本会議会議録


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令和6年12月静岡県議会定例会
知事提案説明
発言日: 12/02/2024
会派名:


○議長(落合愼悟君) 議事日程により、知事提出議案第百三十五号から第百七十六号までを一括して議題とし、知事の説明を求めます。
 鈴木知事。
       (知事 鈴木康友君登壇)
○知事(鈴木康友君) ただいま提出をいたしました議案の概要を御説明申し上げますとともに、当面する県政の課題について所信並びに諸般の報告を申し述べます。
 初めに、次期総合計画の策定についてであります。
 幸福度日本一の静岡県を実現するため、現在新たな総合計画の策定を進めているところであります。私は様々な主体の総力を結集をしてオール静岡で本県全体の均衡ある発展を目指す考えであります。
 計画の構成といたしましては、基本的な考えや目指す姿を示す経営方針とその実現に向けた具体的な施策を示す行動計画の二層構造とし、まずは今年度中に経営方針を策定することとしております。
 経営方針案では、県政運営の基本理念として意識、行動を常に見直し変化に柔軟かつ迅速に対応できる組織への変革を遂げるLGXすなわちローカル・ガバメント・トランスフォーメーションを位置づけております。また県政運営全体に共通する新しい考え方として県民一人一人の幸福実感を重視するウエルビーイングの視点を取り入れました。これまで用いてきた客観指標は政策の進捗管理等に適する一方で、県民にどのように捉えられ影響しているかを把握することが困難でした。そこで幸福実感という主観的要素を新たに追加し、この把握、分析を通じて政策を充実強化してまいります。
 また、幸福度日本一の静岡県の実現に向け、未来を創る力、豊かな暮らし、県民の安心の三つの視点で政策を体系化したほか、県内を自然的、社会的に一体性を有する四地域に区分し地域ごとの目指す姿を掲げた上でそれぞれの特色やポテンシャルを最大限発揮できる地域づくりを行ってまいります。
 新たな総合計画の策定に当たりましては、去る十月九日と先月十一日に各界各層の代表者で構成する総合計画審議会を開催し経営方針案を御審議頂きました。委員の皆様から専門的な視点に立った貴重な御意見を頂き経営方針案に反映したところであります。
 さらに、本議会におきまして二元代表制を担う県議会の皆様からも御意見を丁寧に伺い、経営方針案に反映してまいります。その上で今年度策定する経営方針に基づき来年度は具体的な取組等を盛り込んだ行動計画を策定してまいりたいと考えております。御支援と御協力を賜りますようお願いを申し上げます。
 次に、静岡県未来創造会議についてであります。
 激変する時代の潮流を的確に捉え本県の様々なポテンシャルを生かしさらなる発展を目指して戦略的に取り組むためには、日本の最先端で活躍する有識者による新たな識見や時代を見通す視点が不可欠であります。このため本県の未来に向けて新たな政策を検討するに当たり特定のテーマについて御提言頂く静岡県未来創造会議を設置し、先月一日第一回会議を開催をいたしました。国内外で広く活躍される六名の有識者から成る会議の座長には地域交通の確保やコンサルタント業務などを行う株式会社IGPIグループの冨山和彦会長にお願いをいたしました。冨山氏は産業再生機構の最高執行責任者として数々の企業を再生した経験をお持ちの経営者であり、政府関連の会議の委員も多数務められております。委員には国のAI戦略会議座長も務める松尾豊東京大学大学院教授や県内経済団体の代表者にも参加頂きました。
 御議論をお願いしたテーマは県を牽引・創造する取組及び基盤となる財政状況の二つであります。委員からは富裕層を対象にした取組をさらに拡充すべき、AIやデジタルの人材育成を強化すべき、県の今後の大きな歳出項目に対して優先順位づけやより効率的な手法を検討すべきなど具体的、実践的な御意見を頂いたところであります。
 今後は、各委員から追加の御意見等もお聞きしながらできるだけ速やかに議論の整理を進め、年明けには第二回会議を開催したいと考えております。
