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ホーム > 静岡県議会 > 本会議会議録 > 質問文書

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本会議会議録

質問文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用



平成22年6月静岡県議会定例会 質問


質問者:

中谷 多加二 議員

質問分類

一般質問

質問日:

07/15/2010

会派名:

自由民主党県議団


質疑・質問事項:

1 天竜林業の未来図に向けた取り組みについて            
 (1) 森林認証材を生かすためのシステムづくり            
 (2) 木材の特徴を生かした製材品の供給               
2 中山間地域の振興策について                   
3 静岡県希少野生動植物保護条例の制定について           
4 災害時における孤立集落対策について               
5 公立大学法人静岡文化芸術大学の中期目標について         
6 天竜地区新構想高校の魅力化について



    ○副議長(岩瀬 護君) ただいまから会議を開きます。
     議事日程により、知事提出議案第九十八号から第百十二号までを一括して議題といたします。
     質疑及び一般質問を行います。
     通告により、三十九番 中谷多加二君。
           (三十九番 中谷多加二君登壇 拍手)
    ○三十九番(中谷多加二君) 皆さんおはようございます。おかげさまで初当選以来十五年三カ月が過ぎました。光陰矢のごとしと言いますがよわいを重ねるうちにふえたもの、減ったもの、できるようになったこと、できなくなってきたこと、時間は時に人に厳しい試練を与えます。「エブリボディー いずれ感じる 悲哀かな」字余り。このような現実を目の当たりにしながら、以下質問に入ります。
     気を取り直し、天竜林業の未来図に向けた取り組みについて伺います。
     平成十四年二月議会で、現在の天竜区、当時は北遠地区の未来の様子を述べました。石川知事からは幾つか違う考えを持っていますと余り同感を得られませんでした。懲りずに今回新たに天竜区となったこの中山間地の未来図を述べたいと思います。
     今から十年後、天竜区の森林面積は八万六千ヘクタール、蓄積、樹木の幹の材積は既に二千万立方メートルに達している。十年前と比較すると実に蓄積は一・二倍にふえ、FSCの森林認証を取得した面積は区内の森林の四分の三に相当する約五万ヘクタールで、その森林からは十年前の二倍の二十万立方メートルの木材が毎年生産され市内外の製材工場に供給されています。
     製材工場の数は減少したものの大型製材工場が稼働し、その広大な敷地には月産六千立方メートルのコンピューター制御の製材機がフル回転し若い従業員が忙しく丸太や製品をフォークリフトで移動している。また木質バイオマスボイラーを熱源とする高温乾燥施設では柱やはりを、東京板橋区にある機械メーカーで開発された低温乾燥施設では内装材を乾燥している。その隣のストックヤードには、森林認証材マークがついた県産材製品である柱、はり、板材などが所狭しと積まれ、県内そして全国への出荷を待っている。
     当時視察で訪れた高知県檮原町で実施していた地元材を使って家を新築すれば三百万円を補助するという制度に触発され、県財政課の努力の結果本県でもその補助金を増額し、毎年応募者が多く最大で二百倍の倍率となっているなど、十年前と比較すると信じられないほど県産材を使った家があちこちで見られるようになっている。いわゆる本物志向のあらわれであります。
     こうして川下で県産材がふんだんに使用され出したおかげで山も活気を取り戻し、かつて限界集落などと言われ中山間地は崩壊するとまでマスコミ等で語っていた某学者は、最近ではめっきり登場しなくなってしまいました。このように林業、製材、そして地域が活況を呈するようになったのは、FSC森林認証の取得と先ほど紹介した低温乾燥機の登場が一つの要因であり、当時の川勝平太知事の登場によるところが大きかったかどうかは……と評価されている。
