本会議会議録
質問文書
令和元年12月静岡県議会定例会 質問
質問者: | 蓮池 章平 議員 | |
質問分類 | 代表質問 | |
質問日: | 12/09/2019 | |
会派名: | 公明党静岡県議団 | |
質疑・質問事項: | 1 公会計改革の推進について 2 来年度当初予算編成について 3 次期総合戦略について 4 今後の防災対策について (1) 地域の特性を知る洪水ハザードマップの作成支援 (2) 被災後の生活再建の初動体制の確立 5 リニア中央新幹線整備ついて 6 県営住宅のあり方について 7 ユニバーサルデザインの普及先進県としての取り組みにつ いて 8 本県の観光政策について 9 全ての世代が活躍できる環境の整備について (1) 就職氷河期世代の職員採用 (2) ひきこもり支援 10 森林環境譲与税の活用について 11 建設産業の体質強化について 12 障がい者施策について (1) 生涯を通じた支援のための体制 (2) 発達障がいのある方への支援 13 総合的ながん対策について (1) がん対策の今後の取り組み (2) がん教育に対する取り組み 14 教育行政の充実について 15 交通安全施設の拡充について |
○議長(鈴木利幸君) ただいまから会議を開きます。
議事日程により、知事提出議案第百五十二号から第百八十六号までを一括して議題とします。
質疑及び一般質問を行います。
通告により七十番 蓮池章平君。
(七十番 蓮池章平君登壇 拍手)
○七十番(蓮池章平君) 私は、公明党静岡県議団を代表して知事、副知事、関係部局長、教育長、教育部長、警察本部長に一括質問方式で質問をいたします。
質問に入る前に平成から令和への新しい幕あけの本年も災害の多い年でありました。特に台風十五号、十九号では県内でも亡くなられた方もおり多くの方が被災され、哀悼の意を表すとともに心からお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧・復興を祈り質問に入ります。
初めに、公会計改革の推進について伺います。
私は公会計改革が県政の重要課題の一つと考え質問を重ねてまいりました。県は財政の健全化の判断基準として実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率の四つの指標で県財政は健全であると示してまいりました。一方で平成二十一年度から基準モデルの財務諸表で資産や負債、行政コストなどを公表をしております。平成二十九年度から総務省の統一基準により他の都道府県との比較が可能となりました。本県と同等の財政規模の府県と財務諸表を比較してみると本県財政の課題が見えてまいります。
例えば、純資産比率は資産のうちどれくらいの割合が正味の資産、つまり借金の返済を必要としない資産かを示すものですが東京都の七七・二%は別格として大阪府八・七%、福岡県八%、兵庫県七・三%に対して本県は三・九%と極めて低くこれまでの資産形成が将来世代の負担である負債、借金によることが明らかであります。
また、施設の老朽化の目安となる有形固定資産減価償却比率は平成二十九年度で比較すると東京都四〇・一%に対し大阪府五六%、福岡県四五・三%、兵庫県六三・七%に比べ本県は六八・八%で県有資産の老朽化が進んでおり今後庁舎の改築や大規模改修等が増加していくと予想されますがそれに備えた基金の積み立てもありません。改革を進めるためには債務の圧縮が必要であり、平成三十年度に前年度比五百九十五億円増加している臨時財政対策債は将来世代の財産形成につながらず受益者負担の面からも圧縮する方針を示すべきであります。
国が将来交付税措置を約束をしているとはいえ、財政規律や将来にわたり本県財政の健全性を示すためには廃止を目指すとの明確なメッセージが必要であります。そのことで不足する財源については施策推進の目的を明確にし、ふるさと納税など財源調達の努力も必要であります。
そこで、まず財務諸表から見た本県財政状況の認識について伺います。
本県の公会計改革の取り組みは本年度で十二年目となりますが発生主義、複式簿記による財務諸表を活用し十分に県政運営に生かしているとは言えません。全国では施設別の財務諸表から課題を分析し施設運営に反映させる取り組みや財務諸表により見える化した債務を縮減するなど公会計を活用した改革に着手している自治体がふえております。
本県でも県職員が財務諸表から財政状況を読み取り的確な財政認識で予算編成や総合戦略の立案など県政運営の柱にすることが重要であります。
そこで、職員の意識改革の取り組みとあわせて本県における公会計を活用した改革の具体的な取り組みについて伺います。
次に、来年度当初予算編成について伺います。
令和二年度の当初予算編成は、SDGsのフロントランナーとして世界のモデルとなる安全・安心で美しいふじのくにづくりの加速と、健全財政の枠組みを堅持し財政構造改革により財源不足額の圧縮に取り組み新ビジョンの目標である収支均衡への確かな道筋の二点を基本方針としてスタートいたしました。特に重点課題推進枠として指定テーマが示され新たな取り組みに予算が配分されるわけですが、指定テーマを実現するためには十分な検証が必要であります。
これまでも、県のPDCAサイクルでの施策展開においては課題の深掘りと要因分析が重要と訴えてまいりました。今回の三つの指定テーマを実現するための課題と要因分析が明らかにされなければ新たに展開される施策で達成できるかは疑問であります。指定テーマ達成のための課題を明示し課題解決のための新たな施策となれば真に美しいふじのくにづくりを実現することが可能となります。
そこで、来年度の予算編成の指定テーマについてどのような考え方で設定したのか、また今後PDCAサイクルによる効果の検証や改善の着実な実施に向けどのように取り組んでいくのか、知事のお考えを伺います。
次に、次期総合戦略について伺います。
これまで、五年間の総合戦略評価書の重要事業評価指標で達成状況の数値が確定している百五十三の指標の七二%がB以上で推移し取り組み全体として順調に進捗が図られているとしています。しかしながら社会増減の推移では日本人の転出超過に歯どめがかかっていない部分、外国人の転入超過が上回りわずかな減となっています。また合計特殊出生率の推移は二〇一六年に一・五五まで上昇したものの昨年は一・五〇と減少しており、示されている長期ビジョンの人口推計の実現は極めて厳しい状況であります。合計特殊出生率二・〇七と社会移動均衡という大目標に対して五つの戦略に基づく施策とKPIの設定そのものが適切であったのかという疑問も生じてまいります。まずは現戦略の施策とKPIの妥当性を改めて検証しその上で施策による改善の方向性がなぜ見出せないのか、その要因は何かを詳細に分析することで次期の的確な戦略が打ち出せるのではないでしょうか。
目指すべき将来の方向性は間違っていないと考えますけれども、人口減少の抑制戦略と人口減少社会への適応戦略の具体的中身についてはこれまでの戦略による結果と要因の分析なしには同意することができません。
そこで、これまで五年間の戦略に基づく施策とKPIの妥当性、戦略による結果とその要因をどう分析しているのか、また分析結果を次の総合戦略にどう反映していくのか、知事の所見を伺います。
次に、今後の防災対策についてのうち、地域の特性を知る洪水ハザードマップの作成支援について伺います。
洪水ハザードマップは、二〇〇五年の水防法改正で作成基準を数十年から百年に一度を想定した降雨により作成することが市区町村に義務づけられ、二〇一五年には千年に一度ともいわれる最大規模の降雨を想定したレベルに改定され現在県内の関係市町において作成への取り組みが始まっています。新たなレベルで作成したハザードマップの信頼性は高く作成済みの地域では予測通りとなりました。
本年七月に最新版に改定した長野市においても千曲川の洪水による浸水区域は予測の範囲でありました。ハザードマップの早急な整備とともにその予測にのっとった地域防災の取り組みを確実に行う必要があります。しかし新たなハザードマップが作成されたところでもまさかここでは起きないだろうと正常性バイアスが働き無念にも避難がおくれて命を落とした方が多くいらっしゃいました。
そこで、これらの状況を踏まえ県内市町に係る最大規模の降雨を想定した洪水ハザードマップの作成状況と今後の見込み、地域防災のさらなる推進を後押しをする県の取り組み並びに逃げおくれによる犠牲者を出さないため洪水ハザードマップの重要性を県民に理解してもらうための県の方策を伺います。
次に、被災後の生活再建の初動体制の確立について伺います。
地震、津波、豪雨、突風など自然の猛威により人命に及ぶような被害、長期間にわたる復旧・復興が必要になる被害が発生した場合、そこから再出発するためには将来の未来図を描けることが重要で個人や家族、また地域産業の復興を被災直後から確実に推進できるよう事前に十分に準備する必要があります。
