本会議会議録
質問文書
平成22年2月静岡県議会定例会 質問
質問者: | 天野 一 議員 | |
質問分類 | 一般質問 | |
質問日: | 03/08/2010 | |
会派名: | 自民改革会議 | |
質疑・質問事項: | 1 本県の茶業振興について (1) 茶業の現状認識と今後の対応 (2) 中山間地域茶業の活性化 2 自殺対策について 3 人権への取り組みについて (1) 人権尊重の意識の定着 (2) 学校における人権教育 (3) 県営住宅施策 4 地球温暖化防止への取り組みについて (1) 温室効果ガス排出状況の現状認識と今後の施策展開 (2) 新エネルギー対策による温室効果ガスの排出削減 (3) 企業による森づくりのさらなる拡大 5 博物館の整備と文化財シェルターについて (1) 自然系博物館の整備 (2) 文化財シェルター |
○副議長(堀江龍一君) これで阿部時久君の質問は終わりました。
次に、七十一番 天野 一君。
(七十一番 天野 一君登壇 拍手)
○七十一番(天野 一君) 私は自民改革会議所属議員として当面する県政の諸課題について、知事並びに関係部局長、教育長にお伺いをいたします。
まず、本県の茶業振興についてのうち、まず茶業の現状認識と今後の対応についてであります。
私は今、茶業界は危機的状況にあると考えます。茶業界では、平成十二年以降ペットボトルの緑茶ドリンクが発売され急速に生産が伸び、そして増産を続けてまいりました。平成十七年をピークに減少傾向となり昨年は顕著になりました。この原因は一つに、平成十八年以降ミネラルウオーターが急速に伸び、昨年度は年間二百万キロリットルを超え、緑茶ドリンクに迫るまでの勢いとなっております。
このようにさまざまな飲料が次々と台頭してくる競争の時代において、昔ながらの急須で入れて飲むリーフ茶は消費量が年々減少し、平成二十年には一世帯当たり年間購入量が九百九十二グラム、十年前の七七%にまで落ち込んでおります。また高級茶の贈答用需要の減少や、茶の購入が専門店からスーパーやコンビニエンスストアなどに移り、百グラム五百円売りの安いお茶が中心となってきております。高価格帯のお茶の取引量は大幅に減少し、茶業情勢は深刻さを増しております。私は若手の茶生産者グループとの意見交換会などに出席する中で、既に採算がとれず経営の限界にまで至っているとの多くの意見を聞きます。茶の生産現場が著しく疲弊してきている現状を目の当たりにしております。
また、私の住んでいる静岡市には昔から数多くの茶の問屋などがあり、茶町周辺を歩けば一年じゅういつでもお茶のよい香りが漂ってきました。しかし現在における静岡市の茶商工業協同組合員の数は、ピーク時二百五十件あった組合員が百七十件に減少、さらに減少すると言われております。消費地の茶専門店などにおけるリーフ茶の販売不振などが大きく影響しているものと思われます。
本県の茶業は県農業産出額の約二五%を占める基幹産業でありますが、この危機的現状を踏まえ、知事はこのような本県茶業をどのように認識し、どのような対策を図っていくのかお伺いします。
次に、中山間地域茶業の活性化についてお伺いします。
荒茶取引価格の低下に加え、社会の経済状況、ライフスタイル、消費行動などに対応し切れず、茶業界は即効的な解決策が見出せません。こうした先行きが不透明な茶業の生産現場においては、若手後継者等の就農も三年前と比べるとわずか五〇%しかなく、茶生産者の高齢化は年々ひどくなってきております。
特に中山間地域においては、傾斜地茶園が多く機械化も難しいため生産性向上も図りにくく、中山間地域の現地においては茶の栽培をやめようという声など多く聞かれ、茶園耕作放棄の予備軍がかなり多く存在していることがうかがわれます。このままでは静岡県における中山間地域の美しい茶園の景観はなくなってしまい、これによって中山間地域全体が崩壊していってしまう危険性さえはらんでおります。
魅力ある茶業の振興を打ち出すことこそ、地域茶業の担い手の育成や中山間地域の定住促進を図ることができ、美しい景観、地域文化の継承、県土保全などが図られていくものと思います。県は、今後、中山間地域茶業の活性化についてどのように取り組んでいくのかお伺いいたします。
次に、静岡県における自殺対策についてお伺いします。