     以上が、私が描く天竜林業の未来図の一端ですが実現に向けた取り組みを林業、製材業が一体となって進めることが大切です。またこうした未来図を実現することで、天竜林業だけでなく静岡県全体の林業、製材業のレベルアップも図られることになると思います。
     さて、話を現在に戻しますが、日本は国土に占める森林面積は六八・二%で先進国の中ではフィンランドに次いで二番目の世界有数の森林国であります。しかしこれに反してフィンランドや六六・九%の森林面積を持つスウェーデンの森林利用率はヘクタール当たり三立方メートルもあり、日本は一立方メートルと大きく下回っています。この数字は成長した木をどれくらい使っているかということをあらわしたものです。一方で安く、同じ規格、品質ものが大量にそろうということから国策の追い風にも助けられ外材が輸入されていましたが、中国などの木材需要が伸びた結果、世界的な木材需給は一変して不足気味になりました。これまで安定供給されてきた外材が手に入りにくくなり国産材、県産材が住宅メーカーなどから注目されています。
     まず、天竜林業の未来図実現の最初のキーとなる森林認証材を生かすためのシステムづくりについてですが、今年三月天竜区の森林一万八千ヘクタールがFSCから持続的な森林管理を行っていることが認証をされました。森林認証の取得は、森林を経済、環境、社会的なニーズを満たした林業経営が評価されたことであり、一森林所有者としてもこれまでやってきた林業経営や木材生産が環境へ配慮していること、社会へ貢献していることを認めていただいたことであり大変うれしく思っています。
     また、五月に開催された県森林組合連合会天竜営業所の森林認証材記念市では活発な競りとなり、関東地方など遠方からも注目を集め森林認証材の価値が高く評価され天竜区内の森林組合には、東京の材木を扱う会社から大量の認証原木の注文が入るなど原木の市場価格がまだまだ低迷する中、新たな動きも生まれてきました。これらはもちろん人工林――循環林を伐採した原木であり合法木材でなければなりません。
     他方、森林認証材を消費に確実に結びつけるためには、認証を受けた森林から生産される木材を流通、加工のすべての過程において他の木材が混入しないよう、厳しく分別管理をすることが求められます。管理の連鎖と呼ばれるCoC認証を取得する必要がありますが、中小規模の製材工場では取得経費などが負担となっておりCoC認証の取得が進んでいません。
     そこで、こうした森林認証などの地域での取り組みを生かし、地域材の利用を拡大していくに当たっての県の所見を伺います。
     次に、天竜林業の未来図実現の二番目のキーとなる木の香り、色つやを生かした製材品の供給についてですが、私は去る二月の中旬東京都板橋区の愛工房を訪ね低温乾燥機を開発した代表の伊藤好則氏に話を伺いました。彼は自信に満ちた表情で機械の特徴など杉の持つ本来の肌ざわり、色合い、香りを残したまま乾燥できることや、メンタルな部分にもいい影響を与えることなど、本来杉の持つ効能を生かすことが人間の生活に大きな効果をもたらすと言われました。またこの低温乾燥機は長方体で長さはスペースさえあれば自由に伸ばすことが可能で、外壁は杉、ヒノキなど国産材が使用され熱源は電気で四十五度で乾燥をするものであります。乾燥の途中でも中に入り様子を見たり作業をしたりすることが可能となるなど、この点も従来の高温乾燥機とは異なります。
     天竜区の県産材のみを扱っている業者は、いち早くこの話を聞きつけ実際に板材、柱など愛工房の乾燥機で一週間ほど乾燥させました。私は、工場に保管してある製材品を実際にこの目で確かめましたが、結果は板材に限っては見事にあめ色に乾燥し香りも豊かで含水率も当然二〇%以下に落ちていました。まだすべてにおいてよい結果が出ているわけではありませんが、かなり期待が持てると直感をしました。
     木に囲まれて育った私は、木材は木の香り、色つやを生かして利用することが不可欠だと思っています。一方、木材を住宅に使う場合は、十分に乾燥させてから使うことが必須であり現状では高温による人工乾燥が主流になっています。百度で乾燥させる高温乾燥は、木材をほぼ一律に乾燥させることができ乾燥期間も短く納期への対応も容易である反面、木の香り、色つやはなくなってしまいます。
     そこで、県産材の利用促進を図るためには低温による人工乾燥などを取り入れ、木の香り、色つやを生かした製材品の供給も図るべきだと考えますが、県の取り組みを伺います。
