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本会議会議録

質問文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用



平成24年9月静岡県議会定例会 質問


質問者:

天野 進吾 議員

質問分類

一般質問

質問日:

09/28/2012

会派名:

自民改革会議


質疑・質問事項:

1 南海トラフ巨大地震について
 (1) 国の被害想定に対する知事の思い
 (2) 県の第四次地震被害想定の中間報告と国の被害想定とのかかわり
 (3) 国の被害想定に起因する行政の行動
2 富士山に関連した諸課題について
 (1) 世界文化遺産登録に向けた思い
 (2) 富士山周辺の景観
 (3) 災害情報の氾濫
3 カジノ構想について
4 道州制について



    ○議長(小楠和男君) これで藤田寛君の質問は終わりました。
     次に、五十九番 天野進吾君。
           (五十九番 天野進吾君登壇 拍手)
    ○五十九番(天野進吾君) 最後の質問となりました。いましばらく御辛抱いただいて、以下自民改革会議所属議員として知事並びに関係部長にお尋ねをいたします。
     今から三十六年前、東大理学部助手だった石橋克彦教授によって突如提唱された駿河湾地震説は、その後の県政に過大な出費をもたらしたのであります。「あした起きても不思議ではない」、その恐ろしきキャッチフレーズは、自来今日まで実に二兆円余りの県費を強いてきました。
     ちなみに、今年度の本県の県債残高は、国が面倒見てくれる予定の臨時財政対策債を除いても一兆八千九百億円、その借金返済に当たる公債費は本年度の当初予算で一千七百二十三億円を計上しております。年間に一千七百二十三億円もの借金返済とは、毎日四億七千万円の返済を余儀なくされているのであります。
     ところで、一カ月前の八月二十九日、政府は南海トラフ巨大地震を発表。翌日の全国紙を初め全ての報道機関は、疑うこともせず想定死者数三十二万人と報じたのであります。さて三・一一東日本大震災以来報道機関は口をそろえて、想定外の言葉は無責任の極致であっていかなる大災害であれ想定内として対策を講ずるべきと主張しているのであります。想定死者数三十二万人のうち県内被災者は十万人と明記され、その主たる被災原因がもちろん津波であります。すなわち県内沿岸部に押し寄せる津波高は下田の三十三メートル、御前崎の十九メートルとそこに生活する人々からすれば想定外の何物でもありません。
     熟語の一つに「杞憂」という言葉があります。その昔、杞の国の人々はそのうちに天地が崩れ落ちてくることを心配していたという故事から、無用の心配をあらわす言葉として「杞憂」が誕生しましたが、私の認識では南海トラフ地震の恫喝は単に学者の売名行為か公的サディズムにしか思えないのであります。
     ところで、駿河湾地震対策に実に二兆円もの対策費をつぎ込んだと申し上げましたが、そのうち津波に要した経費はわずか五%、八百五十億円に過ぎなかったのであります。さらにまた昨年来の風評被害に苦しむ本県産業界に、このたびの南海トラフ地震の報道はまた新たな風評被害を生んだのであります。
     先ほど落合議員も指摘されましたけれども、牧之原市にある一部上場企業である日機装静岡製作所が二〇一五年には金沢市に移転すると発表されました。従業員五百五十人の工場転出は、牧之原市にとってもまた静岡県にとっても大きな損害であり、さらにこれに続く連鎖反応が心配となります。
     そこで、お伺いいたしますが、内閣府が発表した南海トラフ巨大地震のとてつもない被害想定を目の当たりにしたときの川勝知事の率直なお気持ちをお聞かせください。
     また、報道にあった誇大な被害想定にも、知事は記者会見の場で臆することもなく、「被害の軽減に向けた短期と中長期の対策を考える時期に来た」と答え、さらには現在進めている第四次地震被害想定の中間報告を可能な限り早期に行うことと回答しておりますが、その第四次被害想定の中間報告と国の被害想定のかかわりについて、御説明をいただきたいと存じます。
     ところで、十九日この議会開会日の知事提案説明の中で、知事は内陸フロンティアを拓く取り組みに意欲的な言葉を述べられましたが、いかがでしょう、その第一号として先ほど申しました日機装静岡製作所の移転を翻意させることに地元牧之原市と一緒になって努力しては。広大な安全な土地は幾らでも御紹介できると思っております。
     次に、突然降って湧いたローカルニュースではありますけれども、捨ておかれませんので急遽質問の一つに加えさせていただきました。
