本会議会議録
議会補足文書
令和5年2月静岡県議会定例会
【 知事提案説明 】 発言日: 02/14/2023 会派名: |
○知事(川勝平太君) 提出いたしました議案等の説明に先立ちまして、一言申し上げます。
今月六日にトルコ南部で大きな地震が発生し家屋をはじめ多くの建物が損壊し多数の死傷者が発生するなどトルコ及びシリアに甚大な被害が生じております。犠牲になられました方々に哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に対しまして衷心よりお見舞いを申し上げます。
令和五年度の当初予算案並びにその他の議案を提出するに当たりその概要を御説明申し上げ、あわせて当面する県政の課題について所信の一端を申し述べます。
現在、我が国は社会経済の大きな転換期を迎え様々な課題に直面しております。第一に昨年九月に本県を襲った台風十五号をはじめとする気候変動に伴う自然災害の激甚化であります。第二にロシアのウクライナ侵略に端を発した国際情勢の激変が引き起こすエネルギー、食料品や資材などの価格高騰の長期化であります。第三に世界中の人々の暮らしや働き方、人流や物流などに大きな変化をもたらした新型コロナウイルス感染症への対応でございます。未来ある子供たち将来世代に、この静岡県をしっかりと引き継いでいけるように、我々はこれら三つをはじめとする課題を何としても克服し新しい時代を切り開く力に変えていかなければなりません。
自然災害への対応につきましては、これまでの地震・津波対策や昨年秋の台風十五号への対応などで明らかになった課題を検証し施策を見直します。国や市町、関係機関等と緊密に連携し災害対応力のさらなる強化を図ってまいります。
物価高騰への対応につきましては、急激な社会情勢の変化を踏まえて臨時的、緊急的に行ってきた幅広い支援策から転換し国が行う国民生活を広く支える政策と併せて、県は中長期的な視点に立ち社会経済環境の変化に対応できる強靱な社会の構築に向け施策を展開してまいります。
三年にも及ぶ新型コロナウイルス感染症への対応につきましては、まず現下の感染状況を乗り越えるべく感染防止対策や医療提供体制の確保に万全を期してまいります。また五月に予定される感染症法上の位置づけの変更を踏まえ随時対策を見直すとともに、新たな感染症等への備えも進めてまいります。これまでの県民の皆様の御協力と医療をはじめ関係者の皆様のたゆまぬ努力、ワクチン接種などの普及も相まって本格的なウイズコロナの日常が近づいてまいりました。
こうした中、本年は富士山の世界文化遺産登録十周年を迎え全国の自治体の中から東アジア文化都市に選定された本県が日本の文化の顔、言わば文化首都として世界のひのき舞台に立つ幕開けの年であります。文化が花開くふじのくに芸術回廊をコンセプトに県民の皆様と心を一つにし富士山をはじめとする本県そして日本の多彩な魅力を国内外に発信し、観光交流客数の増加や消費の拡大など経済効果を県内に波及させてまいります。
世界クラスの多彩な資源や人材を有する本県は、SDGsのモデル県として誰もが幸せに生きられるすばらしい日本の理想郷ふじのくにをつくり上げる気概を持ち新たな文化首都としての幕開けの年に様々な施策を展開してまいる所存であります。
初めに、令和五年度当初予算案と組織定数の改編についてであります。
基本理念は、富国有徳の美しいふじのくにづくり日本の文化首都の開幕であります。社会経済の大きな転換期を迎える中で、本県が持つポテンシャルを最大限に生かし世界共通の目標であるSDGsのフロントランナーとして富国有徳の美しいふじのくにを実現するための予算編成とこれを推進する組織定数の改編を行いました。令和五年度の一般会計の歳出予算総額は一兆三千七百三億円で過去最大規模となった前年度当初予算を五十九億円余り、〇・四%上回る予算を編成いたしました。
予算編成と組織定数改編の基本方針の一つ目は、人づくり・富づくりを着実に推進する取組であります。以下、新ビジョンを具体化するための五つの基本となる柱に沿いまして主な政策を御説明申し上げます。
第一の柱は、安全・安心な地域づくりであります。
まず、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。
昨年十月から感染者数は増加の一途をたどり十二月二十三日には国の評価レベルを二から三に引き上げるとともに、県独自の医療迫警報を発令しました。年が明けて先月以降も拡大が続き先月十三日には医療逼迫防止対策強化宣言を発令し県民の皆様に感染拡大抑制への協力を求めたところであります。この間、感染者数は過去最大を記録し病床使用率も八〇%を超えることとなりました。医療従事者の感染による休職やインフルエンザとの同時流行等による医療提供体制の危機的状況を打開するため、医療逼迫防止対策強化宣言に合わせ県内の全病院に対し病床の確保や後方支援病院への回復患者の転院の促進など感染症法に基づく要請を行いました。
また県民の皆様に対しましては、重症化リスクの低い方で症状が軽い場合にはまず自己検査をすること、仮に陽性の場合でも自己検査・療養受付センターに登録しできる限り自宅療養することをお願いしたところであります。先月中旬からは感染者数が減少に転じ病床使用率や救急搬送困難事案も減少してきたこと、一方で地域によっては医療逼迫が続いていることなどを踏まえ今月十日をもって医療迫防止対策強化宣言を終了し県独自の医療逼迫警報に切り替えたところであります。県民の皆様におかれましては引き続き感染拡大抑制への御理解と御協力をお願いいたします。
先月二十七日、国は五月八日より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の類型を現在の二類相当から季節性インフルエンザと同等の五類に移行させる方針を決定しました。これを踏まえ本県も随時対策の見直しを図ってまいります。一方で、今後の流行時にも県民の皆様が安心して適切な医療や相談を受けられるよう県医師会、県病院協会など関係団体や市町と連携し必要な対策を機動的に実施してまいります。
