本会議会議録
質問文書
平成22年9月静岡県議会定例会 質問
質問者: | 天野 一 議員 | |
質問分類 | 一般質問 | |
質問日: | 09/28/2010 | |
会派名: | 自民改革会議 | |
質疑・質問事項: | 1 富士山静岡空港を生かしたアジア戦略について (1) アジアの歴史教育 ア 小中高生への教育 イ 県立大学における人材育成 (2) アジアとの交流拠点の整備 2 試験研究機関の機能の充実強化について 3 幼保一元化による静岡県の保育について (1) 幼保一元化の現状と課題 (2) 保育の市場化への対応 4 HPS(ホスピタル・プレイ・スペシャリスト)について (1) 静岡県立大学における取り組み (2) 医療現場における現状と効果 5 土砂災害対策の推進について 6 建設産業の活性化に向けた取り組みについて |
○副議長(岩瀬 護君) これで石橋康弘君の質問は終わりました。
次に、六十二番 天野 一君。
(六十二番 天野 一君登壇 拍手)
○六十二番(天野 一君) 自民改革会議所属議員として知事並びに関係部長、教育長にお尋ねします。
初めに、富士山静岡空港を生かしたアジア戦略についてのうち、アジアの歴史教育について伺います。
開港一周年を迎えた富士山静岡空港の年間搭乗者数は六十三万人余りとなり、需要予測から見れば半分程度しかないとの見方がありますが、後発の地方空港としてはまずまずの結果であったと思います。特に韓国を中心に中国、台湾、タイなどチャーター便を含めたアジア路線の年間利用者は二十一万六千人と、全体の三四%を占めていることに私は注目したいと思います。
先日、私は大井川中学校野球部の生徒から預かった手紙を川勝平太知事に手渡しました。野球部員の練習するグラウンドの上空を静岡空港を離発着する飛行機が飛びます。子供たちは大空を眺め、大人になったらあの飛行機に乗って仕事をしたい、中国や韓国はどんな国なんだろうかとあれこれ夢を膨らませていました。ところがマスコミ報道や両親の話からこのままでは空港がなくなってしまうのではないかと心配になり、知事へ手紙を書くということになりました。そしてこれが機になり、現在、大井川中学校野球部は中国浙江省と野球で交流する話が進められています。大人は空港を搭乗者数や経済波及効果という数字でしか見ませんが、子供たちにとっては空港はあこがれであり、未来であり、夢なのであります。
私は、ここに空港を生かして本県が活性化するかぎがあると思うのです。空港の存在には、単なる乗り降りの数字だけでなく世界各地とネットワークで結ばれていることであり、そのネットワークをいかに活用するかが重要であります。私は、ネットワークを生かすには教育に尽きるのでないかと考えます。まず子供たちや若者にアジアの歴史をしっかり教えることが重要です。アジアの歴史を学ぶことによって日本の伝統や習慣のルーツを再発見するなど思わぬ成果を得ることもあります。今後、小中高校生にどのようにアジアの歴史を教えていくのかお伺いをいたします。
また、大学等の高等教育機関においては、グローバル化が進む中、歴史をしっかり学び国際化を担う人材、これからの静岡、アジアを結ぶ人材を育成していくことが求められると考えます。静岡県立大学及び静岡文化芸術大学の両県立大学には、国際関係の学部学科が設置されております。このような国際化を担う人材の育成について、留学生の受け入れ等を含め現在どのように行われているのか、また今後どのように展開させていくのかお伺いしたいと思います。
次に、アジアとの交流拠点についての整備について伺います。
八月一日のグランシップ音楽の広場二〇一〇では、静岡空港の就航先の地元オーケストラのコンサートマスターやコンサートミスを集めて、「愛の喜び」を交互に演奏したコンサートが行われましたが大変おもしろい企画でした。
こうした催しは空港がなければできない企画であり、また県都静岡市の東静岡駅に立地しているグランシップという交流拠点の存在が大きかったと思います。また県の総合計画では静岡市は、「ふじのくにの県都にふさわしい商業、情報、コンベンション、芸術文化など、高次都市機能の充実」が大事とし、「ふじのくに中枢都市圏として県内、国内、海外とのヒト・モノ・情報が行き交う活力ある交流拠点の形成に向けて」とあります。海外との交流ではアジア大会等のビッグスポーツ大会の開催も当然視野に入れる必要があります。
