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ホーム > 静岡県議会 > 本会議会議録 > 質問文書

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本会議会議録

質問文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用



平成27年12月静岡県議会定例会 質問


質問者:

前林 孝一良 議員

質問分類

代表質問

質問日:

12/07/2015

会派名:

公明党静岡県議団


質疑・質問事項:

1 知事の時代認識について                     
2 平成二十八年度当初予算編成について               
3 財政健全化への取り組みについて                 
4 内陸のフロンティアを拓く取り組みについて            
5 県営住宅の現状と課題について                  
6 県立大学における国際交流機能の充実について           
7 健康福祉行政について                      
 (1) さらなる子育て支援策の推進                  
 (2) 児童相談所機能の強化                     
8 耕作放棄地対策について                     
9 ふじのくにCNFプロジェクトの推進について           
10 世界で最も美しい湾クラブへの加盟について            
11 津波避難手段の空白地域解消について               
12 県立静岡がんセンターにおける患者・家族の視点を重視した医療の充実について                       
13 高等学校における道徳教育の推進について            
14 交通死亡事故防止策の強化について     


○議長(吉川雄二君) ただいまから会議を開きます。
 議事日程により、知事提出議案第百三十九号から第百七十二号までを一括して議題とします。
 質疑及び一般質問を行います。
 通告により、七十一番 前林孝一良君。
        (七十一番 前林孝一良君登壇 拍手)
○七十一番(前林孝一良君) 皆さんおはようございます。私は公明党県議団を代表して県政の直面する諸課題について、知事及び関係部局長並びにがんセンター局長、教育長、警察本部長に対し質問をいたします。県民の目線で質問いたしますので県民にわかりやすい明確な答弁をお願いいたします。
 質問に先立ち、十一月十三日金曜日にフランス・パリで発生したテロで犠牲になられた百三十人の方々に心から哀悼の意を表するとともに、負傷された方や御家族に心からお見舞いを申し上げます。何の罪もない市民を標的としたテロは、どんな言い分があるにせよ許される行為ではありません。あの忌まわしい九・一一を初めとしたテロ行為が世界各地で相次いで起こることに対し、憤りを感じるものであります。我が国も対岸の火事で済ましてはなりません。平和を愛する国家としてテロを許さないという断固たる態度を示すとともに、我が国の安全対策にも万全を期すべきであると考えます。改めて犠牲になられた方々の御冥福を祈らせていただきます。
 最初に、知事の時代認識、具体的にはふじのくにの人づくりについて質問をいたします。
 一八六七年――慶応三年、第十五代将軍徳川慶喜は大政奉還を決意し、幕府は消滅いたしました。この結果、徳川宗家は駿河、遠江、三河を中心とした約七十万石の大名に格下げされました。旧幕時代と比較して財政力、軍事力を奪われた徳川家が真っ先に取り組んだのが人によるお家再興策でした。
 明治と改元した一八六八年十月、駿府藩は人材育成の拠点として現在の県庁西館に隣接する合同庁舎がある場所に学問所を設立いたしました。旧幕府に仕えた優秀な学者や欧州に留学経験のある若手、例えば中村正直たちが指導に当たりました。武士階級だけでなく庶民にも門戸を開き、ピーク時には全国から千五百人を超える学生が集まったということです。
 一八七二年――明治四年の廃藩置県により藩そのものがなくなり、藩主徳川家達が東京に移転し求心力が失われたこと、次いで翌年に新政府が地方学校廃止の布達を発したことにより学問所は事実上閉鎖に追い込まれました。残念な結果とはなりましたが、明治維新当初の四年間、静岡は日本の文化、学問をリードする人材育成の拠点であったことは間違いありません。日本の文明開化の先駆けの役割を果たしたのが静岡であったと言っても過言ではありません。現在静岡市、浜松市を中心として徳川家康公逝去四百年を記念して顕彰事業が行われています。私は今川文化、大御所文化に次いで三回目の光り輝く時代であった明治初期の静岡も、また顕彰されるべきであろうと考えます。
 ことし八月に国立青少年教育振興機構が公表した日本、アメリカ、中国、韓国四カ国の高校生の意識を比較した資料「高校生の生活と意識に関する調査報告書」を教育委員会からいただきました。自分をだめな人間だと思うことがあるという質問に対して、アメリカは四五・一%、中国五六・四%、韓国三五・二%に対し日本は七一%と断トツの高さでした。また将来に対しはっきりした目標を持っているとの質問に対しては、アメリカ八〇・九%、中国七五・四%に対し日本は韓国の五八・九%と同水準の五七・三%でした。日本の未来を担う青少年には高い理想を持ってほしいと思います。
 先ほど紹介した静岡学問所で、中村正直は英国のサミュエル・スマイルズの著書「セルフ・ヘルプ」を翻訳し「西国立志編」を発刊、静岡発のこの一冊の本がベストセラーとして国中に広がり、当時の青年たちに夢と希望を与えました。一般論として人材の育成は重要ですが、今必要なのはリーダーです。記憶力とテクニックにたけた受験エリートではなく、苦難を乗り越える力、忍耐力、協調性などを備えたたくましい人材、これからの社会をリードする力のある人材を育て上げなければなりません。
 国づくりは人づくりからです。歴史を振り返り再び静岡の地から有為な若者を多く輩出するべきではないかと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、平成二十八年度当初予算編成についてお聞きします。
 昨今の県内の景気動向は、去る十月二十八日に東海財務局静岡財務事務所が発表した県内経済情勢によれば、一部に弱さが見られるものの総じて見れば緩やかに回復しつつあると、前回七月の判断を据え置いているものの生産での弱目の動きと海外経済の動向に注意する必要があり景気回復は道半ばといった状況にあります。本県を取り巻く厳しい財政環境の中にあっては効果的、効率的な予算編成をしなくてはならないことは言うまでもありません。一方で県民が豊かな人生を実感できるためには、総合計画後期アクションプランに沿った県政運営を着実に推進する必要があります。
 将来の静岡県を考えたとき、今やるべきことはやはり地方創生であると考えます。経済、雇用、環境の整備はもちろん大切ですが、主役は何よりも人でなければなりません。県民が希望を感じながら生き生きと過ごすことができる魅力ある静岡県をつくること。言いかえれば人が生きる地方創生を実現しなければなりません。そのためには特に少子化対策や医療・介護の充実、中小企業支援、雇用の確保等、県民の生活に直結した施策をこれまで以上に充実強化していく必要があると私たち公明党県議団は考えます。
 これから年末年始にかけて、平成二十八年度の当初予算編成が進められていくことになりますが、どのような方針で予算編成を行っていくのか伺います。
 財政健全化への取り組みについて伺います。
 県におかれましては、厳しい財政状況に鑑み平成十二年度より積極的に財政健全化に取り組み、一定の成果を上げていることに対して評価をするものであります。
 通常債に限って見れば、残高は知事が就任された平成二十一年度末の一兆九千六百十億円から昨年度末には一兆七千百八十二億円と、約二千四百億円の縮減という成果を上げることができました。これも県が一丸となって歳出の削減に取り組み、また歳入確保への取り組みを強化した努力の結果であると考えます。
 ところが、臨時財政対策債が大幅にふえ続け、本年度末にはついに残高が一兆円を超える見込みとなりました。臨時財政対策債を含めた県債残高は本年度末の見込みで二兆七千四百四十二億円であり、臨財債は何とその約四割を占めるところにまで増大いたしました。
 私は、平成二十四年九月の代表質問でこの問題を取り上げ、県当局の姿勢をただしました。答弁に立ったのは当時の経営管理部長、現在の土屋副知事でありました。「地方交付税原資が不足しているという国と地方全体の問題であることから、地方交付税の法定率の引き上げを含めた抜本的な見直しとともに、発行額の縮減、償還財源の確保、配分方式の見直しについて国に引き続き粘り強く提案していく」との答弁でありました。臨財債を発行しなければ行政サービスが維持できないというジレンマの中ではありますが、この問題は県議会全ての議員が憂慮している問題であります。
 臨財債残高が一兆円を超えようとしているこのときに当たって、臨財債の縮減に向けた県のこれまでの努力について伺うとともに、改めて県の所見を伺うものであります。
 次に、内陸のフロンティアを拓く取り組みについて伺います。