次に、防疫先進県への取組についてであります。
これまで新型コロナウイルス感染症対策を進める中で明らかになった課題に対応し今後の新たな感染症等の発生に備えるため、本年四月ふじのくに感染症管理センターを三島市内に設置し防疫体制を一層強化いたします。本県の防疫対策の司令塔として医師や看護師などの人材育成や情報プラットフォームの構築、国立遺伝学研究所との連携などを進め感染症対応力のさらなる底上げを図り防疫先進県を目指してまいります。
次に、危機管理体制の強化についてであります。
想定される南海トラフ地震や豪雨災害などから県民の皆様の生命や財産を守り抜くことは県政の最優先課題であります。
地震・津波対策につきましては、来年度から十年間を計画期間とする地震・津波対策アクションプログラム二〇二三仮称がスタートいたします。想定される犠牲者の最小化や避難生活の質の改善などに取り組み県民の皆様が安全・安心に生活できる社会を実現してまいります。
犠牲者の最小化に向けましては県民の皆様の早期避難意識の向上が何よりも重要であります。このため様々な自然災害に対する自分自身の行動計画を事前に考えて作成するわたしの避難計画の普及に最優先で取り組みます。令和七年度までの三年間を重点期間と位置づけ市町との緊密な連携の下、自主防災組織などを主体として取組を一層強化いたします。地域防災訓練等の機会を通じて住民一人一人の計画づくりを進め避難行動を把握しその改善等に繰り返し取り組むことで目標とする住民の早期避難意識九〇%以上を確実に達成いたします。
また、市町が実施する地震・津波対策の一層の促進に向け地震・津波対策等減災交付金を拡充いたします。アクションプログラムで重点的に取り組むわたしの避難計画の普及や避難生活の質の改善、防災対策へのデジタル技術の活用等の取組について交付率をかさ上げするなど市町の地震・津波対策を強力に支援してまいります。
災害対応力の強化につきましては、昨年の台風十五号で顕在化した課題等を踏まえ市町との連携や情報集約方法の改善に重点的に取り組んでまいります。災害発生直後に被害規模の大きい市町に派遣し迅速な現場情報の把握と市町の災害対策活動への支援に当たる市町支援機動班を先月十七日新たに県災害対策本部に設置いたしました。また市町が把握しているライフラインや孤立集落の状況など大量の被害情報を迅速に集約するため、デジタル技術を活用し県の災害情報システムの機能強化を図ってまいります。
災害対策は時間との闘いであります。刻一刻と変化する災害情報に応じて臨機応変に対処できるよう国や市町、消防、警察などの関係機関等と連携し本県の災害対応力の一層の強化に全力で取り組んでまいります。
次に、激甚化する自然災害への対応についてであります。
近年の地球規模の気候変動の影響等により自然災害が頻発化、激甚化しておりその対策の強化が喫緊の課題となっております。このため国の防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策と併せて道路、河川、砂防などの緊急自然災害防止対策に取り組んでまいります。
また、旅行者や移住者が安心して県内を巡ることができるよう駅やバス停周辺の安全な歩行空間の確保やにぎわい拠点周辺の道路拡幅などを実施するほか、昨年の台風十五号による被災箇所周辺の河道拡幅や砂防堰堤等の整備を令和六年度までの二年間で緊急的に実施してまいります。加えて多くの土砂等が堆積した河川につきましては集中的にしゅんせつを実施いたします。さらに国や市町、企業、住民など流域のあらゆる関係者と連携して取り組む流域治水の考え方に基づき、県下十五流域におきまして台風十五号による浸水被害などを検証しハード・ソフト両面から効果的な対策を講じてまいります。
次に、盛土対策についてであります。
熱海市伊豆山地区における土石流災害につきましては、先月十八日熱海港での捜索活動中に遺骨が発見され、今月九日行方の分からなかった最後の方のものと判明いたしました。御遺族の皆様の御心痛は察するに余りあります。改めて今回の災害により犠牲となられました多くの方々の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、御遺族や被害者の皆様に対し衷心よりお見舞いを申し上げます。またこの一年七か月の間、日々懸命に捜索に従事された方々に心より感謝を申し上げます。
現地の復興は道半ばであり思いを新たに被災者支援に全力で取り組んでまいります。また二度と同じような災害を発生させないため災害に強い県土づくりに総力を挙げて取り組んでまいります。
昨年十月に着手した逢初川源頭部に残る土砂の撤去につきましては雨期前までに完了いたします。また逢初川上流部において国が整備した砂防堰堤と合わせて、下流部において昨年十二月に公表した河川整備計画に基づき熱海市の復興まちづくりと連携して河川改修を進め早期復旧と復興に着実に取り組んでまいります。
不適切な盛土への対応につきましては、現地パトロールや監視カメラのほか新たに人工衛星を活用した監視を行うなど様々な手法を組み合わせ監視体制を強化いたします。周辺への影響が懸念される盛土に対しましては関係法令に基づき盛土行為者に厳格な指導を行うとともに、市町等と連携して安全性調査や現地の応急対策等を速やかに講じるなど現地の安全確保を最優先に対策を進めてまいります。
このうち、静岡市葵区杉尾・日向地区の不適切な盛土につきましては、県砂防指定地管理条例に基づく盛土行為者への指導により既に排水管の設置などの応急対策が講じられております。現在恒久的な安全対策を行うよう指導を続けるとともに、行政代執行も視野に盛土行為者への行政処分に向けて速やかに準備を進めているところであります。周辺住民の皆様の安全確保に万全を期してまいります。
