本会議会議録


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令和4年12月静岡県議会定例会 質問


質問者:

天野 一 議員

質問分類

一般質問

質問日:

12/12/2022

会派名:

自民改革会議


質疑・質問事項:

1 静岡県の危機管理について
(1)緊急事態への対応
(2)浜岡原発の重大事故に対する危機管理
(3)危機管理における国と県の関係
2 超少子高齢化社会への対応について
(1)教育委員会の組織運営
(2)教育機会確保法施行後の実態
(3)子どもの人権
(4)高齢者の仕事
3 台風15号被害に伴う巴川流域の今後の整備について


○議長(藪田宏行君) 次に、五十九番 天野 一君。
       (五十九番 天野 一君登壇 拍手)
○五十九番(天野 一君) 私は、自民改革会議所属議員として県政の諸課題について一括質問方式で質問をいたします。
 まず、静岡県の危機管理についてであります。
 本県におきましては、昨年七月に起きた熱海市の土石流災害や今年九月の台風十五号による大雨被害など大規模な災害の発生が続いており、全国的にも平成二十六年の広島や平成三十年の西日本など、甚大な豪雨災害が頻発しています。
 こうした災害のたびに想定外だったとの説明がなされますが、もはや想定外だったは通じない時代になったと思います。異常気象が日常化しつつあることを考えますと、既に局面は変わったと見るべきだと思います。県は従来の経験値を離れ防災計画や避難指示などを出す基準、ルールを改めるべきときが来たと思います。
 初めに、緊急事態への対応について質問します。
 県内の地域に住んでいる人は、全ての県民が安心して暮らせる県土づくりは県政を進める上で最も基本的なテーマであります。県においては自然災害などに備え市町からの被害情報等の一元化や共有化、迅速かつ的確な対応を推進していることと思います。
 しかし、今回の台風十五号による静岡市の災害対応の遅れが知事と市長の関係に原因があったのであれば、発災時の危機管理だけでなく日頃から実施すべき事項の対策を含めたリスクマネジメントが全く機能していないことになります。
 そこで、県と市町の平時からのリスクマネジメントの取組及び緊急事態への対応についてお伺いします。
 次に、浜岡原発の重大事故に対する危機管理について質問します。
 県議会で私は何度も訴えていますが、浜岡原発は世界一危険であります。南海トラフ巨大地震の想定震源地域に位置し近くを東海道新幹線、新東名、東名高速道路が走る浜岡原発は東京電力の福島第一原発事故の際、当時の民主党総理大臣菅直人政権によって超法規的に停止され以来十一年が過ぎました。現在は動いておりません。しかし再稼働していなくともリスクはあるのです。
 もし、浜岡原発で重大事故が起これば三十一キロ圏内、九十二万人が避難対象になります。巨大地震との複合災害では避難先は北陸や北関東など十二都道府県に及び何万人もの人が避難する場合の受入先や避難経路、交通手段など課題は山積しております。
 そこで、浜岡原発で重大事故が発生した場合の第一報は誰からどこに入るのか、県と市町の連絡体制はどうなっているのか、どのような組織で対応をするのかなど事故対応の実施体制についてお伺いします。
 次に、危機管理における国と県の関係について伺います。
 風水害や地震などの防災から感染症対応、食の安全対策まで様々な危機をはらむ現代社会において国と地方が平等、協力の関係の下、地方分権型社会においてふさわしいパートナーシップの構築が求められます。では全国四十七都道府県の行政の長である県知事はどんな経歴の人がなっているでしょうか。自治体職員や地方議会議員として地元に根を張り地域の問題に精通している人が意外に少なく僅かに八人です。一方で中央省庁の官僚出身者は全体の六割近い二十七人に上ります。官僚出身者が知事選でまずと言っていいくらい強調するのは国との太いパイプです。
 官僚時代の中央の政官人脈を生かし自治体の事業への支援や予算配分を獲得できることは地方にとって大きな魅力となります。私が懸念するのは、静岡県には中央省庁出身の副知事すらおらず危機管理における国と県との関係が希薄になっているのではないかと思うからであります。
 そこで、どのように国との関係を構築しているのか伺います。
 次に、超少子高齢化社会への対応について伺います。