これまで発生した自然災害による被害状況を十分に検証し県民の命、財産、生活を確実に守るための取り組みが求められます。南海トラフ地震や大規模な豪雨災害による被害は市町単位ではおさまりません。特に南海トラフの地震は災害の規模から西日本大震災となる可能性があります。大災害を受けた後県民が生活の再建を一刻も早く行うためには、行政による被災世帯の確実な状況確認とその状況を的確に反映させた罹災証明書を速やかに発行する必要があります。
今年の台風十五号、十九号の被災地における住家被害認定調査において状況を正確に調査できる行政職員が不足し近隣市町に応援を要請したものの要請を受けた市町は対応できる人材を派遣できませんでした。被災規模が大きくなればさらに応援は難しくなり結果として再建へのスタートがおくれる可能性があります。県は市町と連携して正確な調査ができる職員を平時から育成し発災後直ちに被災市町を支援できるよう被災後の生活再建の初動体制を確立する必要があると考えますが、今後の県の取り組みについて伺います。
次に、リニア中央新幹線整備について伺います。
リニア中央新幹線の工事による水や環境問題については依然として先が見えない状況であります。国土交通省が入り納得できる結論が一日も早く導き出せるよう期待をしております。
先日も難波副知事がJR東海の副社長と国土交通省専門官とともにトンネル工事の現場付近に入り調査されたことは大変意義のあることと評価をしています。他県の関係者や一部メディアから静岡県がごねているという誤った見方をされていることは大変に遺憾であります。
リニアの全線開通が将来の日本経済に大きく貢献するとの観点から一日も早く工事着手をと主張される方がありますけれども人の不幸の上にみずからの幸せを築くことは間違っております。南アルプスの貴重な環境資源や水源を守る観点からJR東海がトンネル工事付近の自然環境や水量の状況を定点観測しそれを県が監視する体制を整備する必要があると考えます。万一工事により水がれや自然環境への影響が出た場合原状復帰を求める根拠にもなります。ユネスコエコパークであり世界の宝である南アルプスのすぐれた自然環境資源をリニア中央新幹線整備事業の影響から守るため県はどのように取り組んでいくのか、知事の所見を伺います。
次に、県営住宅のあり方について伺います。
住宅のセーフティーネットの中核とも言える県営住宅が今後も安心して暮らせる住宅であり必要な人にスムーズに提供できることが求められております。以前県営住宅に住む八十代の方から御主人が亡くなられ契約変更などの手続で連帯保証人が見つからずに大変困っていると御相談を受けました。県外の出身で近くに親せきなどもおらずこのままでは退去しなくてはならないと涙ながらに訴えられる姿に本当に心が痛く何とかならないものかと切実に思いました。今後さらなる高齢化の進展により保証人となってくれる身寄りのない単身高齢者等がふえていくことは確実であります。
国土交通省も平成三十年三月に保証人を確保できないために入居できないといった事態が生じないように保証人の確保を前提とすることから転換する必要性を通知をいたしました。既に全国では北海道を初め幾つかの自治体で連帯保証人を求めないとする条例改正の動きがあります。本県においても検討していくべきと考えますけれども所見を伺います。
多くの地域で高齢化が進み住民同士の交流や地域社会との接点が減少し自治会機能の低下や孤独死などの課題が顕在しています。県営吉川団地では静岡大学の学生が交流の場をつくりコミュニティーの活性化に取り組んだ事例があります。県営住宅の空き部屋を高齢者自立支援拠点として活用するなどの取り組みを進め県営住宅を福祉や地域活動に積極的に活用していくべきと考えますが、今後の高齢化の進展を踏まえた県営住宅のあり方について、県の所見を伺います。
次に、ユニバーサルデザインの普及先進県としての取り組みについて伺います。
本県では平成十一年度より全国に先駆けてユニバーサルデザインの理念を県政に導入し推進してまいりました。以来二十年が経過し現在は第五次行動計画の段階まで進んでいます。この間、県では県有施設を中心にユニバーサルデザインを導入し段差の解消やエレベーターの設置、多機能トイレや点字誘導ブロックの整備、わかりやすい道路標識への改善など本県で開催されたラグビーワールドカップでも評価すべき一定の成果があらわれたと思います。
一方で、民間の商業施設等ではユニバーサルデザインの理念が乏しく利用しづらいという声が寄せられております。外国人観光客の増加や障害のある方の自立推進、高齢化の進展など社会環境は著しく変化をしておりハード面、ソフト面の取り組みだけではなく誰もがお互いに思いやりを共有する社会づくり、県民一人一人の意識、ハートを向上させていく必要があります。
平成二十六年度から開始したふじのくにユニバーサルデザイン特派員制度では県内の大学生が特派員となって県内外の企業、団体、商業施設、観光地を取材しユニバーサルデザインの取り組みをフェイスブックに投稿しております。県が実施した県民意識調査によると、ユニバーサルデザインという言葉の認識度は八〇%以上に上昇し意味まで知っている人の割合も五〇%を超え困っている人を見かけた際に声をかけたことがある県民の割合も約三割に達しています。県の啓発活動の成果として三人に一人は何らかの形で困っている人のために寄り添うことができるということに明るい希望を感じます。
そこで、県としてこの二十年間のユニバーサルデザイン推進の取り組みの総括と実践できる県民をどのようにふやしていくのか、所見を伺います。
次に、本県の観光政策について伺います。
多彩な魅力を有する本県は年間約一億五千万人が訪れ全国七位となる約二千万人が宿泊する観光立県であり、その地位を確立、維持してきた一つの要因として二〇〇〇年の伊豆新世紀創造祭から東海道四百年祭、浜名湖花博など静岡の魅力を知ってもらうさまざまな大型イベント等を実施し観光交流客、宿泊客を獲得をしてまいりました。こうしたイベント重視の観光振興策は訪れた人たちに喜んでもらえるおもてなしをしたいと知恵を絞ったり培ったノウハウが観光誘客の源になり地域の実力につながることが期待される一方で、一過性の取り組みになりがちで結果として何も残らないという弊害もあります。イベントに頼るだけの観光は時代に合わなくなっております。
世界の潮流を見ても例えばオランダ政府観光局は単に多くの観光客を誘致するプロモーションの時代は終わったとし活動の軸足を観光地のマネジメントに移すとしております。特にインバウンドで来られる外国人は地域の人との交流を望んでおり言葉の壁をなくすITツールの整備や地域の歴史文化を発信するツールの整備、お客様の満足度の向上を図る取り組みなど受け入れ体制の充実が必要であります。
静岡県に行けばどこでも温かく迎えてくれる、言葉もさまざまなITツールを使ってコミュニケーションが楽しめた、地域の歴史文化も自分の国の歴史とあわせて紹介されており静岡県がよくわかり思い出深い地となったと言われ来訪者の心にいつまでも刻み込まれている静岡県にしたいと考えます。イベント重視の観光政策から地域の人との触れ合い、文化、歴史、景観を十分に堪能できる政策への転換が必要と考えますが、県の所見を伺います。
次に、全ての世代が活躍できる環境の整備についてのうち、就職氷河期世代の職員採用について伺います。
本年六月二十一日に閣議決定された政府の経済財政運営と改革の基本方針――骨太の方針に就職氷河期世代に対する支援プログラムが位置づけられ、五十万人とも言われる正規雇用を希望しながら不本意に非正規で働く人やひきこもりや長期無業者に対して集中的な支援を行うことで三年間で三十万人の正規雇用者をふやすとしました。支援は本人、家族の相談を親身に受けとめるところから教育訓練、就職に至るまで切れ目なくサポートすることを柱として社会全体で支援の取り組みを進めるため、官民共同のスキームをつくり企業の受け入れ機会の増加につながる環境整備を行うとしています。就職氷河期世代への支援を怠れば将来の貧困の問題に直面し社会基盤や経済、社会保障の安定的な運営を脅かすことにつながる課題であります。
運輸や建設、介護などほぼ全ての産業で人手不足の状態にあり企業や事業所が求めるスキルと訓練プログラムや資格のマッチング、きめ細やかなこれまでとは異なる柔軟な発想に基づく政策運営が必要となります。まずは当事者や家族に的確に周知される方法も含めて早急な対応が求められます。
先月二十六日に首相官邸で開催された就職氷河期世代の支援に向けた官民共同議会において国みずからも積極的に国家公務員の中途採用について今年度から具体的に取り組むと強調されました。既に愛知県、和歌山県、兵庫県宝塚市など一部の県市等で就職氷河期世代を対象とした職員募集の動きがあります。本県においても就職氷河期世代を対象とした職員採用を行うべきと考えますが、知事の所見を伺います。
次に、ひきこもりの支援について伺います。
支援プログラムの中にはひきこもりに対する支援も盛り込まれました。都道府県等において支援対象者が存在する基礎自治体の協力を得て対象者の実態やニーズを明らかにし必要な支援が届く体制を構築することを目指すとしています。
