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本会議会議録

質問文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用



平成28年2月静岡県議会定例会 質問


質問者:

櫻町 宏毅 議員

質問分類

一般質問

質問日:

03/01/2016

会派名:

ふじのくに県民クラブ


質疑・質問事項:

1 公共施設建設におけるライフサイクルコストの縮減の取り組みについて
2 若者の県内への定着策について
(1) 奨学金返済への県としての支援
(2) 県立大学卒業生の地元企業への就職
3 東日本大震災から五年経過した本県の防災力について
4 生活困窮者の自立に向けた支援について
(1) 食料支援事業に対する県のかかわり
(2) 一時生活支援事業
5 開港五十周年となる田子の浦港の果たしてきた役割と今後の利活用策について
6 子供たちの生きる力の醸成について
(1) 知事の実学に対する考え方
(2) 多様な学びの場の確保


○議長(吉川雄二君) 再開に先立ち御報告いたします。
 本日は、説明者として山ア人事委員会事務局長が出席しておりますので御承知おき願います。

○議長(吉川雄二君) ただいまから会議を再開します。
 質疑及び一般質問を続けます。
 通告により、三十二番 櫻町宏毅君。
       (三十二番 櫻町宏毅君登壇 拍手)
○三十二番(櫻町宏毅君) 私はふじのくに県民クラブ所属議員として当面する県政の諸課題について、知事及び関係部局長、教育長に分割質問方式にて伺います。
 初めに、公共施設建設におけるライフサイクルコストの縮減の取り組みについて伺います。
 最近の県の公共施設整備の主な案件と金額を挙げてみますと、沼津のコンベンション施設「プラサ ヴェルデ」は建物取得費として約六十七億円、さらに総合運動公園内の体育館このはなアリーナは建設費として約六十億円。この二件は既に完成済みであります。地球環境史ミュージアムは約十二億円の建設費をかけて本年三月にオープンする運びとなりました。さらに今議会には富士山世界遺産センター――仮称――関連費用で十七億六千五百万円、空港ターミナルビルの改修費に八億三百万円、新幹線新駅関係費として過去にあまり例のない予備費扱いとして十億円、浜松市篠原地区に百億円以上の県営野球場を建設することを前提とした基本計画作成費九千七百万円などが提案されております。ほかにも多額の費用が見込まれる東静岡駅周辺の県有地の利活用計画などがあると聞いております。
 県民にとって必要な公共施設の建設は、財源の裏づけをもって実施する必要がありその目的や必要性についてはその都度議会で審議しておりますが、既に完成済みのものも含めここ数年の県による公共施設建設整備の案件を見る限り、毎年数百億円規模で財源が足りないという厳しい県財政の中にあってこれらの公共施設建設整備は本県の財政の実力から見てもかなり背伸びをした投資規模になっていないかと考えさせられます。
 こうした公共施設の建設整備に当たり、県当局として設計の段階から重要視しなくてはならないのは初期費用いわゆるイニシャルコストだけでなく、維持管理にかかる経費や目的を終えて解体する費用までを含んだいわゆるライフサイクルコストであると考えます。なぜこの点を指摘するかといえば一旦施設を建設すれば施設が存続する限りランニングコストと解体費用は次世代にいや応なく引き継がれるからであります。人口減少社会が加速する中、また厳しい県財政が続くことが見込まれる中、できるだけ次世代に過度な負担をかけないようにするのも我々現役世代の務めであるというふうに考えます。議会としても公共施設建設の議案審議に当たってはその目的の妥当性とライフサイクルコストを意識した審議を行っていかなくてはならないと強く感じております。
 そこで、今後県が行う公共施設の建設整備に当たりどのようにライフサイクルコストを縮減していくのか、県の所見を伺います。
 次に、若者の県内への定着策についてのうち、奨学金返済への県としての支援について伺います。
 過日、総務省より全国都道府県の転出超過順位が発表され本県はワースト五位になったとの報道があり、依然として本県は他県と比べ人口流出が進んでいる県と言わざるを得ません。特に若年層の流出には歯どめがかかっていない状況にあり本県の将来を担う若者、特に大学卒業生の県内定着が重要課題であると考えます。
 平成二十四年において、大学進学者の二人に一人は奨学金を借りており理由としては公立、私立ともに授業料が高騰していること、また親の収入が少なく仕送りがままならず奨学金とアルバイトによる収入を生活費と授業料に充てなくてはならない状況にあることなどが挙げられます。アルバイトに追われる毎日で本来の目的である学問がおろそかになってしまう。そんな学生が多くなっていることが最近の社会問題となっております。
 奨学金には貸与型と給付型の二種類があり、貸与型奨学金を借りた学生は卒業後に返済をしなくてはなりませんが、かつてのように企業に正社員として採用される学生ばかりではなく非正規雇用で収入が少ない中で返済を迫られるなど奨学金の返済が卒業後の人生に大きな負担となっています。
 このような中、香川県では一定の条件をクリアし地元企業に三年間以上就職すれば返済の一部を免除する制度を平成二十三年度に立ち上げ県外に進学した学生のUターンに成果を上げています。国も新たに奨学金返済に苦しむ若者の支援策として県が地元企業と連携して基金を設立する場合は最大一億円を交付税によって財政措置するともしております。
 若者の県内定着策の一つとして、学生の多くが苦労している奨学金の返済に対し他県の事例のように本県も支払いの一部を補助するといったことも検討すべきと考えますが、県の所見を伺います。
 次に、県立大学卒業生の地元企業への就職についてであります。
 現在県では、静岡県U・Iターンサポートセンターを運営し東京圏で学んだ県内出身者を静岡県に回帰させるため雇用面での魅力の発信に努めております。県外に進学した若者の地元回帰に注力することも大事ですが県内、県外出身に関係なく四年ないし六年間静岡県で学び生活した若者を本県内の企業に就職させ定着を図ることも重要であると考えます。むしろ県内大学で学ぶ学生は静岡県のすばらしさを日常生活の中で感じており引き続き住み続けたいと思う若者が多いのではないかと推察いたします。県内大学のそれぞれの学科で学んだ知識と県内企業の求める人材とをマッチングさせられれば縁あって本県に学んだ若者の県内定着につながると思うからであります。