全国では毎日百人の人間が自殺をしております。一九九八年以来、毎年自殺者は三万人を超え、中核市一市分が消滅したことになります。二〇〇八年の警察庁の統計によれば自殺者の総数は三万二千二百四十九人で、同年の交通事故による死亡者数五千百五十五人の六・二倍であります。さらに一人の自殺者の周りには、家族や友人、職場・学校関係者など深刻な影響を受けている人は百万人を超えると言われております。また、自殺の原因、動機は健康問題、経済・生活問題、家庭問題、勤務問題などさまざまであります。
一方、自殺をしようとする人については心理的な視野狭窄に陥っているとの指摘もあります。絶望して死にたいという気持ちと、何とか助けてほしい、生きたいという気持ちのはざまで揺れ動いている人が発するSOSのサインを、いかにキャッチしてアプローチしていくかが求められております。
自殺防止対策における取り組みについて、事前対策、危機介入、事後対応の三段階が必要と思われますがそこでお尋ねします。国は厳しい自殺の現状を踏まえ、昨年自殺対策百日プランを策定しました。さらに去る二月五日、いのちを守る自殺対策緊急プランを発表しました。この中で三月を自殺対策強化月間とすること及び普及啓発の推進、相談窓口の充実強化や、未遂者や遺族への支援強化などを柱とする対策を行うとしております。本県においてもこの三月は自殺者の増加が懸念されております。国の強化月間への取り組みと呼応して県はどのような取り組みを行うのか、県の考え方をお伺いします。
また、自殺予防活動にマンパワーの配置が欠かせないと考えます。国の自殺総合対策大綱では民間団体との連携が重点施策として挙げられております。特に年間一万件の電話相談を受けているいのちの電話などのすぐれた民間の相談活動についてお伺いしたいと思います。いのちの電話は本県では静岡市と浜松市にありますが、さきのテレビ、新聞などの報道でもボランティア志願者が少ないと報じられております。その現状をどのように認識しておりますか。将来この民間団体をどのように支援をしていくのかお伺いします。
さらに、残された人たちの苦痛を和らげ感情を整理するとともに、悲嘆の回復に専念できる環境や情報を提供していくのかお伺いします。
次に、人権への取り組みについてお尋ねいたします。
私たちは、この世に生をうけたかけがえのない一人の人間として、だれもが生まれながらにして人間らしく生き幸せに暮らす権利――人権を持っております。県では次期総合計画の策定を着々と進めております。県行政のさまざまな分野において、県民の基本的人権を守るという横糸を通していくことが今後一層求められていくものと思います。また人権の視点から、すべての人間に共通する人間としての最低限のルール、人権文化を築き上げることが求められております。
そこでお尋ねします。今年度実施した人権問題に関する県民意識調査結果を踏まえ、県民の人権尊重の意識をさらに高めていく必要があると思いますが、調査結果をどう評価し今後どう取り組んでいくのかお伺いします。人権文化を築くためには、子供のころから自尊感情をはぐくみ、人権への無関心や無理解は、社会の中の差別に気づかないばかりか自分が差別をした当事者であることさえわからない、そういうことを理解させることが大変重要だと思いますが、教育の現場においてどのような取り組みがなされているのかお尋ねいたします。
また、昨年は百年に一度の大不況で、静岡労働局の資料によると、さきのリーマンショックの以降に雇いどめとなった県内の非正規労働者は、一昨年の十月から昨年十二月の間に把握しているだけでも一万人程度に上っていると言われております。これらの方々は職業と同時に住まいを失ったり、失うおそれがある状態に置かれました。県と市町ではこのような方々に対する住宅確保のための緊急の支援策を行いました。四百戸近い公営住宅を目的外使用により提供しました。昨年十月からは家賃を支給する住宅手当制度を創設し、本年一月まで千件を超える申請の受け付けをしたと聞いております。
住まいはすべての人々の生活の基盤であり、住む人の心と体の健康をはぐくむものであり、世代を超えて受け継がれる社会資産でもあります。他の商品と同列に市場原理だけで論じられるものではないと改めて痛感いたしました。これからは住まいも基本的人権と言われる住居福祉の視点が一層不可欠になると思います。
公営住宅は現在の制度では原則として親族と同居することが入居資格とされております。緊急入居された方々の中には単身者や親族以外の方との共同居住者もいて、これらの方々はいずれ退去しなければなりません。住宅のセーフティーネットである公営住宅の趣旨からすれば、仕事と住居を同時に失ったこのような人たちの住居をどうするかは避けて通れない問題であると考えます。
