本会議会議録


議会補足文書

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令和7年2月静岡県議会定例会
知事提案説明
発言日: 02/18/2025
会派名:


○議長(落合愼悟君) 議事日程により、知事提出議案第一号から第九十号までを一括して議題とし、知事の説明を求めます。
 鈴木知事。
       (知事 鈴木康友君登壇)
○知事(鈴木康友君) 令和七年度の当初予算案並びにその他の議案を提出するに当たりその概要を御説明申し上げ、あわせて当面する県政の課題について所信の一端を申し述べます。
 私は、かねがね組織のトップには先見力が重要な資質であると考えてまいりました。私が数々の薫陶を受けた故松下幸之助氏は、強い意志を持って何かを実現しようと努力することも先見性だと述べております。
 また、もう一人の師である故鈴木修氏は多くの企業が進出に二の足を踏んだインドで理想の実現に向け絶対に諦めないという姿勢で努力を重ねられました。昨年末、私はインドを訪問しましたが鈴木氏の先見力、揺るがぬ決意がかの地で見事に花開いておりました。このたびインド政府から卓越した貢献をたたえる国家勲章を授与されました。本県経済に多大なる貢献をされた鈴木氏にここに改めて哀悼の誠をささげるものであります。
 私自身も、幸福度日本一の静岡県を実現するという目標に向け誰よりも強い意志を持ちたいと思います。そしていかなる課題に対しても臆することなく積極的に手を打ってまいります。
 まずは、安全・安心の確保が重要です。昨年は元日に発生した能登半島地震に始まり、夏には南海トラフ地震臨時情報の発表、台風十号の影響による豪雨災害など知事として県民の皆様の生命財産を預かる責任の重大さを改めて強く認識いたしました。新たに顕在化した課題も踏まえ徹底した対策を行っていく覚悟であります。
 また、未来を切り開くためには様々な英知を結集することも重要であります。先月静岡県未来創造会議の冨山和彦座長から御提言を頂きました。人口減少社会というこれまでにない社会の構造変化、生成AIによる不可逆な事象を正確に認識すべきという前提の上で日本一豊かな経済圏を目指し、グローバル、ローカル両面からの産業育成や観光の基幹産業化、新たなスキルによる労働生産性の向上、県歳出の優先順位づけや効率的な手法への転換など非常に示唆に富んだ内容となっております。「隗より始めよ」の提言どおり、県自ら積極的に取組を進めてまいります。
 人口減少問題は県政の最重要課題の一つです。全力でその抑制に取り組んだ上で人口減少社会を前提とした適応の対策を進めることが重要であります。生産性の向上、多様な人材の活躍、社会全体の最適化、この三つの視点から適応対策にしっかりと取り組んでまいります。
 加えて、地球規模での気候変動、国際情勢の不安定化など国際的な変化は激しさを増しております。一方で賃金の上昇など長引くデフレ経済からの脱却に向けた明るい兆しも見えてまいりました。こうした状況においては幸福実感という主観的要素がますます重要になってまいります。
 ウエルビーイングという世界で注目されている指標を積極的に活用することで政策を一段と進化させ、全ての県民の皆様が豊かに安心して暮らすことができる静岡県の実現を目指してまいります。そのため私自身が先頭に立ち全身全霊をささげ県政運営に取り組んでまいる決意でありますので県議会の皆様のさらなる御支援、御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 初めに、令和七年度当初予算案についてであります。
 今回の予算案においては、幸福度日本一の静岡県の実現に向けて積極的な施策を盛り込んでおります。
 まず、私からトップダウンで次期総合計画の八つの重点取組などに積極的に予算を配分いたしました。加えて現場を熟知する各部局長からのボトムアップの提案を基に未来を拓く積極的なチャレンジなどについても財源と人員の集中配分をしております。この結果令和七年度の一般会計の歳出予算総額は一兆三千七百二十三億円で前年度当初予算を五百六十三億円、四・三%上回る予算案を編成いたしました。具体的な取組について二月補正予算に前倒し計上したものも含め御説明申し上げます。
 まずは、八つの重点取組のうち最初に伊豆半島をはじめとした防災の推進について御説明申し上げます。
 能登半島地震では土砂崩落等により交通網が寸断し半島という地理的特性などから孤立集落の発生や避難所生活の長期化、多数の住宅被害といった課題が顕在化いたしました。昨年十一月国が能登半島地震を踏まえた今後の災害対応について報告書を取りまとめたところであります。この分析も踏まえ伊豆半島を有する本県において速やかに各種の対策を講じてまいります。
 孤立を防ぐためのインフラ整備につきましては、災害発生時にも円滑な物資調達や輸送が行えるよう伊豆縦貫自動車道の早期全線開通など道路ネットワークの整備、強靱化を引き続き国に強く働きかけてまいります。あわせて陸・海・空から被災地へ円滑に進入できるよう緊急輸送路沿道の空き家の除却や着実な港湾整備、拠点ヘリポートの資機材整備の支援等を行ってまいります。孤立予想集落においては必要な物資等の備蓄支援を拡充いたします。また各市町が水道施設等を耐震化し自給可能な水源等を確保できるよう特に耐震化率が低い賀茂地域の水インフラ広域防災計画を策定いたします。さらに情報収集体制を強化するため県災害対策本部や各地域局のほか災害拠点警察署などに計二十台の衛星通信設備を整備いたします。