 例えば、静岡県立大学には薬学部がありますが県東部を中心にファルマバレーに参画している企業が多数あり薬学の専門知識を持つ人材を求めています。このように地元大学生と地元企業とのマッチングは今後より一層強化していかなくてはならない課題と考えます。
 ちなみに、県立二大学卒業生の県内への就職状況ですが静岡県立大学では二十七年三月卒業生の場合、全体で六二・九%と比較的高い結果となっておりますが先ほど例に出した薬学部では三六・六%という数字になっています。もう一つの県立大学である静岡文化芸術大学では二十七年三月卒業生で全体では三九・四%。デザイン学部だけ見ると二三・五%という結果となっています。
 このような状況を踏まえ、今後県立大学は地域の大学として卒業生の地元企業への就職に一層積極的に取り組むべきと考えますが所見を伺います。以上について答弁を求めます。
○議長(吉川雄二君) 伊藤経営管理部長。
       (経営管理部長 伊藤篤志君登壇)
○経営管理部長(伊藤篤志君) 櫻町議員にお答えいたします。
 公共施設建設におけるライフサイクルコストの縮減の取り組みについてであります。
 建築物の建設にかかるイニシャルコストと、建設後の維持管理にかかるランニングコストの割合は一般的に二対八程度と言われております。公共建築物を整備するに当たってはこれらを合わせたライフサイクルコストの視点を重視し、これを縮減するために新たに施設を整備する段階と維持管理する段階のそれぞれにおいて取り組みを実施する必要があると考えております。
 まず、公共建築物を新たに整備する段階ではふじのくにエコロジー設計指針に基づき将来の維持管理費を抑制する省エネタイプの設備機器や断熱性の高い建築材料を選定する等、ランニングコストの抑制に努めることとしております。さらに来年度は長寿命化設計ガイドラインを策定し県有建築物の長寿命化を推進することでライフサイクルコストの平準化と縮減の取り組みを強化いたします。
 次に、施設を維持管理する段階では民間のノウハウを活用した指定管理者制度等の導入を進めることによりサービス向上とあわせて効率的な運用にも配慮してまいります。また今月末にオープンするふじのくに地球環境史ミュージアムのように旧施設を活用して新たに行政需要に対応する再整備の取り組みも有効と考えており、リモデルや民間、市町との共同利用など時代の変化に即した新しい手法についても積極的に検討いたします。
 県といたしましては、各段階でさまざまな手法を講じてライフサイクルコストの縮減に努めるとともに、行財政改革の一層の推進を図り次世代に過度な負担をかけないように効率的な施設整備と管理に努めてまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 篠原経済産業部長。
       (経済産業部長 篠原清志君登壇)
○経済産業部長(篠原清志君) 若者の県内への定着策についてのうち、奨学金返済への県としての支援についてお答えいたします。
 本県は現在、医師、看護師など特定の職業の人材確保のため修学資金支援制度を設けております。また他県においては国の制度を活用し特定の職業における人材確保のため奨学金の返還額の一部を県と地域企業が支援する制度を設けていたり、議員御紹介の香川県は県単独で県内への就職を条件に奨学金返還額に対する支援制度をつくっております。一方現在国会では来年度の予算審議の中で無利子の奨学金制度の拡充について議論を進めており、先日も馳文部科学大臣が給付型奨学金の創設について言及しております。
 県といたしましては、県内への就職促進を狙いとする奨学金返済への支援につきましては国の政策の動向や若者を受け入れる企業の意向、学生の経済状況などを踏まえ政策の調査研究を進めてまいります。人材不足が拡大している中で若者の県内定着を一層促進するため大学との就職支援協定の締結や高校の同窓会の御協力による情報発信などを初め、県内の市町や企業とも一丸となって若者が働きやすく生活しやすい環境づくりに努めてまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 西田文化・観光部長。
       (文化・観光部長 西田郁夫君登壇)
○文化・観光部長(西田郁夫君) 若者の県内への定着策についてのうち、県立大学卒業生の地元企業への就職についてお答えいたします。
 県立大学には、地域に立脚した大学として教育研究成果を還元するとともに、有意な人材を育成し地元の企業等へ輩出することにより地域や産業の活性化を図っていく使命があるものと考えております。このため静岡県立大学及び静岡文化芸術大学ではそれぞれ求人開拓員が合わせて二百五十社を超える県内企業を訪問し学生の採用を働きかけるとともに、学内で開催する会社説明会への参加を要請するなど学生の県内企業への就職に向けた取り組みを進めております。
 また、学生が本県の魅力を認識できるよう静岡県立大学では昨年度から健康長寿など本県のすぐれた特性を学ぶしずおか学科目群を設置し、静岡文化芸術大学では今年度から現場体験を通して地域課題への理解を深める地域連携実践演習を実施しているところであります。
 今後は、県内就職率のさらなる向上に向け両大学とも新たに静岡大学を主体とした地(知)の拠点大学による地方創生推進事業に参画し地元産業界と連携したインターンシップの強化などに取り組むこととしたほか、静岡文化芸術大学については県が策定した今後六年間の第二期中期目標において学生の県内定着の促進を指示したことから、今年度内にみずから定める中期計画に基づき具体的な取り組みを進めていくことになります。
 県といたしましては、こうした取り組みの効果を検証しながら卒業生の地元企業への就職による定着が図られるよう積極的に支援してまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 櫻町宏毅君。
       (三十二番 櫻町宏毅君登壇)
○三十二番(櫻町宏毅君) 要望を二点、再質問を一点させていただきます。