また、県盛土等の規制に関する条例に基づく審査事務の円滑化を行うとともに、建設発生土の利活用や適正な処分を促すためモデル事業として県内三か所にストックヤードを整備いたします。
本年五月に施行されるいわゆる盛土規制法への対応につきましては、法に基づく規制区域の指定に向けて県内の基礎調査を速やかに進めてまいります。県盛土条例との整合を図った上で法律と条例による効果的な盛土の規制を通じて県民の皆様の生命と財産を守ってまいります。
次に、安全な生活の確保と交通安全の推進についてであります。
特殊詐欺や人身の安全に関わる事案などから県民の皆様を守るためこれまでの犯罪抑止対策や自主防犯活動に加え、スマートフォン向けアプリを活用した防犯情報の分かりやすい発信など対策をさらに進めてまいります。また警察活動の拠点となる警察署や交番、駐在所の整備なども計画的に進めてまいります。
また、令和四年の交通事故による死者数は八十三人と統計を取り始めて以降最少となりました。今後も高齢者と子供の事故防止を重点として取締りや啓発、指導を徹底するなど総合的な交通事故防止対策を講じてまいります。
次に、医療人材の確保についてであります。
医師の確保につきましては、令和七年度の目標数八千二百七十四人の達成に向けふじのくにバーチャルメディカルカレッジにより全国最大規模で医学修学研修資金を貸与し現在六百二十七人の利用者が県内の病院に勤務しております。令和五年度からは地域医療への従事を条件に貸与する地域枠に新たに三人を追加し全国最高水準の六十八人といたします。引き続き県内外の大学や県内医療機関と連携し指導医の確保や医師の配置調整に取り組むなど地域医療に貢献する医師の確保と地域偏在の解消を図ってまいります。
健康寿命延伸の中核的役割を担う知と人材の拠点、静岡社会健康医学大学院大学につきましては、本年四月より博士課程を設置し医療・保健・福祉に関する高度な学識と研究能力を身につけたプロフェッショナル人材を養成いたします。またこれらの取組をベースに県内の医師確保と医療水準の一層の向上を目指す仮称医科大学院大学につきましては、京都大学の本庶佑特別教授をはじめとする有識者の御意見を伺いながら基本構想を取りまとめ具体化に向けた検討をさらに進めてまいります。
次に、医療的ケア児等への支援についてであります。
日常生活において医療的ケアが必要な方が住み慣れた地域で安心して生活を送るためには、医療や福祉、教育の各分野が連携しきめ細かく支援することが重要であります。このため昨年七月に開所した医療的ケア児等支援センターに看護師の相談員に加え新たに福祉、教育等の分野に精通したアドバイザーを設置するほか研修会開催による人材養成を行うなど支援体制を強化いたします。また学校の登下校時や在校中のケアを行う看護師を確保するなど医療的ケア児の学びの機会の保障や保護者の負担軽減等に取り組んでまいります。
第二の柱は、持続的な発展に向けた新たな挑戦であります。
初めに、デジタル社会の形成についてであります。
社会の生産性や利便性を高め生み出された付加価値を広く県民の皆様が享受できる社会の実現を目指しデジタルの力を最大限活用してまいります。
デジタル人材の確保・育成につきましては、地域経済の成長を担うトップレベルのICT人材の確保や次世代を担う小中高生等の人材育成を戦略的に進めてまいります。またデジタル機器に不慣れな人が生活に不便を感じることがないようふじのくにデジタルサポーターの年間育成目標を三百人から五百人に拡大し地域における支援体制を充実してまいります。
先端テクノロジーの社会実装につきましては、県内各地の幅広い分野で国や関係団体等と連携し先端技術の導入や新しい仕組みの構築などの実証実験を進めてまいります。三次元点群データや現実空間をデータ化した3D都市モデルなどの情報を一元管理する次世代インフラプラットフォームの構築を進めるほか、レタスの生育予測アプリを活用した高精度な出荷情報を提供し首都圏への新たな商流を構築するなど未来技術の社会実装を加速してまいります。
次に、中小企業等の脱炭素化支援についてであります。
エネルギー価格の高止まりや電力需給の逼迫が懸念される中、事業者の省エネルギー等の取組を支援し脱炭素化と経営力の強靱化を図っていくことが重要であります。このため中小企業による省エネルギー設備導入への助成制度を拡充するとともに、太陽光発電設備や蓄電池の導入への支援制度を新たに創設いたします。また脱炭素経営の実践に向けた伴走支援や民間建築物のZEB化ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの支援など中小企業の省エネ、創エネの取組をきめ細かく支援してまいります。
次に、地域における脱炭素化の推進についてであります。
二〇五〇年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする脱炭素社会を実現するためには再生可能エネルギーの導入や徹底した省エネルギー化の推進が必要であります。このため環境と社会経済の両立により地域課題の解決を図る地域循環共生圏においてバイオマスや小水力などの再生可能エネルギー導入への支援制度を拡充いたします。市町や関係団体等と連携し圏域内の脱炭素化の取組を強力に推進してまいります。
また、省エネルギー機器の導入や植林等のCO2吸収源の確保による温室効果ガスの削減効果をクレジットとして取り引きするカーボンクレジットの創出を促進するほか、県有建築物の計画的なZEB化を推進するなど脱炭素社会の実現に向けた取組を着実に進めてまいります。
次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
先月四日、岸田文雄内閣総理大臣は年頭記者会見におきまして、本年はリニア中央新幹線の全線開業に向け大きな一歩を踏み出す年にしたい、リニア開業後の東海道新幹線における静岡県内の駅等の停車頻度の増加について本年夏をめどに一定の取りまとめを行い関係者に丁寧な説明を行っていきたいと表明されました。