内閣府は、半年以上にわたり家族以外とほとんど交流せず自宅にいる四十歳から六十四歳のひきこもりの人が全国に六十一万三千人いると推計しています。五十代のひきこもりの子供の面倒を八十代の親が見る八〇五〇問題で共倒れのリスクが指摘されており、ひきこもる本人だけではなく世帯単位での支援が必要であります。ひきこもり支援センターを中心としてアウトリーチ型の支援の充実や支援関係機関や民間支援団体との連携など県内市町との協働でひきこもりで悩む本人やその家族に対してスピード感のある手厚い支援が必要と考えますが、所見を伺います。
次に、森林環境譲与税の活用について伺います。
国は、温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止を図るための地方財源を安定的に確保する観点から森林環境譲与税を創設し、新たな森林経営管理制度の施行とあわせて地方自治体に対して本年度から税の譲与を開始をいたしました。森林整備のために必要な費用を国民一人一人が広く等しく負担して森林を支える仕組みとして国が私有林人工林の面積や林業従事者数、人口案分により市町に交付する枠組みとなっています。しかしながら市町によっては林業の専門職員や森林整備等のノウハウが少ないなど実施体制が十分整っておらず初年度は基金への積み立てで対応するところもあります。
一方で、近年の豪雨災害などに備え森林の整備は早急な対応が必要で、特に河川の上流から河口まで関係する市町が一体となって取り組む体制が求められます。先日の台風十九号でも狩野川台風を上回る雨量がありましたが幸いにも流木による河川の護岸破壊などがなかったのはこれまで森林づくり県民税の活用をして行ってきた間伐など森林整備の成果が出ているものと考えます。
県は、市町への支援を行う立場から県下河川流域の市町を取りまとめ豪雨などの自然災害に備えるため広域的な森林整備を進める必要があります。市町への支援について所見を伺います。
森林整備を促進するためには切り出した木材の利用の促進が重要でありこれまでも品質の確かな県産材の認証制度やその認証製品を使用した住宅の建設、リフォーム費用の一部助成などさまざまな施策を展開してまいりました。今後県内市町における公共施設等でより一層の普及を進めるための施策について、県の所見を伺います。
次に、建設産業の体質強化について伺います。
地域を支える建設産業は地域のインフラの整備、維持の担い手であると同時に災害時には真っ先に被災現場に駆けつけ応急対応を行うなど地域社会の安全・安心の確保を担う地域の守り手としてなくてはならない存在であります。さらに基幹産業として雇用の面から地域経済を支え本業の経験を生かしながら活力ある地域づくりにも貢献をしております。
一方で、労働時間が長くまとまった休日がとれなかったり従事者の高齢化に伴い建設業就業者数や許可業者数はピークの七割から八割程度で横ばいの状況が続いております。全国の公共投資も平成七年から八年にかけての三十五兆円をピークに平成二十年には十七兆円と半減し近年ようやく二十二兆円ほどに回復しております。
国も、平成二十六年に公共工事品確法と建設業法、入契法を一体として改正、建設業の担い手の中長期的な育成、確保のための基本理念や具体的措置を規定するとともにこの六月にも働き方改革の推進や生産性の向上、持続可能な事業環境の確保のため担い手三法の改正を行ったところであります。
先日建設産業の経営者の方と懇談した折、建設産業を取り巻く状況や課題を伺い最近の頻発する自然災害の多さを考えても地域の守り手として建設産業の体質強化の必要性を痛感をいたしました。発注や施工時期の平準化で四月から六月の落ち込みがなくなれば人的な配置や経営に大きな改善が行える、最近の国や県の取り組みとしてゼロ債務の活用など平準化に向けた取り組みが進んでいることは大変にありがたいがまだまだ課題も多くあり特に三月の年度末に仕事が集中する現状について一層の改善が必要と強調をされておりました。
建設産業の体質強化を図るためには、これまで以上に平準化を進め適正工期の確保の観点から二月議会から十二月議会へと前倒しをしてきた繰越明許費のさらなる前倒しやゼロ債務の拡大など、年度をまたいだ事業執行の仕組みづくりが重要であります。またゼロ債務の活用については特に現状では一月から三月には現場員が張りついており、着工の時期について余裕を持たせたフレックス工期を入札条件の中に入れることも考えられます。現在は三月末を工期終了とする単年度主義の文化が根づいていますが準備、片づけの期間、週休二日や天候配慮などを考慮し年度末にとらわれない工期を決めることが重要であると考えます。
厳しい経営環境にある建設産業の持続性を確保するため発注の平準化や適正な工期の確保をどのように進めていくのか、県の所見を伺います。
次に、障害者施策についてのうち、生涯を通じた支援のための体制について伺います。
我が子に初めて障害があることがわかったとき、これからどのように育てていったらよいのだろうか不安でいっぱいでした。そう語る母の言葉にあらわされているように障害のある子を育て社会に送り出すまでは気の遠くなるような苦労の連続であります。育児や子育ての中でどのような支援が必要でどこに相談すれば的確な支援が受けられるのか、今受けている支援が我が子にとって将来を見据えて本当に正しいのか、他の子供と比べておくれているところを少しでも追いつけないだろうか、毎日が試行錯誤であります。
障害の発見時から医療機関、保健所、福祉事務所、支援事業所、教育委員会、小中高とありとあらゆるところを駆け回り、学校に入学後も担任の先生がかわるたびに同じ説明を繰り返すことになれてしまうほど縦割り行政である日本の障害者支援の体制はおくれていると言わざるを得ません。
以前訪問したアメリカのカリフォルニア州の支援センターでは、障害が判明した時点から成長の段階に応じて必要となる支援メニューを関係機関と連携して提供する体制が整っておりました。何か困ったことがあれば相談に応じてくれ行政機関や民間の支援機関と連携して障害のある方への支援にとどまらず家族に対しても解決のために最大限の支援をする体制を整備をしておりました。私は一日も早く、このような切れ目のない一貫して支援できる体制整備を確立する必要があると考えています。
障害者支援の施策を所管する県として、一貫した支援体制の整備について現状の課題認識と目指すべき体制についてどのように整備拡充していくのか、所見を伺いたいと思います。
次に、発達障害のある方への支援について伺います。
発達障害のある方への支援について、平成二十八年の発達障害者支援法の改正では乳幼児期から高齢期まで切れ目のない支援や就労の定着支援などが盛り込まれました。知的におくれのない、いわゆるグレーゾーンの発達障害の皆様はほかの人とのコミュニケーションがうまくいかず就職しても職場での人間関係のこじれなどによって離職するケースも散見をされます。
一般就労が可能と見込まれている方は障害者手帳や受給者証の交付で就労移行支援事業所において二年間就労に必要な知識、能力向上のために必要な訓練や求職活動支援、適性に応じた職場開拓、就職後の職場定着に必要な相談等の支援が受けられます。療育手帳などのないグレーゾーンの方に対する受給者証の県内の市町における交付の基準には大きな差があり障害者本人やその家族は大変に苦労をされております。放課後等デイサービスで受給者証が交付されている方でも就労移行支援のサービスについては受給者証が発行されず大変苦労されたケースがありました。
少しの後押しで社会の中で大いにその能力を発揮できる発達障害のある皆様に対する支援をさらに進めていく必要があると考えます。県内市町の現状をどのように把握し支援法改正の趣旨に添ってどう改善していくのか、県の所見を伺います。
次に、総合的ながん対策についてのうち、がん対策の今後の取り組みについて伺います。
本県では国の基本計画にのっとり昨年度より第三次静岡県がん対策推進計画に基づいた対策が進められ来年度は中間評価を迎えます。がんの予防と早期発見、がんゲノム医療を初めとしたがん医療の充実、人材育成などに取り組んでいると承知をしております。がん対策はがん患者や家族に寄り添いその生活を支えながら進めることが重要で予防や早期発見のための検診受診率の向上は県民挙げて推進すべきと考えます。
富士市の有志によるアンケート調査では検診率向上のために、検診場所に託児所があるとよい、日曜日に検診を受けたい、職場での検診にがん検診が加えられると助かるなどの意見が寄せられました。がんと診断され治療との両立に悩み退職、再就職できず経済的にも困難を抱える方がいると伺いがんとの共生の困難さを実感をいたします。また就学中の若い世代の患者にとって学業との両立も大きな悩みで学習ボランティアによる支援などどの地域でも等しく学習を受けられる環境が必要であります。
ことし六月からがん遺伝子パネル検査が保険適用となりゲノム医療も推進される中で医療の充実とともにがんを知りがんとの共生社会の構築が求められます。