 現在、地方では少子高齢化、若年層の人口流出、東京圏への一極集中が進む中、地方経済と大都市経済との格差が懸念されております。このためポスト東京時代を担うとともに人口減少社会を見据えた地方活性化が求められており、具体的な事業を本格的に推進し将来の危機を回避していかなければなりません。特に南海トラフ巨大地震の被害が想定される本県においては、平時の取り組みばかりでなく有事の視点を持ち、自然災害への備えが重要な課題となります。
 県では、昨年度から内陸のフロンティア推進区域制度により市町の防災・減災と地域成長を両立する地域づくりを後押ししております。これまでに推進区域は二十六市町五十三区域の指定が行われ、県内に着実な広がりが見られます。当初は新東名高速道路インターチェンジ周辺の工業団地の造成が目立ちましたが、徐々に自然や景観などを生かしたゆとりある暮らし空間を実現する住宅地整備などが計画され始めております。このように内陸のフロンティアを拓く取り組みは地域の特性を生かした事業を具体化していくものであります。この取り組みを進めることは県民の豊かな暮らしを実現することと認識しており、大いに期待しているところであります。
 今後、県は内陸のフロンティアを拓く取り組みをどのように推進していくのか伺います。
 次に、県営住宅の現状と課題について伺います。
 私が静岡市内の公団住宅に入居したのは昭和五十四年、二十五歳の時でした。三百世帯ほどの中規模の団地でしたが、友人が住んでいたこともあって気軽に応募し簡単に入居の運びとなりました。結局この団地には八年間お世話になりました。その間に長女が生まれ、長女は多くの同世代の子供とともに伸び伸びと育ちました。住宅難の中、子育て世代のために市内各地に公営住宅が誕生したのは一九六〇年代でした。二DKや三Kが主流で、まさに狭いながらも楽しい我が家を象徴するような住宅でしたが、団地には子供たちの声がとどろき活気のある空間でした。少子化、高齢化が進展する中、団地のありさまは大きく変貌しています。かつて私が住んでいた団地も例に漏れず、高齢化が進み若い世代、子供がいなくなる中で、隣接したスーパーマーケットも店をたたみ非常に寂しい地域となっております。時代の変遷の中で公営住宅の果たすべき役割を改めて問い直すときが来ていると考えます。
 公営住宅課からいただいた資料によれば、平成二十二年度の県営住宅入居者数三万四千二百七人のうち、高齢者は六千百十八人で高齢化率一七・九%であったものが、平成二十七年度には入居者二万九千七百八十八人のうち高齢者は七千四百七十七人に上り、高齢化率も二五・一%つまり四人に一人は高齢者となりました。もちろんこれは県営団地の平均であり、中には高齢化率六〇%を超える団地もあると伺っております。古い団地の多くはエレベーターなどがなく、階段の上り下り等日常の生活に不便を感じている高齢者の方々も多くいらっしゃると思われますし、場所によっては買い物にも困難が生じている団地の存在も予想されます。
 そこで質問ですが、県は県営住宅の現状をどのように認識されているのか。さらに高齢者が安心して暮らし続けることができるような県営住宅づくりをどのように進めていこうと考えているのか伺います。
 県立大学における国際交流機能の充実について伺います。
 「今までの自分は非常に狭い範囲の中でしか生きてこなかったことが初めてわかった」。これはフランスに留学したことのある一人の男子大学生の感想です。留学経験は語学を習得するという目的もありますが、異文化に触れることによりグローバルな価値観を持った人間づくりという点で重要です。特に若い世代にチャレンジしてもらいたいと考えます。
 日本人学生の留学者数は、平成十六年の約八万三千人をピークに減少しています。国立大学協会国際交流委員会が平成十九年に実施したアンケートによると、学生が留学をちゅうちょする理由として帰国後の留年の可能性、経済的問題、大学の派遣体制の不十分さ、周囲の理解のなさなどが挙げられていたということです。こうした現状を踏まえ、平成二十五年十月から留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」が開始されました。この事業は意欲と能力ある全ての日本の若者が海外留学を初めとして新しいチャレンジにみずから一歩を踏み出す機運を醸成することを目的としており、平成三十二年までに日本人の海外留学者数を倍増させるとしています。本年度からは高校生コースも新設され、第一期派遣留学生として三百三人が合格。本県からも七名の合格者が出ております。留学の機運を醸成するためには本人の意欲だけでは十分ではありません。留学を促すような環境が大切だと私は考えます。
 私が注目している大学があります。それは立命館アジア太平洋大学です。アジア太平洋の未来創造に貢献する有為の人材の養成と新たな学問の創造のためという目的を掲げ、平成十二年に開学しました。約八十カ国・地域から集まった五千六百人余の学生がキャンパス内で活動しています。さまざまな言語が飛び交う中で、毎日が異文化交流、異文化理解の連続というのが同大学のキャッチフレーズです。日本人学生は入学前にアメリカに短期留学があり、二、三年生で経験する本格的な留学では三十九カ国・地域で百十校という充実したプログラムが用意されております。またAPハウスと呼ばれる学生寮では約千三百人が生活しており、外国人学生は六八%、日本人学生は三二%を占めていますが、二人部屋は外国人学生と日本人学生が部屋をシェアしているということで、交流という観点では最高の環境が用意されています。大学が立地するのは別府市です。人口十二万余の同市に在住する留学生は昨年五月一日現在で三千二百九人、留学生比率は全国第一位です。先ほど述べた留学を促すような環境がここにはあると言えます。
 さて、我が静岡県立大学は静岡薬科大学、静岡女子大学、静岡女子短期大学の三大学が改組、統合されて昭和六十二年四月に開学しました。薬学部、食品栄養学部、国際関係学部、経営情報学部からのスタートで、中でも国際関係学部の存在は全国でも珍しく注目されました。
 開学から二十八年、グローバル化の進む中で求められるプログラムも変化してきていると思います。グローバル教育の草分けとも言うべき静岡県立大学における国際交流機能をさらに充実させるべきではないかと考えるものですが、当局のお考えを伺います。
 次に、健康福祉行政のうち、まずさらなる子育て支援策の推進について伺います。
 私ごとで恐縮ですが、末っ子が自立し子育てが完了して数年がたちました。三十数年間にわたる子育て期間を振り返ってみて思うことは、経済的負担が大きかったということです。ただこの数十年間で子育て環境が大きく変わったことも事実です。少子化対策に国、地方を挙げて真剣に取り組んだ結果、児童手当が創設され大きく拡充することで保護者の負担が軽減されました。乳幼児医療費助成という形で始まった制度もこども医療費助成という名称に進化し、入院費、通院費ともに十五歳まで助成が拡大しました。公明党が強く要望してきた出産一時金の拡充や妊婦健診の無料化も実現、子育て支援策が大きく前進しました。県当局におかれましてもさまざまな取り組みを進めてくださいましたことに対し、感謝申し上げる次第であります。
 切れ目のない子育て支援を進めるという観点から、どうしても乗り越えなければならない課題があります。それは幼稚園の授業料、保育所の保育料です。特に働きたいと考えているお母さんにとって保育料の負担は小さくありません。二〇〇二年の調査で子供を預けられる人がいると答えたお母さんは五七・一%でした。二〇一四年にはこの数字は二七・八%に半減しています。一方で待機児童問題は依然として解消しません。潜在的な待機児童は約三百万人に上るという試算もあるそうで日本の少子化対策はまだまだ十分とは言えません。サービス業、教育、介護産業など女性が得意なジャンルでは人手が足りていないというのに、働きたいお母さんたちは子供を預かってくれるところがないため働けない。このような矛盾は早く解消されなければなりません。
 デンマークの社会学者エスピン・アンデルセン博士は、女性の役割の変化こそが社会に革命をもたらすと主張しています。そのロジックはこうです。女性が働きやすく子供を産みやすい環境を整えれば出生率が上がる。出生率が上がれば世代間格差のバランスが改善される。女性が育児期間中も働けばその分税収がふえる。女性がキャリアを中断しないで働けばその分生涯所得も世帯所得も上昇する。共稼ぎ世帯の増加により新規産業と雇用が創出され経済が潤う。要するに保育施設を拡充すること、また育児休暇をとりやすい環境を整えること、さらに賃金の男女間格差をなくすことが少子化対策にとって重要な取り組みになるということです。ちなみに博士の言葉を知ることのできた資料は議会図書室で御紹介していただいたことを申し添えます。
 新聞報道によりますと、秋田県では二〇一六年度から第三子が生まれた場合に第二子以降の保育料を無料とする方針を決めたということです。子育て環境を充実することで出生率の向上につなげたいとの狙いで、他の都道府県に一歩先んじた事業に取り組むことになりました。県内では長泉町が独自の第三子以降の保育所の無料化に取り組んでいます。県として今後さらなる子育て支援策を推進するため、多子世帯に対する保育料の無料化にどのように取り組んでいくのか決意のほどを伺います。
 児童相談所機能の強化について質問いたします。
