本会議会議録


議会補足文書

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令和6年2月静岡県議会定例会
知事提案説明
発言日: 02/20/2024
会派名:


○議長(中沢公彦君) 議事日程により、知事提出議案第一号から第八十五号までを一括して議題とし、知事の説明を求めます。
 川勝知事。
       (知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 令和六年度の当初予算案並びにその他の議案を提出するに当たりその概要を御説明申し上げ、あわせて当面する県政の課題について所信の一端を申し述べます。
 一月一日に最大震度七を観測した能登半島地震は、二百四十一人の死者、十万棟を超える建物被害など甚大な被害をもたらしました。犠牲になられた多くの方々に哀悼の意を表しますとともに、御遺族また被災された全ての皆様に対しまして衷心よりお見舞いを申し上げます。
 本県では、発災当日から被災者の救出救助に当たるため警察、消防チームが現地に向かうとともに、いち早く能登空港に活動拠点を設け市町や民間の方々と連携して迅速かつ機動的に支援活動を展開してまいりました。医療救護チームや行政職員など総勢二千六百人を超える人員が切れ目なく派遣され、食料、水、ブルーシート等の物資供給や被災された方々を対象とした県営住宅の無償提供など様々な支援を行っております。被災地の早期の復旧・復興に向け引き続き現地のニーズをしっかりと把握し適時適切に支援してまいります。
 こうした支援活動に加え今回の災害で顕在化した課題を教訓とし本県の地震対策を強化することが重要であります。短期的に対応可能なものは速やかに対応し中長期的に取り組むべきものは国等とも連携して課題の全体像を検証し今後の対策に反映してまいります。
 さて、昨年は激甚化、頻発化する自然災害や国際情勢の激変が引き起こす物価高騰など世界規模で大きな影響が続く中、コロナ後の社会経済活動の正常化に向けて大きく動き出す一年となりました。
 まずは、安全・安心についてであります。
 地球規模で変容する気候は、本県にも多くの災害をもたらしておりその規模は格段に大きく多様になってきております。新たなステージに入ったと認識を新たにした上で今後さらに充実した対策を行っていく必要があります。
 また物価高騰をはじめとして、本県の経済には大きな影響が出ております。経済と環境の両立した持続的な社会を目指すとともに、ウイズコロナの時代にふさわしい新しい経済・地域の活性化の方法を模索していかなくてはなりません。
 また、昨年本県は国から東アジア文化都市に選定され日本文化の魅力を国内外に発信いたしました。その結果認証事業数、来場者数ともに過去の最高実績を大きく上回ることができました。スポーツ分野と食分野では、中国、韓国との新たな国際交流が行われたことに加え県内各地では民間主体の地域に根差した事業が芽吹くなど県内各地で交流や取組がステップアップしております。
 さらに、昨年は富士山世界遺産登録から十年が経過しました。世界遺産富士山が有する信仰の対象、芸術の源泉という顕著な普遍的価値は、今後本県だけでなく山梨県そして日本、世界に暮らす方々と共に継承し地域の発展につなげていかなければなりません。我々は今まさに理想郷づくりに向けた新たなスタートラインに立っているのであります。さらに一段の高みを目指し本県が未来に向かって羽ばたけるようSDGsの先進県として世界の人々が憧れる魅力ある地域を築くべく全身全霊で取り組んでまいります。引き続き県議会の皆様のさらなる御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 初めに、令和六年度当初予算案と組織定数の改編についてであります。
 基本理念は、富国有徳の美しいふじのくにづくり、未来に翔くSDGsの理想郷であります。社会構造が大きく転換する中、人口減少や経済の再生、発展など本県が直面する課題に挑戦し未来に向けて持続可能で安心して暮らせる社会を創造する美しいふじのくにづくりを推進するための予算編成と組織定数の改編を行いました。
 令和六年度の一般会計の歳出予算総額は一兆三千百六十億円で前年度比四・〇%の減となりましたが、コロナ関連等の特殊要因を除けば実質的に前年度を一・二%上回る予算を編成いたしました。
 今回の予算編成に当たりましては、大胆な発想で現状を打破し時代の急速な変化に的確に対応していくため、昨年中に私から先進的でチャレンジ性のある取組をイノベーション事業として積極的に検討するよう指示していたところであります。この事業は複数年度にわたる財源確保と人員の集中配分をし強力に事業を推進することとしており、政策議論を積み重ねた上で本予算案に盛り込んでおります。
 予算編成と組織定数改編の基本方針の一つは、人づくり・富づくりを着実に推進する取組であります。
 まず、イノベーション事業等について御説明申し上げます。
 イノベーション事業等は、本県の未来を力強く切り開いていく「未来・創造」の四事業と県民の皆様が「安全・安心」に暮らしていただくための四事業に大別されます。
 最初に「未来・創造」のうち、次世代エアモビリティーの導入についてであります。
 本県の強みである三次元点群データを積極的に活用するとともに、航空サービス企業との連携により空飛ぶ車など次世代エアモビリティー分野で全国の先進導入地域を目指してまいります。来年度は課題別のロードマップを作成し令和七年度以降に仮想空間上のフライトシミュレーションや現実空間での実証試験が実施できるよう取組を進めてまいります。
 次に、デジタルクリエーターの育成についてであります。
 仮想空間に関する市場の急拡大が見込まれる一方人材不足が課題となっています。このため県内高等教育機関と連携して優秀な指導者を確保し、三次元点群データを最大限に活用しながらデジタルクリエーターを育成いたします。イノベーション拠点SHIP等を活用したワークショップや人材育成講座の実施など学生と企業等との交流・共創の場を開設し高度なデジタル人材が活躍する地域づくりを進めてまいります。