そこで、がん先進県を誇る本県の総合的ながん対策がどのように進められていくのか、今後の取り組みについて伺います。
次に、がん教育に対する取り組みについて伺います。
新しく学習指導要領の中でがん教育が取り上げられ令和二年度から小学校、令和三年度から中学校、令和四年度に高等学校で授業としてがん教育が始まります。本県では平成二十六年からモデル校でがん教育が始まり各地で展開されてきました。がん教育はがんの正しい知識を習得するとともにがんを通して命の大切さを学ぶいのちの授業でもあります。どの学校においても偏ることなく正しい知識とともにいのちの授業として進められることが望まれます。中には親ががんで亡くなった児童生徒もおり授業を受けることで傷つくことがないように、また授業を通して生きる力の大切さが伝わるような配慮が求められます。
鹿児島県ではNPO法人がんサポートかごしまなどの外部団体が、がん教育の語り手講座、学校でいのちの授業を開きがん教育に協力していると伺いました。本県でも患者会有志による語り手養成講座が開催されております。がん教育を担う担当者の養成や教職員が、がん教育に対する正しい知識と認識を持ちどの学校でもがん教育を通じていのちの大切さが伝わる授業になることを期待をいたします。
そこで、今後のがん教育に対する取り組みについて教育長のお考えを伺います。
次に、教育行政の充実について伺います。
本年五月スイスの有力ビジネススクールIMDが示した二〇一九年版の世界競争力ランキングで日本は過去最低の三十位となり世界における日本の競争力は低下、働き方改革と人材開発を同時並行で進める必要があると強調しております。
一方、経済協力開発機構OECDによる学習到達度調査PISAの成人版であるPIAACでは二十四カ国・地域の十六歳から六十五歳の約十五万七千人を対象に一つ、仕事に最低限必要な読解力、二つ、数的思考力、三つ、IT活用力について調査を行い日本は三つの能力全てが参加国の中で第一位でしたがその調査でも十人中三人は読解力が低い結果となりました。別の調査では中高生の三分の一は簡単な文章が読めず日本人の読解力は明らかに低下しており、このままでは国際競争力の回復のために必要な人材開発もままならないと研究者は警鐘を鳴らしております。
そのような中、日本の小学校から大学までの教育機関に対する公的支出の国内総生産に占める比率はOECDの比較可能な三十五カ国中、三年連続で最も低い順位となっています。これは教育に関するお金は家庭から支出するのが当たり前との考えや教育が国にとって優先課題であると認識されてこなかったことが要因であると言われています。
本年十月に消費税が十%となりそれを財源として幼児教育、保育料の無償化が始まったことにより教育が優先課題であるとの認識に国としてもかじを切りました。しかしながら教育無償化は取り組みの第一歩であり足下を見れば日本の教育は学力の低下のほかにもいじめ、不登校、教員の多忙化や子供たちが学ぶ意欲を失っていることなど多くの課題が山積し早急な改革が必要なことは国民共通の認識であります。
本県においても学校教育の充実に向けてこれまでもさまざまな取り組みを行ってきておりますが根本的な課題を解決するところまでには至っておりません。課題解決のため本県教育予算については国の地方教育費調査による平成二十九年度の教育費総額は静岡県は全国十一位ですが学校教育費の児童生徒一人当たりの教育費で見ると全国順位は小学校で四十六位、中学校で四十四位、高等学校で二十四位と低い状況にあります。学校におけるエアコン設置やトイレの洋式化などの施設整備や教員の多忙化が解消されないことにもあらわれております。
そこで、有徳の人づくりを目標に掲げる本県の教育施策において静岡県の未来を担う人材の育成に向け予算面も含め学校現場における課題をどのように捉えているのか、また課題に対応するためこれからどのような施策を重点化していくのか、教育委員会の所見を伺います。
次に、交通安全施設の拡充について伺います。
本県内の交通安全施設は現在六千九百カ所に信号機が設置されており各地域の要望や新たな道路整備により平成二十八年から三十年度までの三年間年平均三十カ所に信号機が新設をされております。県下の各自治会、市町などから新たな信号機の設置要望は年平均七十カ所程度寄せられており、県警察では要望箇所の交通実態などを踏まえながら優先度に応じて設置しているものと承知をしております。しかしながら予算が措置されてもその場所の道路構造により信号機が設置できないなどの理由によりまれに設置が見送られ翌年度以降へと先延ばしされることもあり、私の地元でも交通事故多発交差点への信号機の新設が地域との間で合意が整わずに翌年度以降に見送られたケースがあります。
県下各地には新たな道路や大型商業施設の開業により当初予想していなかった交通量の変化などにより交通事故や交通渋滞が発生することもあり、地域の皆様からは日常生活に大きな影響があり一日も早く対策を講じてほしいとの声が多く寄せられております。
そこで、まず交通安全施設の設置について早期に安全を確保するなど柔軟な対応が必要と考えますが、警察本部長の所見を伺います。
また、信号機のLED化については既に全国の信号機の約半数以上がLED化されております。LED化により電球式では西日が当たった場合点灯しているように見える疑似点灯現象の防止や電球式に比べ消費電力が六分の一以下となり省エネルギー効果が高くCO2削減の効果も得られます。さらに電球式の寿命が半年から一年であるのに対しLEDはおおむね六年から八年と長く今後の技術進歩によりさらに長くなることが期待をされております。
東京都や長崎県ではほぼ全ての信号機がLED化され他の府県でもLED化が進められております。残念ながら本県では信号機のLED化率は平成三十年度末で約三十%と低く全国でもLED化のおくれている県となっております。冒頭に申し上げました公会計の面からもLED化で総コストの削減が期待されます。
そこで、本県においても信号機のLED化を早急に推進すべきと考えますが、所見を伺います。以上について答弁を求めます。
○議長(鈴木利幸君) 川勝知事。
(知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 蓮池議員にお答えいたします。
来年度当初予算編成についてであります。
来年度の当初予算の三つの指定テーマにつきましては新ビジョンの加速化を基本としております。言いかえますと善は急げ、前倒しということでございますが新ビジョンやまち・ひと・しごと創生総合戦略の御評価を踏まえながら将来からのバックキャストの視点で課題を抽出し特に取り組むべき重点かつ横断的なテーマとして設定をいたしたところでございます。
具体的に申し上げますと世界に先駆けて進行する人口減少、超高齢化に適応するための社会システムをつくる、また飛躍的な革新を遂げさまざまな課題解決の鍵となるICT、AIなどの最先端技術を活用する、さらにこれらを進める上で基本となる未来を拓く子供を育み誰もが活躍できる社会を実現するという本県の今後の地域づくりの基礎となるものでございます。
予算編成におきましてはこのテーマに基づき各部局長のマネジメントのもとでPDCAサイクルによる事業レベルでの検証と改善を徹底的に行います。エビデンスに基づく現状分析、明確な課題の設定、課題解決に向けた手法、ロードマップ、KPIの設定などしっかりと行いましてテーマに照らして効果が見られない事業につきましては新たな手法に転換をいたします。
今後とも財源は限られております。この限られた財源の中でプラン・ドゥ・チェック・アクションとPDCAサイクルを通じましてより政策効果の高い事業の構築に継続して取り組みます。そのことによりまして直面する課題の解決を図り世界のモデルとなる美しいふじのくにづくりを加速化し誰一人取り残さない社会の形成を目指してまいります。
次に、次期総合戦略についてであります。
静岡県は国に先駆けて人口減少問題に関する有識者会議を設置いたしました。この会議の御提言をもとにいたしまして県民の英知を結集し人口減少対策の羅針盤となる総合戦略を策定したわけであります。そして毎年度各界各層の皆様の御意見を承りながら施策を改善しまた重要業績評価指標、いわゆるKPIの見直しを図り常に総合戦略を進化させてまいりました。
これまで移住相談窓口で仕事の情報を求める声が多いとの調査結果を踏まえまして就職相談機能を強化いたしました。また県内経済に精通する方による首都圏等の求職者と県内中小企業とのマッチング事業を創設しKPIに掲げる移住者の増加や県外の人材の県内での正規雇用者の増加を図ってまいりました。
議員御指摘のとおりエビデンスに基づく分析結果を次期総合戦略に反映することが重要です。次期総合戦略は総括評価を踏まえた意欲的な施策とその効果を的確に図るKPIを盛り込みまして実効性の高い目標管理型の計画としてまいりたいと考えております。
