本会議会議録
議会補足文書
令和4年5月静岡県議会臨時会
【 知事提案説明 】 発言日: 05/20/2022 会派名: |
○議長(藪田宏行君) 議事日程により、知事提出議案第八十二号から第八十五号までを一括して議題とします。
初めに、知事の説明を求めます。
川勝知事。
(知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) ただいま提出いたしました議案の概要を御説明申し上げますとともに、当面する県政の課題について所信並びに諸般の報告を申し述べます。
初めに、去る二月二十四日に始まりましたロシアによるウクライナ侵略は国際社会、ひいては我が国の平和と秩序、安全を脅かし国連憲章に違反する行為であり断じて容認できないものであります。犠牲となられました方々に心より哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われている方々に対し衷心よりお見舞いを申し上げます。
県では、ウクライナから避難されている方々が本県で安心して暮らせるよう総合的な相談窓口を設置し住まいや生活等に関する支援を行っております。
今後も、避難者の皆様に寄り添いながら市町や民間支援団体等とも連携し、引き続き必要な支援を行ってまいります。
次に、原油価格・物価高騰等への対応についてであります。
新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、ロシアによるウクライナ侵略などの影響により世界規模で原油価格や物価の高騰等が生じております。
先月二十六日、国は原油価格や物価の高騰等により経済的に厳しい環境に置かれている生活困窮者や中小企業への支援策等を盛り込んだコロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策を策定いたしました。
県では、これまでも施設園芸農家や畜産農家、漁業者等の燃料費、飼料費に対する緊急的支援や県制度融資の要件緩和を通じた中小企業の資金繰り支援などに取り組んでまいりましたが、国の対策に呼応して迅速かつ機動的にさらなる対策を講じてまいります。まずは生活困窮世帯や低所得の子育て世帯の生活を速やかに支援するため、生活福祉資金の貸付け原資の造成や独り親世帯に対する特別給付金の支給等に必要な経費を補正予算案に盛り込み本議会にお諮りをしております。
今後、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用した生活者、事業者への支援等、制度設計に時間を要するものにつきましては改めて補正予算案を編成し六月県議会にお諮りしてまいります。
次に、新型コロナウイルス感染症への対応についてであります。
新型コロナウイルス感染症との闘いも三年目を迎えております。本年一月から始まった感染の第六波は二月上旬をピークに新規感染者数が減少し始めましたが、三月下旬に再び上昇に転じ感染の第七波に入りました。その後緩やかに減少してきたものの、五月の大型連休中から増加に転じ感染者数は多い状態が続いております。オミクロン株は感染力がより強い派生株のBA.2にほぼ置き換わり、感染の終息はいまだ見通せない状況であります。
特に、高齢者につきましては三回目のワクチン接種から時間が経過しつつあることから感染予防効果が低下し、今後感染者数の増加や高齢者施設等でのクラスターの再発が懸念されております。このため高齢者施設等において従事者に対する定期的な検査や嘱託医による経口治療薬の投与促進等により感染者の早期発見、早期治療を行う体制づくりを進めてまいります。
また、第六波においては長期入院により高齢の患者の身体機能が低下し介助や介護に対する医療従事者の負担が増大したことから、こうした業務に慣れている慢性期病院等を受入れ医療機関とする取組を進めてまいります。
ワクチンの四回目の接種につきましては、国から六十歳以上の方や十八歳以上の基礎疾患のある方を対象とする方針が示されました。接種の開始が予定されている今月下旬に向け市町と連携し高齢者施設等の入所者に対する接種準備を進めるとともに、県の大規模接種会場などの体制を整えてまいります。
県民の皆様には会話時の不織布マスクの着用、人との距離の確保、換気の徹底などの基本的な感染防止対策を引き続きお願いするとともに、三回目のワクチン接種率が伸び悩んでいる若者等に対し効果などを広報し接種の検討を促してまいります。
また、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けて、引き続き全国知事会等を通じて地域の実情に応じた効果的対応を選択できるようにすることなど国の基本的対処方針の見直しを求めてまいります。
あわせて、県といたしましては新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の御意見を伺いつつ感染状況に応じた対策を実施してまいります。
次に、熱海市伊豆山地区における土石流災害への対応についてであります。
これまでの行政対応の検証につきましては、今月十三日、弁護士や学識経験者で構成する逢初川土石流災害に係る行政対応検証委員会から本事案に対する最終報告を頂きました。県として法令等に基づき行政対応を行ったものの、結果として甚大な災害の発生、それによる多くの方々の生命財産を守ることができなかったことにつきまして深く反省しております。犠牲となられました方々、被害や心労を受けられました皆様に対しまして今もって胸が張り裂ける思いであります。今回の検証結果や御提言をしっかりと踏まえ全力を挙げて行政対応の改善を図ってまいります。
県では、既に既存の根拠法令の問題点等の解消を図るため盛り土に関しより実効性のある厳格な規制ができるよう新たな条例を制定したほか、くらし・環境部に盛土対策課を設置し盛り土に対する監視指導等の業務を一元化いたしました。
今後は、県の行政姿勢等の見直しを図るため現場で生じる様々な課題について現場主義を基本とし現場に赴き、その現場に即して積極的に課題解決を図るよう県庁内の組織文化や職員の意識改革を進めるとともに市町や警察等との連携を強化してまいります。また県から市町への権限移譲事務につきましては土木、建築などの技術面における指導監督の実効性等の観点から再点検を行ってまいります。
