本会議会議録
答弁文書
平成28年12月静岡県議会定例会
江間 治人 議員(自民改革会議)の 一般質問 に対する答弁
(質問日:12/08/2016番目)
答 弁 者 | : | 知事 |
○知事(川勝平太君) 江間議員にお答えいたします。
県民の負託に対する私の考えについてであります。
御質問を富士山に言及することから始められました。まことに本日の富士山は、「心地よく 晴れたる秋の 青空に いよいよ映える 富士の白雪」といったところであります。
また、その富士山にこの夏御登頂を成功されまして、おめでとうございました。富士の頂上における足元は石や岩でごろごろしておりますけれども、目を下界に転じますれば視野が大きく広がります。一方、きょうのような全く雲一つない空を見ますと、「あさみどり 澄みわたりたる 大空の 広きをおのが 心ともがな」という明治天皇の御製がありますが、私はそのような心持ちを常に持ちたいというふうに思っております。
江間議員は同じ稲門の出で、「現世を忘れぬ」という校歌の一節を引かれました。この詩句は次に「現世を忘れぬ久遠の理想」というふうに続きます。明治の時代の青年たちも坂の上の雲を目指して、そして一生懸命働きました。しかしながらそこに全ての人が幸福になったわけではありません。「働けど 働けど なお暮らし 楽にならざり じっと手を見る」という明治時代の啄木の歌もございます。
一方で、富士山が世界文化遺産になって今月に至るまで四十三カ月の間に四十三件もの地域資源、地域の人材が世界クラスと認定されたということは誰にとっても元気になることではないかというふうに思います。人を元気にする。このことはとても大切なことであるというふうに思っております。
私の基本的な姿勢は、あらゆることを自分を勘定に入れずに、そしてよく見聞きし忘れずと、そして人のためになることをするということであります。決して人を差別しておりません。「国会議員 議員やめれば ただの人」という川柳がございましたけれども、もちろん議員としての職責に対しては礼を尽くしますけれども私はただの人になったその人を見ております。
ですから、その人に対しましてその方がすぐれている人であるならばすぐれている人に接したほうがいいというふうに思っております。なるべく多くの県民がすぐれた人に接したほうがいい――けいがいに接したほうがいいという考えを持っているわけです。江間議員はスポーツマンとしての体をお持ちですけれども、同じ得意なスポーツを小学生と毎日しても小学生は強くなるかもしれませんが議員の力は落ちていきます。少しく自分の上の者と練習しなければ上に行かないということでございまして、常に上を見るというそういう姿勢を持たねばならないということでございます。
私は、県民一人一人の声に耳を傾け、県民幸福度の最大化に向けて富国有徳の理想郷“ふじのくに”づくりを着実に推進することが県民の皆様の負託に応える道であると考えております。このため知事就任以来現場に赴き、現場から学び、現場に即した政策を立てる現場主義を基本姿勢としてスピード感を持って県政運営に取り組んでまいりました。もう既に二千百回を超えております。いわゆる知事広聴というのも四十八回、意見をお聞きした人はもちろん限られた数ではありますけれども傍聴された人を含めれば八千人近くなっております。三百七十万全ての人の声を聞くことはできませんけれどもなるべくそのような姿勢を続けて、そして私の政策に偏りがないように努めているわけでございます。地域で頑張っておられる皆様方からさまざまな悩みや不安、行政への要望などまさに県民の生のお声をお聞きしようという姿勢を持っております。こうした声こそ県政を進める上での貴重な御提言と捉え、可能な限り具体的に対応するように努めております。
例えば、こうした広聴会や地元への出張を通して児童養護施設からでも安心して大学に進学できるための生活支援、これはそこの現場で聞いたものを実現した政策です。また県東部地域における発達障害児に関する相談体制もその結果強化できました。B型肝炎予防接種にかかわる県の独自の助成も現場で聞いて、その問題に悩んでいる方からお聞きしてこれを政策に盛り込んだものであります。常にそうした県民の声をよく聞き寄り添う姿勢で施策を進めているつもりであります。
また、多くの県民の皆様の抱える健康や老後、そして災害への不安に対しましては、不安は消えるものではないと思っております。権力を握る人が高い権力を持てばその分幸福感がふえるかというと、恐らく北朝鮮のトップの方は身辺の不安にさいなまれているのではないかと思います。お金持ちになったからといってそれで不安がなくなるというものでもありますまい。このコップに水が半分入っていたとします。半分しかないと思う人と半分はあるということで心持ちは違ってきます。
やはり、いずれにおいても無限に金銭欲や権力欲を出すことはできません。足るを知るというそういう姿勢を持つことがどこかで大切ではないかと思います。いずれも何か失望したときに、「友が皆 自分よりも偉く 見えるとき 花を買い来て 妻と親しむ」というこれも啄木の歌がありますけれども、常におのれの心を平穏に保つということが幸せをつくる上での非常に大切な心構えであるとも考えております。
そうは言いましても総合計画に掲げる健康寿命日本一の延伸や命を守る危機管理に関する取り組みを着実に推進せねばなりません。また内陸のフロンティアを拓く取り組み、これは経済成長と危機管理を両方つくり上げるという意味で極めて重要な施策であります。また新成長産業の育成と雇用創造、これも順調に今進んではおりますけれどまだ不十分ではあります。社会、経済に対する閉塞感を払拭し豊かさの実現を図る施策を推進しているところであります。
私は、住まう人々が地元に対して誇りを持ち、日々生き生きと輝き、おのおのが持てる力を存分に発揮していくということが大切であるというふうに思っております。先ほど差別をしないというふうに言いましたけれども、例えばきょうこの議場に上がってこられるときお気づきになったでしょうか。本館を上がる大階段の前に愛知の時計があります。それから牧野先生の版画があります。その下にお花が生けられているのを御存じですか。この方は掃除をしてくださっている女性との交流から出てきたものであります。そしてまた柱と柱の間のへこんでいるところに観葉植物が置かれているのもその方との友情から生まれた施策であります。あるいはこちらに村松君という交通基盤部長がいらっしゃいますけれども、私は彼よりも私を二千回以上各地に連れて行ってくださっている公用車の運転手さんのほうを彼にまさるとも劣らず尊敬しています。ですから人はそれぞれ職業に貴賤はありませんし、責任の大小はあります。しかしそれぞれ皆十分に存在価値があるというそういう姿勢で臨んでいるわけで、決して何かこの特別な方を呼んでその方だけの意見を聞いているというわけではありません。
私の知事公舎のメールボックスには記名、無記名のさまざまなものが入っております。一つとして無視したものはありません。聞こえてきたものはそれに対して誠実に対処すると。街角で会った人から聞いたことも同じです。そういう限られた力ではありますけれども、そうした形で三百七十万人の県民の負託に応えてまいりたいと思っております。
その他の御質問につきましては、副知事、関係部局長及び教育長から御答弁を申し上げます。
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