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本会議会議録

議会補足文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用




令和4年2月静岡県議会定例会
知事提案説明
発言日: 02/18/2022
会派名:


○議長(宮沢正美君) ただいまから会議を再開します。
 議事日程により、知事提出議案第二号から第七十六号までを一括して議題とし、知事の説明を求めます。
 川勝知事。
       (知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 令和四年度の当初予算案並びにその他の議案を提出するに当たりその概要を御説明申し上げ、あわせて当面する県政の課題について所信の一端を申し述べます。
 新型コロナウイルス感染症との闘いが始まってから二年となります。この間長期にわたり御尽力と御協力を頂いている医療従事者の皆様、事業者の皆様、県民の皆様に改めて深く感謝申し上げます。現下の県政の最大の課題である新型コロナウイルス感染症対策に引き続き最優先で取り組んでまいります。
 県内初のオミクロン株感染者が昨年末に確認されて以降県内では感染者が徐々に増加し、年末年始の休暇明けからは極めて急激に拡大したことから、先月二十七日から二月二十日までを期限とし本県にまん延防止等重点措置が適用されました。これを受け県民、事業者の皆様に蔓延防止のための行動制限や感染防止対策の徹底などを要請するとともに、医療提供体制の一層の確保等に取組を進めてまいりました。
 しかしながら、今月に入ってもオミクロン株の勢いはとどまるところを知らずついには一日の感染者数が二千人を超えるまで感染が拡大したことから去る十五日、国に対しまん延防止等重点措置の延長を要請いたしました。国において同措置の延長が決定されましたら、飲食店等に対し営業時間の短縮や酒類の提供停止等について引き続き要請を行ってまいります。
 医療提供体制につきましては、冬場の通常医療が迫する中、病床は五百七十床程度を確保しておりますが病床使用率は六〇%程度となり迫の度合いが高まっております。オミクロン株につきましては軽症や無症状の感染者が多いことから、宿泊療養施設をこれまでの七施設に加え一月末に島田市に、今月上旬には沼津市に新たに開設し全体で一千五十七室を確保いたしました。
 自宅療養者も急激に増加しております。毎日の健康観察を確実に行うとともに、地域の医療機関の御協力により診療を受けられる体制を取っています。あわせて食料支援や緊急時の安否確認につきましても市町と連携して取り組んでおります。
 感染者の増加に歯止めがかからない状況ではありますが、医療崩壊とならないよう医療関係者、各種団体関係者、市町の皆様と力を合わせて乗り越えてまいります。県民の皆様におかれましては引き続き基本的な感染対策に取り組んでいただくとともに、感染リスクが高まる行動は避けていただくなど感染防止対策の徹底をお願いいたします。
 出口戦略であるワクチン接種につきましては市町における三回目の接種が本格化しており、現在六十五歳以上の高齢者への接種を中心に進めております。市町においては接種券の前倒し発送のほか子供の感染者が増えていることを踏まえた保育士や幼稚園教諭、小中学校の教員などへの優先接種を進めるなど様々な工夫を凝らし取り組まれています。
 県では、ワクチン接種の加速化を図るため先月三十一日に静岡市のもくせい会館に広域接種会場を開設いたしました。今月には伊東市の健康福祉センターと松崎町の農村環境改善センター、焼津市の大井川庁舎に、来月には下田市の県総合庁舎に広域接種会場を順次開設いたします。四月以降につきましてはもくせい会館の広域接種会場を継続するとともに、浜松市、富士市、沼津市、掛川市に会場を設置し市町と連携しつつ接種を加速してまいります。
 コロナ禍で暮らし方や働き方、人の流れが大きく変化し二〇二一年の人口移動報告では東京二十三区が転出超過となるなど東京離れが進み地方回帰の動きが目に見えて加速しております。まさにポスト東京時代の動きが本格化しており、この流れを捉え東京時代から静岡時代へとも言うべき時代を先陣を切って創り上げてまいります。
 こうした中、来年度から新しい総合計画がスタートします。新型コロナ危機を克服し新しい時代を切り開いていくためにコロナ禍での教訓を踏まえ疾病を防ぐ対策、防疫対策の強化や利他の精神に支えられた力強い経済の再生、生活困窮に陥った人々などへの支援の充実等に取り組んでまいります。また障害、性別、年齢、国籍などの多様性を認め合う包摂性のある社会の実現に加え、環境と経済の両立を目指す地域循環共生圏の形成や命の水と自然環境の保全を図ることにより本県を世界に輝くSDGsのモデル県として将来にわたり持続可能な発展を実現してまいります。
 政府は、ポストコロナ時代の新しい社会の在り方をデジタル田園都市国家構想として示しました。大平正芳元首相が提唱した田園都市国家構想から四十年余り、コロナ禍を契機にデジタルの力で構想が実現に向けて動き出しました。田園都市はガーデンシティーの和訳であります。都市の活力と豊かな自然環境を合わせ持つ本県こそが、デジタルガーデンシティーを実現する地としてそのモデルとなるべく率先して取り組んでまいります。
 富士山、南アルプス、駿河湾、伊豆半島、浜名湖など美しい自然環境や豊かな食材、歴史に培われた文化、ゆとりのある暮らし空間、活力ある産業など本県の持つ強みを最大限に生かし地域のデジタル実装を加速させ新たなガーデンシティーの形成を推進してまいります。
 次期総合計画後期アクションプランは、総合計画審議会をはじめ県議会や市町、県民の皆様から幅広い御意見を頂きながら策定を進めてまいりました。今議会での御議論、御意見を踏まえ成案を得てまいりたいと考えております。
 コロナ禍による時代の転換点を大きな変革のチャンスと捉え、地方活躍時代を牽引する富国有徳の美しいふじのくにづくりを着実に推進してまいりますので、県議会の皆様のさらなる御支援、御協力を賜りますようお願いを申し上げます。
 初めに、令和四年度当初予算案と組織定数の改編についてであります。
