全てロボットでミカンの糖度を見分けることができるようになるかもしれません。これは先端農業の一つの姿になるかもしれませんが、一方で長年努力と苦労を重ねてこのたくみのわざを身につけた農家さんは、好意で研究に協力したがためにたくみのブランドが崩壊して経営が成り立たなくなってしまうということにもなりかねません。こんなことにならないように、農家がお持ちの経験と研究の成果でもある農業技術、たくみのわざを農業の知的財産権として守らなければなりません。目に見えづらいわざを知的財産として確立させることは法的にも簡単なことではありませんが、静岡県の農芸品というブランドを守り長く確立させていくためにも県として農業の知的財産権の保護に農家も巻き込んで取り組むべきと考えますが所見を伺います。
 次に、農業用道路における農業用車両駐停車措置について伺います。
 農作業をするために農道にとめていた軽トラックが駐車違反をとられてしまった、年もとってしまって田畑に行くには車で行くしかなく、これではもう耕作放棄も考えなきゃいけないという農家の方からのぼやきをお聞きしているのはきっと私だけではないと思います。実は全国の同様の悩みが届いたのか、本年二月十九日付で農林水産省農村振興局整備部地域整備課長より農道における車両の交通に関する措置という依頼文書が警察庁へ発出されており警察庁も対応する方針とお聞きしています。この動きを受けて県警としても農業振興の立場も御理解いただき交通規制の緩和を検討すべきと思いますが、警察本部長の所見を伺います。
 最後に、ガーデンツーリズムの推進と公園の価値観創造について伺います。
 「LIFE is PARK!いま世界は公園を求めています。」これは時代のトレンドをリードする某人気雑誌の公園特集号のキャッチフレーズです。この雑誌だけでなく近年さまざまな媒体で公園が取り上げられるようになりました。日本国内でも流行の最先端を行く銀座の中心地にあったソニービルが昨年ソニーパークとして地下四階まで広がる新しい概念の公園に生まれ変わるサプライズがありましたし、県内を見回しても各地の公園はにぎわいを見せ、県民の皆様が公園を多様な感性で楽しんで憩いの場とされています。まさに第四次産業革命時代の現代社会が公園を求めているのです。
 そんな世界の潮流を感じたのか、国土交通省がガーデンツーリズムを推進しようと動き始めました。五月三十日、庭園間交流連携促進計画登録制度を発表しましたが全国六つの地域の公園や庭園が登録をされました。何とそのうち二つは県内からで、花をテーマに浜名湖周辺地域を初めとした西部地域、皇室ゆかりの庭園をテーマにした富士・箱根・伊豆地域が登録されました。この事業は来るオリンピック・パラリンピックイヤーに向けて指定地域を国を挙げてガーデンツーリズムのモデルとしてさまざまな形で国内外に発信していくことを手伝ってくれるという事業です。
 川勝知事はかねてより県土全てを庭園に見立てた回遊式庭園構想を持論とされておられます。今回の二つの地域の指定はまさに千載一遇のチャンスと捉えねばなりません。静岡県にはさまざまなタイプの公園が点在していますので、国の動きに連動させて静岡県をガーデンツーリズムのメッカとして、改めてふじのくに回遊式庭園構想を売り出すチャンスだと考えます。
 また、海外に向けては各国に静岡県の公園や庭園との関連があるところも少なくないと聞いていますので、それらも生かして国内外からの誘客の一つのツールとしてガーデンツーリズムを売り出すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 また、公園は先ほど提唱した健康立国運動の一つのキーワードになり得ます。公園に行けば健康になる、この公園は健康づくりの要素を入れた設計がされている、公園に行けば学びがあるというように、ちょっとした工夫をすることによって公園の新しい概念、新しい価値観をつくり出せると考えます。こうした公園の持つ心身の健康づくりと多様性についても、知事の所見をあわせて伺います。以上、答弁を求めます。
○副議長(中沢公彦君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 既成概念にとらわれない産業政策の展開についてのうち、マリンバイオの可能性を広げる取り組みについてお答えいたします。