県は、県営草薙総合運動場の体育館の建てかえについては、アマチュアの殿堂という発想に立っていますが、この考え方は従来の発想の延長上でしかありません。そもそも建てかえという発想でいいのか大いに疑問があります。東静岡駅周辺と草薙総合運動公園は近くにあり、グランシップ、県立大学、県立図書館、県立美術館、県営草薙総合運動場と本県の文化・スポーツ拠点であります。この拠点の中に従来型の体育館を建てかえるのではなく、世界のアスリートにも通用するアリーナを併設した県立体育館を建設し、スポーツの世界大会や各種のイベントを誘致すべきであると考えます。
県立体育館建設については、将来を見据えてもっと大胆に、しかも多面的に検討すべきだと考えますが知事の所見をお伺いします。
次に、試験研究機関の機能の充実強化についてお伺いいたします。
県では、平成十九年度に試験研究機関を農林業、畜産、水産、工業及び環境・保健衛生の五つの研究所に再編する組織改正を行いました。この組織改正は、行政課題の多様化や各産業におけるグローバルな競争の激化に加えて、厳しい行財政環境を背景にして、限られた人的・財政的資源を選択と集中により、県が担う試験研究機能の充実と生産性の向上をねらって行われたと聞いております。
再編から三年を経過した現在、分場の整理・集約などによる効率化という点では一定の成果を上げたと認識しております。しかし試験研究機関の本来の役割である県内産業の振興や県民生活の質の向上に対する技術面からの貢献という点では、再編の効果がなかなか見えてこないと感じております。その要因の一つは、平成十九年度の再編が組織の効率化に重点を置くばかりに、再編後の試験研究の方向性を現場の研究員に示すことが十分できていないためではないかと考えます。
このような状態を放置すると、我が県産業の将来、ひいては我が県の将来が危惧されると思います。また県内産業や県民から真に頼りにされる試験研究機関とするためには、高い力量と意欲の両方を兼ね備えた研究者の確保・育成が重要だと思いますが、これまでに研究員の力量の向上と研究意欲を促進する計画的な取り組みがなされていないのではないかと疑問を感じているところであります。
試験研究機関の研究者が自由な研究環境のもとで活性化され、知的な成果を生み出すこと、その成果に対して県の研究費の負担者である県民や産業界が深い満足を得ること、この両者が同時に満足されれば理想でありますが、現実には相互理解の不足や成果に対する不満が存在しています。例えば、先日、NHKで放映された工業技術研究所の研究成果事例「高齢者熱中症対策のための室内熱中症危険度測定器の開発」は、この夏の猛暑と熱中症からも大変時宜を得て県民にとって身近に感じることのできる研究でありました。県は、研究の成果を県民や産業界に届け、県民や産業の希望を研究者に伝える方法の検討、研究課題に対する外部評価のシステムなどを導入する必要があると考えます。
そこで、平成十九年度の試験研究機関の再編から三年を経過した現在において、行政分野ごとの研究資源を集約するとして行った再編の成果を県がどのように評価しているのか、またその評価に基づき、県内産業の振興や県民生活の向上を科学技術の面から支えるべき試験研究機関の機能の充実強化について、どのように考えているのか所見をお伺いします。
次に、幼保一元化による静岡県の保育についてのうち、幼保一元化の現状と課題についてお伺いします。
リストラ、解雇、派遣切りなどの雇用環境が恒常化しつつあり、日々子供を保育所へ預け、働き、子育てをしている保護者にとって厳しい状況にあります。またこうしたときに働きたい保護者の増加、シングル家庭の増加などによって保育の需要はますます高まっています。このような現状を踏まえ、国は二〇〇六年十月から認定こども園制度をスタートさせました。認定こども園は、保育所対象である保育に欠ける子と幼稚園対象の保育に欠けない子とを同時に保育することに加えて、子育て支援事業を実施する施設を指し、その認定基準は国のガイドラインを参考に県が定めた条例に規定されているわけであります。
先般国は、二〇一三年度からの実施をうたう子ども・子育て新システムの基本制度案をまとめました。出産から子育てまで切れ目のない支援を提供し少子化対策の充実を図るとしていますが、これまでの保育制度は大きく姿を変えることになり、現場からは混乱を心配する声が上がっています。制度案では公立保育所についての市町村の実施義務がなくなり、民営化もしくは独立行政法人化が一気に進む可能性があり、私はすべての子供にとって平等に必要な安心・安全、愛情までもが競争原理にかけられることになるのではないかと危惧しております。今の施策は大人の側からの論拠で、子供の側から見た場合、このやり方でよいのでしょうか。