 避難生活の長期化への対応につきましては、能登半島地震においてトイレが不足する課題等が生じたことから、市町と役割分担しながら県内外の災害派遣時に活用するトイレカー等を整備いたします。また要配慮者への支援のため福祉避難所や救護病院等への調査結果を踏まえ、不足する非常用電源を確保するなど地震・津波対策等減災交付金も活用し総合的に支援してまいります。
 住宅の耐震化につきましては、今年度末までとしていた無料の住宅耐震診断助成を一年延長いたします。また能登半島地震で費用負担の面から本格的な耐震改修等が進まず大きな被害が発生したことを踏まえ、令和八年度からの次期耐震改修促進計画ではより安価に取り組むことができる減災化の取組も進める方針であります。来年度はそのうち耐震シェルターの設置などに対する支援を前倒しして実施してまいります。
 中長期の対策につきましては、今後国が南海トラフ地震の新たな被害想定を取りまとめ防災対策推進基本計画を改定する予定であります。これを踏まえ本県においても被害想定と今後の対策について見直しを進めてまいります。
 県民の皆様のかけがえのない生命や財産を守るため、ハードとソフトとの両面から全力で着実かつ迅速に対策を進めてまいります。
 次に、新たな産業活力の創造についてであります。大きく二つの取組を進めてまいります。
 一つ目は、スタートアップ先進県に向けた取組であります。
 スタートアップは県内中小企業の課題解決や既存産業に革新をもたらすとともに、社会課題の解決の担い手になるなど本県経済の持続的発展のため極めて重要な存在です。このため私が浜松市長時代に取り組んだ、ベンチャーキャピタルと連携した資金調達支援制度を新たに創設し全県展開いたします。対象とする取組は県の先端産業創出プロジェクトの関連分野や地域課題の解決に資するものなどとし、採択した企業に対して財務管理や販路開拓などの支援も併せて実施することで活動をサポートしてまいります。
 また、伊豆地域の温泉旅館を活用したスタートアップ誘致を進めるため温泉施設をオフィス化するモデル事業を開始いたします。地域資源活用アドバイザーの小原嘉元氏の御知見を活用しながら温泉旅館とスタートアップ等とのマッチングに加え施設改修や具体的な運営方法について伴走支援を行ってまいります。このほか実証実験サポートやコミュニティーの形成、意欲的なスタートアップの積極的な誘致なども行いスタートアップ先進県に向けた取組を加速してまいります。
 二つ目は、企業誘致の推進であります。
 本県経済の活性化や新たな成長産業の育成、雇用の確保のためには県内企業の定着促進とともに、県外企業の新たな活力をこれまで以上に取り込むことが重要であります。このため企業立地日本一に向けて年間七十五件の立地件数を目標に掲げ、誘致活動の強化と産業団地の開発強化に取り組んでまいります。
 まずは、誘致活動の強化のため私自らが先頭に立ってトップセールスを進めてまいります。今月十二日には東京で誘致セミナーを開催し百二十一社から百八十二名の皆様に御参加頂きました。セミナーでは本県の魅力や優位性を余すところなくPRしたほか、県内市町においても市長等によるプレゼンテーションやブース出展により産業団地を来場者に直接売り込むなどオール静岡で企業誘致活動を展開いたしました。
 さらに、来年度本庁と東京事務所に合わせて三名を増員するなど体制を強化し、首都圏を中心に将来性や経済波及効果の高い産業へのアプローチを積極的に進めてまいります。
 産業団地の開発強化につきましては、新たな長期目標として今後十年間で五百ヘクタールの整備を目指し戦略的に用地の確保を図ってまいります。具体的には交通アクセスや水資源、産業集積など県内各地の地域特性も生かしながら新たな企業の呼び込みに必要な大規模産業団地を重点的に確保してまいります。このため新たに市町による適地調査を支援することとし、新たな開発候補地の掘り起こしを強力に促進してまいります。
 次に、再生可能エネルギー等の導入促進についてであります。
 二〇五〇年までにカーボンニュートラル社会を実現するため再生可能エネルギーのさらなる導入拡大や水素の利活用の促進が必要となります。このため環境との調和や地域との共生を前提に国が示した次期エネルギー基本計画案も踏まえ、再生可能エネルギーの導入拡大に向けふじのくにエネルギー総合戦略の見直しを進めてまいります。
 また、近年注目されるペロブスカイト太陽電池の実装や関連製品の開発に向け開発事業者や県内企業、市町等で構成する次世代太陽電池部会を立ち上げます。さらに県有施設を活用した実践的な導入実証や優良事例の共有等による県内企業の参入支援を通じペロブスカイト先進県を目指してまいります。
 水素の利活用の促進につきましては、本県の強みを生かした貯蔵・利用技術等の研究開発、実用化に向けて先進県である山梨県との連携を強化いたします。加えて水素専門コーディネーターを新たに設置するなど産学官によるプラットフォームを構築し、研究会の開催や技術開発の支援等を通じて水素関連ビジネスの創出につなげてまいります。
 次に、次世代モビリティーの導入促進についてであります。
 新しい空の移動手段として多くの可能性を有する次世代エアモビリティーについて、本県は先進導入地域を目指してまいります。令和九年度の商用運航開始に向け本年度に策定したロードマップに基づく取組を順次展開し民間事業者の参入促進を図ってまいります。