 さて、日本では出生率の低下による若年者の減少と平均寿命の向上で人口に占める高年齢者の割合が増加する超少子高齢化が進行しております。今や四人に一人以上が六十五歳以上の高齢者であり、少子化と相まって百年後には人口が三分の一ほどに減少するという試算もあります。まさに日本は超少子高齢化社会のフロントランナーであり、これからの我が国の取組が世界の手本になり得る可能性があります。私は新たな成長戦略の鍵は教育と高齢者の仕事にあると考えています。
 初めに、教育委員会の組織運営について質問します。
 知事は、知事選に初出馬した当時から県教育委員会の存在意義を再検討すると訴えていました。教育委員会制度の硬直化や県内の教師による悪質な不祥事の多発を受けて平成二十三年には教育委員会に自浄性がないと厳しく指摘し、平成二十四年からは外部の教育専門家や教育委員から成る教育行政の在り方検討会を開き教育委員の活動の活性化や事務局組織の改編などの教育委員会の改革を本格化させました。
 知事自ら県教育委員人事にもメスを入れ、事務局に勤務する優秀な教師を学校現場に戻し課長職は知事部局の職員が担うようになりました。これは知事の教育現場と教育行政を分けるというお考えを具現化する対策であり、知事の意向が事務局職員の配置に強い影響を与えることとなりました。
 そこで、教育行政の在り方検討会から十年が経過し事務局職員の配置見直しによってどのような成果が出ているのかお伺いします。
 また、この十年で親の経済格差がそのまま子供の教育格差につながるとして社会問題にもなっております。教育格差は乳児期から生じており、小学校入学以降の義務教育期間を通し拡大していき大人になってからも社会生活や生涯賃金などに影響を及ぼしている。子供期の教育の不利がその後の人生の不利へつながるというこの問題は解消しなければなりません。
 ところが、静岡県では平成二十七年から義務教育、高等学校教育を経験していない、あえて言うならば子供期の教育の専門家でない教育長が二代続いており、こういった課題に対応できるのか不安であります。教育長は今後組織運営をどうかじ取りしていくのかお伺いします。
 次に、教育機会確保法施行後の実態について質問します。
 不登校の小中学生が昨年度九年連続で増え、全国では二十四万人を超えました。静岡県においても平成二十八年度から倍増しており、過去最多の人数となっております。新型コロナウイルス禍の影響も指摘されていますが、これまでの学校の対応が再考を迫られているということは明らかであります。
 平成二十八年、不登校の子供に対する対応を見直し不登校の児童生徒が教育の機会を損なわないことを目指し教育機会確保法が施行されました。教育機会確保法には休養の重要性が示され、不登校を否認しない、言い換えれば学校を休んでもいいということについて触れられております。
 さきの質問で義務教育について触れましたが、義務教育の意味は政府や自治体、保護者などが子供に小中学校九年間の教育環境を整えることといいます。子供が学校へ行くのは義務ではない。親が子供を無理やり学校に通わせなくてもいいということでもあります。しかし社会には学校さえ行けない子が社会に出られるはずがないという声もいまだあります。
 文部科学省が平成二十六年に発表した平成十八年度不登校生徒に関する追跡調査によると、不登校だった中学三年生の子供の五年後は仕事をしている、あるいは学校に行っている子供は約八〇%でありました。今後も超少子高齢化が続く中、不登校児童生徒の社会的な自立が求められてきます。
 教育機会確保法が施行されて六年、現在の不登校対策や今後の展望について教育委員会の所見を伺います。
 次に、子供の人権について質問いたします。
 今年六月、日本で初めて子供の権利を大切にしようという法律――こども基本法が成立しました。来年にはこども家庭庁が設置されます。大人が忘れがちなのは子供は大人の付帯ではないということです。日本は昔から家長制度で家庭の中で家長の意思決定が絶対とされてきました。現在は子供の主体性を育てることという考えへの理解が進み教育現場や保育の場、さらには家庭でも子供の意見や考えを尊重した関わりが増えてきています。しかし社会全体で見ればまだまだ周知されているとは言えません。日本の子供の権利と人権はとにかく遅れていると、まだ感じております。
 子育てや教育は親や学校だけが担うものではありません。子供を育てることは未来の日本を支える人材を育てることでもあります。次代を担う子供を社会の宝として大切に育てる、子供を取り巻く環境、地域の大人が子供の人権について正しく理解し共通の認識を持つことが重要です。
 富士市では、子供の権利を保障し子供に優しいまちづくりを推進する目的で子どもの権利条例を本年四月に施行するなど県内でも子供の人権の意識を広める動きが見られます。