具体的には、平成三十年は東京一極集中が大幅に加速し本県でも若い女性を初め多くの年齢層で日本人の転出超過が拡大いたしました。国も分析を進めるとされていますけれどもこれに先立ち県独自でアンケートを実施いたしました結果、若者が本県に戻らない理由としてやってみたい仕事や勤め先がないことが挙げられています。
このため、多くの若者が就職できる分野や場を広げようと先端産業創出プロジェクト間の連携による研究開発と事業化の促進、デザインとかヘルスケアといった新しいサービス産業の振興など魅力的な働く場を創出する施策の充実を図ってまいります。
また、合計特殊出生率は近年横ばいで推移しております。一方県の調査によれば若者の約八割は結婚をして二人から三人の子供を持ちたいという希望を持っています。このため平均初婚年齢の改善に効果があるという評価に基づきまして出会いの場の創出などの結婚支援を充実いたします。公的保育サービスの受け入れ児童数の伸び悩みに対しましては増大する乳幼児保育の需要に対応する保育人材の確保と処遇の向上の取り組みを充実いたします。こうして市町と一体となりまして若い世代の結婚、出産、子育ての希望をかなえるための施策の改善を図ります。
SDGsのモデルとなる誰一人取り残さない社会の形成に向け二十三年間にわたって続く東京一極集中と未婚化、晩婚化などの社会の大きな潮流を変えるべく全県を挙げて取り組んでまいりますので県議会の皆様の御支援、御協力をお願い申し上げる次第であります。
次に、リニア中央新幹線整備についてであります。
リニア中央新幹線整備は国策というふうに言われます。静岡県の多くの方々がこのリニア問題に最近のように高い関心をお持ちになられるはるかに前から私はこの問題に関心を寄せてまいりました。一九九〇年代からです。国土審議会の委員。国土審議会というのは国土全体の計画を全庁横断的に定める国土庁の審議会でありますけれどもその最後の全国総合開発計画、第五回目のものでありますけれども二十一世紀の国土のグランドデザインの策定にかかわりました。と同時に時速五百キロのリニア新幹線実験線において九〇年代に体感しているわけであります。
そして省庁再編がありまして二十一世紀になりますと国土庁がなくなり国土交通省の諮問機関として国土審議会がございました。その中で私も委員として国土形成計画にかかわったわけです。これによりますとこの首都圏と中京圏と阪神圏を五百キロないし六百キロのリニア新幹線で結んでスーパー・メガリージョン――一つの首都圏、一つの都市圏にするという構想であります。この意義について私はこの形成にも国土形成計画にもかかわった一人として一貫して認めてきたものであります。したがってリニア中央新幹線に反対したことは一度もありません。
一方、このリニア中央新幹線が国交省の交通政策審議会中央新幹線小委員会というところでルートの計画、ルートを決定されたのは二〇一一年のことだったと思いますけれどもそのときに静岡を通るということになりまして、これは私のような者でも驚天動地の新しいルートの設定であったわけです。そしてそれが南アルプスを通過するということになったということでございます。
この南アルプスは平成二十六年――二〇一四年にユネスコエコパークに登録されました。御案内のようにライチョウの生息地の南限であります。また氷河期の遺存種と言われる高山植物のタカネマンテマや絶滅危惧種のヤマトイワナなどが生息する生物地理学的に大変重要な地域であります。一言で言えば世界の宝であります。世界最先端の技術のリニアと世界の宝の南アルプスをどう両立させるかが課題です。これは事業者であるJR東海さん、また認可者である国、また国民全体の知恵を絞らなければなりません。この両立を図る方策はまだ出ていないというのが現状であると思っております。
さて、この南アルプスは複雑な地形と地質を持つ三千メートル級の高い山々から成る山脈です。厳しい気象条件、崩壊しやすい地質条件でございますのでアプローチが不便であります。こうしたことからこれまで比較的人の手が入っていないことと相まって新たな人為的な変化に対する脆弱性が極めて高い地域と言えます。
このため、工事に伴う大井川の流量のみならず水質、また生態系への重大な悪影響が危惧されているわけであります。工事による大井川上流部の生態系への影響を把握するためには言うまでもなく生物の生息状況や川や沢の流量等の生息環境をデータとして可能な限りリアルタイムかつ高い頻度で計測、把握することが重要であります。またその方法の検討が必要であります。
同時に生息状況や生息環境を単なる数値としてとらえるだけでなくそれらの脆弱性を関係者が実際に見てこの自然環境の保全の重要性とまた困難性を実感することも重要であります。この両面から先月二十八日にJR東海や国の関係者とともに本県難波副知事、またくらし・環境部の幹部がリニア工事に伴う流量の著しい減少が予測される大井川の上流部を確認したところであります。
議員御指摘のとおり南アルプスの貴重な環境資源や水資源を守るためには工事着手前からJR東海がトンネル工事付近の生態系や水量等の状況を高い頻度で定点観測しそれをもとに環境保全対策を検討し方策を打ち立て県等が監視する体制を整備することが必要であります。工事着手後はこの体制を活用し異常な変化を確認した場合にはJR東海に速やかに適切な対応を求めていくことが必要となってまいります。
大井川上流部の美しい清流、南アルプスの希少かつ貴重な生態系を初めとするすぐれた自然環境の保全に引き続き全力で取り組んでまいります。
その他の御質問につきましては、副知事、関係部局長及び教育長から御答弁を差し上げます。
○議長(鈴木利幸君) 吉林副知事。
(副知事 吉林章仁君登壇)
○副知事(吉林章仁君) 総合的ながん対策についてのうち、がん対策の今後の取り組みについてお答えをいたします。
初めに、がん検診の受診率の向上につきましては県は昨年度から市町への巡回ヒアリングを実施し受診率が低調な市町に対し課題を聞き取り他市町の好事例を紹介する等の助言や提案を行っております。引き続き市町や企業等と連携をいたしまして未受診者への啓発等を推進するなどがんの早期発見、早期治療につながる受診率の向上に努めてまいります。
次に、治療と就労の両立支援につきましては静岡がんセンターの取り組みは全国標準になっております。これを踏まえまして県内のがん診療拠点病院等に設置されているがん相談支援センターにおきまして関係機関と協力し定期的にがん患者の就労相談を実施しております。また県では企業の経営者に治療と就労の両立について理解を深めていただくセミナーを開催しがん患者の就労継続を支える体制を強化しております。
治療と学業の両立支援につきましては、病気療養児が入院により学業不振となることのないよう教職員による定期的な訪問や退院後に個別指導を行うなど個々の状況に応じた適切な対応を図ることとしております。
さらに、がんの先進医療につきましては、静岡がんセンターでは二〇一四年からがん組織や血液の遺伝子変異等の解析を約六千件実施し新しいがん診断、治療の開発につなげる最先端の研究――プロジェクトHOPEを進めております。我が国初のがんゲノムデータベースを構築いたしました。その結果国が進める次世代の全ゲノム解析研究の実行計画策定責任者を山口県立がんセンター総長が務めることとなるなど国内がんゲノム医療をリードする存在になっております。
また、臨床面におきましても本年九月に静岡がんセンターが県内で唯一のがんゲノム医療拠点病院として国の指定を受けました。来年度から静岡県がん診療連携協議会のもとにがんゲノム医療部会を設置いたします。県内六カ所の連携病院と協力をいたしまして県内のどこに住んでいてもがんゲノム医療が円滑に受けられる体制の構築を進めてまいります。
県といたしましては、引き続き第三次静岡県がん対策推進計画の全体目標として掲げておりますがんを患う県民を減らし見つけ治し支える静岡県の実現に向けまして総合的ながん対策に取り組んでまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 佐藤政策推進担当部長。
(政策推進担当部長 佐藤典生君登壇)
○政策推進担当部長(佐藤典生君) 公会計改革の推進についてお答えいたします。
財務諸表から見た本県の財政状況の認識でありますが純資産比率につきましては負債の約九割を占める地方債、中でも臨時財政対策債が資産と負債のバランスを崩しているものと考えております。厳しい財政環境のもと国の示した配分額を発行せざるを得ない状況となっており臨時財政対策債の廃止、縮減に向けて国への働きかけをこれまで以上に強めてまいります。
有形固定資産減価償却比率につきましては、道路、港湾、漁港などのインフラ資産や県有施設の老朽化が進んできていることを示しております。現在県有施設のマネジメントの方向性を定める個別施設計画の策定を進めておりその中で施設の長寿命化や集約等を図るとともに将来に向けた財源の確保についても検討してまいります。