 まず、予想される利用者層や適正な利用料金などを把握するための需要調査を行います。加えて、三次元点群データを活用し航路中の障害物等を確認した上で利用分野別の事業モデルの検討を進めてまいります。さらに関連産業の集積等を図るため機体の整備機能等を有する運航拠点の設置可能性を調査するほか、県内中小企業等を対象に部品受注のためのビジネスマッチング会を開催いたします。あわせて県民の皆様の認知度向上を図るため実機を使ったデモフライトを実施してまいります。また陸・海の次世代モビリティーへの取組も強化いたします。
 次世代自動車については、次世代自動車センター浜松と連携して、生成AI等の最新技術を活用した部品開発を後押しするほか水中ドローンや自動運航船等の先端海洋ディープテックの活用などに取り組みます。地域企業が急速に進展する産業構造の転換に的確に対応できるようスピード感を持って取り組んでまいります。
 次に、地域交通のリデザインについてであります。
 日常生活において公共交通での移動を確保できない地域では既存資源を有効活用する公共ライドシェアの導入が有効な対策であります。全市町が参加している専門部会において先進事例を共有するほか、アドバイザー派遣を通じて市町等に寄り添った伴走支援をしっかりと行ってまいります。
 また、昨年関東地方知事会など様々な機会を通じて私から公共ライドシェアに関する国の予算拡充について提案を行いました。このたび国が新たな支援制度を創設したことから市町の積極的な活用も促してまいります。
 さらに、自動運転の実装につきましてはこれまで七年間にわたり県が主体となって六市町で実証実験を行ってまいりました。この結果システムが車両操作を行う段階まで一定の成果が得られたところであります。今後はより住民ニーズを踏まえた交通サービスの提供となるよう、これまでに得た成果や知見を広く共有するなど市町と連携した上でしっかりと取り組んでまいります。
 次に、子供・子育て支援の充実についてであります。大きく二つの視点で取組を進めてまいります。
 一つ目は、結婚、出産、子育ての切れ目ない支援であります。
 結婚や子供を持ちたいという希望をかなえるため、ライフステージに応じた切れ目のない支援を実施してまいります。まずふじのくに少子化突破戦略の新・羅針盤を改訂し地域特性に応じた分析や優良事例の共有により市町の少子化対策を後押しするほか、一歳児に対して保育士を手厚く配置した施設等を新たに支援し保育の質を確保いたします。
 また、女性に偏りがちな家事、育児を男女で分担し女性が出産後も仕事と家庭を両立できる社会の構築が重要であります。特に産後八週間は産褥期と呼ばれ、女性が体を休める大切な時期であります。こうしたことから男性の育児休業取得期間の長期化を図るため中小企業で働く男性を対象に二十八日を超える育児休業取得に対して本県独自の新たな応援手当を全国で初めて支給いたします。あわせて雇用主にも共育ての意義等を説明し育児休業を取りやすい職場環境整備を促すなど両面から取組を進め、共育て先進県を目指してまいります。
 二つ目は、子供目線を取り入れた施策の展開であります。
 具体的には、今年三月に策定を予定している、しずおかこども幸せプランにおいてオンラインプラットフォームを活用し直接声の届きにくい子供、若者の意見を積極的に取り入れてまいります。
 対策を求める意見の多かった自殺については、精神保健福祉士など多職種の専門家で構成するこども・若者の自殺危機対応チームを設置し専門的見地から助言指導を行ってまいります。子供は未来の宝との認識の下、こども第一主義の姿勢で子供・子育て支援にしっかりと取り組んでまいります。
 次に、医療・福祉人材の確保についてであります。
 県全域での医師確保につきましては、医学修学研修資金の貸与を受け、その後県内で勤務している医師は今年度七百三人おり一定の成果を上げております。貸与を促進するとともに、医療関係者と協力して県内への就業や定着を進め、さらなる医師確保を図ってまいります。
 特に医師数の不足する東部地域においては、新たに複数の取組を実施することで対策を加速化いたします。具体的にはまず浜松医科大学と連携し、指導医と専攻医をセットで派遣し若手医師の育成環境を整えつつ医療機関の拠点化を進める事業に新たに取り組み派遣医師数を段階的に増加させてまいります。
 また、順天堂大学医学部附属静岡病院とはこれまで県東部地域になかった産婦人科及び小児科の専門研修プログラムを整備することで新たに合意したところでございます。来年度から二名の指導医を配置し速やかに準備を進め、令和八年度から毎年四名ずつの専攻医確保を目指してまいります。こうした取組などにより五年後には県東部地域に勤務する医師が八十名程度増加することを目標とし、医師確保に取り組んでまいります。
 介護人材の確保につきましては、少子高齢化が進む中、外国人材を確保することがますます重要となっております。これまでモンゴルで現地面接会を開催してまいりましたが、来年度からは対象国を四か国に拡大した上でオンライン面接会を延べ七回程度開催し、外国人材の確保を強化してまいります。
 また、限られた人材で効率よく業務を行い介護の質を向上させることも重要であります。介護事業所における業務改善システムや介護ロボットの導入経費の補助を行うことに加え活用等の相談にワンストップで対応し、きめ細やかに伴走支援等を行う介護生産性向上総合相談センターを新たに設置するなどしっかりと取組を進めてまいります。
 次に、外国人の受入れと多文化共生社会の構築についてであります。
