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ホーム > 静岡県議会 > 本会議会議録 > 質問文書

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本会議会議録

質問文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用



平成22年9月静岡県議会定例会 質問


質問者:

大石 裕之 議員

質問分類

代表質問

質問日:

09/24/2010

会派名:

民主党・無所属クラブ


質疑・質問事項:

1 士民育成塾と静岡地域学について                 
2 知事の考える平和と静岡県の役割について             
3 看護師養成所の専任教員の養成について              
4 難病患者の就労支援について                   
5 世界お茶まつり二〇一〇の開催について              
6 富士山静岡空港について                     
 (1) 交付金制度の創設                       
 (2) 空港アクセスとしての新交通システムの導入           
7 太田川ダムの地震等による緊急時の危機管理体制について      
8 浜岡原子力発電所五号機の耐震安全性について           
 (1) 原子力安全・保安院に対する県の姿勢              
 (2) 地下調査に関する中間報告会の開催               
9 静岡県職員の懲戒処分の基準について               
10 脳脊髄液減少症の実態調査について                
11 教師の社会人教育について                    
12 高校の再編整備と地域づくりについて               
13 県民の捜査協力確保のための取り組みについて



    ○議長(天野進吾君) ただいまから会議を開きます。
     議事日程により、知事提出議案第百十三号から第百二十三号まで及び平成二十一年度静岡県一般会計、特別会計、公営企業決算全部を一括して議題とします。
     質疑及び一般質問を行います。
     通告により、二番 大石裕之君。
           (二番 大石裕之君登壇 拍手)
    ○二番(大石裕之君) 私は民主党・無所属クラブを代表して当面する県政の諸課題について、知事並びに関係部局長、教育長、警察本部長に質問いたします。民主党・無所属クラブとしては今回が最後の代表質問になりますので、心を入れて質問をさせていただきます。
     質問に先立ち、去る八月二十一日に逝去されました故岡本信也議員に、謹んで哀悼の意を表しますとともに、心から御冥福をお祈り申し上げます。
     また、今月上旬の台風九号による被害を受けられた皆様、特に小山町では大きな被害がもたらされました。被害者の皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、被災された地域が一刻も早く復興できますよう、県に万全の対応を要望いたします。
     まず初めに、士民育成塾と静岡地域学についてお伺いいたします。
     川勝知事は、知事就任直後にこの本会議の場において所信表明演説をされました。その第一番に教育改革を掲げ、心身の調和した徳のある人材育成に言及され、県内各地からさまざまな分野において人材を輩出することを目標としたいとされています。また知事の持論でもあり、静岡県の県是でもあります富国有徳の理想郷“ふじのくに”をつくる志を持った人材を数多く育てることこそ、その第一歩であると私も思っております。また著書「富国有徳」の中で知事は、これからの知識社会には、単なる市民ではなく高い教養と徳を備えた人である武士の「士」に「民」と書いた士民の育成が不可欠であると説いておられます。その知事のお考えをもう一歩進めますならば、「志の民」と書いた志民が必要な時代になったのではないかと思います。
     最近では、社会全体が志や理想が希薄になってしまったように感じますが、地域にあっては行政の果たすべき役割とリーダーシップははかり知れない力を秘めたものだと思います。これからの地域づくりは、県と各市町、企業、市民、大学、NPOなどが三位一体、四位一体となって進めていかなければならない時代に突入いたしました。特に県は指導するという立場ではなく、ともに手を携え時には下支えをし支援する役割としてのリーダーシップを求められているように感じます。そしてそれを実現するためには、体系的な教育システムを整えて、新しい時代にこたえられる志と実行力を持った県職員と県民を養成していくことが不可欠ではないかと思っております。
     かつて静岡県には、平成三年に二十一世紀の県土づくりの担い手となる中核的リーダーの養成を目的に開設された静岡・未来・人づくり塾という人材育成システムがあり、ここから三百七人ものまちづくりリーダーたる未来づくり学士が育っていきました。残念ながら十年間でその仕組みはなくなりましたが、単年度制の事業の中にあって十年間続けたこの仕組みは当時としては画期的であったと思います。特に市町におきましては、塾の参加者がその後の市町のまちづくりに大いに貢献されている事例が少なくないということであります。
     知事は長く人材育成の場におられたので、そうした育成の仕組みの大切さはよく御存じではないかと思います。地方分権が叫ばれている現在にあって、ともに学び合い連携し将来の地域づくりのために活躍する人材の育成こそ、県が率先して行うべきではないかと思うわけです。それは県是――富国有徳をつくり、県と市町、企業、市民という志と和の連携による地域づくりの仕組みとして、また世界にも通用し得る地域の人材育成の仕組みとして、県みずからが率先してこれからの地方分権の時代に全県を挙げて取り組むための人材育成塾の設立が求められているのではないかと思います。
     また、この塾は静岡学を学ぶ塾でもあります。知事は『「美の国」日本をつくる』の中で地域学について触れられております。そこで地域学は、新しい実学としてみずからの足で立つ新しい国づくりと結びついているとされています。また所信表明の中で、県内各地の持つ場の力を引き出すために現場主義をみずからの基本姿勢とすると宣言されています。現場の自治体及び住民、企業人と県職員が一体となって地域おこしを考え実践していくことこそ、今、求められていることであります。
     実際に知事は、平成十三年に鹿児島におきまして知事の提唱する富国有徳及び海洋史観に学び鹿児島――薩摩の地域学及び地域の自立を考える勉強会、有徳塾の設立にかかわり、知事みずからも講師をされています。そうであるならば、今こそ静岡県知事として静岡発の地域学――静岡学を推進し、体系的な地域に根差した新しい地域づくりの学問体系をつくり出すことも不可能ではないと思っております。
     幕末の駿府は一時期、日本の首都としての機能を発揮しており、静岡発のもので近代日本の礎をつくったものも数多くあると聞いております。この静岡学の推進と確立はまさに知事の目指されるところではないでしょうか。地域が自主独立した人材力を持たなければ、行政改革も推進できないことになります。人材を地域で生み育て、地域で活用、活動する、人材の地産地活こそがこれからの課題であると思います。幕末の松下村塾が地域の人材によって日本を動かしたように、今こそ平成の川勝流静岡塾、地域学塾を興されることを切望いたします。知事の目指す富国有徳の地域づくりと静岡学を学びながら、かつ実践していく志士たちの育成につきまして、川勝知事のお考えをお聞かせください。
     次に、知事の考える平和と静岡県の役割についてお伺いいたします。
     昨年九月の代表質問において私は、世界の核廃絶への趨勢を踏まえ第五福竜丸による被爆県でもある静岡県が、全国、世界に向けて平和宣言をすべきであるとの提言をさせていただきました。その後、「核兵器のない地球を目指すふじのくに静岡県平和宣言」として、県議会において全会一致で決議されました。しかしながらこの宣言はあくまでも静岡県議会による宣言にとどまっており、予算を伴う実効的な施策として全県民の意識を喚起し、啓蒙していくものとはなっておりません。
     二月の代表質問で、我が会派の鳥澤代表が県が行う宣言として考えてはどうかという問いに対し、知事はこのたびの決議を踏まえて、今後、私自身の言葉で平和を希求する姿勢をしかるべき機会にアピールしたいと発言されました。また八月八日には周辺からは無謀な挑戦と言われつつ富士登山に挑まれ、「平和のシンボル、日本の和の文明のシンボルとしての富士山に登頂し、その頂上において、平和のアピールは来年の二月二十三日の富士山の日に行いたいと決めた」との発言がございました。
     核廃絶に向けての世界の関心は高く、ことしの広島市で行われた平和記念式典に、潘基文国連事務総長やルース駐日大使が出席したほか、初めての参加となった十七カ国を含む過去最多の七十四カ国の代表が参列しました。背景には昨年四月にオバマ大統領がプラハで訴えた核兵器なき世界の演説以降、核拡散防止条約再検討会議での最終文書合意など核廃絶への取り組みが国際社会に浸透してきた現実があります。
     しかしながら、世界の現実は大量破壊兵器による戦争抑止が一般的な考え方であり、全世界的に大量破壊兵器を廃棄する実効的プロセスを提示することは不可能とされ、その不可能に今、世界が挑みつつあるというのが現状だと拝察します。歴史史料が残っている六千年以内に発生した戦争は一万五千回以上であると考えられており、第二次世界大戦が終結した一九四五年から一九九〇年の間に戦争や内戦は百五十回以上発生し、この間に本当に世界から戦争がなくなった日は三週間だけとも言われ、戦争が普通であって平和は異常であるというほうが正しいと言われるゆえんです。