今回のような災害は二度とあってはならないものであります。県民の皆様の生命や身体、財産を守るため県として速やかに改善を進めてまいります。
逢初川源頭部付近で崩落せずに現地に残っている土砂につきましては、今後の崩落防止のため現在熱海市が旧土地所有者に対し土砂の撤去等の対策を講じるよう行政指導を行っております。また県は雨期前までの応急対応として今月中の完了を目指し、熱海市と連携して土砂内に浸透した水を集めるための排水管埋設等の対策を進めているところです。
逢初川全体の災害復旧に向けましては国が上流部の砂防堰堤新設工事を、県が下流部における河川改修などを熱海市の復興まちづくりとも連携し計画的に進めてまいります。被災者の皆様が一日も早く通常の生活に戻れるよう国や市などと一体となって全力で取り組んでまいります。
次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
国の有識者会議がJR東海に対して行ってきた約一年八か月の助言指導、議論を総括する大井川水資源問題に関する中間報告が取りまとめられたことから、県の地質構造・水資源専門部会を先月二十六日に開催し県とJR東海の大井川水資源問題に関する対話を再開いたしました。今回の専門部会におきましては、有識者会議の大きな論点の一つであったトンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方についてJR東海から二つの方策が示されました。
しかしながら、どちらの方策とも平成三十年十月にJR東海が表明したトンネル湧水の全量戻しとは異なるものであると受け止めております。それに加えJR東海が提示した二つの方策は多くの関係者の了解を得ることができるのか、渇水期でも成り立つのかなどといった課題が数多く残されております。これらの点について地元をはじめ県民の皆様の理解と納得が得られるものとなるのか専門部会において対話を進めてまいります。
また、本県が整理した路線計画決定と地質調査の経緯についてにより明らかになったことがあります。すなわち路線計画決定の過程では、巨摩山地を通過するルートについては地質が脆弱で土かぶりが大きく高圧湧水が発生するおそれから回避したとされています。一方南アルプスを通過するルートについては脆弱な地質や高圧湧水発生のおそれなどが考慮されていないことが明らかとなりました。
県専門部会においてJR東海が示した地質調査資料におきましても、このルートについて土かぶりが大きくかつ地質がもろい区間では切羽の崩壊、大きな地圧によるトンネルの変形、超高圧の大量湧水の発生などが指摘されております。路線計画決定の過程においてこうしたことが考慮されていなかったことは大問題であると考えております。JR東海はこの大問題に対し決定に至る経緯を丁寧に説明すべきであると考えております。
一方生態系への影響につきましては、三月二十四日に新たに三人の委員を追加して第九回生物多様性専門部会を開催しJR東海と工事に伴う自然環境への影響の回避低減策等について対話を行いました。この中でJR東海から薬液注入等によりトンネル工事に伴う湧水を低減する方策は示されたものの、自然環境への影響を適切かつ具体的に回避する方策は示されませんでした。また委員からは、JR東海の説明は水生生物にとって水量減少の影響がどれほど大きいものかの認識が不足している旨の意見やユネスコエコパークへの影響を危惧する旨の意見もありました。
生態系につきましては、地下水位の低下による影響だけでなくトンネル湧水の排出先の水質変化等による動植物の生息環境への悪影響も懸念され確実な回避低減策が示されることが肝要であります。このため本年一月に県は国土交通省に対し国の有識者会議の開催計画を示すことやJR東海に対し生物多様性についての検討を早急に進めるよう指導することを求めていましたが、現在のところ国土交通省からの回答はありません。
引き続き、大井川流域の住民や企業にとっての命の水とユネスコエコパークに登録された南アルプスの自然環境がリニア中央新幹線トンネル工事で損なわれることのないよう取り組んでまいります。
次に、五月補正予算案についてであります。
五月補正予算案は、国の原油価格・物価高騰等総合緊急対策に伴い必要となる経費や新型コロナウイルス感染症対策に要する経費について編成いたしました。
具体的には、先ほど御説明申し上げた原油価格や物価高騰等の影響を受けている生活困窮世帯や低所得の独り親世帯の生活支援、高齢者施設等における感染防止対策の強化に必要な経費などであります。その結果一般会計補正予算の規模は二十五億三千九百万円で、これを加えました本年度の予算の累計額は一兆三千六百七十七億五千七百五十二万六千円となります。
次に、予算以外の議案につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第八十三号議案は、特別職の職員の給与改定を行うための条例の改正であります。
第八十四号議案は、県議会議員のうちから選任いたしました監査委員、渡瀬典幸氏及び大石哲司氏の両氏から退職されたい旨の申出がありましたので、その後任として鈴木澄美氏及び佐地茂人氏の両氏を選任することについて同意を求めるものであります。
第八十五号議案は、地方税法の一部改正に伴う静岡県税賦課徴収条例の一部改正について専決処分いたしましたので承認を求めるものであります。
報告第六号から報告第八号までは、損害賠償事件の損害賠償額の決定及び和解について専決処分いたしましたので御報告するものであります。
最後に一言申し上げます。
副知事として二期八年間、数多くの県政の重要懸案を担当し道筋をつけていただいた難波喬司氏は今月十七日に任期満了となり副知事を退任いたしました。今後はリニア中央新幹線及び熱海土石流災害に関する諸課題への対応を担当する県理事として引き続き御尽力頂きます。後任の副知事につきましては、今後候補者との調整などを進め速やかに選任の議案を提出してまいります。
以上で私の説明を終わりますが、適切なる御議決をお願いする次第であります。
○議長(藪田宏行君) 以上で説明は終わりました。
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