 世界で年間八百万トン以上が海洋に流れ込んでいると言われるプラスチックごみによる海洋汚染は地球規模での重要な問題となっております。生態系や人体への影響が懸念されておりまして、プラスチックの排出削減や代替素材の開発など国際的対応が早期に求められ、今回のG20におきましても主要な議題となっております。
 こうした中、長い海岸線を有し世界で最も美しい湾クラブに加盟する駿河湾ほかの恩恵を受けている本県が、海洋汚染の防止に全国に先駆け率先して取り組むことは極めて重要であります。このため駿河湾などの特色ある海洋環境やそこに生息する多様な微生物資源等を活用してマリンバイオテクノロジーを核としたイノベーションを促進し、多彩な産業の振興と創出を図るマリンオープンイノベーションプロジェクト、通称MaOIプロジェクトにおきまして海洋プラスチックごみ問題を初めとした海洋環境保護に関する研究開発についても積極的に取り組むことにいたしております。
 具体的には、今月独立行政法人製品評価技術基盤機構、通称NITEを経済産業部長が訪問し双方の取り組みについて意見交換を行いました。NITEの所在を御教示いただきました阿部県議に感謝申し上げます。すぐに対応したという次第でございます。
 このNITEは、世界最大級の約九万株の微生物を保持しており、国の海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップの中でも大きな役割を担っております。今後MaOIプロジェクトで収集する駿河湾等の海洋微生物も対象にして、海洋生分解性プラスチックを生産、分解する微生物の探索などの分野で連携を図ってまいります。
 また、探査船「ちきゅう」を運用する国立研究開発法人海洋研究開発機構、通称JAMSTECなど県内外の大学や研究機関とも連携を進めまして、深海の微生物の採取やモニタリングによる海洋環境データの収集等に取り組んでまいります。
 県としましては、広く大学、研究機関などとの連携を深め、産業振興とともに海洋プラスチックごみ問題など国際社会の課題の解決にも貢献しマリンバイオテクノロジーを生かした研究開発、産業集積の世界的な拠点形成を目指してまいります。
 次に、ガーデンツーリズムの推進と公園の新しい価値観創造についてであります。
 本県は、世界遺産富士山、伊豆半島ユネスコ世界ジオパーク、南アルプスエコパーク、日本有数の汽水湖である浜名湖、世界で最も美しい湾クラブに加盟する駿河湾等々多様な自然を擁しており、これに歴史・文化を加えますと静岡県全体が品格を備えた海と山の風景の画廊と表現できます。ちなみに静岡県のみならず日本全体が、北は北海道から南は九州、沖縄に至るまで海と山の風景の画廊とも言える、そういう国柄だと思っております。
 もう既に二十年余りも前、一九九八年橋本内閣の折に二十一世紀の国土構想というのがまとめられました。そこではガーデンアイランズ日本というのがうたわれております。これも日本の国柄をいわば海と山の風景の画廊として捉えたものと考えます。
 私は、日本の縮図である静岡は全県的な景観全体が一つのパブリックガーデンになり得るという認識を持っております。このような認識のもと景観が郷土に対する愛着や誇りを醸成するということ、また観光産業の振興につながるものと捉えまして平成二十八年にふじのくに景観形成計画を策定いたしました。この景観形成計画におきまして県内各地の美しい景観を社会総がかりで磨き上げることで、世界の憧れを呼ぶ地域を実現するふじのくに回遊式庭園を提起したものでございます。
 こうした中、本年五月に国が創設なさいましたガーデンツーリズム制度に登録された六件のうち二件、本県からアメイジングガーデン・浜名湖と富士・箱根・伊豆「皇室ゆかりの庭園」ツーリズムのこの二件が登録されたわけでございます。議員御指摘のとおり、この制度は複数の庭園が連携し魅力的な体験を提供するものであり、まさに私どもが提起しているふじのくに回遊式庭園と趣旨を同じくするものであります。登録された各施設の連携による魅力向上を図りながらそこでしか得られない感動あるいは体験を提供することで、ガーデンツーリズムは世界中の旅行者の旅行目的となり得るものと考えております。
 このため、県ではガーデンツーリズムの推進主体となる二つの協議会、地域連携DMO等々と連携いたしましてより付加価値の高い商品づくりを支援いたします。また来年に迫った東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックの開催を絶好の機会と捉えまして国と連携した海外への情報発信による誘客に努めるとともに、静岡ツーリズムビューローによる海外における営業活動を展開してまいります。