JR東海は交通政策審議会中央新幹線小委員会において説明して以来、品川―名古屋間の部分開業と品川―大阪間の全線開業の二段階で工事を進める方針を変えておりません。そのため先月二十四日私は、リニアの整備に影響を及ぼす社会動向等を踏まえた上で、この二段階に分けて東海道新幹線の需要動向調査を行い、その段階ごとの本県のメリット等を説明していただくよう岸田総理に文書で要請いたしました。
先月二十五日に開催した県の地質構造・水資源専門部会では、JR東海から昨年四月に提案された田代ダム取水抑制案について過去十年間の河川流量実測値のデータや河川法上の取扱いについての政府見解が示されるなど対話に一定の進展がありました。しかしこの案の前提となる東京電力リニューアブルパワーの協力についてJR東海からは、現時点では確約は得られておらず今後同社と具体的な協議を開始するという説明にとどまっています。
一方、JR東海が地質や湧水の調査として行うと説明している高速長尺先進ボーリングにつきましては、県外への地下水流出が懸念されている中JR東海から、山梨県側から県境に向け二月上旬に開始する、しかし湧水を戻す方法が決まるまで県境を越えて実施しないとの説明がありました。
これを受け先月三十一日JR東海に対し、本県の地下水が流出するおそれが低いと考えられる区間を科学的根拠に基づいて明らかにすること、これよりも県境に近い区間における具体的なリスク管理方法等についてこの区間に達するまでに本県と合意すること、仮に合意できない場合は削孔を止めることを文書で要請いたしました。県民の皆様の不安や懸念が払拭されるよう引き続きJR東海との対話を進めてまいります。
昨年十二月二十日に開催された国の第六回環境保全有識者会議では大井川上流部の沢の地下水位変化による水生生物への影響など三つの論点案が示されました。これを受け先月十二日に県の生物多様性専門部会を開催して意見交換を行いました。この結果を踏まえ自然環境への影響の回避、低減を大原則として具体的な方策等を最大限検討することや発生土置場の課題を十分認識することなど十六項目の意見を取りまとめました。この意見について先月三十日国土交通省に対し今後の国の環境保全有識者会議の議論への十分な反映やJR東海に対する必要な指導を文書で要請したところであります。今後ともリニア中央新幹線の建設と大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全の両立を図るため、国と協力してJR東海との対話を進めてまいります。
第三の柱は、未来を担う有徳の人づくりであります。
本県の未来を担う子供たちは社会に希望と活力をもたらす一番の宝であります。全ての子供が大切にされ安心して健やかに成長できる社会の実現に全力で取り組んでまいります。
初めに、子供の安全対策についてであります。
昨年九月の牧之原市内の認定こども園で発生した痛ましい事件や十一月に裾野市内の認可保育所で明らかとなった不適切な保育に関する事件などは遺憾極まりないものであります。こうした事態は二度と繰り返してはなりません。このため事件発覚後速やかに特別指導監査を実施し安全な保育体制確保のための改善勧告を行い再発防止に向けた改善指導等を実施いたしました。
また、九月には送迎用バスを運行する全ての保育施設等への立入り指導を行い本県独自の安全管理指針を策定いたしました。十二月には県内の保育所等に対する不適切保育の未然防止に向けた研修会を開催したところであります。さらに来月には保護者等からの相談や通報を一元的に受け付ける専用の相談窓口を設けます。速やかに関係機関につなげる仕組みを整え迅速かつ的確な立入調査や指導を実施してまいります。加えて大規模保育所への保育士の追加配置や登園時間帯における保育支援者の配置を進めるなど様々な対策を講じて安心して子供が預けられる保育体制を確保してまいります。
次に、少子化対策の推進についてであります。
昨年の全国の出生数は八十万人を下回る見込みであります。少子化が急速に進行する中、県民の皆様が子供を安心して生み育てられる環境づくりが急務であります。このためふじのくに出会いサポートセンターによる結婚支援や不育症治療費への助成を行うほか、仕事と子育ての両立を奨励する国の認定制度くるみんについて新たに県内企業に対してプッシュ型で専門家を派遣し取得を働きかけるなど対策の強化を図ってまいります。
また、ふじのくに少子化突破戦略新・羅針盤の分析に基づき結婚支援や若者・子育て世代の移住促進を重点項目として令和七年度までの三年間、毎年一億円を投入し市町の取組への支援を強化いたします。さらに十二月補正予算で計上した妊産婦に対する応援金等につきましても引き続き市町と連携して支援するなど、国が検討を進めている従来とは次元の異なる少子化対策も踏まえつつ様々な取組を強力に進めてまいります。
また、子供の健やかな成長を促すためには安全でバランスの取れた食事を取り生涯にわたって望ましい食生活を送ることが大変重要であります。本県の誇る豊かな食材や食文化を学校給食に一層積極的に活用する方法について検討を始めるとともに、素材本来の味を生かした食生活を促す健康教育を充実するなど食材の王国静岡県ならではの子供の食育を推進してまいります。
次に、特色ある学びの推進についてであります。
探究的学習を特色とする国際バカロレア教育につきましては、金谷高等学校を改編し設置する予定のふじのくに国際高等学校に導入いたします。本年五月に国際バカロレア機構に候補校申請を行うとともに、校舎改修の設計に着手するなど令和八年度のカリキュラム導入を目指し着実に準備を進めてまいります。
高等学校への演劇専門教育の導入につきましては、研究校に指定した清水南高等学校の芸術科に令和六年度から演劇専攻を設置いたします。生徒の個性を尊重し豊かな感性を養う教育に取り組み、自らの才を磨き自立を目指し芸術文化の継承、発展、創造に寄与する人材を育成してまいります。