そこでお尋ねします。県営住宅に緊急入居された人々のうち本来の入居資格のない方はどのくらいおられたのか、またこれらの方々に入居資格を与える方策としてどう考えるのか、今後の制度改正の見込みについてお伺いしたいと思います。
次に、地球温暖化防止への取り組みについて伺います。
地球環境問題は、人類の存続のために先進国、開発途上国にとって共通の課題であるという認識が国際社会に定着しつつあると思います。COP15では、残念ながら先進国と開発途上国の利害が対立し新たな枠組みの合意には至りませんでした。しかし産業革命以前からの気温上昇を二度以内に抑制する、先進国は京都議定書よりも排出量削減を強化するなどの政治的合意は得ました。
これを受け、我が国では温室効果ガス排出量について前提条件つきではありますが、二〇二〇年までに一九九〇年比二五%削減の中期目標を発表しました。一方本県では、平成十八年三月に策定したストップ温暖化しずおか行動計画により、温室効果ガスの排出量を平成二十二年度までに平成二年度比一二%削減を目標値として、さまざまな施策に取り組んでおります。
そこで、県の地球温暖化対策における今後の方針等について三点お伺いします。
まず、温室効果ガス排出状況の現状認識と今後の施策展開についてであります。
昨年十二月に公表された県内における平成十九年度の温室効果ガス排出量は、基準年度に比べ一・三%の減少となっているものの二酸化炭素に限れば八・二%増加しております。県内の温室効果ガスの排出量の現状について、その原因をどのように認識しているのかお伺いします。また県では、目標達成のために県民への啓発活動を推進することとしているところでありますが、これまで取り組んできた施策の内容や手法はどのようなものであったかお伺いします。あわせて現在の計画は平成二十二年度までとなっておりますが、今後新たな計画策定をどのように考えているのか伺います。
次に、新エネルギー対策による温室効果ガスの排出削減について伺います。
新エネルギーは地球温暖化対策のみならず、エネルギー自給率が低い我が国においても積極的な導入に努めなければなりません。本県の新エネルギーは、しずおか新エネルギー等導入戦略プランに基づき着実に導入が進められてきました。個々の実績では、富士市地域の製紙工場を中心に導入されてきた天然ガスコージェネレーションやバイオマス発電は、既に導入目標を達成しました。しかし太陽光発電、太陽熱利用、風力発電などの主要な新エネルギーの導入実績は現在のところ目標に達していない状況にあります。
そこで、温室効果ガスの排出量の削減につながる新エネルギー対策の現状について、県としてはどのように認識しているのか、お伺いをいたします。
次に、企業による森づくりのさらなる拡大についてお伺いします。
ストップ温暖化しずおか行動計画によると、温室効果ガスの削減目標として三・二%を森林の吸収量で賄うこととなっております。私は新エネルギーの活用などによる温室効果ガスの削減とあわせて、森林の働きに着目していくことも地球温暖化対策として大切であると考えます。
千葉県では、県民や企業などが植栽や間伐などの森林整備を計画的に実施する場合、その整備量に応じて森林の二酸化炭素吸収量を評価し認証する制度を定め、県民等による森林整備を促進するとともに、より多くの県民が森づくり活動の効果に関心を持つ契機としております。
本県には県土の約三分の二を占める約五十万ヘクタールの森林があります。二酸化炭素の吸収能力は高いものがあると思います。本県でも地球温暖化対策の一つとして森林の整備に力を入れていることは承知しておりますが、加えてより多くの企業に森づくり活動への参加を促す取り組みも必要ではないかと考えます。今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。
次に、博物館の整備と文化財シェルターについて伺いたいと思います。
知事は、昨年六月本会議の一般質問を受け、また先日の本会議の質問を受けて、答弁の中で自然系博物館について、「遠州から駿河、そして伊豆半島に至るまで、全域が博物館であるという思想に立脚することが大事であって、建物ではありません」と答えました。再度確認したいと思います。知事は、自然系博物館の建物は要らないと考えているのでしょうか。
本県では平成七年度から自然系博物館の整備について議論があり、県当局は第一段階には散逸する危険性のある資料、標本などを収集、整理、さらに人的ネットワークを構築する等を行い、第二段階において博物館整備について考えようということになっていたと思います。このような経過についてどうお考えになるのか、お伺いいたしたいと思います。