     知事は、力の文明から美の文明、そして和の文明を説いていらっしゃいます。特に和は、聖徳太子の十七条の憲法の第一にある「和をもってとうとしとなす」という言葉に象徴されております。この聖徳太子の掲げた和の精神とは、単に仲よくするということではなく、争い絶えないこの世の中にあって、たとえ相手がどのような者であれ、それを許し受け入れ認めるという思想、それが和の本義なのではないかと思います。そして日本の国の名である大和も「大いなる和」と書きます。
     現在、核の廃絶が世界の潮流となっておりますが、核がない世界が単に平和であるという保証はありません。核にかわる武力が数多く存在することも事実です。また一方で静岡県には七百八十三名の被爆者健康手帳を所持する県民を含め、それ以上の原水爆の被害者が存在することも私たちは忘れてはならないと思います。
     これからの平和に必要なのは、平和を強く希求する心のあり方、心の徳の養成、そしてそうした徳の心を持った政治家、指導者、市民の育成であり、心の平和こそ平和の原点ではなかろうかと思っております。古今東西の世界の文明を研究対象とされ、文明学をきわめられた川勝知事の二月二十三日の富士山の日の世界に唯一の平和宣言を期待しながら、知事の考える平和と静岡県の役割についてお伺いいたします。
     次に、看護師養成所の専任教員の養成についてお伺いします。
     日本全国でいまだに医師不足が原因で医療崩壊が起こっていると、悲痛な叫び声や大変な現状を伝える報道が後を絶ちません。この医師不足問題に対し国では医学部の学生の増員が図られ、また静岡県では医学部の設立の議論や医学生への奨学金などを初めさまざまなメニューが用意され、時間軸の課題はありますが少しずつ対策が進んでいるところであります。しかしその医師不足と同じく不足しているのが看護職員です。こちらも数々の対策が行われていますが、今、その看護職員を養成する看護師養成所の専任教員の育成が大変になってきているという現状を踏まえ、その対策についてお尋ねいたします。
     現在、静岡県内では、入学総定員五百一名の四大学、一短大の看護系大学と総定員八百十七名の看護師養成所が十七校あり、その就業者のうち約八割が県内の医療機関等に就業していますが、看護師養成所の県内就業率は約九割とさらに高くなっており、看護職員の供給に大きく貢献しているところです。
     この看護師養成所の専任教員になるためには幾つかの条件がありますが、大切なのは経験と教員としての資質だと思われます。若い生徒たちを指導し看護職員としてのあり方や看護技術を教えることができるのには、専任教員になるための条件、五年以上業務に従事した者とはいえ、やはり経験が浅くてはとてもやれない仕事です。若いうちからというわけにはなかなかいきません。しかも病院を離れて八カ月から一年間の講習を受け初めて専任教員となりますが、それでも指導者としてはまだ半人前です。そこからまた先輩専任教員のもとで勉強していくというのが実態です。
     専任教員の望ましい人員配置としては、平均五年から七年程度勤務しまたもとの病院に戻るということであります。しかし本当に大変なのはそこからかもしれません。医療の日進月歩の技術革新の中では病院に戻ってもまるで浦島太郎、また現場で勉強し直さなくてはならず、そのリスクと精神的な不安やストレスは大変大きなものがあることは想像にかたくありません。しかし専任教員を経験して病院に戻ると、新人を育てることができる人材としても非常に有益であるともお聞きします。
     専任教員が生徒たちに常に最新の技術や症例を教えるには、最新の現場をよく知っている人がよい。長く専任教員をしていると最新の現場や技術との乖離が生じ、生徒にとってもためにならず本人も病院に帰りにくくなる。ですから専任教員を計画的に着実に養成しながら、適当なサイクルで専任教員が入れかわっていくようにすることが重要だと感じています。県の御所見をお聞かせください。
     次に、難病患者の就労支援についてお伺いいたします。
     今、県内には特定疾患治療研究事業により医療費の助成を受けている難病患者の方々が約二万人、その他の慢性疾患患者を含めるとさらに多くの患者がいらっしゃると思われます。このような難病、慢性疾患患者や御家族の皆さんの多くは、病気に対する不安だけでなく高額な医療費負担や仕事につくことができにくい状況などから来る生活の不安の中で暮らしています。特に就労に関しては、外見上は健康な方々と変わらないことも多いため、難病、慢性疾患患者は生きる困難さを社会に理解されにくく、就労に際してどのような問題や課題があるのかも十分明らかになっておらず、障害者雇用におけるような法的な制度もありません。
     最近になり、国が難病疾患患者の雇用者への助成金を支払う難治性疾患患者雇用開発助成金や、都道府県が実施主体となって難病患者の円滑な就労支援活動を支援する難病患者就労支援事業などがありますが、この事業を実施している都道府県はまだ数えるほどしかなく、まだ本県でも実施されていません。
     また現在、静岡県では平成十七年に静岡県難病相談支援センターを設置して、地域で生活する難病患者や家族の日常生活における相談や支援、地域交流活動の促進及び就労促進などを行い、難病患者の支援をしていることは承知しております。このセンターは、難病患者や御家族の相談や情報の提供、さまざまな機関への取り次ぎ窓口としての重要な役割を果たしておりますが、十分な就労支援の活動までには至らないのが現状です。難病患者就労支援事業を含め実際に就労につなげるための支援を行うことが必要ではないかと考えますが、県の御所見をお伺いします。
     次に、世界お茶まつり二〇一〇の開催についてお伺いいたします。
     本県は、全国のお茶の生産量の四割、流通量の六割を占める日本一の茶どころであるとともに、運送、包装、小売などの関連する産業のすそ野の幅も大変広く、お茶は本県産業において基幹産業とも言えるほどの重要な位置づけにあります。
     ところが近年、家庭や職場において急須でお茶を飲む機会が少なくなり、また贈答用としてのお茶を利用する機会も減少したことなどによって、平成二十年には一世帯当たりの緑茶年間購入量が千グラムを割るなど緑茶の消費が停滞し、本県の茶産業に与える影響は大きく関係者のみならず心配されています。その一方でお茶はペットボトル飲料として多くの人に親しまれるとともに、石けん、化粧品、医療品などお茶を利用したさまざまな商品が開発、販売、消費されるようになり、お茶の新たな需要の可能性が感じられてもおります。
     また、お茶の歴史を見てみますと、安土桃山時代に千利休が中心となって形成した茶道は世界に誇るお茶の文化として発展し、中国の茶芸や韓国の茶礼の手本になるなど海外においても多大な影響を与えてきたことがうかがわれます。さらに最近では、海外の日本食ブームやお茶の効能を国内外の科学者が明らかにし多くの人に認知されてきたことにより、緑茶が海外でも飲まれるようになってきており新たなビジネスチャンスになりつつあると感じています。
     このような中、県では三年ごとに世界お茶まつりを開催しております。前回の世界お茶まつりでは、世界の色や形、味に特色のあるさまざまなお茶を体験するとともに、中国、韓国、モロッコなどの各国のお茶文化を体験し、また体で感じることができ、世界のお茶やその文化の幅広さ、奥の深さに感銘しとても楽しく、また勉強になりました。
     お茶を取り巻く環境が大きく変化している中、県では、来月の十月には第四回目となる世界お茶まつり二〇一〇を開催することになりますが、今回のお茶まつりでは、どのようなコンセプトのもとにどんなプログラムを企画し、世界に向けての情報発信をしようとしているのかお伺いいたします。
     次に、富士山静岡空港についてのうち、交付金制度の創設についてお伺いいたします。
     富士山静岡空港の所在地である牧之原市と島田市の二市と空港周辺自治体の吉田町を加えた二市一町は、富士山静岡空港周辺自治体として、行政、企業、商工業者、自治会などが空港の利活用や地域の発展のためにいろいろな形で力を合わせ、日々努力しているところです。また知事の提唱されているティーガーデンシティ構想に対しても大きな期待が寄せられているところであります。
     しかしながら、一方では県内で唯一、空港の負の遺産を背負っている地域であるということを生活の中で実感させられるのも事実です。私の家のテレビは、飛行機が上空を飛行する少し前から画面にノイズが入り飛行機の通過を知らせてくれます。吉田町はもとより牧之原市や島田市の一部でも、航空機騒音や電波障害の影響で苦しんでおられる方々がいらっしゃいますので、それらの対策には万全を期していただきたいと思います。
     これまでに県では、空港所在地である牧之原市と島田市、それに空港周辺自治体として吉田町を含めた二市一町にさまざまな空港対策関連事業を実施されてまいりましたが、現在行われている隣接地域振興事業費補助金制度は開港後五年までとされていて、牧之原市や島田市は空港所在地ということで今後も税収が見込めますが、吉田町だけは空港所在地でないばかりに、数々の負の遺産を受け入れながらも空港からの税収が一切見込めない状況にあります。このことにより空港関連の社会資本整備や地域対策などに苦慮するような事態があってはならないと考えます。
     空港所在地である牧之原市、島田市と同様に飛行航路直下の町、吉田町に対しても、空港と調和ある発展を図り地元住民に不利益や不公平を招く、またはそういった感情を抱くことのないよう、継続的な交付金制度等を創設するなどの対策が必要ではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか、お尋ねいたします。
     次に、空港アクセスとしての新交通システムの導入について伺います。
     富士山静岡空港が開港して一年、春夏秋冬を経験し、その間にも、運営側、利用者側それぞれからいろいろな問題点や要望が出され、今なおできるところから改善し利用しやすい空港にするべく日々進化しているものと考えております。やはり空港を利用する方々にとって便利で利用しやすい空港とするためには、空港へのアクセス、とりわけ公共交通による空港アクセスの整備は大変重要であると考えます。