 先月は、児童虐待防止推進月間いわゆるオレンジリボン月間でした。平成十二年に児童虐待防止法が施行されて以降、相談件数は年々増加の一途をたどっており、昨年度全国では八万八千九百三十一件、静岡県では二千百三十二件と過去最高件数の相談が寄せられています。増加の理由として児童虐待に対する住民の意識が向上し認知件数が増加していることも一因とされていますが、一方では虐待そのものがふえているという可能性も指摘されており、その背景には親の孤立や経済的問題、産後鬱や望まない妊娠などさまざま挙げられております。
 先日、父親と十六歳の交際相手の少女が二歳の子供にたばこを無理やり吸わせ逮捕されるという事件が起こりました。あきれたことに父親はふざけて軽い気持ちでやったと虐待している認識すらないという事態に驚くばかりでした。県の調査では虐待を受けた子供の半数近くが就学前の乳幼児であり、主な虐待者の約六割が実の母親であり、実の父親を合わせると何と九割が実の両親によるものでした。近年は身体的虐待のほか心ない言動や無視、子供の面前でのDVなど心理的虐待も増加傾向にあります。また厚生労働省の調査では児童虐待死の八割は子供が三歳までのときに起きており、しかもその約半数はゼロ歳のときに起きていることが判明しました。
 こうした児童虐待に最前線で取り組んでいるのが児童相談所です。県内には政令市の二カ所を含む七カ所の児童相談所が存在しております。児童相談所に寄せられる相談の件数は五年間で倍増し、虐待に関しては警察等を経由して持ちかけられる深刻な相談もふえていると伺っております。虐待を受けた子供たちのケアや家族関係改善のアプローチは児童福祉司や心理士などの専門職の継続的なかかわりが求められ、非常に負担が大きいと言えます。
 先日、社会的養護が必要な子供の支援に当たっている里親の方の話を伺う機会がありました。子供の支援を行うに当たり、職員が多忙でなかなか十分な相談ができず里親の負担が非常に大きいとの話は実に深刻で、看過できない状況にあると実感いたしました。さらに児童相談所では虐待のほか障害に関する相談や判定、非行や不登校など幅広い相談に対応していることを考えると一層の充実が求められます。
 児童相談所機能を強化する必要があると考えますが、県の所見をお聞きいたします。
 次に、耕作放棄地対策について伺います。
 先般公表された二〇一五年農林業センサスの結果速報によれば、県下には一万二千八百六十九ヘクタールの耕作放棄地が存在し、平成二十二年から五年間で三百七十五ヘクタール増加しております。県は農業の根幹を崩しかねないこの耕作放棄地対策の課題に対して、これまで再生目標を設定し、平成二十六年末には二千六百ヘクタールの目標に対し二千六百十三ヘクタールの再生実績を上げて目標を達成するなど積極的に対策に取り組んできました。こうしたこともあり今回の耕作放棄地の増加率は全国が七%増加しているのに対し、本県では三%の増加にとどまりました。県の積極的な取り組みに対して一定の評価をするものであります。
 県下の市町でも、さまざまな解決策に取り組んでいることが報告されています。先日島田市南部の阪本地区の事例が新聞に報道されていました。同地区ではもともと水田だった土地二千八百平米を県外在住者が相続し、長く荒れ放題の状態だったそうです。島田市では六年前に三十人の農業委員さんが中心となって耕作放棄地対策に取り組み、水田に土を入れて畑地に変え一年かけて市民農園化。現在では畑は七十九区画に仕切られ多くの住民がナスやスイカ、ヤマイモなどを育てているそうです。島田市ではこの六年間で阪本地区を含めて約三十ヘクタールの農地を再生。市の農業委員会は特色ある耕作放棄地対策に取り組んだとして、本年度全国最高の農林水産大臣賞を受賞しています。
 さきに述べたように、県内の耕作放棄地は約一万二千九百ヘクタール。県農業振興課によると耕作放棄地は農地全体の約二割を占め、その半分ほどは農地としての再生は難しいとのことです。耕作放棄地対策は個人での取り組みが厳しい現況だけに、県や市町が主導して地権者にかわり対策に取り組むべきと考えます。県の御所見を伺います。
 ふじのくにCNFプロジェクトの推進について伺います。
 十月二十日に、県議会産業委員会の一員として広島県東広島市にある国立研究開発法人産業技術総合研究所中国センターを訪問しました。同センターはセルロースナノファイバー――CNFの日本における主要な研究拠点の一つであり、CNFの樹脂複合化による高性能材料やCNFの特性計測・評価支援技術の開発などに取り組んでおります。訪問した際は機能化学研究部門セルロース材料グループのグループ長遠藤貴士さんのプレゼンテーションを受けた後、施設見学をさせていただきました。今注目のCNFそのもの、さらに試作品を目の当たりにして胸がときめきました。CNFは鋼鉄の五倍の強度で軽さは五分の一、熱による変形が小さいなどのすぐれた特徴を有してさまざまな分野における用途開発につながるものと期待されております。そして何よりCNFは主に木材などの植物から得られる天然資源であることから、資源量が豊富で環境負荷の点からも他の産業素材にはない大きな利点があります。同センターを訪問し、ものづくり産業のさらなる充実強化を図っていくためにも産学官が一丸となりCNFの用途開発に全力を傾注すべきであるとの認識を新たにいたしました。
 県では、本年六月二十二日にふじのくにCNFフォーラムを設立し産学官によるCNFの用途開発を支援しております。具体的には富士工業技術支援センターを技術支援の窓口として位置づけ、地域企業からの相談対応やアドバイスの提供を行うとともに、全国の大学や研究機関とのネットワークを構築し先端情報の収集に努めております。一方で岡山県、愛媛県、京都府などにおいてもCNFに対する関心が非常に高く、地域企業が大学や研究機関との連携により紙、ゴム、自動車の内装材などの分野で新製品開発が進められていると伺っており、地域間の競争の激化が予想されます。
 本県がCNF産業をリードするような地域になるためには、地域の中小企業がCNFによる製品開発に参入できるよう地域企業に寄り添った支援を講じていくことが重要であると考えますが、今後の県の取り組みについて伺います。
 次に、世界で最も美しい湾クラブへの加盟について伺います。
 駿河湾は、伊豆半島の石廊崎と御前崎を結んだ線を湾口とし、その幅約五十六キロ、湾の奥行きは約六十キロメートルであり、湾口部の水深は二千五百メートルを超え湾奥部でも水深は一千メートルを超える日本で最も深い湾です。また駿河湾内には約一千種の魚類が生息しており、サクラエビ、タカアシガニなどを含めて水産資源の宝庫であります。そして何といっても世界遺産富士山を望むことのできることが最大の魅力です。この駿河湾の魅力を県内外そして海外に向けて積極的に発信していくべきと考えます。
 今定例会初日に、知事から来年二月にフィリピンのプエルトガレラで開催される総会において、世界で最も美しい湾クラブに加盟の意志を表明するとの発言がありました。富士山の世界遺産登録を契機に本年度の清水港へのクルーズ船の寄港は過去最高の十四回を予定されており、駿河湾の加盟申請はさらなる誘致促進に向け時機を得たものと受けとめております。
 世界で最も美しい湾クラブは、ユネスコの後援を受けたNGOですぐれた自然景観を保全しながら湾周辺地域の観光振興や地域経済の発展と共存を図ることを活動理念とし、加盟国が開催する海洋フォーラムの後援、世界遺産委員会へのオブザーバー参加などの活動をしております。現在フランスのモン・サン・ミシェル湾やベトナムのハロン湾、セネガルのサルーム・デルタなど世界遺産になっている七つの湾を初め、アメリカのサンフランシスコ湾や国内では松島湾、富山湾など、現在世界で二十五カ国三十八の湾が加盟しております。
 本クラブに加盟すると、主に観光において駿河湾の魅力を世界に向けて情報発信ができ、加盟している他県の湾との連携した取り組みもできます。世界的に知名度がアップすることで日本三大美港に入る清水港を中心に効果的なポートセールスの推進によるクルーズ船誘致が図られ、世界遺産富士山、日本ジオパーク認定の伊豆半島ジオパークとの相乗効果による交流人口の増加が期待できます。本クラブへの加盟に向け今後どのように取り組んでいくのか、県の考えを伺います。
 次に、津波避難手段の空白地域解消について伺います。
 静岡県地震・津波対策アクションプログラム二〇一三には、さまざまな対策を挙げ津波からいかに逃れるか、その手段と目標が掲げられています。
 まず行うべきは、防潮堤の整備により浸水域、浸水深を減少させ危険地帯を安全地帯に改善することです。そして同時進行で津波避難計画の策定やハザードマップの整備を行い、あわせて避難施設の確保計画を作成し、それぞれの事業の相関関係を検証し、そこで見えてくる課題を明確にし、計画に修正を加えさらに実効性のある確実な計画を作成することにより、沿岸で暮らす住民の方々がいざというときにそれぞれが避難行動を確実に起こせるように準備することが必要です。その上で住民は避難訓練に積極的に参加し、いざというときの備えを日常生活の中で行う必要があります。
 避難施設については、耐浪性の確保された安全な津波避難ビルや吉田町の先進事例に見られるような津波避難タワーの適切な配置、また命山としての整備や東名高速道路ののり面の活用、さらに逃げ切れないことが判明した避難施設の空白場所への津波避難シェルターや津波救命艇の個別配置等により、避難計画が実効性を発揮できるように避難場所、避難方法を確保する必要があると考えます。