 さらに、全県がパブリックガーデンとも言うべき静岡を訪れた人は四季の変化が織りなす美しく心地のよい空間の中、適度に体を動かしながら回遊することで心も体もリフレッシュすることができます。議員御提案の健康という新しい価値観をガーデンツーリズムに加えることでより一層魅力が高まることも期待できます。
 私どもといたしましては、これらの取り組みを通じて旅行者に感動と体験を提供するガーデンツーリズムの推進や公園の新しい価値を創造することによって、人々が憩い回遊する仕組みを構築し県民や来訪者の皆様の満足度の最大化を図り、国内外から憧れを呼ぶ美しいふじのくに静岡県を実現してまいります。以上でございます。
○副議長(中沢公彦君) 吉林副知事。
○副知事(吉林章仁君) 県民の命を守るための防災・減災対策についてのうち、福祉避難所のあり方についてお答えをいたします。
 福祉避難所の指定等につきましては、市町に積極的に働きかけてきた結果平成三十年四月一日現在、社会福祉施設を中心に県内全ての市町において合計七百五十八カ所となっておりますが要配慮者数を充足するまでには至っておらず、新たな視点を取り入れた設置促進が必要となっております。
 このため、県では平成二十八年度に県、市町、民間関係者の協議によります検討会議を開催いたしました。旅館、ホテル等の宿泊施設を福祉避難所として活用する賀茂モデルと、指定避難所を活用して要配慮者の受け入れを行う東部モデルという二つのモデルとして取りまとめ全市町への普及を進めてまいりました。
 賀茂モデルにつきましては、これまで八つの市や町が地元の旅館組合等との間で協定を締結しております。この取り組みを進める中で静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合から災害時における宿泊施設の提供等に関する協定を県との間で締結したいとの申し入れをいただきました。現在締結に向けた検討を進めております。組合の皆様と連携を図りながら旅館・ホテルを福祉避難所として確保する取り組みを一層推進してまいります。
 また、東部モデルにつきましては三島市の指定避難所にバリアフリー化などを施した要配慮者用のスペースを設ける取り組みをベースとしております。このモデルは指定避難所内における要配慮者用スペースの確保、同スペースでの福祉ニーズへの対応、同スペースの福祉避難所化の検討を段階的に進めていくものであります。平成三十一年二月時点で二十の市や町で取り組みが進められております。今後県内全ての市町での取り組みを目指しまして引き続き働きかけを行ってまいります。
 県といたしましては、今後とも市町とともに福祉避難所の確保や訓練による実効性の検証を行い災害時における要配慮者の受け入れ体制の整備を進め、要配慮者が安心して避難生活を送ることができますよう努めてまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 篠原知事戦略監。
○知事戦略監(篠原清志君) 時代の変化に対応した広聴についてお答えいたします。
 県は、現場に立脚した施策を推進するため知事広聴や幹部職員によるタウンミーティング、士民協働施策レビュー、パブリックコメントなどを実施し、県民の皆様の声を広く伺うよう努めております。また電話や手紙、メールで御意見をいただくことも重視し、インターネット環境で簡便に御意見をお寄せいただけるよう取り組んでまいりましたところ、昨年度いただいた御意見二千四百十三件のうちメールや県のホームページを介したものが過半数の千二百五十七件を占めております。
 議員御紹介のユニセフの事例は、SMS  ショートメールサービスを利用し事前に登録した方がアンケートに答えるものですが、本県におきましても公募したモニターがインターネットを通じてアンケートにお答えいただく仕組みを有しており、平成二十七年度にはスマートフォンからも回答できるように機能を拡張し現在七百人弱の方に登録いただいております。今後もモニター参加者の幅広い拡大に向け必要な改善を図ってまいります。
 なお、SNSにつきましては新たなコミュニケーションのための有効なツールとして利用が広がっておりますが、プライバシーの流出などの懸念や書き込まれた意見の拡散などの課題も指摘されており、広聴での活用に向けましてはこれらのリスクを踏まえていくことが必要と考えております。