 ポストコロナ時代を見据えた次期総合計画静岡県の新ビジョン後期アクションプランを計画初年度から着実に展開するための予算編成と、これを推進する組織定数の改編を行いました。また後期アクションプランにスピード感を持って取り組むため二月補正予算で百億円をふじのくにづくり推進基金に積み立てることといたしました。令和四年度の一般会計の歳出予算総額は一兆三千六百四十四億円で前年度当初予算を五百五十億円、四・二%上回る予算を編成いたしました。
 予算編成と組織定数改編の基本方針の一つ目は、人づくり・富づくりを具体化する取組であります。
 以下、新ビジョンを具体化するための五つの基本方向に沿って主な政策を御説明申し上げます。
 第一の柱は、安全・安心な地域づくりであります。
 初めに、防疫対策の強化についてであります。
 県民の皆様の命と健康を守るため、引き続き新型コロナウイルス感染症対策と社会経済活動との両立に全力で取り組んでまいります。またパンデミックのおそれのある感染症の発生に備えワクチン、治療薬の国内開発の促進や対策の拠点となる本県独自の管理センターの設置などあらゆる感染症への対応力を強化し防疫先進県を目指してまいります。
 次に、将来の新興・再興感染症への備えについてであります。
 昨年十二月、静岡県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の新興感染症等対策検討部会を開催し仮称ふじのくに感染症管理センターの機能や設置場所について御議論を頂きました。会議では感染症管理センターの必要性について御理解を頂くとともに、設置場所については三島市の静岡県総合健康センターを活用する案を御了承頂きました。今後は感染症管理センターの機能についてさらに御議論を頂き年度内に基本構想を策定してまいります。
 また、静岡県総合健康センターにつきましては感染症管理センターが開所する令和五年度まで県民の皆様に引き続き御利用頂けるよう指定管理による運営を一年間継続することとし、指定管理者の指定について今議会にお諮りしているところであります。
 次に、地震・津波対策についてであります。
 浜松市沿岸域の防潮堤や命山、避難タワー等の津波避難施設の整備など地震・津波対策アクションプログラム二〇一三の着実な推進により二〇一九年度末の時点で想定される犠牲者の約七割減少まで対策が進んでまいりました。令和四年度は計画の最終年度となることから目標とする八割減少の達成に向け取組を一層加速してまいります。
 今後、津波避難施設の整備効果が最大限に発揮されるよう県民の皆様の命を守るための基本である早期避難意識の向上について取組を強化してまいります。このため県民お一人お一人に災害リスクや地域特性に応じた個別避難計画であるわたしの避難計画を策定していただけるよう市町と一丸となって強力に進めてまいります。
 来年度は津波浸水想定区域を重点区域として進め、その他の区域については地震・津波対策等減災交付金に新たな支援メニューを創設し市町の取組を支援してまいります。県民の皆様のかけがえのない生命や財産を守るためハードとソフトとの両面から着実かつ迅速に対策を進め防災先進県にふさわしい地域をつくり上げてまいります。
 次に、県土強靱化の推進についてであります。
 近年、地球規模の気候変動などの影響により頻発化、激甚化する風水害や切迫する南海トラフ地震、インフラの老朽化などへの対応が喫緊の課題となっております。国の事業規模十五兆円の防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策に呼応し道路、河川、港湾などの機能強化や老朽化対策を重点的、集中的に進めてまいります。また県単独の取組として道路の防災対策、河川、港湾、漁港のしゅんせつ、治山ダムの設置、道路や河川堤防の除草、防草対策などに必要な予算を盛り込み県土の強靱化に取り組んでまいります。
 次に、熱海市伊豆山地区における土石流災害への対応についてであります。
 逢初川下流域復旧・復興チームを中心に地域の理解と関係機関との連携の下、順次復旧工事を進めております。中下流部では河川、道路、港湾及び宅地に堆積した土砂の撤去がおおむね完了いたしました。上流部につきましては国の直轄砂防事業として年度内に新設の砂防堰堤工事に着手いたします。
 今後は熱海市の復興まちづくりと連携し具体的な河川整備計画の策定を進め、一日も早い復旧・復興に向け全力を挙げて取り組んでまいります。
 今回の事態について、県民の生命、身体及び財産を守るための静岡県土採取等規制条例が十分な効力を持たなかったのは重大な問題であったと認識しております。二度と同じような災害を発生させないため静岡県土採取等規制条例を抜本的に見直し盛土に特化した新しい条例を制定することとし、今議会に条例案をお諮りしているところであります。
 新条例では、これまでの届出制を許可制に改め罰則を地方自治法上の上限に引き上げるほか、土地所有者の責務も規定するなどより実効性のある厳格な内容といたしました。盛土等の構造基準規定や土壌汚染に係る基準を定め、原則として何人も有害物質で汚染された基準に適合しない土砂を用いた盛土等を行ってはならないことといたします。盛土行為者に対する厳格な指導を行うため市町への権限移譲は行わず県が統一的に運用をいたします。危険な盛土等を未然に防ぐための監視指導、許可申請に係る審査事務を一体的に実施するため所管をくらし・環境部に統一し盛土対策課を新設いたします。
 次に、安全な生活の確保と交通安全の推進についてであります。
 県民の安全で安心な生活を守るため、地域の犯罪情勢に即した効果的な犯罪抑止対策や地域との協働による自主防犯活動に加え、依然として高水準で推移している人身安全関連事案や特殊詐欺など様々な犯罪への対策を進めてまいります。特に極めて深刻な状況にある児童虐待事案に対しては県単独措置の警察官を増員して体制の強化を図り警察と児童相談所との連携を一層強化してまいります。また警察活動の拠点となる大仁警察署や交通管制センターの整備を進めてまいります。
 令和三年の暦年ベースの交通事故発生状況につきましては、人身事故件数は一万九千三百八十二件で前年に比べ一千二百八十五件減少いたしました。また死者数は八十九人で前年を十九人下回り、統計を取り始めた昭和二十八年以降最少を記録しております。