 本県の発展のためには、多様性や異なる価値観を積極的に捉えた上で本県の活力や成長につなげていくことが重要であります。まず外国人に選ばれる日本一の多文化共生推進県を実現するため、都道府県として初めてのICC――インターカルチュラル・シティ――ネットワークへの加盟を目指してまいります。インターカルチュラルとは外国人等によってもたらされる文化的多様性を都市の活力や成長の源泉とする新しい政策であります。ICCネットワークへの加盟により国際基準に照らした本県の現状を明らかにし諸外国の知見を本県施策に反映することで外国人材の活躍促進や地域コミュニティーの活性化などにつなげてまいります。
 また、急速な経済成長を続けITなどの分野で特に世界的な人材を輩出するインドとの連携も重要であります。昨年十二月に県議会や経済界の皆様とともにインドのグジャラート州を訪問し、友好協定を締結するとともに、グジャラート大学と経済産業分野での協力に関する覚書を調印いたしました。来年度は夏にグジャラート大学と連携し、県内企業へのビジネスインターンの受入れを目指します。また学生に対し県内企業をしっかりとPRすることで秋の就職面接会につなげてまいります。
 加えて、スタートアップの招聘や県内企業によるビジネスミッションの派遣も予定しており、双方にメリットのある交流を着実に進めてまいります。
 次に、未来を開く積極的なチャレンジにつきましては六つの取組がございます。
 まず、しずおかアボカド産地化プロジェクトについてであります。
 温暖化による平均気温の上昇により本県でも栽培可能な作物が増加しております。中でもアボカドは世界一栄養価の高い果物としてギネス認定されており国内需要も急拡大していることから、生産技術等の確立と販売需要の創出との両面から同時に取組を進め他県に先駆けて産地化を図ってまいります。
 具体的には、生産者をはじめJAグループや研究機関、料理人などの皆様とともに、幼木の栽培実証やブランド化に向けたレシピ開発などに取り組み十年後には本県が日本一のアボカド産地となることを目指してまいります。
 次に、デジタルクリエイターの育成についてであります。
 仮想空間に関する市場の急拡大が見込まれる一方、人材不足が課題となっています。このため静岡理工科大学に寄附講座を設置しデジタルクリエイターを育成する取組を進めております。
 今年度、全国的に著名で極めて高い技術力を有する株式会社アルファコードの水野拓宏氏の下、仮想空間の構築をテーマとした先進的な教育カリキュラムを開発いたしました。来年度このカリキュラムを国へ申請した上で今後段階的に受講生を増やし、令和八年度以降毎年二百名以上の学生が最先端の技術や実践的なスキルを習得する予定であります。デジタル時代を先導する優れた人材を計画的に育成するとともに、関連企業の誘致を行うことで仮想空間分野のトップランナーを目指してまいります。
 次に、AI活用による特別支援教育指導プロセスの変革についてであります。
 現在、特別支援学校では重度の障害や複数の障害を持つ児童生徒への専門的かつ高度な対応が求められる一方で教職経験の少ない教員が多く、個別の指導計画作成への心理的、事務的負担が増加しております。このため令和九年度までに個人ごとの指導計画をAIに自動作成させることを目指し、来年度は本県の教育データなどを集約してAIに補完させる仕組みを開発してまいります。国の実証研究事業への採択も視野に入れ、個に応じた指導の充実と業務の効率化を進めてまいります。
 次に、聴覚障害児療育モデルの構築についてであります。
 先天性の聴覚障害は、早期発見、早期治療に加えて適切な療育が重要であります。このため昨年県、静岡県立病院機構、オーストラリアのシェパードセンターの三者で療育モデル事業の協定を締結しスタッフの長期研修を行うなど準備を進めてまいりました。来年度からはいよいよ毎年十人程度人工内耳を装用した聴覚障害児を県立総合病院で受け入れ、療育を実際に開始いたします。今後受け入れる児童の数を着実に増やし様々な特性や発達過程に応じたプログラムを実施することで多くの先進的な療育手法を吸収し、全国のモデルとなる療育体制の構築を進めてまいります。
 次に、遠隔地からの災害支援を可能とするシステムの構築についてであります。
 大規模災害発生時には社会インフラの早期復旧が求められますが、実際には多くの技術者の現地派遣には多くの時間とコストがかかるのが現状であります。この課題を技術によって解消するため本県では能登半島地震の際に石川県が保有をしていた被災前の三次元点群データを公開し、遠隔からでも被災前後の地形状況を把握できる環境を整備いたしました。この取組を復旧支援につなげるため遠隔地からでも被害状況の分析や復旧計画、設計を可能とする支援システムを構築し、全国規模での共有を図ることで災害発生時の迅速かつ効果的な復旧の実現を目指してまいります。
 次に、道路メンテナンスのDXについてであります。
 県土の活力、交流を支える社会インフラは、今後同時期に大量の更新が発生することからメンテナンスの省力化、効率化を進めることが必要であります。このためデジタル技術を駆使して道路の異常箇所を抽出し効果的な補修方法を解析するなどAIを積極的に活用した先進的、効率的な維持管理手法を確立してまいります。