     知事は、富士山静岡空港へのアクセスの中で、空港直下を通過する東海道新幹線への新駅設置に関し、七月に開催された国土交通省の交通政策審議会中央新幹線小委員会に出席され、リニア中央新幹線の開通と同時に空港新駅が開通できるように、受益者負担の考えもあわせて発言されておられます。知事の空港新駅実現に向けての並々ならぬ熱意を感じています。今後設置される検討会の議論で、難色を示しているJR東海に対し説得力があり双方がウイン・ウインの関係になれる提言がまとまることを期待いたします。
     このような中、特に知事が提唱されているティーガーデンシティ構想を初めとする島田・榛原地域の空港と一体となった地域振興策として、公共交通による利便性の高いアクセスルートの確保は重要であると考えます。空港への公共交通によるアクセスとしては現在バスが中心ですが、さらに利便性の高いアクセスネットワークの構築を目指すには、新しい交通システムの導入が考えられるのではないでしょうか。環境負荷を考慮し高齢者などの利用に配慮した、世界的に今注目されている次世代型路面電車LRTや、鉄道と道路の両方を走行可能で幅広い利用方法や可能性が考えられているDMVなど、便利で利用者や環境にも優しい新交通システムの導入が実現すれば、空港利用者の増加につながり、さらには経済効果や地域の振興発展に必ずや寄与することになると考えます。
     かつて、志太地域から榛南地域には大正から昭和にかけて活躍した軽便鉄道駿遠線があり、高度経済成長の始まりとともにモータリゼーションの波に押され一九七〇年に全線廃止されるまでには、地域の貴重な足として大変住民に親しまれました。その多くは現在、自転車専用道路として残っております。その線路の跡地を利用するなどして、このような新交通システムを空港駅とつなげることはできないでしょうか。
     空港駅から、来園者も右肩上がりで大変すばらしい公園にもかかわらず、交通アクセスに頭を痛めている県立吉田公園を通り、遠浅の海岸で毎年多くの海水浴客でにぎわう静波海岸で潮の香りを楽しみ、直轄港湾整備事業の対象となった御前崎港で産業と世界の海を感じ、またその先はかつての駿遠線のように中東遠地域まで続くJRの在来線へもアクセスできる、そんな地域の夢が広がる新交通システムを整備し、地域の身近な足として経済発展、地域振興、そして環境への配慮にも適した交通ネットワークが構築できないか考えております。今後、空港周辺に新しい交通システムの導入を検討すべきときであると考えますが、知事のお考えを伺います。
     次に、太田川ダムの地震等による緊急時の危機管理体制についてお伺いします。
     太田川ダムは、袋井インターチェンジ、掛川インターチェンジから車で約五十分と、都市部から非常に近いダムとして平成二十一年七月一日より供用を開始し、太田川流域や周辺の県民に広く親しまれています。
     しかし、静岡県は東海地震がいつ来てもおかしくないと言われ、その対策にも熱心に取り組んでいる現状があります。太田川ダムが都市部に非常に近いということは、いざというときの危険もまた近くに存在するということにほかなりません。太田川ダム下流域には大変多くの方々が生活していらっしゃいますから、その方々に技術やシステム的に安心と安全を約束していただくことが大事です。
     そこでお尋ねいたします。太田川ダムの非常時の危機管理体制についてわかりやすく説明をお願いします。
     次に、浜岡原子力発電所の五号機の耐震安全性についてお伺いいたします。
     川勝知事誕生から一年が経過し、静岡県の浜岡原発政策は以前の中部電力の絶対安全論から脱却し、安全が担保されない限り運転を認めない、国も中部電力も安全についての情報はすべて県民に開示し安心・安全の保障を強く求めると、その姿勢は大きく転換しつつあります。
     さて、六月定例会で我が会派の小長井議員が、浜岡原発五号機の安全性が担保されるまでは運転再開を認めないことを求めました。小林危機管理監は、「何よりも安全の担保が必要、国の安全確認を待って検討する」と答弁し、安易な運転再開は容認しない姿勢を示しました。しかし中部電力は五号機の運転再開を急ぐ姿勢を続け、破綻した四月の安全宣言を若干手直ししただけのレポートを七月二十八日、原子力安全・保安院に提出し、浜岡原発は東海地震でも安全が確保されていると国の確認を求めました。これが七月二十八日と八月二十三日に開かれた地震、地質等の専門家二十七人で構成する保安院の合同ワーキンググループで検討の結果、なお検討が必要ということになり、中部電力が求めた安全のお墨つきは得られなかったことは、報道等で伝えられているとおりであります。
     こうした状況の中で私が疑問に感じるのは、八月二十五日、小林危機管理監が保安院を訪ね、「安全性が最重要なのはもちろんだが、いつまでも停止したままでは、原子力発電に対する県民の不安や疑念が膨らむ。停止から一年を経過したことを重く受けとめてほしい」と申し入れ、さらに面会後、「今のままでは四号機で計画中のプルサーマルにも影響しかねない」と懸念を示したと新聞が報道したことです。今までの方針とは違う印象を強く受けましたが、県は方針を転換されたのでしょうか。
     そこで質問の一つ目として、八月二十五日保安院訪問の真意は何か、県は安全第一の姿勢を転換したのか、それに対して保安院の回答はどうだったのかお尋ねいたします。
     次に、中部電力の原発敷地周囲の地下探査結果報告に対する検討を続けている保安院の合同ワーキンググループは、七月二十八日の第五十回会議で委員会の検討課題五十九項目について中部電力の未回答あるいは再回答必要項目は二十九項目にも上り、翌月八月二十三日の第五十一回会議での検討課題六十八項目中未回答あるいは再回答必要項目は三十二件とのことですが、国から安全であると保証されて運転されていたはずの浜岡原発敷地地盤で、なぜこれほどの安全にかかわる未解明部分があったのかと不思議でなりませんし、安全・安心が脅かされることでもあります。
     そこで二つ目の質問として、保安院の検討終了後の県民に対する詳細説明は知事も約束されており、保安院も了承しているとされていますが、駿河湾地震後一年余を経過しても運転再開ができない状況について県民にきちっと報告をすることが必要だと思います。中部電力の一方的な安全宣言だけに任せないで、県、あるいは県と国共催で浜岡原発の地下調査に関する中間報告会等を開催する必要があるのではないでしょうか。県のお考えをお尋ねいたします。
     次に、静岡県職員の懲戒処分の基準についてお伺いします。
     年度末から今年度に入って、教職員の事件や不祥事などが新聞紙上で目立ちますことは、我々県議会といたしましてもざんきの念にたえないところであります。昨年一年間の教育委員会関係の懲戒処分者の数は十名、今年度に入り九月二十二日までの時点で七名が懲戒処分を受けています。教育委員会の場合、懲戒処分は主に四段階に分かれていて、一番軽い処分が戒告、そして減給、停職、一番重い処分が免職となるわけです。そして、適宜日ごろの勤務態度や非違行為後の対応等を含め総合的に考慮の上、判断するものとするとされています。
     一方、知事部局の県職員の懲戒処分者は、平成二十年度で三名、平成二十一年度で八名が懲戒処分を受け、今年度は今のところ処分者は出ていないという状況です。昨年度の処分の内訳を見てみますと、戒告が三名、減給一カ月が二名、停職三カ月が一名、免職が二名となっておりますが、私のところにもよく寄せられる世間の声としては、どなたも一様に公務員の処分は甘いというものばかりです。そのようなときに私は、確かに民間に比べると甘いと思わなくはないけれど、それぞれに規定があって、その枠の中で総合的に判断していることだからと話をすることもあり、改めて当局にその基準を問い合わせたところ、知事部局の県職員には懲戒処分等の明確な基準がないということが判明しました。それでは今までの処分は、身内が裁量のみで判断し処分していたということになり、甘いと言われても仕方ないと考えます。基準がないというのは、県民に対して明確な説明ができない、説明責任が果たせませんし、処分された側にとっても不公平感が出てしまうことも考えられます。
     教育委員会には、静岡県教職員懲戒処分等の基準というものが、平成十九年四月に施行されていますが、知事部局の県職員には、交通事犯の懲戒処分の基準が平成十七年六月に施行されただけで、今もなお懲戒処分の基準が存在しない現状にあります。私は一刻も早く公人としての矜持が感じられる、みずからを律するような基準を策定する必要があるかと思いますが、いかがお考えになりますでしょうか。
     次に、脳脊髄液減少症の実態調査についてお伺いいたします。
     脳脊髄液減少症は、交通事故やスポーツ外傷等、身体への強い衝撃により脳脊髄液が漏れ減少することにより、頭痛やめまい、耳鳴り等、多種多様な症状があらわれるというもので、その治療法であるブラッドパッチ療法はいまだに保険適用されておりません。現在、国においては二〇〇七年度に、脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究事業が始まり、目標としていた百の症例が集まり、本年度内には中間報告をまとめ、これまでなかったガイドラインの作成に本格着手することになっています。
     学校生活の中で起きた事故が原因で脳脊髄液減少症になってしまう子供たちも存在し、さらにこの疾患自体余り知られていないこともあり、教育現場で先生方が間違った対応をしてさらに二次被害を及ぼすという悲劇につながったケースもあると聞いています。そのような状況の中、教育委員会ではこの脳脊髄液減少症の存在を職員に知らせるために、小中学校の保健主事や養護教諭の研修会等や教職員の手元に届くような各種のツールなども利用し、周知を図られてきたことは承知しています。