     次に、中山間地域の振興策について伺います。
     今年二月に開催されました知事広聴「平太さんと語ろう」で、川勝知事に私の住む天竜区まで御足労いただき地元の方々とさまざまな話をしていただきました。知事として田舎の空気に触れていただきましたがいかがだったでしょうか。
     天竜区には、天竜川を初めとした水資源、ヒノキ、杉などの豊富な森林資源、何よりも豊かな自然の中で培われてきた心優しい住民の皆様がおります。これからの静岡県、日本を支えていく子供たちからこれまで頑張ってきて少し休みたい御老人の皆様まで、すべての方々がゆったりと生活できる条件が整った地域だと自負しています。ところが天竜区の人口は、平成十二年には約四万二千人だったものが平成二十一年には約三万六千人と大きく減少し、高齢化も進行して三六・六%に達しています。さらに国会においても中山間地の中心を占める過疎地域の置かれた厳しい現状が理解され、この三月には過疎地域自立促進特別措置法も六年間延長されました。ありがとうございました。
     知事は、これまでも二十一世紀の日本人の生活文化のフロンティアは豊かな自然に恵まれた多自然地域にあると、中山間地域には温かい目を向けた発言を繰り返していただいております。美しい景観と自然環境の保全、豊かな森林資源の活用などを通じ、県土を守っていくことの重要性はこれまでにも増して高まっております。私は、これら中山間地を初めとした人口減少地域においてその活力を維持拡大していくためには、そこに住み続けてくれる人を確保していくなどさまざまな観点から行政の支援が必要であると考えますが、中山間地域の振興策について知事の御所見を伺いたいと思います。
     次に、静岡県希少野生動植物保護条例の制定について伺います。
     去る五月十日に、国連生物多様性条約事務局が発表した報告書「地球規模生物多様性概況第三版」の内容は余りにも衝撃的でありました。報告書のデータによれば、一九七〇年から二〇〇六年までに野生の脊椎動物のおよそ三割が地球上から姿を消した。これは言うまでもなく開発や汚染による影響が大きく、文明の発展がそうした生物群の存在を代償としてきたことは明らかで、今なお生物多様性の損失に歯どめがかからない現実が浮き彫りになりました。
     こうした中、国連の国際生物多様性年に当たる本年十月に愛知県名古屋市において生物多様性条約第十回締約国会議、いわゆるCOP10が開催され、我が国は議長国として種の絶滅を減少させるため国際的なリーダーシップを発揮していくことが求められています。今回のCOP10を契機として、私たちの命と暮らしを支えている生物多様性の重要性に対する国民の意識がますます高まってくるものと思われます。
     植物に関しては本県においても、希少な高山植物などが心ない登山者や撮影者によって踏みつけられたり園芸マニアに乱獲されたとの報道もあります。ちなみに以前、我が家にある樹齢七百年以上と言われているカヤの木に寄生しているフウランを大量に盗まれたことがありました。幸いにも県警察の捜査のおかげで犯人は逮捕されました。収集家の男の犯行で許せない行為であります。
     このような状況下で、今回上程された条例を制定しただけでは絵にかいたもち、理念条例となってしまうおそれも否定できません。県はどのように希少野生動植物の保護に取り組んでいくのか伺います。
     次に、災害時における孤立集落対策について伺います。
     今議会が再開されてからも全国各地で水害、土砂災害の様子がテレビ等で放映されています。いささか古い話になりますが、昭和四十九年の七夕豪雨で私の自宅近くの低地は水浸しになりました。まさしくバケツをひっくり返したような雨で、自宅から二俣町へ通じる国道三百六十二号で道路の舗装は至るところでめくれ上がり二俣川にかかる二本の橋はすべて流出し、私たちは食料などの生活物資の買い出しに大きなリュックサックを背負い、けもの道を片道一時間余り徒歩で往復する羽目になりました。幸いにも我が家は小高い場所に立地しているおかげで被害はありませんでしたが、低いところは家屋などすべて床上二メートルを上回り、その後の片づけなど暑さの中気の遠くなるような作業が続きました。