 また、津波災害特別警戒区域――オレンジゾーン、津波災害警戒区域――イエローゾーンの指定が推進されることにより生じることが予想される県民の不安感の解消や、津波災害特別警戒区域内で生活している自力で避難が困難な方々やその区域にある百二十四の要配慮者利用施設を活用している方々の避難を確実に実施するために、市町による避難対策計画策定の進捗状況が問われることになります。
 ことし初めに、現状の対策計画の推進によって避難対象人数の避難が確保されるかを公明党県議団として調査いたしました。その結果二十一の対象市町のうち十二市町が対象地域の選定や建物の指定、避難場所の確保などの課題が多く、まだ不足しているとの回答を得ました。
 県が先導し、市町とも連携して具体的な安全策を確実に講じ、津波避難手段の空白地域を一日も早く解消すべきであると考えますが、県の所見を伺います。
 県立静岡がんセンターにおける患者・家族の視点を重視した医療の充実について伺います。
 今春、ダイヤモンド社から発刊された「ダイヤモンドQ」二〇一五年三月号にがんに強い病院ランキング五〇〇が掲載されました。ここで私たち静岡県民が誇る静岡がんセンターが、がん研有明病院に次いで全国第二位に挙げられました。
 対象は、全国千八百三病院。患者数、手術数、病床に対する専門医の割合そして医療体制の四つの指標で評価を行っています。合計得点百点満点に対してがん研有明病院は九十八・九点の高得点、静岡がんセンターは九十・九点でした。患者数と手術数で少々差がつきましたが、静岡がんセンターは文字どおり全国最高水準の病院という勲章を授かりました。
 平成十四年の開院以来、十四年目を迎えているがんセンターですが、三年前の平成二十四年にがんよろず相談の取り組みに対して日本対がん協会から特別賞朝日がん大賞を受賞したことに象徴されるように、早期がんからみとりまで患者に寄り添う理想の病院づくりを追求してきたことが評価されました。並みいる首都圏の大病院を抑え堂々の第二位にランクされたことに対し県民として誇りに感じるとともに、今度は世界の静岡がんセンターを目指してがん医療に取り組んでいただきたいと期待する次第であります。
 高齢化のさらなる進展、高齢者単独世帯の増加など今後さらにがん患者が増加また多様化する中で、患者志向型病院として患者・御家族の状況に配慮した医療をさらに進めていただきたいと思うものでありますが、がんセンターにおける医療充実の今後の取り組みについて伺います。
 次に、高等学校における道徳教育の推進について、教育長に伺います。
 私は、昭和四十四年に高等学校に入学し、昭和四十七年三月に卒業いたしました。当時は社会科として一年次は地理、二年次は世界史と倫理社会、三年次は日本史と政治経済の五科目を学びました。二年次に履修した倫理社会は古今東西の思想、哲学、宗教を学ぶ科目で、非常に奥の深い世界をさらっとなでる程度に勉強いたしました。夏休みにはテーマを自由に選択しレポートを提出しました。私はプラトンを選び一冊だけ著作を読みましたが、高校二年生の私にはちんぷんかんぷんだったことしか覚えていません。
 その後、受験競争が激しくなる中で大学受験に合わせて高校のカリキュラムも変化いたしました。現在社会科は公民科と地歴科に分かれ、それぞれ選択科目となりました。静岡市内のある進学校のカリキュラムを調べたところ、公民科では一年次に現代社会を必修科目として履修、政治経済の履修はなく、道徳にかかわる倫理は三年次文系のみが履修していました。選挙権が十八歳に引き下げられ、高校生が有権者として認められる時代が来ました。社会人としての資質に欠ける若者がふえたとの大人の嘆きの声も相変わらず聞こえてきます。指導要領に沿ったカリキュラムということで何の問題もないということなのでしょうが、広く浅く学んだ私たちの時代と選択制がありながら学ぶ科目を決められてしまう現代とどちらが正しいあり方でしょうか。
 八月二十一日、公明党県議団として岡山県備前市にある岡山県立青少年教育センター閑谷学校を訪問しました。御存じの方も多いと思いますが、閑谷学校は一六七〇年に岡山藩主池田光政公が設立した郷学、つまり藩士の子弟のための学校――藩校ではなく庶民のため、さらには地方のリーダーを育てるための学校です。以来江戸時代、明治、大正、昭和を経て現在にまで三百四十年間にわたってその精神が受け継がれています。昭和四十年に県立高校としての使命を果たし終え、現在は青少年教育センターとして公益財団法人特別史跡旧閑谷学校保存会によって運営されています。屋内、屋外とさまざまな活動がありますが、メーンは国宝指定されている講堂で行われる講堂学習です。正装し板の間に正座して論語の朗誦が行われます。私たちが訪れたときは岡山大学の学生約五十人が研修を行っていました。広い講堂に響き渡る声が快く感じられました。私が求める人間教育の世界がそこにありました。
 大学受験の余波で、高校生が学ぶ科目はメジャーとマイナーに振り分けられました。しかし先ほど述べましたが私は二年次に学んだ倫理社会が無駄だったとは思いません。私は哲学の道は選びませんでしたが、大学で哲学を専攻した友人もおります。大学受験のための学習ではなく、全人教育のための学習の場が高等学校であってほしいと私は思います。有徳の人づくりとはそのような取り組みであると私は考えます。高等学校における道徳教育の推進について本県ではどのように取り組まれるのか、教育長の御所見を伺います。
 最後に、交通死亡事故防止策の強化について、警察本部長にお聞きいたします。
 静岡県警察本部におかれましては、県内の交通事故防止のために日夜御尽力いただいていることに対し、心より感謝申し上げます。
 さて、十月末現在の人身交通事故は二万六千六百七十一件と前年を六百十六件下回りました。負傷者は三万四千九百九十三人と前年から六百二十一人減少しましたが、死者数は百二十六人で十八人増加しております。また最大の課題である高齢者事故の死者は六十八人で、残念なことに十七人上回り全死者の五四%を占め、憂慮される事態となりました。これから年末を迎え事故の多発するシーズンとなりますが、一件でも事故が減り一人でも死者、負傷者が減るように県警を挙げて取り締まり、そして事故防止を喚起するような取り組みを進めていただきたいと思います。
 さて、乳幼児を自動車に乗車させるときにチャイルドシートを着用する義務が運転者に課せられるようになったのは、平成十二年四月のことでした。背景には平成六年から十年の五年間でチャイルドシート非着用で死亡した子供が全国で六十三人、重傷を負った子供が五百二十人に上ったことがあります。試算ではもしチャイルドシートをしていれば命が助かった子供は四十九人、重傷を負わずに済んだ子供は三百十五人という数字が出されています。
 それから十五年たちました。警察庁と日本自動車連盟――JAFが発表したチャイルドシートの着用状況についての報告を知って驚きました。平均の着用率は六二・七%、三人に一人が着用していないという実態です。シートベルトの着用率が一般道路で運転手九八・四%、助手席九四・六%ですから、チャイルドシートの着用率がいかに低いかがわかります。一方、一歳未満が八五・二%、一歳から四歳が六四・四%、五歳児に至っては三八・一%の着用率ということで、年齢が上がるにつれて子供の命を守るはずのチャイルドシートが活用されていない状況を知ってショックでした。
 本県の状況を教えていただきましたが、事故を起こした車両の着用状況は一月から十月で八三・六%ということでした。幸いチャイルドシート非着用で死亡した子供は本年度はゼロということですが、過去をさかのぼれば十年間で七人の子供が命を落としています。くどいようですが大事な子供の命です。厳しく取り締まるということではなく、命を守るという観点で着用率の向上を図る取り組みが大切ではないかと私は考えます。
 県下の交通死亡事故防止策について、警察本部長の所見を伺います。以上、答弁を求めます。(拍手)
○議長(吉川雄二君) 川勝知事。
       (知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 前林議員にお答えいたします。
 私の、人づくりにかかわる時代認識についてであります。
 江戸幕府から明治時代に引き継がれる折に、大政を第十五代将軍徳川慶喜公が奉還されて、そして幕臣であった勝海舟、山岡鉄舟などが中心になって日本の新しい近代革命を無血で行うことができたというのは、世界に誇るべき歴史的事件であったというふうに思います。そして軍事力、財政力をそがれた徳川の遺臣たちがこれからの時代は人材力であるということで、この地に慶応四年、言いかえると明治元年の秋にここに学問所をおつくりになった。そしてまた沼津にも江原素六先生が学問所をおつくりになられました。私はここに日本の、日本人のすぐれた資質が集約的にあらわれているというふうに思う次第でございます。
 その当時の日本人の知識人、言いかえると武士階級でございますけれども、その基本的認識というのは一番根本には武士道、当時は士道と言われておりましたけれども、それがあると。これは山鹿素行以来ですから十七世紀の末から共通の認識だったわけですけれども、幕末にこれからの時代は富国、強兵、士道、この三つの原則を持たねばならないと。これは当時の武士階級の共通の認識として広く受け入れられた横井小楠の国是三論というものでございますけれども、ただに徳川幕府が軍事力、財政力がないと、なくなったというのにとどまらずに日本全体が軍事力を支える経済力に事欠いておりました。そうした中で日本は今日に至るまで戦前期には世界三大列強すなわち軍事大国になり、戦後は経済大国になり経済力も増したわけでございます。