 次に、ブルーエコノミーEXPO  仮称  の開催等についてであります。
 日本一深い駿河湾や海洋関連の研究開発機関等が集積する清水港など本県の強みを生かしMaOIプロジェクトの取組を加速させます。昨年五月持続可能な海洋経済についてブルーエコノミー駿河湾国際ラウンドテーブルが開催され、国による国際的な発信や具体的なショーケースを進展させる必要性などが提言されました。この提言を踏まえ、本県といたしましては多様な海洋関連企業や研究者等が一堂に会するブルーエコノミーEXPO  仮称  を本年七月に静岡市内で開催いたします。さらに駿河湾の有する実証フィールドとしての大きなポテンシャルを世界に向けて具体的に発信することで国内外の最先端の技術を有するスタートアップや投資家を本県に呼び込んでまいります。
 また、将来の起業家を育成するため県内の意欲的な高校生を対象に有力起業家が伴走支援する体験プログラムを提供するとともに、海外トップレベルのスタートアップによる実践的知見の提供などを実施してまいります。
 次に、スポーツ医科学を活用した競技力の向上についてであります。
 本県の豊富な地域資源と知見を融合しスポーツの総合産業化を目指してまいります。その取組の一つとして産学官医を連携させスポーツ医科学の知見を活用することで科学的かつ高機能なアスリート支援機関の創設に取り組みます。具体的には伊豆市にある自転車ハイパフォーマンスセンターを核として、自転車競技で蓄積されたノウハウを基に他の競技のジュニア部門強化に向けたモデル事業を展開いたします。令和七年度以降に本県所在のプロスポーツチームの競技区分ごとに独自の医科学プログラムを導入することにより本県競技力の底上げと裾野の拡大を図ってまいります。
 次に、「安全・安心」のうちバーチャルスクールによる学びの機会の確保についてであります。
 不登校児童生徒の多様な学びの機会を確保するため仮想空間上の学びの場となるバーチャルスクールを新たに設置いたします。本年度はシステムの構築、試行を行い令和七年度の運用開始を目指してまいります。気軽にアクセスできる仮想空間のメリットを生かし児童生徒が興味のある学びや交流の場を自ら選択できる環境を整え社会的自立を支援してまいります。
 次に、使用済み紙おむつの再資源化のモデル構築についてであります。
 高齢化の進展に伴い使用済み紙おむつの排出量の増加が見込まれています。使用済み紙おむつの再資源化を推進し焼却処理によるCO2排出量の抑制に取り組みます。具体的には保育施設や介護施設等から回収し新技術を活用した再生処理をした上で再生資源として活用するまでの市町の一連の先駆的な実証実験を支援いたします。その結果から循環方式を抽出し導入地域を段階的に拡大いたします。令和十二年度までには県人口の半数以上において新たな静岡モデルが導入されるよう取組を進めてまいります。
 次に、道路メンテナンスのDXについてであります。
 県土の活力、交流を支える道路インフラは、今後同時期に大量の更新が発生することからそのメンテナンスについて省力化、効率化を進めることが必要です。このため三次元点群データやAI等のデジタル技術を駆使して道路の異常箇所を抽出し効果的な補修手法を解析するなど自治体として全国初となる効率的な維持管理手法を確立してまいります。まず来年度は、下田市の県管理道路で表面の三次元データを取得し解析いたします。その結果を基に段階的に補修計画の立案システムを構築することで令和九年度の全県展開につなげてまいります。
 次に、聴覚障害児療育モデルの構築についてであります。
 先天性の難聴は早期発見、早期治療に加えて適切な療育が重要でありますが、我が国では人工内耳装用児の療育手法等が確立されていないことが課題であります。このため県立総合病院と連携し難聴児療育の先進国オーストラリアの中核的機関シェパードセンターの療育手法を全国で初めて取り入れてまいります。令和九年度までかけてシェパードセンター職員から直接の指導を受けながら難聴児ごとの特性や発達過程に応じた療育を実践するとともに、その効果を検証し令和十年度からの本格稼働を目指します。難聴児が確実に聞こえと音声言語を習得する全国のモデルとなる療育体制を構築してまいります。
 次に、新ビジョンを具体化するための五つの基本となる柱に沿って主な政策を御説明申し上げます。
 第一の柱は、安全・安心な地域づくりであります。
 まず、能登半島地震を踏まえた地震対策等の強化のうち速やかに対応できる短期の対策についてであります。
 建築物の耐震化につきましては、プロジェクト「TOUKAI―0」により市町と連携して木造住宅の耐震診断や耐震補強等の支援をしてまいりました。住宅倒壊による被害を最小化するためこの機会を捉えテレビコマーシャルや新聞などにより高齢者等に重点的な広報を行い支援制度の活用を促すとともに、住宅の耐震化支援の予算額を充実するなどより一層取組を加速してまいります。県民の皆様におかれましても、いま一度お住まいの耐震性の確認、家具の固定などをお願いいたします。
 次に、木造住宅密集地における火災対策であります。
 今回の石川県輪島市での大規模火災につきましては、出火要因となる建物内の電気を速やかに遮断することが重要であると指摘されております。このため市町と連携し震度五強以上を感知すると自動で電気を遮断する感震ブレーカーの住宅への導入を支援することで地震火災の発生防止を図ってまいります。
 緊急輸送ルートの確保につきましては、今回能登半島の全域で道路が寸断し物資輸送や救助作業の妨げになりました。引き続き緊急輸送路における橋梁の耐震化や道路のり面の防災対策をはじめ災害に強い道づくりに取り組んでまいります。特に伊豆半島では命の道となる伊豆縦貫自動車道路の一日も早い全線開通を目指すなどより一層の強靱化を進めてまいります。また発災時において、瓦礫・放置車両の処理等により確実に緊急輸送ルートを確保するため、あらかじめ国、市町、自衛隊、関係団体等の対応方針等を詳細に確認するなど一層の連携を図ってまいります。