 今年度、下田市内でドライブレコーダーの画像や車両の振動データなどを活用して道路の異常箇所を抽出する複数の技術を試行いたしました。この結果精度やコスト等も踏まえスマートフォンの映像をAI解析する技術を選定いたしました。令和八年度の実装を目指し来年度は県内全域でこの技術を試行してまいります。さらに蓄積したデータをAIで解析し最適な補修工法を選定するなど効率的な補修計画の立案に向けて取り組んでまいります。
 次に、分野ごとの主な取組について御説明いたします。
 まず、防災・安全分野であります。
 最初に、盛土対策についてであります。
 県内の不適切盛土に対し緊急性を評価し優先順位をつけた上で計画的に対策を講じてまいりました。この結果、不適切盛土の是正が進み、また盛り土一一〇番など未然防止に向けた監視体制の強化などにも取り組んでおります。
 今年五月からは、盛土規制法の運用開始により規制がこれまで以上に強化されることとなります。県の体制も強化した上で県内市町や関係機関等と連携し県民の皆様の安全と安心の確保に全力で取り組んでまいります。
 次に、救急安心電話相談窓口#七一一九についてであります。
 医療機関の適正受診や救急車の適正利用を推進するため、昨年十月に平日の夜間や土日等を中心に電話相談窓口を試行的に開設いたしました。十二月までの三か月間で六千件を超える相談が寄せられており、インフルエンザが流行する中、救急車の出動件数の増加傾向が緩和されるなど一定の効果が見られたとの評価を頂いております。このため本年四月から開設時間を二十四時間三百六十五日に拡充し本格的な運用を開始してまいります。
 次に、犯罪被害者等への支援についてであります。
 犯罪の被害に遭われた方や御家族等を包括的に支援するため、本年四月から犯罪被害者等支援条例の所管を警察本部から知事部局に移管いたします。あわせて支援の総合的な調整を行うコーディネーターを新たに配置し県内市町や関係機関等と連携した多機関ワンストップサービス体制を構築するとともに、経済的負担の軽減のため見舞金の制度を創設するなど支援の充実を図ってまいります。
 次に、産業分野についてであります。
 最初に、MaOIプロジェクトについてであります。
 国内外から最先端の海洋技術や知見等が一堂に集うブルーエコノミーエキスポのさらなる充実を図ります。具体的にはスタートアップなど参加企業数を四十六団体から七十団体へ拡大するほか、TECH BEAT Shizuokaとの共催により国内外の優れた技術等を持つ企業と地域企業とのマッチングを強化いたします。また世界的な海洋産業クラスターの連携組織であるブルーテッククラスターアライアンスへの加盟を生かし、海外のスタートアップとの交流を加速するなどプロジェクトを新たなステージへ引き上げてまいります。
 次に、中小企業経営力向上についてであります。
 中小企業は本県経済を支える屋台骨であります。人手不足や物価高騰などの厳しい環境下においても将来にわたって着実に発展し稼ぐ力を高めていけるよう、デジタル技術を活用した新たな取組を促すための枠組を設けるなど企業の変革や挑戦を後押ししてまいります。
 次に、リノベーションによるまちづくりについてであります。
 既存の建物や空間を活用して新たな価値や機能を加え、地域の魅力と活力を高めるリノベーションまちづくりに取り組んでまいります。取組を牽引する人材の育成が重要であることから、遊休不動産の再生計画作成など実践的な講習を行うリノベーションスクールを開催する市町を新たに支援いたします。モデル地域を形成した上で先駆的な事例を県内各地に横展開するなど市町と連携した取組を進めてまいります。
 次に、農林水産業の競争力強化についてであります。
 農業につきましては、緑茶需要が拡大する海外での静岡茶の競争力を強化してまいります。今年度、今治タオルのブランド化を実現した専門家や若手茶業者による静岡茶リブランディングプロジェクトを立ち上げました。この枠組を生かし、いよいよ来年度から本格的な海外展開に向け世界に通用する統一ブランドを戦略的に構築してまいります。
 戦略に合わせ生産面では輸出需要に応じた計画的な生産や有機茶栽培の拡大等により、世界に向けた静岡茶の生産基盤の強化に取り組んでまいります。あわせてスマート農業の普及や農地の集積・集約化にデジタル技術を活用するなど農業の高度化、生産性向上に取り組んでまいります。
 林業につきましては、建築業界等においてグリーン化が世界的な潮流となる中、持続的な木材調達の手段として認証材に注目が集まっております。こうした動きを先取りし全国有数の面積を誇る認証森林における生産フィールドの確保や路網整備を支援し認証丸太の供給力強化に取り組んでまいります。また住宅建築等では認証材利用を促進し認証材の需要拡大に取り組んでまいります。
 水産業につきましては、新鮮な魚介類や美しい景観など魅力ある地域資源を活用して新たな所得機会を創出する海業の取組を県内各地で進めてまいります。あわせて藻場再生に向けた実証実験やアサリの資源回復のための総合的な対策を通じて水産王国静岡の持続的な発展に向けて取り組んでまいります。
 次に、環境・エネルギー分野についてであります。
 最初に、脱炭素社会の構築についてであります。
 二〇三〇年度の温室効果ガス排出量の削減目標の達成に向け、中小企業の脱炭素経営への転換を促進してまいります。より効果のある取組を重点的に支援するため一定の排出削減を行う設備導入等に対して新たな補助制度を創設するとともに、県内の金融機関と連携しアドバイザーの育成を強化するなど中小企業等の取組を一層促進してまいります。
 次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