     去る十三日、熱海市は恒例行事の湯らっくすマラソンを中止すると発表。そのニュースはテレビ、新聞、そしてインターネットを媒体に全国に報道されてしまいました。中止の理由は、万が一、大会開催中に神奈川県西部地震が発生した場合熱海ビーチラインを走る選手の避難路を確保できないというまさに顕微鏡的発想の決断であったわけであります。御案内のように熱海は観光産業のまち。この湯らっくすマラソンも一九八五年観光地熱海海岸のにぎわいを目的に始まりました。以来毎年三千人余りの出場選手とともに、御家族も温泉を一方の楽しみとして全国から迎えていたのであります。ところでこのたびの熱海市の判断は、周辺観光地、なかんずく伊豆半島全体のホテル・旅館業にもたらす風評被害は決して小さなものではないだろうと考えます。三十五年前駿河湾沖地震が新聞に掲載されたころ、全国どこに行っても静岡といえば地震を連想し、そのことによる本県の観光産業にもたらしたマイナスイメージははかり知れないところでありました。
     そうした意味からも、このたびの熱海市の判断はまことに残念と言わざるを得ませんが、この際知事の率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。
     次に、富士山の世界文化遺産登録という画期的行事を控えた中で、富士山にかかわるテーマをもとに数点、知事の御所見を伺います。
     先月二十九日から八日間かけて、富士山の世界文化遺産登録の是非についてイコモス調査員も現地に入りました。恐らくは霊峰富士が長い間日本人の信仰の対象として、あるいは芸術の源泉として息吹いてきたその哲学的意義を理解をされ、来年六月のユネスコ世界遺産委員会には満場の拍手をもって登録されるものと信じております。北斎の「富嶽三十六景」は日本美術の源泉であり、また万葉集は日本人の感性と生きざまをうたい上げ、さらには時代の趨勢とともに、富士山は日本の文化と歴史を導いてきたと考えるのであります。
     ところで、最近この県庁の壁面に富士山にかかわる歌や俳句が墨痕鮮やかに清書され、また富士山を被写体とした写真や絵画が展示をされております。
     そこで、この際碩学の知事であれば御存じでしょうが、味わい深い俳句を御披露させていただきます。
     御存じ文豪夏目漱石の俳句です。「西行も笠ぬいで見る富士の山」。編みがさ一蓋を持って旅する名僧西行法師ですら、その高さゆえにだけではなく、畏敬の念を持って編みがさを脱いで富士を仰ぎ見ることだろうという漱石らしい味わいある俳句ではありませんか。日本の文化はまさに富士にあり。断言できるゆえんでもあります。
     こうした観点からも、本県が長い間世界文化遺産登録に思いをはせ、ようやくにしてその努力が報われようとする今、川勝知事の率直な感慨をお聞かせください。
     次に、富士山にかかわる二つ目の質問に入ります。
     過日、富士宮の須藤市長が、太陽光や風力等の大規模発電設備が富士山の景観や大自然の植生を阻害するおそれがあるとして、県内外の事業主にメガソーラーの自粛を要請したとのことであります。その心は、広大な朝霧高原周辺の牧草地が味気ないソーラーパネルで覆いかぶされることを憂いての決断であったと考えます。この富士宮市の宣言はまことに時宜を得たものであり、正鵠を射た行政と拍手したところ、わずか三日後の新聞には、新設は届け出対象とすると掲載されておりました。その変更理由は、メガソーラー等の施設は法律上の建造物とはみなされず市の許可も不要との判断から、やむを得ない選択でありました。恐らくは脆弱な末端行政の実態に涙してのことと存じます。「富士山を世界遺産に」をキャッチフレーズに掲げ、その景観を保全し、さらには清掃を初め看板類の撤去など万全な対策を講じてきた今、富士山西麓に広がる朝霧高原の美しさも同様に堅持してほしいと願うものであります。
     そこで、太陽光発電を初めとする自然エネルギーの活用を積極的に推進されている知事として、このたびの富士宮市の思いをどのように理解されているのかをお尋ねいたします。
     次に、富士山をテーマのついでに最近特に感じる時代の風潮について、知事の御所見をお伺いいたします。
     近年、国民の活字離れが深刻化するに従って、出版業界は売らんかなの策でありましょうか、極めてドラスチックな言葉を広告用語として多用しているのであります。
     例えば、数カ月前のある週刊誌では、「三年以内に富士山は大爆発する」とあたかも予言者ノストラダムスを気取っての挑発的な広告でありました。ノストラダムスは十六世紀のフランスの医者、こちらは琉球大学の木村政昭名誉教授。たとえ眉唾と思っても、名誉教授という権威に圧倒されて私たちは幾ばくかの金銭を払ってこの週刊誌を手にするのであります。そこには次のように書かれておりました。「今、富士山の内部にはマグマが極端にふえ、富士山の東斜面にある自衛隊の演習地には幾つもの大きな穴があき、そこから噴気が放出されている」と明記されているのであります。驚いた私は、早速自衛隊のことなら何でもという御殿場選出の和田県議に電話連絡。早速調査をしていただくことにしました。返事はその日のうちに、しかも簡潔に「そのような現象はありません」との御返事でしたが、考えてみればもし演習場の大地に突然穴があいてそこから熱を帯びた煙が噴き出そうものなら、あらゆる報道機関のトップニュースであり、恐ろしくて我が勇敢な自衛隊員も除隊されていることでしょう。