 一つは、公共施設建設のライフサイクルコストの縮減の取り組みについてでございますが今後も当局からさまざまな公共施設建設の提案がなされると思います。今までの提案を承りますとつくるところのイニシャルコスト、これについての御説明を丁寧にやっていただくんですがこれを何年間使うかとか毎年の維持費についてどのくらいかかるかとか、あるいは何年後には運営形態をこうしたいと思っていますとか、ひいては最終的には解体にこれくらいお金がかかりますとか、そういった今回御提案したライフサイクルコストの部分についてもですね、しっかりと御提案できるように、もちろん可能な範囲で結構なんですけれども可能な限り御提案をいただきたいと思います。それが私どもの議会としての審査、審議の参考になるというふうに思いますのでぜひ御検討をお願いいたします。
 要望二点目は、若者の県内定着策についてですが今回二件質問をさせていただきました。奨学金返済への補助とそれから地元大学と企業のマッチングということなんですが、やはりこれだけ県内から人が流出、特に若い人が流出してしまうと県の力――県力がどんどん衰退してしまうと思うんですね。ですから若い人をいかにここにとどめるか、あるいは県外へ出た人を持ってくるかということが県としての最大最重要課題じゃないかというふうに思いますので、ぜひあの手この手いろいろ使ってやっていただきたいと思います。
 特に奨学金についてはですね、先ほど部長から国の動きの紹介がありました。これは給付型にすると。貸与じゃなくて給付型にするということが可能であれば実現すればいい話なんですけれども、なかなか財源の裏づけもあるので貸与型ということがこれからも主流だと思います。そのときにUターンに効果があるので県が何か仕組みをつくるということではなくて例えば県の金融機関にお願いしてですね、県の金融機関がローンの借りかえをしてあげるとかといったようなことに県が関与していくとかですね、そういうことをやることによってますます若い人たちが定着しやすい要件になるんじゃないかと思いますので、この点御検討いただければと思います。
 再質問いたします。
 公共施設のライフサイクルコストの縮減についてですが、先ほど来申し上げているとおり過度な負担を次世代に渡さないという観点から今私たちができることが何かないかなということで考えました。そこで考えたのは今後の将来、維持費とか修繕費とかましてや解体費と言われている、先どのくらいかかるかわからないよというお金については見通せないので今のうちから基金をつくって少しためておくといったようなことが我々現役としてもできる策じゃないかなというふうに思うんですね。これは実は浜松市が先駆的な例でおやりになっているというふうなお話を聞いておりますけれども県としてもこのような基金をつくって将来の修繕費、解体費をそこから捻出するといったようなことについてお考えがあるかどうか、この点を伺いたいと思います。以上、答弁を求めます。
○議長(吉川雄二君) 伊藤経営管理部長。
○経営管理部長(伊藤篤志君) 櫻町議員の再質問にお答えいたします。
 将来の修繕費等に備えるため、今のうちから基金をためておく、積んでおく必要があるのではないかということでございます。
 将来生ずる大きな財政負担に対しましては、例えばでございますが財政の余裕があるときに基金に積んで将来の負担に備える。または大きな負担を一度に負担するのは大変でありますので着実に基金をためておいて世代間の負担の均衡を図るとかそういった要素があろうかなと思います。このうち世代間の負担の均衡を図るという要素に関しましては例えば県債のような形で大規模な修繕等は県債も充当できますので、そういったものを活用して世代間の負担を均衡していくという方法もございます。
 基金についてでございますが、県では昨年度目的を終えた土地開発基金につきましてこれを廃止いたしました。そのときにその基金の財源を庁舎建設基金に積み増して将来の財政負担、例えば修繕、建設等に充てる基金として使えるようにしたところでございます。ちなみに二十七年度末の見込みでございますが五十九億円というような状況でございます。
 この基金につきまして、さらに積み増しができるかということでございますけれども基金につきまして今の財政状況からするとなかなか余裕がなくて積み増しすることが難しい状況でございますので、これから財政に余裕が出ましたときにさらなる積み増しも検討して将来の大きな修繕等の財政需要に備えるような形で用意をしたいと考えております。以上でございます。
○議長(吉川雄二君) 櫻町宏毅君。
       (三十二番 櫻町宏毅君登壇)
○三十二番(櫻町宏毅君) 御答弁ありがとうございました。
 ぜひ世代間のですね、負担を平準化する。子供たちばかりに次の世代にかけるということのないように今部長から御提案があったような、お話があったようなこと、積極的に進めていただきたいというふうに思います。
 それでは、次の質問に移ります。
 東日本大震災から五年が経過した本県の防災力について伺います。
 平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災から、早いもので五年となります。かつて日本が経験したことのない大災害で多くのとうとい命が失われ、依然として仮設住宅での不自由な生活を余儀なくされている被災者も大勢いる状況が続いております。今後も我が国では南海トラフを震源とする大震災が発生する可能性があり、県も第四次地震被害想定を前提に総合計画に盛り込んださまざまな取り組みを着実に進めております。防潮堤や避難タワー、命山などのハード整備だけでなく避難訓練の充実やDIGによる災害図上訓練、家庭や公共施設での防災備蓄品の整備、企業におけるBCPの作成などのソフト対策に取り組んでいることは承知をしております。
 これらの事業を行うことで、災害に立ち向かう力いわゆる防災力が高まるものと考えますが最も重要なのは県民の防災に対する意識を常に高め続けること。そして財政が厳しい中にありながらも先ほど申し上げた津波対策などのハード事業をスピード感を持って行うことだと思います。今後も防災力を高める取り組みは続きますが東日本大震災から五年の節目を迎え、これまでの取り組みの成果を確認し今後の取り組みの糧とするべきと思います。
 そこで、五年前と現在とで本県の防災力がハード・ソフト面でどの程度向上したのか、県としての御認識を伺います。
 次に、生活困窮者の自立に向けた支援についてのうち、食料支援事業に対する県のかかわりについて伺います。