次に、特別支援学校の整備についてであります。
狭隘化の解消や通学負担の軽減を図るため特別支援学校の整備を計画的に進めているところであります。
まず、本年四月には富士東高校内に富士特別支援学校富士東分校を開校するほか、令和六年度には小山高校内に新たな高等部分校を開校する予定であります。また令和八年度には静岡視覚特別支援学校地内に、令和九年度には旧磐田市立豊田北部小学校跡地に新たな特別支援学校を開校するなど着実に整備を進め特別支援教育の一層の充実を図ってまいります。
次に、県立夜間中学の開校についてであります。
義務教育を修了できなかった方などが十五歳以上であれば誰でも学ぶことができる本県初の夜間中学、県立ふじのくに中学校を本年四月磐田市と三島市の二教場で開校いたします。入学した生徒の未来を切り拓く新たな学びの場として一人一人が学ぶ喜びを実感できる教育を進めてまいります。
次に、新県立中央図書館の整備についてであります。
令和九年度の開館を目指す新県立中央図書館につきましては、デジタル技術を活用し県民の知的創造活動を支える二十一世紀型の図書館として現在設計作業を進めているところであります。県民の皆様にとって県産木材の暖かさが感じられ親しみの持てる新時代の開かれた図書館となるよう着実に整備を進めてまいります。また移転後の跡地につきましては、県立大学を含めたエリア全体の価値が高まるように利活用の在り方を本格的に検討してまいります。
第四の柱は、豊かな暮らしの実現であります。
初めに、本県経済を強力に牽引するリーディング産業の育成についてであります。
ファルマバレープロジェクトにつきましては、これまでの患者、企業主体の医療城下町の取組を基盤にして住民主体の医療田園都市メディカルガーデンシティの実現を目指してまいります。豊かな暮らしと充実した医療・福祉・介護を提供し地域企業の成長や企業誘致を通じた高付加価値型産業の集積等を進め、地域経済を発展させる超高齢社会の理想郷づくりに市町や関係団体と一体となって取り組んでまいります。
世界的に加速する自動車分野におけるEV化、デジタル化への対応につきましては、次世代自動車センター浜松を中核として地域企業間の技術マッチングを積極的に後押しするほか、最新のEV部品の分解・展示活動やコーディネーターによる小規模企業のDXや脱炭素化等の取組に対する支援の充実を図ってまいります。また浜松工業技術支援センターにデジタルものづくりセンター仮称を新たに設置し、三次元データを用いた製品開発の支援などに取り組み自動車産業に携わる地域企業の持続的な発展を支援してまいります。
CNFセルロースナノファイバーにつきましては、海外の著名な研究者や先進的なビジネスを進める企業等が参加する国際シンポジウム・展示会を富士市内で初めて開催しグローバルな展開を図ってまいります。またCNFの第一人者である磯貝明東京大学特別教授と連携し産業人材の育成を図るほか、静岡大学を中心とした産学官連携の研究開発体制を強化しCNFの大きな市場として期待される自動車部材への応用を目指してまいります。
伊豆ヘルスケア温泉イノベーションプロジェクト、通称ICOIプロジェクトにつきましては、企業によるヘルスケアプログラム開発や新分野での事業創出を引き続き支援するとともに、温泉に関する研究や温泉文化を発信する東アジア温泉地サミットの開催などに取り組んでまいります。温泉とジオパークなどの自然や歴史、食、スポーツなどの地域資源を組み合わせた新たなヘルスケア産業を関係市町、団体等と一体となって創出し、住む方、訪れる方が身も心も元気になる伊豆地域の実現に取り組んでまいります。
次に、スタートアップ企業への支援についてであります。
本県の経済成長の新たな原動力となる県内のスタートアップ企業を支援するため本県独自の基本戦略を策定し戦略的に施策を展開してまいります。戦略の策定に先立ち来月開所するイノベーション拠点SHIPシズオカ・イノベーション・プラットフォームを活用して県内支援機関と連携し支援体制の充実を図るほか、相談受付やビジネスマッチングの開催等を通じて企業間のコミュニティー形成を推進いたします。また県内企業と首都圏を中心としたスタートアップ企業との協業を促す商談会TECHBEATShizuokaを開催するなど県内のスタートアップ企業の創出と育成にスピード感を持って取り組んでまいります。
次に、中小企業の経営力向上についてであります。
中小企業は本県経済の活力の源であります。長引く物価高騰などに対応するため経営革新による新商品開発や生産性の向上、新たなビジネスモデルの構築など経営基盤強化や収益力改善の取組を重点的に支援してまいります。
次に、農林水産業の競争力強化についてであります。
デジタルなどの先端技術の導入やAOI、ChaOI、MaOIなどの研究開発成果の投入などにより本県の農林水産物の生産拡大や付加価値の向上を図り農林水産業の競争力を一層強化してまいります。
農業につきましては、スマート農業の普及や農地の集積・集約化、基盤整備などにデジタル技術を活用し農業生産の高度化、効率化を進めてまいります。また省エネや環境負荷の低減、生産性の向上等に取り組む農業者を支援する新たな制度を創設するなど持続可能な農業への転換を進めてまいります。
茶業につきましては、世界市場を見据えた静岡茶の新たな需要開拓と有機抹茶の生産拡大など需要に応じた生産構造への転換を進めてまいります。また本年四月より茶業研究センター内に新商品開発関連施設ChaOIファクトリーが稼働いたします。食品や化粧品の素材などの多彩な分野の新商品を開発し本県茶業の力強い再生に取り組んでまいります。
林業につきましては、林業分野のイノベーションを創出するFAOIプロジェクトを中心に森林資源の循環利用を進めてまいります。資源量が豊富で安定的な生産が可能な木材生産団地への路網の先行整備等を緊急的に進めるほか、生産・流通をスマート化するデジタル林業戦略拠点の構築を目指すなど県産材の安定供給体制の強化に取り組んでまいります。また県産材を使用する住宅への助成や公共部門での率先利用などにより県産材の需要拡大を図ってまいります。