     千葉県では、昨年、脳脊髄液減少症の子供たちがどこにどれだけ存在しているのかという実態調査が行われております。県教育委員会として、今後の脳脊髄液減少症の子供たちへの対応や教職員や保護者等への疾患の周知などに役立てるために、県内の脳脊髄液減少症の子供たちの実態調査を行い現状把握する必要があると思いますが、いかがお考えでしょうか、お尋ねいたします。
     次に、教師の社会人教育についてお伺いいたします。
     川勝知事は、マニフェストの三つの改革の柱の一つに教育改革を掲げ、「平太が静岡の“宝(人材)”を育てます」とうたっていらっしゃいます。教育とは、まさしく人づくりにほかなりません。教育という政策の目的は人づくりであり、最終受益者と対象は県民一人一人であります。
     教師は、一般的には大学で教員養成課程を学びその単位を取得し、教員採用試験をパスして学校の先生になれるわけです。教員採用後はさまざまな研修により新しい理論や情報、知識、教養を修得していると思いますが、しかしいずれも座学が中心であり、残念ながらさまざまな現場、社会の実態を体や肌で感じ体得しているとは言えません。若冠二十二、三歳の学校出たての若者が一人前の教師として教壇に立つのに違和感を覚えるのは私だけではないと思います。民間企業の感覚で言えば、まず社会人としての教育から始め数年かけてやっと一人前の企業人として育て上げるのが通常です。そのためには当然コストや時間がかかります。
     私は、新人の教師には、三年から五年という一定の期間は職業訓練及び育成期間として学校やクラスの運営の仕方を学習しながら、授業では担任は持たずに授業の助手を務める副担任として勉強してもらう、またその期間内には民間企業等にも長期派遣し、社会勉強を実体験として経験してもらう、そういうひとり立ちするための準備期間が現代だからこそ必要だと感じます。教育は知識云々の前に教師の人格こそが教育だと思うからです。このような制度を国との関係でできないのであれば、県単の施策として行ってもよいのではと考えるほどです。
     確かに今、教育委員会では教員の民間企業等社会体験研修事業を行っていることは承知していますが、先生になるための勉強と経験、人格形成、そしてまた人間的な魅力ある教師を育てることは人づくりにほかなりません。その教師がまた次世代の人材を育ててくれます。県はどのような考え方をお持ちなのかお尋ねいたします。
     次に、高校の再編整備と地域づくりについてお伺いいたします。
     現在、県教育委員会では、静岡県立高等学校第二次長期計画に基づき吉田高校と大井川高校の再編整備計画が進められています。この計画に対しては榛南地域の皆さんから二万六千名もの反対署名が提出されました。また六月に開催された吉田高校の存続を求める住民集会では、会場にあふれる多くの参加者で熱気に満ちた活気あふれる集会となり、榛南地域の子供たちの教育環境を守るために吉田高校の存続を求める大会宣言が採択されました。
     この集会の折、客席から挙手をされ、この榛南地域になぜ吉田高校が必要か歴史的な経緯も含めとても熱く語っていただいた三輪正彦様は、発言が終わるとその場に眠るように伏せられ、偶然居合わせた救命救急士の方々の懸命な応急措置のかいもなく、そのまま病院で息を引き取られました。あのときの発言は会場全体を鼓舞するすばらしい御意見でした。私たちは、三輪様の御遺志と情熱を心に刻み今後も活動していこうと誓い合った次第です。三輪様に心より感謝を申し上げこの場をおかりして御冥福をお祈り申し上げます。
     さて、このように榛南地域の方々は、子供たちとこの地域の将来のために吉田高校を残してもらわなければ困ると切実な思いを訴えています。この計画には、なぜ、おかしいと思うところが数多く存在しています。また県教育委員会の地元無視の強引な事の進め方にも、多くの方から非難や抗議の声が寄せられました。
     特に、富士山静岡空港の建設がこの地に決定し地元交渉の中で県側から、「臨空地域の文化・教育・情報・国際・研究等の機能の充実と、快適な生活環境の向上・充実など、都市機能の一層の充実を促進する」とされ、この榛南地域から国際感覚豊かな人材を育てる、また教育が充実するという説明のもとで計画が推し進められました。当然、市町においてもその方向性のもとで教育を初めとする地域づくりを推し進めてきた経緯があります。
     現に吉田町では、教育は地域の未来を築く投資であるという考え方のもと、小学生の図書費一人当たり千五百円、中学生では一人当たり二千五百円の予算を組み、また子供たちの理科離れ対策として小さな理科館の建設など、財政が厳しい中にあっても子供たちの教育環境の整備には特に力を入れて取り組んでいます。
     しかし、このたびの高校再編整備計画では、今までの方向とは全く逆の方向に強引にかじが切られました。空港建設でも地域全体が翻弄されやっと落ち着きを取り戻したやさきに、今度は教育環境が危機にさらされている、空港の負の遺産を背負いながら、この地の地域づくりを行政と市民、町民が一緒になって推し進めてきた中で、これまでとは整合性がとれないことを強引に決定してしまうという愚行に憤りを感じています。空港建設と教育は担当部署が違うからというのは、当然理由にはなりません。
     そこでお尋ねいたしますが、県教育委員会では高校の再編整備計画の策定において、県行政が進めてきた方向性とそれを受けた市町が住民とともに進めている方向性についてどう議論しどう考慮したのか、整合性は存在するのか、今後も新たに計画を立てられることもあるでしょうから、その点も含め御答弁願います。
     最後に、県民の捜査協力確保のための取り組みについて県警本部長に伺います。
     三月末に安村本部長が着任され、その所信として精強な警察の構築を第一の重点に据えられ、悪と対峙し社会正義の実現のための強靭な執行力を備え、警察官個々の体力、気力の練成、向上に努め真に精強な第一線警察を構築してまいるというお言葉に、大いに期待をしているところであります。
     近年の県内の刑法犯認知件数は平成十四年をピークに七年連続減少しており、検挙率も昨年度は三五・二%と過去十年間で最高という数字でしたが、昭和五十年代以降の検挙率が五〇%を超えていたことを考えれば、警察にはもっと頑張ってもらわねばならないと言わねばなりません。とはいえ昭和の時代と現代とでは、例えば携帯電話やインターネットの普及、核家族化の進行、社会のグローバル化や交通インフラの充実など世相が大きくさま変わりしており、犯罪の質や形態も悪質巧妙化していることは周知の事実です。
     また、個人の権利意識の高まりや地域の連帯の希薄化などにより、聞き込み捜査をしても必要な情報が得られず現場の捜査員は苦労しているという話も聞かれます。今も昔も事件を解決するには県民の協力が不可欠であろうと考えます。県民に捜査協力をいただくことで犯人に直結する、もしくは犯人逮捕に有力な情報が得られて、早期または一日も早く検挙することができれば、県警が目標として掲げる安全で安心できるしずおかの実現に一歩近づくと思います。
     そこで、県民の捜査協力の確保に向けた県警の取り組みについて伺い、ひとまず私の質問を終わります。(拍手)
    ○議長(天野進吾君) 川勝知事。
           (知事 川勝平太君登壇)
    ○知事(川勝平太君) 大石裕之議員にお答えいたします。民主党・無所属クラブとして代表質問はこれで最後になるということでございましたけれども、危機意識に裏打ちされた、しかし未来志向の、そして地域への愛情にあふれたすばらしい御質問であったと存じます。
     初めに、士民育成塾と静岡地域学についてであります。
     富国有徳の理想郷をつくるにはどうすればいいか、その基礎は人づくりにあると思います。その人をどのような言葉で呼ぶかと。市民を中心に市民参加の地域づくりをしていきましょうというような言い方がされる場合の市民というのは、これは「都市の民」と書いて、もしこれを英語で表現すればシチズンになると思います。
     しかし、そうした市民も重要ですけれども、そのような市民がどのような学徳を備えているかということが必ず問われると思います。そうした中で、立派な人物というのは、県議が御紹介くださいました静岡・未来・人づくり塾におきましても、未来づくり学士会というものをおつくりになり、地域づくりに関する基礎的な研さんを積み、そして地域づくりの実践活動について必要な助言、支援等を行うことのできる人物のことを未来づくり学士と呼ばれたということですが、その言葉遣いにあらわれておりますように、学んで立派になった人物ということで武士の「士」というのが書かれていると思います。これを英語に直すとすれば、レディーズ・アンド・ジェントルマンということになると思います。すなわち社会的に尊敬される人たちのことではないかと思うわけです。
     しからば、このような人たちをどのようにすればつくれるかということでございますけれども、これは勉強しなくてはなりませんけれども、大事なことはどのような勉強をするかということです。そして私たちが明治五年以降学んでいた学問は、欧米で発達した学問、これをしっかりと身につけることでした。それは欧米においてそうした学問をベースにしてつくられた国づくりというものがすばらしいという判断に立って、我々も欧米に匹敵するような国になるという目標を立てて、それにふさわしい学問として欧米の学問を身につけるようになってきたということでございます。
     そうした学問は、今や日本の国内でしっかりとした学習指導要領もできて、そうしたものに基づいて各教科書をつくる会社がつくる教科書の内容を見ましても、会社の個性は違っていてもほぼ同じような内容になってきたということで、教科書が薄い厚いの区別はあるにせよ、学んでる内容は同じでございます。私は、そうした学問はようく突き詰めていけばこれは欧米の学問だということで、一言で西洋の「洋」を取った洋学だというふうに言ってるわけです。
     これは必要でございますが、しかしそれだけで十分かということになります。富国有徳の地域づくりということになりますと、地域のことを知らないで地域をつくることができません。吉田町の実態を知らないで吉田の未来を語ることができないということでございまして、したがってどうしてもそうした学問は、これまでの我々が身につけた学問を必要条件としつつさらに新しい学問が要るということで、それをどのように名づければいいかということになりますと、地域に密着した学問として地域学というのがいいと思います。
