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ホーム > 静岡県議会 > 本会議会議録 > 質問文書

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本会議会議録

質問文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用



平成22年12月静岡県議会定例会 質問


質問者:

小楠 和男 議員

質問分類

一般質問

質問日:

12/10/2010

会派名:

自民改革会議


質疑・質問事項:

1 疲弊する地方と県の役割について                 
 (1) 県のこれまでの施策と次期総合計画への反映           
 (2) 県職員の地域貢献                       
2 県有施設の整備について                     
3 富士山観光について                       
 (1) 県西部の県民に対する富士山啓発                
 (2) 静岡県側からの富士山観光                   
  ア 情報発信                          
  イ 登山者数統計                        
4 児童の養護について                       
 (1) 児童相談所の体制                       
 (2) 知的障害児施設と情緒障害児短期治療施設の充足状況    
 (3) 児童養護施設の職員定数と支援策                
5 医学部学生に対する奨学金と医師の偏在対策について        
 (1) 奨学生の県内適正配置と定着対策                
 (2) 大学との調整



    ○議長(天野進吾君) ただいまから会議を再開します。
     質疑及び一般質問を続けます。
     通告により、四十六番 小楠和男君。
           (四十六番 小楠和男君登壇 拍手)
    ○四十六番(小楠和男君) 県政の諸課題につきまして幾つか御質問をいたします。
     まず最初に、疲弊する地方と県の役割について伺います。
     ことし出版された地方や地方都市の再生をテーマにした二冊の本を読んでみました。一冊は社会派のジャーナリストによるものであり、もう一冊は研究機関の職員による研究レポート的な作でした。結論から申し上げると、期待した解決策や処方せんは既に発表されているものの二番せんじであり、かすかに抱いていた期待は残念ながら裏切られました。しかしながら改めて疲弊していく地方や地方都市を救う特効薬などはなく、この課題の深刻さを思い知らされました。
     両方の作品に共通するのは、我が国の構造的な課題として人口減少社会や東京一極集中について言及し、国の施策による莫大な事業費が投入されたにもかかわらず何の成果もないこと、地方都市がすべてミニ東京化して個性が失われたこと、他都市の一部の成功例をまねても同じような成功にはほど遠いことなどを経て結論を導き出そうとしています。実はこれらの内容は二十年も三十年も前から指摘されていたことであり、今もなお同じ議論がされていることが大いなる問題だと思います。
     中山間地には過疎法、半島には半島法、中心市街地には通称第一次及び第二次中活法のもとで実施された中心市街地活性化基本計画や中心市街地活性化のための大店立地法の特例である構造改革特区などの法律により振興策が策定され、多額の補助金が投入されてきました。にもかかわらず疲弊は進むとともに、近年では製造業の海外移転による空洞化により雇用の場すら失われており、今後の地方の疲弊にはさらなる拍車がかかるおそれがあります。
     中山間地の限界集落や村の閉鎖を意味する村おさめ、都市部やその周辺における買い物難民、中心市街地のシャッター通りなどの、地域の疲弊を象徴する新しい言葉が既に市民権を得ております。
     そこで事今日に至るまで、県は地域の活性化のために国の補助金頼みでなく静岡県としてどのような施策を講じてきたのか、またその施策をどのように評価し、次期の総合計画に反映させていくのか伺います。
     また、疲弊する地域を活性化させるには、NPOなどの市民活動が強力な武器として期待されますが、現実には地方にはそれらの活動のリーダーとなる人材に恵まれているとは言えません。静岡県の職員の皆さんは頭脳明晰、経験豊富で地域活性化に必要な情報にも精通しておられると思います。県職員の皆さんもそれぞれの地域住民の一人です。地域の活性化に貢献できる貴重な人材だと思いますが、県職員の皆さんの地域貢献について所見を伺います。
     次に、県有施設の整備について伺います。