水産業につきましては、近年不漁が続くアサリやキンメダイなどの漁獲量の回復に向けてICTの活用等による食害対策、磯焼けで激減した藻場の再生などに取り組みます。またデジタル技術の活用により操業の省力化や流通の効率化などを促進し水産王国静岡の持続的な発展に取り組んでまいります。
市場と生産が結びついたマーケティング戦略の推進につきましては、山梨県との連携によるバイ・ふじのくに、長野県、新潟県を加えた四県連携のバイ・山の洲くににより人流と物流の活性化を通じて生産と消費の好循環を生み出してまいります。利他と自利の精神で支え合う地域主導型の経済政策フジノミクスを推進し物心ともに豊かな広域経済圏をつくり上げてまいります。また海外の大規模販売店等と連携し大規模、多品目に対応する販売先を確保するなど新たな商流を構築し県産品輸出の一層の強化を図ってまいります。
次に、移住・定住の促進についてであります。
コロナ禍を契機として東京一極集中のリスクが広く認識され地方暮らしへの関心が高まっております。本県への移住者数は令和三年度に一千八百六十八人と過去最高を記録いたしました。本県は首都圏に近接し利便性の高い交通・通信インフラを有しております。また富士山などの自然環境や豊かな食材、歴史に培われた文化など多彩な地域資源に恵まれ首都圏に比べて広い生活空間を持つことができます。まさに日本を代表する豊かな暮らし空間であり、こうした恵まれた地域資源を最大限に生かし本県への移住の流れを加速してまいります。
まず、住む場所にとらわれない多様な働き方を広め本県への移住者の増加につなげてまいります。東京圏在住のテレワーカーをターゲットとして本県における暮らしの魅力を発信するほか、転職情報サイトとの連携による県内企業と移住希望者とのマッチング強化や子育て世帯に対する移住・就業支援金の拡充など移住者等に対する支援を大幅に充実いたします。また若者にとって魅力ある就職先を創出するため、若年層や女性の雇用比率が高い情報通信やデザインなどのサービス業の誘致を強化するなど本県への移住や就業を強力に進めてまいります。
次に、自由度の高いワークスタイルの創出についてであります。
人口減少社会を克服するためには、若者や子育て世代が暮らしやすく働きやすい環境づくりを進める必要があります。このためインターネットを通じて全国の企業等から仕事を受注できるクラウドワークサービスの利活用を促進してまいります。県内の働き手に対しスキルアップや業務受注等への支援を行い時間や場所に縛られない自由度の高い働き方を実現してまいります。
また、中小企業へのテレワーク導入を促進するため新たにアウトリーチによる働きかけを行うなど導入から定着まできめ細かな相談支援を実施いたします。さらに離職している方のリスキリングのためオンライン講座を開催するなど、若者や子育て世代の方々がそれぞれの実情にあったワークスタイルを選択できるように暮らしと仕事を両立できる環境づくりを一層推進してまいります。
次に、カーボンニュートラルポートCNPの形成についてであります。
清水港につきましては、国、県、企業等が連携した清水港カーボンニュートラルポート形成計画を今年度末までに策定いたします。また来年度は清水港に続き御前崎港についても港の特性を生かした計画を策定してまいります。温室効果ガス排出量が多い港湾地域において多様な主体が参画する脱炭素化の先導的取組を集中的に進めてまいります。
次に、富士山静岡空港についてであります。
富士山静岡空港の令和四年の搭乗者数は、行動制限の緩和や全国旅行支援の効果などにより国内線の需要が回復し昨年の約二倍となる三十一万七千人となりました。国内線につきましては昨年に比べて運航期間は増加したものの、引き続き期間運航となっている全日本空輸に対し通期運航を働きかけるとともに、観光関係者とも連携しイン、アウト双方向での利用拡大を図ってまいります。
令和二年三月以降全便が欠航、運休となっている国際線につきましては、県議会、経済界などの皆様の御協力の下、オール静岡による働きかけが実を結び約三年ぶりの運航再開が実現いたしました。まず今月二十五日には韓国から、来月二十三日等にはベトナムからチャーター便がそれぞれ運航されます。また来月二十六日には韓国路線が週三便で運航を再開いたします。
令和五年度はコロナ禍前への回復に向けた移行期と位置づけ富士山静岡空港株式会社や市町、関係団体等と連携して航空会社等への働きかけを一層強化いたします。台湾路線や中国路線の運航再開、さらには新規就航路線の開設など令和六年度の富士山静岡空港の完全復活を目指し全力で取り組んでまいります。
第五の柱は、魅力の発信と交流の拡大についてであります。
初めに、東アジア文化都市についてであります。
本県が東アジア文化都市に選定され、日本の言わば文化首都として静岡から日本文化の魅力を国内外に発信する役割を担う一年となります。
開かれた芸術回廊オープンガーデンシアターとして本県そして日本が長きにわたり育んできた地域の風土、文化の力を遺憾なく発揮しスポーツ、食、ファッション、芸術・芸能、温泉、旅、花・庭、地域産業、多文化共生等々幅広い分野にわたる文化事業を年間を通じて切れ目なく展開してまいります。
この東アジア文化都市二〇二三静岡県は先月開幕しており、東京ガールズコレクションや静岡、富山、石川三県の知事が一堂に会した日本三霊山に関する連携協定締結式などを皮切りにスタートいたしました。今月二十三日開催の富士山の日フェスタでは県民の皆様に対し東アジア文化都市の宣言を行います。また同日にはふじのくに芸術祭二〇二三を開幕し多くの県民の皆様の参加を得て県下全域を舞台に活動の輪を大きく広げてまいります。