     ところが、最近このこけおどしとも言うべき木村教授説をさらに上を行く驚愕のニュースが飛び込んできたのであります。私も初めて聞いた富士山の山体崩壊説であります。しかもこの恐ろしき学説は、なんと先月開かれた静岡県防災・原子力学術会議の地震・火山対策分科会での静岡大学の小山真人教授の指摘であります。一たび富士山に山体崩壊――山体とは山の体と書きます――一たび富士山が爆発、崩壊したときには、最大四十万人が被災すると発表されたのであります。その論文は何といっても静岡県の学術会議での発表ですから新聞、週刊誌にも掲載され、先の南海トラフ巨大地震と相まって、富士山周辺の人々にとってはいたずらに恐怖をあおる何物でもありませんでした。仮にユネスコ世界遺産会議が耳にしようものならどうなってしまうんだろうと、不安に駆られたところであります。
     昨年の三・一一東日本大震災以来このような恫喝とも思える警鐘が連続し、中には単に売名行為とも見まがう論文発表に眉をひそめるのは私ばかりではないでしょう。ちなみにオオカミ少年はイソップ寓話ばかりではありません。
     そこでお尋ねします。昨今の過激とも思われる自然災害への警鐘を無防備に近い我々大衆はどのように理解し対処したらいいのか、川勝知事の御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
     次に、日本平カジノ構想についてお伺いいたします。
     静岡県カジノ誘致議員連盟を主催する者として避けては通れない課題でありますので、本日も質問の一項目に加えさせていただきました。
     さて、混迷した現在の政局にあって、カジノ法案は一見政治の片隅に放てきされてしまった感に見えますが、実は超党派で構成する観光産業議員連盟が近々開催される国会にカジノ整備推進法案を提出する段階にあると、過日の産経新聞ではカジノ推進をあおる内容の記事を掲載しておりました。私も近い将来のカジノ法案の成立を信じ、その誘致こそが本県観光産業の基幹になると考え、中傷やさげすみの言葉に耐えて長い間日本平カジノ構想を提唱してまいりました。しかしかつて熱海市もその一都市だったように、今カジノ招致に夢を託す自治体は全国に波及し、激しい誘致合戦が水面下で展開されているのであります。
     もとより、観光行政は地方自治体にとっては重要な政策課題であれば、カジノ招致を政策の柱とする都市にとって最後のスプリングボードと期待とされているところであります。北海道の函館から九州の宮崎、沖縄まで二十を数える都市が、現在時至らばの事前工作を展開されているのであります。一方法律の原案では、カジノ認可について最大限十都市と明記されておりますが、実施に当たっては恐らく五、六カ所に削減されるものと考えます。それゆえにカジノ誘致を都市再生の切り札と捉えた自治体では、今さまざまな手練手管をもって運動しているところであります。
     具体的に御紹介しましょう。この四月関西経済同友会から「統合型リゾートの実現に向けて」と題するとてつもない大風呂敷とも思える構想が発表されました。これは、シンガポールに倣って最近の用語でいえばMICE機能を十分に取りそろえ、その投資額は実に数千億円に上るだろうという豪華版であります。
     また一方、昨日見た「サンデー毎日」では千葉県の森田知事が大変御苦労をなさっております。それは、千葉県内でカジノの招致を争っているからであります。森田知事も来年が選挙だそうであります。知事はそのために困惑していると週刊誌に書かれておりましたが、このように全国各地で今カジノ解禁を新たな都市再生の切り札と考え、誘致運動に余念がないところであります。
     そこで、お尋ねいたします。間もなくカジノ整備法が国会を通過するでしょう。その際本県はどのように対処すべきか、知事の御所見をお尋ねします。
     特に、東南海トラフ地震が発表され今後途方もない県費が必要となりますが、県債は既に限界、さらには県税の増収も期待できない今日、莫大な税収が期待できるカジノ開設とそれに伴うMICE機能の充実は、県民の理解の中で新たな観光産業の起爆剤になるものと信ずるものであります。知事の御見解をお伺いいたします。
     最後に、昨今急に気ぜわしくなった道州制について、お尋ねいたします。