     我が県には、現在まで運動公園や都市公園、展示イベント施設や文化施設などの県有施設が県下各地に整備されています。しかしながら県民の余暇の過ごし方が充実、多様化する中で、施設の予約が取れないなどの不満の声や、市町からは現在の施設の更新に合わせてさらに大規模なスポーツ大会やイベントが開催されるような施設整備に県の支援協力を求める声があります。
     市町村合併が進み政令市も本県に二市誕生するなど、住民の身近にある基礎自治体はある程度の規模を持ち財源と権限が市町に移管される中で、県と市町の間での二重行政が解消されていくのが国、地方ともに財政難である現在の重要課題であり、その二重行政の典型が運動公園や都市公園、展示イベント施設や文化施設なのであります。一方、これらの施設は県民のスポーツ、文化活動などの拠点として子供や孫の代まで継承していく大切な財産であり、その設置に当たっては効率的で使いやすいことはもちろんのこと、どんな規模の施設が何カ所必要なのかが十分に検証され、東西に長い県内に効率的に配置されることが望まれており、県としての一貫した考え方が必要だと思います。
     現在、沼津駅北口には東部コンベンションセンターの整備が県と沼津市を中心に進められております。また先ごろ話題になった県営草薙総合運動公園の体育館の建てかえについては、静岡市の東静岡駅前の市有地への多目的アリーナ設置要望があった中、公園内の現地で建てかえるとの結論になりましたが、いまだに静岡市は東静岡駅前のアリーナ設置に県の協力を求めていると聞いております。
     また、島田市では静岡空港建設の過程で県と市によるコンベンション施設の設置の議論がなされています。また近年は聞かなくなりましたが、熱海市では温泉観光都市としての機能を高めるために、県によるコンベンション施設の整備の要望が出されていたと記憶しております。
     さらに、私の地元浜松市でも国際見本市にも対応する新たな展示イベント施設の整備について、鈴木康友浜松市長は本年九月の市議会で県に協力を要請すると答弁しましたし、浜松商工会議所は浜名湖大橋の架橋とともに浜松城公園への県営文化施設の整備と県営野球場、陸上などのスポーツ施設の整備を本年八月に川勝知事に対して要望したところです。
     私の知る幾つかの事例を申し上げましたが、ほかにも施設整備の要望が県に寄せられていると思います。
     そこで、今後もふえ続けるであろう県有施設の整備の要望に対して県はどのような基本的な考え方を持っているのか、また市町との協同での施設整備についてどんな方針で臨むつもりなのか伺います。
     次に、富士山観光について伺います。
     富士山の見えないところで育った人間の、議会での初めての富士山関連の質問です。
     川勝知事はことし富士山に初めて登られたそうですが、実はお恥ずかしながら私もことし初めて富士山に登った一人であります。県政にかかわっていながら、さまざまな場面で話題に上る富士山に登ったことがないのはどこか後ろめたい思いでもありました。鹿児島県の県議会の皆さんが富士山に登ることになり、これはチャンスとばかりに御一緒させていただきました。
     実は昨年夏、ことし富士山に登るなどと全く想像もしない中、山梨県を訪問中に少し時間ができたため富士スバルラインを使って富士吉田口五合目まで行ってきました。久しぶりに一大観光地に来た気がしました。人と車やバスの多さはもちろん売店、食堂、屋台のたぐいも大繁盛、観光客を乗せる馬車や乗馬体験までできるのです。小御岳神社などもあり、ここまで来ただけで富士山に登ったような気がしました。
     ところが、ことし富士登山のために富士宮口五合目に着いてバスをおりた途端、昨年の富士吉田口五合目との落差に驚きました。車だけは多いものの人影はまばら、ここに来ただけでは富士山に行った実感はわかないなと正直思いました。山に詳しい先輩によると御殿場口や須走口は富士宮口よりもさらに登山者が少ないとのこと、静岡県民として持っていた富士山についてのさまざまな指標で、山梨県との比較が劣ってはいないであろうというわずかなプライドはぐらぐらと揺るぎ始めました。早速帰って富士山の登山者数を調べたところ、そのわずかなプライドは粉々に砕け散りました。
     先ほども多家議員の質問がございましたが、昨年の平成二十一年七月一日から八月三十一日までの全登山者数二十九万二千人のうち静岡県側の三つの登山口からの登山者数の合計は十二万三千人で全体の四二%、山梨県側唯一の富士吉田口からの登山者は十六万九千人で五八%でした。ちなみにことしの統計では登山者数は昨年より二万九千人ふえて三十二万一千人、静岡・山梨両県の比率はほぼ同じです。そんなことを知らなかったのはお前だけだとおっしゃられるかもしれませんが、県民の多くはこの事実をどれだけ知っているでしょうか。