また、こうした財務諸表から分析される本県の財政状況を県職員が共有し常にコスト意識を持って日々の業務に生かすことが重要であります。職員向けの研修を通じて県全体の財政状況の理解の促進に努めておりますがみずからの業務への活用が課題となっております。このため施設ごとの資産の状況や行政コストを示す施設別財務諸表の作成について検討してまいります。他の自治体を参考に対象施設や評価方法、施設運営への反映手法などを検討いたします。
今後とも財務諸表の活用を通じまして県政運営の効率化を図るとともに県職員の意識改革に取り組んでまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 宮尾交通基盤部長。
(交通基盤部長 宮尾総一郎君登壇)
○交通基盤部長(宮尾総一郎君) 今後の防災対策についてのうち、地域の特性を知る洪水ハザードマップの作成支援についてお答えをいたします。
最大降雨を想定した洪水ハザードマップは水防法に基づき県内主要な五十五河川が作成の対象となっており河川管理者であります国または県が洪水浸水想定区域図を作成し、対象河川を有する三十市町が避難所などの必要な情報を追加した上で公表、配布、周知を行っております。これまでに八市町が作成を終え今年度中にさらに十市町で完成する予定であり残る十二市町につきましては令和三年度末までに作成をすることとしております。このため県では未作成の市町に対しまして説明会や研修会を開催するとともに洪水ハザードマップ作成費用に関する交付金制度の活用を推奨するなど早期作成に向け引き続き支援をしてまいります。
また、洪水ハザードマップの重要性や活用方法を県民の皆様に理解していただくため市町が開催する説明会などに県職員が出向き地域の皆様の疑問にお答えするなど水害リスクに関するコミュニケーションを図るとともに、防災訓練の実施を促すなど理解の浸透に努めてまいります。
県といたしましては、水防法に基づく河川に加えその他の河川につきましても本会議でお諮りしている補正予算を活用し最大規模の降雨による浸水想定区域図の作成を早期に進め、逃げおくれによる犠牲者を出さない安全で安心な地域づくりに努めてまいります。
次に、建設産業の体質強化についてでございます。
自然災害が頻発し被災現場での応急復旧などに対応する建設産業の重要性がますます高まる中、持続可能な建設産業へ体質強化を図ることは極めて重要であります。このため県では公共工事の平準化や適正工期の確保の取り組みを県や市町とも連携しながら推進しているところであります。
このうち工事の平準化につきましては、ゼロ債務予算の積極的な活用を進め本年度は三年前の二倍となる約四十四億円に拡大したことなどにより、これまで落ち込んでいた四月から六月の工事稼働件数が改善傾向にありますことからさらなる活用を図ってまいります。また受注者が一定の範囲内で着工時期を選択できるフレックス工期のゼロ債務工事での活用もあわせて進めているところであり、今後対象工事の拡大を検討してまいります。
次に、適正な工期の確保につきましてはこれまで工事金額をもとに必要な工事日数を算定しておりましたが本年度から工事着手前の準備期間や実際の作業日数、降雨などによる作業不能日数などを考慮した実情に合った積み上げ式の工期設定の本格実施に取り組んでおります。また繰り越しのさらなる前倒しに関しましてはやむを得ない事由が発生した段階で柔軟に対応することなどを検討することにより適正な工期の設定に努めてまいります。
県といたしましては、担い手三法の改正に対応する国の新たな運用指針も示されますことからこれを踏まえ建設産業の働き方改革を進めることにより誇りや夢を持てる魅力ある産業への転換を目指してまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 金嶋危機管理監。
(危機管理監 金嶋千明君登壇)
○危機管理監(金嶋千明君) 今後の防災対策についてのうち、被災後の生活再建の初動体制の確立についてお答えいたします。
県では、熊本地震や平成三十年七月豪雨などの被災地支援を通じて被災者の生活再建支援業務の重要性を学んだことから、今年度市町職員等を対象に罹災証明書の発行に必要な住家被害認定調査について専門的な研修を行っております。先般の台風十九号では災害救助法が適用された伊豆の国市と函南町に速やかに連絡幹部を派遣し災害対策本部の運営等を支援するとともに、県内全市町を対象に住家被害認定調査の方法等について説明会を開催いたしました。その後伊豆の国市と函南町におきまして住宅の被害を認定する職員が不足しているとの報告を受け、県市長会、町村会と人的支援について調整を行いましたが応援職員の派遣には一定の時間を要しました。
県といたしましては、被災市町からの支援要請に迅速に対応するため住家被害認定調査研修等を通じて人材の育成に努めるとともに県市長会、町村会と派遣手続の円滑化等について調整を進め被災後の生活再建の初動体制の確立に取り組んでまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 鈴木くらし・環境部長。
(くらし・環境部長 鈴木 亨君登壇)
○くらし・環境部長(鈴木 亨君) 県営住宅のあり方についてお答えいたします。
県営住宅の連帯保証人は入居者への家賃の納付指導や滞納家賃の支払いなどの重要な役割をお願いしております。しかし県営住宅は住宅のセーフティーネットの中核であり連帯保証人がいないことを理由に入居できない事態を生じさせないようにする必要があります。
現在はDV被害者や生活保護世帯について連帯保証人を免除しておりますが、今後身寄りのない高齢者等連帯保証人の確保が難しい方の増加が想定されますことから家賃債務保証事業者等の活用を検討してまいります。あわせて個別の事情によりこの制度の活用が困難な方に対しましては連帯保証人の免除も検討してまいります。
県営住宅のあり方につきましては高齢者の孤立やひきこもり防止などのため集会所において防犯、交通安全、健康講座等のイベントを開催しております。また県が提供した空き部屋において福祉協議会や自治会がいわゆる居場所を開設し高齢者が集いお茶を飲んだりしながら交流するスペースとして活用しております。
県といたしましては、さらなる高齢化の進展を踏まえ今後も入居者、市町、社会福祉協議会等と連携し集会所や空き部屋を活用した交流の場を提供する取り組みをより多くの団地に広げ住民の皆様がつながり支え合う県営住宅の実現を目指してまいります。
次に、ユニバーサルデザインの普及先進県としての取り組みについてであります。
本県では、平成十一年度からユニバーサルデザインに取り組みラグビーワールドカップの会場となったエコパや鉄道駅などの公共建築物へのエレベーターや多機能トイレの設置、観光案内等への多言語表記の導入などを進めてまいりました。また住宅内の段差解消や手すりの設置が進むとともに家電や文房具などに誰もが使いやすい製品がふえるなど総じてユニバーサルデザインが暮らしの中に浸透し定着してきたものと考えております。
一方、平成二十二年度からの第三次行動計画には思いやりの心を育てる心のUDを取り込み昨年度からは一歩進んで相手を思いやり行動する心のUDプラスを呼びかけてきたところであります。今年度は東京二〇二〇オリンピック・パラリンピックに向けてボランティアや観光関係者を対象に外国人や障害のある方が快適に過ごせるようそれぞれの特性に合わせたおもてなしを身につける実践講座を開催しております。
県といたしましては、今後心のUDプラスに関する情報発信を強化するとともにこの実践講座をさらに充実させラグビーワールドカップやオリンピック・パラリンピックのレガシーとしてより多くの県民の皆様が心のUDプラスを実践できるよう取り組んでまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 植田文化・観光部長。
(文化・観光部長 植田基靖君登壇)
○文化・観光部長(植田基靖君) 本県の観光政策についてお答えいたします。
近年の旅行形態は団体旅行から個人旅行に移行し旅の楽しみ方も名所、旧跡めぐりに加え地域特有の歴史や文化を体感しそこに暮らす人々と交流するいわゆるコト消費を中心とする旅行へと変化しておりこうしたニーズへの対応が大変重要になっております。このため県では地域のDMOを核として、農林水産業や商工業などさまざまな方々と連携しながら地域の観光資源を発掘し旅行者ニーズに合った魅力ある旅行企画の商品化を通じて地域における継続的な誘客の仕組みづくりに取り組んでいるところであります。
静岡デスティネーションキャンペーンにおきましても誘客宣伝に加え県内五地域が、風景や神社仏閣等の地域の観光資源の掘り起こしや磨き上げを行い魅力ある三百八十三点もの旅行商品を企画し来訪者に楽しんでいただいております。また外国人旅行者に対しましては静岡ツーリズムビューローが開設した旅行サイト、マウントフジトラベルにアウトドアや日本文化などを体感、体験できる地域のオリジナル商品五十六点を掲載し販売しているところであります。さらに市町等による多言語案内看板の設置やWiFiの整備への支援に加え、本年八月に設置した多言語コールセンターなどを活用し宿泊事業者や飲食店等が外国人旅行者と円滑なコミュニケーションを図れるよう地域の受け入れ体制の充実に努めてまいります。