     一言で言えば、大阪維新の会が提唱した維新八策の政策と理論は、平和を愛するこの私には極めてヒステリックな主張であり、同時に先鋭過ぎる嫌いを感ずるのであります。財源の確保は消費税を上げなくてもできるとたんかを切って記者団に説明する理論は、恐らく彼らだけに通用する道州制の論理であります。報道にあるとおり彼らの道州制理論は、まずは国家公務員の五分の一を削減、残り五分の四の国家公務員を例えば地方に移管する国土省、厚労省、文科省などに新たに設立される州庁に配置するとのことであります。ではその場合現在の県庁職員の運命はどうなるのでしょう。はっきり言えることは、道州制の施行と軌を一にして県庁はなくなり、もちろん県議会もなくなります。
     この際、正直に申し上げます。四百年前この駿府は徳川公の御威光のもとに江戸、大坂に並ぶ繁栄を見ました。明治維新後も県庁所在地という恵まれた環境を背景にして、さしたる努力もせずに成長してまいりました。そのあかしとして、静岡市には県庁にかかわる職員とその家族だけでも数千人から一万人が生活し、まさに県庁は本市最大の事業体なのであります。さらには県庁を取り巻く各種の団体、あるいは裁判所や法務局などの国の地方事務所、県立大学などの教育関連施設、さらには県庁所在地であればこそ大手企業の支店、営業所が県都ゆえをもって開設されているのであります。しかし私が声高に道州制反対を叫ぶのは、単に静岡市が県庁所在地の特権を失うからではなく、ひっきょう静岡県全体の衰退につながることを心配するからであります。道州制の趣旨はもとよりチープガバメントではありますが、快刀乱麻を断つがごとき道州制の提唱ではなく、真摯にしかも英知をもって地方自治制度の改良こそがまずは当面する方途と私は考えます。幸い四月に都内で開かれた道州制推進知事・指定都市市長連合の設立総会に川勝知事が参加しなかったことに安堵したところであります。
     この実現不可能とも思える道州制理論について、川勝知事の御見解をお伺いいたします。
     以上で私の質問を終了いたします。(拍手)
    ○議長(小楠和男君) 川勝知事。
           (知事 川勝平太君登壇)
    ○知事(川勝平太君) 天野進吾議員の名調子に聞きほれておりまして、うまく答えられるかどうかわからないのでございますけれども、まず初めに南海トラフ巨大地震についてのうち、国の被害想定に接したときの私の気持ちについてでございます。
     昨年の東日本大震災。三月十一日のその巨大な自然の猛威。これには驚愕し、仰天し、恐れおののきました。これを前提にした南海トラフの被害想定というものは、さほど驚きをもって受けとめたわけではありません。こうしたものかと存じました。それは十分に予想されることです。
     例えば、北東北におきましては中心地域が岩手県では北上川流域にございます。三陸のほうはどちらかといえば過疎地でございます。しかし本県は太平洋工業ベルト地帯の一角を担うものとして、人口が太平洋側に集中していると。したがって同規模のすなわちマグニチュード九規模の大地震が起これば、それによる津波というものは北東北、東北よりも大きな被害を及ぼすであろうということは想定はできます。しかし一九七八年以来我々が三十五年間東海地震、これを前提にして営々と積み重ねてきた結果、地震につきましても耐震性、これは小学校、中学校、高校、それなりの準備ができております。また人々におかれましても、昭和五十六年以前の住宅については耐震性について整えなくちゃいけないという意識も醸成されていると存じます。毎年の総合訓練におきましても成果を上げており、防災先進県としての自覚があるかと存じます。
     しかし、今回の大きな想定で恐らく最も多くの方々が危機として受けとめられたのは津波であろうと存じますが、さすがにこの津波に対しては我々も十分に備えがないという危機意識が育ったと存じます。危機のキというのは、前のほうの「危」はデンジャーのほうの「危」で、後ろのほうの「機」はオポチュニティーの「機」でございますから、いわば「災いを転じて福となす」というそういうことわざもございます。そうした中で、我々のところにはまだ東日本大震災のような被害に襲われているわけではありませんので、その前に我々の備えをしようということで、いわば内陸のフロンティア、これは中山間地域の開発としかも美しい中山間地域を生かした新しい産業、新しいライフスタイル、これをも追求できるということで、今前向きにこれを検討しているという段階でございます。
     もちろん、この十万人を超えるとか、あるいはそのうちの九割が津波によって亡くなるであろうということは恐るべきことではございますけれども、しかしそれを正確に読めば一千年に一度の出来事だということなので、恐らく繰り返し繰り返しこのことを説明していくうちに、そうした心構えの中で受けとめてくださっているものと私は思っております。
     次に、富士山に関連した諸課題のうち、世界文化遺産登録に向けた現在の思いでございます。