 私は、一昨年十二月定例会一般質問においてこの問題を取り上げました。その際に申し上げたことは家庭の事情であすの食事にも苦労する県民が数多くおり、その方々への食料支援は本来公的機関が行うべきところであるが実際はNPOフードバンクふじのくにが担っており、その現状を紹介をいたしました。平成二十六年五月に共助の事業として活動を開始以来着々と支援の輪も拡大し現在は五十八社と提携、平成二十七年十二月時点で県内三十五市町のうち三十二市町から食料支援要請を受けるようになりました。平成二十七年四月から十二月までの九カ月間で入庫した食品総量は約三十トン、出庫量は約二十九トンと確実に食料支援事業は拡大しており生活困窮者の食べるという生きるための最低限必要な行為をサポートしております。設立から短期間でこれだけ多くの市町から要請を受けるようになったということは裏を返せばそれだけ多くの食料支援が必要な生活困窮者が県内に大勢いるということであります。
 フードバンク事業が拡大することによって、新たな課題も出てまいります。現在フードバンクふじのくにの活動拠点は静岡市内一カ所のみで受け入れスペースに限界が来ており、また遠方の自治体への供給に時間を要するなどの理由からできれば西部や東部にも活動拠点を整備したいということであります。そこで依然として食料支援を必要としている県民が大勢いるという実態を捉え、この事業に取り組んでいる団体が抱える課題解決に対処するなど食料支援事業に県としても関与を一層強めていくべきと考えますが、県の所見を伺います。
 次に、一時生活支援事業について伺います。
 さきの我が会派、田内議員の代表質問でも触れましたが平成二十七年四月に施行された生活困窮者自立支援法には任意事業があり、その中に生活困窮等の理由により住居を失った人に対し緊急一時的に宿泊場所や食事などを提供する事業がありますが任意事業であるため県内での実施はごく一部にとどまっております。実施している市の多くは富士市にあります富士POPOLOハウスに委託しているという状況でございます。富士POPOLOハウスでは委託の受け入れ自治体が地元の富士市を初め二十七年度に七市であったものが二十八年度は十市連携となる予定であるなど一時生活支援事業の必要性も増加してきており、このままでは受け入れたくても施設規模の関係で断らざるを得ないとのことでした。
 熊本県や大阪府では、広域的に一時生活支援事業が行われるよう県が市町に働きかけをしていると聞いておりますが、本県でも他県と同様に市町が協定を結び生活困窮者の自立のための事業をサポートしていく必要があると考えますが、県の所見を伺います。
 次に、開港五十周年となる田子の浦港の果たしてきた役割と今後の利活用策について伺います。
 戦後の高度経済成長期時代に、富士地域の主要な産業である製紙の原材料供給港として田子の浦港は大いに栄え、当時は木材チップ船などの往来で大変にぎわっていたと聞きます。一方発展の代償として水質汚濁が激しくヘドロが浮いた田子の浦港の写真は公害問題の象徴として扱われたと記憶をしております。その後富士市による排水規制の強化と県による港湾にたまった底質土砂の浄化対策により港内の環境も大きく改善されてきております。平成二十六年三月にようやく国による中央泊地のしゅんせつが終了し三万トン級の大型の貨物船や「にっぽん丸」などの客船も入港可能となるなど未来に向けて大きな可能性を秘めた港としての活躍が期待をされております。
 さらに、現在では富士市が田子の浦港振興ビジョンを策定し従来の産業港としての活用だけでなく市民や観光客が親しみを持って訪れる港づくりを基本に防災やにぎわいづくりに取り組んでおり、県に対しても積極的な連携と支援を要望しているところであります。
 そこで、田子の浦港が開港から五十年にわたって果たしてきた役割と今後県としてどのように利活用していくおつもりなのか、そのお考えを伺います。以上について答弁を求めます。
○議長(吉川雄二君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 東日本大震災から五年経過した本県の防災力についてお答えいたします。
 本県は、一九七九年以来東日本大震災が起こるまで三十余年間にわたりまして東海地震に備えるためにさまざまな二兆円を超える投資をいたしまして防災力を強化してきたわけでございます。防災先進県としての自他ともに許す自負もあったと存じますけれども東日本大震災はそのような自負を吹き飛ばすほどの強烈な危機意識を喚起したということでございます。
 大きくは三つあると存じます。一つは津波、一つは原子力、そしてまた大きな地震・津波と富士山の噴火というものが過去の歴史において関連しているということがございますので複合災害としての富士山の噴火も起こり得るということなどが大きく三つ挙げられると存じます。その中でも一番大きな衝撃は津波対策が十分であるかということだったと存じます。私どもはこの東日本大震災は人ごとではないと。我々の海岸線は五百キロ以上にもわたっておりましてそこに二十を超える市町が存在しているわけでございます。
 そこで、我々は地震・津波対策アクションプログラム二〇一三。平成二十五年度にこれを立ち上げました。その年から数えて平成三十四年度までの十年間の間に南海トラフの巨大地震が起こっても想定される被害者数を八割減ずるという目標を立て、四千二百億円余りの予算のうち平成二十五年度、二十六年度、二十七年度、皆様方にお認めいただきまして一千三百億円余りの予算を投じ大体三割強が終わっていると。今年度の平成二十八年度の予算をお認めいただければ、これが執行されれば四割強の執行ができるということでございます。
 これは、いわばハードの取り組みということになりますが、また新しい津波被害想定への対策としまして潜在自然植生というこういう植栽の仕方というものについても新しい自覚があったと思います。私ども海岸には松があるということでこれが津波にも役に立つというふうに即断してきたわけですけれども、これは防風とか防砂には役に立っても津波に対しては無力であるということであの有名な七万本のクロマツは全滅いたしました。最後に残った一本も枯れたわけです。したがってクロマツそれ自体は津波に対しては役に立たないと。そうした中で既に一九八七年、今から三十年ほど前に宮脇昭先生という方が潜在自然植生と。その土地に一番合った植物はそれを植えておけばすくすくと育つだけでなくて根をしっかり張って津波に対しても耐え得ると。これはさまざまな先生の御経験や観察から得られたものでこうしたものは最初に掛川におきましてそれが実施されていわゆる緑の防潮堤、森の防潮堤づくりが始まったことも大きいかと存じます。しかし一九八七年に立派な、どこの地域にはどういう潜在自然植生が、潜在的に自然であるような植生があるかということについて報告書が立派な本が出ておりますけれどもそれが放置されてきたと。今それがまたよみがえったというのも大きいかと存じます。