 昨年十二月十七日の県の地質構造・水資源専門部会では、ツバクロ発生土置き場の直下に存在が推定される断層等についてJR東海と対話をいたしました。ツバクロ発生土置き場に関しては専門部会委員による現地調査により直下に断層が存在するものの、活断層でないことが確認され、この土地に盛土を計画することが専門部会から了承されました。また昨年十二月に一旦終了した高速長尺先進ボーリングに関してはまずは先進坑の掘削を優先することが確認されました。県境から三百メートルに達する前にその地点以降の掘削に伴うリスク管理について対話し、県と合意することが求められました。こうした状況については昨年十二月にJR東海から大井川利水関係協議会の皆様にも説明したところであります。
 今月十三日には、県の生物多様性専門部会を開催し大井川に放流するトンネル湧水の水質の管理等についてJR東海と対話いたしました。濁りの低減策として専門部会委員が提案していた砂ろ過装置を追加することがJR東海から報告され管理基準値についても合意をいたしました。今後は生物への影響の回避、低減などリスク管理の具体的な内容について対話をしてまいります。
 こうした対話により、主な対話項目二十八項目のうち対話完了が二項目増えて五項目に、対話中が二項目増えて十九項目になりました。引き続き残された課題の解決に向けてJR東海との対話をしっかりと進めてまいります。
 先月三十日には、JR東海の丹羽俊介社長と面談し県専門部会の進め方やリニア開業に伴うメリット、地域住民の理解を得るための取組について話合いをいたしました。この中で丹羽社長はリニア中央新幹線の名古屋開業の時点で静岡駅と浜松駅に停車する「ひかり」の本数を一時間二本に増やすことを明言されました。これは大変踏み込んだ発言であり、実現すれば県内に大きな経済波及効果があるものと認識をしております。
 また、リニアの開業は本県にとって一定のメリットがあるということについて県民の皆様の理解が進むものと受け止めております。一方で大井川の水資源や南アルプスの自然環境の保全に関する残りの課題の解決に向けては今までと同様にスピード感を持ちながらも丁寧に対話を進めてまいります。
 今月五日には、中野洋昌国土交通大臣と面談しJR東海との対話の状況を説明するとともに、大井川流域の皆様が懸念されている水資源に影響があった場合の対応について将来にわたり国として積極的に関わっていただくよう求めました。中野大臣からは国としても水資源や環境の問題に十分配慮して取り組むとともに、モニタリング会議を通じてしっかりと支援していくとのお話がありました。引き続きリニア中央新幹線の建設と大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全との両立を図るため、大井川利水関係協議会の御理解を頂きながらJR東海との対話を進めてまいります。
 次に、観光・交流インフラ分野についてであります。
 最初に、観光振興についてであります。
 昨年、過去最高を記録し今後さらなる拡大が見込まれる訪日外国人の旅行需要を本県に取り込むため、ナイトコンテンツやガストロノミーなど外国人富裕層への訴求力を有する商品を造成いたします。加えて富裕層向けの旅行商品を取り扱う専門のコンソーシアムへの売り込みも行ってまいります。さらには本県滞在の受皿となる外資系ホテルの誘致など外国人富裕層の本県への来訪、滞在促進に向けた施策を総合的に推進してまいります。
 次に、富士山静岡空港についてであります。
 今年度、開港十五周年を迎えた富士山静岡空港は昨年末に開港以来の搭乗者数が八百万人を達成し多くの方々に御利用頂きました。御利用者や関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
 来月三十日からの夏ダイヤにおいては、国内線はフジドリームエアラインズの札幌丘珠線の再開により全七路線が、また国際線では昨年十二月に香港線が新規就航し全四路線が運航いたします。今後も東南アジア等との新規路線の開設など一層の路線拡大を目指し富士山静岡空港株式会社や関係団体などオール静岡で取り組んでまいります。
 次に、子供・教育分野であります。
 最初に、小学校一年生へのきめ細やかな支援についてであります。
 幼児教育と小学校教育の違いから学習や学校生活に支障を来す、いわゆる小一ギャップが問題となっております。そこでよりきめ細やかな支援を行うため、一年生において三十人を超えるクラスを有する学校に対し新たに県単独で支援員を配置いたします。生活習慣の確立や学習内容の定着を後押しするなど個に応じた指導を充実させるとともに、教員の負担軽減にもつなげてまいります。
 次に、戦争の記憶と記録の継承についてであります。
 今年は、戦後八十年という節目の年に当たります。戦争体験者が高齢化する中、次世代に戦争の記憶や記録を継承することがますます難しくなってまいります。このため若い世代の沖縄追悼式への参列を支援するとともに、戦争体験者が語り継ぐ様子を映像として残し平和の尊さを次世代へ継承してまいります。
 次に、健康福祉分野であります。
 最初に、静岡ウエルネスプロジェクトについてであります。
 これまでのフーズ・ヘルスケア分野での取組成果を基礎として身体的、精神的、社会的に健康で満たされるウエルネスの視点を新たに取り入れ、スタートアップとの共創により食品や健康分野の社会課題解決に取り組んでまいります。具体的には、ウエルネス・フーズEXPOを初開催しフードテック等の先端技術を有するスタートアップと地域企業とのマッチングの機会を創出いたします。さらに、県内市町と連携して実証フィールドを提供し、健康・医療データの活用による新たなサービスを創出するなど食品・健康関連産業の振興と健康寿命のさらなる延伸を目指してまいります。