 応急体制の構築につきましては、発災時に孤立集落を迅速に支援するため医薬品や無線機などの緊急物資を搬送する災害対策用ドローン四機を新たに各地域局へ配備いたします。また孤立集落となるおそれのある地域の警察施設二か所に衛星通信設備を新たに配備するとともに、県警機動隊に衛星通信ができる指揮支援車を導入いたします。発災後の情報収集や通信機能を確保し早期に救助捜索活動を行う態勢を整備するなど初動時の応急対応力の一層の強化に取り組んでまいります。
 避難対策につきましては、市町と協力しわたしの避難計画の普及を加速し具体的な避難経路を検討してもらうこと等により県民の皆様のさらなる避難意識の向上を図ってまいります。また避難生活の質の向上のため、被災者の細かなニーズを把握し行政や支援団体との調整などを担う被災者支援コーディネーターを新たに三十五名育成してまいります。
 次に、中長期の対策であります。
 今後、国が約十年ぶりに南海トラフ地震の新たな被害想定を取りまとめ防災対策推進基本計画を改定する予定であります。これを受けて本県におきましてもこれまでの地震・津波対策等の成果も踏まえ被害想定の見直しに着手いたします。国の議論を参考に時間差を置いて発生する地震や災害関連死などの新たな項目を被害想定に反映するほか、能登半島地震により顕在化した課題への対応も含め地域防災計画の改定に向けて今後の対策を見直してまいります。県民の皆様を大規模地震から守り抜く強い決意を持ち防災先進県にふさわしい地域づくりを実現すべく全身全霊で取り組んでまいります。
 次に、激甚化する自然災害への対応についてであります。
 本県では令和四年九月の台風十五号と令和五年六月の台風二号に伴う記録的な大雨により洪水氾濫や土砂崩れが多数発生し、家屋の損壊や浸水をはじめ河川、道路等の公共土木施設など県内各地で多くの被害を受けました。これらの水災害をもたらした豪雨は気候変動の影響による極端な雨の降り方が本県においても現実に起きたものであり、これまでの考え方が通用しない新たなステージに入ったものと危機感を強くしております。
 こうした自然災害に対応し国、県、市町、民間企業、住民等の流域のあらゆる関係者が主体的に対策に取り組む流域治水をより一層推進し水災害に強い地域の実現を目指すことが重要であります。このため、県内全域で流域治水の取組を加速させる重点的かつ緊急的な対策を取りまとめました。
 本県は地区ごとのリスク分析等に基づいて浸水被害対策を実施する本県独自の水災害対策プランを策定し、これに基づく取組を進めております。まずこのプランの対象について、近年の浸水実績に基づき十四地区から二十一地区に拡大いたしました。その上でこれら全ての地区においてプランに定めたソフト・ハードの両面からなる浸水被害対策を集中的かつ前倒して実施することにより、当初想定していた目標達成までの期間を短縮し約十年間で床上浸水被害の解消などを実現してまいります。
 具体的には河川の氾濫を減少させるため河川改修や放水路の整備、樋門・樋管等の自動化、雨水貯留浸透施設の整備をしっかりと進めてまいります。また被害の軽減や早期復旧・復興を可能とするため、市町と連携した河川監視カメラの設置や広域的な被災情報を迅速に把握する仕組みづくりに着実に取り組んでまいります。
 こうした取組に必要となる経費を令和六年度当初予算案に盛り込み、国の防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策と併せて水災害に強い県土をつくってまいります。
 次に、盛土対策についてであります。
 盛土規制法への対応につきましては本年度法に基づく規制区域を指定するための基礎調査を実施いたしました。国の要領に基づき調査を行った結果、盛土等がされた場合に人家等に危害を及ぼす可能性のあるエリアとして県内全域が抽出されました。この結果を基に規制区域指定に向けて市町や隣接県とも調整を図りながら手続を進めてまいります。
 県盛土等の規制に関する条例につきましては、熱海市伊豆山地区の土石流災害を受け速やかに実効性のある盛土規制に取り組むため国に先行して施行したものであります。条例には災害防止と生活環境の保全という二つの目的があり、昨年全国一律の基準で災害防止を図る盛土規制法が施行されたことから災害防止のための規制は盛土規制法により行うことといたします。土壌汚染の防止など生活環境保全の規制は建設発生土の不適正処理対策が強化されている状況等を踏まえ、規制の合理化を図るなど県議会をはじめ事業者や県民の皆様の御意見も伺いながら見直しを検討してまいります。
 逢初川土石流災害に係る行政対応の再検証につきましては、関係法令の所管課長等からなる庁内検証委員会において県議会から御提言頂いた論点の検証を進めてまいりました。この結果今回の災害の最大の原因である逢初川源頭部の不適切な盛土行為に対し県と熱海市が連携し厳正に対処することが重要であったことが再度確認されるとともに、今回検証の対象とした法令は盛土行為に直接的に効果を及ぼすものではないためこの法令の運用によっては今回の土石流災害の発生を抑止することは難しかったとの結論に至りました。
 ただし、その中においても逢初川源頭部における盛土行為の初期段階において盛土行為に起因すると思われる伊豆山港の水の濁りの情報が関係者で共有されていなかったことが明らかになりました。そのほか関係の個別法令ごとの行政対応においてもっと対応できたのではないかという点も見受けられましたので、今回の検証作業を通じ関係者間の情報共有と連携などが最も重要であると改めて認識したところであります。検証結果の詳細につきましては本議会の各常任委員会において御報告してまいります。
 次に、防疫先進県への取組についてであります。
 新型コロナウイルス感染症は五類感染症に移行しましたが新たな感染症が発生するリスクは今後も変わりません。将来発生し得るパンデミックに備え平時からの備えが重要であります。このため本県の防疫体制の司令塔機能を担うふじのくに感染症管理センターにおいて、医療機関等と病床確保や発熱外来の実施に関する協定を本年九月末を目途に締結するなど感染症流行時に備えた医療提供体制を整備してまいります。また感染症流行時に適切な医療や相談が受けられるよう医療人材の育成や情報プラットフォームの構築などを進め、感染症対応力を強化してまいります。
