本会議会議録
質問文書
平成12年6月静岡県議会定例会 質問
質問者: | 天野 一 議員 | |
質問分類 | 一般質問 | |
質問日: | 06/30/2000 | |
会派名: | 自由民主党・県政クラブ | |
質疑・質問事項: |
○副議長 (芦川清司君) ここで、 あらかじめ会議時間を延長します。
次に、 六十一番 天野 一君。
(六十一番 天野 一君登壇 拍手)
○六十一番 (天野 一君) 当面する県政の諸課題について、 知事並びに部長、 教育長にお伺いいたします。
まず初めに、 行財政改革についてお伺いいたします。
石原東京都知事による外形標準課税導入を機に、 地方自治体の行財政改革にさらなる関心が集まり、 四月一日には地方分権一括法が施行され、 国から地方自治体に大幅な権限移譲も行われました。 その結果、 本格的な地方分権時代が到来したと言っても過言ではありません。 では、 本県は全国的に見てどういうレベルなのか。 特に、 住民にやさしい行政が行われているのか。 財政の体質は。 また、 住民にわかりやすい行政に取り組んでいるのかなどが問われているのではないかと考えます。
本県の行財政改革は、 知事が就任後積極的に取り組まれ、 全国的にも一歩進んだ県として理解しておりますが、 最近注目されている三重県の行財政改革と本県とは注目度が違うわけでありますが、 本県はどうなのか、 再チェックしてみることも必要と考えます。
本県は、 知事就任後の平成六年度以降、 リエンジニアリング研修を初めとして、 百人委員会、 ハーフ運動など職員の意識改革に四年をかけ、 県民本位の生産性の高い小さな行政府を目指し、 現在、 目的を明確にした戦略的な行政運営システムの構築に取り組んでおります。 また、 三つの三本柱を打ち出して、 一つ、 業務棚卸表、 二つ、 組織のフラット化、 三つ、 戦略的政策展開システム等々が打ち出されておりますが、 県民に対しての情報公開、 PRについては触れていないことが課題であるかもしれません。
それでは、 本県と三重県とを比べて、 どこに差があるか見てみたいと思います。
外郭団体の見直し、 規制緩和など、 広い分野において同じように取り組んでおります。 行革の指標である定員管理計画も、 本県は十年度から十四年度までの五年間で五百人の削減、 削減率六・九%、 三重県は十年度から十五年度までの六年間で二百十人、 削減率四・〇%。 静岡県の方がその定員管理計画も進んでおります。 しかし、 マスコミは三重県の行財政改革に注目しております。 何が違うのでしょうか。 取り組む姿勢なのでしょうか。 本県の場合、 準備期間を四年設け、 県庁内部の理解度はかなり浸透しております。 しかし、 県民に対してのPRは、 わかりやすくという点で見てみますと、 県が考えている三本柱は、 何を具体的にしようとしているのか、 県民にとって理解ができにくいという県民がいるということ、 すなわち情報公開のありようが原因ではないでしょうか。 いずれにしても、 マスコミでは本県の場合と三重県の場合と比べてみると、 扱い方と取り組む姿勢について差があるように感じるのは私一人だけでしょうか。
雑誌 「THE21」 の中で、 情報開示度偏差値は十七位、 財政スリム度偏差値は四十七都道府県で最下位の四十七位などで、 その結果、 本県の行政の改善度総合ランキングは四十四位、 高知県では、 県庁はサービス業、 県民参加型県政の推進や新しい情報公開条例の制定などに取り組んだ結果として、 一位にランクされていることも気になる記事でありますが、 本県が目指す行財政改革について、 いま一度わかりやすく具体的に、 知事の考え方を県民一人一人に語りかけることも大事だと考えますが。 いかが考えますか、 知事の御所見をお伺いします。
次に、 過疎対策についてお伺いします。
昭和三十年代に始まった我が国経済の高度成長に伴い、 人口、 産業が大都市へ集中する一方、 農山村地域は過疎現象に見舞われ、 生活基盤が大幅に変動いたしました。 特に若年労働力の流出により、 地域の基幹産業である農林業の発展を妨げ、 さらに町村の行財政力の低下によって、 施設の整備を遅らせ、 このことがさらに一層の人口の流出に拍車をかけるという状況を生み出したところであります。