     何よりも、この遺産登録に向けて御尽力を賜りました方々に対して感謝の念を改めて深くしているわけでございます。また八月末から九月にかけまして、イコモスの調査員の方が天候に恵まれる形で無事調査を終えられたことについても、大変我々としてはラッキーであったというふうに思っております。これは出発点でございますので、私は来年六月に富士山が世界文化遺産になるということを確信しております。これを遺産にできないようでは、イコモスの見識が問われるとすら思っているのでございます。
     しかし、それは出発点であって、これから世界の財産になる富士山、これを特に山梨県、本県、地元の方々が中心になって、大切な信仰の対象、芸術の源泉としてその環境を保全していくというこの中心になって、それを国民運動にしていくということが大事であろうというふうに思っております。
     「西行も笠ぬいで見る富士の山」と、これは富士山百人一句の中に入ってございます。(発言する者あり)当然でございます。それからまた西行の歌、富士山百人一首の中に「風になびく富士の煙の空にきえてゆくへも知らぬ我が思ひかな」と、これも入っております。ですから西行が平安末から鎌倉にかけてこの思いが八百年前から伝わっていると。万葉集のころから見れば、千二百年以上のそういう思いというものは連綿として我々の中に生きているというふうに存じます。それは私においても同じです。ただ富士山だけでなくて、現在鎌倉のほうもイコモスの調査が終わったとのことでございますけれども、これとライバル関係であってはならないと。むしろ一緒に登録されるのが望ましいというふうにも思っております。「山は富士人は武士敷島の大和の国の宝なりけり」というのが今の私の気持ちでございまして、ともに登録されるというようにすることを通して、県境を越えた日本の財産を、人、自然それぞれの財産を改めて自覚するそういう契機にもしたいと思っております。
     次に、道州制についてでございます。
     これは、明治以来の中央集権体制に対してそれなりの成果を上げましたので、これからはそれぞれの地域が地域力をつけていく時代に入っているという認識のもとで道州制を見ております。最終的な着地点をどこに置くかということでございますが、何しろ世界の中の日本というような目を我々は獲得しておりますので、先進国日本がどのような地域単位になってもそれぞれの地域が国際的に十分な経済力を備えていなくてはならないと存じます。またそれを支える人材がなくてはならないというふうに存じます。私は、今の日本の経済力五百兆円というのはカナダの四倍ほどだというふうに存じますが、そうした観点からいきますれば、さらに二十一世紀が環境の世紀であるということに照らしますと、経済力を必要条件とし環境を大切にするということがわかる、そうした国の形に落ちつくのが望ましいということで、そしてそれを運営することのできる人材が整っていなくてはならないというふうにも思っておりまして、国を経営する能力を持った人物が北は北海道から南は沖縄に至るまで、優秀な人たちが東京に集まってこれまで中央集権の実を上げてこられた。その人たちが、それぞれの同州の単位の中に下っていくのにふさわしい地域単位を準備しなくてはならないというふうに思っております。
     そうした中で、関東というのは大きな平野ですから野の洲というふうに私は見ております。それはカナダの二倍ぐらいの力を持つ単位です。そして北海道、東北というのは豊かな森に恵まれたところでございますから森の洲というふうに名づけます。それとのかかわりでいえば、本県は北アルプスあるいは白山山系に至るまで、富士山を優雅な一つの象徴として山の洲というふうに言うことができます。これはカナダに匹敵する規模を持つと存じます。そして西日本におきましては、これは玄界灘から淀川を上って京都に至るまで、これは環瀬戸内の地域で仮に海の洲というふうに名づけることができるでしょう。それぞれ十分に経済力を持ちかつ美しい景観の個性を持っておりますので、そうしたところに内政にかかわる者が、省がおりていくのがよろしいと思っております。一言で言いますと内政にかかわる国の機関の発展的解消ということでございます。
     そして、国の力は強くなければなりません。それは主権国家としての力を国民のために発揮するためです。防衛、安全保障、外交、通貨の管理、大きなプロジェクトの調整等でございます。こうしたものに集中をすることを通して、新しい首都機能というものを持つべきであろうと思っております。その首都機能につきましても、これは一九九〇年から足かけ十年をかけまして国が定めました国会等移転審議会の最終報告書にのっとって、那須野ケ原というのが筆頭候補地になっておりますので、そこに九千ヘクタールほどの土地がございますから、そこに持っていくのが望ましいというように考えております。