 次に、救急安心電話相談窓口の設置についてであります。
 本県の救急医療機関の受診者数や救急車による搬送人員数は近年増加傾向にあります。こうした状況を踏まえ医療機関の適正受診や救急車の適正利用を推進するため、県民の皆様が急な病気やけがで困った際に医療の専門家が医療機関への受診や救急車利用に関する助言等を行う救急安心電話相談窓口#七一一九を本年十月に試行的に開設する予定であります。令和七年度からの本格運用を目指し市町等と連携しながら相談窓口の運営を行い県民の皆様の安全・安心の確保につなげてまいります。
 次に、仮称医科大学院大学についてであります。
 昨日、田中一成静岡県立病院機構理事長を委員長とする仮称医科大学院大学準備委員会から基本構想として御提言を頂きました。構想では健康長寿社会の実現に向けて県内の医療水準の向上と医師確保を図るため、医科大学院大学を設置する必要があることや目指すべき基本的な方向性として臨床技能と研究能力を高め続ける医療人を養成すること、医療機関を基盤とした横断的、融合的な研究を推進することなどが示されました。本県のさらなる医療水準の向上と医師確保に対して大変的確な御指摘だと認識しております。今後県としてこの構想を実現するため、求める学生像や運営体制などを盛り込んだ基本計画を来年度中に策定し仮称医科大学院大学の設置を目指してまいります。
 次に、介護人材の確保についてであります。
 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少が進む中、介護人材の確保が課題となっております。このためさらなる職員の処遇改善や業務を効率化、省力化する介護ロボット、ICT機器の導入などを積極的に促進してまいります。さらに外国人介護人材の確保を強化するため、事業所からの雇用手続等の相談にワンストップで対応し人材確保と定着を一体的に支援する仮称国際介護人材サポートセンターを設置いたします。県民の皆様が必要な介護サービスを受けられるよう、介護現場を支える人材の確保に全力で取り組んでまいります。
 第二の柱は、持続的な発展に向けた新たな挑戦であります。
 初めに、デジタル社会の形成についてであります。
 地域社会における課題を解決するためにDXを一段上のレベルに引き上げ県民誰もが恩恵を実感する社会のデジタル化を加速してまいります。先ほどイノベーション事業として申し上げました次世代エアモビリティーの導入などに取り組むほか、廃棄物の不法投棄が行われやすい場所をAIで予測して効果的な事前対策や早期発見につなげるなど高度化する技術を新たな分野に積極的に活用してまいります。また本県の強みである三次元点群データを活用し、脱炭素化に向けてJブルークレジット申請の前提となる藻場の分布状況の把握や地形条件等を再現した林業機械の人材育成用シミュレーターの開発など実証を進めてまいります。
 次に、持続可能な社会の形成についてであります。
 昨年七月国連のグテーレス事務総長が地球沸騰化時代の到来と表現した急激な温暖化の進行に加え、生物多様性の確保や自然環境の保全など我々はこれまでにない様々な環境課題に直面しております。将来世代が安心して暮らす持続可能な社会の形成に向けて取組を加速してまいります。
 中小企業の脱炭素経営への転換につきましては、省エネルギー設備の導入や企業脱炭素化支援センターを中心に新たにCO2排出量の見える化を支援いたします。また金融機関等との連携を強化してコンソーシアムを設立し、中小企業の省エネ計画の策定をプッシュ型で支援するなど支援体制を一層充実してまいります。
 生物多様性の推進につきましては、二〇三〇年までに陸と海の三〇%以上を自然環境エリアとして保全するサーティー・バイ・サーティーの国際目標が掲げられております。本県におきましてもこの目標を実現するため専門家派遣などにより企業等が行う自然環境保全活動を新たに支援するとともに、県民や企業の皆様に生物多様性について理解を深めていただく機会を提供してまいります。
 次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
 昨年十二月国の有識者会議においてトンネル掘削による南アルプスの自然環境への影響などに関するリニア中央新幹線静岡工区に関する報告書が取りまとめられ、有識者会議での議論が一区切りとなりました。このため県が令和元年九月にJR東海にお示しし国有識者会議でも全ての項目を議論していただくよう求めていた引き続き対話を要する事項の四十七項目について、県専門部会の委員と進を評価してまいりました。今月五日四十七項目の評価と残された課題を整理した上で引き続きJR東海と対話を要する事項について水資源、生物多様性、トンネル発生土の三区分に取りまとめ公表いたしました。
 水資源につきましては、JR東海から大井川の水資源への影響を回避する保全策として田代ダム取水抑制案が示され対話は進捗したものと認識しております。二十六項目のうち十七項目が終了し今後は突発湧水等の想定外に対応するリスク管理とモニタリングについて対話を進めてまいります。
 一方、生物多様性、トンネル発生土の二十一項目につきましては一定の進捗が見られたものの終了した項目はありません。県が国有識者会議に対して提出した意見書の内容が反映されていないなど課題が残されております。今回取りまとめた今後の主な対話項目に基づき県専門部会の委員の意見を速やかに整理した上でJR東海としっかり対話を進めてまいります。
 今月七日には国土交通省から村田鉄道局長が来訪され、国の有識者会議の報告書の説明があった後にJR東海が行う南アルプストンネル工事に係る水資源や環境の保全対策を継続的にモニタリングする体制を国として新たに検討しているとのお話がありました。これは国が積極的に関与する姿勢を明確にしたものであり、こうした取組を高く評価いたします。