最後に、文化財シェルターについてお伺いします。
近年各地で起きている自然災害により、多くの貴重な人命はもとより多くの財産も失われました。そうした財産の中には古くから伝えられてきた貴重な歴史文化遺産も含まれています。そうした中で、被災地において人々の心のいやしには地域の歴史的文化遺産が何よりも必要であることは、新潟県地震で被害を受けた新潟県旧山古志村の再生の際に立証されております。長い歴史の中ではぐくまれてきた文化や文化財、それらはその地に暮らす人たちの心のよりどころになっているのであります。災害によって失われそうな文化を守ることは住民の暮らしを守ることになると、旧山古志村の村長であった長島忠美さんは言っております。
本県では、東海地震の発生が予想されている中、昨年八月十一日早朝に起きた地震、それは東海地震への警告としてとらえるのには十分であったと思います。壊れた駿府城の石垣、東名高速道路路肩など地震災害の恐ろしさを見るにつけ、文化財への対策を早急に実施しなければならないと思うのであります。
現在、博物館構想は具体的になるまで時間を要しますから、できるところから着手する観点から、例えば貴重な文物を保管できる収蔵庫を建設するという案はどうでしょうか。自然標本、歴史資料、映像写真、文化財等の管理型文化財シェルターのようなものを至急に検討する必要があると思いますがいかがでしょうか。
以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(堀江龍一君) 川勝知事。
(知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 天野一議員にお答えいたします。
初めに、本県の茶業振興についてのうち、茶業の現状認識と今後の対応についてであります。
本県が日本一の茶産地であり続けておりますのは、茶の栽培に適した気候や土質などの場力に恵まれているということは言うまでもありません。小学生が「茶が、静岡が好きだから」と言ったところにその本質があらわれていると存じますけれども、一流のものづくり技術を使った茶を生産して時代に合った売れる商品づくりに取り組んできたということにもよるものであります。しかし本県のすぐれた栽培技術や、県内で開発された先端技術を組み込んだ製茶機械が全国に普及いたしました。したがってどこの産地においても高品質で似通った煎茶ができるようになったことが、現在の厳しい価格競争の一因になっていると考えます。
一方、本県には山間地から平坦地に至るまで多様な環境がございまして、そうしたことに恵まれ、消費者が求める新しい商品をつくり出す高い技術と、その商品を消費者に届けるための流通機能が集積しております。このような本県の場の力を結集いたしまして静岡茶の改革はできるものと確信しております。
現在、香りや味に特色のある新商品づくり、外国でも手軽に本格的な緑茶が楽しめるドリップ茶の開発、健康に役立つ成分に着目した粉末茶やドリンク茶の開発などさまざまな取り組みが進んでいることからも、今後も静岡県茶業を活気あるものとしていくために、このような取り組みを積極的に支援していくこととしております。
これは担当部局がまとめてくださったものでもあるわけですが、どちらかというとお聞きいただいてわかりますように、サプライチェーンの構築とでもいいますか、生産現場から商品の開発までお茶づくりということに重心が置かれたそういう茶業の振興策であると思います。それはとても大切でありますが、もう一方でものづくりとものづかいの精神、この二つのことを柱にすることがこれからは大切で、どちらかといえば、本県に眠っているかとも思いますが、ものづかいの精神を復活させ、それを掘り起こしていくことが大切であるというふうに思います。
例えばお茶を飲むときにどのように飲むかということでございますが、本県は金谷の志戸呂焼と、ここから派生しました森山焼というのもございます。これは小堀遠州に起源するものであります。もう一つ家康公に起源する賤機焼がございますが、私はこうした陶磁器を使うということも実は使い方の最初の一歩ではないかと。駿河の指物のお茶道具もございます。これを茶業を振興していくということを言っている産業部で使っているかどうか。(発言する者あり)使っているということです。