最近、保育園に通っているよりも幼稚園に通っていた児童生徒たちの正答率が高かったという全国学力テストの結果が発表されました。この学力結果が正しく、また幼稚園の保護者に経済力があり、保育園の保護者に経済力がないとは一概には言えませんが、生まれたときから保護者にお金があるかどうかで子供の育ちの権利にまで格差がつくことには納得できません。
国は二〇一一年度までに二千カ所の設置を実施するとの期限を設定した目標を掲げていますが、静岡県における認定こども園の数、園児数等の現状についてお伺いするとともに、幼保一元化の問題点、課題について県はどのように考えているのかお伺いします。
また、保育の市場化への対応について伺います。
このまま保育の市場化が進むならば、施設、人員配置等の質をどう確保していくのかが課題になります。県は保育の質と市場化についてどのように考えているか。さらには保育所で働く職員によると、貧困家庭で育つ子供は心身ともに不安定さを抱えているといいます。子供の貧困について県は実態と対応を含めてどのような認識を持っているのか、あわせてお伺いします。
次に、HPS――ホスピタル・プレイ・スペシャリストについてのうち、静岡県立大学における取り組みについて伺います。
子供の病気はある日突然あらわれます。元気な子供が遊びながら成長するように、病気の子供も同様に遊びながら成長し治療することが望ましいのではないかと思います。しかし入院中の子供は病気や障害、治療により生活や遊びに制約があります。制約の中で安心して生活し遊ぶには大人の介入が重要であります。
そこで、静岡県立大学短期大学部では、平成十九年度から三年間、文部科学省における大学教育改革事業である社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムの採択を受け、入院・入所児とその家族に遊びを提供することにより、入院や手術等への苦痛、ストレス、不安、寂しさなどを緩和しケアする専門職HPS――ホスピタル・プレイ・スペシャリストをHPS養成講座を通じて養成してきていると聞いております。現在、六十二人がこの講座を修了し、県内外の小児医療を提供する病院や障害児施設で活躍し、高い評価を受けているとのことであります。
平成二十二年度――今年度において、県立大学短期大学部では、遊びを使って子供の治療をサポートするHPSの養成は今後の子供の医療にとっても必要不可欠なものとの認識のもとに、短期大学部独自の制度社会人専門講座として再構築し新たな出発をしたと聞いております。私はこのHPS養成講座が、英国のHPS教育財団、病院、施設との提携によりHPS教育カリキュラムを実施する我が国初の本格的講座であり、短期大学部は我が国のHPSに関する情報の発信源となっていることから、その意味において静岡ブランドの創造と言えるものと考えております。
現在、先進的な取り組みである県立大学短期大学部におけるHPSの養成に対する国内外の知名度をより一層高める上でも、今後、HPS講座を安定的に実施することが必要であると考えますが、県の考え方をお伺いいたします。
また、医療現場における現状と効果について伺います。
人材育成機関の充実が望まれることは言うに及ばず、それと同様に重要なことはHPSの活躍が医療現場で実証されることであります。こうした中、地方独立行政法人静岡県立病院機構の県立総合病院と県立こども病院でHPS取得者がいち早く配属されており、その効果を証明しつつあると聞いております。現在の県立総合病院、こども病院におけるHPSの現状とその効果についてお伺いします。
次に、土砂災害対策の推進についてお伺いをいたします。
このたびの台風九号によって被害に遭われました方々に、心からお見舞いを申し上げます。
この夏も各地で集中豪雨が発生し、静岡県においても小山町を中心に未曾有の集中豪雨により甚大な土砂災害が発生しました。山肌はえぐられ土砂が家屋をのみ込むなど、局地的集中豪雨の恐ろしさを改めて痛感しました。
土砂災害の頻発化に対し早目の住民避難を促すため、県民への土砂災害警戒情報の提供、危険箇所の周知、防災知識の普及などソフト面の施策はかなり進んだように思います。また県は、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定を平成二十一年度までに累計で三千九百三十二カ所行い、今年度は千六百カ所の指定を目標に進めていますが、指定箇所の進捗状況は計画どおり進んでいるのか、まずお伺いしたいと思います。