 しかし一方で、裾野市の保育園で園児虐待が発覚するなどしており、今こそ子供の人権について皆で考え正しく理解していくことが必要であると考えます。
 そこで、子供の人権に関する県の考えと今後の普及、啓発について伺います。
 次に、高齢者の仕事について質問します。
 高齢者は本当にお荷物なのでしょうか。年齢は関係ない、何歳であれ必要とされるところに行くことが大事です。年齢によっていつまで働けるかを決めてしまうほうが問題ではないでしょうか。
 実際に幾つかの国では定年制を禁止しています。年齢ではなく能力、適性で判断されるべきではないでしょうか。
 超少子高齢化社会で現役世代が減る中、意欲のある高齢者に長く働いてもらうことは社会の活力を維持する上で不可欠です。高齢者に社会の支え手として活躍してもらいたいのであれば安全に働ける環境を整える必要があります。
 総務省の調査では、六十五歳以上で働いている人は令和三年には前年より六万人増え九百九万人と過去最高になりました。高齢者の四人に一人は就労していることになります。六十五歳から六十九歳に限れば二人に一人の割合です。静岡県においても就業者人口に占める六十五歳以上は二十八万八千八百三十七人で一六%を超え、この十年で五%増えました。
 見過ごせないのは、高齢者の就労の増加と同時に労働災害に巻き込まれるケースが高齢者の働き手も増えているということであります。静岡県も同様で六十歳以上の労働災害は平成二十四年には二二・一%であったのが昨年は二八・八%に増えています。厚生労働省によりますと、六十歳以上の従業員がいる事業所のうち約二割が高齢者の従業員に配置した対策が取られていないということです。
 県では、県内三か所のしずおかジョブステーション、高齢者雇用推進コーディネーターを配置しております。働く意欲のある高齢者と人材確保を希望する企業のマッチングを支援していますが、同時に高齢者を雇用している事業所にはきめ細かな災害対策の対応が必要だという自覚を促してほしいと思います。また今の取組で十分か高齢者に聞き取り対策を点検をしてもらいたいと思いますが、県の所見を伺います。
 最後に、台風十五号被害に伴う巴川流域の今後の整備について伺います。
 昨年は、七月七夕豪雨により県東部を中心に土砂災害や浸水被害などが発生し、引き続いて本年九月に発生した台風十五号による豪雨により県内中西部を中心に甚大な被害が発生しました。全国的にも近年これまで経験したことのない大災害が、大雨が降ることにより激甚化する災害が発生しております。今回の台風十五号による豪雨により県内でこれまでに公共土木施設の被災約六百箇所、床上・床下浸水被害は約一万戸に加えライフラインの寸断が広範囲に至っての被害が報告されております。
 一方で、総合治水により治水安全度の向上を図ってきた静岡市の市街地を流域に持つ巴川流域では、今回浸水被害は発生したものの、昭和四十九年七夕豪雨により発生した浸水家屋戸数を大きく下回りました。これは七夕豪雨以降大谷川放水路の建設や麻機遊水地の整備、河川管理施設の機能が向上したことに加え、流域内で一時的に雨水をためる雨水貯留施設の設置など、いわゆる流域治水の考え方に基づいた治水対策が以前から実施されその効果が今回発揮されたものと考えます。
 しかし、それでも巴川流域では約四千戸を超える家屋浸水被害が発生しており、引き続き抜本的な治水対策が必要で、さらに七夕豪雨から五十年が経過しようとする今、住民の治水に対する認識も改める必要があります。
 そこで、巴川流域における治水対策のうち現在県が取り組んでいるハード対策の柱は巴川の河道掘削と麻機遊水地の整備と承知しておりますが、今回の台風十五号による浸水被害そして停電、水道施設の破壊、そういったものを含めてこれまでの治水対策の取組の効果を踏まえた今後の巴川流域の治水対策の考え方について伺います。加えて、麻機遊水地の整備の進め方についての利活用について教えてください。以上、答弁を求めます。
○議長(藪田宏行君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 天野一議員におかれましてはさすがベテラン議員、二十五分の質問時間を一秒たりとも残さず終えられまして感服いたしました。
 天野議員にお答えいたします。
 静岡県の危機管理についてのうち、緊急事態への対応についてであります。
 県民の生命や財産を守るため、南海トラフ地震をはじめとする地震・津波対策はもとより近年頻発、激甚化する風水害に対し緊急時の臨機応変な対応とそのための平時からの準備に万全を期することは県の危機管理行政にとりまして極めて重要な責務であります。