 そうした中で、常に問われるのが人材力。すなわち武士道ないし士道と言われた、士としてつまり立派な人間として生きる道をどういうふうにするかということでございますが、そこには学問を置いてきたというように捉えることができます。先生は今川文化それから大御所文化というふうに捉えられましたけれども、私はこの今川文化から大御所文化への転換期におきまして新しい時代を開くと。すなわち今川文化というのは基本的に京都の公家文化であるというふうに存じますけれども、この仏教を中心にした学問から、大御所の文化というのは仏教を従来の神道とは神仏習合として既に融合しておりましたので、それに儒学を加えたというところに画期があったと思います。いわば神仏習合に加えて神仏儒を融合したと。すなわち神道か仏教学か、あるいは新しい学問である儒学かという、あれかこれかということではなくて、あれもこれもだということで、それらを和したところに大きな特徴があったということだと思います。そして新しい学問である儒学を江戸幕府が率先をして皆に学ばせたということがあると思うわけです。
 そうした中で、日本には新しい学問である、幕末には国学というのが興ってきましたけれども、新しい日本の将来を開くにはこれらの従来の学問だけではだめだという、そこで学問所において洋学を率先して取り入れたというところに先見の明というか、それがあったと思います。
 もう既に、明治元年には五箇条の御誓文が出ておりますけれども、第四条には「旧来の陋習を破り、天地の公道に基くべし」とあり、締めの第五条は「智識を世界に求め、大に皇基を振起すべし」というふうにあります。すなわち旧来の陋習によっていてはだめで知識を世界に求めろと。その知識を求められる世界というのは明らかに洋学でございました。そしてこの洋学を沼津においても、この静岡においても教えたということが私は画期的なことであったというふうに思うわけです。これなくしては日本の独立は果たせないという時代認識があったからではないかというふうに思うわけでございます。
 そして、明治の四年に今で言う文部科学大臣になった江藤新平は、これからの時代は漢学、国学もさることながら洋学一辺倒でやるべしというそういう決意を立て、学制をしいてそしてこの徳川幕府の遺臣たちがつくり上げた徳川の学問所。これが国の全体の学問の体制に引き継がれたというふうに言えるのではないかというふうに思います。
 その背景にあるのは、有名なやっぱり福沢諭吉の「学問のすゝめ」というのがこの学制が発布される同じ年の一月に第一編が出ておりますけれども、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」というふうに始まりまして四民平等であると。人が独立していないと国の独立が危うい、国の独立の基礎は一身の独立にあり、一身の独立の基礎はこれ学問にあると。その学問はこれからは国学や儒学ではなく洋学によるべしと。これを彼は実学というふうに言いました。私はこの大転換点。今、福沢諭吉先生が一万円札に刷せられておりますけれども、この日本の世界にも通用する通貨の顔は何かというのは学問、教育立国の顔であるというふうに言ってよろしいんじゃないかと思います。
 きょう今日、大村先生と梶田先生がノーベル賞を受賞されるためにスウェーデンに旅立たれました。昨年には本県御出身の天野浩先生。また天野先生の先生であられる赤崎先生、さらに中村修二先生とともにノーベル賞を受賞されました。二十一世紀になりまして日本における洋学における受賞者はイギリスを超え、ドイツを超え、フランスを超え、アメリカに次いで世界第二位であります。ここに至って私は日本の学問は明治時代に洋学を導入するという高い志をついに実現し、いわば雲の上に出たというふうに言えるのではないかと思うのであります。こうした中にあって洋学を取り入れるということでつくり上げられてきた東京の時代というものに対して、新しい時代を開かねばならないということであります。
 そうした中で、私どもは軍事大国になるべきか。これは二十世紀の世界の二つの大戦を経験しました今、我々は人をあやめ、あるいは生活を破壊し環境を破壊する軍事大国はこれは求めるものではないと。しかしながら世界に貧困は多くございますので、また貧困が軍事衝突の原因になっておりますので貧困は克服せねばならない。その貧困を克服し富をつくる。その富をつくるものは誰かと。それは立派な人間であるべきであると。それが富士という字にあらわれているのではないかと思います。「富士」という字の上には「富」を、その富を支える立派な人間という意味での「士」というのが富士という日本の宝であり、かつ今や世界の宝になった山の固有名詞であります。ですから私は富を支える人間をつくるということが大切であると。そして世界の貧困を救うようなそういう人間をつくるべきであるというふうに思うわけであります。
 人の役に立つ、社会の役に立つ人のことを人は徳のある人と言います。徳は孤ならずというふうに先ほど先生の閑谷学校における論語の講読の中における一節を引用されましたけれども、まことに徳は人に慕われるものでありますから孤独ではないということで、立派な人となられますとその人を慕って多くの人が来られると。そういう人が実は根本にあって財が生まれ、財は用をなすと。徳がもとで財は末であります。そういう私は人をつくらねばならないというふうに考えているわけでございます。
 その意味におきまして、我々は富士山が世界文化遺産になったことを踏まえまして、ふじのくにづくり。富士の字義をよく踏まえて世界の宝である富士山にふさわしいような人間にお互いに切磋琢磨してなっていこうではないかと。それが今私がふじのくにづくりに対して期待し、またお互いに一緒にやっていこうと呼びかけている、そういう姿勢でございます。まさに学校だけでなくて家庭、職場、地域が連携し地域総ぐるみ、社会総がかりで本県の将来世代のために未来をつくり、世界で活躍する人材の育成に邁進してまいりたいと考えております。
 次に、平成二十八年度当初予算編成についてであります。
 平成二十八年度は、富国有徳の理想郷“ふじのくに”づくりの総仕上げに向けた年になりますことから、後期アクションプランの目標を前倒しして作成するため総力を挙げて取り組んでまいります。
 具体的には、全てに優先される危機管理の強化に取り組むことであります。県民の命を守り日本一安全・安心な県であるということをしっかりPRするとともに、それを支える県土づくりを進め地震・津波対策を講じまして県民や企業等の不安の解消を講じてまいります。
 また、県民お一人お一人にきめ細かく寄り添った施策の推進が大変重要であります。何といいましても人づくりであります。人づくりの一番の基礎は、私は生まれたての赤ちゃんであると。その昔、「銀も金も玉も何せむに優れる宝子にしかめやも」と子を宝物に例えました。そして明治の八年にお茶の水女子大学と今日言われている大学において美子皇后陛下、後の昭憲皇太后でございますけれども、「磨かずば玉も鏡もなにかせむ学びの道もかくこそありけれ」というふうに言われました。玉は磨かねばならないと。単に子供が宝と言っているだけではだめであるということでございます。玉を磨くということほど大切な仕事はないということから、子育ては命をつなぐ、幸せな愛を育むとうとい仕事というこの歌から、子育てはとうとい仕事だというそういう理念を立てているわけでございまして、社会全体で子育てを応援する取り組みを最重要とし、そして若者や女性、障害のある人など誰もが就労できる魅力ある雇用の場の創出、健康寿命日本一である、これもまた不死、長寿、この意味合いのある富士山からとられた、その実態を健康寿命世界一ということであらわしこれを延伸させるということで、高齢者の方々が元気に活躍できる環境の整備など、人を中心に予算に取り組んでまいりたいと思っております。
 さらに、本県の経済回復に向けた動きをさらに確実なものとするため、成長を牽引する新たな産業の創出など多極的な産業構造への転換を進めるとともに、それを支える高いスキルを持った産業人材の育成などにもこれまで以上に力を入れてまいります。
 本年度当初予算編成に当たりましては、本県の場の力を最大限に生かし、県民の皆様が誇りと希望を持って安心して生き生きと暮らすことができる社会の実現に向け、強い決意を持って取り組んでまいります。
 次に、内陸のフロンティアを拓く取り組みについてであります。
 防災・減災と地域成長の両立を目指す内陸のフロンティアを拓く取り組みに関しましては、昨年度、推進区域制度を創設いたしました。それによる重点的な支援等によって次第に沿岸都市部での新しい産業の創出や新たなライフスタイルの実現を目指す取り組みもふえ、これまでに二十六市町五十三推進区域にまで広がってまいりました。
 内陸のフロンティアというのは、言葉がやや足らずところがございまして、沿岸都市部の安全を確保するためにリノベーション――リノベートすると。そして内陸高台部は中山間地で今まで取り残されてきた感がありますので、そこをフロンティアと捉えると。それで両者を連携させる。内陸におきましては中山間地域で自然が豊かでございますから新しいライフスタイルというものを提供できると。こうしたものを含んだものを内陸のフロンティアを拓く取り組みというふうに称しているわけですが、こうした理念に即した取り組みがふえてきたことと喜んでおります。