特に緊急時においては避難勧告の発令など市町が行う迅速な防災対応が重要であり、県はこれを支援する立場ですから県の取り組みについてお伺いしたいと思います。
一方、土砂災害から県民の生命と財産を守るためには、やはり土砂災害危険箇所等への砂防関係施設の整備が重要です。今までも財政状況が厳しい中、整備を推進してきましたが、すべての危険箇所に対し防災工事を行うためには、莫大な時間と予算が必要となり簡単にできないことは承知しております。しかし現在も危険な箇所で生活する人たちは多く、緊急度、重要度を考慮に入れた施設整備の優先順位づけが必要と考えますが県の所見をお伺いします。
最後に、建設産業の活性化に向けた取り組みについて伺います。
長引く景気停滞による公共投資の大幅な減少や民間建設投資の低迷などにより、本県の建設投資は平成三年度のピーク時と比較して六五%程度まで落ち込んでおり、これを背景とした受注競争の激化、ダンピング受注の増加により、建設産業は下請へのしわ寄せの懸念、就業者の高齢化や担い手不足など多くの課題を抱えております。
本県建設産業は県内総生産の約六%、従業員数十二万人余を占め、社会資本整備の担い手であるとともに、多くの就業機会を提供し災害から地域を守るなど重要な役割を担う地域の主要産業であります。
この春以降、大きな社会問題となった宮崎県の口蹄疫問題は記憶に新しいわけですが、過日の新聞では、口蹄疫に罹患した二十九万頭に及ぶ大量の家畜を土の中に埋める際、重機を保有し豊富な操縦経験を持つ地元の建設業界が全面的に協力、貢献したとのニュースが掲載され、建設産業の役割の大きさを改めて認識したところであります。
地域の中小建設業者が健全な発展を遂げることは、地域経済や雇用の改善はもちろん、地域社会生活の安心・安全の確保にも寄与するものであることを、私たちはもう一度考えることが大事だと思います。県としても、工事の発注のみでなく中小建設業者の育成に取り組むことが求められていると考えます。本県建設産業が活気を取り戻し経営と技術にすぐれた建設企業が発展していけるよう、県として建設産業の現状や課題を踏まえ、建設産業の活性化に向けた方策を検討していくべきであると思いますがいかがでしょうか。県の考えを伺い私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(岩瀬 護君) 川勝知事。
(知事 川勝平太君登壇)
○知事(川勝平太君) 天野一議員にお答えいたします。
初めに、富士山静岡空港を生かしたアジア戦略についてのうち、アジアの歴史教育についてであります。
議員は、子供にアジアの歴史をしっかりと教えるべきであるという御提言でございましたが、同感でございます。歴史の教科書をひもときますと、これは高校の場合に特にそうですけれども、アジアの歴史は世界史の中に書かれています。日本史と世界史とが分かれておりまして、アジアの歴史は世界史の中に入っていると。しからば日本はアジアではないのでしょうか。したがって日本史を選択した子は、世界史の一部として教えることになっているアジアのといいますか、日本以外のアジアについてはわかりますけれども、日本史専攻の子は関係がわからないということになります。ですから歴史教育全体の問題であるという認識を持っています。
そもそもその淵源は日本にヨーロッパの歴史を導入したときに、ヨーロッパの人たちはみずからの歴史を世界史として考えていましたから、その世界史を日本で教えたと。これがもう明治の初め、ドイツのリースという人が東大で教えたのが最初です。そこに日本史が入っていないものでありますから、そこで国史、いわゆる日本史というものが別途設置されたわけです。
しかし、日本は昔から漢籍を読んでいますので、ヨーロッパの歴史には東洋の歴史は入っていないということから、東大では東洋学、京大ではシナ学というのが発達いたしまして、アジア史というのは中国史だったわけです。東大の白鳥庫吉、あるいは京大の内藤湖南など、そういう人の著作は基本的には中国史です。しかし我々が今必要としているのは、日本と中国を中心にしたアジアとの交流の歴史といいますか、日本を一部としたアジアの歴史ではないかというふうに思います。ですからそれを教えるだけの力を先生が持っているかということが問われます。
どうしたらいいかということで、私は一番簡単な方法といいますか、最初にするべきことは空港を利用して近隣のアジア諸地域に行くことだというふうに思います。中国に行く、あるいは韓国に行く、あるいは台湾に行く、そうしたチャーター便や定期便を活用してお隣の諸国に行くことによって、そことの交流の歴史に改めて目を開かれるということになります。