     さらに驚くべきは各登山口五合目への観光客の入り込み数です。昨年の私のように五合目までは行ったという観光客は、静岡県の三つの登山口への入り込み数で昨年七月と八月の合計で三十三万人。一方、山梨県の富士吉田口は同じ二カ月で九十万四千人とその差は三倍近くになり、富士吉田口では年間で二百二十二万六千人もが訪れる大観光地ですが、静岡県側はほかの十カ月の統計を取っていません。統計を取るほどの訪問者がいないことは想像できますが、最初から白旗を掲げたような状態です。
     この現実を見たとき素直に山梨県の実力を評価せねばならないと思いました。首都東京からの高速道路や鉄道のアクセスのよさ、富士山以外にも集客力のある観光施設が数多くあることなど、結果として海外での富士山の写真は山梨県側からのものがほとんどとの観光関係者の言葉も納得がいきます。千円札も同様であります。
     そこで幾つかお聞きします。
     富士登山後、浜松で幾つかの会合で富士登山の経験を尋ねたところ、大体五%から一〇%の人しか手が挙がりません。五十歳前後の男性十人ほどの会ではゼロだったこともあります。浜松ではふだん富士山は見えません。浜松の人は富士山は新幹線か東名高速道路から見るものだと思っているかのようです。知事を筆頭にふじのくにづくりを進めている我が県ですが、ふじのくにの住民であるという意識の薄い県民が多く存在することも事実です。これらの県民に富士山を身近に感じてもらう方策をどのように考えておられるのかお伺いします。
     また、私自身も含め県外のお客さんに、「富士山を感じられる場所はどこですか」と聞かれたときに答えに窮してしまいます。山梨県には富士スバルラインの入り口に富士山ビジターセンターがあり、そのまま一本道で富士吉田口五合目を目指していくことができます。県や市町観光協会などの富士山と周辺のガイドブックを取り寄せて見ましたが、市町のバランスを重視するためか、まさしく総花的で目的地が絞り込めません。
     そこで、県西部の人ならだれでも知っているバンビツアーというバスツアーの一年間のパンフレットを取り寄せてみました。富士山関連のツアーは五本、少し長くなりますが紹介します。「富士芝桜と富士山五合目」、「さくらんぼ狩りと富士山五合目」、「箱根神社と富士山五合目」、「御殿場高原ビールと富士山五合目」そして「富士登山」。富士山の人気がかなり高いことがうかがえます。しかしながらこのうち静岡県側に関係するのは御殿場高原ビールのみ、富士山五合目とは富士吉田口のことであり富士登山の登り口も富士吉田口なのです。静岡県内の旅行会社でも旅行商品をつくることが難しい現実が見えてしまいました。
     私はここで富士山ビジターセンターや自然系博物館を早くつくれなどと申し上げるつもりはありません。今ある観光資源を利用して富士山は静岡県側からお楽しみくださいと、県内はもちろん首都圏や海外の皆さんに情報発信する知恵が必要だと思いますが、所見を伺います。
     さらに細かいことですが、富士山の登山者数の統計については、平成十七年から当時の環境庁が各登山道の八合目付近で赤外線センサーによる調査を実施しており、これが一般に富士山の登山者数として認知されています。私が先ほど申し上げた数字はすべてこの環境省の数字を利用しております。
     しかしながら、静岡県では平成十七年から須走口でのみ環境省のデータを利用していますが、富士宮口と御殿場口では環境省のセンサーよりも低い位置にある各市でのセンサーによる数値を使用しています。高い位置での計測のほうが実際の登山者数に近い数値が得られると思いますが、環境省のデータを利用しないのはどうしてなのか伺います。
     次に、児童の養護について伺います。
     私の通った小中学校の校区には児童養護施設があり、各クラスには二名ほどの施設の子供たちがいて一緒に学んでいました。まだ四十年前のころは世の中全体が豊かさを実感するには至っておらず、私たちと施設の子供たちとは違和感なくともに遊びともに勉強していました。子供心に何らかの理由で家庭で暮らすことができずに施設で共同生活をしていることを気の毒に思ったりすることはありましたが、我々の側から差別的な態度をとることもなく、逆に施設の子供たちで群れて異質感を持たれることもありませんでした。優秀な子供もおり、私の同級生には国家公務員として立派に活躍している仲間もおります。知的障害などの障害を持った子供たちは、同級生はもちろん上級生や下級生にもいなかったように思います。ごく普通に学校生活ができていたと記憶しています。
     さて、今日の施設の状況について少し説明します。定員百名、二歳から十八歳までの子供たちが共同生活をしています。近年の傾向として被虐対児の比率が高まっており、入所者の七三%が虐待の経験者です。それらの子供たちには心と体に大きな傷を持っていることから、見た目に障害の症状がなくても十分な目配りと配慮が必要なことは言うまでもありません。また障害などのある子供の割合は三〇%で、小学生八人と中学生三人が特別支援学級に通っています。厚生労働省の調査にもほぼ同様の数字があらわれております。