 今後も、交通事故のない安全な社会の実現を目指し高齢者と子供の交通事故防止を重点として横断歩行者を保護する活動や交通指導取締りを強化いたします。また視認性に優れ二酸化炭素の排出削減効果も高いLED信号機の整備や車線逸脱を防止する区画線の引き直しに重点的に取り組むなど総合的な交通事故防止対策を推進してまいります。
 次に、医療提供体制の確保充実についてであります。
 現在、本県の保健医療に関する基本指針である静岡県保健医療計画の見直し作業を進めております。見直しに当たりましては国の指針等を踏まえ新興感染症等対策を含めた医療提供体制の確保など新たに対応が求められる事項についても検討し、年度内に取りまとめてまいります。
 医師の確保につきましては、ふじのくにバーチャルメディカルカレッジにより現在五百七十八人の医学修学研修資金利用者が県内病院に従事しております。引き続き全国最大規模の医学修学研修資金の貸与を促進するとともに、既に全国一の規模である六十二人の地域枠をさらに六十五人へと拡充するなど県内外の大学や関係機関と密接に連携し地域医療に従事する医師の確保・育成に努めてまいります。また令和六年度からの医師の時間外労働の上限規制適用に向け勤務環境の改善を図る医療機関に対する支援の充実にも取り組んでまいります。
 骨髄移植の推進につきましては、一人でも多くの方に移植機会を提供するにはドナー登録の拡大が必要であります。またドナー登録者が骨髄提供をするには入院が必要となるため都合がつかないなどの理由で提供を断るケースが少なくありません。このためドナーや勤務先の負担を軽減する助成制度を創設し安心して骨髄提供ができる環境を整備いたします。一人でも多くの方にドナー登録をしていただき必要な方が確実に骨髄移植を受けられるよう市町や関係機関と連携し積極的に取り組んでまいります。
 次に、健康寿命の延伸についてであります。
 本県の健康寿命は着実に延伸しており、厚生労働省による令和元年の調査では男女とも全国五位と引き続き全国トップクラスの健康長寿県であります。一方で本県は脳血管疾患による死亡率が高く、その一因である高血圧への対策が喫緊の課題であります。
 このため、昨年七月に立ち上げたヘルスオープンイノベーション静岡において静岡社会健康医学大学院大学の研究成果も活用しながら減塩対策や血圧測定の習慣化などの実証実験と効果の検証を行い、科学的知見に基づく取組に発展させてまいります。新たな視点や発想で健康課題の解決に取り組み県民の健康寿命のさらなる延伸を図ってまいります。
 次に、障害のある人が分け隔てられない共生社会の実現についてであります。
 日常生活において医療的ケアを必要とする児童及びその御家族が、住み慣れた地域で安心して生活できるよう様々な相談にワンストップで対応する医療的ケア児支援センターを新たに設置いたします。支援センターでは専門的な相談への対応や情報提供を行うとともに、支援に携わる専門人材の養成、関係機関との連携の強化を図ってまいります。
 また、障害福祉事業所で働く障害のある方の工賃水準の向上や経済的自立を目指し、オンラインを活用した新たな商談会の開催や福産品の購入を呼びかける一人一品運動協力隊の企業への展開など官民一体でふじのくに福産品の販路拡大に取り組んでまいります。
 第二の柱は、持続的な発展に向けた新たな挑戦であります。
 初めに、デジタル社会の形成についてであります。
 社会課題の解決や新たな付加価値の創出に向け、DX――デジタルトランスフォーメーションの導入促進を加速いたします。地理的な制約、年齢、性別、国籍の違い、障害、疾病の有無、経済的な状況等々にかかわらず誰もがデジタル化の恩恵を享受できる誰一人取り残さないデジタル社会の実現を目指してまいります。
 デジタル人材の確保・育成につきましては、デジタル技術が進展し産業構造が大きく変化する中、新たな価値を生み出すビジネススタイルの確立が求められております。AIを活用して生産性向上や事業成長を推進する高度なスキルを持った企業人材を育成するとともに、県立工科短期大学校等で実施するデジタル関連の在職者訓練を拡充してまいります。
 デジタル技術を活用した学校教育の質の向上と効率化を図るため、教員のICT活用に関する指導力の向上とICT支援員の派遣による授業、校務での活用支援を行います。県立学校等の実態を踏まえたモデル実証等を通じて中長期的な視点に立ったICT環境の整備を推進してまいります。
 デジタル機器に不慣れな人を取り残さない対策も必要です。このため県所管団体等を対象に講習会を開催し、基礎的な知識や機器の使い方を身につけ地域における身近な相談役となるふじのくにデジタルサポーターを四年間で一千二百人育成してまいります。
 デジタル技術の活用に向けた環境整備につきましては、デジタル田園都市国家構想の基盤となる高速大容量の通信規格5Gのエリア展開を促進するためアンテナ基地局の設置場所の候補となる県有施設のデータベースを公開し、通信事業者との調整を一元的に行うワンストップ窓口を設置いたします。
 デジタル技術の実装の促進につきましては、社会課題の解決や新たな付加価値の創出に向けDXの導入が急務です。中小企業や小規模事業者などによるデジタル化や業態転換への支援、ECサイトやオンライン商談会による県産農林水産品や加工品の販路拡大、スマート農業技術の導入支援、航空レーザー解析による森林のデジタル情報基盤の整備、観光デジタル情報プラットフォームを活用した情報発信など社会のあらゆる分野においてデジタル技術の活用を積極的に進めてまいります。
 行政のデジタル化の推進につきましては、グランシップや県立中央図書館など県有施設への高速インターネット環境の整備や三次元点群データ等を活用した次世代インフラプラットフォームの構築、電子契約、電子納付の導入検証等を実施するなどスマート自治体の実現に向けた環境を整備してまいります。また市町の自治体情報システムの標準化・共通化を令和七年度末の期限までに完了させるため支援窓口を通じた進管理や相談対応、専門家によるアウトリーチ型支援など各市町の実情を踏まえたきめ細かな支援を実施してまいります。
 次に、環境と経済が両立した社会の形成についてであります。
 脱炭素社会の構築につきましては、近年世界各地で地球温暖化に起因すると考えられる異常気象や豪雨災害が頻発しており、気候変動は全世界の国々が直面している喫緊の課題であります。