     片づけも終盤に差しかかり、消防ポンプで放水しながら床にたまった泥を出す作業を消防団で実施中、燃料がなくなり私が買い出しに行くことに。といっても車は使えず困っていたところ自衛隊のヘリコプターが近くのわずかな空き地に着陸しました。救援物資を空輸してくれたのですがさすが自衛隊のパイロットだと感心しました。自分が高所恐怖症であるのを一瞬忘れ、交渉すると乗せてもらえることになりポリタンクを両手にすぐ離陸、数分でガソリンスタンド近くの中学校の校庭に着陸、駆け足で燃料を仕入れヘリコプターの待つグラウンドへ向かいました。帰りのヘリの窓から眼下に地元の集落を見つけ、パイロットはあっという間に先ほどのわずかな空き地に無事着陸しました。そこはまさしく孤立集落そのものでした。
     県の調べによると、昨年のデータで県内には三百七十一の孤立予想集落がありそのうち二百七十一の集落はヘリコプターの離着陸が可能、または空中でホバリングしながら物資をおろしたり負傷者をつり上げたりするスペースがあると聞いています。しかし残念ながら残りの集落はこうしたスペースの有無が確認できていませんでした。またヘリコプターの利用に加え重要なことは通信手段の確保です。孤立集落にとって空路と通信の確保は最低限のライフラインであることは言うまでもありません。一般の電話回線は使えず集落単位の代替通信手段が必要と思われます。
     県は、災害時に孤立が予想される中山間地域等の集落について、現状をどのように把握しまたどのような対策に取り組んでいるのか伺います。
     次に、公立大学法人静岡文化芸術大学の中期目標について伺います。
     静岡文化芸術大学は、公設民営大学として平成十二年に開学して以来、県、浜松市はもとより地元の産業界、そして地域の方々に支えられことし創立十周年を迎え、数々の記念行事が行われると聞いております。さらにこの四月からは民営の大学から公立大学法人が運営する大学へと移行するとともに、理事長に有馬朗人先生が就任されるなど静岡文化芸術大学にとってことしはまさに記念の年であります。昨年の入試の志願倍率につきましても、一昨年に比べ上昇し開学以来最高の約十二倍であったと伺っており県民の大学への期待の大きさを感じております。
     さて、中期目標ですが、これは公立大学法人が達成すべき業務運営に関する目標であり県が法人に対して指示するものであります。また法人にとりましても大学を運営する上での基本的な指針となるものであり非常に重要なものとなっております。今回提案されている静岡文化芸術大学の中期目標には、教育や研究、地域貢献などの教育研究等の質の向上に関する目標や法人の経営に関する目標などさまざまな事項を定めておりますが、まずはこの中期目標の特徴について伺います。
     あわせて、県は今後静岡文化芸術大学にどのような期待をしているのか伺います。
     最後に、天竜地区新構想高校の魅力化について伺います。
     少子化の進む中、県下で高等学校再編整備が進められています。これらの再編整備によって新たに設置される高校が魅力のあるものとなるためには、それぞれの高校がこれまで培ってきた伝統を継承することや地域の特性に配慮することなどさまざまな観点が必要であると考えます。
     浜松市天竜区においても、創立九十五年の二俣高校、創立八十六年の天竜林業高校及び創立六十一年の春野高校の三校が再編され、平成二十六年度の開校を目途に新構想高校の準備が進められており、昨年八月には設置場所が現在の天竜林業高校の校地と当面の間は二俣高校のグラウンドを活用することが決定されました。
     新構想高校の概要については、総合学科と林業科、学級規模については六学級とのことであり、また現在の春野高校については現校地を活用し普通教育を継承していくと聞いております。しかし天竜地区の中学生が旧浜北市や旧浜松市方面に進学している状況を考えると、現在の両校を単純に合併させたような学校では今後、生徒募集が大変厳しくなることが考えられます。そのためには魅力のある教育内容を用意し地元からの流出を抑え、かつ広範囲から生徒の集まる学校にすることが重要であると考えます。
     提案ですが、高齢化が進行する天竜区に設置する高校として、介護、福祉に関連した資格を取得しやすくするための教育内容を取り入れることは考えられないでしょうか。現在、浜松市内の公立高校には、福祉科などの介護、福祉に関する専門教育を受けることができる学科を設置している学校はないと聞いております。福祉教育を受けることのできる学校とすることも一つの魅力化につながることと思います。