県といたしましては、こうした取り組みを通じて観光客が地域の人と触れ合い本県の恵まれた文化や自然、食を堪能することで来訪者の心に本県で得られた感動が刻み込まれる観光地域づくりを進めてまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 鈴木経営管理部長。
(経営管理部長 鈴木宙志君登壇)
○経営管理部長(鈴木宙志君) 全ての世代が活躍できる環境の整備についてのうち、就職氷河期世代の職員採用についてお答えいたします。
就職氷河期世代に対する支援につきましては議員御指摘のとおり骨太の方針において就職支援が打ち出されたことを踏まえ既に一部の自治体で採用の動きがあるほか、国におきましても国家公務員の中途採用に係る計画を年内に策定し早ければ年度内に採用を行う方向で検討が進められております。
本県では新ビジョンに誰もが活躍できる社会の実現を掲げ中高年齢者やニート等への就職支援など多様な人材の活躍に向けた取り組みを進めているところであり、就職氷河期世代に対する就職支援につきましても県が率先して取り組むべき課題であると考えております。現在国におきまして全国の自治体における採用試験の実施状況について調査を行っており、今後試験の好事例や募集の際の留意点をまとめ情報提供するとの方針が示されたところであります。
本県といたしましても、国や他の自治体の動向も踏まえ人事委員会と調整の上就職氷河期世代の職員採用を検討してまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 池田健康福祉部長。
(健康福祉部長 池田和久君登壇)
○健康福祉部長(池田和久君) 全ての世代が活躍できる環境の整備についてのうち、ひきこもり支援についてお答えいたします。
ひきこもりにつきましては、長期化により介護や生活困窮等が世帯内で発生するなど問題が深刻化、複合化しておりますことから多面的、包括的な支援が必要となってきております。県では平成二十五年度にひきこもり支援センターを設置してその支援に取り組んでおり、東部、中部、西部の健康福祉センターにはコーディネーターを配置して窓口相談に加え各家庭を訪問するアウトリーチ型の支援を行っております。また民間法人と協働して外部との関係回復に意欲を持つようになった御本人が自宅以外にも安心して過ごすことができる居場所を県内五カ所に設置し社会参加の第一歩を踏み出していただけるよう支援を行っております。
さらに、身近な相談窓口となる市町の職員等を対象にしたひきこもりサポーター養成研修により複合課題に対応できるよう市町における相談支援体制づくりの強化に取り組んでおります。加えまして現在両政令市を含めた県内の市町と共同して民生・児童委員等に御協力いただきひきこもりの実態や支援ニーズの状況調査を実施しており、今後はその結果を踏まえ市町と連携し速やかに支援を行うとともに実情に応じた施策の充実を図ってまいります。
県といたしましては、ひきこもりの方やその御家族の悩みに耳を傾け個々の事情に寄り添い市町及び関係機関と連携し社会全体で包括的な支援ができるように取り組んでまいります。
次に、障害者施策についてのうち生涯を通じた支援のための体制についてであります。
障害のある方につきましては、おのおのの特性やニーズを的確に把握し障害福祉サービスの利用調整等を行う相談支援事業所が一貫してかかわりライフステージに応じた切れ目のない支援を提供していく必要があります。
県では、平成十七年度から相談支援事業所においてサービス利用のためのケアプランを作成する相談支援専門員を四千百二十七名養成してまいりました。しかしながら学齢期におきましては学校と放課後等デイサービス事業所が児童の特性等を共有しないまま、それぞれ支援計画を作成している場合がございますことから相談支援事業所がかかわって連携していく必要があります。また相談支援専門員につきましても実際に従事している人材の不足や発達障害に関する専門知識が十分でないなどの課題があると認識しております。
このため、今後相談支援専門員の増員や専門研修による資質向上を図ってまいります。また事業所や地域において相談支援専門員の指導的役割を担う主任相談支援専門員の養成を今年度から開始し地域の相談支援体制の充実を図るとともに、県内八カ所にあります県、市町や教育機関、障害福祉サービス事業所等の関係機関で構成される圏域自立支援協議会を有効に活用し個々の児童の指導目標を共有しながら一貫して支援できる体制の充実に取り組んでまいります。
今後も、ライフステージを見通した支援の充実に向けて市町や関係機関と連携しながら障害のある方が住みなれた地域で安心して暮らせる共生社会の実現を目指してまいります。
次に、発達障害のある方への支援についてであります。
発達障害者支援センターへの相談では近年成人期の相談が全体の六割を超える状況にあり、その中には仕事に関して悩みを抱える方や離転職を繰り返し職場に定着できない方も多数見られますことから発達障害のある方への就労支援が強く求められているところであります。
しかしながら、市町や障害福祉サービス事業所におきましては発達障害に関する専門的な知識や成人への支援についてのノウハウが十分とは言えない状況にあります。このため発達障害者支援センターでは市町職員等を対象とした自閉症支援講座を開催するほか事業所を訪問して問題解決に向けた相談や情報提供等を行うとともに、一人一人の具体的な相談ケースに合わせて発達障害のある方への適正な支援ができるように助言を行っております。
一方、市町の障害福祉サービス利用に係る手続等につきましては県が二年に一度事務指導を行い法令等に基づいた運用をしているか確認しており、今後も市町において受給者証の交付判断にばらつきがなく速やかな事務が行われるよう助言や指導をしてまいります。
県といたしましては、令和二年四月から発達障害者支援センターを県東部と中西部の二カ所に設置して、より身近な場所で市町や事業所に対する支援や連携を強化しライフステージを通じた切れ目のない支援に取り組み発達障害のある方の自立と社会参加の促進を図ってまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 志村農林水産担当部長。
(農林水産担当部長 志村信明君登壇)
○農林水産担当部長(志村信明君) 森林環境譲与税の活用についてお答えいたします。
台風に伴う豪雨などによる自然災害が多発する中、山地災害の防止や水源涵養など森林の有する公益的機能がますます重要となっております。森林がこの機能を持続的に発揮していくためには創設された森林環境譲与税を活用し市町が地域の実情に応じた森林整備やその促進のための木材利用などに取り組み森林を適切に管理していくことが必要であります。
このため、市町が森林整備を円滑に実施できるよう市町、県を構成員とする協議会を県内七カ所に設けました。この協議会におきまして所有者の経営意欲が十分でない森林を集積する新たな管理システムの情報共有や市町をまたがる森林整備のための路網計画の調整などを行い、広域的な連携や協力関係を構築し市町を支援してまいります。
また、市町の公共施設等で県産材利用を促進するため、市町の営繕、建築担当職員等を対象とした木材利用施設の見学会の開催や木造、木質化の個別相談に応じる専門アドバイザーの派遣に加え木材のよさや調達先を習得する研修会などを引き続き開催してまいります。
県といたしましては、森林環境譲与税を活用した広域的な森林整備の取り組みや県産材の利用促進を図りながら災害に強い森林づくりを進めてまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 木苗教育長。
(教育長 木苗直秀君登壇)
○教育長(木苗直秀君) 総合的ながん対策についてのうち、がん教育に対する取り組みについてお答えいたします。
国民の約半数が一生のうち何らかのがんにかかるとさえ言われておりますことから、がん教育におきましては正しい知識を身につけ患者や家族などがんと向き合う方々への理解を深めることにより健康と命の大切さ、ともに支え合う心を養うことを目標にしております。
県教育委員会では、平成二十六年度から三年間モデル校四校におきまして保健の授業でのがん教育や教職員への研修を実施しその取り組み内容や成果を指導用参考資料にまとめ各学校へ配布してまいりました。さらに養護教諭等を対象とした研修会や校内研修などにより教職員のがんに対する知識の向上を図っております。本年度は健康福祉部と連携し医師や養護教諭等で構成するがん教育に係る検討会を設置し高校や中学校での実践を踏まえ新学習指導要領に基づく実施に向けて検討しているところであります。