 危機事案の初期段階において、市町は住民に最も近い基礎自治体として気象警報等を踏まえた住民への避難情報の発令や避難所の開設等を行うとともに、災害発生後は救出救助や応急対応の状況に応じて県への自衛隊派遣の要求を検討する必要があります。また県は災害対応の全体調整を担う立場から災害の全容把握のため市町からの被害情報と消防、警察、国、防災関係機関等の対応状況を集約いたしまして市町への人的・物的支援や自衛隊等応援部隊の派遣の調整を適時適切に行うことが求められております。
 こうしたことから、県では平時から市町の危機管理部局と顔の見える関係を構築し災害対応の各種会議や勉強会、災害対策本部の運営訓練などを合同で実施しておりますほか、市町の災害対策本部の点検、改善に向け必要に応じて豊富な知識を有する県職員を派遣し指導に当たっております。また平時から県、市町において災害対策を指揮する首長、危機管理監等が双方向の連絡体制を確保するとともに代理を務める職員を配置し、知識と情報の共有を図ることで災害時の迅速な初動体制が年間を通じて確保されるように努力しております。こうした準備の上で県、市町の連携体制は組織的に強固に維持されており、常に情報共有、意思疎通が可能な体制を構築しております。
 一方、多様で刻一刻と変化する災害に臨機応変に対処するためには実災害の反省と教訓を生かして行政対応の在り方を常に見直すことが重要です。台風十五号の教訓を踏まえまして、市町からの情報収集体制を強化するために大規模な被害が発生した市町の支援と県との調整を行う市町支援機動班を新たに設置することといたしました。また県が関係機関や民間企業などから直接現場情報を収集する手段の確保やDXを活用した情報集約の迅速化、可視化の検討も進めてまいります。
 今後とも、あらゆる災害において適時適切に対応できるように日頃から県、市町の連携体制の確保に最善を尽くしてまいります。
 次に、危機管理における国と県の関係についてであります。
 大規模災害をはじめとする県民の安全・安心に直接関わる危機管理事案の発生時において迅速かつ的確な対応を行うためには、県の職員や組織における危機管理対応力の強化を図るとともに国や自衛隊などの関係機関との緊密な連携が不可欠です。
 そうした考えの下で、県では平成十二年度以降途切れることなく消防庁から幹部職員を受け入れて危機管理部門へ配置し大規模災害等の発生時における中央官庁との連携を図っています。さらに近年自然災害の頻発化や激甚化が進む中、重要性が増している自衛隊との連携につきまして、各種災害派遣について豊富な経験を有する陸上自衛隊OBをはじめ海上、航空の三つの自衛隊のOBを任期付職員として危機管理部に配置し平時から自衛隊と連携した危機管理体制を築いております。
 また、東日本大震災におきまして自衛隊と共に大きな力を発揮した米軍との連携を深めるために在日米軍に本県の総合防災訓練に御参加頂いております。さらにまた静岡県指揮官会議というのがございます。これは本県と陸自とそれから空自、順次毎年当番を変えまして開いているものでありますが県からは私、副知事、危機管理部幹部そして自衛隊の、今は陸海空全ての指揮官、消防そして警察そして関係者――今回、今回と言いますか――を開いております。一番喫緊では十二月二日にホストは浜松の航空自衛隊で開きまして緊急消防援助隊の方も来られました。そして各組織が、今回の場合ですと台風十五号において何をしたかということを簡潔に、これはパワーポイントなどを通じて紹介し、そしてその情報を共有し次の災害のときに役立てるというふうなことをしております。これが指揮官会議でございます。
 県といたしましては、引き続き中央官庁との幹部職員の人事交流を継続するとともに、自衛隊OB職員の採用などを通じ中央官庁をはじめとする関係機関との平時からの顔の見える緊密な関係を構築し県の危機管理体制の充実強化に一層努めてまいります。
 その他の御質問につきましては、関係部局長、教育長から御答弁を差し上げます。
○議長(藪田宏行君) 黒田危機管理監。
○危機管理監(黒田健嗣君) 静岡県の危機管理についてのうち、浜岡原発の重大事故に対する危機管理についてお答えいたします。
 浜岡原子力発電所において重大事故の発生またはそのおそれがある場合は、原子力災害対策特別措置法等に基づき中部電力から国、県及び関係十一市町に速やかに通報されます。通報を受けた県と市町は国と共にテレビ会議システムを含む専用回線による連絡体制を取ります。通報を受けた各機関はそれぞれ原子力災害対策本部等を設置し、住民避難をはじめとする防護措置や放射線モニタリング等を連携して実施します。