それが十分にPRされているかどうか。少なくとも知事公室では使われていない。お客様はたくさんお越しになりますけれども、その方々に静岡茶を出しているわけですが、その器が志戸呂焼のような特徴のあるものですとそれについて数分間のお話ができます。ところが本県で出す場合に、有田焼で富士山の絵柄のあるものを出している。で、堂々と有田焼でございますということを言うんですね。これは恥ずかしい。有田も実際は御承知のように美濃で取ったものをここに持っていって、そこで絵つけをしているということでございますが、ともかくそのような使い方に工夫を本気で凝らすべきときに来てると。
ですから、使い方としては要するにお茶を飲むということなんですけれども、消費とか需要とかの方向に重点を移していくと。子供のときからそれを涵養してくことが大事ですので、したがって保育園、幼稚園のころからお茶を飲むというのが当たり前だというような、そういう文化を醸成していくことがとても大切だというふうに思うわけです。
それがスタイルにならないといけない。これがスタイルになったときに静岡式茶の文化のスタイル、私は既に材料はありますので、これがどう組み合わせるかと、どう使うかと、使う側の量と質といいますか、これが今求められてる。使う側にいろいろ支援をいたしましても、あるいはしてまいりました。恐らく相当のところまでしてきたということで、この件について勉強しますと本当に一生懸命やってこられたということがようくわかります。しかしいずれも使い方――ものづかい、ここにはやや弱い。これは実は本県全体の特徴でもあると思います。これを今度は世界に発信していくのだという観点に立っていただきたいと思うのです。
そうすると、中国や韓国やあるいは東南アジア、さらには欧米の方々がお越しいただいたときにどういうふうにすると、この地域の茶の文化を無理なく楽しんでいただけるかという、そういうスタイルを伝統に立脚しながらつくっていくということが大切で、いきなり茶室に案内してその作法にのっとってやってもそこには無理があります。そういう中間のものを本気になって考案していくということが大切でございますので、それは我々の日常生活の中で一人一人がそういう自覚を持っていただいて、差し当たって量をふやしていくということが大事ではないかというふうに思っております。
私は、そうした形で魅力のある茶文化は確立できると。それは自信を持って国際化に向けて推進できるものだと。いわば茶文化の国際化の推進と、そのような茶文化のスタイルの確立を同時並行的に進めてまいりたいというふうに思います。韓国に行く、中国に行って、こうして出すといいと、その現場での工夫をしながらスタイルを見直して、徐々に確立していくという方向にギアを変えまして、ものづくりとものづかい、この両軸で立って茶文化の振興を図ってまいりたいと思います。
続きまして、博物館の整備と文化財シェルターについてのうち、自然系博物館の整備についてであります。
東海地震も十分に可能性がある、この間の地震も経験いたしました。あるいは中越沖地震とさまざまなことを知るにつけまして文化財の保護がとても大事だということは言うまでもありません。そうした中で「国破れて山河在り」と言いますけれども、この山河はいろいろな文化をつくり上げていくそういうもとになっている。富士山があり駿河湾がある、あるいは南アルプスがある、遠州灘そこにはすばらしい中田島の砂丘がある、そして浜名湖がある、天竜川や大井川とこういうものがあると。こうしたものは、私はまさにそれ自体が人の心に打つだけの景観を備えていると思っておりまして、まずはふじのくに全体を博物館だというふうに見る器量を持つことが大切だと、そういう機運を醸成してまいりたいというふうに思っております。
その際に、日本の縮図であるということはよく言われるんですけれども、ジオパークということによって伊豆半島は世界のパークですと、富士山は世界文化遺産になることによって人類の共有財産でありますと、こういう観点が大切でありまして、そういう意味において私は、我々の生活景観全体が丸ごと博物館だというような見方を出したいということでございます。
そして、それが学ばれるに値するということになるには、我々がそれについてよく知らねばなりません。ですから学校だけの、いわゆる北海道の稚内から与那国島にまでなされている教育とともに、それは世界じゅうの子供たちが勉強してることでもありましょう。それとともに自分たちの地域についてようく知っていることが大切だということでございまして、地球の中でのふじのくにについての知識を体で知って、そして知識で体系的に説明できるようなそういう教育もあわせて大切だというふうに思っているわけであります。まさにふじのくに全体が学びの舞台になると。ここは学ばれるに値しますので、留学生やあるいは研究者が、地震のこと、火山のこと、あるいは土質のこと、あるいは農産物のことを研究しに参りますから、我々自身がテキストであると、テキストの一部の構成要素になっているんだというそういう自覚を持つことが大切で、そういう文化を育ててまいりたいと思っているわけでございます。