     そこで、これらの状況を踏まえて幾つか伺います。
     まず、児童の措置を決める児童相談所についてです。
     私は、以前の議会で児童相談所の業務が激増する中、マンパワーが不足している現状について尋ねたことがあります。現在も十分とは言えない人員で過酷な業務をこなされている職員の方々に敬意を表しておりますが、知的障害などの障害のある児童については、本来ならば知的障害児施設や情緒障害児短期治療施設に措置すべきものであるはずであり、それができないのは、児童相談所でのマンパワー不足により相談調査業務が手薄になっているがゆえに、障害の有無が見落とされてしまっていることによることはないのかお伺いをします。
     さらに、本来の受け入れ先である知的障害児施設や情緒障害児短期治療施設は、本県に必要とされる十分な定員枠が確保されているのかお伺いします。
     さらに、いかなる理由にせよ、現実問題として児童養護施設に虐待経験のある児童が七割近くおり、四分の一の児童が知的障害などの障害があるなど、特別な配慮を必要としている多くの子供たちで児童養護施設の職員は多忙を極めており、児童の生活環境としてもゆゆしき状況となっております。
     児童養護施設の職員定数は昭和五十一年に決められましたが、その後の法定労働時間の大幅な短縮や、当時は見られなかった特別な配慮を必要とする子供たちの大幅な増加の中でも全く見直されることなく今日に至っております。東京都では職員の配置基準について国を上回る独自の基準を設定するとともに、手厚い都単独補助金を交付してこの問題に対処しています。また学校教育の現場では特別支援学校や特別支援学級の設置も進み、普通クラスにも支援員が配置されるなどの対応もとられています。
     障害のある子供たちが暮らす児童養護施設だけがひとり置き去りにされているのは納得がいくわけではありません。児童養護施設の職員定数と支援策についての所見をお伺いします。
     次に、医学部学生に対する奨学金と医師の偏在対策について伺います。
     医療崩壊の発端は、平成十六年の医師法改正により医学部卒業後二年間の初期研修が義務化され、新卒医師の多くが施設設備が整い指導体制が充実した都市部の一般病院を研修先に選んだことにより、人手不足に陥ることととなった大学病院が関連病院から医師の引き揚げを始めたことによります。関連病院とはまさに地域の中核医療を担ってきた自治体病院であり、医師の定員不足による診療科目の閉鎖などの問題が全国的な広がりとなりました。また妊産婦のたらい回しなどによる死産事件が複数起き産婦人科医などの不足が話題になるなど、医療崩壊の言葉が定着して今日に至っています。
     医療崩壊については、ストレートに医師不足と考える向きもありますが、私自身は医師の偏在と増大する医療費をどのようにして賄うのかの二つの点が問題だと考えております。後者についてはここでは議論をしませんが、我が国の健全な財政運営を堅持しつつ必要とされる医療費等の社会保障費を確保するために、消費税の税率アップを含めた税体系の抜本改革を早急に進めることを与野党ともに求めておきたいと思います。
     医師不足については、厚生労働省の調査によれば平成二十年の医師総数は二十八万六千六百九十九人、二年前の平成十八年から八千七百七十二人、三・二%増加しています。平成十九年度からは医学部の定員増加が毎年されており、四年から五年後には医師の増加はさらにペースが上がると思います。何より大学の医局制度の問題や医師の長時間勤務の問題などがありつつも、新研修制度実施前は曲がりなりにも地域の医療は健全に運営されてきたのであり、医師不足が医療崩壊の元凶との見方についてはやや違和感があります。
     医師の偏在については、都市と地方との偏在、勤務医と開業医との偏在、診療科目の偏在と言われていますが、これは全国共通の課題であるとともに我が静岡県内の医師の偏在にも同じことが当てはまるとの思いから質問します。
     本県が平成十九年から開始した医学生等向け奨学金制度は、静岡県の百枠を筆頭に、現在では全国四十七の都道府県すべてと全国の多くの市町村が実施しており、さながら医学生の青田刈り状態と言ってもよいほどです。
     そこで、今後奨学金を受けた医学生が勤務を始めることとなり、その数は来年以降増加していくことと承知しておりますが、県内における医師の偏在解消のため、どのような判断基準で県内公的医療機関等に配属を指定していくのか、また医学生の専攻した診療科目と県内公的医療機関が必要とする診療科目とのミスマッチが起こらないようにすることが必要だと思いますが、そのための方策について所見を伺います。
     何よりも奨学金を貸与された医学生が奨学金の返還をせず、義務とされた勤務期間の間はもちろんその後も本県の医療機関にとどまってもらうことが重要です。奨学金を受けた医師との意思疎通を図りできるだけ希望に沿った勤務や研修のできる環境を整えるべきだと考えますが、どのような構想をお持ちなのか伺います。