 次に、地域防災力の強化についてであります。
 先月一日から昨日までの地震防災強化月間において、県民一人一人のわたしの避難計画の作成や地域における避難所運営訓練の実施などについて広報啓発活動を集中的に展開いたしました。また今回は能登半島地震を踏まえ感震ブレーカーなどの火災防止対策やライフラインの機能障害を想定した備えの確認、孤立が予想される地域における給水・炊き出し訓練などを新たに実施方針の重点項目に盛り込み、昨日の地域防災の日を中心に県内各地域で自主防災組織を主体とした地域防災訓練を実施したところであります。今後も自らの命は自ら守る自助、自らの地域は皆で守る共助の体制を強化し、公助と連携した地域防災力の充実に努めてまいります。
 次に、盛土対策についてであります。
 県盛土等の規制に関する条例につきましては、災害防止上の規制は条例よりも厳しい盛土規制法に委ね、環境上の規制の一部の手続の合理化を図るため県議会の特別委員会からの御提言等も踏まえ見直し案を取りまとめました。今月中にパブリックコメントを実施し来年二月議会でお諮りをする考えであります。法律と条例による適切な盛土の規制を通じて県民の皆様の安全と安心の確保に全力で取り組んでまいります。
 次に、犯罪被害者等への支援についてであります。
 犯罪の被害に遭われた方や御家族、御遺族は再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間様々な問題を抱えることとなります。こうした方々への支援を総合的かつ計画的に推進するため、県では静岡県犯罪被害者等支援条例を制定し警察本部や知事部局、市町、関係団体等が連携して支援に取り組んでいるところであります。
 近年、犯罪被害者等が抱える問題は多岐にわたっており、時間の経過等に伴い変化しております。被害直後から中長期にわたりこれまで以上に包括的な生活再建を支援できるよう来年四月に条例の所管を警察本部から知事部局に移管する方向で準備を進めてまいります。そのため先月二十六日、現行の支援体制の課題を客観的に検証し実態に即した支援の在り方などについて検討する有識者会議を立ち上げました。今後有識者会議での議論を踏まえ支援策の充実についても併せて検討してまいります。
 次に、県職員のデジタルリテラシーの向上についてであります。
 時代が大きく変化する中、県自らが時代の先を読み意欲的に挑戦する組織へと変わっていくこと、すなわちLGXが必要であります。そのため私から、AIなどデジタル技術の急激な進展に対応するため早急に県庁内にリスキリングを進めるよう指示をいたしました。まずは幹部職員約二百人を対象として職務に必要となるDX推進の考え方やスキルを学ぶ研修等を来年一月から実施をいたします。
 今後対象者を拡大し、個人の習熟度に応じた研修体制を構築するなど県庁全体としてDXを一層加速できるようリスキリングの体制を構築してまいります。
 次に、CNFプロジェクトについてであります。
 植物由来で環境負荷の低い素材として注目されるCNFすなわちセルロースナノファイバーにつきましては、十月二十四日と二十五日の二日間国内最大規模の製品展示、ビジネスマッチングの場となる国際展示会を富士市で開催いたしました。スタートアップや海外企業を含め過去最多となる百二十三の企業や団体が出展をし、約二千名の皆様が来場をされました。会場では自動車やロボットの部材、食器、化粧品などセルロース素材を活用した製品が多数展示をされ、出展者と来場者等との交流会を通じて四百件を超える商談につながりました。また静岡大学、トヨタ車体との連携により天竜杉や富士ヒノキなど県産材由来のセルロース素材を内外装にふんだんに取り入れたコンセプトカー「しずおかもくまる」も初披露いたしました。
 脱炭素社会や循環経済を実現するCNF等の社会実装を加速をし、産学官の連携の下、全国に先駆けてCNF産業の集積と拠点化を進めてまいります。
 次に、茶業振興についてであります。