 本県においても、地球温暖化に迅速かつ的確に対応していくため二〇五〇年までに脱炭素社会を実現することを長期目標としております。二〇三〇年度の温室効果ガス排出量につきましては国の目標を上回る二〇一三年度比四六・六%削減を目標に掲げた地球温暖化対策実行計画を本年度中に策定いたします。地球温暖化対策の推進は将来世代に対する今を生きる私たちの責任という認識の下、県民や企業の皆様と連携し社会総がかりで温室効果ガスの排出削減に取り組み脱炭素社会の実現を目指してまいります。
 徹底した省エネルギー社会の実現につきましては、産業、業務、家庭、運輸それぞれの分野における徹底した省エネルギー対策を進めることで二酸化炭素の排出を削減します。計画に掲げる目標を達成するためには排出量が大きい産業業務部門においてこれまで以上に脱炭素化を進める必要があります。
 このため、中小企業脱炭素化推進協議会を中心とした新たなプラットフォームを構築し相談窓口の設置、ニーズに応じた専門家派遣、人材育成セミナーなどを実施いたします。また中小企業の事業所、店舗等の省エネルギー化を進めるためボイラーや空調設備などの省エネルギー設備の導入に対する助成制度の創設や資金調達支援などを行ってまいります。
 家庭部門の省エネルギー化につきましては、新築住宅のZEH化――ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、既存住宅の断熱改修への支援、県民運動ふじのくにCOOLチャレンジの展開などによりライフスタイルの脱炭素化を図ってまいります。県自らの取組といたしましては県有建築物のZEB化――ネット・ゼロ・エネルギー・ビルや道路照明灯、信号機のLED化を進めるほか公用車の電動車化に取り組みます。
 再生可能エネルギーの導入、利用促進につきましては、脱炭素化を進めるためにはエネルギー源を化石燃料から自然由来の再生可能エネルギーに転換することが不可欠であります。本県は全国トップクラスの日照環境や豊かな水、森林等の地域資源を有しております。この地域特性を生かし再生可能エネルギーの導入を拡大してまいります。富士山静岡空港や清水港などの公共施設において率先して再生可能エネルギーの導入を図るとともに、民間事業者による太陽光発電、小水力発電、バイオマス発電の導入を強力に支援してまいります。また水素社会の到来を見据え、水素ステーションの設置に対する助成を行うなど自立分散型エネルギーシステムの構築を促進いたします。
 技術革新の推進につきましては、本県経済を牽引する自動車産業は電動化、デジタル化、脱炭素化のグローバルな課題に直面しておりスピード感のある対応が求められています。次世代自動車センター浜松を中心とした企業間連携による製品開発の強化、デジタル人材の育成、脱炭素経営の推進を図るほか工業技術研究所を拠点としたデジタルものづくりの支援体制を強化し、急速に進む産業構造の大転換に地域企業がいち早く対応できるよう全力で支えてまいります。
 全国に先駆けて取り組んでいる植物由来で環境負荷が低い新素材CNF  セルロースナノファイバーについて、自動車用部材への産業応用に向け今月、関連企業、大学、金融機関などで構成する研究会を立ち上げました。今後は研究会の御意見も踏まえ循環型経済における新しいビジネスモデルの構築を目指してまいります。
 次に、地域循環共生圏の形成についてであります。
 本県の進めるふじのくにのフロンティアを拓く取組の第一期では、七十四の推進区域のうち本年度末で約七割となる五十二区域が完了し新たな産業の振興や雇用の創出、ゆとりある住空間など様々な効果が生まれております。現在の第二期では地域の共生と対流を促す推進エリアを創設し、新たなワーケーションスタイルの構築やスマート農業の展開、地域交通と連携したMaaSなど多岐にわたる十一エリア十八市町の取組を認定し地域の特性を生かした取組を段階的に進めてまいりました。
 取組期間を一年前倒しして来年度から取り組む第三期では、脱炭素社会への移行や循環型社会の形成、自然との共生の実現、SDGsの達成などを強力に推進するため新たに地域循環共生圏の形成を推し進めます。これまでの地域の共生と対流の創出を進めつつ、県内四つの圏域において地域特性を生かした地域循環共生圏の形成に発展的に取り組むことにより環境と経済が両立する社会を目指してまいります。
 次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
 昨年十二月十九日に第十三回リニア中央新幹線静岡工区有識者会議が開催され、大井川水資源問題に関し有識者会議がJR東海に対して行ってきた約一年八か月の助言指導、議論の内容を総括する大井川水資源問題に関する中間報告が取りまとめられました。中間報告では多くの新たな知見が示されるとともに、「JR東海は、中間報告の内容を十分に理解し、有識者会議におけるこれまでの助言・指導等を踏まえて作成した取組み資料に基づき、水資源利用への影響の回避・低減に関する取組みを適切に実施すべきである」とされています。このことにより大井川水資源問題について県の専門部会で対話を再開できる下地ができたと受け止めております。
 一方、工事中のトンネル湧水の全量の戻し方については解決策が示されておりません。また水質への影響や発生土の処理方法などについても議論が十分に行われておりません。さらに生態系への影響については解析結果によれば地下水位が三百メートル以上低下することが示されましたが、有識者会議ではそれ以上の議論は行われていません。これらのことから静岡県及び流域市町、利水団体として現状では南アルプストンネル工事を認めることのできる状況にはないと認識が一致しました。
 流域住民の理解と協力が得られることなくトンネル掘削工事に着工しないことは流域住民とJR東海の約束であります。JR東海に対しましては南アルプストンネル工事に着工できない状況を十分認識すること、国土交通省には、JR東海に対して南アルプストンネル工事に着工できない状況を認識するよう御指導をお願いしました。
 あわせて、JR東海から生態系への影響の適切な回避、低減策が示されない状況を踏まえJR東海に対して適切な回避、低減策を速やかに示すことを、国土交通省に対しては生物多様性の問題について積極的な関与と今後の有識者会議の開催計画を示していただくことを要請しております。