 この、ふじのくに森の防潮堤づくり、避難できる小高い丘を築く命山など県と市町、住民が協働して知恵を絞り地域の歴史、文化、原風景と調和のとれた津波対策というのが本県の特徴ではないかというふうに存じます。そのうちの一つは浜松市沿岸域の静岡モデルの防潮堤づくり。CSG工法によってなされておりますがこの六月に全体十七キロのうち五キロぐらいできますが、来年度中には大体九割ぐらいが整備ができるという見込みでございます。命山や津波避難タワーというのは震災時の七カ所から今年度末には百六十カ所に、津波避難地の誘導標識は百九十カ所から二千四百五十二カ所に急増いたしました。着実に津波対策は進捗しているという実感がございます。
 また、市町では第四次地震被害想定に基づくハザードマップの配布や新たに整備した津波避難施設を活用した訓練に取り組んでおり、津波避難訓練の参加者は震災前の一万四千人から昨年度は十二万六千人へ増加するなど確実に津波に対する意識が高まっていると認識しております。
 超広域災害への対応といたしましては、全国から迅速かつ効果的な支援を受けられるように大規模な広域防災拠点に位置づけられるように働きかけた結果、これが昨年正式に富士山静岡空港が大規模な広域防災拠点として位置づけられました。この機能を確保するために航空燃料タンクの増設、西側隣接地の整備を行うほか南海トラフ地震に対応した新たな広域受援計画の策定を進めるなど万全を期しております。
 また、浜岡原子力発電所の起こり得るべき事故に対しましてはいわゆるオフサイトセンターというのが今までは二・数キロのところにあったわけですけれども、PAZ内ではすぐに避難しなくてはなりませんので二十キロのところにこの三月には富士山静岡空港にでき上がります。そしてまた防災・原子力学術会議というのが静岡県で組織されておりまして、そこでの議論を踏まえて安全技術また安全文化のメッカになるような今動きがございます。その意味で浜岡原子力発電所の安全性というのは恐らく日本の数十カ所の中で最も高いというふうに私は感じております。
 火山に対しましては、神奈川県と山梨県で合同訓練が行われたりさまざまな今、防災訓練が行われておりますのでこの五年間における静岡県の防災力は極めて高まったと思います。
 ちなみに、これとの関連で津波から自由なところは内陸の高台部分でございますからそうしたところの内陸のフロンティアを拓く試みというのも確実に浸透してまいりました。それとの関連でやはりエネルギーというのは地産地消というのが望ましいということでこの試みも急速に進んでいるという認識を持っております。
 こうしたことは、基本的にはハードでございますけれどもやはり原点に立ち返りますと公助はもとより住宅の耐震化、水や食料七日分の備蓄などみずからの命はみずから守るというセルフヘルプ――自助。これが一番の基本であると。そして自主防災組織の強化や地域の特性に応じた防災訓練の実施などみずからの地域はみんなで守るという共助の取り組みを市町と一体となって推進し、想定される犠牲者を十年間で八割減少させることを目指し防災力の強化に努めていくということでございます。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 山口健康福祉部長。
○健康福祉部長(山口重則君) 生活困窮者の自立に向けた支援についてのうち、食料支援事業に対する県のかかわりについてお答えいたします。
 フードバンク事業は、生活困窮者の支援に寄与するボランティア活動として行われております。県ではその活動内容や成果を紹介するなど市町における事業の活用を促進してまいりました。この結果広く周知がなされ取扱量が拡大しており、今後フードバンク事業のさらなる充実を図るためには活動拠点の確保や増設が必要であると認識しております。
 県では、活動拠点の不足を補うためフードバンクふじのくにの運営協力団体でもある県社会福祉協議会や市町その他活動に賛同する関係団体に対し活動拠点の確保を初め配送体制や在庫管理の効率化などについて積極的に協力や提言を行い、活動がより一層円滑となるよう努めております。
 また、来年度からは新たな生活困窮者の自立支援策としてフードバンク事業を活用した就労体験の機会を確保することとしております。これまで支援を受けていた生活困窮者が支援をする側にも回ることのできる仕組みづくりを行い通常の就労に不安のある方の働く意欲の向上や社会参加につなげるなど食料支援事業に積極的に関与し、県民の理解を深めることとしております。
 今後とも、県民や企業等に対しフードバンク事業への理解をより一層深めるほか、生活困窮者支援にかかわる関係者との密接な連携を行いフードバンクが活動しやすい環境づくりに取り組んでまいります。
 次に、一時生活支援事業についてであります。
 住居を失い、その日の生活に困窮する方々に対し宿泊場所や食事などを提供する一時生活支援事業は日常の生活を営むことが困難な環境にある県民の生活を守る重要な事業であります。生活困窮者自立支援法に基づき今年度は八市が一時生活支援事業に取り組んでおり、県が未実施の市に対して事業の有効性について理解を求めた結果、来年度からは十二市で実施されることとなりました。
 県では、市町の取り組みを強化するため先進事例などを参考にし、各市町からの意見も伺いながら共同実施を進める上での課題の解決を図り、実施に向けて検討を進めてまいります。また直近三年間の実態調査ではホームレスの存在が確認されていない市町もあるなど一時生活支援事業を取り巻く環境が各市町で異なることから、地域の実情に応じた事業の実施を働きかけることとしております。
 今後も、市町と連携し一時生活支援事業の拡大に努め、日々の生活にお困りの方に寄り添った早期の支援を提供することにより困窮している方々が希望を持って自立して暮らすことのできる社会となるよう全力で取り組んでまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 野知交通基盤部長。
○交通基盤部長(野知泰裕君) 開港五十周年となる田子の浦港の果たしてきた役割と今後の利活用策についてお答えいたします。