     また、地方自治体の奨学金制度が予想以上に普及する実態を受けて、医学部を持つ大学では、奨学金を受けた多くの学生がそれぞれの地方自治体の影響下にある状況の中で医局の人材確保もままならず、大学本来の持つ医師養成と研究機関としての機能の低下が起こるのではないかとの不安感を訴えるに至っています。
     そのような事態は本末転倒であり、そのような状況にならないよう浜松医科大学等特別枠設置に合意をしていただいた十六の大学と、今後どのような調整をされていくのかお伺いをして私の質問を終わります。(拍手)
    ○議長(天野進吾君) 川勝知事。
           (知事 川勝平太君登壇)
    ○知事(川勝平太君) 小楠議員にお答えいたします。
     いずれも具体的な事実に基づいた十余りの御質問いただきましてありがとうございました。
     私は、その中でまず初めに疲弊する地方と県の役割についてのうち、県のこれまでの施策と次期総合計画への反映についてでございます。
     議員御指摘のように地方の疲弊が進んでいるという認識を共有しております。日本は長く地方分権という時代を江戸時代の末まで続けまして、そして恐らく都市と地方の均衡的発展というのは、第一次大戦前くらいまではあったかと存じます。しかしながら第一次大戦以後、重化学工業化に足を思いっきり踏み入れる形になりまして、都市と地方間の格差が開きました。そして戦後はさらにその格差が広がったかと存じます。
     これは一方で、日本の国力を東京に集中するという日本全体の国の方針があって、特に農業県におきましては食料供給基地などというような位置づけがされ、それが改められるのは本当に最近のことでございます。そうした中で、日本が国力を上げて昭和の末年におきましては世界第二位の経済大国として自他共に認められるようになったということで、その明るい面もあったかと存じます。しかしその国力がそれなりに大きくなりました後、我々はある意味で目標を失う中で、ポスト東京時代の新しい日本の姿をどう描くかということに今直面しているのではないかと存じます。
     そうした中で県がどういう動きをしてきたかということでございますけれども、四十七都道府県それぞれ違う動きをしてきたと思います。例えば北東北三県は、三県が一体になって陸奥の国づくりをしようとしたという動きがございます。関西あるいは九州におきましても、それぞれの地域として一体になって広域連合をつくっていこうという動きがございました。
     しかし、本県にありましては、石川前知事がなさいました最大の貢献というのは政令指定都市を二つおつくりになったことではないかと存じます。恐らく地政学的な状況もございまして、愛知県、山梨県、長野県、神奈川県などとそう簡単に連携が結べなかったという面もあるかと存じます。
     そうした中で、基礎自治体に力をつけるという、そういう明確な方針のもとに、県内の力をつけるというそういう県政をしかれたと存じます。またそれは成功いたしたとも思います。二つの政令指定都市がわずかの期間にできたというのは、しかもそれがそれなりの力を持って世間に認知されているということでございますので、成功したと存じます。
     また、本県は西部、中部、東部と大きく三つに分けられますので、そうした中で新しく文化の力を上げるために、東部におきましては文学、この中部におきましてはSPAC、あるいはそのSPACがいろいろと演目を人々に楽しんでいただけるためのグランシップの建設、そしてまた西部におきましては文化芸術大学をつくって、そしてオペラコンクールなどを始めることによって音楽の都づくりといいますか音楽的な文化をつくり上げていこうという、そういう意味におきまして成功してきたというふうに思うわけでございます。言いかえますと、この県はこの地域としていわば地域の潜在力を生かしていくという、そういう方向性をとってきたのがこれまでの施策ではなかったかと思います。
     そうした中で、これからの次期総合計画にそれをどう反映していくかということでございますけれども、既にございます西部におけるものづくり、これをもちろん名称には異論もあるようですけれどもフォトンバレー、こちらはフーズ・サイエンスヒルズ、そして東部におきましてはファルマバレーというように、大きくその地域性を踏まえて従来の技術を活用する伝統文化の活用、そして新しい産業を導入するなど地域性を生かした動きが既にございますので、私どもは、これをさらに空港が石川県政最後に開港したということもございますので、さらに幾つか細かく分けることを通して、こういう各地域の個性――場の力を生かしてまいりたいという、そういう方針でおります。