 先月の二日と三日に本県での開催は九年ぶりとなる全国お茶まつりを浜松市で開催をいたしました。全国から高度な生産技術を持った茶生産者が一堂に会し技術や知識、アイデアを共有し合うとともに、浜松らしい茶と音楽のコラボレーションによるコンサートなどを開催し約二万人が来場するなど静岡茶の消費拡大につながる交流、取組が行われました。
 また、来年には本県独自の取組として世界お茶まつり二〇二五を開催をいたします。この大会では次世代を担う若者を対象に新たな切り口としてお茶とスイーツのペアリングの提案や各国の特徴的な需要に対応した海外向け商品の展示販売などを充実し、新たな需要を一層創出してまいります。
 次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
 十月六日、国のモニタリング会議の委員と大井川流域の八市二町と静岡市、本県との意見交換会が開催をされました。本県から森副知事が出席をし現時点のJR東海との対話状況を説明したほか、市町から将来水利用に影響が出た場合の補償等に国の関与を求める意見などが出されました。また矢野座長から地域の皆様が納得されるまで会議を継続する旨の発言がありました。引き続きモニタリング会議や流域市町と丁寧なコミュニケーションを図ってまいります。
 先月一日の県の専門部会では、千枚小屋付近の一年中かれない湧水の供給経路、大井川本流の水温の変化による底生生物等への影響などについてJR東海と対話をいたしました。湧水の供給経路に関しては、JR東海から成分分析や地質調査により地表近くの地下水が湧き出していると推測されるが今後追加調査により確認すると示されました。
 また、水温変化による影響に関しては、本県から予測の前提となるトンネル湧水の温度について山梨県内のボーリング湧水の温度の実績等を踏まえて見直すよう求めたところ、JR東海が従来の方針を変更し湧水温の想定を見直すことが示されました。今回の対話により今後の主な対話項目二十八項目のうち新たに二項目の対話が進捗し、対話完了が三項目、対話中が十七項目となりました。引き続き残された課題の解決に向けてJR東海との対話をしっかりと進めてまいります。
 また、先月二十六日には国の第五回モニタリング会議が開催をされ本県とJR東海との対話の状況等が報告されたところ、矢野座長から対話は着実に進んでいるとの総括がございました。引き続きリニア中央新幹線の建設と大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全の両立を図るため国と協力してJR東海との対話を進めてまいります。
 次に、富士山静岡空港についてであります。
 本年四月から十月までの搭乗者数は約三十三万六千人で前年同期を七・六%上回るなど回復基調が続いています。十月から来年三月までの冬ダイヤにおきましては、今月十七日から香港エクスプレスが就航し開港以来初めてとなる香港線が週三往復で定期運航いたします。旺盛なインバウンド需要による地域経済の活性化や新たなビジネスも含めた地域間交流の促進が期待されるものであり、大変喜ばしく思っております。
 また、先月五日から今月二十日までの間、本県への観光客数の回復に向けて「行くなら、今なの!静岡トク旅」キャンペーンを実施しており、静岡空港においても回復が遅れている中国の上海線及び杭州線を対象に割引を行っております。引き続き富士山静岡空港株式会社や市町、関係団体等と連携し、国際線の運航再開や東南アジアなどを対象とした新規路線の開設に向け積極的に取り組んでまいります。
 次に、世界遺産富士山の登山規制導入に向けた取組についてであります。
 来年夏の登山規制導入に向けて関係市町や山小屋組合をはじめとする地元関係者と協議を重ねてまいりました。このたび本県側の三つの登山道において登山者の安全確保や富士山の環境保全を目的とした登山規制を行い、一定の管理料を徴収するという大きな方向性について地元関係者と合意に至りました。これに基づき現在、十月に実施した現地調査の結果や各登山道の実情を踏まえ条例案の検討を進めております。本議会の常任委員会において条例案の骨子について御議論を頂き、来年二月議会での条例案の提出を目指してまいります。