 田子の浦港は、掘り込み式港湾として昭和三十三年に建設に着手し昭和四十一年に国際貿易港として開港して以来、本年で五十周年を迎えます。本港が位置する岳南地域には広大な富士山麓を水源とする良質で豊富な地下水を背景に紙・パルプのほか化学繊維や食品加工などの製造業が本港の着実な整備に合わせるように進出し本県有数の工業地域が形成され、田子の浦港は岳南地域はもとより県東部地域の産業や物流の拠点としてその役割を果たしてまいりました。
 また、今般富士市が策定した田子の浦港振興ビジョンを踏まえふじのくに田子の浦港みなと公園の展望施設等の整備のほか、世界遺産富士山を最も間近に体感できる港としてのクルーズ船の誘致や地域ならではの食であるシラスを観光に生かしたにぎわいづくりを支援することなどにより交流人口の拡大にも努めてまいります。
 県といたしましては、引き続き県東部地域の経済や産業の発展に向けて田子の浦港の物流機能の強化を図るとともに、富士市と連携し交流拠点としての利活用を推進してまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 櫻町宏毅君。
       (三十二番 櫻町宏毅君登壇)
○三十二番(櫻町宏毅君) それでは、要望を一点、再質問を一点させていただきます。
 まず、生活困窮者自立のための食料支援事業に対する県のかかわりですが、要望とさせていただきますけれども県としてその食料支援が必要な県民が多くいるという認識を持っていただいているということはよくわかりました。関係の皆さんにお声かけをしているということも今お話をいただいたとおりでありますが、実は実際にやっていらっしゃるふじのくにフードバンクの方々から見ると県が全庁的に災害物資で賞味期限がまだないやつを供出いただいたり、あるいは広報していただいたり、あるいは今御紹介いただいたようなひきこもりの就労支援として受け皿となっていただいたりいろんなことをやっていただいているんですけれど、その全庁的な事務局の窓口が実は経済産業部、篠原さんのところにあるというのは非常に不思議な感じだというふうに受けとめております。生活困窮者の食料支援ということであればやはりこれは健康福祉の福祉事業だと思いますので山口さんのところですね。ぜひ取りまとめをしていただければありがたいかなと思います。これはぜひ組織、事務局体制の変更ということで御検討いただきたいと思います。
 再質問いたします。
 先ほど知事から、本県の防災力の点について御答弁いただきました。私質問の中で申し上げたのはハード整備ということについての評価。これは点数化できないのでなかなか難しいんですけどいろいろやっていただいているという御紹介いただきました。もう一つ県民がどれだけ高い次元で防災意識を維持できるかどうかというところが非常に大事だと思うんですね。この五年間恐らく防災に対する県民意識調査みたいなことはおやりになっていると思うんです。県民がこの五年間でどういう意識に変わられたのかということが、もし紹介できる事例がありましたらこの場で御紹介いただきたいというふうに思います。以上、答弁を求めます。
○議長(吉川雄二君) 外岡危機管理監。
○危機管理監(外岡達朗君) 東日本大震災から五年経過した本県の防災力についての再質問にお答えいたします。
 県民の意識といった点で、この五年間でどのように変わっているかと。県民の意識調査というものをやってございまして、そうしますと「東海地震等にどの程度関心を持っているか」といったような項目がございます。これがですね、最近の調査で五二・七%ということで東日本の前から一旦上がりまして少し下がっているというような状況にございます。ただ「非常に関心がある」というような言い方をしていますけれども一般に関心を持っているという方は九六、九七%ということで一般的には非常に意識が高いといった中で先ほど答弁でも御紹介いたしましたように津波に対する防災訓練の参加者が十何万人になるといったようなですね、そういったような状況も見えています。東日本大震災というものはですね、非常に大きなインパクトを与えたと。特に津波の被害に対するインパクトというのはこれは大変大きいと。
 一方で、その不安をですね、ずっと持って暮らしているということもまた問題でございます。常にですね、いたずらに恐れるのではなくてみずからとして備えることをきちんとやっていただく必要があると。そういった意味ではですね、今回の被害想定を出したときに一つは大きな津波、もう一つは超広域災害になるということですぐに応援は来ませんという中で自助、共助が一番大事であるという形で防災訓練であるとか日ごろの耐震化とか家具の固定とかそういったものを進めていただきたいということでやってございます。
 耐震化、あるいは家具の固定、伸びてはいるものですけれどもまだまだ十分でないという面もございます。そういった意味で原点に立ってですね、そういったものを改めて推進をしていくといったようなことを進めていきたいと思ってございます。以上でございます。
○議長(吉川雄二君) 櫻町宏毅君。
       (三十二番 櫻町宏毅君登壇)
○三十二番(櫻町宏毅君) 御答弁ありがとうございました。
 人間は忘れる動物と言われますので、高い意識はあったけれども年とともに意識が薄れるというのはやむを得ないことだと思うんですね。私ども地域で活動していますとやはり自主防災会の皆さんと接点があります。そのときにやはり毎年毎年同じ防災訓練をやることに、これどうなのかなと思うような高い意識をお持ちの役員さんがいらっしゃいましてね、この方々にするとどんなことをやったらいいかというようなことを相談を受けるわけですね。私どもはいろんなところを見て回っていますので御提案申し上げますが、ぜひ県内のですね、優秀な防災訓練の事例みたいなところを積極的に各自主防災会にですね、提言、提供いただくというようなことを強化いただきたいと思います。
 その際にはですね、今県が一生懸命ふじのくに防災士の育成に努めておられます。私も拝命しておりますがそういった防災士の人たちをうまく使ってこの方々が地域の自主防災会を指導するというかサポートするというような体制ができるような形になれるように、ぜひそんな取り組みもお願いをしたいというふうに思います。
 それでは質問に移ります。
 子供たちの生きる力の醸成についてのうち、知事の実学に対する考え方について伺います。