来月から四月には中国成都市、梅州市、韓国全州市での開幕式典に芸術団を派遣するなど交流を本格化いたします。またお互いの特産物を用いて食文化への理解を深める取組を始めるなど相互に恩恵をもたらす幅広い交流事業も進めてまいります。五月二日には両国の交流都市の関係者をお招きしグランシップで春の式典を開催します。同時に開催するふじのくにせかい演劇祭と併せて富士山をはじめ本県が誇る世界クラスの文化資源を存分に生かし世界を魅了してまいります。
秋の九月から十一月の三か月はコア期間と位置づけ静岡国際オペラコンクールや伊豆文学祭、民俗芸能フェスティバルなど市町、関係団体、民間企業などの御協力を頂きながら、年間を通じて過去開催の最高の来場者数三百六十万人以上と経済波及効果百億円以上を目指し多くの文化交流事業を集中的に展開してまいります。
県民の皆様と共に十二月のフィナーレまでおもてなしの精神で国内外から多くのお客様をお迎えし、世界中の人々の感動を呼ぶ一年となるよう総力を挙げて取り組んでまいります。
次に、富士山世界遺産登録十周年についてであります。
日本の国土のシンボルであり人類共通の宝である富士山が世界文化遺産に登録されてから十年の節目を迎えます。新しい時代に世界の宝、富士山を確実に継承していく決意を新たにしたところであります。
今月二十三日に「プラサヴェルデ」におきまして山梨県と共催する富士山の日フェスタを皮切りに、六月には富士山世界文化遺産協議会の主催により東京都内において県議会議員の皆様をはじめ関係省庁、静岡・山梨両県の多くの関係者をお招きし十周年記念式典を開催します。さらに七月には富士山世界遺産センターの主催により富士市内において富士山と同様世界遺産に登録されているイタリアのエトナ山、ニュージーランドのトンガリロ山、中国の泰山の関係者等をお招きし国際シンポジウムを開催いたします。世界遺産専門家による基調講演や聖なる山の保全や継承などを話し合うパネルディスカッション、本県の学術研究の成果発表など行い富士山の顕著な普遍的価値を改めて世界に発信いたします。
県内外の企業や学生などにも幅広く参画を呼びかけ富士山のすばらしさや文化的価値を改めて共有し国内外に価値を発信する事業を一年を通じて展開してまいります。
次に、浜名湖花博二十周年記念事業についてであります。
令和六年春に開催する浜名湖花博二十周年記念事業につきましては、本年四月に県、浜松市、湖西市、関係団体等で構成する実行委員会を開催し具体的な実施計画を取りまとめてまいります。「人・自然・テクノロジーの架け橋〜レイクハマナデジタル田園都市〜」をテーマとして花・緑のすばらしさを存分に体感できる会場の整備や、デジタルやモビリティー分野など先端技術を有する企業との出展調整などを進めているところであります。
また、本年五月には東アジア文化都市の取組と連携して日中韓の庭園・食・茶文化を紹介するプレイベントを開催し来年の本番に向けた機運醸成にも取り組んでまいります。本年四月からは準備を円滑に進めるため浜松総合庁舎内を拠点とする推進室を設置し職員十八名を配置いたします。令和六年春の開催に向けて万全の準備を進めてまいります。
次に、感動体験ツーリズムの確立についてであります。
県内の観光地はコロナ禍の厳しい状況を脱しつつあり徐々に本来のにぎわいを取り戻してまいりました。本県観光産業を再び発展の軌道に乗せていくため需要喚起策を機動的に展開するとともに、食、スポーツ、歴史・文化など本県ならではの本物の感動や体験を生かして国内外からの誘客を強力に進めてまいります。
ガストロノミーツーリズムにつきましては、今年度策定する推進方針に基づき官民一体となった取組を加速してまいります。今年の大河ドラマの主人公徳川家康をテーマとした食材の産地やゆかりの地を訪問するファムトリップ、絶景スポットや文化施設で地元食材を使った特別な料理を味わうダイニングアウトの開催など食と食文化を深掘りし多彩な食材と地域の特色ある観光資源を融合することにより来訪者に感動体験を提供してまいります。
外国人観光客の誘致につきましては、世界経済フォーラムによる昨年の観光地として魅力ランキングで一位となった日本は今や世界から選ばれる観光地であります。本県に来訪する外国人観光客の回復に向け、インバウンド施策の司令塔である静岡ツーリズムビューローや地域のDMOなどと連携し海外観光客の誘致を強力に進めてまいります。
海外の富裕層などをターゲットに絶景を見ながら楽しむアクティビティー体験や伝統文化に触れながら地域ならではの食材を味わう旅など旅行者ニーズに合った旅の情報をSNSやウェブサイトを通じて確実に届けてまいります。また海外の商談会やファムトリップを通じた旅行商品の造成のほか海外旅行会社に本県への送客を直接働きかけるなど本格化するインバウンド需要の取り込みを戦略的に進めてまいります。
次に、地域外交の推進についてであります。
世界情勢が大きく変動する中、これまで築いたネットワーク等を有効に活用し成長著しい東南アジアを中心に地域や県内企業がメリットを感じられる施策を展開してまいります。
インドにつきましては、人口が世界一になるとも言われる中ITなど顕著に発展している分野の人材と本県企業を結びつけてまいります。インド大使館を通じて本県の認知度向上と連携強化を図るとともに、インドの専門人材と県内企業とのマッチング機会を創出してまいります。
インドネシアにつきましては、人材育成や経済分野での協力に関する覚書を更新した西ジャワ州と連携し本県への就職希望者に対する日本語教育などを行い県内企業への就職が円滑に進むよう取り組んでまいります。
中国につきましては、本年九月に開催される杭州アジア競技大会に県幹部職員を派遣し空港の利活用や観光誘客等に向けたPRを行います。また学術・教育・文化・スポーツ各分野の交流や人材育成を目的としてアジアトップレベルの大学である中国の清華大学と連携し、本年秋に富士山コンファレンスを開催いたします。このほか韓国忠清南道との友好提携十周年など様々な機会を捉えて重点六か国・地域を中心に交流の深化を図ってまいります。