こうした現象に歯どめをかけ、 過疎地域の社会基盤を強化して、 住民福祉の向上と地域格差の是正を図るため、 昭和四十五年に過疎地域対策緊急措置法が、 昭和五十五年に過疎地域振興特別措置法が、 さらに平成二年には過疎地域活性化特別措置法が施行されたところであります。 この間、 国、 県、 市町村が協力し、 総合的、 計画的な過疎対策が推進されてまいりました。 しかしながら、 本県の過疎地域の状況を見ますと、 若年者の流出などによる人口減少と著しい高齢化など、 引き続き厳しい状況が続いております。
国勢調査によりますと、 昭和四十五年から平成七年までの人口の動向を見ますと、 人口増減率は県平均が二一%の増加に対しまして、 過疎町村の平均は二六・二%の減少という状況にあります。 また、 平成七年における六十五歳以上の高齢者比率は、 県平均の一四・八%に対して、 過疎町村の平均は二六・四%であり、 一方で十五歳から二十九歳までの若年者比率は、 県平均の二〇・三%に対し、 過疎町村の平均は半分ぐらいの一一・九%となっております。 このような状況を見ますと、 これまでの過疎対策は余り効果がなかったと言っても過言ではありません。 逆に、 我が国の高度経済成長の中で、 工業化が進み、 農山村においても経済原理が導入され、 混住化や兼業化が進んだ結果、 農山村を支える人々の間にあった伝統的な人間関係を希薄にさせ、 一面ではゆがんだものとしました。
このような状況にあって、 近年では、 高齢社会を目前として、 さすがに転換を図り、 さまざまな取り組みがそれぞれの地域で始まってきております。 しかし、 過疎地域の農山村の人々が、 これまでの国の政策により、 また県、 市町村の政策により打ちひしがれ、 自信をなくしているのは事実であり、 その政策変更のためには、 まず人々が置かれている環境を改善する責務が公共にはあると思います。 過疎地域に住む人々がどうしたら元気が出せるのか。 その元気を出せる環境をつくり出していくために、 行政の支援が必要であります。 過疎地域の村づくりとは、 ただ単にもうけるための物をつくることではありません。 そこに住む人たちのやる気や意欲、 創造性、 協同性、 誇りや品格、 性根の据わった生き方などが同時につくられなければ、 真の村づくり、 村おこしとは言えないだけに、 地域の人々が独自の農林業を行い得るに至る環境づくりが今求められていると思います。
環境とは、 スイスのピレネー山脈の奥深い村に二十戸の中に三軒のカフェがあってコミュニティーがつくられている、 そのことも一つの例に挙げることができます。 過疎地域が生き残るために必要なものは、 道路や橋の政策のみではなく、 心の触れ合いがある親しい人間関係の存在であり、 安心して農林業の灯を掲げられる村づくりであります。
また、 地域開発の課題は、 地域に人々が住み、 豊かな生活を営み、 便利でかつ快適で、 住んでいる地域に誇りが持てるような地域をつくることであります。 そのためには、 地域に働く場所があり、 若者が就業できる機会がなければ長続きはいたしません。 このため、 農山村の特色を生かした農林業が営まれ、 若者が参画し、 心の触れ合いが感じられる農山村をつくっていく必要があると思いますが、 県はどのように考えているのか、 所見を伺います。
また、 法律による過疎地域ではありませんが、 静岡市井川地域の森林組合では、 本来の業務である山林育成以外に、 井川のダムの渡船等の業務の委託を受けるなど、 工夫をして地域の雇用の確保に寄与していると聞いております。 それぞれの過疎地域においても、 みずからの知恵と努力をもって活性化を図るための努力をしており、 過疎地域の振興のためには、 このような住民のやる気や助け合いの精神を醸成するようなシステムづくりが必要であると考えます。
今回、 本県を初め全国の過疎地域の強い要望もあり、 過疎地域自立促進特別措置法が平成十二年四月一日から施行されました。 新たな法律を契機として、 県はどのように美しい自然環境に恵まれた本県の過疎地域の振興を図っていくお考えなのか、 お伺いしたいと思います。