 平成二十六年四月に発行された高校と大学の連携・接続のあり方検討委員会の最終報告書には、新しい実学の奨励として義務教育終了後、生徒たちが真に学びたい分野、興味を持つ分野に進むことができる環境を整備するため、農林水産業、工業、商業、芸術、スポーツの分野において若者の資質や才能を伸ばすことができる実践的な学問としての新しい実学を奨励するとあり、この考え方は大変すばらしいものと思います。
 現在の子供たちの置かれた環境は、少子化によって親の関与が大きくなり企業の求人も大卒が中心で大卒が厚遇される現代社会においては義務教育時から本人も親もいずれは大学進学という人生のレールを敷き受験戦争に突入、大人になる前から競争の渦に巻き込まれ大学に進学し無事卒業したとしても全てが希望する仕事につけるわけではなくケースによっては非正規雇用を強いられ不安定な生活となってしまう。こういったのは全てに当てはまるわけではありませんけれども社会構造が変化し現代の子供たちが置かれた環境下では、幼少のころ思い描いた将来の夢を現実のものとしている子供はかつてよりも少なくなっているのではないかと推察されます。
 このような現代社会の主流に流されず、義務教育卒業の時期から将来やりたいことを見つけられる子供にとって新しい実学は生きる力を人生の早い時期から身につけることができる貴重な機会であると考えます。私はこの実学という考えをもっと世間に広め社会全体や県民の理解をより一層深めていくべきと考えますが、残念ながら県民にこの考えが十分伝わっていないように思います。そこでこれを機に教育者でもありかつ県民に対して発信力のある知事の実学に対するお考えをお聞かせください。
 最後に、多様な学びの場の確保について教育長に伺います。
 かつては、高校を卒業して地元の製造業の企業に就職するため工業高校の電子科や機械科で学んだり商業科に進んで簿記の基礎知識を学び地元の銀行に就職するなどいわゆる職業学科で学び、そこで学んだ知識を生かした職種につく生徒が多かった時代がありました。しかし現代社会では若者の将来つきたい仕事に対するイメージは多種多様となり、世の中の職種もIT技術の普及などにより一昔前と比べてこちらも多種多様な時代となりました。大学や専門学校では時代の流れに合わせ学ぶ機会のバリエーションも多くなってきたようですが本県の高等学校教育では時代の変化にどのように対応しているのでしょうか。新しい実学の考えに基づき自分の意思で早い段階から関心のある分野や専門性を学びたいと願う子供たちに対し多様な学びの場を提供することも我々大人の仕事であると考えます。
 そこで、教育長にお伺いいたします。今後の高等学校における時代の流れに沿った新しい多様な学びの場づくりについて御所見をお伺いいたします。以上について答弁を求めます。
○議長(吉川雄二君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 子供たちの生きる力の醸成についてのうち、私の新しい実学に対する考え方についてお答えをいたします。
 現在の国づくりの課題は、地方創生であります。静岡県は富国有徳の理想郷“ふじのくに”づくりを進めておりますが真の地方創生、また国づくりに必要な学問、教育はいわゆる五教科、小学校でいえば算数、国語、理科、社会。それに中学に入りますと、これからは英語も小学校から入ってくるということでございますが中学では必須の英数理国社と。この五教科というものが重視されているというふうに受けとめておりまして、いわばそれ以外の科目、図画工作、音楽、体育、保健あるいは技術といったようなものもこうした主要五科目と同じくらいに重要であるというそういう観点に立っているわけでございます。そうした科目は図画にしてもあるいは美術にしても体育、スポーツにいたしましても全て体、身体で覚えるという面がございます。そうした意味で座学に対して身体的な実学という言葉を使っているわけであります。
 ただ、新しい実学と言っておりますのは実学という言葉を最初に使ったのは福沢諭吉さんだと思います。「学問のすゝめ」というのを明治五年から書き始められましたがそこでそのときまでの主要な学問は四書五経を中心とした儒学であり古事記、日本書紀、万葉集を主なテキストとした国学だったわけでございますが、このような勉強をしていても新しい日本をつくることはできないと。欧米に伍してやっていけるだけの一等国にはなれないと。欧米が持っている知的体系というものが新しい国づくりという現実に役に立つ学問、実学だと。それが設計図を描いたりあるいは工場をつくったりするのに必要な数学とか工学とかあるいは物理学、そしてお医者様の医学、法律の民法を中心にした法学と。理財学と言われた経済学。こうした後に主要五科目に収れんしていくようなものが実は日本のために必要であったということで、これが実学だと彼は言ったわけですね。一国の独立は一身の独立にありと。一身の独立はそれ学問にありと。その学問の中身はこの英数国理社のような今欧米にとって最も重要な知的体系をつくり上げているものを日本人がまずマスターすることだと。私はこれは非西洋圏で唯一日本人が全部マスターしたと。大体三、四十年でほぼマスターをしてお雇い外国人をもう解雇しておりますから、入れ込んだというふうに思います。
 そうした中で、今やこうした当時においては実学であったものが今は偏差値であるとか点数を競うとか受験のテクニックだとかいうことになっております。同時に日本は西洋の文明をほぼ入れ切って東京時代を終えようとしているという中で我々は地方創生。新しい、日本の各地が東京をモデルとするのではなくてそれぞれの地域が持っている潜在力といいますか場の力を発揮する、そういう時代に今我々は面していると。そのときに私どもは今必要な学ぶべきものは何かということでございます。これを私は新しい実学と。それは大地に根差した学問でなくちゃならないし身体的にしっかり身につける学問でなければならないということですね。そうしますとものづくり、あるいは農業、あるいは商業、あるいは水産業、林業。さらにまた最近では芸術やスポーツというものは世界共通の人類の遺産としてユネスコを初めオリンピックやさまざまな組織がこれを奨励しておりますが、こうしたものが新しい実学であるというふうに思うわけでございます。まさに富士山に登る道が幾つもありますように一人前になる道は幾つもあるということでございまして、偏差値教育から我々はいわば卒業しようということでございます。