 一方で、JR東海は昨年十二月開業目標時期について二〇二七年を二〇二七年以降に変更する申請を国土交通省に提出し認可されたところであります。加えて丹羽社長が本年一月の記者会見で「改めて品川―名古屋間の各工区の進捗を確認しつつ、工事全体の進め方について検討を始めた」と表明されたことを考慮いたしますと、モニタリングに際しましては静岡県内の工区に限定するのではなく他の工区との関わりを把握することも重要であります。国土交通省におかれては、こうした点を十分に踏まえてモニタリングの対象について柔軟に考えていただきたいと思います。
 また、モニタリングの前提となる工事現場の状況把握については第三者により客観的、中立的に実施されることが極めて重要であります。今後国からの具体的な説明も十分に聞いた上で県専門部会での議論等も踏まえながら県としても適切に関与してまいります。引き続きリニア中央新幹線の建設と大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全との両立を図るためスピード感をもって取り組んでまいります。
 第三の柱は、未来を担う有徳の人づくりであります。
 初めに、少子化対策の推進についてであります。
 加速度的に進行する少子化は待ったなしの課題であり何としても歯止めをかけなければなりません。昨年十二月に国が決定したこども未来戦略に呼応して本県の子供・若者施策の新たな基軸となる仮称静岡県こども計画を策定し少子化対策を力強く推進してまいります。
 子育てに関する経済的支援の充実につきましては、児童手当の所得制限の撤廃や支給期間の高校生年代までの延長、独り親世帯の児童扶養手当の所得制限限度額の引上げなどを行います。また大学等の授業料などの減免を拡充するとともに、私立高等学校等の授業料の減免についても対象を拡充し教育にかかる費用負担を軽減してまいります。さらに不妊治療のうち医療保険の適用外である先進医療について政令市と連携し新たな助成制度を創設いたします。費用の問題から治療を断念することのないよう子供を持ちたいと願う方の気持ちに寄り添った支援をしてまいります。
 子育て環境の充実につきましては保育士の処遇改善に取り組むとともに、保育施設に対して改善された四、五歳児の職員配置基準に基づき支援を行ってまいります。また放課後児童クラブの職員配置を改善し乳幼児期から学童期まで安心して子供を預けられる体制を充実してまいります。
 共働き・共育ての推進につきましては、男性の家事・育児参加を促進するため国が令和七年度に支援を開始するまでの間、本県独自に新たな応援手当を創設します。育児休業を一定期間以上取得した中小企業の男性労働者を対象に雇用保険給付金と併せて給料の手取りと同じ水準の額を受け取れるように手当を支給いたします。
 子供は社会の宝であります。国や市町、関係団体等と連携し子供を安心して産み育てられる環境づくりを強力に推進してまいります。
 次に、多様な学びの場の確保についてであります。
 不登校児童生徒の多様な学びの機会を確保するため先ほどイノベーション事業として申し上げましたバーチャルスクールを設置するほか、学校以外の学びの場として役割を担うフリースクールへの支援を新たに実施いたします。市町教育支援センターも含め官民がしっかりと連携し個々に応じた多様な学びを享受できる環境を確保してまいります。
 次に、ふじのくに国際高等学校の開校についてであります。
 本年四月多様性と自由を象徴する新たな県立高校となるふじのくに国際高等学校を開校いたします。令和八年度からの国際バカロレア教育導入を目指し認定に向けた準備や校舎の改修工事を計画的に進めてまいります。生徒の興味関心や進路希望に応じた探究的な学びの機会を提供し未来を力強く生きる有徳の人を育成してまいります。
 次に、多様な人材の活躍促進についてであります。
 女性、高齢者、障害のある方、外国人など多様な人材がその能力を最大限に発揮するダイバーシティー経営について中小企業に対し導入を促進してまいります。アドバイザーの派遣や専門家による巡回訪問のほか女性の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテックの導入を新たに支援するなど誰もが働きやすい職場環境を整備してまいります。
 次に、新県立中央図書館の整備についてであります。
 令和九年度の完成を目指す新県立中央図書館につきましては、二百万冊規模の収蔵能力を確保しICTやAI技術を積極的に取り入れるなど本県の新たな知の拠点とするべく本年九月に向けて設計を進めております。知的創造活動を支える多様な情報をアーカイブし、県民の皆様が学び交流し創造する新しい時代の情報館として着実に整備を進めてまいります。
 第四の柱は、豊かな暮らしの実現であります。
 初めに、本県の経済成長の新たな原動力となるスタートアップの創出、育成についてであります。
 昨年九月に策定した支援戦略を本格展開しスタートアップを創出、育成する取組をより一層加速してまいります。昨年十二月にイノベーション拠点SHIPに設置したワンストップ相談窓口や今月十五日に設立した金融機関や県内企業等の支援関係者によるネットワーク  ふじのくにSEAsなどをフル活用しスタートアップの課題解決に向けて強力に支援いたします。またTECH BEAT Shizuokaを活用し県内企業や自治体等との協業、共創を促進するほか、先ほどイノベーション事業として申し上げたブルーエコノミーEXPO  仮称  の開催や起業家の育成に取り組んでまいります。
 次に、本県経済を強力に牽引するリーディング産業の育成についてであります。
 ファルマバレー、MaOI、次世代自動車など地域の強みを生かした先端産業創出プロジェクトにつきましては、社会の変容や新たなニーズ等を踏まえプロジェクト間連携による優れた取組に集中的に支援するなどオープンイノベーションによる新たな価値の創出に取り組んでまいります。