博物館それ自体についてでありますけれどもこれは必要です。現在のところ、県では平成十四年度に有識者による検討会から二段階整備という御提案をいただきました。二段階整備というのは、まず一段階におきまして――平成十五年から始まっているわけですけれども――次世代に継承するべき貴重な標本等の収集、保存を進めながら、これらを活用した博物館実習や展示会の開催、インターネットによる公開など教育普及活動等の促進を図るというものでございます。
これはやっていかなくちゃなりません。ここからどのように第二段階である博物館の建設に進むのかということが今問われていると思いますが、現段階ではまだ平成十五年から始まっているという第一段階の過程にあるという報告を受けております。しかしどの程度この収集が今されているのか、まだどれぐらい必要とされているのか少しく精査をいたしまして、そうした中で差し当たっては、世界文化遺産に富士山がなるとなれば、それを軸にした自然博物館、あるいはいわゆる啓蒙的なセンターというものを設けることが視野に入ってくると存じます。そうした脈絡の中で少しく年限を設定をしながら、どのような自然博物館を本県が持つのがふさわしいのかというそういう方向に、つまり第二段階の方向に向けて考えてまいるというふうにしてまいります。
その他の御質問につきましては、関係部局長、教育長から御答弁申し上げます。
○副議長(堀江龍一君) 堀川産業部長。
(産業部長 堀川知廣君登壇)
○産業部長(堀川知廣君) 本県の茶業振興についてのうち、中山間地域茶業の活性化についてお答えいたします。
本県の中山間地域は気象や地形を生かした品質の高い茶産地として知られ、地域の茶業は働く場を提供し、山合いの茶園は独特の美しい景観を形成しております。中山間地域の茶業を活性化していくには、このような地域の持っている場の力――場力を最大限に活用し、消費者のライフスタイルや消費行動に合った新しいお茶づくりなどに取り組んでいくことが重要であります。
このため、県ではこれまでの取り組みに加え、来年度から新たに中山間地域の銘茶づくり事業を実施することとしており、中山間地域の気象、土質、品種を生かし、製茶方法を工夫し、消費者が味や香りだけでなく一目で見て違いがわかるような個性に富んだ、これまでにない百種類の銘茶づくりに対し支援することとしております。
具体的には、県内の中山間地域の各茶産地で若い人たちに創意工夫した銘茶づくりを競ってつくってもらい、この中からベスト五十を選定するコンテストをこの秋に実施することとしております。選定した銘茶につきましては、仮称でありますが、ふじのくに山の銘茶として、商品化と販売の支援をしていくこととしております。中山間地域銘茶づくり事業は二年間実施し、これも仮称でありますが、ふじのくにの山の銘茶百選をつくってまいります。
また、中山間地域の場の力を最大限に活用したてん茶の製造や有機栽培茶づくりなどへの支援のほか、中山間地域の茶園を楽しむグリーンティーツーリズムや、定住して新たにお茶づくりに取り組む若者たちへの支援を行うなど、中山間地域の茶業の活性化を積極的に進めてまいります。
○副議長(堀江龍一君) 石川厚生部長。
(厚生部長 石川俊一君登壇)
○厚生部長(石川俊一君) 自殺対策についてお答えいたします。
本県では、自殺対策強化月間である今月、睡眠キャンペーンの普及促進活動を集中的に展開しております。具体的には、一日にJR富士駅前で地元高校生が行った街頭キャンペーンを皮切りに、コンビニエンスストアでのポスター展示、十二日からはテレビCM放送を開始するほか、全国でも例のない取り組みとして、ハローワークにおいて求人公開カードの裏面に睡眠キャンペーンの情報を掲載し、自殺のリスクが高いと思われる無職者に重点的に普及を図ることを静岡労働局と協働して行っております。
次に、いのちの電話は自殺を初めとする重い相談に対応いただいており、その意義ははかり知れないものがありますが、この活動は志を持ったボランティアの方々に支えられており、こうした皆様方には深く感謝いたしております。充実した相談体制を維持するためには一人でも多くの方に活動に参画していただくことが重要でありますことから、県といたしましてはこれまでにも新たな相談員になる方の研修費用に補助して負担軽減を図っており、引き続き支援してまいります。また残された方々へのサポートは非常に大切であり、平成二十二年度から新たに相談会の開催や各地の遺族の会のネットワークづくりに対して支援を行うこととしております。