 そうした中で一人前になると、立派な人間になるというのを不徳の致すところということを言う必要のないような人間、言いかえると徳のある人間、有徳の人というものをつくっていこうということでございまして静岡県では基本目標をふじのくに「有徳の人」づくり大綱というところに定めまして、有徳の人づくりに向けた重点取り組みとしてこうした新しい実学を奨励しているということでございます。
 ちなみに、一例を挙げれば普通の高校に行かないで商業高校とか農業高校とかに行かれるという方がいます。あるいはバイオリンだとかピアノだとか行かれる人もいます。それからちょっと芸能的な感じのある宝塚音楽学校に行かれる人もいます。これは中卒から行くわけですね。だけどこういう宝塚音楽学校は自動車学校と同じような各種学校になっているんですね。しかしそこでは清く正しく美しくということで国語や演劇的な才能はもとよりダンスしたりそれも日本舞踊からモダンダンス、クラシックバレエ全てなくちゃいけないんですがこうしたものはですね、おとしめられていますね、日本における知的体系のもので。ですから私は今日本のいわば子供たちに残すべき財産が何かということを大人一人一人が考えるときが来ていると。そしてそれぞれの、何ていいますか、得意とするものは全て子供たちに残すに値すると。
 例えば、小学校では学級会というのがあると思います。中学校になると生徒会。高校にもそれがございます。そしてまた大学になりますと学生組合みたいなものがございますけれどもこうしたものもいわば政治活動についての訓練でありますが、こうしたものは皆様方のような先生方が本来日本の政治あるいは政治というのは本来どういうものであるかということを教える意味ではですね、先生方は先生です。農業経営者や漁業経営者や林家なども同じように先生であるというふうに思っておりまして一人一人が子供たちに小さな場面では自分の子供あるいは近所の子供たち、大きな場面ではこうした世間に公人として対峙するといったときに何がしかを残すということを通して私は学問を組み直す必要があるというふうに思っているわけです。
 それといいますのも、長くなって大変失礼ですが新しい国づくりにはどういうわけか日本はいつでも学問が伴っているわけですね。初めて体系的な学問が来たのは仏教学ですがそれを仏法僧、これを三法重んじよと聖徳太子は言われて、そして日本の各家庭に仏壇が備えられるようになりました。これは天武天皇が七世紀の末に全ての家に仏壇を備えよということです。それくらいですね、仏教というものが実は鎮護国家、国を治める上で必要だという学問としていったわけですね。
 そしてまた、武士の時代になりますとこれは自力本願でございますからしたがって禅というものが学ばれました。そしてそれが結果的に大きな戦乱を招きましたのでそしてその学問から国の秩序を重んずる学問として朱子学を家康が導入されて、それによって干戈を交えることのないような社会がつくり上げられたわけです。
 ですから、それぞれの初めに新しい学問というものが据えられています。明治の初めにもそうでございました。ですから日本人は我々は世界に通用するものとして一万円札を持っていますけれどあそこに描かれている図柄は福沢諭吉ですね。学問立国をしているというそういう顔を世界に通用させているということです。今私たちが必要なのは福沢が主張した学問ではありません、もはや。もうそれは形骸化していると言ってもいいくらいです。あるいは世界の水準に達しているのでそれ自体に新鮮なものがないとすら言えると。だから我々にとって新しい新鮮なものはこの大地から学ぶということで広くはふじのくに学と。あるいは地域学というふうに言ってもいいと存じますけれどもそうしたものを興さなくちゃならないと。ふじのくに地球環境史ミュージアムというのもそういう脈絡でお捉えいただきますと非常に重要なものになります。そしてまた県議のお近くにございます富士宮にできる世界遺産センターというのもこれも富士山を通した自然を学ぶということで、富士山を抜きにしてこの学問はできませんのでやはり大地に根差した学問をこれからやっていかなくちゃいけないと。
 根差しているのは我々人間ですから、大人ですからそれが子供たちに何を教えられるかということを今改めて考え直す時期に来ていると。つまり新しい学問教育の体系をつくるときに来ているのだという認識を持っております。以上でございます。
○議長(吉川雄二君) 木苗教育長。
○教育長(木苗直秀君) 御質問ありがとうございます。
 子供たちの生きる力の醸成についてのうち、多様な学びの場の確保についてお答えいたします。
 ICT技術の進展など、時代のニーズに応じた新産業の創出により職業の多様化が進む中、生き方や働き方など社会の価値観も多様化しております。昨年八月の静岡県産業教育審議会の答申では福祉分野に加え芸術、スポーツ分野を含めた実学教育に関して技術の進歩やビジネス界の変化、社会の新たなニーズに合わせた多くの提言をいただきました。また本年度の総合教育会議でも新しい実学に関する教育体系のさらなる充実などが協議され、現在それらの実現に向けて取り組んでいるところであります。
 具体的には、一例ですが田方農業高校のように実際の職業で求められる技能を在学中に学べるよう授業内容の充実を図るとともに、民間企業とのインターンシップや外部人材を活用した専門技能の講座開設・開催など将来の職業を意識した実学教育を充実させてまいります。また来年度には各高校が一堂に会して実学教育フェスタ、これを開催し学校で制作した作品の展示や技能の実演など日ごろの学習成果を発信する場をつくることにしております。
 県教育委員会といたしましては、さらにキャリア教育を推進し生徒が自分の夢に向かいそれぞれの能力を伸ばしていけるよう多様な学びの場づくりに積極的に取り組んでまいります。以上であります。
○議長(吉川雄二君) 櫻町宏毅君。
       (三十二番 櫻町宏毅君登壇)
○三十二番(櫻町宏毅君) 今申し上げたとおり、子供たちが多様な職業観を持つような時代となってまいりました。幼少のころなりたいと思ったことを大人の都合や社会の風潮で諦めることがない、こんな時代になるといいなというふうに思います。できるだけ子供たちが将来なりたい職業観を持って進められるよう県として全力で取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(吉川雄二君) これで櫻町宏毅君の質問は終わりました。

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