少しく専門的になりますが、経済史は私は専門でやってきたことでありますけれども、西洋経済史と日本経済史と東洋経済史というものがあったわけですけれども、私は、東洋経済史と日本経済史がそれぞれ別個の範疇にあるのはおかしいということで、アジア経済史という学問を立ててきたという、そういうこれまでの努力もございまして、そういう日本を含んだ東アジアの歴史をしっかりと学ぶことがこれから本当に大切だということは、よく認識しているつもりです。
さて、そうしたことで先生も中国に行っていただきたい、そうしないと教えることができません。仮に十分学生に教えることができなくても、例えば浙江省に行く、寧波港に行く。あるいは本県ですと農業の起源は稲作でその遺跡が登呂遺跡にあるということで、それは知っているかもしれませんが、それよりもはるかに昔、数千年前、六千五百年ほど前に浙江省に良渚遺跡というのがあります。その良渚遺跡を見れば米のふるさとということがわかるだけでなくて、お魚のふるさとでもあると、つまり稲作漁労の原型が、我々が今二十八年間の交流を持っている中国にあるということがわかるということになります。
あるいは大百済典をことし韓国でなさっておられると。大百済典をやっているところは昔の百済の都がございました扶余プヨー――現在の公州市でございますけれども、それと奈良とがかかわっているということがわかります。そういうことがわかって初めてその関係を論じることができるということになるのではないかということで、アジアの歴史はこれから学ぼうという、そういう提言として私は受けとめたほうが建設的ではないかと。従来の歴史の教科書を開いても、中国のことは中国として日本と関係なく書かれていますから……。
日本の外国史というのは海岸史です。下田から何が見えたか、浦賀から何が見えたか、長崎にどこから来たかということで、長崎に来ているその相手の国、あるいは相手の出港地、ジャカルタから来ている、あるいは広東から来ている、あるいは泉州から来ている、そうしたことについて全然知らないまま、いわば海岸史として沿岸から見る景色だけで外国を見ているという鎖国的発想であったので、私は今県議の言われたアジアの歴史をしっかり教えるためには、まず空港を利用して出てくださいと。今回、大井川の野球部の少年の空港に関する心配のお手紙をいただきまして、しかし今御紹介いただきましたように、野球を通して浙江省とこれから交流していこうということで、本当にうれしく思っている次第でございます。
もう一つ、静岡県立大学、静岡文化芸術大学とアジア諸国との交流の現状でございますけれども、県立大学におきましては浙江大学、フィリピン大学、浙江省医学科学院、ボアジチ大学――これはトルコです――韓国の延世大学、タイのコンケン大学、静岡文化芸術大学におきましては韓国の湖ホ西ソ大学校、中国の上海工程技術大学、中国の浙江大学城市学院などと交流提携を結んでおります。中国語や韓国語などの語学教育だけでなくて、アジア諸国の歴史や文化などの教育を充実させるほか、アジア諸国の大学と国際交流協定をさらに広く締結していただくことにより、学生及び教員の交流を推進してもらっているところでございます。
県といたしましては、この二つの大学の取り組みを一層拡充させるとともに、県内二十三大学校等で構成する大学ネットワーク静岡と協働いたしまして、より幅広い学生同士の交流を深め、日本とアジア各国の歴史と文化の相互理解を深めることにより、広く国際社会、なかんずくアジア地域で活躍できる人材の育成を進めてまいりたい。
今日のような尖閣諸島の問題が起こったときに、日中のかけ橋になるようなそういう青年が、あるいは韓国の竹島ないし独島の問題も同じでございますが、そういう人材を育成してまいりたいというふうに念願しておりまして、これは本県のこれからあるべき最も重要な課題であるというふうに思っております。彼らと一緒に生活をする場所をつくろうということで、大学まち構想というのも、この大学ネットワーク静岡において今考えていただいているところでございます。
次に、建設産業の活性化に向けた取り組みについてであります。
