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本会議会議録

質問文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用



令和3年12月静岡県議会定例会 質問


質問者:

小長井 由雄 議員

質問分類

一般質問

質問日:

12/10/2021

会派名:

ふじのくに県民クラブ


質疑・質問事項:

1 県内港湾におけるカーボンニュートラルポートの形成に向けた取組について
2 リニア中央新幹線に係る今後の対応について
3 県産材の需要拡大につながる新工法の普及について
4 ひきこもり対策の強化について
5 マンションの適正な管理の推進について


○議長(宮沢正美君) ただいまから会議を再開します。
 質疑及び一般質問を行います。
 通告により、六十五番 小長井由雄君。
(六十五番 小長井由雄君登壇 拍手)
○六十五番(小長井由雄君) 私は、県政の諸課題について通告に従い知事、副知事並びに関係部局長に一括質問方式にて質問します。
 初めに、県内港湾におけるカーボンニュートラルポートの形成に向けた取組について伺います。
 先般、イギリスで開催された国際気候変動枠組条約第二十六回締約国会議いわゆるCOP26では温暖化ガスの排出削減などが話し合われ産業革命前からの気温上昇幅を一・五度以内に抑える努力目標が掲げられました。
 我が国でも、昨年十月菅前首相が二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言したところですが、この会議に出席した岸田首相も改めて温室効果ガスの排出量を二〇三〇年度に二〇一三年度比で四六%削減することを目指し、さらに五〇%の高みに向け挑戦を続け二〇五〇年カーボンニュートラルを実現することを宣言しました。
 官民で脱炭素社会に向けた機運が高まる中で、脱炭素はビジネス参加の最低条件という認識が定着してきました。第六次エネルギー基本計画では最大のCO2発生源である電力をつくるエネルギーの再生可能エネルギー比率を二〇一九年度の一八%から二〇三〇年度には三六から三八%に倍増させるとともに、二〇五〇年度までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げました。また地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画である地球温暖化対策計画の改定も閣議決定され我が国全体の削減目標が部門別に決定されました。
政府の方針を受けて国土交通省では、国際物流の結節点で我が国の輸出入貨物の九九・六%を取り扱い同時に日本のCO2排出量の約六割を占める発電、鉄鋼、化学工業などの工場が多数立地し産業の拠点でもある港湾部を脱炭素化に向けた集中的な対策拠点としたカーボンニュートラルポートCNPの形成に取り組もうとしております。
 国の方針では、まず国際戦略港湾、国際拠点港湾及び重要港湾で港湾管理者が関係事業者などの協力を得て各港湾において発生している温室効果ガスの現状を把握し削減目標を定めることとしています。それに基づいて次世代エネルギーとしての水素等の受入れ環境の整備や脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化等を実現するための検討と脱炭素化社会に向けた取組を積極的に行うことを目指したカーボンニュートラルポート形成計画を作成し脱炭素化を推進していくということです。
 このような中で、国際拠点港湾である清水港では昨年七月に県が、今年七月には静岡市がENEOS株式会社とそれぞれ静岡市清水区袖師地区を中心とした次世代型エネルギーの推進と地域づくりに係る基本合意書を締結して三者で相互に連携を図り脱炭素社会の実現に貢献する地域づくりを推進することを表明したと聞いております。
 数十年後に地球温暖化とCO2は無関係という結論が出るのかもしれません。しかし現状を傍観するリスクはあまりにも大きく地域においても脱炭素社会の実現に向けて、強力に取り組んでいかなければならないと考えます。
 そこで、港湾は脱炭素化の集中対策拠点とされていますが、清水港をはじめ県内産業を支える港湾を持つ静岡県ではカーボンニュートラルポートの形成に向けてどのような取組を行うのかお伺いします。
 次に、リニア中央新幹線に係る今後の対応について伺います。
 リニア中央新幹線静岡工区有識者会議の大井川水資源問題についての中間報告案が示され、それに対して静岡県は疑問や懸念を取りまとめた県の見解を国土交通省鉄道局長へ提出しました。
 私はこれまで、県とJR東海の対話における疑問が国交省の有識者会議でどのように議論され納得のいく説明が行われるのか、また助言指導に対してJR東海は地元の理解を得るためにどのように対応していくのか注視してきました。