県といたしましては、今後とも睡眠キャンペーンによるうつ病の早期発見・早期治療の取り組み、相談支援体制の充実、遺族へのサポートなど市町や関係機関・団体と連携しながら総合的な取り組みを強化し、一人でも多くの命を救うことができるよう努めてまいります。
次に、人権への取り組みについてのうち、人権尊重の意識の定着についてであります。
今年度の県民意識調査では、本県を「人権尊重の意識が定着した住みよい県」と考える人が増加するとともに、「自分の人権を侵害された」と思ったことがある人が減少するなど、県民の人権尊重の意識は着実に高まりつつありますが、パワーハラスメントやインターネットを利用した誹謗中傷など、人権問題の多様化や人権を身近な問題ととらえていない人も多いといった現状がうかがえます。こうしたことから、人権啓発センターを拠点に年間約百五十回、参加者二万五千人に及ぶ各種講座等を開催しているほか、マスメディアを活用した広報啓発活動などに取り組んでいるところであります。
また、来年度におきましては、こうした活動に加え新たにテレビCMなども活用して啓発活動を展開するとともに、多様化する人権問題を踏まえまして、県民が人権を学ぶ機会や場の一層の充実、全庁的な人権に配慮した事業の推進など幅広い視点からの検討を進め、次期静岡県人権施策推進計画を策定することとしております。今後とも関係機関団体や市町、県民等と協働して、あらゆる場を通じて人権尊重の意識の定着に向けた取り組みを粘り強く進めてまいります。
○副議長(堀江龍一君) 遠藤教育長。
(教育長 遠藤亮平君登壇)
○教育長(遠藤亮平君) 人権への取り組みについてのうち、学校における人権教育についてお答えいたします。
学校教育におきましては、「自分の大切さとともに、他の人の大切さを認めることができる児童生徒の育成」を人権教育の目標に据え、校内で人権教育を組織的、計画的に進めるための体制づくりに取り組み、人権教育の基盤整備に努めております。具体的な取り組みといたしましては、社会科の授業で同和問題を初め個別の人権問題への正しい理解を深めるとともに、道徳やさまざまな体験活動を通して高齢者や障害のある人など異なる立場や他者の痛みを共感的に理解する力をはぐくむほか、互いのよさを認め合い協力して取り組むグループ学習等を展開し、自尊感情や人権感覚の育成を図っております。
また、人権教育の充実には、子供たちの指導に当たる教職員自身の人権感覚を高めることが肝要でありますので、いじめへの対応はもとより体罰は子供に対する人権侵害であるという認識を教職員に徹底するなど、教職員の経験段階や職種等に応じてさまざまな研修を実施しております。議員御指摘のとおり、人権への無関心、無理解は差別の助長につながることに思いをいたし、今後とも児童生徒の人権に対する正しい理解を深め、自他の人権を尊重する態度や行動力の育成を図ってまいります。
次に、博物館の整備と文化財シェルターについてのうち、文化財シェルターについてであります。
地域に根差した文化や文化財の存在は、地域の人々にとっての心のよりどころとなり、豊かで魅力ある地域を形成していく上でも大変重要なことであると考えております。県教育委員会といたしましては、このたび大切な文化財を保存するために、予想される東海地震等の発生に備え文化財建造物に対する本県独自の耐震診断指針を全国に先駆けて策定し、今後計画的にその普及に取り組むこととしております。
また、本県所有の文化財等の保管につきましては、重要文化財を含む小杉文庫や葵、久能文庫の貴重書は、耐震設備の整った県立美術館並びに県立中央図書館にて収蔵される一方、十分な設備が整わない施設で保管されているものもあります。こうしたことから、今後民間等が所有する文化財を含め貴重な文化財を保管できる体制について、県内各博物館の収蔵能力や余力、すなわちあとどれくらい収蔵できる余地があるかの調査などを実施し、既存施設の有効活用も視野に入れながら市町や文化財所有者等と連携して検討してまいります。
○副議長(堀江龍一君) 松浦県民部長。
(県民部長 松浦敏明君登壇)
○県民部長(松浦敏明君) 人権への取り組みについてのうち、県営住宅施策についてお答えいたします。