     そうしたときに、本県のような府県制がどうなるかということでございますけれども、県議の御指摘のとおり県は徐々に発展的に解消されていくというふうに思います。そのときに、県全体の行政のノウハウをまたリーダーの方たちが基礎自治体のほうにおりていくということと、もう一つは広く例えば中部地方ですと山の洲の広域行政の方向に行く方と、この二つに二極分解するであろうというふうに思っております。
     したがって、我々は基礎自治体の力をつけねばならないというふうに思っております。基礎自治体の中で例えば静岡市、浜松市というのは十分に自立できるところです。しかし賀茂地域は小さな単位でございますので、大きくまとまらないと自立がなかなかできません。現在自治体として中核都市が大体三十万あれば自立できるということで、特別区というのを中央政府がこの間の法律で――これは大規模な都市についてでございますけれども――そうした方向に特別区を設けなさいと、設けてよしという法律を通されました。ですからそうした数字が一つの基準ではありますけれども、大きくまとまりながら基礎自治体が自立する方向を目指すべきであろうと。
     ただし、これは皆様方少なくとも天野先生の目の黒いうちに起こるかどうかはわかりません。私もできればそうした新しい日本の姿を見たいと思っておりますけれども、それは天のみぞ知るということでございます。
     その他の御質問につきましては、関係部局長から御答弁申し上げますけれども、感想のようものを申し上げますれば、中間報告と今回の我々が出そうと言っている第四次想定でございますけれども、中央政府のほうも三月の末と八月の末に出されました。三月の末のものは中川防災担当大臣が前倒しして出すとおっしゃっていたものです。それを第一次報告、そして八月二十九日のものを第二次報告と言われていますけれども、これはそれぞれ中間報告と最終報告というふうに言いかえられます。私のほうも第四次想定で出されている十メートルメッシュのそのデータを取り寄せまして、できる限り早く各市町の地形や地勢、そうしたところにおろしていくという作業はこれはデータさえ入ればすぐにできるはずだということで、現在の我々の実力からすれば六月の前、二月ごろには中間報告というものを出すことができるということでございます。データに対してそれに応じたこちらの想定を出すということでありまして、それ以上でも以下でもございません。それを私は最終報告の前倒しという言い方で言いましたけれども、中間報告のことでございます。
     それから、熱海市の湯らっくすマラソンでございますが、熱海市の第三次想定における津波高は三メートルから三・一メートルでございました。そして国の出された三月三十一日のところでは五メートル、最終報告では平均値四メートルです。ですからやや過剰であったかと思います。下田市のように三十三メートルのものが来るということであれば相当に危機意識というものがあったと存じますけれども、この点はしかし危機管理というものを最優先されるということは評価いたしますけれども、この数字ということについて言うならばやや過剰な反応であったかなというふうに思っています。
     それから、富士山周辺、富士宮市の須藤市長さんがメガソーラー、これが景観によろしくないというお考えを持たれてそれを広く訴えられました。まさに富士山は文化性つまり文化的景観ということを通して評価されてきたのでございますので、その点を抜きにした工作物をどんどん建てていいということにはならないということで、ここでは良識が働くようにということを祈っております。
     それから、山体崩壊というようなこのことでございますが、これに対してどう対処するかというのは、天野先生のように対処すればよろしいということです。要するにこうした学者の学説というのは、それはそれとして根拠があって起承転結つけた議論になっているのでございますので、それは受けとめればよろしいと。しかしこれがどのような、あした起こるとかというような話ではありませんので、六千五百万年前に隕石が落ちてそして恐竜が全部全滅したと。地球が冷えたと。あたかも隕石はいつでも落ちてくるようなそういう言い方もできます。しかしながらそれはそれとして、ああそういうことがあったかとして、恐竜の時代からやがて哺乳類の時代になっていくというそういう脈絡として人は受けとめているはずです。