 ファルマバレープロジェクトにつきましては、医療健康産業が集積し質の高い医療と癒やしを提供する医療城下町を基盤とし市町や関係団体等と一体となって医療田園都市構想を推進いたします。新たに中小企業等による高度で複雑な医療機器の開発を支援するほか試作段階から専門家の意見を取り入れるなど山梨県企業との共同製品開発の支援を強化してまいります。地域経済を発展させ住民が安心して豊かに暮らすことのできる超高齢社会の理想郷づくりに取り組んでまいります。
 自動車分野におけるデジタル化、EV化への対応につきましてはデジタル人材の育成が喫緊の課題であります。次世代自動車センター浜松が中心となり地域企業が完成車メーカーの最先端の現場においてデジタル技術を活用した車体のシミュレーション開発など実践的なデジタルものづくりを学ぶ実地研修を新たに実施いたします。加えて世界展開する中国のEV車両や欧州の最新電動バイクの分解調査等に取り組んでまいります。さらに昨年新設したデジタルものづくりセンターに次世代自動車の部品開発などに不可欠な3Dスキャナーを導入するとともに、企業の開発現場に出向くプッシュ型支援を行ってまいります。地域企業が急速に進展する産業構造の転換に的確に対応できるようデジタル化に向けたきめ細かな支援を強化しスピード感を持って全力で支えてまいります。
 脱炭素、循環経済を実現する素材として注目されるCNF  セルロースナノファイバーにつきましては、循環経済における新たなビジネスモデルを構築するためリサイクル性、経済性の実証事業を行うほか県産材由来のセルロース素材を活用したコンセプトカーを製作いたします。産学官が連携し研究開発や情報発信等に取り組み県内企業が開発したCNF素材等の社会実装を一層加速してまいります。
 静岡茶の新たな価値と需要の創出に取り組むChaOIプロジェクトにつきましては、緑茶の需要が拡大する海外に向けて主要な産地を輸出向け有機茶生産の拠点として重点支援し需要に応じた生産構造への転換をさらに進めてまいります。加えて静岡の清らかな水で丹念に抽出した高級ボトリングティーの輸出拡大に向け海外の富裕層を主なターゲットとして販路開拓に取り組んでまいります。
 また、茶の先端研究開発とオープンイノベーションの拠点となる茶業研究センター新研究棟につきましては、令和六年度末の供用開始に向けて着実に工事を進めます。茶業者や関係団体等と一体となって本県茶業の力強い再生に取り組んでまいります。
 次に、中小企業の収益力向上についてであります。
 長期化する物価高騰や人手不足などに対応し県内企業の稼ぐ力を強化いたします。経営環境の変化を踏まえ機動的に資金を供給するほか、複数年度の事業計画を策定し産業支援機関等の伴走支援により新商品開発等を行う新たな支援制度を創設することで中小企業の付加価値創出や生産性向上の取組を支援してまいります。
 次に、地場産業の活性化についてであります。
 地場産業の新たな価値を創造し持続可能な産業モデルを構築するため家具や模型、繊維などの地場産業の生産者に加えデザイナーや学生などが参画するしずおかプロダクツフォーラムを創設いたします。合同展示会やセミナー、交流会の開催を通じて産地の魅力発信と人材育成に取り組んでまいります。
 次に、農林水産業の競争力強化についてであります。
 農業につきましては、スマート農業の普及や基盤整備などへのデジタル技術の導入を積極的に進めるほか、新たな農業人材の確保や農業法人の誘致を図り農業生産の高度化、効率化を進めてまいります。また稲わらを家畜飼料として利用し家畜堆肥を水田で利用するなど稲作農家と畜産農家の連携を強化してまいります。この取組を通じて輸入飼料から県産飼料への転換を促進することで飼料自給率の向上を図ってまいります。さらに畜産物の安定的な供給体制を構築するため令和八年度の供用開始に向けて食肉センターの再編整備を計画的に進めてまいります。
 林業につきましては、海外情勢の影響を受けにくい木材需給体制の構築を目指してまいります。木材生産団地の基盤整備に加え分散した狭小林地の集約化により効率的な施業を行うモデル事業を新たに実施し全市町への展開につなげるとともに、住宅以外の建築物への県産材使用に対する支援を拡充し県産材需要の拡大を図ってまいります。
 水産業につきましては、新鮮な魚介類や美しい景観など魅力ある地域資源を活用して観光客等を呼び込むことで新たな所得機会を創出する海業の振興に取り組みます。具体的には飲食やマリンレジャーなど漁業の新たな展開を積極的に支援してまいります。また新魚種の種苗生産に関する技術開発やアサリの資源回復に取り組むなど水産資源の維持増大を図ってまいります。水産王国静岡の持続的な発展に向けて全力で取り組んでまいります。
 次に、移住・定住の促進についてであります。
 本県は移住希望地ランキングで三年連続で一位となり多くの方から選ばれる県になっています。この流れを加速するため美しい自然環境や豊かな食材など恵まれた地域資源を生かし、多彩で魅力的な静岡ならではのライフスタイルを積極的に発信してまいります。
 加えて東京圏在住者の県内への移住、就職を促進するため移住・就業支援金として市町と連携して最大百万円を支給するとともに、子育てしやすい住環境を創出するため子育て世帯等を対象にテレワークに対応したリフォーム等を支援いたします。仕事と子育ての両立ができる職住一体の住環境の整備を促進し「住んでよし 働いてよし」の理想郷を実現してまいります。
 次に、カーボンニュートラルポートの形成についてであります。
 清水港において、官民が連携して太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせた地域マイクログリッドを新たに構築し再生可能エネルギーの有効活用やレジリエンス強化の先導モデルを創出いたします。また水素ステーションの設置なども進めてまいります。清水港を先導役として県内のカーボンニュートラルポートの形成を推進し持続可能な港湾経営を目指してまいります。
 次に、富士山静岡空港についてであります。