 次に、地域外交の推進についてであります。
 中国との交流につきましては、先月六日から九日に増井副知事を団長として県及び経済団体で構成する訪問団を浙江省に派遣をいたしました。最新鋭の技術を有するICT関連企業などを訪問したほか、省政府等との意見交換では両県省が相互にメリットを享受できるよう先端医療産業やカーボンニュートラルなどの分野において経済協力を推進していくことを確認をいたしました。今後同省との経済交流を一層推進することで県内経済の活性化につなげてまいります。
 インドとの交流につきましては、今月二十二日から二十六日にかけて私を団長として県議会や経済界の皆様等で構成する訪問団がインド・グジャラート州を訪問いたします。双方にメリットのある強固な関係を築いていくため、現在ICT分野を中心としたインド人材と県内企業とのマッチングや県内企業の現地進出支援などの実現に必要となる経済、教育、観光及び文化などに関する友好協定の締結に向けて調整を進めております。このため条例に基づき、協定締結に先立って必要な議案を本会議にお諮りをしております。
 次に、聴覚障害児の療育モデルの構築についてであります。
 先天性の聴覚障害は早期発見、早期治療に加えて適切な療育が重要であります。このため聴覚障害児療育の先進国であるオーストラリアの中核的機関シェパードセンターの療育手法を全国で初めて取り入れ、静岡県立病院機構と連携し療育モデル事業に取り組んでおります。
 先月五日、療育モデル事業に関する基本方針や役割分担等を定めた三者間の協定を締結をいたしました。今後は日本語に適した療育プログラムの作成や専門スタッフの養成、病院を拠点とした療育体制の整備を進め、来年度から聴覚障害児を受け入れた療育を進めてまいります。
 次に、令和七年度当初予算の編成についてであります。
 十月に来年度の財政収支の試算をしたところ、地方税などの一般財源総額は本年度並みの水準を確保できるものの、社会保障関係経費をはじめとする義務的経費の増加などにより財源不足額は昨年度の五百五十五億円を上回る六百二十億円となりました。これはリーマンショック時に相当する水準であり、また三年連続で財源不足額が五百億円を超える極めて厳しい試算結果となりました。また先月提出された各部局の予算要求案について事務レベルで精査しているところでありますが、財源不足額はさらに拡大する見通しであります。
 こうした中でも県民の皆様と力を合わせ、幸福度日本一の静岡県を実現する取組は積極的に進めていかなければなりません。そのためには持続可能で健全な財政基盤を確保することが不可欠であります。私は強い覚悟を持って本県の健全財政を実現する考えであります。当初予算編成では税金を一円たりとも無駄にせず最小の経費で最大の効果を発揮するという方針の下、県有資産の売却などの合理化を進めるほかあらゆる手段を尽くし、これまで以上に全庁一丸となって歳入歳出の見直しを徹底してまいります。
 また、厳しい財政状況は一朝一夕では改善しません。令和七年度当初予算編成を財政の健全化と幸福度日本一を目指す取組の第一歩とし、今後一定の期間を定めて財政改革の強化に取り組んでまいります。
 次に、議案のうち主な案件につきまして、その概要を申し上げます。
 第百三十五号議案の一般会計補正予算案は、当初予算編成後の事情変化により必要となる経費について八十六億二千万円の補正等を行うものであります。
 第百四十四号議案は、静岡県動物愛護センターを設置するための条例の制定であります。
 第百四十六号議案から第百四十九号議案までは、職員等の給与改定を行うための条例の改正であります。
 第百五十号議案は、原子力安全対策等の財政需要に対応するため核燃料税を引き続き五年間賦課徴収するための条例の制定であります。
 第百七十六号議案は、インドのグジャラート州との友好協定の締結についてお諮りをするものであります。
 以上、適切なる御議決をお願い申し上げ、私の説明を終わります。
○議長(落合愼悟君) 以上で説明は終わりました。

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