 今後、地質構造・水資源専門部会を開催し大井川水資源問題についてJR東海との対話を再開することになりますが、JR東海には本県及び流域市町、利水団体が一致した認識である現状では南アルプストンネル工事は認めることのできる状況にはないことを十分認識していただき真摯に対応することを求めてまいります。引き続き大井川の命の水と南アルプスの自然環境がリニア中央新幹線トンネル工事で損なわれることのないよう全力で取り組んでまいります。
 次に、豊かな社会を支える命の水の保全についてであります。
 近年、地球温暖化に伴う気候変動や開発行為等の社会経済活動などが水循環に変化を生じさせ洪水、渇水、生態系への影響など様々な問題が顕在化しております。本県においては、伊豆半島における太陽光発電所の建設や熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害などを契機として開発行為による水環境への影響を危惧する声が高まっております。
 こうした県民の皆様の不安を払拭するため、静岡県水循環保全条例を制定し健全な水循環を維持回復するための施策を流域全体で効果的に推進いたします。水源地を保全することにより県民共有の財産である水資源を守り一層安全で豊かな流域の実現を目指してまいります。また化学物質の影響が懸念されている富士川流域においては、来年度も山梨県と連携し豊かな水環境の保全に向け堆積物等の調査を継続し得られたデータを科学的に評価してまいります。
 次に、南アルプスの利活用と保全についてであります。
 昨年七月に南アルプスを未来につなぐ会を発足するとともに、ユーチューブをはじめとするSNSを活用した南アルプスの魅力発信等に取り組んでおります。また南アルプスに関する研究活動の活性化と学術研究の体系化を図り世界に通じる南アルプス学としてその発展に寄与するため、二月十五日に南アルプス学会を立ち上げました。さらにユネスコエコパークの理念である利活用の促進と保全活動の調和を図り地域の持続可能な発展を目指す上で中核となる組織として来年度、仮称南アルプスみらい財団を設立いたします。
 第三の柱は、未来を担う有徳の人づくりであります。
 初めに、ヤングケアラーへの支援についてであります。
 昨年五月に公表された国のプロジェクトチームの報告書では、取り組むべき施策として早期発見・把握、支援策の推進、社会的認知度の向上の三本柱が示されました。現在実施中の実態調査の結果を踏まえ、来年度はヤングケアラーからの相談等に対応するため支援体制の構築に取り組む市町にコーディネーターを派遣し関係部署の連携体制を強化いたします。
 教育分野や福祉分野におきましては、関係者が連携して早期に気づき支援につなげていくため教育、介護、障害などの関係機関の職員を対象に研修を実施してまいります。学校現場におきましてはスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーを増員しきめ細かな支援を行ってまいります。
 次に、特別支援学校の整備についてであります。
 知的障害を対象とする特別支援学校の狭隘化解消や児童生徒の通学負担の軽減を図るため、令和八年度の開校を目指して静岡地区に新たな特別支援学校の整備を進めます。このほか令和五年度の開校を目指して富士東高等学校内に、令和六年度の開校を目指して小山高等学校内にそれぞれ特別支援学校の高等部の分校の整備を進めてまいります。
 次に、県立学校の老朽化対策についてであります。
 子供たちの安全で快適な学習環境を確保するため計画的に老朽化対策を進めており、来年度は新たに二校四棟の建て替えの設計に着手いたします。県立高校の普通教室への空調設備につきましては本年度全ての整備が完了しましたので、引き続き特別教室への空調設備の整備を進めてまいります。
 次に、国際的な学びの推進についてであります。
 グローバル化の進展に伴い、真に国際社会で活躍できる人材を育成するため探究的学習を特色とする国際バカロレア教育の県立高校への導入実現に向けた検討を進めております。今後は本年度中に策定する基本計画に基づき準備委員会を設置し導入校を決定するとともに、国際バカロレア機構への申請準備や教員の養成に取り組んでまいります。
 次に、性の多様性理解等の促進についてであります。
 LGBTなど性的マイノリティーの方に対する偏見や差別の解消を図り誰もが生きづらさを感じることがない社会を実現するため、性の多様性に対する理解促進や当事者への支援が必要であります。
 このため、ホームページによる基礎知識や支援内容の情報発信のほか理解者養成講座の開催等により県民の理解促進に取り組んでまいります。また性的マイノリティーの方の悩みや不安の解消に向け専門相談員による電話相談や当事者同士の交流会による支援を継続してまいります。
 同性カップルなどの関係を社会的に承認するパートナーシップ制度につきましては、当事者が安心感や自己肯定感を得られるだけでなく性の多様性に対する理解促進にも大きな効果があります。来年度中を目途に県による広域的な制度の導入を目指してまいります。
 第四の柱は、豊かな暮らしの実現であります。
 初めに、地域主導型の経済政策フジノミクスの推進についてであります。
 買うバイと寄り添うバイから名づけた本県独自のバイ・シズオカを皮切りに、山梨県と連携したバイ・ふじのくに、長野、新潟県を加えたバイ・山の洲くにを展開し個人消費を喚起しております。これまで山梨県のさくらんぼ、桃、シャインマスカットや本県の温室メロン、お茶、海産物などの相互販売、物産展の相互開催、ECサイトでの特産物の販売、鮮魚の高鮮度供給モデルの実証実験、観光交流などに取り組み確かな手応えを感じております。
 今後は、昨年十一月に採択した中央日本四県知事共同宣言を踏まえ新たなサイクルルートの検討や鮮魚の高鮮度供給モデルの新潟県への拡大、教育旅行の拡充、高速道路会社と連携した周遊企画など各県との連携を強化し取組を加速させてまいります。
 GDPの合計がオーストリアにも匹敵するこの広域経済圏において、生産と消費の新しい好循環を創出し人を幸せにしながら自分も幸せになるという自他と自利が一体の幸せを呼ぶ経済圏の形成を一層本格化させてまいります。
 次に、伊豆ヘルスケア温泉イノベーションプロジェクト  ICOIプロジェクトについてであります。