 令和五年の搭乗者数は、国内線の行楽シーズンにおける需要回復や上海線の運航再開、ソウル線のデイリー運航化などにより昨年を五〇%上回る四十七万七千人となりました。国内線では来月三十一日からの夏ダイヤにおいて現在運休中のフジドリームエアラインズの出雲線が運航を再開するほか、全日本空輸の札幌線及び沖縄線が本年七月一日から通年運航を約五年ぶりに再開することを決定いたしました。
 回復が遅れている国際線につきましては、四月末から中国東方航空の上海線が週二往復から四往復に増便されるのに加え、チャイナエアラインの台湾高雄からの連続チャーター便や来月末に運航されるベトナムと静岡との初めてのイン、アウト双方向チャーター便など明るい兆しが見えております。
 また、本年六月には富士山静岡空港が開港十五周年を迎えます。この節目の年に台湾をはじめとした就航路線の完全復活と東南アジア地域などを対象とした新規路線の開設を目指してまいります。より多くの方々に空港を利用頂きコロナ禍前の搭乗者数七十四万人を上回るよう運営権者である富士山静岡空港株式会社や関係団体などオール静岡で取り組んでまいります。
 第五の柱は、魅力の発信と交流の拡大であります。
 初めに、浜名湖花博二〇二四についてであります。
 来月二十三日にはままつフラワーパーク会場で、また四月六日には浜名湖ガーデンパーク会場でいよいよ開幕を迎えます。「人・自然・テクノロジーの架け橋〜レイクハマナ デジタル田園都市〜」をテーマとして来場者の皆様に花緑の美しさに触れていただくとともに、テクノロジーや環境との調和など新しい暮らしの在り方について提案してまいります。
 浜名湖ガーデンパークでは、緑の魔術師と称される石原和幸氏監修の記念庭園汽水園や一千六百種類の色彩豊かな花々に囲まれふじのくに食の都づくり仕事人が提供する県産食材を生かした料理をお楽しみ頂ける印象派庭園花美の庭、デジタルアートで花咲く印象派の世界への没入を体験できるイマーシブミュージアムなど花緑の美しさと技術の粋を尽くした多彩な見どころを御用意しております。誰もが楽しみ心癒やされる機会を提供できるよう万全の準備を進めてまいりましたので県内外から多くの方々をお迎えしたいと存じます。
 次に、地域の文化の魅力向上についてであります。
 本県が持つ地域文化の魅力を磨き上げ子供から高齢者までが文化に親しめる地域社会の構築を目指してまいります。
 昨年本県は東アジア文化都市に選定され、日本のいわば文化首都としてスポーツ、食、旅、花、庭など日本文化の魅力を国内外に発信いたしました。認証事業数は目標五百件に対して九百七十九件、来場者数は目標三百六十万人に対して一千三百四十五万人、経済波及効果は目標百億円に対して三百八十九億円といずれも過去の最高実績を大きく上回ることができました。スポーツ分野では中国とのサッカー交流が、食分野では韓国との食文化交流が行われるなど各分野で本県の国際交流や経済効果につながる取組が数多く出てまいりました。加えて県内各地で民間主体の地域に根差した文化事業が芽吹いてまいりました。今後はこうした個別の交流や取組を生かしながら持続可能で文化豊かな地域づくりを推進してまいります。
 さらに、東部・伊豆地域では特色ある文化の魅力を増進し魅力ある地域づくりを進めるため東部・伊豆地域文化ゾーンの構築を目指し新たな文化振興のネットワークを立ち上げます。旧ヴァンジ彫刻庭園美術館を活用し市町、観光関係者等と連携して地域の文化力の向上と地域の活性化につなげてまいります。
 次に、富士山の登山者への対応についてであります。
 昨年の夏は登山者数がコロナ禍前の水準まで回復しにぎわいを取り戻した一方で、弾丸登山、軽装登山、マナー違反等の課題が浮き彫りになりました。こうした課題に対応するため今年の夏山シーズンではウェブを活用した登山者の登録システム構築や夜間における入山制限に向けた現地での対策など入山管理システムの導入に向けた社会実験を実施してまいります。国、山梨県、地元関係団体と連携し安全・快適な富士登山の実現に向けた取組を進めてまいります。
 次に、スポーツの聖地づくりについてであります。
 本年はパリでオリンピック・パラリンピックが、そして来年には本県で東京二〇二五デフリンピックの自転車競技が開催されます。また県内では新たなプロスポーツチームとして昨年静岡ジェードがTリーグへ参入し、本年はプロ野球の新球団くふうハヤテベンチャーズ静岡がファームリーグに参加いたします。これらを契機として本県の豊富な地域資源と知見を融合したスポーツの総合産業化を進めてまいります。また全ての県民がライフステージに応じてスポーツに親しむ生涯スポーツを推進しスポーツの力で活力ある社会の構築を目指すスポーツの聖地づくりを一層推進してまいります。
 スポーツの総合産業化につきましては、本県の強みである自転車をはじめ国際的に強い関心を集めている武道など豊富なスポーツ資源を様々な要素と新結合させることで新たな価値を創出してまいります。多くのプロスポーツチームが存在する本県の優位性を生かし地域活性化や新たなビジネスモデルの創出に取り組んでまいります。また先ほどイノベーション事業で申し上げましたようにスポーツ医科学によるアスリート支援に取り組んでまいります。さらにツーリズムの観点からはラグビーの日本代表戦や自転車の国際大会などを活用しスポーツツーリズムを積極的に推進してまいります。スポーツを成長産業として捉えスポーツを通して地域と経済を発展させるための施策を新たに展開してまいります。
 競技力の向上につきましては、本県の強みであるサッカーにおいてジュニア世代の強化育成を統括するユースダイレクターに全国初となる女子サッカー専属の指導者を配置し新たな強化体制を構築いたします。女性アスリートの裾野拡大や競技力強化を目指す静岡モデルとして他種目への展開を図ってまいります。
 生涯スポーツ、パラスポーツの振興につきましては、市町等を主体とした生涯スポーツの全県展開や障害者スポーツセンター機能の整備に向けた基本計画の策定など共生社会への環境づくりを進めてまいります。全ての県民がスポーツに親しむことのできる生涯スポーツ県の実現を目指してまいります。
 次に、観光交流の拡大についてであります。
 多様化する旅行スタイルやニーズに応える魅力的な観光資源の創出や観光ブランドの形成に取り組み観光需要の本格回復につなげてまいります。