     そうした思考は全国各地にございまして、南の方では沖縄学、鹿児島学、長崎学、あるいは京都学、金沢学、広くは東北学といったようなものも本として出されたりしているわけです。さらに長崎検定、鹿児島検定、京都検定、金沢検定などそれぞれの地域を中心にした人々が自分たちの生活する、あるいは自分たちの愛される地域をいろんな人がどのぐらい知ってるかということをお互いに確かめ合いましょうという、そういう潮流もございます。
     そうした中で、本県におきましてはどのような名称がふさわしいかということになりますと、静岡学というのがすぐに思いつくことでございますけれども、静岡学ということになりますと、愛知学とか神奈川学とか江戸・東京学とかというものと並ぶワン・オブ・ゼムになります。
     しかし、そこにユニーク性を出し、かつ普遍性を持つためには別の言葉があってもいいと思いますが、それは例えばふじのくに学というふうにいたしますれば、ふじのくにというのは、これは日本のことでもございますし同時に静岡県のことでもございますから、ふじのくに学の基礎をなす例えば富士山というものを調べようということになれば、北海道の利尻島にある山がなぜ利尻富士と呼ばれ、あるいは蝦夷富士というものが北海道にあったり津軽富士があったり、そうした全国各地にございます富士山への、ふるさと富士への関心も持たないといけないということになります。
     そしてまた、富士山という、そういう自然の美しい山体がいかにして形成されたのかということになれば、これは火山学、そしてそうした火山は地震も起こしますので、したがってプレートテクトニクスというようなものも視野に入ってくるというふうに思うわけです。ですから私は、これまでの学問がその根っこのところに欧米の地域というものをベースにしている、あるいは欧米の培ってきた価値というものがベースになるということを踏まえそれらを我々が取り込みながら、しかしそれらから自由になり、かつ我々の地域に有用な学問を立てねばならないというふうに思っているわけです。
     それは、例えば自然科学などは普遍的な学問だと言われるかもしれませんけれども、自然科学というものを哲学的基礎というのがございますけれども、これはヨーロッパにおきまして大変深刻な学問的課題になりまして、なぜ重力の法則が真理なのかということを哲学的に考えねばならないということで、カントが「純粋理性批判」の中で先見的な感性の形式として、直感の形式として空間と時間というものが初めから与えられていると。空間と時間というのは何かというと、これは無限の空間、無限の時間という神そのものであるというようなところに行き着くわけです。
     したがいまして、自然科学といえどもこれまた一つのヨーロッパ的神学の変形とも見ることができるわけでありまして、ましてや社会科学となりますと社会科学の父と言われているのはマルクスですが、マルクスの「資本論」が当てはまるのは西ヨーロッパのみと御自身が言われている。さらにまた経済学の父と言われているアダム・スミスの「国富論」というのになりますと、これはイギリスの国民経済がいかにして発展するかということについて論じた中身ですから、いずれもそれぞれの地域性というものを持ってるわけです。
     ですから私たちはそういう地域性に学び、そうした学問を大学においてしっかりと体系的に学んでまいりましたけれども、それだけにとどまらず日本がそれをマスターした以上、そしてまた我々がヨーロッパと違う地形の中で生きている以上、そうした風土、そしてそこで歩んできた歴史、文化、伝統、そして産業、そして未来というものを考えねばならない時期に来ているということで、私は地域学というものが必要だというふうに思っております。
     鹿児島に十年ほど前から招かれて半年に一度、そういう勉強会をしてきたのも、どこの地域も同じような機運を醸成しておりまして、本県もそろそろそういう醸成といいますか、そういう時代を持つべきだと。だれが教えるか。学校の先生はそういうこと知りません、必ずしも。すべてそういうことに通暁してるわけではありませんので、したがって大石先生のような地域のリーダー、それはここだけでも七十名以上いらっしゃる。そしてそれは各地域、それぞれの自分の人生体験に裏打ちされた技術であるとか経験であるとか人生訓であるとかというものを持たれているので、地域の学問は地域で育てなくちゃいけない。
     そうした中の一つとして、例えば伊豆半島でジオパークにしようということになりますと、それを勉強するのは学校の子供たちだけかと、先生だけかというとそうではありません。地域の人全体になりますから、したがって我々は全員がやはり地域学を勉強する学生だというふうに思うべきだと思うわけです。
     ですから、「一に勉強、二に勉強、三に勉強」というのは、これは学校だけが勉強の現場ではなくて、日々の生活が学びの場だというふうにとらえ直して、そしてそれを次世代に継承していくというような、そういう志を共有していこうということでございます。そういう意味におきまして、先駆的になされましたこの静岡・未来・人づくり塾というものは、これから少しく自覚的に本格的な展開を教育長としっかりスクラムを組んでやってまいりたいと、こう思っている次第でございます。
     次に、私の考える平和と静岡県の役割についてであります。
     八月七日、八日をかけまして、私は富士山に登頂を試み神々しい景観を仰ぎ見ることができまして、まさに富士山の山頂に立ったときに平和のシンボルとしての富士山への思いが深まり、この思いを二月二十三日の富士山の日に、世界に向けてあらわしてまいりたいと決意した次第でございました。
     平和についてどう考えるかということでございますが、憲法第九条における平和というものもそれには背景があります。国連憲章であるとか、あるいは大西洋憲章であるとか、あるいは不戦条約の背景にある思想であるとか、さかのぼれば「永久な平和について」と書いたカントの書物であるとか、さらにさかのぼればそもそも十三世紀の、あるいは十四世紀のヨーロッパの人が平和と言ったわけではありませんで、突然そういうことを言い始めるのは十七世紀以降になってからです。そしてそれもしっかり調べていくと一六四八年以降だと。厳密にはそれは一六二五年以降だと。「戦争と平和の法」という法が書かれて以降のことと。「戦争と平和の法」というのはこれはどこに淵源があったかというふうに調べていきますと、イスラムの考え方のヨーロッパにおける応用であると。ダール・アル・イスラーム、ダール・アル・ハルブ――戦争の家、平和の家、あるいは戦争の世界、平和の世界というそのイスラム教の方々が信じていた世界観を換骨奪胎したものが、世界を平和と戦争という観点で見るという見方に結実させたのがヨーロッパにおける世界観です。しかし私どもはそれを持っているので、第九条にもそれが反映されているわけでございますけれども、しかしそれだけではないと。
     世界を見る見方の中には、例えば日本の場合に江戸時代に世界をどう見ていたのかというと、中国の思想の影響を受けておりましたので欧米の人が来たときに野蛮な者が来たと。自分たちは中華、世界の中心であるということを思想として持っているので、夷狄を払う攘夷思想ということになったわけですね。ですからそこには世界を見る見方が、中華と夷狄といいますか、文明と野蛮という観点で世界を見る見方というのがあります。中世に、あるいはそれ以前に行けばこれは仏教的な世界観になります。したがいまして世界を見る見方というのは必ずしも一つではない。
     しかし、これからの時代に何が必要かといったときにヨーロッパ的世界観というものは極めて重要です。その世界観を日本人は明治以降、自分たちのものとして今や平和憲法もしっかりとこの国に根づいていますので、それをベースにしてなおかつ日本的な平和への貢献をどうすることが適切かということを考えねばならないというふうに思います。
     そうしましたときに、私はヨーロッパがつくり上げた文明は戦争と平和、そして戦争のない状態を平和と言っただけで、議員御指摘のように第二次大戦以降も百五十回も戦争があったそうですけれども、大国同士は戦争をしていません。いわゆる地域紛争とかそういう代理戦争のようなものはありましたけれども、大国同士は戦争をしていないのでありますが、それ以前はもっとすごいです。十七世紀から二十世紀に至る戦争というのは、もうほとんどヨーロッパで戦争のない年はないくらいです。それぐらい戦争しているということでございますが、そうした世界の中に日本は入ってる、日本は軍事力を身につけ、また軍事力は経済力によってしっかりと支えなければならないので、富国強兵というものを我々は実現したと思います。
     しかし、その功罪も我々は知ったと。軍事力による敗戦。結果的にその軍事力で、今、国づくりをしている朝鮮民主主義人民共和国のように背景にすごい貧困があると。一方、富国強兵を、富強という名のもとに国是としている中国の場合も、今、必ずしも世界の安定勢力とは十分にみなされているとは思えません。
     したがって我々は、自分たちが信じかつ普遍的であるような、そういう平和の理念というのをつくらねばならないというふうに思うわけですが、私は一言で言えば冷戦が終わった後、文明の衝突ということが言われた。それぞれ文化をベースにして世界から引きつけるような文化を持っているところが文明と言われるということでございまして、日本はその文明の一つというふうに言われている。そして初めて文明という言葉が、世界を見る一つの価値の基準になったと。
     そうすると、文明に対して反対は野蛮でございますから、いかなる文明をつくるかということでございますが、これまでの文明は力の文明、明らかに富国強兵というのは経済力と軍事力ですから、軍事力は破壊する文明、経済力は市場を奪う文明ということでこれは力の文明です。