人や物の動きが本格的に再開される中、友好的互恵・互助に基づく善隣外交を基本とする取組に加え、県内在住の外国の方も含めて県民の皆様がより多くの恩恵を享受できるよう地域外交を推進してまいります。
次に、スポーツの聖地づくりについてであります。
世界的なスポーツイベントのレガシーを後世に継承していくため県内各地への大規模スポーツ大会や合宿の誘致などを通じてスポーツの聖地づくりを進めてまいります。
スポーツコミッションにつきましては、これまで世界規模の大会の開催により培ったノウハウをスポーツを通じた地域づくりに生かすため、モデル事業として大学ラグビーの強豪校による定期戦の誘致やジャパン・マウンテンバイク・カップの創設等に取り組んでまいりました。これらの成果を生かし地域におけるスポーツ大会や合宿誘致等を促進するため、本年四月に全県を対象としたスポーツコミッションShizuokaを立ち上げ地域スポーツコミッションへの支援体制を構築しスポーツによる地域と経済の活性化に取り組んでまいります。
パラスポーツにつきましては、今月二日に静岡県パラスポーツ推進協議会が取りまとめた最終報告書に基づく取組を進めるため県と関係団体、民間企業、スポーツ、医療・福祉、教育などの関係者からなる官民連携コンソーシアムが設立されます。民間活力を取り入れながらパラスポーツの認知度向上と裾野の拡大等に取り組みスポーツを通じた共生社会の実現を目指してまいります。
次に、遠州灘海浜公園篠原地区の公園基本計画の策定についてであります。
公園基本計画の策定に向けましては、これまでの県議会建設委員会での議論の結果や地元関係者、野球関係者の皆様から頂いた御意見等を踏まえ施設の配置、野球場の規模、構造などを組み合わせた複数のプランの評価案を本議会中にお示しし基本計画のベースとなる案への絞り込みを進めてまいります。引き続き県議会や県民の皆様の御意見を伺いながら県西部のスポーツの拠点としてふさわしく環境にも配慮した公園の実現に向け着実に取り組んでまいります。
基本方針の二つ目は、生産性の高い持続可能な行財政運営であります。
初めに、組織定数についてであります。
県政の重要課題に迅速かつ的確に対応できるよう見直しを行いました。喫緊の課題である安全・安心な地域づくりに向けて本県の防疫対策の司令塔となるふじのくに感染症管理センターの設置に必要な体制を整備するほか、不適切な盛土の安全対策や子供の安全確保に向けた指導体制を強化いたします。
また、アフターコロナに向け国内外との交流が活発化することを踏まえ地域外交施策と多文化共生施策を一体的に展開できるよう、多文化共生課をくらし・環境部から地域外交局へ移管いたします。海外の活力を本県に取り込みつつ外国人県民も含め誰もが活躍できる環境を整え多様な人々が集う魅力のある地域づくりを進めてまいります。
次に、業務の生産性向上に向けた取組についてであります。
限られた資源や時間を有効に活用し複雑化、多様化する行政ニーズに的確に対応していくためには、デジタル技術等も活用しながら従来の業務の進め方を変革し生産性を飛躍的に高めていく必要があります。このため仕事の仕組みや業務フローを見直した上でデジタルなどの新しい技術を最大限に活用し、申請手続や決裁処理等の電子化の一層の推進や場所を選ばない働き方の導入などを進め業務の効率化を大幅に進めてまいります。
次に、特別会計及び企業会計についてであります。
特別会計は公債管理特別会計予算ほか十会計で総額八千三百二十二億八千八百万円、前年度当初予算比四・五%の増となりました。また企業会計は工業用水道事業会計予算ほか四会計で総額八百七十五億四百万円、前年度当初予算比四・三%の増であります。
次に、予算議案を除く令和五年度関係のその他の議案のうち主な案件について概要を御説明申し上げます。
第十八号議案は、感染症管理センターを含む静岡県健康福祉交流プラザの三島市内への設置等に伴う条例の制定であります。
第二十号議案は、静岡県立ふじのくに国際高等学校の設置等に伴う条例の改正であります。
第二十一号議案は、大仁警察署の移転に伴い名称を伊豆中央警察署に改めるための条例の改正であります。
第二十二号議案から第二十四号議案までは、静岡がんセンター職員、教職員及び地方警察職員の定数等の改正を行うための条例の改正であります。
第二十六号議案は、職員の定年引上げに伴い退職手当の支給に要する経費を積み立てる基金を創設するための条例の制定であります。
次に、令和四年度関係の議案につきましてその概要を御説明申し上げます。
一般会計の二月補正予算額は百四十九億四千四百万円の減額であり、この結果令和四年度の最終予算額は一兆四千三百六十八億五千三百二万六千円となります。主な要因は公共事業等の年間見込に伴い減額を行うものであります。特別会計及び企業会計の補正は事業費、財源の確定等に伴うものであります。
令和四年度関係の予算以外の議案のうち主な案件につきまして、概要を御説明申し上げます。
第五十六号議案は、静清工業用水道の受益者負担の適正化を図るための条例の改正であります。
第六十号議案及び第六十一号議案は、建設事業等に対する市町の負担額の変更についてお諮りするものであります。
第六十二号議案から第六十八号議案までは、土木工事の契約等についてお諮りするものであります。
第七十三号議案は、静岡がんセンターにおける医療事故の損害賠償の額の決定及び和解についてお諮りするものであります。
以上で私の説明を終わりますが、適切なる御議決をお願いする次第であります。
○議長(藪田宏行君) 以上で説明は終わりました。
このページに関するお問い合わせ
静岡県議会事務局議事課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3482
ファクス番号:054-221-3179
gikai_giji@pref.shizuoka.lg.jp