     このように、地域の特性に配慮し学校の特色化を図っていくことも、再編によって設置される高校として重要な要素であると考えます。そこでこの三校再編による天竜地区新構想高校についてどのような構想をお持ちか伺います。
     また、二俣高校は、文化勲章受章者である秋野不矩画伯を輩出した伝統校であります。近隣には秋野不矩美術館が所在し、二俣高校の一年生全員が総合学習の時間を活用して作品を鑑賞し美術部の生徒が作品の模写などにより絵画技術の向上を目指す施設として活用しており、同窓会では秋野不矩画伯の価値のある絵画を何点か保有しており、かなり高額な作品もあると同窓会の役員の方々はおっしゃいます。
     天竜林業高校にあっては、地元の山林家から寄附された昔の林業に関する資料的価値の高い道具などが多数保管され展示もしております。これらの絵画や資料類を生徒及び地域の人たちの身近に展示することは、先人の偉業や地元の産業を正しく伝えることとなり教育的な意義も大きく、「富国有徳の理想郷“ふじのくに”」づくりの中の有徳の人づくりに文武芸三道の鼎立を目指した学校づくりとあり、県の総合計画案の中にも、本物の文化に触れることができる機会の充実、一年間に芸術や文化の鑑賞または活動する人の割合を九〇%にするという目標など、まさしく知事の思いの具現化と言えると思います。
     新構想高校においては、これらの展示や教育面での活用についての考えもあわせて伺い、私の質問を終わります。(拍手)
    ○副議長(岩瀬 護君) 川勝知事。
           (知事 川勝平太君登壇)
    ○知事(川勝平太君) 中谷議員の御質問にお答えいたします。
     中谷議員の御出身地の天竜区、その心をきょうは紹介いただきまして高齢化が進んでいるとのことで「エブリボディー いずれ感じる 悲哀かな」と、やや悲観的な一句をひねり出されたみたいなんですが、そんなことはないと思っております。エブリボディー・エブリツリーの理想郷と、天竜区いずれ日本の桃源郷というふうになるというふうに確信しております。
     まず初めに、天竜林業の未来図に向けた取り組みについてのうち、森林認証材を生かすためのシステムづくりについてであります。
     FSCなどの森林認証制度は、森林の環境保全に配慮して経済的にも継続可能な森林管理を推進することなどを目的としており、近年消費者の環境や生産履歴への関心が高まっておりますことから、大手住宅メーカーだけでなく地域の大工・工務店におきましても、認証森林から生産される木材を住宅建築に使用する動きが広まってきております。
     県内におきまして認証制度を受けた森林面積は、浜松市天竜区、静岡市、川根本町など九地域、二万七千ヘクタール余りに拡大しておりまして、また大手住宅メーカーが認証材の使用率を高く設定するようになりました。県内の住宅メーカーも認証材を使用した住宅を商品化するなど、利用面での拡大も進んできております。
     県といたしましては、認証森林の拡大と加工流通過程で認証森林から切り出された木材が、他の木材とまざらないように管理する――アルファベットばかりで恐縮ですが――CoC認証の取得を支援することとしております。このCoCというのはチェイン・オブ・カストディー。流通加工にかかわる森林所有者がいて、森林組合、そして地域行政がある、そのあと素材生産、それから原木の市場、製材、流通、建築というように回っていきますが、最終的には消費者、消費者のところにいくということになります。この流通加工の過程でほかのものがまじらないようにきっちりとチェックをしていくという、それを認証するものでCoCシステムというわけです。これを支援していくこととしております。
     県といたしましては、流通業者や加工業者がグループ化してこのCoC認証を取得する取り組みは地域材のブランド力を高めることにつながりますので、グループ化の支援と認証材の加工に必要な乾燥施設や品質検査機などの整備を支援してまいります。
     私は、昭和三十年――一九五五年に日本住宅公団ができましてちょうどそのころから森林も放置される形で外材の輸入が始まり、今や需給率が二割五分といわれるほどの惨たんたる状況になっておりますが、この住宅のいわゆる五五年体制、一九五五年の住宅公団の成立とともに日本に雨後のタケノコのように急速に出てきたいわゆるコンクリートジャングル、箱の中に人を住まわせるというそういう住まわせ方、この住宅の五五年体制を何ていいますか、ここで乗り越えてまいりたいと。そのために二階建て住宅などにおきましては木造を広く推奨いたしまして、そうした中できっちりとした認証を得た木材を使ってまちをつくってまいりたいと。森のまちをつくってまいりたい、森に沈むまちをつくってまいりたいというように思っております。