     それに対して、文明の基礎に文化があるという基礎理論がありますので、そうすると文化というのはどういう力を持ったときに、真にその文明力を持つかということになりますと、引きつける力だと。引きつける力の最高のものは何かというと美しいということです。したがってそれは魅力ということになる。
     魅力の最大のものを我々は何に求めたのかというと自然に求めたと。自然の美に我々は感化されて、そしてそこで信仰、あるいは芸術というものを生んできた。そのシンボルが富士山だということでございますので、私はその日本のそういう文明というのは力の文明から美の文明へという方向性を示している。そうした中で富士山があらわしているのは、全体、遠景として、また孤立峰として、融通無碍といいますか、円融無碍というふうに言うことができるかもしれませんけれども、どこから見ても相和しているといいますか、美しい存在であるということでこれは和の文明をつくっていかねばならないということで、それを体現したような言葉を、文章を平和宣言の中に盛り込みたい。
     静岡県は、そんな富士山を仰ぎ見る存在として富士山が最も美しい姿をお見せになる、春夏秋冬の中における冬、その冬の最後、二月の下旬、二月二十三日、富士を見る――富士見、その富士山の日というときに、これをするのがふさわしいというふうに思っております。
     続きまして、世界お茶まつり二〇一〇の開催についてでございます。
     世界のお茶の消費量はこの十年間に約三割増加いたしました。三百万トン弱から三百八十万トンに増加しております。そしてまたそのうち緑茶が占める割合が六十七万トンから百二十万トン弱にいっておりますので八〇%弱、緑茶が伸びているということでございますので、これはお茶どころとしての本県を取り巻くすばらしい条件なんですが、それをどのように発信していくかが問われているということでございます。
     そうした中で、この世界のお茶まつり二〇一〇がその契機になるということで、ことしは第四回目ということでございますが、同時に二十一世紀最初の十年間の締めくくりであり、次の十年間も静岡がお茶の中心地として世界をリードしていくための出発点となる極めて重要なお茶まつりであると位置づけて、産学民官が一つになって取り組んでまいるところでございますが、議員も御指摘のようにお茶は単に飲茶ということだけではないと、その歴史についても言及されましたけれども、その利休の時代に至るまでに、私は数寄屋づくり、あるいは懐石料理、あるいはお茶の、抹茶のところからいく、路地としての庭づくり、そして器、生け花、さらにおもてなし、つまり社交、いわゆる人間社会の総合的芸術として生活を芸術化する、そのようなものとしてお茶の文化があるので、このお茶の文化を現代に合った形に変えるということが今、求められているのではないかと。本県の伝統を現代にどのように生かしつつ、革新して世界に通用するものにしていくかということを求められていると思います。
     必ずしも畳の上で、利休があるいは茶道が確立したその立ち居振る舞いだけがお茶の文化の唯一のものではないと思いますので、お茶のインストラクターという形のやり方もありますので、私はこの新しいお茶の文化を本県がこのふじのくにの、借景といいますか景観を活用しながら、していくためには食材を利用する、食の都にしていくというのはそうしたお茶を軸にしたものになるのが一番ふさわしいと思っておりまして、食の都づくりの基礎に実はお茶の文化というものを据えていくという、そこのところの工夫を今、必死でしていると。この次の十年間で、緑茶がこれまでの十年間伸びてきたと。これからは伸びるものをどのように一つの形にしていくか、形にしてその形が美しければ型になります。そういう本県ならではのお茶の文化の型を発信してまいりたいというふうに強く決意しているところでございます。
     そうしたことで、本県の県立大学の文化芸術大学に茶の湯の最高権威をお招きいたしましてその啓蒙活動にも期待したいということでございますので、これは私自身もお茶の文化を学びながら、本県が世界のお茶の文化の発信地になるように取り組んでまいりたいと存じます。
     その他の御質問につきましては、関係部局長、教育長から御答弁申し上げます。
    ○議長(天野進吾君) 石川健康福祉部長。
           (健康福祉部長 石川俊一君登壇)
    ○健康福祉部長(石川俊一君) 看護師養成所の専任教員の養成についてお答えをいたします。
     高度化する医療現場を支えることができる質の高い看護職員を養成していくためには、臨床経験豊かな教員の安定的確保とともに、専任教員自身が最新の情報を得て技術を常に磨くことが必要であり、教育と病院の現場を一定期間で交流できる仕組みをつくることは重要であると認識をしております。しかしながら看護職と教員職との採用形態の差異や給与格差が存在することに加え、看護職員全体が不足していることなどの課題もあり、病院と養成所の人事交流が難しい看護師養成所があることも事実であります。
     県といたしましては、本年度、静岡県看護協会や看護師養成所の方々と検討委員会を立ち上げたところであり、この中で専任教員の計画的な養成のため、看護教員養成講習会の開催準備を進めてまいります。あわせて専任教員を供給する側である病院の御協力も得ながら、質の高い教員を養成するためのカリキュラム作成や、教育現場と病院との交流方策などについて検討してまいります。
     次に、難病患者の就労支援についてであります。
     難病患者や家族の方々からの就労関係の相談につきましては、他の日常生活上の相談を含め、県が設置している静岡県難病相談支援センターにおいて対応しておりますが、就労する意欲はあっても就労の機会やきっかけを得られない方などからの相談が数多く寄せられております。
     県といたしましては、難病患者への就労支援のあり方等を検討するため、本年二月に同センターや保健所、ハローワークなどの労働関係の行政機関、難病の専門医師、患者団体代表などで構成する静岡県難病患者就労支援検討会を設置し、これまでに三回の検討会を開催いたしました。この中では、国の難病患者就労支援事業や雇用開発助成金の仕組みなどを踏まえた上で、病状に合った仕事の見きわめや雇用側の難病に対する理解不足など、難病患者の就労に関するさまざまな問題点や課題等について関係者の間で共通認識を持つことができました。
     県といたしましては、今後、これらの問題点や課題を踏まえ、雇用側との共通理解を深めるため個々の病状や日常生活上の制約などを記入した相談シートの作成などの検討を進め、難病患者の就労に役立ててまいりたいと考えております。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 岩ア静岡県理事。
           (静岡県理事 岩ア富夫君登壇)
    ○静岡県理事(岩ア富夫君) 富士山静岡空港についてのうち、交付金制度の創設についてお答えいたします。
     富士山静岡空港は本年六月に開港一周年を迎えることができました。これもひとえに多くの関係者の皆様方の一方ならぬ御支援、御協力のたまものであり、とりわけ空港周辺自治体や地元住民の皆様には、折に触れ空港の活性化のためにさまざまな形で御協力をいただいておりますことを感謝申し上げます。
     さて、空港周辺地域の振興につきましては、航空機騒音を初めさまざまな影響を軽減し、空港と周辺地域が調和ある発展を図っていくことを目的として、隣接地域振興事業費補助金制度を創設するとともに、静岡県空港建設基金に百億円を積み立て、島田市、牧之原市及び吉田町が行う道路整備や公民館建設等の生活基盤整備を初めとする地域振興事業に対し、平成七年度から助成を行ってきたところであります。
     さらに、現在策定を進めている空港ガーデンシティ構想においては、東を吉田公園、西は旧東海道金谷宿の石畳坂までと当面位置づけ、牧之原台地の広大な茶園や大井川越しに望む富士山等、豊かな自然や志太榛原ならではの美観、景観を生かした空港周辺地域のにぎわい創出を富士山静岡空港の魅力を高める有識者会議を中心として、周辺自治体、地元住民の皆様とともに具体化に向けて検討しておりますが、これも空港周辺地域の調和ある発展に寄与するものと考えております。
     こうした中、今年度、県では島田市、牧之原市及び吉田町とともに実務者による隣接地域振興事業費補助金制度のワーキンググループを立ち上げ、制度創設時には想定できなかった地域の皆様方のさまざまな御要望についても本制度を活用してこたえることができるよう、今後の制度のあり方について検討を重ねているところであり、これらの検討結果も踏まえ補助金制度の改善に向けて努めてまいります。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 出野文化・観光部長。
           (文化・観光部長 出野 勉君登壇)
    ○文化・観光部長(出野 勉君) 富士山静岡空港についてのうち、空港アクセスとしての新交通システムの導入についてお答えいたします。
     議員御指摘のLRT――ライト・レール・トランジットやDMV――デュアル・モード・ビークルなどの新しい交通システムは、高齢者や障害者に優しく環境面にもすぐれ地域活性化の観点からも全国各地で注目されており、県内においても静岡市ではLRT導入可能性の調査が予定され、また富士市ではDMV導入の検討が行われているほか、天竜浜名湖鉄道においてもDMVの実証実験走行が行われました。
     しかしながら、新交通システムにつきましては多額の投資を要するケースが多く、利用者のニーズを踏まえた費用対効果の分析のほか、技術的、制度的な課題の解決とともに、地域全体のまちづくりと一体となった活用のあり方などについて十分に議論する必要があります。このようなことから新交通システムの導入に関しましては、富士山静岡空港のさらなる利活用を促進するため、定時性や快適性、既存駅との接続など空港アクセスとしての利便性向上の視点や、駿遠線の跡地活用も含めた地域振興や経済発展の視点からの活用につきまして、地元の市町、事業者、関係機関と連携し研究してまいります。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 森山交通基盤部長。