     私は、山が崩れればもうこれは仕方がないねというぐらいの良識、常識は静岡県民ほか日本全体が持っていると存じます。火山の噴火、あるいは大地震、あるいは津波、台風、こうしたものはコントロールできないと。これが来たときにはしようがないという、しようがないけれどもまた春がめぐってくるという季節感も持っているから頑張ろうというものも持っているわけでございまして、そうしたものが従来のようにナマズが暴れて列島ががたがたしたということではなくてそれなりの根拠を持って言われているということでございますので、それを受けとめる日本人の、静岡県民の学力は十分にあると思います。それの風評に乗らないように、全ての方が天野進吾先生のような方を目指してやっぱり勉強しなくちゃいかんと。学者に、私も一時期学者の――今でも学問しておりますけれども――端くれでございますので、玉石混交で石のほうが多いということでございますから、一人の学者の学説に踊らされるということがあってはならないというふうに思います。
     カジノ構想につきましては、日本平、あそこは先生も行かれたかと存じますけれども、すばらしいホテルで、風景美術館というふうに言われています。このようなところでございますのでそれに応じた形で人が集まるようにすると。その一つの方法がカジノであると。ほかにも方法があるかと存じます。
     そんなことでございまして、感想ばかり述べましたけれども、少しくこれは時間を超過して怒られておりますが、余りの名調子につられたということで御勘弁いただきたく存じます。どうもありがとうございました。
     その他のことについては、関係部局長から御答弁いたします。
    ○議長(小楠和男君) 小川危機管理監。
           (危機管理監 小川英雄君登壇)
    ○危機管理監(小川英雄君) 既に知事から感想がございましたが、一部重複する部分もございますけれども御容赦願いたいと思います。
     南海トラフ巨大地震についてのうち、初めに県の第四次地震被害想定の中間報告と国の被害想定とのかかわりについてお答えをいたします。
     国が先月発表した被害想定は、発生し得る最大クラスの地震・津波に基づき推計したものでございます。来年六月をめどに策定をいたします県の第四次地震被害想定は、国が想定をいたしました最大クラスの地震・津波と過去に百年から百五十年単位で繰り返し大きな被害をもたらしている地震・津波の双方につきまして、それぞれ国が想定に使用した地震や津波のモデルをもとにいたしまして、震度分布や津波高、津波の到達時間、浸水域、さらには市町村ごとの人的被害や物的被害などを推計するものでございます。
     また、この推計とあわせまして、県民の皆様の生命を守ることを最優先に想定される被害をできるだけ減少させるため、ハードとソフトの両面からの地震と津波に対する具体策をまとめた新たな地震・津波のアクションプログラムを策定してまいります。
     来年二月ころに公表いたします中間報告におきましては、市町がこれまで取り組んできました防災対策を検証し、新たな防災計画を策定する上で必要となります市町ごとの被害想定、被害をできる限り減少させるための対策の方針を合わせてお示しする考えでございます。
     次に、国の被害想定に起因する行政の行動についてであります。
     イベントの主催者には、一般的に参加者の安全を確保するという責務がございます。したがいまして開催に当たりましては、自然災害が発生した場合のリスクやその対策につきましても事前に十分検討する必要があるものと認識をしております。
     今回、熱海市が神奈川県西部地震――南海トラフではございませんで――神奈川県西部地震を想定をいたしまして、発生をする津波を熱海湯らっくすマラソンにおけるリスクとして捉えその対策を検討することは、ある意味当然のことであるというふうに考えております。その結果三千人を超える参加者や大会関係者の避難先の確保が困難であり、大会を安全に運営できないとの結論に至ったものと理解をしております。
     一方、この大会の中止につきましては、議員からも御指摘がございました地域経済、とりわけ熱海市の主要産業でございます観光にとってマイナスの影響を及ぼすということもあると考えられますが、今回の熱海市の決断は危機管理の観点だけではなく、こうした経済・観光面への影響も含め総合的に勘案し、判断した結果であるというふうに受けとめております。
     次に、富士山に関連した諸課題についてのうち、災害情報の氾濫についてでございます。
     東日本大震災以降、災害に対する国民の関心や意識が非常に高まっております。このような状況の中、議員御指摘のとおり我が国の象徴である富士山の火山活動や災害に関する情報が過大に報道される傾向があると認識をしております。県民の皆様には、これらの情報に対し過剰な不安を持つことなく必要な対策に取り組んでいただけるよう災害を正しく理解する力を高めていただきたいと考えております。自然災害やその被害想定には発生確率や前提となる条件がございますことから、可能な範囲でその全体の姿を捉える必要があると思っております。
     そのため、本県では、富士山の火山活動はもとより地震や台風などの災害に関する情報については災害の事象だけではなく科学的根拠を示しながら、発生のメカニズムや頻度に加えその対策につきましても繰り返し丁寧に説明することで、県民の皆様に正しく理解していただけるよう努めているところでございます。