 魅力的な観光資源の創出につきましては、本県の多彩で高品質な食材を生かした観光コンテンツを創出するとともに、本県でしか味わうことのできない特別な食体験を提供するなど全県でガストロノミーツーリズムを展開してまいります。またインバウンド需要の本格回復に向け東アジア市場で旅行商品の造成、販売を働きかけるほか欧米豪市場では本県ならではの魅力をより深く体験できる県内の周遊宿泊プランを造成、販売し富裕層に向けた誘客を強化するなど市場のニーズを確実に捉えた取組を展開してまいります。
 観光ブランドの形成につきましては、黄金KAIDOプロジェクトとしてそばや酒など新潟県、長野県、山梨県、静岡県の中央四県に共通する地域資源をテーマとした周遊企画を実施するほかNEXCO中日本及び東日本の御協力等による高速道路の定額乗り放題プランや駿河湾フェリーの半額割引を実施するなど集客力の一層の向上につなげてまいります。
 宿泊業の人手不足対策につきましては、生産性の向上や雇用の安定のためオンライン予約システムや業務ロボットなどデジタル技術の導入による業務効率化や宿泊業で働く従業員の社員寮整備に対する助成など新たに総合的な支援を行ってまいります。
 次に、地域外交の推進についてであります。
 コロナ禍で停滞した対面交流を加速し友好的互恵・互助に基づく善隣外交を展開するとともに、本県が持つ国内外のネットワークを活用し海外からの活力の取り込みを強化してまいります。
 インドにつきましては、急激な経済発展が見込まれており、昨年十二月に発足した県議会の日印友好議員連盟の皆様と連携し訪問団を派遣するなど地域間交流を強力に推進するとともに、高度人材と県内企業との就職面接会を実施してまいります。
 ネパールにつきましては、近年県内で働く労働者数が急増しており県内で学ぶ留学生の数も最多となっております。このため大学など現地機関との連携を強化しネパールでの本県のプレゼンス向上を図るとともに、新たにネパール人材を対象とした就職面接会に取り組むことで県内企業の外国人材の確保を支援してまいります。
 今後とも、県民の皆様や県内企業がより多くの恩恵を享受できるよう地域外交を推進し本県の活力向上につなげてまいります。
 次に、遠州灘海浜公園篠原地区の公園基本計画についてであります。
 公園基本計画の策定に向けましては、今年度官民連携導入可能性調査において民間事業者等へのヒアリングを行うとともに、地元関係者、野球関係者の皆様から御意見等を頂きました。これらを踏まえ野球場の規模、構造について需要見込みやPFI事業の成立が見込めるか等の観点から三案に絞り込み基本計画の素案に盛り込みました。詳細につきましては本議会の常任委員会で御説明いたします。県議会の皆様から御意見を頂きそれを踏まえて来年度速やかに取りまとめてまいります。
 引き続き県議会や県民の皆様の御意見を伺いながら、県西部のスポーツの拠点としてふさわしく多くの県民の皆様に愛される施設となるよう検討を進めてまいります。
 基本方針の二つ目は、生産性の高い持続可能な行財政運営であります。
 組織定数につきましては、県政の重要課題に迅速かつ的確に対応できるよう見直しを行いました。激甚化する自然災害への対応をはじめ安全・安心な地域づくりが喫緊の課題であります。このため令和五年台風二号等の災害からの復旧・復興のほか不適切盛土の安全確保対策等を着実に行うための体制を整備いたします。またイノベーション事業を推進するため必要な人員を配置し本県が直面する人口減少等の課題解決に重点的に取り組んでまいります。さらに新型コロナウイルス感染症が収束に向かう中、本県経済の成長促進に取り組むためスタートアップ支援や先端産業創出プロジェクトの推進等に向けた体制を強化いたします。
 次に、特別会計及び企業会計についてであります。
 特別会計は公債管理特別会計予算ほか十会計で総額八千八百九十八億一千八百万円、前年度当初予算比六・九%の増となりました。また企業会計は工業用水道事業会計予算ほか四会計で総額八百五億九千四百万円、前年度当初予算比七・九%の減であります。
 次に、予算議案を除く令和六年度関係のその他の議案のうち主な案件について概要を御説明申し上げます。
 第十九号議案は、教育委員会等の職員定数の減員を行うものであります。
 第二十九号議案は、公文書を適正かつ効率的に管理し県民への説明責任を果たすための条例の制定であります。
 第四十七号議案は、地方独立行政法人静岡県立病院機構に係る中期計画の認可についてお諮りするものであります。
 第四十九号議案は、池上重弘教育長の任期満了に伴い再び同氏を任命することについて同意を求めるものであります。
 次に、令和五年度関係の議案につきましてその概要を御説明申し上げます。
 一般会計の二月補正予算額は八百六十四億六千万円の減額であり、この結果令和五年度の最終予算額は一兆三千四百三十九億五千二百万円となります。主な要因は奨励助成費等の年間見込みに伴い減額を行うものであります。
 特別会計及び企業会計の補正は事業費、財源の確定等に伴うものであります。
 令和五年度関係の予算以外の議案のうち主な案件につきまして、概要を御説明申し上げます。
 第六十八号議案は、小中学校の情報通信機器の更新等に要する経費に充てる基金を創設するための条例の制定であります。
 第七十号議案から第七十二号議案までは、建設事業等に対する市町の負担額等についてお諮りするものであります。
 第七十三号議案から第八十三号議案までは、土木工事の契約等についてお諮りするものであります。
 先ほどの私の説明について一部訂正させていただきます。
 お手元の知事提案説明要旨の九ページの下から七行目につきまして、今年度はと御説明いたしましたが正しくは来年度はでございます。おわびして訂正いたします。
 以上であります。
 以上で私の説明を終わりますが、適切なる御議決をお願いする次第であります。
○議長(中沢公彦君) 以上で説明は終わりました。

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