 県といたしましては、最新技術の動向も踏まえ現在取り組んでいるSNSでの県政情報の広報に加え広聴事業への活用についても研究し、デジタリゼーション時代に対応した広聴を展開してまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 金嶋危機管理監。
○危機管理監(金嶋千明君) 県民の命を守るための防災・減災対策についてのうち、実効性のある避難訓練の実施についてお答えいたします。
 地域防災訓練は、地震や津波を想定した訓練を中心に実施してまいりましたが平成二十七年度からは地域特性を考慮した独自の訓練も行うことができるように改め、これまでに火山噴火避難訓練や大規模停電対策訓練なども実施されております。さらに近年は大規模な風水害が全国的に多発しておりますことから、本年度は風水害の要素を取り入れた訓練の実施も促すこととしております。また知事認証資格であるふじのくに防災士等による訓練の企画や指導を受けている自主防災組織は二五%でありますことから、引き続き利活用を促してまいります。
 中高生の地域防災訓練への参加は、昨年度は九万人となっておりますが避難所運営訓練の実施率は一八%、DIGの実施率は七%にとどまっており防災意識を高める取り組みは必ずしも十分ではないと認識しております。このため啓発用の災害映像資料や県が開発した防災アプリを出前講座等で紹介し、県民一人一人が災害を自分のこととして考え、地域の災害リスクを正しく認識していただけるよう積極的に啓発活動を行ってまいります。
 県といたしましては、このような取り組みにより地域の実情に即した訓練の実施を推進し地域の防災力向上に努めてまいります。
 次に、避難所の環境整備と運営についてであります。
 避難所は、災害対策基本法に基づき市町があらかじめ指定することとされており、国のガイドラインでは津波等の危険性のある地域内には設置しないことや非常食等を備蓄することが望ましいとされております。避難所運営は本県では自主防災組織等が主体となって運営することとしておりますが、県の調査によれば避難所運営訓練の実施率は約二割、避難所運営に不安があるとの回答が約七割を占めておりました。
 これらの課題を解決するため、県では避難所運営の人材育成の観点から今年度自主防災組織の役員等を対象とした実践的な研修を行い、次年度以降は当該受講者が中心となり各市町において避難所運営の研修や訓練が実施できる体制づくりを進めることとしております。また避難所の環境整備につきましては、本県の被災地支援の経験を踏まえダンボールベッドや簡易トイレなど生活環境の向上に役立つ防災資機材の充実を促すため地震・津波対策等減災交付金により積極的な支援を行うこととしております。
 県といたしましては、これらの取り組みにより避難所の環境整備を進め避難所の運営体制の充実を図ってまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 小嶋警察本部長。
○警察本部長(小嶋典明君) 弱い立場の県民の安心・安全をより高める施策についてのうち、高齢者の免許返納制度のワンストップ化についてお答えします。
 運転に不安を覚える高齢者の方々に運転免許証を自主返納しやすい環境を整備することは、交通事故防止を図る上で極めて重要なことであり、県警察では運転免許証を自主返納された方が公共交通機関の割引や各種優遇措置を受けられるよう自治体や民間事業者に協力を依頼しております。運転免許証を自主返納された方が自治体や事業者から優遇等を受ける際には、警察署や免許センターで運転免許証の自主返納手続を終えた後に支援する自治体や事業所の窓口に赴き手続をする必要があります。
 このような中、御指摘のとおり掛川市においては市職員が定期的に警察署に出向いて運転免許証を自主返納された方が警察署で記載した所定の申請書類を回収し、書面審査により自主返納された方に身分証明書として使用できる運転経歴証明書の交付手数料の助成や公共交通機関の割引券の提供を行うワンストップサービスを実施しております。この掛川市の取り組みは運転免許証の返納を行う高齢者の負担を軽減し運転免許証を自主返納しやすい環境整備につながることから、他の市町ともワンストップ化に向けた協議を行ってまいりたいと考えております。