           (交通基盤部長 森山誠二君登壇)
    ○交通基盤部長(森山誠二君) 太田川ダムの地震等による緊急時の危機管理体制についてお答えいたします。
     太田川ダムは、入念な調査、設計に基づいて建設され、予想される東海地震や東南海地震などの大規模地震を対象とした詳細な解析を行いその耐震性能を確認するとともに、ダム完成前には異常の有無を確認するため、試験湛水により実際にダムの最高水位まで水をため、その安全性を確認しております。
     平常時の安全管理といたしましては、ダム本体及び貯水池周辺の巡視と計器による観測を定期的に行うこととしておりますが、ダムの位置する森町で震度四以上を観測した場合などの緊急時には、速やかに臨時点検を実施して安全を確認することとしております。その際、地域の安全や安心に影響を及ぼすことが懸念される場合には、緊急時情報伝達マニュアルに従い市町や警察、消防等の関係機関に必要な情報を速やかに伝達し、同報無線や緊急車両を活用して住民に対する注意喚起や避難勧告を行うこととなります。
     県といたしましては、平常時から情報伝達訓練を初め、最も大切な初動期の情報収集や応急対策、県民への呼びかけなどについて、今後とも迅速かつ的確に対応できるよう危機管理に努めてまいります。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 小林危機管理監。
           (危機管理監 小林佐登志君登壇)
    ○危機管理監(小林佐登志君) 浜岡原子力発電所五号機の耐震安全性についてのうち、初めに原子力安全・保安院に対する県の姿勢についてお答えいたします。
     原子力発電所につきましては、安全性が担保されて初めてその存在が認められるものであり、安全を最優先するという県の方針には何ら変更はございません。また想定されます東海地震に対する五号機の安全性について、国の評価をいただくまでは運転再開に応じないとの方針にも変更はございません。
     これまでも、安全にかかわる重要な課題が生じた場合には、県民の安全・安心を確保する観点から、節目節目に原子力安全・保安院を訪問し、国の対応状況や見通しなどについて情報交換や意見交換をしてきたところであります。去る八月二十五日には、五号機が停止して以来一年を経過したこと、また停止期間が長引いていることに対し地元に懸念の声があることを踏まえ、耐震安全性の評価に関する国の検討状況や今後の見通し等を確認するため、原子力安全・保安院を訪問をいたしました。
     原子力安全・保安院からは、「中部電力の報告について合同ワーキンググループでの審議が続いており、国としての評価をまとめるまでにはいましばらく時間がかかる」との回答があり、「中部電力に対して、引き続き審議に必要な資料の作成に努めるよう県からも要請してほしい」旨のお話をいただきましたので、中部電力にその旨お伝えをいたしました。県といたしましては、今後も五号機の安全性の評価に向けた国の動きを注意深く見守り、地元四市とも連携して適切に対応してまいります。
     次に、地下調査に関する中間報告会の開催についてでございます。
     浜岡原子力発電所の地下構造に関する調査結果につきましては、随時、国の合同ワーキンググループに報告され専門家による審議が行われておりますが、県におきましても、調査の進捗状況に応じて中部電力から公開の場で説明を求めてきたところでございます。また中部電力では、独自に説明会を開催するなど、地元住民に情報を開示する努力がなされているものと承知をしております。
     県では、五号機の今回の事象につきましては、地下構造に関する調査結果も含め、地域住民や県民の皆様が安心できるよう丁寧な対応が必要であると考えておりますので、今後も国の審議の進捗状況を見ながら、必要に応じて公開の場で国や事業者から納得のいく説明を求めてまいります。以上でございます。
    ○議長(天野進吾君) 丸山経営管理部長。
           (経営管理部長 丸山康至君登壇)
    ○経営管理部長(丸山康至君) 静岡県職員の懲戒処分の基準についてお答えいたします。
     交通事犯については、事犯の内容、規模、法令上の罰則の有無等の考慮すべき事項が類型化しやすいことから、交通事犯懲戒処分等取扱要綱において懲戒処分の対象及びその量定の基準を定め、運用しているところであります。また交通事犯以外の法令違反や義務違反等の非違行為につきましては、事犯の内容等が個別事案ごとに相違し、懲戒処分の対象及びその量定の基準を一律に規定することが難しいこと、また事犯に対する社会的評価が時代とともに変化することも考慮し、これまでは一定の基準に定めることなく、本県、または国、他の地方公共団体における処分事例等を参考に個別具体的にその取り扱いを判断をし、厳正な処分を行ってまいりました。
     しかしながら、公務員の不祥事に対して厳しい目が向けられる中、職員一人一人が全体の奉仕者として高い倫理観を持って職務を遂行するよう促すこと、また県民に対しても非違行為を行った職員に対する処分の透明性を確保することがますます重要となっております。したがいまして年度内を目途に交通事犯を含めた総合的な懲戒処分に関する基準を策定し、非違行為に対するより一層厳正な対応に努めてまいります。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 安倍教育長。
           (教育長 安倍 徹君登壇)
    ○教育長(安倍 徹君) 脳脊髄液減少症の実態調査についてお答えいたします。
     平成十九年度に文部科学省から脳脊髄液減少症についての情報提供があり、各県立学校及び各市町教育委員会に周知するとともに、養護教諭や学校保健担当者の研修会で症状や対応方法等を説明してまいりました。本年度はさらに、教育広報誌Eジャーナルしずおかを通じて広く周知を図ったところであります。
     今後、より適切な対応を行っていくためにも、また保護者等へのさらなる周知を図っていくためにも、学校における実態を把握することは必要であると考えておりますので、市町教育委員会にも御協力をいただき、毎年、各学校で実施しています保健調査の中で、脳脊髄液減少症と診断されている子供の状況等を把握してまいります。
     今後も脳脊髄液減少症を初めとするさまざまな疾病に対し、各学校の適切な対応により、子供たちが安心して学校生活を送ることができるよう関係機関と連携を密にとりながら、引き続き研修会等で共通理解を図るとともに、迅速な情報提供を行ってまいります。
     次に、教師の社会人教育についてであります。
     本県の教員採用におきましては、年齢制限を設けていないことから大学新卒採用者は全体で三割程度にとどまっており、また一般選考とは別に国際貢献活動経験者や博士号取得者などを対象にした選考を行うなど、多様な人材確保に努めているところであります。
     採用後におきましては、教員としての資質向上に向けた取り組みは常に必要であることから、初任者研修における校内研修では指導担当教員が直接指導を行い、また校外研修では、学級経営や教科指導等に関する研修に加え、福祉施設や社会教育施設における社会奉仕体験の研修を行っております。さらに採用後二年目から五年目までの教員を対象に、指導主事や指導力のある先輩教員などが学校を訪問し直接個別指導を行うほか、経験豊かな同僚の教員が若手教員にかかわりを持つ研修機会の充実も図っております。
     今後も、教員の資質向上の方策につきましては、現行の研修の評価を踏まえ、また学校等からの声を聞きながら、民間企業への派遣や青年海外協力隊への参加促進なども含め研修の一層の充実を図り、多様な経験を積んだ広い視野を持った頼もしい教職員の育成に努めてまいります。
     次に、高校の再編整備と地域づくりについてであります。
     県教育委員会では、高校で学ぶ生徒の教育環境の改善を第一に考え、平成十七年三月に静岡県立高等学校第二次長期計画を策定し、教育環境の改善充実に努めております。魅力にあふれ活力ある教育活動を展開するため、高等学校につきましては一定の学校規模が必要であり、これまで五地区十校の再編整備を行い現在も五地区十二校の再編整備計画を進めております。吉田高校と大井川高校の再編による志榛地区新構想高校の整備につきましても、平成二十六年度の開校を決定し現在準備を進めているところであります。
     議員御指摘の地域づくりにつきましては、高校に通う生徒の通学圏も広域化しており、高校にとっての地域は市町単位ではなくより広くとらえておりますが、これまでも産業振興等の県行政の方向性と整合を図りつつ、新構想高校の教育内容等の検討を進めております。さらに市町の行政の方向性とも整合を図るため、地域の特色を生かしたコースや類型の設置等につきましても、広く保護者や関係団体の御意見、御要望等を伺い新構想高校の教育に生かしてまいります。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 安村警察本部長。
           (警察本部長 安村骼i君登壇)
    ○警察本部長(安村骼i君) 県民の捜査協力確保に向けた取り組みについてお答えいたします。
     近年、犯罪の悪質・巧妙化が進み、携帯電話やインターネットを利用した犯罪が発生しているほか、聞き込み捜査を端緒とした検挙も年々減少するなど、捜査環境を取り巻く情勢は厳しい現状にあります。警察では、これらの犯罪に対しましては、専従捜査体制を整備しサイバーパトロールによる違法情報の把握や取り締まりを強化したり、電磁的記録の解析等、最新の科学技術を活用した捜査を推進したりしているところであります。私が常々申しております悪と対峙する強い警察というのは、物理的な力において悪に負けないことは無論のこととして、知恵の面においても常にそれらを凌駕しなければならないということであります。