     言いかえますと、西部におけるものづくり、そして志太榛原・中東遠における物流、人流を通したガーデンシティの構築、そしてこの地域における食の都の形成、そして東部地域における健康産業、医療産業の充実、そしてビジット・ジャパン・キャンペーンに示されるように、日本の観光資源のメッカの一つでございます伊豆半島を観光地域としてしっかり育て上げていこうというような方向性を出しまして、全体として経済力を上げていく、その経済力を人を立派にするために使うという富国化と人材養成ということで富国有徳という、そういう理念を掲げまして、日本全体の縮図としての自覚を持って日本全体の新しい地域自立の姿をこの域内で示すという、こういう方向性を、この次期総合計画で出しているということでございます。
     続きまして、県有施設の整備についてであります。
     一般論といたしましては、富国有徳の理想郷の実現に向けてふじのくにの魅力を高め、徳のある人材を育成して豊かで自立する地域としていくために、生涯教育、文化・スポーツの振興、健康増進などさまざまな分野で公共サービスを提供する県有施設というのは、今後とも必要不可欠であると考えています。
     施設の整備に当たりましては、県民の皆様のニーズを踏まえるとともに、県の将来像や財政状況、社会経済の見通し、周辺施設の立地状況、整備・運営手法、採算性などを十分考慮し、県有施設としての機能や規模、立地場所、整備時期等を決定していく必要があります。市町との協同による施設整備についてでありますけれども、これはそれぞれのケースに応じて協同の手法を検討し対応していく以外にないであろうというふうに思います。一般論としては、どこにも同じく美術館とか博物館とか音楽ホールがあるのは望ましくないので、我々は県全体のバランスを見るという、そういう利点がございます。
     そうした中で、議員のお触れになりました沼津につきましては、市長さんとかなり密にいろいろと相談をし協同をして、コンベンションセンターというものの合意に至りました。こうしたものはもうそれぞれ具体的に議論していく以外にないと思っております。
     そして、東静岡につきましてはやや意思疎通を欠いたという反省を持っておりますけれども、これは今後直していけばいいというふうに思っておりまして、ただ東静岡の活用につきましては、今はガンダムが大成功していますので、それを生かすという方向性なども私などは考えたりするわけですけれども、何かありきということではあるまいというふうに思っております。ともかく県民が一番喜ばれる、あるいは県外の方々にも楽しんでいただけるように、東静岡全体を交通のアクセスも考えながら日本平のほうまで視野に入れて、あの地域をこの静岡市と静岡駅周辺と上手にすみ分けができかつ補完関係があって相乗効果ができるような、そういうものをぜひつくり上げてまいりたいと念願しております。
     また、議員御指摘の島田市のメッセですか、これはいわゆる箱物として出てきたわけでございますが、空港が開港いたしまして、その空港とのアクセスを含めて全体像をやはり書いたほうがいいということで、メッセの思想は一般論としてそこにいろいろな人が集まることですが、どこに泊まるか、どこで食事するか、人々の動線をよく考えながらやらなくちゃいけないと、その場合に陸路、それから空路あるいはまた鉄道といったものを考えながら、その地域の総合力を上げていくという観点で今グランドデザインを書いているので、最初にメッセありきというわけにはなかなかまいらないということでございます。しかしそれはメッセを退けることではありませんので、このことを言わないから別のところで腹いせにいろいろと文句を言うというふうなことがあっては困ります。
     また、西部における野球場やあるいは県の文化施設ということは、今要望いただいておりますので、これはもう少し検討を要するであろうというふうに思っているわけでございます。 
     このように、県の持っている施設というものは県民全体で活用できるようにしなくてはなりませんので、個別に挙がってきたそういう要望やあるいはアイデアというものをしっかり全体性の中で練って、皆さんに喜んでいただけるということをオープンな形で確認しながら進めてまいりたいというふうに思います。
     その他の御質問につきましては関係部局長から御答弁申し上げますが、一つは、県の職員に関しまして頭脳明晰、経験豊富、貴重なる人材だというふうにお褒めの言葉をいただきまして面映ゆい思いもございますけれども、そういう御評価に恥じないように、これから県職員一丸になりまして、県民の皆様方の公共のレベルが上がりますように努めてまいりたいと思います。
    ○議長(天野進吾君) 丸山経営管理部長。
           (経営管理部長 丸山康至君登壇)
    ○経営管理部長(丸山康至君) 疲弊する地方と県の役割についてのうち、県職員の地域貢献についてお答えいたします。