     県といたしましては、今後とも公開で開催をしております防災・原子力学術会議、月一回の地震防災センターでの防災学講座などの機会を活用するほか報道機関、インターネットなどを通して県民の皆様に直接働きかけてまいりますとともに、防災士、地域防災指導員、災害ボランティアコーディネーターなど地域の防災リーダーを育成することによりまして、これらリーダーを介し県民の皆様が自然災害を正しく理解し適切に対応できるよう努めてまいります。以上であります。
    ○議長(小楠和男君) 長島交通基盤部長。
           (交通基盤部長 長島郁夫君登壇)
    ○交通基盤部長(長島郁夫君) 富士山に関連した諸課題についてのうち、富士山周辺の景観についてお答えいたします。
     富士山周辺は、本県のみならず我が国を代表するすばらしい景観を誇る地域であり、世界文化遺産登録を確実なものにするためにもこの地域の美しい景観を保全することは大変重要であると考えております。またメガソーラーを初めとした自然エネルギーの導入促進は本県でも喫緊の課題となっておりますが、メガソーラーは大規模な工作物でありますことから、設置に当たっては周辺の景観への十分な配慮が必要となります。富士宮市としては、自然エネルギーの導入を促進することの必要性を理解しつつも朝霧高原を初めとする富士山西麓地域の美しい景観を保全するため、メガソーラーの抑止地域を設定するなど必要な対策を講じたものと認識しております。
     県といたしましても、雄大な富士山のすばらしい眺望を保全するため地域の特性や市町の意向を踏まえ、景観に配慮した公共事業の実施や屋外広告物対策を初めとした景観保全施策を幅広く捉え、積極的に推進してまいります。以上であります。
    ○議長(小楠和男君) 伊藤静岡県理事。
           (県理事 伊藤秀治君登壇)
    ○県理事(伊藤秀治君) カジノ構想についてお答えいたします。
     シンガポールやラスベガスなど世界のカジノで成功している地域では、カジノをMICEのアフターコンベンションや複合型リゾート施設の一角に位置づけまして、国際競争力の高い、魅力ある滞在型観光を実現しています。一方でカジノに対しては治安の悪化や賭博依存症者の増加、青少年への影響などを懸念し、抵抗感を持つ国民が多いことも事実であります。そうしたことから、その導入に当たりましては、住民の生活環境や宿泊・商業施設に与える影響、自然環境や景観、文化的資源等との調和などデメリットへの対策を含めた十分な議論を重ね、何よりも地域住民の御理解を得ながら判断することが重要であると考えております。
     県では、これまでカジノ解禁の前提となります法制化や所管省庁の明確化につきまして国に提案してまいりましたが、今後ともカジノ導入に関する国の法制化の動きを注視しつつ、国内外におけるさまざまな情報収集に努めますとともに、議員御提案の課税と使途の仕組みなどにつきましても調査研究を行いまして、カジノが解禁された場合に県民の皆様の意向も確認しながら迅速適切に対応が図れるよう取り組んでまいりたいと考えております。以上であります。
    ○議長(小楠和男君) 五十九番 天野進吾君。
           (五十九番 天野進吾君登壇)
    ○五十九番(天野進吾君) 大変に知事から御丁寧な御答弁をいただきました。しかし私は昔から一つの疑問を持ち続けてまいりました。そして誰一人としてこれまで私の疑問に答えてくれた人はいなかったんですけれども、賢明な議員もたくさんいらっしゃいますし、また当局の代表する方々がいらっしゃいます。そこで、一つお尋ねします。
     皆様方、静岡市に登呂遺跡という施設があります。登呂遺跡、海岸に近い遺跡であります。そしてさらにさらに海岸に近いところでは汐入遺跡という遺跡があります。その遺跡から農耕に使ったげたあるいは農業用の丸木船、そうしたものが発掘をされているんです。登呂遺跡の時代は今から千九百年前であります。およそ二千年前、その文化が今なおそのまま残ってきているということは、ここに津波がなかったあかしじゃないでしょうか。もし津波があったら、今は十三メートルの高松に来ると言われているそんな大きな津波じゃなくても結構、わずか三メートル、四メートルの津波があっただけで、私はここに丸太船が、あるいはげたが発見されることはなかったと思っております。
     学者は大変に私たちを脅かしております。そういうことに対する回答は一つも今まで見たことはなかった。皆さんのすばらしい回答を私は期待しております。ありがとうございました。(拍手)

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