 今後は、この取り組みのまだ始まっていない残り九市町に対しまして、内陸フロンティア多様化モデルとしてスタートした伊豆市の文教ガーデンシティの形成あるいは河津町の子育て文化コミュニティづくりの取り組みなど、こうしたところから得られた構想の企画立案あるいは官民連携の手法等々ノウハウを御提供申し上げてきめ細かく助言や提案を行いながら、全県下三十五市町で取り組みが始まるように支援してまいります。
 また、庁内の関係部局が連携した土地利用調整等の迅速化や企業の事業参入を促進するマッチングセミナーの開催、企業誘致に向けた県外での情報発信の強化などによりまして、推進区域の取り組みの早期具体化を図ってまいります。
 今後とも、市町や内陸フロンティア推進コンソーシアムと連携いたしまして、県内全域におきまして地域資源を活用した新しい産業の創出と並びに集積、豊かな暮らし空間の創造等に取り組み、安全・安心で魅力あるふじのくにの実現に邁進してまいります。
 次に、県立大学における国際交流機能の充実についてであります。
 グローバル化の進展に伴いまして社会情勢が大きく変化する中、大学など高等教育機関には豊かな知性と感性を兼ね備え、国際的な視野を持って社会の諸課題を解決する能力を有した人材の育成が求められております。
 県立大学では、中期計画に基づいて学内に設置した国際交流委員会が中心となり、海外の十六カ国三十一大学と既に協定を締結しておりまして、学生、教員の相互交流を進めるとともに、世界への教育研究成果の積極的な発信やグローバル人材の育成に努めているところであります。
 こうした結果、本年五月現在で海外の十一カ国から百五人の留学生が在籍する一方、昨年度から新たに学生向けの交換留学フェアを開催し、留学先の大学や生活に関する情報の提供などを行っていることもございまして、本年度は十一月末までに七十五人の学生さんが海外の大学等に留学することになりました。
 今後は、本年四月に示された慶應義塾大学名誉教授の薬師寺泰蔵先生を座長とする県立大学のあり方懇談会からの御意見等も踏まえつつ、英語力の強化や国際社会における日本の理解促進、教養教育の重視などの視点から教育研究内容の見直しを検討していくほか、全学部を挙げて外国人教員の登用や外国語による授業の充実、留学生に対する支援の強化などグローバルな教育環境の整備を図ってまいります。
 しかし、これらは四十七都道府県でほとんど同じようなことをしているわけでございます。そうした中で先生が御紹介なさいました別府にございます立命館APU――アジア・パシフィック・ユニバーシティーというのは、これは秋田県のAIU――アキタ・インターナショナル・ユニバーシティーとともに、画期的な二十一世紀における大学のあり方を示しているというふうに存じます。
 当初、この大学の敷地内にあるいわゆる宿舎には各フロアに一人しか日本人学生がいなかったんですが、そのことの重要性をすぐにお気づきになられて、今、先生がおっしゃったように三二%が日本人、そして六八%が外国人と。これは外国人はさまざまな国からお越しになっておられますので共通語があっという間に日本語になるということで、そしてまた彼らは親日的な思いを持って来ておりますので日本語がマスターできるということは彼らにとっては大変な喜びであり誇りであるということで、こういう試みこそが重要で、留学生会館を建ててそして留学生を隔離するということは、もうしてはならないんですね。学生さんはもう国籍や宗教や肌の色にかかわりなく同じく勉強する仲間だということで、差別というか区別をしないでそして海外から来た人は住まいが一番大きな問題でございます。また県外からお越しになる方もそうでございますから、一年生あるいは海外の学生などを優先的に一緒に住まわせ、なるべく大学に近いところ、交通費がかかりませんのでそうしたところに住まいを提供するというやり方が大切だと思います。これはAPUから学ぶべきことかと。
 私自身は、初代の学長だった坂本先生とは非常に親しくしておりましたし、当時のこれをつくられた平松大分県知事とも懇意にしておりましたので、何度もこの大学を訪れてこうした大学のあり方こそこれからの大学の未来を示すということでございまして、その点について御指摘いただいたのは大変心強い限りで、御一緒にやってまいりましょう。
 たまたまこの県立大学については、現在の教育長の木苗先生が学長をお務めになり、また薬学の権威であります。この静岡県立大学の薬学部、これは大正五年に岩崎先生によって静岡女子薬学校として創立されましたので、ちょうど来年百周年を迎えます、変遷があって今薬学部になったわけですが。ですからこの薬学部の変遷を見てみますと、一昨年には薬食研究推進センターが設置され、昨年には何と文科省から地(知)の拠点整備事業、大学COC事業に採択され目覚ましい業績を上げられております。これは木苗先生の御功績によるもので、しかも同窓生はもう既に現会員だけで六千人を超えているということでございますから、来年度は華々しく、薬学というのは人の役に立つ。しかも人種や宗教を超えて人の体は神から与えられて平等でございます。そうしたものに役立つものでありますので、国際的なシンポジウムなどを木苗先生と協力しながら県立大学で大きな祭典をして、国際化への出発点にもしたいというふうに考えている次第であります。
 県といたしましては、県立大学が国際交流の強化など教育研究内容の一層の充実に取り組み、グローバル化社会で活躍できる人材を育成する魅力ある大学となるように努めてまいります。
 次に、世界で最も美しい湾クラブへの加盟についてであります。
 本県では、場の力を磨き高めることで国内外から憧れを呼ぶ地域づくりを進めておりますが、富士山や韮山反射炉などの世界遺産登録に引き続き、駿河湾のすばらしさを世界中にアピールすることによりまして交流人口の増大につなげることを目的に、世界で最も美しい湾クラブへの加盟を目指しております。これまでに世界で最も美しい湾クラブの本部に対して駿河湾の自然環境、文化、産業、保全活動を紹介するレポートを送付して駿河湾の魅力を伝えるとともに、駿河湾沿岸十一市町に御協力を要請し、市町と一体となって加盟に向けた機運の醸成に努めております。
 今後は、来年二月にフィリピンで開催される総会でのプレゼンテーションには私みずからが行う決意を固めております。その後予定される本部審査委員の現地視察を通じまして変化に富む海岸線や沿岸地域の多様な文化、三保松原や相良沖藻場などの保全活動、豊富な地域資源を活用した水産業、観光業などの経済活動についてより一層の国際的理解を深めていただき、加盟を確実なものとしてまいります。
 私どもとしましては、世界で最も美しい湾クラブ加盟を契機に官民一体となって魅力ある駿河湾を未来に継承するとともに、駿河湾のブランド力に一層磨きをかけ、富士山や三保松原、伊豆西海岸など世界に誇る数多くの資源を組み合わせていくことで新たな人や物の流れをつくり出し、地域の活性化につなげてまいります。
 なお、その他の御質問につきましては、関係部局長、教育長から御答弁を申し上げます。
○議長(吉川雄二君) 伊藤経営管理部長。
       (経営管理部長 伊藤篤志君登壇)
○経営管理部長(伊藤篤志君) 財政健全化への取り組みについてお答えいたします。
 臨時財政対策債は、国の厳しい財政状況の中で地方交付税の身がわりとして平成十三年度から十五年度までの三カ年の臨時的措置として導入された地方債であります。しかしながら地方交付税の原資の不足が解消されない中、制度開始から十五年が経過する現在まで制度は延長され、実態として恒常化されております。また過去に発行した臨時財政対策債の償還財源に充当するため新たに臨時財政対策債を発行していることも大きな課題であると認識しております。
 臨時財政対策債は、あくまで時限的な措置であり速やかに本来の地方交付税が配分される仕組みに復元するべきものであると考えております。このためこれまで国に対して臨時財政対策債の廃止や償還財源の確実な確保、財政力が高い団体への加重な配分方式の見直し、さらには地方交付税の法定率の引き上げを含めた地方財政対策の抜本的な見直しについて、全国知事会などを通じて強く求めてまいりました。この結果として今年度は地方税収の増加に伴い全国の発行総額が大幅に抑制される中で、道府県と市町村の配分シェアや財政力指数の高い自治体に対する傾斜配分の見直しなど一定程度の改善が図られたところであります。
 地方財政制度の今後の動向について、現時点で見通しを立てることは困難でありますが、県といたしましては国への制度見直し提案を継続するとともに、行財政改革に引き続き取り組み、将来世代に負担を押しつけることがないよう持続可能な財政運営を心がけてまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 池谷くらし・環境部長。
       (くらし・環境部長 池谷 廣君登壇)
○くらし・環境部長(池谷 廣君) 県営住宅の現状と課題についてお答えいたします。
 県営住宅百四十団地全体の入居者に占める六十五歳以上の方の割合は、平成二十七年四月一日現在二五・一%ですが、四〇%を超える団地が十五団地、五〇%を超える団地が四団地あるなど入居者の高齢化は施設の居住改善、団地コミュニティーの衰退や孤立死への対応などさまざまな課題を惹起しています。