 また、免許返納に対しての助成を実施していない自治体につきましては、県や関係機関とも連携して免許を返納された高齢者を支援していただけるよう働きかけを行い、運転免許証を自主返納しやすい環境の整備に努めてまいります。
 次に、農業に取り組みやすい環境整備についてのうち、農業用道路における農業用車両駐停車措置についてお答えします。
 農道管理者において管理されている農業用道路については、一般交通の用に供するそのほかの場所に該当する場合、道路交通法第二条が適用され道路交通の安全と円滑を確保する観点から駐車禁止等の必要な交通規制を行っております。
 警察といたしましては、今後とも地域の方々の御意見も踏まえつつ地域の交通実態等を勘案して現場の状況に応じた適正な交通規制に努めてまいりますが、道路交通情勢の変化により規制が過剰となっていると認められる場合には規制の緩和を行います。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 池田健康福祉部長。
○健康福祉部長(池田和久君) 弱い立場の県民の安心・安全をより高める施策についてのうち、児童福祉、児童保護対策についてお答えいたします。
 児童虐待相談件数が増加傾向にある中、子供の安全を確保するためには児童相談所における迅速かつ的確な状況判断と関係機関の連携が必要であると認識しております。このため各児童相談所では困難事例や検証結果を共有し、児童にとっての最善な支援ができるよう組織的に対応するとともに警察と情報共有に関する協定を締結し連携の強化を図っているところであります。
 また、議員御指摘のAIを活用した取り組みにつきましては三重県において今年度約六千件の過去データをもとに児童虐待のリスク等を予測する児童虐待対応支援システムを試験導入すると聞いております。このシステムでは最終的な判断は職員が行うことに変わりはないものの、情報の共有や意思決定の迅速化につながることが期待できる一方、その特殊な事例の予測は難しいとの指摘がありますことからその成果や課題を確認いたしまして導入について検討してまいります。
 一方、公立小学校等の通学路の危険箇所につきましては平成二十四年度から県教育委員会が調査を実施し道路管理者が施設の改善に努めているほか、保育園等の散歩コースにつきましても今年度中に県や市町、警察等が連携して安全点検を行うこととしております。
 今後ますます発展が見込まれるAIにつきましては、福祉や医療、防災、防犯など県民の皆様の命と暮らしを守る行政サービスのあり方を大きく変えていく可能性がありますことからその動向を注視していくとともに、専門家や関係機関の御意見も伺いながら活用について積極的に研究をしてまいります。以上でございます。
○副議長(中沢公彦君) 天野経済産業部長。
○経済産業部長(天野朗彦君) 既成概念にとらわれない産業政策の展開についてのうち、新産業政策としてのアクセラレーターとの連携についてお答えをいたします。
 人口減少や少子高齢化が急速に進みAI、IoTなどの科学技術が著しく進展する中、社会課題の解決と画期的なビジネスモデルを創出するスタートアップ企業の集積を促し、これを支援する取り組みは本県経済の発展にとって極めて重要であります。このため県では首都圏のスタートアップ企業と県内企業を結ぶマッチングイベント、TECH BEAT Shizuokaを開催しトップレベルのICT人材の確保とともにこれを契機としたスタートアップ企業の本県への集積に向けた取り組みを進めているところであります。また近年県内では静岡大学や県立大学、光産業創成大学院大学などでベンチャーの創出が続いており、この二月の時点で五十社が有望な技術シーズを活用しつつ企業活動を展開しております。
 これらのスタートアップ企業や大学発ベンチャーが抱える課題は運営資金と人材の確保であります。アクセラレーターは投資やメンターのアドバイスなど実践的なサポートにより企業の成長を加速化させる存在であり、議員から御指摘のございました神戸市の起業家育成プログラムでは米国のアクセラレーターと連携して過去二年間で三十八の起業家チームを輩出し約三十億円の資金を調達するなどの成果を上げております。新たなイノベーションの担い手となるスタートアップ企業等を着実に成長させていくためには、こうしたアクセラレーターの役割は極めて大きいものと認識しております。加えて県内でも浜松ホトニクス株式会社が平成三十年にコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げ、有力な大学発ベンチャーに出資するなど新たな動きが出てきております。