 以下、六点にわたる県の見解に沿って感想を述べた上で質問します。
 一番目のトンネル湧水の全量戻しの認識について、全量戻しは大井川の水資源を工事中、工事後にかかわらず工事前の状態に維持することであり、それによって利水への影響を回避することだと考えます。
 これまでJR東海の幹部は全量戻しは工事中は含まない旨の発言を繰り返してきました。その認識は全量の戻し方という有識者会議の論点の前提条件を覆すもので非常に大きな問題であると考えます。
 二番目の工事期間中のトンネル湧水の流出の影響については、委員からの発言にあるようにトンネル工事により山体から抜けた地下水は元に戻らない、新しい地下水状態となるということです。その結果全量戻しだけでは上流域及び南アルプス地域の自然環境や生態系への悪影響は解消しないと考えます。
 三番目の県外流出するトンネル湧水を大井川に戻す方法について、JR東海は何年もかけて流域内に戻すと言っています。戻すという行為は水量のつじつま合わせをすればよいといった単純なことではなく、大井川流域の利水の状況を十分に踏まえたものでなければならないと考えます。しかしJR東海から実効性のある具体的な方法は提示されていません。
 四番目の発生土置き場と表流水、地下水との関係について懸念されるのは、周辺が山体崩壊の危険があると指摘されている場所に積み上げられた大量の発生土や重金属を含んだ盛土に関する安全性です。特に大地震や洪水、それらが複合的に発生した場合など非常時の安全性が心配されます。また土砂流出により既に土砂堆積率が高い大井川のダムへの影響に対する評価も必要ではないかと考えます。
 五番目の生態系への影響については、今後有識者会議で議論されると思いますが、JR東海には地下水位の低下による大井川流域及び南アルプス地域の生態系への影響を回避、低減しなければならないという意識が感じられません。
 六番目の今後の進め方については、JR東海が利水者等の水資源に対する不安や懸念に加え、大井川流域及び南アルプス地域のユネスコエコパークに指定されている地域は国民の貴重な財産であるという認識を持って対応されることが重要だと考えます。
 約一年八か月にわたる有識者会議で山梨県境、大井川直下の破砕帯の評価や実効性のあるトンネル湧水の全量の戻し方など重要な点で十分な議論がされていません。本会議初日にJR東海の当初の環境影響評価が十分でなかったとの認識も示されていますが、県は今後どのように対応していくのか、御所見と考えをお伺いします。
 次に、県産材の需要拡大につながる新工法の普及について伺います。
 静岡県では、県産材の需要拡大を図るために木造化の経費への助成をはじめ県産材利用のプランを提案できる設計者の育成や、木造化、木質化に関する技術の向上、習得を目的とした講習会の開催に取り組んでいます。
 木造建築物の普及には材料となる集成材の確保が必要とされていましたが県内にはそのための加工工場がありません。県産材を使用するとするならば一度県外の工場へ運び加工したものを再度輸送しなくてはならないのが現状です。これにより輸送経費がかかるだけでなく輸送時の二酸化炭素排出という点からもマイナスとなっております。
 本年三月に、JR仙台駅東口に木のぬくもりを生かした純木造の木質構造耐火建築で二〇二一年度の木材利用優良施設コンクールにおいて農林水産大臣賞を受賞した七階建てのビルが建設されました。このビルは日本で初めて主要構造部に木材を使用した高層建築物だと言われています。木造建築物の課題とされてきた強度を持たせるために複数の製材品を金物で接合した柱やはりを採用する接合金物工法で施工することにより十分な耐震性を担保しているということです。また耐火性能を高めるために国が認定する鉄筋コンクリートや鉄骨と同等の耐火性能を持つ独自に開発した木質耐火資材を採用しています。
 さらに、建築材は全て地域のスギ、ヒノキを地元の製材所で加工したものを使用しています。加えて鉄筋コンクリート造りのビルよりも建設費は一〇%程度安く抑えられ施工期間もかなり短縮できたということです。
 地元の製材工場で製材できるため、集成材使用に比べて加工費、材料費だけでなく輸送費の削減になり地元製材工場の稼働率も向上し木造木質建築における課題を解消する工法となっています。
 ほかにも、埼玉県さいたま市で計画されている八階建ての木造ビルの社屋は一般流通材と住宅用プレカット加工技術を用いたオープン工法により建設されるものであり、この工法は中小工務店が非住宅建築物に取り組むことができる工法として期待されています。
 一般に、中高層の木造建築では防火材料による木材の被覆や特殊な金物を使用する必要があることから建築コストが上昇しますが、この工法では五階建てまでなら鉄骨造り並みの建設コストを目指しているということです。このように近年木造での中高層建築が推奨される中で地元の木材を利用しやすい様々な工法が開発されています。