具体的には、県立静岡東高校や掛川市立西中学校におきまして医師による講義や保健体育科の教員と養護教諭によるチームティーチング、命の大切さや自他を思いやる心について生徒が討論する授業などを行いその結果を踏まえた学校での実践方策を検討するとともに各学校が取り組みやすい外部講師のリスト化について協議してまいります。
県教育委員会といたしましては、これまでの研究成果を教員の研修に活用することにより県内の全ての学校におきまして新学習指導要領に位置づけられたがん教育を円滑に実践できるよう取り組んでまいります。
次に、教育行政の充実についてであります。
議員御指摘のとおり日本の競争力や日本人の読解力の低下が指摘されておりこれからの国づくり、地域づくりに向けて教育が果たすべき役割は大変大きなものと考えております。特に学校教育におきましては予測が困難な時代に子供たちが生き抜く力を身につけられるよう主体的、対話的で深い学びの実践により思考力や判断力、表現力に加えて学びに向かう力や人間性を着実に育んでいくことが求められております。
しかしながら教職員の多忙化が深刻な状況となっており、また外国人や特別な支援を必要とする児童生徒に対応したきめ細かな支援が求められる中、子供たちの自立に向けた授業改善や業務の見直し、外部人材の活用など社会総がかりの教育を今まで以上に進めていく必要があります。
このため、県教育委員会ではソサエティー五・〇の人材の育成に向け県立高校の一層の魅力化、特色化に取り組むとともに広い視野を持った教職員の育成やICT教育の充実などを重点的に進めてまいります。また外国人や障害のある児童生徒へのさらなる支援やスクール・サポート・スタッフなど外部人材を活用した教職員の働き方改革を進めるほか安全・安心な学校づくりに向け空調設備の整備や校舎の老朽化対策についても計画的に取り組んでまいります。
子供たちへの教育は未来への投資であります。
県教育委員会といたしましては、静岡県、日本そして世界の未来を拓く才徳兼備の人づくりに向け子供たちが夢と希望を持ち可能性に挑戦する力を育むことができるよう教育行政の充実に積極的に取り組んでまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 小嶋警察本部長。
(警察本部長 小嶋典明君登壇)
○警察本部長(小嶋典明君) 初めに、交通安全施設の拡充についてお答えします。
交通安全施設のうち信号機の設置に当たっては事前に交通量、交通事故の発生状況、交差点の形状等を調査し真に必要性の高い場所において整備することとしております。調査の結果、道路構造上の問題などで信号機の設置が困難な場合においては道路管理者に対して交差点改良を初めカラー舗装や注意喚起看板などの設置を申し入れるほか、新たな交通規制を実施し道路標識や道路標示といった交通安全施設を整備するなどそれぞれの場所に応じて必要な交通安全対策を講じているところです。また不測の交通状況の変化に対しても新たな交通規制の実施や交差点における道路標識や道路標示の改良などによる交通安全対策を講じるほか、新たな道路が開通しこれまで利用されていた道路の交通量が減少する場合には必要性が低減した信号機を新たな場所へ移設するなどの対策も講じているところです。
いずれにしましても、道路交通の安全と円滑を図るため交通安全施設の整備については効果的かつ合理的に推進することが重要であると考えており、引き続き柔軟で速やかな交通安全対策を講じてまいりたいと考えております。
次に、信号機のLED化についてお答えします。
議員御指摘のとおり本県ではLED信号灯器の整備率が約三〇%と全国平均に比べて低い現状にはありますが、安全性やコスト縮減効果が高いLED信号灯器の整備は重要であると考えており効果的かつ効率的に信号灯器を更新していく必要があると認識しています。このため平成二十九年度から信号表示面が小型化されるなどした低コストの信号灯器を導入するとともに、信号灯器の調達と工事発注を分離する分離発注方式をとるなど調達コストの低減にも努めつつLED式信号灯器の整備を推進しているところであります。
引き続き各種交通安全施設の整備、更新とともに信号灯器のLED化を推進し安全性の向上とコスト縮減に努めてまいります。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 七十番 蓮池章平君。
(七十番 蓮池章平君登壇)
○七十番(蓮池章平君) それでは、要望を一点と再質問を数点させていただきます。
静岡県はやはり未来への投資をふやしていくということが重要で教育予算について申し上げましたけれども教育現場というのは本当に今大変な状況でございます。これに対応するためにはですね、やはりしっかりとした予算の裏づけというものが必要なわけで知事部局も含めて教育予算の増額を求めておきたいと思います。
また、私学についてもですね国の来年度私立高校に対する支援の枠組みが決まり次第しっかりとしたさらなる支援の拡充がされるように重ねて求めておきたいと思います。
再質問ですが、公会計これ本県の公会計の中、財務諸表を見て危機感を持っている職員というのはどのぐらいいらっしゃいますかね。ほとんど静岡県は倒産しない会社という感じではないでしょうかね。これ財務諸表だけ見ればこれは民間企業だったら大変な状況になっているわけですよ。ですからそういうことをきちっとやはり職員の皆さんが認識をしていかないと厳しいなというふうに思っています。特にですね来年度の財政収支の試算では臨時財政対策債、対前年二十億円増額になっていますね。これはやはり将来世代の負担をふやし続けていくということなのでせめて前年度の発行額よりも減らしていくとこういう方針を打ち出すべきだと思いますがいかがでしょうか。
就職氷河期世代の職員採用については、これ実践する方向で検討するということでよろしいでしょうか。確認です。
それから発達障害のある方への支援ですが、市町のこの専門知識が不十分だとこういう認識をされているということですが、これ二年に一度の調査ではなくてまず今実態として各市町のばらつきがどういう状況なのか県としてきちっと調査をすべきだというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
最後に、警察本部長の信号機のLED化でありますけれども、これは公会計の観点からも前倒しをして整備しても十分もとはとれると。一カ所当たり年平均七万円ぐらいの維持管理費の削減ができるという試算もあって六千九百カ所の七〇%、約三億円の削減が見込めると思いますが前倒しの考えはありますか。以上、答弁を求めます。
○議長(鈴木利幸君) 佐藤政策推進担当部長。
○政策推進担当部長(佐藤典生君) 公会計改革の推進についての再質問についてお答えいたします。
私たちもですねやはり県債の負債が多いこと、そして資産の老朽化ということで非常に今後の財政負担が危惧されているという認識はみんな持っているところでございます。そういった中で臨時財政対策債でございますがこちらについての減らしていく、縮減ということにつきましては廃止、縮減に向けまして国にですねこれまで以上の働きかけをしていって臨時財政対策債がですね廃止、縮減されるように努力していきたいと思っております。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 鈴木経営管理部長。
○経営管理部長(鈴木宙志君) 就職氷河期世代の職員採用についての再質問にお答えいたします。
今後人事委員会と調整しながら実践する方向で検討してまいりたいと考えております。以上であります。
○議長(鈴木利幸君) 池田健康福祉部長。
○健康福祉部長(池田和久君) 発達障害のある方への支援についての再質問についてお答えいたします。
現在市町職員に対しましては、発達障害者支援センターでですね職員を派遣しまして講師として派遣しているところでございます。今後令和二年からは職員も増員いたしまして市町により身近な場所に発達障害者支援センターが存在する形になりますのでこの取り組みをより積極的に行うことを通じまして市町における専門的な知識の向上を図ってまいりたいと考えております。
また、市町によりましてやはり発達障害者に対する知識が濃淡がございましたのでそういった濃淡に応じた研修なんかもちょっと考えていきたいと考えております。以上でございます。
○議長(鈴木利幸君) 小嶋警察本部長。
○警察本部長(小嶋典明君) LED灯器の整備についてお答えいたします。
議員御指摘のとおり、LED灯器につきましてはランニングコストが安いなどのメリットがあるので県警察といたしましてもなるべく早く整備を進めていきたいと考えております。ただ当県の場合は信号灯器の数が多く一遍に整備するとなると約八十億円程度かかる見込みとなっております。このため段階的に着実に整備を進めてまいりたいと考えております。
○議長(鈴木利幸君) これで蓮池章平君の質問は終わりました。(拍手)
議事の都合により休憩します。
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