 県といたしましては、引き続き本県経済を牽引するスタートアップ企業の誘致、育成や大学発ベンチャーの創出に重点的に取り組むとともに、海外で顕著な実績を上げているアクセラレーターの事例も含めてより効果的な連携の仕組みを検討してまいります。
 次に、海外からの高度人材の獲得についてであります。
 本県経済を将来にわたって持続的に発展させていくためには、高度人材も含めて外国人材の活躍が不可欠であります。このため県では入国管理法改正を踏まえまして、海外高度人材から特定技能、技能実習生まで総合的な施策を展開しているところであります。
 最新の統計によれば、高度人材の代表的な在留資格、技術・人文知識・国際業務を持つ県内外国人は三千四百七十九人とこの五年間で約三倍強となり、企業の高度人材の採用の高まりが見られます。このため県では今年度日本語ができる大学、大学院生等の高度人材を対象とした合同面接会を十月にモンゴル国で、年明けにはインドネシア共和国で開催いたします。来月には参加企業の募集を開始し、県内企業とともに積極的に海外高度人材の確保に取り組んでまいります。
 一方、韓国では大学生の就職難から日本のジェトロに当たる大韓貿易投資振興公社、通称KOTRAが日本企業と韓国人材とのマッチングを行う採用面接会を実施しております。ことしは五月三十一日から六月一日にかけてソウルで、今月十三日には東京で開催されました。この秋にもKOTRAがソウル及びプサンで採用面接会を開催いたします。
 県といたしましては、外国人材採用の好機と捉えKOTRAと調整の上、県内企業に対し採用面接会への参加を積極的に呼びかけてまいります。
 昨年九月に韓日経済協会のキム・ユン会長が知事と面談した際には、日本において韓国の若者の活躍を願う声をいただいております。本県は韓国の忠清南道と友好協定を締結しております。そうしたこれまで築き上げてきた厚い友好関係を基盤に、日本語を話し我が国への就職を希望するすぐれた能力のある韓国の若者に対して本県で働く場を提供することにより両国にとってウイン・ウインとなる関係を積極的に構築してまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 志村農林水産担当部長。
○農林水産担当部長(志村信明君) 農業に取り組みやすい環境整備についてのうち、多様な農業の学習機会の創出についてお答えいたします。
 ICTなど先端技術の急速な進展や市場ニーズの多様化など農業を取り巻く環境の変化から農業経営に必要な知識や技術も多岐にわたっており、これらに対応した学習機会の提供が重要であると考えております。このため県では平成二十九年度から農業法人の幹部候補者や若手農業者、新規参入者を対象に経営管理やマーケティング、GAPなど農業経営に必要なスキルを学ぶふじのくにアグリカレッジを開催しているところであります。加えて今年度からAOI−PARCに整備した高度な環境制御が可能な温室を活用し農業者やJAの技術員、普及指導員等を対象に環境制御装置の操作やセンサーの設置方法、環境や生育データの取得とその活用方法などを体験、習得する研修を実施してまいります。
 また、乗用型茶園管理機の自動操縦システムやスマートフォンを活用した作業管理記録ツールなどスマート農業技術を茶業経営に導入するため農業者やJA、メーカーと協議会を設置し勉強会やメーカーによる実演セミナー、先進地視察を実施してまいります。
 県といたしましては、今後とも多様化する農業者のニーズの把握に努め農業者が学習する機会をふやし、本県農業の可能性の拡大に積極的に取り組んでまいります。
 次に、農業における知的財産の保護についてであります。
 県では、AOIプロジェクトにおきましてたくみのわざを継承するため慶應大学などと連携しAI、農業情報科学  アグリ・インフォ・サイエンスを活用してたくみのわざの見える化を進め、これまでにミカンやイチゴについて県内四産地で栽培管理技術を見える化した学習コンテンツを作成しております。この学習コンテンツは新規就農者などの研修に活用するものであるため、ID登録により使用者を限定し外部への流出対策を講じておりますが、この取り組みを進める中でたくみのわざや栽培ノウハウなどのデータ流出が懸念されましたことから現場の実情を国に伝えてまいりました。