 木造建築の拡大を図ることによる脱炭素社会の実現に向けても、木造住宅の高さの基準緩和と防火規制を見直す建築基準法の改正が見込まれます。また林野庁からは建築物における木材の利用拡大を図り炭素貯蔵効果を高めようとする建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドラインが公表されるなど県産材の需要拡大に期待が高まります。
 令和二年の全国の建築物の階層の分布では五階建てまでが九九・一%を占めており、静岡県内でも九九・八%が五階建てまでの建築物です。したがって今後県産材を使用した中高層建築物が建設される余地は大きく、新しい工法を採用しての建築プランの提案が増えれば県産材を使用した木質建築が飛躍的に拡大することが可能だと考えます。
 県産材需要の拡大を図るために、技術開発が進む新しい木造建築工法への県の評価と普及策についてお伺いします。
 次に、ひきこもり対策の強化について伺います。
 ひきこもりに関して、内閣府が実施した二〇一五年度と二〇一八年度の全国調査によると十五歳から三十九歳までの五十四万一千人、四十歳から六十四歳までの六十一万三千人がひきこもり状態にあると推計されています。内閣府の調査に基づく数から静岡県内には三万二千人程度と推計されています。
 これまでひきこもりは若年層の問題であると考えられていました。しかし中高年層が多いというこの調査結果からこれまでの若者世代を中心とした支援策は実態に合っていないことが浮き彫りになりました。また八十歳代の高齢者の親が五十歳代の中高年のひきこもりの子供を支える八〇五〇問題も社会問題となりつつあります。
 本年六月、一般社団法人ひきこもりUX会議によりひきこもり、生きづらさの実態調査をまとめた「ひきこもり白書二〇二一」が出版されました。白書における調査では生きづらい状況が軽減、改善した変化について尋ねたところ、安心できる居場所が見つかったときと答えた人が五〇・三%と最も多く、自己肯定感を獲得したときの四五・八%、心の不調や病気が改善したときの四四・九%がこれに続いています。
 一方、就職したときは一八・三%でした。就職することをゴールとしていくことの大切さは変わらないと考えますが、ひきこもり支援を行う上での重要な示唆が得られる結果となっています。
 静岡県では令和元年度に県内全ての市町と共同で民生委員・児童委員、主任児童委員の御協力の下ひきこもり等に関する状況調査を実施しました。この調査はひきこもる本人や家族から直接聞き取られたものではなく、民生委員・児童委員がひきこもり状態にあると把握している二千百三十四人と限られた人数でした。しかし実態を踏まえた具体的な支援策を強化、検討するための基礎データを得て課題も明らかになったと思います。
 支援が届いていない潜在的なひきこもり状態にある方に対しては相談窓口などの周知、PRが必要であり相談体制についてもより利用しやすい方法での支援が必要ではないかと考えます。また居場所などにおいては支援する側の職員の育成、定着を目指した研修会や情報交換会などの充実が期待されます。
 厚生労働省は本年度までに市町村ごとにひきこもり支援体制を構築、整備することを求めており市町に対する支援も必要と考えます。
 県は、これまでひきこもり支援センターの設置やNPO法人、社会福祉法人と協働して県内五か所に居場所を設置し利用者の社会参加に向けた支援策を実施してきましたが、ひきこもり等に関する状況調査の結果を踏まえたひきこもり対策強化のための県の取組についてお伺いします。
 最後に、マンションの適正な管理の推進について伺います。
 国土交通省によると二〇二〇年末のマンションストック総数は累積で六百七十五万三千戸です。このうち築四十年を経過した高経年と言われるマンションは百万三千戸あり、二十年後には約三・九倍の四百四万六千戸になると推定しています。また一九八〇年以降に建てられた約半数は居住者が六十歳以上のみの世帯と高齢化が進み適切な維持管理に支障が出ています。
 問題は居住者の高齢化だけではありません。老朽化により外壁が落ちる危険が生じたり居住者の減少によるスラム化で治安の悪化も心配されます。
 昨年、滋賀県野洲市が廃墟化していたマンションを空家対策特別措置法に基づく行政代執行で解体、除去しました。自治体が強制的に取り壊すことになるとその負担は納税者に及びかねない問題となります。
 静岡県では、旧耐震基準で建設された県内二百九十七棟のうちの政令市分を除いた百四十二棟を対象にしたアンケートによる実態調査を実施しています。回収率は七六・一%でしたがこの中で廃墟同然のものが二棟あることが報告されています。この二棟はバブル期に建設されたリゾート地のものですが、同様な事例は横浜など都市部においても報告されており廃墟化したマンションの存在はリゾート地という地域特性だけのことではないようです。