 伊豆地域に温泉と食、スポーツなどを組み合わせた新たなヘルスケア産業を創出し身も心も元気になる世界的リゾート伊豆の実現を目指してまいります。アドバイザリーボードを構成する有識者の方々から御意見を頂きながら科学的エビデンスとデジタル技術を用いた健康増進やアスリートの疲労回復、健康経営企業を対象としたワーケーションなど温泉を活用した新たなサービスの開発に地元市町、関係団体と一体となって伊豆地域全体で取り組んでまいります。
 次に、美しく豊かな静岡の海の保全についてであります。
 駿河湾や浜名湖に代表される静岡の海は、美しい自然環境が多くの人々に親しまれ豊富な海洋資源に恵まれています。近年アサリやサクラエビの漁獲量の低迷や海洋汚染など様々な社会的課題が顕在化しております。こうした課題を解決し持続可能な海洋環境を実現するためには海に関する活動を行う個人、団体、企業、大学などの連携が不可欠です。静岡の海の美しさ、豊かさを未来に引き継ぐため静岡県美しく豊かな海保全基金を創設し海洋プラスチックごみの海洋汚染対策、海洋資源・生物多様性の保全に貢献する研究開発や実践活動を強力に支援してまいります。
 次に、富を支える地域産業の振興についてであります。
 官民一体となって産業成長戦略を進めるため、産業戦略推進センターオープンイノベーション静岡を中心に支援情報の一元化や企業参加型コミュニティーサイトの開設などプラットフォーム機能の強化を図り、本県経済を牽引する地域企業の新たな事業展開を促進してまいります。
 本県経済の活力の源である地域企業の支援につきましては、デジタル化や業態転換など新たなビジネスモデルへの挑戦、経営革新による経営力の強化、IoTを活用した生産性の向上に加え専門家派遣による経営課題の解決など中小企業、小規模事業者の経営基盤の強化を一層促進してまいります。
 中小企業の事業継続につきましては、県制度融資新型コロナウイルス感染症関連資金により資金繰り支援に万全を期してまいります。また脱炭素支援資金を創設し中小企業の脱炭素化への取組を支援してまいります。
 喫緊の課題である事業承継につきましては、商工団体や金融機関等との連携を強化し切れ目のない支援を展開するほか第三者承継の促進にも積極的に取り組んでまいります。
 次に、農林水産業の競争力の強化についてであります。
 農業につきましては、静岡茶のブランド力の強化や需要に応じた生産構造への転換を図るとともに、担い手への茶園集積・集約化を図る区画整理等の基盤整備を進め本県茶業の再生に取り組んでまいります。また有機農業を推進するためのプラットフォームづくり、SDGsの実現に向けた生産者の取組を見える化して消費者に伝える新たな認証制度の創設などにより農業生産における環境負荷の軽減を進めてまいります。
 林業につきましては、供給面では突発的な木材需要、いわゆるウッドショックなどに対応するため主伐した木材の効率的な運搬に必要となる基幹的作業道などの基盤整備を促進し森林認証材の安定供給体制の強化に取り組んでまいります。需要面では県産材の県内消費のさらなる拡大に向け住宅や非住宅建築物における木造化、木質化の促進に全力を挙げて取り組んでまいります。
 水産業につきましては、官民連携による鮮魚の高鮮度供給モデルの構築により山の洲くににおける県産水産物の需要開拓、販路拡大に取り組むなど本県水産物の競争力の強化に注力してまいります。また水産資源の増殖のため新たな放流魚種の開発に不可欠な量産実証施設を温水利用研究センター沼津分場に増設いたします。さらにMaOI機構とも連携し磯焼けにより激減したサガラメ藻場の回復に向けた技術開発を進めるなど水産王国静岡の持続的発展に取り組んでまいります。
 次に、市場と生産が結びついたマーケティング戦略の推進についてであります。
 消費者の行動様式や流通事業者のビジネスモデルが変化する中、県産品のブランド力向上を図り一層の販路拡大に取り組む必要があります。本年度新たに策定したしずおか食セレクションの愛称「頂」を活用し、中高級スーパーなどで開催する静岡フェアを通じた認知度向上やコンビニエンスストアと連携した新商品開発など多彩で高品質な県産食材の販路拡大に積極的に取り組んでまいります。また県産品の一層の輸出促進を図るため地域に応じたEC手法の開拓など新しい販路拡大の取組や輸出先国のニーズに対応した産地づくりの支援などに取り組んでまいります。
 次に、豊かで広い暮らし空間の実現についてであります。
 コロナ禍で人々のライフスタイルが変化する中、豊かで広い暮らし空間を実現しデジタルガーデンシティーの形成を目指してまいります。本県は大都市圏に比べ豊かな自然環境の中で広い暮らし空間を持つことができます。加えて経済的に負担が少ない暮らしを実現することが可能です。
 静岡らしい自然豊かでゆとりのある住まいの創出と住宅ストックの流通を促すため、県版空き家バンクを立ち上げ空き家情報を掘り起こすとともに、空き家への住み替え支援制度を創設いたします。また仕事と住まいの両立に向けテレワークオフィスのある暮らしプラスオーの住まいを推進し自宅へのテレワークスペースの導入を支援してまいります。こうした取組により本県への移住・定住を一層促進し、豊かで広い暮らし空間の実現を図ってまいります。豊かで広い空間での暮らしの実現により住まいに関わる財やサービスの需要を創出し、生産と消費の新しい好循環を生み出すことで本県の経済成長につなげてまいります。
 次に、鉄道、バスなどの地域公共交通についてであります。
 コロナ禍における外出控えや在宅勤務などによる利用者の大幅な減少により、多くの事業者が大変厳しい経営状況に置かれております。これまでも感染防止対策や非接触のキャッシュレスシステムの導入を支援し地域公共交通の維持確保に努めてまいりました。
 来年度は、大きく需要が落ち込んでいるタクシー事業者などの車両維持に対する支援制度の創設、密を防ぐための運行本数を維持する事業者への支援の拡充など地域公共交通の安定運行に向けた対策を強化し県民の暮らしを守ってまいります。
 次に、カーボンニュートラルポート  CNPの形成についてであります。
 地域経済を支える港湾地域は、輸出入貨物の九九・六%が経由する国際サプライチェーンの拠点であり多様な産業が立地するエネルギーの大消費地でもあります。港湾地域全体で次世代エネルギーの受入れ環境の整備や温室効果ガスの排出削減に取り組むことは港湾の競争力の強化にもつながります。