 次に、障害者施策などの推進についてであります。
 民間事業者等の合理的配慮の義務化から間もなく一年となりますが、事業者からは障害のある方への具体的な対応方法に関する課題等が寄せられております。このため各事業者が実効性ある合理的配慮を提供できるようアドバイザーを派遣し、経営者などの意識改革を促進いたします。
 また、小児がんや難病を抱える子供は診療できる医療機関が限られ遠方への通院など経済的な負担が大きくなります。このため通院に要する交通費等に対する助成制度を創設するとともに、療育や日常生活等に関する相談に対応してまいります。障害のある方が分け隔てられない共生社会の実現に向けて積極的に取り組んでまいります。
 次に、仮称医科大学院大学についてであります。
 昨年二月に準備委員会から基本構想を御提言頂いた医科大学院大学につきましては、静岡県未来創造会議から本県の厳しい財政状況を踏まえ、大きな歳出の一例として優先順位づけやより効率的な手法の検討が求められたところであります。これを受け構想の実現については現下の本県が置かれている財政状況が好転した時点で検討すべきと判断をいたしました。しかしながら医師確保策の拡充は本県にとって重要でありますので、当面は既存の静岡社会健康医学大学院大学における基本構想の趣旨を生かした研究環境等の魅力向上や県内病院への配置調整機能の充実などを進めてまいります。
 次に、暮らし・文化分野であります。
 最初に、富士山の登山者への対応についてであります。
 オーバーツーリズム等、富士登山の課題解決に向けて地元関係者や山梨県等と登山規制に関する協議を重ねてまいりました。その結果夜間の弾丸登山や軽装登山等のルール・マナー違反を防止するため、登山者に対し富士山の価値や安全登山に関する事前学習と午後二時以降の入山において山小屋の宿泊予約を義務づけることといたしました。あわせて登山規制や登山者の安全対策、富士山の保全に関する取組に活用するため四千円の入山料を徴収することとし、関連する条例案を本議会にお諮りしております。開山期に向け山梨県や地元関係者の皆様と連携を図り世界遺産富士山の価値を守るとともに、安全で快適な富士登山の実現を目指してまいります。
 次に、文化芸術の振興についてであります。
 文化芸術の力で地域社会を活性化するため、県内各地で取り組まれている民間主体の活動を支援するとともに、SPAC等が県内様々な地域に出向いて事業を実施することで文化芸術に触れられる機会を提供してまいります。また東部・伊豆地域では様々な主体による活動を文化芸術の力で結びつけるため新たにネットワークを立ち上げる計画を進めてまいります。そこで核となる旧ヴァンジ彫刻庭園美術館の利活用計画を今年度内に策定してまいります。
 次に、スポーツの振興についてであります。
 現在、検討を進めているしずおかスポーツ産業ビジョンを推進する場としてプロスポーツチームや企業などから構成するプラットフォームを新たに設置いたします。県内のプロスポーツチームと革新的な先端技術を持つスタートアップ等との連携を図りデジタルを活用した新しい観戦体験を提供するなどオール静岡でスポーツの成長産業化に取り組んでまいります。
 次に、遠州灘海浜公園篠原地区の整備についてであります。
 公園を含む全体的な利活用の構想等について検討するため、県と浜松市による利活用推進協議会を先月二十八日に設置をし第一回の協議会を開催いたしました。その結果、利活用構想を作成する際に民間のノウハウを最大限取り入れることや三つの野球場案を絞り込むこと、県、市の役割分担を検討することなどが確認をされました。引き続き県西部のスポーツの拠点としてふさわしく多くの県民の皆様に愛される施設となるよう検討を進めてまいります。
 続きまして、行政経営の推進についてであります。
 今後の自治体経営においては、自治体としての体質や組織の考え方を変えていくLGXが極めて重要となります。そこで令和七年度を二つの元年と位置づけ、しっかりと取組を進めていく決意であります。
 まず、チャレンジ元年についてであります。
 人口減少や社会を大きく変える技術革新等を見据え、県庁を挙げて積極的なチャレンジを行ってまいります。具体的にはチャレンジをキーワードに組織の変革に向けた二つの取組を進めてまいります。
 一つ目は、生成AI、デジタル技術を前提とした働き方の変革であります。生成AI等の新たな技術は労働の常識を根本から変える可能性を秘めております。そのためまずはデジタルに関する基本知識や生成AIの活用方法等を身につける研修機会を拡充するとともに、全職員が日常から生成AIを活用できるよう環境を整備いたします。
 加えて、来年度新たな技術を前提とした働き方について具体的に検討してまいります。さらに職員の行動の変革を促すため、自ら行政課題を発見し積極的に新たなチャレンジを行う職員を高く評価し、職員の働く意欲の向上に努めてまいります。
 二つ目は、民間の知識、経験等を一層活用した課題の解決であります。
 まず、最先端の技術と知見を持つスタートアップと連携し社会的課題の解決に向け効果的かつ効率的に政策を推進してまいります。また柔軟な発想を持つ若手職員の提案制度を設け斬新なアイデアを積極的に採用、具現化してまいります。