     そうしたことが続く御質問に対する回答になりますが、中山間地域の振興策についてであります。
     中山間地域はいずれ崩壊するなどというばかげたことを言っていた学者もいたようでございますけれども、私は、都市化の果てに今見られているのは都市の緑の回帰であると。そしてまた子供たちがコンクリートのジャングルの中で、土や水や緑に直接接しないで育つといろいろと心に病を持ちかねないという、こういう経験から出てきた現実から山村留学、あるいは都市と農山漁村の交流プロジェクトなどが政府も気づきまして進めております。私もその一端にかかわってきた者でございますが、この中山間地域は豊かな自然や地域固有の歴史・文化を有しており、森林による地球温暖化や自然災害の防止など多面的、公益的機能を担っております。そしてまた日本のいわゆる美意識というものは自然の変化、これに感応する形で涵養されてきたと思います。そしてまたいやしの場を提供する。文字どおりこれからの日本のフロンティアでございます。「富国有徳の理想郷“ふじのくに”」づくりにおきまして重要な地域であると認識いたしております。
     中山間地域におきまして農林業は最も重要な産業でありますことから、お茶、ワサビ、林業等の生産振興や鳥獣被害対策を進めますとともに、都市部から多くの方々が中山間地域に訪れていただけますように、特色ある産物を生かした新商品の開発や販売の支援も積極的に行ってまいります。
     多様な交流の拡大と深化の観点から、先ほど申しました子ども農山漁村交流プロジェクトの実施や農林漁業体験民宿の認定基準の策定などを通じ、グリーンツーリズムの促進による交流の拡大も図ってまいります。さらに移住希望者の相談に乗るワンストップの窓口の設置、市町・地域団体の受け入れ体制の整備支援や首都圏に向けた情報発信などにより、ふじのくにならではの魅力を生かした県内外からの移住、定住を促進してまいります。
     今後、中山間地域などの振興施策を総合的、体系的に展開するため、本年四月に庁内に推進会議を設置いたしました。中山間地域の持つ固有の場の力を生かして、市町と連携しながら活性化に向けて取り組んでまいります。
     特に、天竜地区におきましては人口が減少しているという現実がございますが、しかし県議のよく御存じの天竜二俣のところには天浜線が通っております。特に二俣の北側のところは南斜のすばらしい丘といいますか、阿蔵山がございます。ここのところをどのように活用するかということが私は課題であると思いますが、今やや前に進めないような状況になっておりますが、私はここはアクラヒルズのような定期借地、定期借家のすばらしい住宅街になり得ると、これはもちろん天浜線を経営している方々との協力、地域の理解、鈴木康友市長との御協力、相談ということをしなければなりませんけれども、あそこに人が住めば住みよくなればまた変わってくるであろうと。
     さらに中長期的には、やがてリニア新幹線が走りますと飯田に駅がいずれできるでしょう。そうしますと飯田と浜松との間にありそして豊かな森林資源を持つこの森のまち天竜区は、新しい時代を迎え得るというふうに思っております。
     その他の御質問につきましては、関係部局長、教育長から御答弁申し上げることになっておりますが、補足的に、私が二年余りお預かりいたしました静岡文化芸術大学について言及していただきましてありがとうございました。あの大学は地域のために役に立つような人たちを育てる、そのような大学でございます。
     そうした大学でございますから、これからは公立大学法人、昔で言う県立大学ということになりまして、そこの大学の先生、研究者、学生、職員一体になりまして地域に出ていくことが彼らの使命でございます。例えば今空港エアポートガーデンシティーをつくるのに楽座構想がありますが、そのデザインを学生が今出してきてます。あるいは沼津の内港、あそこをしゃれたものにするために学生に地域の方々が相談されています。そのように若い青年たちの感性を入れて相談しもしよければそれを地域の方々がいろいろな要求を彼らに出しつつ、彼らとともに協働してデザインをしていくというようなこともできるわけでございます。