次に、 本県経済の現状認識と経済力強化についてお伺いしたいと思います。
先ごろの経済企画庁の発表によりますと、 昨年度の実質国内総生産は前年比〇・五%増と三年ぶりにプラス成長となりました。 この経済成長の要因については、 昨年度の前半、 公的需要や外需に支えられていたのに対して、 下期はIT 情報技術関連投資など民間需要が牽引する形で成長の原動力が変わってきたとされております。 また、 今後の我が国経済の動向につきましては、 日経新聞によりますと、 電子部品メーカーの増産投資といったIT投資だけでなく、 IT活用に向けた投資がどれだけ進展していくかが大きなかぎを握るとの見方が示されております。
こうしたことから、 本県経済におきましても、 県内企業がIT革命やそれに伴う経済のグローバル化に円滑に対応していくことが課題となりますが、 こうした流れの中で、 今後一層加速すると考えられる経済のソフト化、 サービス化といった構造的な変化に対応していくことも大変重要ではないかと考えます。 これまで本県では、 強い物づくりの工業力が経済をリードしてきたところでありますが、 浜松大学の坂本教授によれば、 例えば就業者一人当たりの製造品出荷額をとってみて、 この五年間の増加率が、 本県の場合全国数値を下回り、 四十七都道府県の三十四位、 その前の五年間の二十五位からランクを下げていることが指摘されております。
さらに、 サービス産業従事者の伸びが低いことなどからも、 本県の経済成長力が低下していると指摘されており、 このままいきますと、 本県のキャッチフレーズともいえる全国シェア三%県を維持していくことが困難になるのではないかと懸念されているところであります。 現在、 県ではものづくり県として製造業に強みを持った静岡県の特色を強く打ち出しながら、 中小企業対策や技術、 技能向上策等の施策推進をされておりますが、 本県が大競争時代におくれをとらないようにするためには、 それらの施策だけでは十分ではないのではないかと感じるものであります。
私は、 IT革命や経済のソフト化等の進展に伴って増大が予想されるニーズにこたえていくため、 サービス産業の創出を初め、 低迷している地場産業、 商工業者の新事業展開などにも重点を置いて本県の経済力強化を目指した施策の推進を図っていくべきであると考えるものであります。
そこで、 産業構造の変化など、 本県経済の現状とともに、 本県の経済力強化についてどのように認識しているのか、 知事の御所見をお伺いします。
また、 この四月に、 これまでの県中小企業振興公社と県科学技術振興財団を統合した財団法人しずおか産業創造機構が発足いたしました。 この統合については、 これまで両財団がそれぞれ有していた中小企業に対する経営面での支援機能と技術面での支援機能をあわせ持つ総合的、 一元的な産業振興機関を創出するものであり、 厳しい経営環境に置かれた県内の中小企業にとりまして、 支援体制が強化されるということについては評価をしたいと思います。 もとより、 二つの財団法人の組織をただ合わせただけでは、 新たな組織の事業が円滑に実施できるものではないでしょうし、 厳しい行財政環境の中で、 事務事業の効率化も当然図っていかなければならないことと思われます。 しかし、 合理化・効率化が優先されて、 組織統合によりサービスが低下することは許されず、 中小企業者の方々の要望に的確にこたえた業務運営が図られ、 これまで両財団が持っていた以上の大きな役割を果たしていくことが期待されるところであります。
さらに、 しずおか産業創造機構は、 県内における経済・商工団体、 試験研究機関などの産業支援機関の中核的な機関にも位置づけられるとされておりますことから、 その業務運営のあり方、 他の産業支援機関等にとりましても関係の深いことではないかと考えます。
そこで、 しずおか産業創造機構において、 円滑な業務運営を図るため、 どのような組織体制や業務推進方法を講じているのか、 お伺いしますとともに、 県では多岐にわたる財団の業務の中で、 どのような点に重点を置いて効果的な中小企業支援を図っていこうとされているのか、 お伺いいたします。