 清水港では昨年十一月、国、県、市、民間事業者等で構成する清水港カーボンニュートラルポート協議会を設立し官民一体となって脱炭素化に向けた検討を始め、来年度は港湾の特性や利用企業のニーズ等を踏まえたカーボンニュートラルポート形成計画を策定いたします。また田子の浦港や御前崎港においても順次計画を策定してまいりますが、計画策定に先行して御前崎港のバイオマス発電用燃料受入れのための施設整備や照明のLED化などカーボンニュートラルポートの形成に向けた取組を進めてまいります。
 次に、富士山静岡空港についてであります。
 新型コロナウイルス感染症の影響による国際線の欠航、運休等により令和三年の暦年ベースの搭乗者は昨年に比べ二六・三%減の十六万千九百七十五人となりました。こうした厳しい状況が続く中昨年十一月の搭乗者は一年九か月ぶりに二万人を超え、十二月にはフジドリームエアラインズの新千歳線が九〇%を超える搭乗率を記録し搭乗者も約三万人となるなど国内線においては回復の兆しが見えつつあります。
 こうした動きを確かなものとするため、着陸料など航空会社の運航コスト軽減につながる支援を継続するほか県内観光促進事業「今こそ!しずおか元気旅」と連動した販売支援を強化するなど国内線の路線維持安定化を図ってまいります。
 国際線につきましては、航空会社への積極的な働きかけを行うとともにチャーター便に対する運航支援制度の創設、インフルエンサーによる安全・安心な空の旅の動画配信など早期運航再開に向けた取組を強化してまいります。
 第五の柱は、魅力の発信と交流の拡大であります。
 初めに、スポーツの聖地づくりについてであります。
 東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック自転車競技大会、ラグビーワールドカップ二〇一九の両大会の成功をレガシーとして未来に継承させるため、その推進役となる組織スポーツコミッション推進本部を本年一月、県庁内に設置いたしました。来年度は推進本部を中心に専門家の知見も加え、地域のスポーツ資源を活用した二つの先進モデル事業を実施してまいります。
 一つ目は、小笠山総合運動公園の機能を強化しスポーツ大会や合宿の誘致による交流の拡大やにぎわいの創出を促してまいります。二つ目は日本サイクルスポーツセンターを核に自治体、企業、サイクル愛好団体などの関係者と連携し自転車競技大会の誘致や開催などに取り組んでまいります。これらの取組結果を検証した上で官民連携のスポーツを核とした地域づくりを県内全域へ展開してまいります。
 次に、文化芸術の振興についてであります。
 東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック文化プログラムの成果を継承し、県民主体の創造的な活動の促進、文化芸術に触れる機会の提供、世界を視野に入れた文化芸術の創造・発信に取り組み生涯を通して文化に親しめる地域社会の実現を図ってまいります。
 本年一月、大井川鐵道の無人駅を舞台とした地域芸術祭無人駅の芸術祭、大井川が美術専門誌による二〇二二年注目の国際芸術祭ベストシックスに選定されました。こうした実績を積み重ね地域のアートプロジェクトが県内各地域で展開されるよう積極的に取り組んでまいります。
 今後も、アーツカウンシルしずおかを中心に専門家による人材の発掘とその活動支援を進め、幅広い分野の担い手とアーティストとの連携を促進するなど地域資源を生かした県民主体の創造的な活動を支援してまいります。
 子供が文化芸術に触れる機会の提供につきましては、これまで個々に実施してきた子供を対象とした文化事業をふじのくに文化教育プログラムとして集約いたします。学校教育との連携を強化することで広く文化芸術に触れる機会を提供し子供たちの豊かな感性を育んでまいります。
 また、古来より東西交通の要衝であった本県には各時代を通じて魅力ある文化財が多数あり観光やまちづくりへの活用が期待されております。このため地域の文化財をストーリーによりつなぎしずおか遺産として認定する制度を創設いたします。本県の貴重な文化財が観光資源として地域の発展に資するよう所有者や市町、関係団体等が一体となって利活用促進に取り組んでまいります。
 今後は、スポーツコミッションとアーツカウンシルが両輪となってスポーツの聖地と文化芸術の花咲く地域を目指して官民一体となって新たなレガシーを築いてまいります。
 次に、世界クラスの資源を生かした観光交流の拡大についてであります。
 観光スタイルが多様化し複雑化していることに加え、新しい生活様式が定着し人々の行動変容が起こる中、旅行者の意識も高まりSDGsが旅行先を選択する重要な要素となりつつあります。近年持続可能な観光  サステナブルツーリズムの実現に向けた動きが世界各地で本格化する中、日本でも多くの地域で持続可能な観光地域づくりの活動や取組が進められております。
 本県におきましても、観光庁が作成した日本版持続可能な観光ガイドラインを参考に本県のサステナブルツーリズムの方向性を観光事業者等と共有するための独自基準を創設し、旅行者から選ばれる観光地域づくりに向けて取組を本格化してまいります。自然、食文化、スポーツなど本県が誇る世界クラスの地域資源を生かしたツーリズムも取り入れたモデル事業を実施し、しずおか型サステナブルツーリズムのスタイルを確立してまいります。
 今後は、県をはじめ市町や観光事業者、企業、地域住民の皆様と一体となって経済的に成長でき環境的にも適正で社会文化的にも好ましい三方よしのツーリズムを推進し将来を見据えた持続的な観光産業の発展を図ってまいります。
 次に、ガストロノミー  食文化の意味ですが  ガストロノミーツーリズムの推進についてであります。
 本県は、富士山をはじめ南アルプス、駿河湾、伊豆半島、浜名湖など世界クラスの地域資源の宝庫であります。また多彩で高品質な四百三十九品目の食材を有する食材の王国でもあります。これらの強みを最大限に生かし自然、地理、歴史、文化等の背景から静岡の和の食文化を掘り下げツーリズムに取り込むことで本県の観光交流を新しいステージに進めてまいります。