     ちなみにもう一つ、高校についても言われました。あの高校の問題は非常に深刻な問題で私は地域の方々が抱えられているお気持ち、よくわかっております。春野、非常にすばらしい高校ですが天竜二俣、あるいは天竜林業高等学校に比べてちょっと遠いですね。そうしたことからどうしたらいいか。ただし人口が減っていると。十年後には中学三年生卒業するのは百人ちょっとになると。そしてしかも浜北やあるいは浜松の方向に人々が動いていると。そうするとこの人数の少なくなったところで高校をどうしようかということですが、そういうその後ろ向きの思考ではなくてそこに仮にアクラヒルズができると。そうするとこれは浜松の街にも出やすくなるし名古屋もいいところであります。そんなに不便なところではありません。それどうつくるか。何によってつくるか、だれがつくるか、だれがデザインするかということになりますと、文字どおり認証を得た、獲得したそういう材木を使い地域の人々がコミュニティーがつくれるようにどうしたらいいかを学生が考え、またその天竜の新しい学校におきまして、新構想高校におきましてそのような実践をするような教材をそこに得ることにもなります。
     私は、したがって高等学校の問題、それから大学の生かし方もこれは中長期的にあの地域をいわばエブリボディー・エブリツリーの理想郷にするために、天竜区日本の未来の桃源郷にするために考えるというふうにいたしますと、ある意味で今手詰まりの状態になっているので今がチャンスだというふうに思っているわけでございます。
     以上、補足的な私の回答を申し上げましたけれども、その他の御質問につきましては、関係部局長、教育長から御答弁申し上げます。
    ○副議長(岩瀬 護君) 堀川経済産業部長。
           (経済産業部長 堀川知廣君登壇)
    ○経済産業部長(堀川知廣君) 天竜林業の未来図に向けた取り組みについてのうち、木材の特徴を生かした製材品の供給についてお答えいたします。
     県では、次期の総合計画において県産材の生産量を現在の二十七万立米から平成二十五年までに四十五万立方メートルに増加させることを検討しており、このためには合板や集成材だけではなく建物の内装や建具、家具に使用されている板材を外材から県産材にかえていくことが必要であるとあります。特に板材につきましては、本県産材の持つ香りや色つやを生かすことが重要でありますことから、天然乾燥した材を木材が持つ特徴を引き出しながら内装や家具などに使用できる含水率に落とすことができる低温乾燥機の活用が有効であります。
     県といたしましては、今後とも地元の御要望にこたえ高品質な板材の生産に必要な低温乾燥機の整備に対し支援をしてまいります。
    ○副議長(岩瀬 護君) 松浦くらし・環境部長。
           (くらし・環境部長 松浦敏明君登壇)
    ○くらし・環境部長(松浦敏明君) 静岡県希少野生動植物保護条例の制定についてお答えいたします。
     本条例では、盗掘や踏み荒らしなど人為的な理由から絶滅のおそれが高くなっている野生動植物を保護対象に指定し捕獲や採取等を規制するとともに、生息地等の環境をあわせて保全する必要がある場合には保護区を設け指定種の生息または生育に支障となる行為を規制するほか、違反者に対する罰則規定も設けております。また指定種の維持、または保護増殖を図るための保護回復事業を初め県民や事業者等が自発的に行う希少野生動植物保護活動を促進するため、県は必要な措置を講ずることとしております。
     県といたしましては、本条例の議決をいただきました後、速やかに県環境審議会の意見を聞いて指定種や保護区の指定を行いまして、その内容を広く県民に周知してまいります。また新たに保護監視員を設置し、野生動植物の専門家による指導のもと指定種の生息状況や盗掘等を監視するとともに、保護回復活動などを実施するボランティア団体等への技術的支援を行うなどこの条例の実効性を確保してまいります。
    ○副議長(岩瀬 護君) 小林危機管理監。
           (危機管理監 小林佐登志君登壇)
    ○危機管理監(小林佐登志君) 災害時における孤立集落対策についてお答えいたします。