公営住宅は、入居者資格を原則として同居親族を有する者等に限定しておりますが、今回の経済情勢の悪化に伴う緊急措置として、県や市町では解雇等により住宅を失った方を対象に、本来の入居者資格を問わず公営住宅を目的外使用により提供しております。
県営住宅では、本年一月末までに延べ二百十六戸を提供しておりますが、このうち本来は入居者資格のない単身者や共同居住者は四十四戸に五十六人が入居いたしました。制度改正につきましては、平成二十一年十二月十五日に閣議決定された地方分権改革推進計画におきまして、公営住宅法に規定する同居親族要件を廃止する方針が示され、今通常国会において法律の改正について審議する予定と聞いております。県といたしましてはこうした動きを踏まえながら、解雇等により住宅を失った方の公営住宅の使用について適切に対応してまいります。
次に、地球温暖化防止への取り組みについてのうち、まず温室効果ガス排出状況の現状認識と今後の施策展開についてであります。
県内の温室効果ガス排出量は平成十九年度に初めて基準年度の排出量を下回りましたが、二酸化炭素につきましては依然として基準年度の排出量を上回っております。その主な原因は世帯数の増加、家電製品の世帯当たりの保有台数の増加と大型化、オフィスや店舗の延べ床面積の増加等により、民生部門における排出量が基準年度に比べ二割以上増加していることによるものと認識しております。
県ではこれまで、家庭や職場、学校などにおける省エネ行動を促すストップ温暖化アクションキャンペーンや、中小企業への無料の省エネ診断などを、市町や事業者、関係団体と連携して実施し、県民への啓発と実践活動の促進に取り組んでまいりました。次期のストップ温暖化しずおか行動計画の策定に当たりましては、本県としての新たな温室効果ガスの削減目標を設定するとともに、一層の削減努力が必要な民生部門における排出量を抑制するため、物を大切にすることを基本にして、家庭や事業所で効果を発揮しているすぐれた省エネ活動の普及拡大を図るなど、効果的な施策を盛り込んでまいりたいと考えております。
次に、新エネルギー対策による温室効果ガスの排出削減についてであります。
県では、しずおか新エネルギー等導入戦略プランに基づき、太陽光発電等の率先導入や普及啓発、天然ガスコージェネレーションへの助成などに加え、本年度から国の地域グリーンニューディール基金を活用した住宅用太陽光発電等に対する助成を開始するなど、新エネルギー対策を進めているところであります。
こうした取り組みにより、プランの目標であります新エネルギー全体としての導入率五%以上は目標年次より早く達成できる見込みでありますが、国が検討しております温室効果ガス排出削減二五%の中期目標を考えますと、より一層の新エネルギーの導入促進が不可欠であると認識しております。
このため、県といたしましては、学識経験者や事業者などで構成するふじのくに未来のエネルギー推進会議での議論や、新たに行う自然資源の賦存量調査等の結果を踏まえまして、市町等と連携しまして、太陽光や小水力、バイオマス、温泉熱など地域の特色を生かした地産地消型の新エネルギーの導入に積極的に取り組んでまいります。
次に、企業による森づくりのさらなる拡大についてであります。
森林は、二酸化炭素吸収はもとより水源涵養や国土保全など多面的な機能を有していることから、県民共有の財産として幅広い県民の皆様の理解と協力を得て森づくりを進めることが重要であります。中でも森づくりに意欲のある企業の参加を促すことは効果的であります。
このため、県では平成十八年度にしずおか未来の森サポーター制度を設け、間伐や植栽などに対する資金や労力の提供、あるいは地域との連携に取り組む企業に対し二酸化炭素吸収量などを記載した認定証を交付しております。さらに今年度からは、紙の購入を通じて企業が手軽に森づくりに参加できるよう間伐に寄与する紙を新たな仕組みとして加えたところでありまして、現在十九の企業や団体をサポーターとして認定しております。
県といたしましては、地球温暖化防止のためには持続的に森林を管理していくことが重要でありますことから、一社一山で取り組んでいただけるよう、今後も企業の参加拡大に向けて、企業の希望に応じた森づくりメニューや活動の場を紹介する相談会、事例発表や情報交換を行う森林CSRフォーラムの開催などに取り組んでまいります。
○副議長(堀江龍一君) これで天野一君の質問は終わりました。
議事の都合により休憩します。
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