長引く景気の低迷や建設投資の大幅な減少による経営環境の悪化に加え、公共工事の品質確保の促進に関する法律の施行、技術力を求められる入札契約制度の導入など、近年、建設産業を取り巻く環境は大きく変化しており、建設産業には経営基盤の強化や新しい市場の開拓、人材育成などへの取り組みが一層求められております。こうした状況を踏まえまして、六年ぶりに静岡県建設業審議会を再開いたします。建設産業のみずからの経営改革に向けた取り組みや県の果たすべき役割等について、学識経験者、ユーザー、業界代表者などから構成されるこの審議会におきまして、新しい本県の建設産業の活性化に向けた方策を検討してまいります。
建設産業は本県の不可欠な産業であると認識をしております。社会資本整備や地域の雇用に大事であることは言うまでもありません。そしてこのたび台風九号がもたらしました甚大な被害の復旧においても、土砂の取り除きあるいは川の修復等で、私もこの建設業者の方々が懸命に地域の復興のために努力されているさまを目にしたものでございます。災害から地域を守る担い手としても、その健全な発展は極めて重要であると認識しているものでございます。
県といたしましては、これまで県内建設業者の受注機会の確保に努めるほか、建設業者の経営力や技術力向上のための研修会の開催、産業支援機関の各種助成制度に関する情報提供など、経営と技術にすぐれた建設産業となるように環境整備に取り組んでまいりますが、特に入札における県内の建設業者の受注機会をしっかりと確保してまいりたいと。これは地元企業に配慮する地域要件というのを入札要件の中に加えるだけでなくて、やはり困ったときに重機を活用して、それを操縦する技術を持っている人が身近にいるということは極めて大切なので、そういう災害協定を結んでいるということも大事なことになります。
そうしたことから受注機会を社会貢献をしている地元企業が得られるように、そうした点を評価した形で、建設産業の発展のための環境整備に真剣に取り組んでまいりたいと思っております。特に現在、公共事業あるいは住宅が本県におきましてはまだ下向いております。そうしたことからこうしたところも励まさないと、彼らの仕事がなかなかないということもありまして、そういう危機意識も持っておりますのでそうした方向に向けて努力してまいりたいと存じます。
その他の質問につきましては、関係部局長、教育長から御答弁申し上げます。
○副議長(岩瀬 護君) 安倍教育長。
(教育長 安倍 徹君登壇)
○教育長(安倍 徹君) 富士山静岡空港を生かしたアジア戦略についてのうち、アジアの歴史教育についてお答えいたします。
小中高生への教育についてでありますが、中学校の社会科では我が国の歴史を軸としてその理解に必要なアジアの出来事を扱い、高等学校の世界史ではアジアとの結びつきが強まっている現状を踏まえ、アジア諸国の歴史を我が国の歴史と関連づけて詳しく学習しております。
また、昨年度は本県の県立高校におきまして、中国、韓国などアジア諸国への修学旅行を実施した学校が十六校、アジア諸国からの教育旅行を受け入れた学校が十一校あり、中国へ修学旅行に行った生徒からは、漢字など日本文化との深いかかわりを肌で感じ有意義だったという感想が聞かれ、さらに昨年度から、台湾との協定に基づく高校生による野球の交流試合等の活動も行っております。
今後とも、社会科、世界史、総合的な学習の時間や学校行事等において、アジアの歴史に関する理解を深めるとともに、現在改訂中の静岡県版カリキュラムに静岡県ならではの学習として本県と関係の深いアジアの国について示し、アジアの一員としての自覚を高めてまいります。以上であります。
○副議長(岩瀬 護君) 森山交通基盤部長。
(交通基盤部長 森山誠二君登壇)
○交通基盤部長(森山誠二君) 富士山静岡空港を生かしたアジア戦略についてのうち、アジアとの交流拠点の整備についてお答えいたします。
本県では、県民の生涯スポーツの振興を図るため、県内の地域バランス等に配慮した広域的な視点から総合運動場等の整備を進めてきており、県民スポーツの中心地としての県内随一の総合運動公園である草薙総合運動場を整備するとともに、国際レベルの競技や多様なイベント開催に対応したアリーナやスタジアムを有する小笠山総合運動公園を整備してきております。このためスポーツの世界大会や各種イベントの誘致につきましては、まずはエコパアリーナなどの既存施設を有効利用することが重要であると考えております。
草薙総合運動場体育館につきましては、数多くの県大会の開催等多くの県民に利用されており、総合運動公園に欠くことのできない施設であることから、県民や利用団体の御意見を踏まえ静岡学園の敷地に建てかえる方針を決定し、現在、地元への説明や設計に向けた準備を進めているところであります。また東静岡駅周辺につきましては、静岡市とともに賑わい創出検討会議を設置したところであり、学住一体のまちづくりなどさまざまな交流によるにぎわい創出のための施策などについて検討することとしております。