 県では、これまでも建設時期が古い住戸の段差解消、エレベーターや手すりの設置、老朽化した団地の建てかえなどに努め、平成二十六年度末にはユニバーサルデザイン化率は四四・七%となりましたが、今後もこうしたUD化を計画的に着実に進めてまいります。
 一方、孤立しがちな高齢の入居者への対応としては、団地内の集会所を活用し地域包括支援センターなどと連携して生活相談や健康相談を実施するほか、団地役員が尽力し集会所でさまざまなイベントを行ったり、団地内の公園をグラウンドゴルフ場に利用しコミュニティーの活性化に努めている高齢化率第三位の熱海の七尾団地の取り組みなどを参考に、他の団地においてもこうした高齢者の居場所づくりに取り組んでまいります。
 さらに、孤立死対策として平成二十三年度から希望する高齢単身世帯を対象に、月二回の電話による安否確認や健康状態の把握を行う県営住宅入居者安心サービスを開始し、現在百三団地二百十七名の方に利用していただいております。
 今後も、こうした取り組みを強化するなどさまざま機関と連携協力しながら、高齢入居者ができる限り安心して暮らし続けることができるよう取り組んでまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 山口健康福祉部長。
       (健康福祉部長 山口重則君登壇)
○健康福祉部長(山口重則君) 健康福祉行政のうち、さらなる子育て支援策の推進についてお答えいたします。
 県民意識調査によりますと、子育てや教育にお金がかかり過ぎることが理想の子供数を持てない一番の理由であります。県ではこれまでに全市町の協力を得て、こども医療費助成の拡充や国の基準を下回る保育料の設定等により子育て世帯の経済的負担の軽減に取り組んでまいりました。第三子以降の保育料の無料化につきましては全国的な制度として取り組むべきと考え、本県では平成二十五年度から国に政策提言しております。
 こうした中、国では少子化社会対策大綱において保育料無料化の対象拡大を重点課題として盛り込み、来年度の予算編成過程において検討しております。引き続きその動きを注視し、国の取り組みに速やかに対応できるよう県の少子化対策推進委員会などにおいて調整してまいります。また第三子以降の保育料を無料としている長泉町や他県での取り組みについては、その助成方法や成果などを検証し、効果的な子育て支援策とするための検討をしております。
 二人から三人の子供を持ちたいという県民の希望をかなえるためには、子育ての経済的負担の軽減だけでなく子育てと仕事の両立の実現なども重要であります。県では経済団体とも連携して子育てしやすい職場環境づくりを企業等に直接働きかけるなど、安心して子供を産み育てながら働き続けることのできる子育て支援策についても積極的に推進してまいります。
 次に、児童相談所機能の強化についてであります。
 児童虐待は、子供の成長や人格形成に重大な影響を及ぼし時には命をも脅かすため、増加している虐待相談については適切に対処するだけでなく早期に発見し、より確実に支援することが必要であります。このため専門的相談援助機関として児童相談所の役割はますます重要となっております。県では虐待相談件数の急増に対応するため、職員の増員や新たに児童福祉司を補助する元警察官の採用を行ったほか、現場に赴く職員への指導や助言を行うスーパーバイザーも配置し多様で幅広い相談にも応じられるようにするなど、職員体制の充実と強化に努めております。
 児童虐待の早期発見と確実な支援を行うため、本年七月から児童相談所の全国共通ダイヤルを百八十九――一八九に三桁化し、通告や相談が手軽にそして迅速にできるようにすることで児童相談所を一層身近なものとするとともに、早期の対応ができるようにいたしました。また虐待により心を閉ざした子供や虐待をしてしまう保護者などにも適切な支援を行うことができるよう、児童精神科医による被虐待児等への医学的支援や保護者と児童福祉司が協力して子供の安全が守られるように取り組むなど、必要とされている児童相談所の役割を強化し、さまざまな相談や支援にきめ細かく対応できるよう努めております。
 今後とも、児童相談所の体制の充実や専門性の強化に取り組み、未来を担う全ての子供たちの命が守られ、健やかに成長できる「生んでよし 育ててよし」のふじのくにづくりを進めてまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 篠原経済産業部長。
       (経済産業部長 篠原清志君登壇)
○経済産業部長(篠原清志君) 耕作放棄地対策についてお答えいたします。
 先般公表された平成二十七年農林業センサスの速報によれば、本県の耕作放棄地は平成二十二年に比べ三百七十五ヘクタール増加しております。増加した耕作放棄地の主な要因は土地持ち非農家や茶園の耕作放棄地の増加などによるもので、特に土地持ち非農家は不在地主である場合が多く所有者による再生が困難な状況であります。
 このため、県は各市町の農業委員会に働きかけ、周辺の営農や環境に支障を来している不在地主の耕作放棄地を選定し、再生利用を図る取り組みをモデル的に進めております。現在十九市町の農業委員会が所有者の特定や利用意向の確認を行っているところであり、今後所有者が特定できない場合は農業委員会の意思決定を受け、農地法に基づく知事裁定により農地中間管理機構に利用権を設定し担い手への集積を図ってまいります。
 また、農業利用が困難な耕作放棄地のうち周辺の営農や景観等に支障を及ぼす土地については、地域の住民や農業者による景観作物の植栽や茶草場としての利用などの保全管理を進めてまいります。さらに現況が森林の様相を呈している土地については、農業委員会による非農地化の手続を促進してまいります。
 県といたしましては、農地は農業に利用するのが本来の姿であることから引き続き担い手による再生利用を支援するとともに、基盤整備の実施などできる限りの対策を講じ、耕作放棄地の再生と発生防止に努めてまいります。
 次に、ふじのくにCNFプロジェクトの推進についてであります。
 本県は、我が国のCNF――セルロースナノファイバー産業のメッカとなることを目指し、富士工業技術支援センターを中核的支援機関としてCNFに関する最新情報の収集、提供に努めるとともに、地域企業がCNFを生かした製品開発に積極的に取り組めるよう支援しております。また来年一月二十五日にはCNFサンプル展示会を開催し、全国のCNFを製造する企業と県内企業とのビジネスマッチングの機会を設けることとしております。
 さらに、CNFはパルプから派生する新素材であり、県内の紙・パルプ産業からも強い期待が寄せられていることから、平成二十八年度から三年間にわたりCNFによって鮮度保持の機能を画期的に向上させた食品包装材の開発を進めていくほか、塗料、接着剤やプラスチックなどについても大学や地域企業との連携の上、研究開発を進めていくこととしております。
 県といたしましては、地域企業のニーズを踏まえ国、大学、研究機関などとの連携を強化して、我が国の新産業をリードする地域となるよう目指してまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 外岡危機管理監。
       (危機管理監 外岡達朗君登壇)
○危機管理監(外岡達朗君) 津波避難手段の空白地域解消についてお答えいたします。
 県では、地震・津波対策アクションプログラム二〇一三に基づき、市町の津波避難計画の策定や津波避難ビルの指定、津波避難タワーや命山等の整備に対する支援を行うなど平成三十四年度までの津波避難施設空白地域の解消に努めているところであります。
 市町津波避難計画につきましては、沿岸二十一市町のうち十市町が策定済みであり、残りの十一市町につきましてもアクションプログラムの目標である今年度中には策定できるよう、津波避難計画のモデルを示すなど支援を行っております。
 また、東日本大震災以降、各市町におきましては津波避難施設の確保に積極的に努めており、本年四月一日現在津波避難ビルが千三百六カ所、津波避難タワーが八十五カ所、命山等が五十四カ所となったほか、吉田漁港や大井川港においては津波避難シェルターが配備されたところであります。
 県といたしましては、今後とも各市町と課題を共有し、津波避難施設等の整備に対し支援を行うなど津波避難手段の空白地域を解消するための具体策を講じてまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 石野がんセンター局長。
       (がんセンター局長 石野眞澄君登壇)
○がんセンター局長(石野眞澄君) 県立静岡がんセンターにおける患者・家族の視点を重視した医療の充実についてお答えいたします。
 高齢化の進展や医療技術の変化等に伴い、患者やその家族ががんに対して持つ悩みや負担は変化しており、これに適切に対応していくための一つの対策として、本年四月から患者家族支援センターの機能を充実いたしました。
 患者家族支援センターでは、高齢者の手術の際、入院前から多職種で栄養指導やリハビリテーションを行い退院後の在宅生活の相談にも応じる体制を整備するなど、患者と家族を初診から入院、在宅、みとりまでトータルにコーディネートし、安心して治療を受けていただくための支援を実施しているところであります。