 また、富士山静岡空港西側にあるオフサイトセンターに国、県、関係市町、自衛隊、警察、消防等の要員が参集して原子力災害合同対策協議会が設置され事故の状況や放射線の測定結果の情報共有、防護措置の実施に係る調整等を行います。事故の状況や避難指示等の重要な情報については県のウェブサイト静岡県原子力防災ポータルにより情報発信するほか、市町の防災行政無線や広報車あるいは報道機関を通じて周辺地域にお住まいの方々をはじめ広く県民の皆様にお伝えします。
 県といたしましては、原子力防災訓練等により要員の習熟や各機関の連携強化を図り実施体制の向上に努めてまいります。以上であります。
○議長(藪田宏行君) 池上教育長。
○教育長(池上重弘君) 超少子高齢化社会への対応についてのうち、教育委員会の組織運営についてお答えいたします。
 県教育委員会は、平成二十五年度に策定した教育行政の在り方検討会意見書の具現化に向けた対応方針に基づき事務局の教育職員のうち約百名を段階的に学校現場に配置し、その後任として行政職員を配置いたしました。異動した教員は教科指導力、学校経営力に優れた地域のリーダーとして活躍し、また事務局においては広く行政課題を理解し企画立案力を持つ行政職員と現場を理解する教員がそれぞれの知識や経験を生かしより広い視野から教育施策の立案に取り組んでおります。その結果学校においては教員に対する指導の充実強化などを通じて教育の質が向上し、事務局においては変化し複雑化する教育課題への対応力が向上しており、一定の成果を上げていると考えております。
 次に、私の今後の組織運営についてであります。
 私は、着任後、現場主義を第一に掲げ小中学校や高校、特別支援学校をできる限り訪問し実際の学びに触れ教職員や児童生徒の意見を伺い理解を深めてまいりました。また前職の大学教員時はフィールドワークとして学校現場にも足を運び、外からの視点で教育行政に関わってまいりました。
 変化が激しく不確実性が増す時代にあり、複雑化する教育課題は教育の枠内だけでは解決できず前例にとらわれない発想も求められます。児童生徒を第一にした現場主義に徹し、多様な知識や経験を融合させるための風通しのよい組織をつくり家庭や地域社会との連携を強化し社会総がかりの教育を進め、時代を切り拓いていく有徳の人の育成に教育委員会一丸となって邁進してまいります。
 次に、教育機会確保法施行後の実態についてであります。
 児童生徒が不登校状態となる要因は複雑かつ多岐にわたっており、一人一人のよりよい成長のためには個々の状況に応じ多様な学びの機会を保障することが大切であります。小中学校時代に不登校であっても個に応じた適切な教育の機会が提供され義務教育年齢のうちに将来に向けた社会的な自立の礎を築くことはその後の人生における自己選択、自己決定においても重要であります。
 いわゆる教育機会確保法には、基本理念として児童生徒が安心して豊かな学校生活を送るための環境整備や不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえた必要な支援の実施などが掲げられております。県教育委員会では法の基本理念の浸透を図るため各市町教育委員会の担当者が参加する会議等の機会を捉えて周知してまいりました。
 現在、各学校では教室に居づらい児童生徒の一時的な休養のために別室を用意するなど支援体制の充実が図られてきております。さらに市町では教育支援センターの設置が進み、いわゆるフリースクールなどの民間施設等と同様に教科の学習だけでなく器楽演奏や創作活動など不登校児童生徒が学校外においても多様な教育の機会を選択できる環境が整備されてまいりました。
 今後は、県教育委員会が呼びかけて民間施設等と学校や市町教育委員会との協議の場を設けることとし、現在その準備を進めております。それぞれの教育に対する考え方などの理解を深め、不登校児童生徒の状況の共有方法やよりよい支援の進め方について話し合うこと等を通して義務教育段階における多様な学びの機会をさらに充実させてまいります。
 県教育委員会といたしましては、確保法の理念に基づいた取組をさらに進めることにより不登校児童生徒を温かく見守りながらその社会的自立を支援してまいります。以上であります。
○議長(藪田宏行君) 八木健康福祉部長。
○健康福祉部長(八木敏裕君) 超少子高齢化社会への対応についてのうち、子供の人権についてお答えいたします。
 教育の現場や家庭において子供の主体性を育てることへの理解が進みつつある一方で、児童虐待などの事例が依然として後を絶たないことから社会全体で子供の権利と人権に関する意識を育むことは大変重要と考えております。