     NPOを初めとした市民活動団体は、県にとりましてもふじのくにづくりを進めていく上での重要なパートナーであり、県職員がこうした団体の活動に参加することは、行政とは異なる面から県民の生活にも触れる機会になるなど視野を広めることになり、ひいては行政面においてもよりよい効果をもたらすものと認識をしております。また県職員が退職後に職員時代を通じて身につけた知識、経験を生かして市民活動や地域活動に参加することは、地域社会への貢献はもとより職員の生きがいづくりの点でも有意義であるというふうに考えております。
     このため本県においては、これまでもボランティア活動に従事する場合の休暇制度の拡充やNPOでの体験研修、NPOとの協働に関する研修の実施に取り組んできたところでありまして、さらに今年度からは、新たに職員向けの庁内広報におきまして、県退職後に地域活動やボランティア活動に積極的に取り組まれている方を紹介するコーナーを設けまして、職員への意識啓発にも努めているところであります。
     今後ともさまざまな機会を通じて職員が地域住民の一員としての強い自覚のもとに、市民活動や地域活動に積極的に参加するよう呼びかけるとともに、議員の御期待にこたえられるようなリーダー的な役割をも担える人材が数多く輩出するように、活動に参加しやすい職場環境づくりにも努めてまいりたいと思います。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 出野文化・観光部長。
           (文化・観光部長 出野 勉君登壇)
    ○文化・観光部長(出野 勉君) 富士山観光についてのうち、まず初めに県西部の県民に対する富士山啓発についてお答えいたします。
     富士山の日を盛り上げる県民運動の一つとして、富士山の自然、環境、景観、歴史等をテーマに本年度から県内四会場で富士山県民講座を開催することといたしまして、西部地域においても先週浜松市で命の山・富士山をテーマに講演会を実施するとともに、富士山世界文化遺産登録の取り組みを紹介したところであります。
     また、来年の富士山の日前後には、西部地域を会場に親子で参加できる富士山を学ぶイベントを実施するほか、西部パレットにおいても富士山写真展の開催が計画されております。さらに市町、民間団体等の皆様の御協力により、現時点で昨年度を上回る富士山の日協賛事業の実施が予定されており、一人でも多くの県民の皆様に御参加いただき富士山に対する意識を高めてまいりたいと考えております。
     今後も、幅広い年齢層を対象とした富士山世界遺産の出前講座を初め、富士山世界文化遺産フォーラム等皆様が気軽に参加できる取り組みを通じ、富士山を身近に感じられるような環境づくりを進めてまいります。
     次に、静岡県側からの富士山観光についてであります。
     まず、情報発信についてでありますが、富士山は世界に誇れる本県最大の観光資源であり、富士山を生かした観光誘客への取り組みは最も効果的でありますことから、今年度からは、本県が誇る「富士山と食」をテーマに、富士山と県内の観光地等を結びつけた観光プロモーション活動を国内外の空港就航先や首都圏、関西圏等を中心に展開しているところであります。
     海外では、浮世絵に描かれた富士山と千本松原や薩埵峠などが人気であることや、昨年中国ドラマのロケ地となった富士山本宮浅間大社では、中国語での絵馬の書き込みもふえていると聞いておりまして、富士山のある静岡県の認知度は高まってきていると考えております。
     今後、観光誘客の地域間競争が激しさを増す中でふじのくにを国内外に強くアピールし、より多くの観光客を本県に誘客するため、海越しの富士山や茶畑と富士山など本県でしか味わうことができない富士山の美しい景観に加え、サクラエビやシラスなど本県ならではの海の幸を組み合わせた旅行商品の造成を進め、観光プロモーションや商談会において重点的に売り込んでまいります。
     さらに、本年二月からインターネット及びiTunes上で配信しております富士山の自然、歴史、美しさなどをテーマとした動画映像番組「富士山二・二三」は、「生命ある山」などの全十話の内容としておりますけれども、この日本語版、英語版を合わせまして一日で九千件のアクセスのある人気コンテンツとなっておりまして、これらの豊富な広報素材を活用してふじのくにを国内外に積極的に情報発信してまいります。
     次に、登山者数統計についてであります。
     県ではこれまで山頂部付近の登山者数は環境省の調査により、また各五合目登山口付近での登山者数及び来訪者数は市町等が行う調査により把握し、登山者の動向などの基礎的データとして活用してまいりました。特に両者のデータを突き合わせることで、夏山登山期間中の日別の混雑度合いや時間帯ごとの登山者の利用動向等のより詳細な情報を把握することができ、登山道の管理やトイレの維持管理、さらには遭難事故防止へのより具体的な取り組みなどに活用することができることから、今後とも両者の統計を活用して登山者の安全や富士山の適正な利用に役立ててまいります。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 石川健康福祉部長。