     県では、富士山静岡空港を空の防災ネットワークの拠点として位置づけ県内の主要な地域に基幹となるヘリポートを整備するとともに、孤立が予想される集落を重点に駐機スペースなどを確保し県内全域を三十分以内でカバーする空の防災ネットワーク構想を推進しております。この構想を推進する中で、孤立予想集落につきましては直近で県内三百七十一集落のうち、自衛隊などの協力を得ましてこれまでに三百六十一の集落について離着陸や空中からのつり上げなどの確認調査を県で行い、その結果離着陸の可能な集落が百八十六で、残り百七十五の集落については空中からのつり上げが可能であることを確認いたしました。
     未調査となっております十の集落につきましても速やかに調査を終了し、災害時におけるヘリポートの使用の可否を迅速に把握できるよう本年度内にデータベース化を完了させ、この情報を市町や自衛隊など防災関係機関に提供をしてまいります。一方、通信手段につきましては、衛星携帯電話などにより災害時の相互通信手段を確保しているのは、全体の六六%に当たります二百四十五集落であり百二十六の集落が未整備となっております。
     県といたしましては、一昨年度から大規模地震対策に関する補助金の補助率を三分の一から二分の一に引き上げ市町に通信手段の整備を強く働きかけております。災害時における孤立集落対策として、情報をやりとりする相互通信手段や空からの救出・救援を可能とするヘリポートなどの確保は必要不可欠な対策でありますので、県として引き続き強力に推進してまいります。
    ○副議長(岩瀬 護君) 出野文化・観光部長。
           (文化・観光部長 出野 勉君登壇)
    ○文化・観光部長(出野 勉君) 公立大学法人静岡文化芸術大学の中期目標についてお答えいたします。
     静岡文化芸術大学は、平成十二年の開学以来、豊かな人間性と的確な時代認識を持ち社会のさまざまな分野で活躍できる人材の養成等に取り組んでまいりました。
     今回の中期目標では、静岡文化芸術大学がより一層教育研究などの充実を図ることを目指し、実務型の人材の育成と社会への貢献、この二つを基本目標としております。具体的には文化を視野に入れたさまざまな政策・施策を提案し実践できる人材や、ユニバーサルデザインを基本に快適に生活できる環境や生活空間を提案することができる人材の育成、また産業界との連携による地域産業の活性化や公開講座の開催などによる社会への貢献を掲げるとともに、それらを着実に実現するため教育、研究、地域貢献、法人経営に関する数値目標を設定しております。
     県といたしましては、静岡文化芸術大学が地域に立脚した大学であることを深く認識するとともに、先ほど知事から具体的な事例の紹介がありましたが、まさに社会ニーズにこたえられ実践で生かすことができる知性と感性にあふれた人材を育成することにより、さらなる飛躍を遂げることを期待しております。
    ○副議長(岩瀬 護君) 安倍教育長。
           (教育長 安倍 徹君登壇)
    ○教育長(安倍 徹君) 天竜地区新構想高校の魅力化についてお答えいたします。
     天竜地区における新構想高校につきましては、就職から大学進学まで生徒の幅広い進路希望に対し柔軟な対応を図るため総合学科を設置するとともに、天竜美林を支えてきました林業高校としての伝統を継承するため林業科を置くこととしております。総合学科におきましては、ホームヘルパーの資格取得や福祉分野の専修学校、大学等への進学を目指す福祉に関する学習のほか、工業、商業等の学習ができる系列を設置し、また林業科におきましては広く林業振興に貢献できる人材の育成を目指した教育内容を検討しており、天竜区以外からも生徒の集まる魅力ある高校となるよう具体的な検討を進めてまいります。
     あわせて、春野高校につきましては、仮称ではありますが新構想高校春野校舎として例えば天竜校舎との授業交流や教員の相互派遣、部活動や学校行事等での連携など、天竜地区新構想高校の特色を生かした教育環境の充実を図ってまいります。
     また、秋野不矩画伯の絵画や寄贈を受けました林業資料等の活用につきましては、生徒が本物の芸術や文化に触れることのできる重要な機会ととらえ総合学科や林業科の学習で活用するほか、地域開放も含めその保管や展示につきまして関係者の皆様の御意見も伺いながら検討してまいります。

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