 県では、子供の人権について子供が一人の人間として尊重され大人と同じように独立した人格と尊厳を持つ権利の主体であるという国連の子どもの権利条約の考えを基本として静岡県人権施策推進計画に子供の人権擁護に関する施策を盛り込み、関係機関と連携しながら家庭や地域、教育現場などにおいて啓発、教育を推進しております。また令和二年度からの第二期ふじさんっこ応援プランにおいても全ての子供が大切にされる社会の実現を基本目標に掲げ児童虐待やDV防止対策に取り組んでおりますが、今般裾野市内の保育園において虐待と考えられる事案が発生しました。今後原因を究明し再発防止に向けた指導を徹底いたしますとともに、地域や学校において人権講演会や出前人権講座を通じて子供の人権の擁護や虐待の防止を強く呼びかけてまいります。
 また、令和五年度から施行されるこども基本法の全ての子供が個人として尊重されるという理念を踏まえ民生委員・児童委員や人権擁護委員、市町職員など地域における人権リーダーを対象とする研修講座等を通じて改めて子供の人権の普及啓発を進めてまいります。
 県といたしましては、県民一人一人が子供の人権について正しく理解し家庭、学校、地域社会が一体となって子供を大切に育む社会の実現を目指してまいります。以上であります。
○議長(藪田宏行君) 増田経済産業部長。
○経済産業部長(増田始己君) 超少子高齢化社会への対応についてのうち、高齢者の仕事についてお答えいたします。
 少子高齢化が急速に進む中、企業が成長力を維持する上で豊かな経験と知識を持ち就労意欲が高い高齢者の活躍は大変重要であります。このため県では令和元年度から高齢者雇用推進コーディネーターを配置し高齢者の幅広い相談に寄り添い、個々のニーズに基づくマッチング支援に取り組んでおります。
 高齢者の採用を考えている企業に対しては、労働災害予防の観点から作業内容の見直しや手すりの設置、段差の解消等について助言し職場改善に対する意識の向上を図っております。採用後も企業を定期的に訪問し定着状況の確認等のフォローアップを行っております。
 一方で、議員御指摘のとおり就労後の高齢者の御意見を伺うことも必要であることから、今後はアンケートなどにより現在の取組で十分かどうかを点検しその結果をマッチング支援や企業に対する助言に反映させてまいります。
 県といたしましては、就労意欲の高い高齢者がその能力を十分に発揮し活躍できる環境の整備に一層努めてまいります。以上であります。
○議長(藪田宏行君) 太田交通基盤部長。
○交通基盤部長(太田博文君) 台風十五号被害に伴う巴川流域の今後の整備についてお答えいたします。
 巴川流域では、昭和四十九年の七夕豪雨を契機に静岡市と連携して長年にわたって流域治水の先駆けとも言える総合治水対策に取り組んでおり、この中で県では麻機遊水地の整備や大谷川放水路の建設などを進めてまいりました。今回の豪雨におきましても、上流部に位置する麻機遊水地は約百三十八ヘクタールの区域に東京ドーム約二杯分に相当する二百六十四万立方メートルの洪水をため、大谷川放水路は中流部から洪水を駿河湾へ放流させて流域の浸水被害の軽減に一定の効果を発現しました。しかしながら、河川の能力をはるかに上回り七夕豪雨に匹敵する豪雨は主に市街化が進んだ低地部の住宅などに大きな浸水被害をもたらしました。
 こうしたことから、頻発化、激甚化する豪雨へ対応するため麻機遊水地の拡大整備や巴川本川の河道掘削を着実に進めるとともに、市が進める雨水排水事業やまちづくりと一体となった流域治水を一層推進してまいります。現在浸水エリアごとに水害特性を踏まえた浸水要因を分析しており、今後実施する河川施設等の再点検の結果と併せて具体的な対策を市と連携して講じてまいります。
 また、麻機遊水地の整備につきましては掘削方法を工夫し段階的な効果発現を目指すとともに、周辺に位置する医療や福祉施設の関係者をはじめ多くの県民の皆様が利用している緑地であることから巴川流域の治水に関する情報発信や環境学習などの場として活用される水辺空間としてさらなる魅力向上に努めてまいります。
 県といたしましては、引き続き市と連携しながら総合治水対策を推進し流域治水につなげていくとともに、人々に愛される良好な河川空間の創出により安全・安心で快適な地域づくりを進めてまいります。以上であります。
○議長(藪田宏行君) これで天野一君の質問は終わりました。(拍手) 
 以上で質疑及び一般質問を終わります。

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