 昨年十一月には、舞台芸術公園と日本平山頂をつなぎ、「日本平 芸と食と絶景と」をテーマに演劇と食文化を融合したモデル事業を実施し約四百人の皆様に御参加頂きました。またふじのくに地球環境史ミュージアムでは企画展「しずおかの酒と肴」において県内の豊富な食材や日本酒等の原材料に焦点を当て、料理や醸造の背景にある生物多様性への理解を深め地元の食文化を考えるユニークな試みを実施しています。こうした取組をさらに発展させ食を生かした観光地域づくりを戦略的に進めるため、和食文化学の第一人者であるふじのくに地球環境史ミュージアムの佐藤洋一郎館長をはじめ食の現場で活躍する料理人、生産者等からの助言も得ながら推進体制を強化してまいります。
 来年度は、食の魅力、質を確保するため料理店、生産者のSDGs認証などに取り組むとともに、静岡の食文化に精通したガストロノミーツーリズムコーディネーターを核に食材の生産者、料理人、観光関係者、地域住民等が一体となって観光資源と食、食文化が融合したサービスを創出し新たな観光需要の喚起に全力を挙げて取り組んでまいります。将来のインバウンド需要の回復や山の洲くににおける連携も見据えつつ国内外の人々が静岡の和の食文化を味わうために来訪する地域を実現し、しずおか型ガストロノミーツーリズムを強力に推進してまいります。
 次に、地域外交の推進についてであります。
 友好的互恵・互助に基づく善隣外交を基本理念に海外駐在員事務所などを活用し、本年友好提携四十周年を迎える中国浙江省をはじめとする重点六か国・地域を中心に友好関係の維持深化を図ってまいります。
 一方、国境を越えた往来が制限されている中、海外からの活力を積極的に取り込み県内経済の成長や人材不足を解消していくことは海外とのネットワークや情報を有する地域外交の重要な役割であります。
 このため、外国人材と県内企業とのマッチングプラットフォームの構築や外資系企業のサテライトオフィスの誘致など、新たな視点や手法を取り入れた施策を展開し県内企業の支援や地域の活性化を図ってまいります。
 今後も、コロナ禍で培った対面とオンラインを併用したいわゆるツイン外交の手法を取り入れ将来につながる交流事業を展開してまいります。
 基本方針の二つ目は、生産性の高い持続可能な行財政運営であります。
 初めに、組織定数についてであります。
 県政の重要課題に迅速かつ的確に対応できるよう見直しを行いました。
 熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害を教訓に、盛土等の規制や監視に係る業務を一元的に担う専任の組織をくらし・環境部に設置いたします。また熱海市伊豆山地区の災害復旧・復興体制を拡充するため熱海土木事務所に専任の組織を設置いたします。さらに本県の感染症対策の司令塔、拠点となる仮称ふじのくに感染症管理センターの設置に向けた準備体制を整備いたします。
 次に、次世代県庁舎の検討についてであります。
 デジタル化の進展をはじめとした社会全体の変革を見据え、現状にとらわれない柔軟な発想の下、行政サービスの維持向上や職員の働き方の変化を踏まえ検討を進めることが重要です。現在庁内に設置したプロジェクトチームにおいて県が地域において担う役割や機能の変化を想定し本庁、出先機関の役割やそこで働く職員の働き方をどう変革させていくかなど、将来の県庁の在り方についてその基本的な方向性を整理しております。
 今後は、こうした方向性も踏まえつつ民間の先進オフィスや他の自治体の調査研究を行うとともに、県民の皆様の御意見を幅広く聞きながらより具体的な検討を進めてまいります。
 次に、特別会計及び企業会計についてでありますが、特別会計は公債管理特別会計予算ほか十会計で総額七千九百六十五億七千二百万円、前年度当初予算比〇・三%の減となりました。また企業会計は工業用水道事業会計予算ほか四会計で総額八百三十九億一千七百万円、前年度当初予算比三・七%の増であります。
 次に、予算案を除く令和四年度関係のその他の議案のうち主な案件について概要を御説明申し上げます。
 第十九号議案は、組織改編に伴い部の分掌事務を変更するための条例の改正であります。
 第二十三号議案は、静岡県立ふじのくに中学校及び静岡県立伊豆伊東高等学校の設置に伴う条例の改正であります。
 第二十四号議案及び第二十五号議案は、静岡がんセンター職員及び教職員の定数の改正を行うための条例の改正であります。
 次に、令和三年度関係の議案につきましてその概要を御説明申し上げます。
 一般会計の二月補正予算額は五百七十一億二千四百万円の増額であり、この結果令和三年度の最終予算額は一兆五千五百二十七億四千八百万円となります。地方版ゴー・トゥー・トラベル事業や新型コロナウイルス感染症対策など国の補正予算に伴う経費として二百六十四億六千二百万円の増額補正等を行うとともに、人件費、災害復旧費等の減額などを併せて行うものであります。
 特別会計及び企業会計の補正は、国民健康保険事業で保険給付費の増加に対応した増額補正を行うほか事業費、財源の確定等に伴うものであります。
 令和三年度関係の予算以外の議案につきまして、主な案件について概要を御説明申し上げます。
 第六十号議案は、海面や汽水湖の環境保全に関する知識の普及、活動の促進等に要する経費に充てる基金を創設するための条例の制定であります。
 第六十二号議案及び第六十三号議案は、建設事業、土地改良事業に対する市町の負担額の変更についてお諮りするものであります。
 第六十五号議案から第六十八号議案までは、土木工事等の契約及び変更契約についてお諮りするものであります。
 以上で私の説明を終わりますが、適切なる御議決をお願いする次第であります。
○議長(宮沢正美君) 以上で説明は終わりました。

○議長(宮沢正美君) 休会についてお諮りします。
 議事の都合により、二月二十二日及び二十四日は休会とすることに御異議ありませんか。
       (「異議なし」と言う者あり)
○議長(宮沢正美君) 異議なしと認め、そのように決定しました。

○議長(宮沢正美君) 次会の議事日程を申し上げます。
 二月二十五日午前十時三十分会議を開き、質疑及び一般質問を行います。
 本日はこれで散会します。

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