次に、土砂災害対策の推進についてであります。
県では、土砂災害から県民の生命や財産を守るため、砂防施設の整備を推進しておりますが、平成二十一年度末の整備率が約二七%と低い状況であるため、土砂災害警戒区域の指定などのソフト対策も進めております。今年度指定目標の千六百カ所につきましては、現在、住民への説明会を順次開催しており、目標達成に向け市町と連携し各土木事務所が作業を進めるとともに、今年度から市町に対し的確な避難誘導のための避難判断マニュアルの早期策定に向けた技術的な支援も行っております。
今般の台風九号による集中豪雨におきましては、小山町では、土砂災害警戒区域の指定をほぼ終えていたこともあり、的確に避難勧告が発令され住民は迅速な避難行動をとることができたものの、公共土木施設や農業基盤施設などに甚大な被害をもたらしました。こうしたことから頻発する集中豪雨や地震などに対する土砂災害から人的被害を未然に防止するため、緊急的な対応が必要な被災箇所や人家集中地区、孤立予想集落などの緊急度の高い箇所を優先し、効果的なハード対策を進めていくこととしております。
県といたしましては、県民の安心・安全を確保するため、引き続きハード対策とソフト対策を組み合わせた総合的な土砂災害対策に努めてまいります。以上であります。
○副議長(岩瀬 護君) 堀川経済産業部長。
(経済産業部長 堀川知廣君登壇)
○産業経済部長(堀川知廣君) 試験研究機関の機能の充実強化についてお答えいたします。
平成十九年度に行いました試験研究機関の再編では、十二の試験場、十五の分場に分散していた人的、財政的資源を産業分野ごとに五つの研究所に集約し、各研究機関が連携して新技術や製品の開発を行うなど、本県産業の競争力の向上につながる試験研究に取り組んでいるところでございます。
再編の成果といたしましては、工業技術研究所と農林技術研究所が大学などと連携し、世界の市場を視野に入れた新世代茶飲料の開発に取り組むとともに、畜産技術研究所と工業技術研究所が、これは医科大学、企業と連携して、皮膚などが人間と似ている医療実験用の小さな豚、極小ミニ豚を活用し薬剤の経皮接種技術の開発を進めているほか、工業技術研究所と環境衛生科学研究所が、これも企業と連携し、インフルエンザの簡易検出キットに使われます抗体を微生物を利用して大量に安く生産する技術に取り組んでおり、これらの成果は本県産業の成長に大きく寄与するものと考えております。
試験研究機関の機能の充実強化についてでありますが、現在、試験研究の戦略基本指針の策定を進めているところであります。この指針には、第一に課題の設定に当たって新しい産業構造の形成に結びつくよう今まで以上に幅広い分野から御意見や御要望を伺う仕組みの構築、第二に研究員の質と意欲を高めるための大学や企業等との研究の連携や人事交流の推進、第三に試験研究の外部評価の徹底、成果を産業活動に着実に生かすコーディネート機能の強化を盛り込むこととしております。
今後とも、試験研究機関が産業界から信頼され、研究開発や技術支援の拠点となりますよう努めてまいります。以上であります。
○副議長(岩瀬 護君) 石川健康福祉部長。
(健康福祉部長 石川俊一君登壇)
○健康福祉部長(石川俊一君) 幼保一元化による静岡県保育についてのうち、初めに幼保一元化の現状と課題についてお答えいたします。
本県では、これまでに五カ所の認定こども園が設置され、八月一日現在の園児数の合計は五百二十三人となっております。本年度は安心こども基金を活用してさらに四カ所、定員六百人分の施設整備助成を行っているほか、来年度の整備につきましても市町等から既に相談が寄せられているところであり、認定こども園は今後も増加していくものと見込んでおります。
認定こども園につきましては、幼稚園と保育所それぞれの制度の利用要件、施設基準、職員配置基準などを満たして運営する必要があるため、わかりにくく事務的負担が大きいこと、財政的なメリットが乏しいこと、同じ施設に保育時間など保育ニーズの異なる子供がいることで保護者への対応について細かな配慮が必要となることなどが、設置を促進していく上での課題となっております。また幼稚園を移行する場合は、保育に必要な調理室等の整備、保育士資格者の確保、十八時までの保育に対応するための職員体制を整える必要があることも課題であります。