     一方、このような厳しい状況下にありましても、県民の方々の捜査協力が決め手となり早期に解決した重要事件も多くあります。具体的には、最近では、被害者の協力を得て振り込め詐欺の犯人を、いわばだまされたふり作戦により現場検挙するなどをしております。
     議員御指摘のとおり、警察が行う捜査活動には県民の方々の協力が不可欠でありますので、事件発生時における目撃者や事件関係者に対する協力要請はもちろんのこと、県警ホームページを活用した情報の提供依頼や犯罪情報の発信などの広報啓発活動と情報発信活動を恒常的に実施しているところであります。また重要凶悪事件発生時にはフリーダイヤルを設置し、協力を求めることとしております。
     さらに、毎年十一月には本県独自の施策として捜査活動に対する市民協力確保月間を設定し、職員の意識の向上を図るとともに、各警察署の管内実態に応じた広報啓発活動などを行っており、本年も実施に向けた準備を進めております。今後も、あらゆる警察活動を通じ捜査協力の確保に向けた取り組みを推進してまいります。以上であります。
    ○議長(天野進吾君) 二番 大石裕之君。
           (二番 大石裕之君登壇)
    ○二番(大石裕之君) それでは再質問をさせていただきます。時間も余りありませんので先に要望を一つ言わせていただきます。
     看護師養成所の専任教員の育成に関してでございますけれども、これは検討委員会を立ち上げられたということで、地域の病院によってそれぞれ専任教員の養成をどこまで行えるかというのは違うことは理解できるんですけれども、いろいろ話を聞くとやはり県も現場の声をしっかりと聞いていただいて、県として考えていること方向性もしっかり現場の方々に伝えていただくことも大事だし、現場の声を聞いていただくという相互の交流というか、情報、それぞれ思いを伝え合うことが非常に大事だなあというふうに思っております。その辺が少し欠けているかなという感じを受けておりますので、ぜひその検討委員会、もしくはそれ以外のところでもお互いに現場の声を聞いて、また県もしっかりと意見を言い合うというようなことで、そういった面でのリーダーシップを期待をしたいということで、ぜひよろしくお願いしたいということで要望させていただきます。
     あと、教育のほうに関してですが、教育長に御答弁をいただきましたが、教師の社会人教育というものはやられていることは事実なんですが、もう少し踏み込んだ形で人づくりのための人づくりという位置づけで取り組んでいただけないかというふうに思っておりますので、そこら辺を川勝知事のお考えをお聞かせ願えればなと思います。
     あと、高校の再編整備と地域づくりということに関しても今までどうしてもそこら辺はないがしろにされて、縦割りの中で地域がやってること、それは県とのかかわりでやってること、教育というのはまた別の柱だよというようなことで、ないがしろにされてしまってきたところがあるというふうに私は感じておりますので、そういった面に関しましても知事のお考えをお聞かせ願いたいと思います。以上で私の質問を終わります。
    ○議長(天野進吾君) 川勝知事。
           (知事 川勝平太君登壇)
    ○知事(川勝平太君) 県議の御質問にお答えいたします。
     まず、教員の社会人、社会教育ということについてでありますが、教育長がお答えしましたとおり教師の採用に当たっては、国際貢献活動であるとか、高い学歴を持っているということをこれからは優先してまいりたいと思ってるところでございますが、基礎にございますのは、教育の一番の要諦は教師が立派な学徳を備えた人であるということが基本であります。そのためにどのような教育をするかということに、中身、カリキュラムにかかわる以上にいかなる教師像を理想とするかということだと思うんですよ。
     私は、一番これまで欠けていたのは、教員の国際性ではないかというふうに思っておりまして、そのために、青年海外協力隊であるとかそうしたことに教師がしっかりと取り組んでいただきたいということで、教育長にはその派遣人員を、ゼロを一つ多くするぐらいにしていただきたいというふうに言ってるわけでありますが、これから日本の教育が外国人にもまねられるということになるためには、先生方が鎖国根性を持っていては困るというふうに思っておりまして、そのあたり韓国や中国との就航先との関係が密になってるので、修学旅行というのがありますけれども、実は先生方御自身の国際感覚を身につけた人を持っていきたいというのが一つです。
     さらに言えば、高校だけでなくて中学、小学校、幼稚園・保育園も含めて、やはり幼児の発達段階に応じたことを専門的に御存じの方々を積極的に採用したいというふうに思っておりまして、これはフィンランドの例などに学ぶわけですけれども、博士号ではなくても修士号ぐらいは取るぐらいの人でないと教師になれないという、そういう社会的な機運を盛り上げたいと思っております。
     やはり、今の親御さんは大学を出ていることが多いので、どうしてもその親御さんから見ると若い教員の先生方が頼りなく見える場合があります。これは余り益があることだと思えませんので、教員というものが尊敬される仕事であるということのためには、しっかり勉強した人でないとなれないということを制度化したいなと思っておりまして、教育長には、ポストドクあるいは修士号を身につけた人、教育に熱心な人、この人たちを教育本来の現場で採用するようにと。そして幅広く、先ほどいろいろな社会で芸術やスポーツ、その他で貢献された方々も教員としてお招きするということを申し上げたとおりでございます。
     さらに言えば、それは次の御質問にもかかりますけれども、高等学校の再編、吉田高校における存続に向けた感動的なお話をいただきましたけれども、これは大井川、吉田高等学校の再編だけでなくて私自身もほかのところも回りまして、それぞれどの学校にも卒業生には思い出があります。教育長も清水東高校ですが、清水東高校がもし再編で別の高校になるんだったらどうかと言ったら、とんでもない話だという、そういう顔をされておりましたし、それは自分の出身校との関係で言えば同じことではないかと思います。
     この再編が、規模の観点からしか言われてないのが今の問題ではないかと。一定の規模を持たないと生徒にもまずいし、かつ先生方もいろいろ、たくさん先生方をお招きしなくちゃならない、費用がかかると、こういう量的な観点から言われてますけれども、やはりそれぞれの学校というものが置かれている場所というのは、小学校、中学校は通いやすいところというのは言うまでもありませんけども高校もそうでございます。したがってそれぞれ場の設定におきましては、いいところが選ばれてるはずです。だからそれを生かさないといけないと。
     今、地域の子供たちは地域で育てようという、そういう方向性が文科省のほうでも打ち出されております。大学も地域密着型の大学というカテゴリーが出ているほどでございます。同じように地域密着型で、地域が子供たちを、少年少女をどう育てるかということになりますと、仮に大井川高校でいわゆるこれまでのカリキュラムはやると、英数国理社体育等。しかしながら、例えば子供たちにとってこれから必要なのは社会性であるということであればですね、そういう社会生活を学ぶためには合宿を一緒にするということがとっても大事になりますね。そのために山の家、富士山麓山の村なども活用できるとか、三ヶ日の施設も活用できるとかということになったわけですけれど、合宿所という形でその学校は使えるはずです。
     そうしますと、そこにはケータリングシステムが要ります。それからベッドが要ります。そうするとそれは先生だけでできますか、できません。地域の人々が例えば月曜から金曜、あるいは一泊二日でもその間は安全をきっちりと確保するためにお手伝いしなくちゃいけない。卒業生の方、あるいは近所の方、いろんな人がお手伝いをしなくてはなりません。そうした形で、カリキュラムも文科省やあるいは県がお決めになっていることだけでなくて、いかにして立派な人間をつくっていくかということがポイントなので、それの場所の使い方というのは可能であろうと。
     話は、もう一つの例えば天竜林業と二俣と春野、これそれぞれキャンパスと言ってるわけですね。二俣キャンパス、あるいは春野キャンパスと言ってる。名前はもちろん大事ですけれども名前をつけてそれの実態はどうするかと。春野のところに仮に天竜や二俣の子が行く場合は遠いです。遠いけれどもそこに二泊三日するとか、あるいは月曜から金曜は、ある一定期間、ある一定の学年の子がそこで、春野高校の前の合宿所のところで生活をするということになりますと、これはもう先生だけでは到底だめです。先生も、かつ春野の人たちのお手伝いも要ると思いますね。その場合にその地域のコミュニティーができてますから、例えば春野高等学校で合宿所にかえる形でそこを活用できますとなれば、これはコミュニティーの人は常に手伝ってくださるでしょう。
     同じようなことが吉田におきましても、数万の人たちが署名も集められて吉田高等学校の存続をということで、どういう高等学校として、今までの既存のカリキュラムを超えて、かつここでしかできないことを少年少女たちに与えてくれるということは工夫できるはずですね。
     ですから、それぞれの高等学校の場所の力、場の力を生かすという工夫を考えていけば、既存のカリキュラムをどこかの高等学校でやるということは一つですけども、それ以外の教育の方法があるはずです。ですから私は、一年間猶予ができましたのでそのあたりのところもよく考えていただいて、あの高等学校の福祉施設も運動場もあの建物も生かされるというふうに信じておりまして、そのあたり教育長の、あるいは教育委員会の知恵の出しどころではないかということで、注意深く見守ってまいりたいというふうに思っている次第でございます。
    ○議長(天野進吾君) これで大石裕之君の質問は終わりました。
     議事の都合により休憩します。

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