 また、回答のなかったものの多くは管理組合としての実態がないなど管理不全に陥っていることが予想されます。
 このような管理不全の出現を防ぐために、国は昨年六月にマンション管理適正化法及びマンション建替円滑化法を改正しました。このうち改正マンション管理適正化法により来年四月から地方公共団体が管理適正化推進計画を作成し管理状況をチェックする管理計画認定制度が始まります。この制度は管理の適正化を図るために国や地方公共団体が示す基準に沿って基準をクリアした管理組合を地方公共団体が認定するものですが、一方で管理不全のマンションに対しては助言指導や勧告をすることで管理レベルの向上を図ろうとするものです。
 また、一般社団法人マンション管理協会は管理運営状態を五段階でランクづけする管理適正化評価制度をスタートさせます。このほかにも二〇一五年から実施されている一般社団法人日本マンション管理士会連合会による三段階ランクの管理適正化診断サービスがあり三つの審査制度が並立することになります。これら三つの審査制度はいずれも強制力のない任意の制度であるためにいかに実効性を確保していくのかが課題となります。
適正な管理を行っていくには、あくまでも当事者である区分所有者と管理組合が主体的に取り組まなければならないことは言うまでもありませんが現状は非常に心もとない状況です。
 そこで、県はマンション管理の適正化を増進するためにどのように取り組んでいくのかお伺いします。以上、答弁を求めます。
○議長(宮沢正美君) 川勝知事。
○知事(川勝平太君) 小長井議員におかれましては、いずれも重要な案件に対しまして五点にわたりまして御質問頂きました。しっかりと拝聴いたしました。そのうち私がお答えいたしますのは、県内港湾におけるカーボンニュートラルポートの形成に向けた取組についてであります。
本県では、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けまして国の二〇五〇年カーボンニュートラル宣言と同様に二〇五〇年までに温室効果ガスの排出量を吸収量と均衡させて実質ゼロとする脱炭素社会の実現を目指しております。また二〇三〇年度までに温室効果ガスの排出量を二〇一三年度と比べて四六%以上削減してまいります。
 この目標を達成するため、現在新たな地球温暖化対策実行計画の本年度内の策定に向け作業を進めているところであります。この計画の主要な施策の一つが港湾分野におけるカーボンニュートラルポートの形成であります。
 県では、いち早く脱炭素社会の実現に向けた取組を始めておりました。脱炭素社会の実現のためには再生可能エネルギー等の導入、水素の利活用、一定の範囲内での地域の自立分散型エネルギーシステムの導入等々が重要な役割を果たすことになります。
 そこで、清水港の袖師地区をモデルとして清水駅前のENEOS株式会社の用地を活用していくことについて意見交換し、御指摘のとおり昨年七月にENEOS株式会社と基本合意書の締結に至った次第でございます。その後清水港全体で脱炭素化に取り組むことといたしまして海外から水素等の大量かつ安定、安価な輸入を可能とする受入れ環境の整備や荷役機械の燃料を電池化する、また荷役機械を電動化するなど脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化に加えまして臨海部に集積する産業との連携などについて検討を進めてまいりました。そして先月三十日に国、県、市及び清水港周辺で活動を行う企業・団体の三十三社からなる清水港カーボンニュートラルポート協議会を設立いたしまして、清水港の資源や特性を最大限に生かしたカーボンニュートラルポートの実現について多様な主体の参加による取組を開始したところでございます。
 港湾は地域経済を支える物流拠点であり、また背後に多様な産業が立地し多くのエネルギーを消費する地域でもあります。港湾地域において先導的な取組を集中的に行うことは脱炭素社会の実現に大きく寄与するものであります。このため清水港に加え田子の浦港、御前崎港においても各港の特性を踏まえたカーボンニュートラルポート形成計画を策定しその実現に取り組んでまいります。
 二〇五〇年における脱炭素社会の実現のため、県民や企業の皆様と連携した社会総がかりによる取組を進めて環境と経済が両立した社会の形成を目指してまいります。
 その他の御質問につきましては、副知事、関係部局長から御答弁を差し上げます。
○議長(宮沢正美君) 難波副知事。
○副知事(難波喬司君) リニア中央新幹線に係る今後の対応についてお答えをいたします。