 こうした中、昨年十二月に国からデータの利用権限に関する契約ガイドラインが示されましたことから、県ではこのガイドラインに基づき今後の農業者とのデータの取り扱いについて検討を進めているところであります。
 県といたしましては、本県農業の革新的な取り組みが進むよう引き続き農業者の技術やデータなど知的財産の保護に努めてまいります。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 阿部卓也君。
       (六十七番 阿部卓也君登壇)
○六十七番(阿部卓也君) 御答弁ありがとうございました。
 要望を三点、再質問を一点しますが、最初に警察本部長、用意しました二問の警察関連の質問に対してほぼ満額回答をいただきまして、これでこそ「正・強・仁」を旨とする正義の味方静岡県警だと敬意を表したいと思います。
 要望を三点申し上げます。
 まず、危機管理のうち命を守ることの重要性に鑑みて対策が不十分だということを自己分析されたことに関しましては、危機管理監、敬意を表します。ただこの防災・減災対策についてはもっともっと現場感覚で進めていただきたいんですが、これはまだまだ市町との協働が欠けていると感じますのでそこをもっと踏み込んでいただきたいと要望とします。
 二点目、今回幾つかの質問で国の施策に関連するものを提案しましたが、これ地域力をもっとつけていくためにも県民利益のためにも最大限国や民間の力とかお金を活用することはとても大切だと思います。静岡県はもっと国や民間の動向についてきちんと対処できるように人事交流をしたり東京事務所の充実をするなどアンテナを高くしていただきたいと体制強化を要望します。
 三点目、アクセラレーターとの連携でございますが、これ今ベンチャー企業のほぼ九五%は自分が大企業になっていくのではなくて大資本、大企業がその技術を買収をしてそして技術が基幹産業になっていくと。GAFAなどはそういう形です。そういう形での時代になっているということを念頭に置いて産業支援策を打っていただきたいと考えますので検討を要望します。
 最後に再質問をいたします。
 避難所、それぞれの避難所の避難訓練についてですが、要配慮者、要支援者の訓練をやることでそれらの皆さんの現場でどういうことがお困りで、どういう課題があるかということがわかると思います。こういう要支援者の方の防災訓練、災害避難訓練等をこれから実施をしていくべきと考えますが再度答弁を求めます。
○副議長(中沢公彦君) 金嶋危機管理監。
○危機管理監(金嶋千明君) 要配慮者も含めた避難所運営訓練の実施についての再質問にお答えいたします。
 先ほど答弁でも申し上げましたけれども、本県の避難所運営訓練、自主防災組織が中心に担っていただいておりますけれども、やはり避難訓練をまずやっていないところがまだ多いということと、そもそも避難訓練のやり方もわからないという御意見がありましたので、今年度研修を行いますがこれは単なる座学だけではなく実際に避難所となる学校の体育館をお借りしまして宿泊訓練、これも自主防災組織の役員だけではなく要支援者のもしくはその関係者の方も一緒に参加していただいて、市町の職員と一緒に実際に避難所に行って避難生活をした場合どのような課題があるかというのを実際に訓練を通じて体験していただいて改善に向けていく、そういう訓練を今年度初めて実施することにいたしましたので、今回の成果を、受講した方々がそれぞれの市や町に戻って来年度より実践的な現場の視点でより実践的な訓練ができるような支援も行うこととしておりますので、今後さらにこういう避難所生活、避難所の環境整備、運営方法を充実するように努めていきたいと考えております。以上であります。
○副議長(中沢公彦君) 阿部卓也君。
       (六十七番 阿部卓也君登壇)
○六十七番(阿部卓也君) ありがとうございました。
 ぜひ、要支援者に関しては危機管理部の皆さんがまず現場に行って実態を把握することがとても大切だと思いますので、それを最後に要望して質問を終わります。
○副議長(中沢公彦君) これで阿部卓也君の質問は終わりました。(拍手)
 以上で本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会の議事日程を申し上げます。
 六月二十五日午前十時三十分会議を開き、質疑及び一般質問を行います。
 本日はこれで散会します。

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