           (健康福祉部長 石川俊一君登壇)
    ○健康福祉部長(石川俊一君) 児童の養護についてのうち、初めに児童相談所の体制についてお答えをいたします。
     児童相談所において、児童の発達状況に関しては児童心理司が一人一人専門的な心理診断を行うとともに、必要に応じて専門の医師により医学的診断を行って判定をしております。
     議員御指摘のとおり、近年児童相談所の相談件数が増加し職員の業務が増加してはおりますが、その中にあっても個別事例には常に真摯に向き合っておりまして、知的障害や発達障害等の障害の有無については適切な判定が行われているものと認識をしております。
     各児童の具体的な援助方針は、児童の発達状況に加え就学環境、各施設で行われる支援内容や保護者の意向などを総合的に判断して決定することとしており、知的障害や発達障害のある児童についても、その児童の状況に照らして児童養護施設へ入所した上で地域の学校に通うことが望ましいと判断された場合には、児童養護施設への入所決定を行う場合もあります。
     また、児童相談所においては、各施設への入所決定を行った後も入所児童の状況を継続的に把握することとしており、児童の状態に変化が見られた場合には、児童の処遇上より望ましい施設への入所変更を行うなどの対応も行っているところであります。
     次に、知的障害児施設と情緒障害児短期治療施設の充足状況についてであります。
     知的障害児施設や情緒障害児短期治療施設の入所決定・施設給付決定は、児童相談所が行うこととされておりますが、各施設の入所率はここ数年知的障害児施設が八〇%から九〇%、情緒障害児短期治療施設は九〇%台で推移しており、適正な定員が確保されているものと考えております。
     次に、児童養護施設の職員定数と支援策についてであります。
     近年、児童養護施設等には、虐待を受けた児童を初めとして特別な支援を必要とする児童がふえておりますことから、被虐待児童等に対応するための職員を配置した場合や小規模でのケアを行う場合等に、人件費を加算する制度が国において設けられているところであります。県といたしましてもこれらの制度の活用を施設に対して働きかけてきたところであり、県内の多くの児童養護施設等において各種の加算制度が活用されております。
     現在、国の社会保障審議会において、児童養護施設や情緒障害児短期治療施設等の施設種別の見直しや、子供にとって必要なケアの質を確保するための職員配置基準の引き上げ等が検討されているところであります。県といたしましては、引き続き国に対して職員配置基準の改善を強く要望していくとともに、児童相談所や県立施設による専門的な研修、医師による医学的診断に基づく助言などを通じて児童養護施設の職員に対する支援を強化してまいります。
     次に、医学部学生に対する奨学金と医師の偏在対策についてのうち、まず奨学生の県内適正配置と定着対策についてであります。
     医師確保をより確実に進めるため、県では昨年度県内の病院に医師を派遣している大学に特別枠を設けるなど貸付制度を大幅に拡充し、貸与を受けた医学生等が平成二十四年度から本格的に県内に就業する予定となっております。配置先については、地域の医療体制を勘案した上で本人の希望や大学との調整を行い、医師としてのキャリアアップを考慮しつつ地域医療の中核を担う公的病院等に配置して、医師の偏在の解消に努めてまいります。
     また、診療科目のミスマッチを防ぐために、浜松医科大学等と連携を密にして在学中から地域の医療現場を体験する機会を設けるとともに、県内の医療機関の必要とする診療科目等の情報を提供してまいります。
     さらに、ふじのくに地域医療支援センターを中心に、地域の病院が協同して充実した研修プログラムを作成し、優秀な指導医のもと、広範かつ体系的な研修が受けられるようにすることで、若手医師にとって魅力ある病院、地域づくりを進め県内への定着を進めてまいります。
     次に、大学との調整についてであります。
     近年、初期臨床研修制度の導入などにより若手医師の大学離れが進み、大学の研究機能や医療水準の向上などが阻害されてしまうのではないかと危惧されております。このため県といたしましては、奨学生の配置による地域医療の充実に加え大学の研究機能も確保できるよう、配置先病院での臨床と大学における研究の双方に従事できる仕組みなどについて、今後浜松医科大学を初め大学特別枠を設けている十六大学と検討を始めてまいります。以上であります。

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