 また、がんの種類によっては手術に匹敵する治療効果が得られ、がんによる痛みの症状緩和にも効果的で高齢がん患者には極めて有効な放射線治療につきましては、放射線治療と陽子線治療を一体的に運用する放射線・陽子線治療センターを整備し患者の病態に最も適した治療を提供するとともに、放射線と陽子線の連携照射による新たな治療法の開発などに努めてまいります。
 さらに、現在前立腺、胃、大腸などの手術を実施しております低侵襲な手術支援ロボットダビンチの治療では、呼吸器、婦人科領域への適応拡大も目指してまいります。
 このほか、がん治療の谷間となっている思春期、若年成人いわゆるAYA世代のための病棟整備と診療の充実、研究事業プロジェクトHOPEにより得られた遺伝情報を利用した個の医療の実現など、全国に先駆けた取り組みも実施しているところであります。
 静岡がんセンターといたしましては、このような取り組みを重ね、患者・家族の視点を重視した医療の充実に努めてまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 木苗教育長。
       (教育長 木苗直秀君登壇)
○教育長(木苗直秀君) 高等学校における道徳教育の推進についてお答えいたします。
 高等学校においては、義務教育のように道徳が教科となっていないことから、議員御指摘の倫理などの公民科目や論語の学習を道徳として捉えるなど、学校の教育活動全体を通して道徳教育を意識した配慮が必要であると考えております。
 このため、各高等学校に対しましては毎年度授業だけでなくボランティア活動や社会貢献活動などを含め、学校の特性や地域性を生かした道徳教育に関する全体計画を作成するよう指導しております。また規範意識向上のための地域の子ども連携研究事業において、県立高等学校三校を指定校とし挨拶運動や美化運動など、地域の小中学生と連携し道徳意識を向上させる取り組みを行っております。なお今年度は県立土肥高等学校、県立川根高等学校、県立遠江総合高等学校が近隣の小中学校と連携して社会活動等を行っております。
 さらに、来年の選挙権年齢の十八歳への引き下げに対応した主権者教育では、みずから住民として意思決定ができる自立した人間を目指して教育を進めるとともに、キャリア教育でも勤労観を醸成し社会人として生き抜く力を養成するなど、社会にかかわるさまざまな教育の中で教科・科目の枠を超えた実践的な人間教育を意識した取り組みを進めてまいります。
 今後とも、倫理を含めた授業はもちろんのこと、学校内外の活動や生活指導など高校生活のあらゆる場面を通して社会人としての資質を高める全人的な人間教育を推進してまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 西川警察本部長。
       (警察本部長 西川直哉君登壇)
○警察本部長(西川直哉君) 交通死亡事故防止策の強化についてお答えを申し上げます。
 県下の交通死亡事故のうち、平成二十四年以降全死者の半数以上を高齢者が占めている状況にあります。また高齢者免許人口の増加に伴いまして、高齢ドライバーを起因者とする交通死亡事故もまた増加傾向にございます。このような状況を踏まえ県警では平成二十六年から高齢者事故防止対策を推進重点に定め、高齢運転者対策及び高齢歩行者・高齢自転車利用者対策を柱といたします高齢者を守るふじさん運動を推進中であります。特に日没時間が早くなる秋口から年末にかけては夕暮れ時に高齢歩行者事故が多発することから、制服警察官やパトカーが県民の目に見えるような街頭活動や高齢者宅を訪問しての個別指導などによる交通死亡事故防止対策を推進しているところであります。
 一方、自動車に乗車する機会の多い子供を交通事故から守るために、チャイルドシートの使用は極めて有効であります。県警では交通指導取り締まりを通じましてチャイルドシートの使用を初めとした交通法規の遵守を呼びかけておるところでありますが、年代別のチャイルドシート使用義務違反の状況を見ますと二十代、三十代の子育て世代が多いわけではありますけれども、そのほか五十歳以上の中高年層も四分の一を占めておる状況にございます。これは中高年層の方々が孫を乗車させる際にチャイルドシートを使用していないと推認されることから、子育て世代から高齢者に至るまで、各種の講習を通じましてシートベルトやチャイルドシートの被害軽減効果を実感できる衝突実験の映像を活用した安全教育を実施するなどその有効性についての理解を深め、使用率の向上に努めているところでございます。
 今後も、自治体、関係機関・団体等と連携いたしまして総合的な交通事故防止対策を進めてまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 七十一番 前林孝一良君。
       (七十一番 前林孝一良君登壇)
○七十一番(前林孝一良君) それぞれに御答弁いただきましてありがとうございました。何点か再質問させていただきます。
 最初に、知事にお伺いしますけれども、県立大学における国際交流機能の充実について、かなり踏み込んだ御発言をいただきありがとうございました。さらに踏み込んで、ぜひ国際交流機能を備えた学生寮をつくるというところまで御発言いただけないかどうか再質問いたします。
 それから二番目ですけれども、健康福祉行政についてのうち、さらなる子育て支援策の推進について御答弁をいただきました。我が県の合計特殊出生率の目標は二・〇でございます。国が一・八ということで、さらにそれを上回る目標を設定しているわけで、そういう意味で今のままでいいんだろうかというのがこの質問の趣旨でございます。期待されていた答弁でございましたが、国に働きかけていくだけでこの目標が達成できるかどうか、ちょっとその辺が心配でございます。あえて決意のほどを伺ったということでございますので、さらなる部長の御答弁をお願いをしたいと思います。
 それから、教育長から御答弁をいただきましたが、私は倫理という科目はまさに道徳教育そのものだと思っております。そういう意味で倫理を履修する学校がもっとふえてもいいのではないかと。全てが履修しなくても結構ですけれども、倫理を履修したい学校に対する支援体制をしっかりつくっていただけないかと思うのでございます。私も倫理社会という教科を教えたことがございますけれども非常に教えにくい教科でございまして、そういう意味でやはり専門家がいるかいないかで、かなりこの倫理という科目が生きるか死ぬかという大きな問題だと私は思っております。改めてお答えいただきたいと思います。
○議長(吉川雄二君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 学生寮に関する再質問にお答えいたします。
 大学コンソーシアムというのがございまして、その拠点を東静岡に置くということでほぼ同意を得ております。それはその地域に県大、国立の静岡大学さらに東海大学の短大といったような大学があると。それとまた駅のすぐそばだということがございます。そこが一つの候補です。もう一つは埋蔵文化財センターでございます。ここは県大とすぐ近くでございますけれども、駐車場と埋蔵文化財センターとどちらの場所に建てるのがよいかなど教育長とお話をしているところでございますが、ともかく方向性としては県外からお越しになられる方、それからまた海外から来られる方。こうした方を優先にいたしまして、二年、三年になればむしろひとり立ちをするということで自分で宿舎を探されればいいと思いますけれども、基本的に内外の学生を区別しないで宿舎に不便を感ずる人がなるべく少なくなるように、一応二つの今の候補地を考えながら学生寮を整備していきたいという心づもりでおります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 山口健康福祉部長。
○健康福祉部長(山口重則君) 再質問についてお答えいたします。
 議員御指摘のとおり、うちの県は合計特殊出生率二・〇という非常に高い目標を持っております。これはまた非常に崇高な目標とも思っております。ですので議員御指摘のとおり国に働きかけるだけでなく地域の実情に応じた状況も十分踏まえ、さまざまな分野から、まさに出会いから子育てまでさまざまな分野において、県独自の施策等もしっかりまた積極的に推進していきます。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 木苗教育長。
○教育長(木苗直秀君) ただいま再質問をいただきましてありがとうございます。
 倫理あるいは道徳ということにつきましては、私も今の子供たち、特に家庭での虐待、いじめの問題それから不登校の問題。こういうことを考えますとやはり小さいときからそういうような教育はしっかりとやるべきだろうと思います。ただし議員御指摘のように、専門家というものがいませんと誰でもできるという問題でもない。共通でできる部分と本当に専門的にお話をいただかなきゃならないということもありますので、教育委員会としても前向きにこの辺も積極的に考えていきたいと思っています。よろしくお願いします。
○議長(吉川雄二君) これで前林孝一良君の質問は終わりました。
 議事の都合により休憩します。

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