一方で、認定こども園は保護者の就労の有無によらず利用でき教育と保育を一体的に受けることができる、地域で保育の担い手がふえるため待機児童の解消につながるなどのメリットも大きいことから、県といたしましては、現在、国において進められている子ども・子育て新システムの検討状況を注視しつつ、幼保一元化が進むよう引き続き市町に対して助言等の支援を行ってまいります。
次に、保育の市場化への対応についてであります。
国が発表した子ども・子育て新システムの基本制度案要綱では、幼稚園、保育所、認定こども園の垣根を取り払ってこども園として一体化することを初め、株式会社やNPO等の多様な事業主体の参入促進、施設や人員配置等の客観的な基準の設定によるサービスの質の確保などを図ることとしております。
多様な事業主体の参入は利用者の選択の幅を広げ、保護者のニーズに応じた保育サービスが提供されていく効果が期待できると考えますが、すべての子供に適切な保育サービスが提供されることが何よりも重視されるべきであり、新しい制度が保育サービスの質を確保するために十分なものとなるよう、県といたしましても、市町の意見を聞きながら必要な提案を行うなど引き続き国における今後の検討を注視してまいります。
また、保育所を利用している家庭の経済状況はさまざまとなっておりますが、県といたしましては、子育て家庭の経済状況等によって子供の育ちが影響されることなく、細やかな保育が実施されることが重要であると考えております。このため各保育所が子供一人一人の状況や家庭及び地域社会での生活の実態を把握して保育を実施するとともに、保護者に対してもそれぞれの親子関係や家庭生活等に配慮して適切な支援を行うことができるよう、助言指導を行ってまいります。
次に、HPS――ホスピタル・プレイ・スペシャリストについてのうち、医療現場における現状と効果についてであります。
HPSは平成二十年度から本格的に活動を始め、現在、県立総合病院の小児科病棟に二名、県立こども病院の内科や外科病棟に六名、計八名の看護師や保育士がHPSの活動をし、平成二十一年度実績で県立総合病院に一日平均八人、県立こども病院で一日平均二十八人の子供を対象としております。
HPSの活動内容についてでありますが、長い闘病生活を余儀なくされる子供に対して、例えば検査や手術の手順について、どこで何をやるかを子供の興味を引くように説明し楽しく理解してもらうよう工夫するとともに、子供に与えるおもちゃを患者に応じて変えていくなど、単に遊ぶだけでなく病状を把握した上で子供に接しております。単純に比較はできませんが、病院ではHPSが導入される前と比べ、子供が治療に対して前向きになり医師や看護師の負担が軽減されていると評価しており、また親御さんからは子供の入院に伴う精神的な苦痛がHPSにより軽減されたとの感謝の言葉が寄せられていると伺っております。
今後、県立病院機構では、具体的な活用策を引き続き進めていくこととしており、県といたしましても、その結果を踏まえ県内病院への普及啓発を検討していまいります。以上であります。
○副議長(岩瀬 護君) 出野文化・観光部長。
(文化・観光部長 出野 勉君登壇)
○文化・観光部長(出野 勉君) HPS――ホスピタル・プレイ・スペシャリストについてのうち、静岡県立大学における取り組みについてお答えいたします。
静岡県立大学短期大学部では、従来から保健、医療、福祉の現場で活躍する人材の育成を目指した教育を行っており、HPSの養成についても、体系的な知識、技術等の習得を目指し、平成十九年度から国の委託事業を活用して全国に先駆けて実施してきたところであります。
国の事業は昨年度で終了いたしましたが、HPS養成講座の修了生が勤務する医療現場等ではその活躍が高く評価され、またHPS養成講座は全国唯一の講座であることから、本事業の継続を望む声が多くありました。そのため県は、引き続き短期大学部が独自の事業として開催できるよう所定の手続を行い、静岡県公立大学法人がHPS養成講座を安定的に実施できる体制を構築いたしました。
県といたしましては、医療機関等にHPSを配置することの意義を積極的にPRするとともに、静岡県公立大学法人に対しまして、医療現場等のニーズに的確に対応できるよう働きかけてまいります。以上であります。
○副議長(岩瀬 護君) これで天野一君の質問は終わりました。
議事の都合により休憩します。再開は十五時十分とします。
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