次に、 教員の再教育について質問いたします。
教員は、 難関の筆記試験や人柄や意欲などを重視する面接試験をクリアした優秀な人材が採用されていると思います。 しかし、 採用時には優秀であっても、 個人の努力と時代の変化、 流れを的確に情報としてキャッチできる能力がなければ、 激しく変化する時代に取り残される可能性がないとは言えません。
昨今、 西鉄の高速バス乗っ取り事件に代表される青少年による事件、 犯罪が多発しております。 これらの犯罪を犯す青少年は十七歳前後の年齢に集中しており、 多感な時期である青年期において引き起こされるこれらの行動を、 大人社会への警告として深刻な事態と認識すべきであり、 その問題点を問い直す必要があると思われます。 これらの問題に対処するためには、 親や家庭のあり方の見直し、 地域社会の教育力の復活など、 さまざまな手立てが必要だと思われますが、 とりわけ、 子供に対応する教育の専門家である教員の果たすべき役割は大きいものがあると考えます。 犯罪や非行に走る子供は、 しばしば事前に周りに対してサインを送っていると言われています。 他の大人たちには気づかないサインであっても、 それを見抜けるさらなる専門性を教員にも身につけていただきたいのであります。
教員は、 激しい社会の動きや一人一人の子供たちの心の変化に鋭敏に対応し、 他人の心の痛みなどが理解でき、 多様な価値観を持ち合わせた保護者や地域社会の要望にこたえ、 子供たちに対して的確な指導ができる力が要求されます。 そのためには、 教員になってからの時代の変化に応じた情報を受け入れる能力の充実が望まれます。 本県においては、 教員を民間企業等に長期に派遣し、 視野の拡大や意識改革を図る事業を実施していると聞いておりますが、 参加者数が限られるなど、 その効果や活用がどこまでなされているか、 疑問に感じております。
そこで、 今後の教員の再教育についてどのように取り組んでいるのか、 教育長の御所見をお伺いしたいと思います。
最後に、 人権教育の推進についてお伺いします。
人が人として尊重されるという考え方が当たり前となるような社会を実現するため、 あらゆる機会に人権について学ぶことができるように努力するということが人権教育と言われております。 県の人権同和対策室が県民の意識調査を過日行いました。 それによりますと、 人権について重要であると考える県民は九割を超え、 関心のある県民も八割ありました。 しかし、 今の静岡県は、 人権尊重の意識が生活の中に定着した住みよい県であると考えている人は約二割で、 権利のみを主張し、 他人の迷惑を考えない人がふえてきたという意見が八割を超えるなど、 人権の重要さは理解しているが、 現実の社会はそうなっていないと見ている人が多いのであります。
また、 同和問題を知っている県民は回答者の約六五%だが、 同和地区の起源について正しく理解している県民は四人に一人しかおりません。 今後の人権啓発、 教育について、 幼児期からの家庭における人権教育の充実が約七割、 次いで学校における人権教育が大事だと指摘されております。 そういった中で、 学校における人権教育の推進についてお伺いいたします。
学校教育の目的は、 教育基本法にいうところの人格の完成にあると思います。 我が国における子供を取り巻く環境は著しく変化し、 児童虐待、 いじめ、 不登校などが大きな社会問題となっております。 家庭、 学校、 地域社会が一体となって進めることが必要と思いますが、 今日の学校の人権教育の施策で十分なのかお伺いします。
次に、 個性や自由が尊重される中で、 自分さえよければ他人はどうなってもよいと権利のみを主張する子供が多いと思いますが、 子供のときからお互いの人権を尊重し合うことが大事だと考えますが、 学校では人権教育をどのように指導しているのか。 また、 教える先生方に対して人権教育についての研修等、 どのように行われているのかお伺いして、 私の質問を終わります。 どうもありがとうございました。 (拍手)
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