 次に、財政改革元年についてであります。
 本県の明るい未来を築いていくためには、持続可能で健全な財政基盤の確保が不可欠です。令和七年度当初予算編成では様々な手法により全庁一丸となってこれまで以上に徹底した歳出歳入の見直しを行いました。知事公舎につきましても必要性や維持コスト等を踏まえて廃止をし跡地を売却することといたしました。こうした取組の結果、厳しい財政状況にあっても未来に向けた積極的な予算案を編成できたものと考えております。
 しかし、一方で財政調整用の基金残高はリーマンショック時並みの五十四億円となり、本県財政は依然として厳しい状況であることに変わりはありません。加えて近年の物価高騰や金利のある世界の到来など今後、外的な環境変化にも対応していかなければなりません。
 そこで、さらに持続可能な財政運営を行っていくため、令和七年度からの十年間を計画期間とする中期財政計画を策定し四つの目標を定めました。国指標である将来負担比率、実質公債費比率の二つに加え、県独自に県債残高とプライマリーバランスの二つの指標について目標を定めたものであります。県債残高は全国平均以下を目指すため通常債残高を一千億円程度削減してまいります。またプライマリーバランスは毎年度黒字を目指し各年度で行政サービスを税収等で賄えるよう取り組んでまいります。
 今後は、この計画に沿った財政運営を行うこととし、特に令和十年度までの四年間を改革強化期間と定め集中的に行財政改革を進めてまいります。具体的には大規模プロジェクトの見直しや投資的経費の適正化などをはじめとする歳出の見直しと未利用財産の売却や受益者負担の適正化などの歳入の見直しを計画的に行ってまいります。
 次に、組織定数についてであります。
 幸福度日本一の静岡県の実現に向け、新たな総合計画に掲げる経営方針の下、それぞれの政策を実行する段階に移行することから推進体制を強化するための見直しを行いました。具体的には政策の企画立案や部局横断調整の機能を強化するため新たに企画部を設けるとともに、経営感覚を持って税務、財務、資産管理等を一体的に行う財務部を設置をいたしました。また子供、若者と子育て家庭への切れ目のない支援を展開するため健康福祉部に子供施策の司令塔としてこども若者政策部長を配置するとともに、関連する施策を一体的に推進するためこども若者局を設置いたします。
 次に、副知事の選任についてであります。
 森貴志副知事及び増井浩二副知事から退職の申出があったことを踏まえ、今年四月からの副知事として新たに塚本秀綱氏及び平木省氏を選任することについて本議会でお諮りをしております。私は次期総合計画の経営方針の下に令和七年度の当初予算編成を進め施策の推進体制も検討してまいりました。これらを踏まえ私を補佐する副知事についても併せて提案するものであります。
 まず、塚本氏はくらし・環境部部長代理、中部地域局長等の要職を歴任され本県行政の幅広い分野での経験が豊富であります。令和四年三月に本県を退職された後、現在は沼津市副市長を務められておられます。
 次に、平木氏は総務省財務調査課長、浜松市財政部長、岐阜県副知事などの要職を歴任され地方自治や地方行財政に関する経験、知見が豊富であります。令和四年十二月に総務省を退職された後、現在は民間企業において地方自治体等の政策立案の支援を行うコンサルティング業務を行っております。こうした実績や経験を踏まえ塚本氏及び平木氏が副知事として適任であると判断したところであります。
 次に、令和七年度関係の議案につきましてその概要を御説明申し上げます。
 特別会計及び企業会計の予算案についてであります。
 特別会計は公債管理特別会計予算ほか十会計で総額九千四百八十八億八千八百万円、前年度当初予算比六・六%の増となりました。また企業会計は工業用水道事業会計予算ほか四会計で総額八百七十七億八千八百万円、前年度当初予算比八・九%の増であります。
 令和七年度関係の予算以外の議案のうち主な案件につきまして概要を御説明申し上げます。
 第十八号議案は、組織改正に伴い部の事務分掌を変更するための条例の改正であります。
 第三十九号議案は、宅地造成等規制法の改正等に伴い生活環境の保全の規制に係る手続の合理化を図るための条例の改正であります。
 第四十号議案は、富士山の環境の保全及び安全で快適な富士登山の実現を図るための条例の制定であります。
 次に、令和六年度関係の議案につきましてその概要を御説明申し上げます。
 一般会計の二月補正予算額は七百六十二億五千五百万円の増額であり、この結果令和六年度の最終予算額は一兆四千八十億七千五百万円となります。地方経済の成長や物価高の克服など国の補正予算に伴う経費として五百六十六億四千七百万円の増額補正等を行うとともに、災害復旧費等の減額などを併せて行うものであります。特別会計及び企業会計の補正は事業費、財源の確定等に伴うものであります。
 令和六年度関係の予算以外の議案のうち主な案件につきまして概要を御説明申し上げます。
 第六十八号議案から第七十号議案までは、建設事業等に対する市町の負担額等についてお諮りするものであります。
 第七十一号議案から第八十三号議案までは、土木工事の契約等についてお諮りをするものであります。
 以上、適切なる御議決をお願い申し上げまして、私の説明を終わります。

○議長(落合愼悟君) 以上で説明は終わりました。

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