 国土交通省が設置した有識者会議は、大井川水資源問題についての科学的、工学的根拠に基づくこれまでの議論を中間報告として取りまとめるとし、九月二十六日に行われた第十二回の有識者会議で中間報告案が示されました。中間報告案につきましては、静岡県としてはまだ疑問や懸念が残っておりました。このため十月十八日に中間報告案に対する県の見解を国土交通省鉄道局長宛て送付しました。その中ではJR東海の説明が社会の理解が得られるものとなるようJR東海を指導頂くために六項目の見解を述べたところです。
 有識者会議で十分議論に達していない事項は、議員御指摘の実効性のあるトンネル湧水の全量の戻し方のほかにも、トンネル掘削により山体の地下水位が低下することで大井川水系全体の水資源の安定性に影響が出る可能性、あるいは発生土置き場を継続して適切に管理することができるか否かの問題があると認識をしております。
 トンネル掘削に伴う生態系への影響につきましては、有識者会議では議論する論点がまだ整理されていない状況であります。
 国土交通省の有識者会議の中間報告は、有識者会議がこれまでの会議等を通じてJR東海を指導してきた内容を示すものであると県は認識をしています。県は有識者会議にオブザーバーとしての参加が認められているという立場を理解し、その上で同会議における議論の内容や中間報告の内容についてはこれまで国土交通省に対し再三意見を述べてまいりました。それらの意見については全てではありませんが中間報告には考慮していただけるものと想定をしております。
 また、中間報告は有識者会議がJR東海を指導するためのものであるという性質のものです。よって中間報告の取りまとめの最終段階においては仮に県として疑問があったとしてもこれ以上意見を出さない予定であります。
 中間報告が取りまとめられますと、JR東海は地域住民に分かりやすい説明をすべきとの有識者会議の指導に従いJR東海が大井川水資源問題における論点について県の地質構造・水資源専門部会に説明資料を作成をした上で県と対話を行うことになります。
 県といたしましては、JR東海から科学的根拠に基づく分かりやすい資料で説明が行われるものと期待をいたしまして、公開の場において科学的根拠に基づくJR東海との対話を尽くしてまいります。以上であります。
○議長(宮沢正美君) 細谷農林水産担当部長。
○農林水産担当部長(細谷勝彦君) 県産材の需要拡大につながる新工法の普及についてお答えいたします。
 中高層の木造建築では、構造材として用いる木質部材には所定の強度に加え火災の際に燃えずに構造性能を一定時間維持する耐火性が求められています。議員から御紹介のありました宮城県の事例では、無垢材を束ねて石膏ボードで覆いその外側を木材で覆った木質耐火部材が使われております。製造工場が限定される集成材に限らず本県木材製品の大半を占める無垢材を利用できることから、こうした工法の普及には県産材の利用拡大につながるものと期待をしております。
 脱炭素社会の実現に向けて木造建築物の炭素貯蔵効果が注目される中で、新工法の開発や建築基準法の改正を追い風に木造の中高層建築物、いわゆる木造ビルが全国の都市部を中心に増加しております。こうした動きを県内に普及していくためには、非住宅建築物の建築主に対して木材利用の意義やメ リットについて理解を促すことで建築物の木造化への意欲の向上を図ることが重要となります。
 このため、県では建築主となる企業や建築主に建築計画を提案する設計事務所等が参加するふじのくに木使い推進会議におきまして、新工法の炭素貯蔵効果や建築コストなどを情報提供し中高層建築物の木造化に対する理解を促進してまいります。また設計事務所の建築士を対象としたふじのくに木使い建築カレッジにおきまして、木造建築の基本的な構造設計に関する技術講習に加え新工法を取り入れた先進事例の見学会を開催するなど民間の非住宅建築物の木造化を促進し県産材の需要拡大につなげてまいります。以上であります。
○議長(宮沢正美君) 石田健康福祉部長。
○健康福祉部長(石田貴君) ひきこもり対策の強化についてお答えいたします。
 県では、令和元年度に実施いたしましたひきこもり等に関する状況調査の結果を踏まえまず支援や相談に対応する県ひきこもり支援センターの周知を強化することとし、令和二年度からインターネット上でひきこもりに関する検索をした方に対して支援センターへ誘導する検索連動型広告を開始し相談のきっかけづくりに努めております。また市町における相談体制の整備を支援するためひきこもりに関する専門知識を有するアドバイザーを派遣し、令和二年度は四市町、令和三年度は五市町に対してひきこもり支援の事例検討会や講演会の開催、居場所の開設、関係所属間の連携など各市町の状況に応じた具体的な助言等を行っており現在二十九市町で相談窓口が設置されております。
 一方で、ひきこもりは様々な問題が複合的に関係し各市町の取組状況が異なりますことから支援従事者に対して対応の仕方などを学ぶ研修会を実施したほか、市町担当者が情報交換する場を設けて取組事例の共有を図り県内どこでも支援が促進されるよう努めております。
 県といたしましては、今後も市町やNPO法人などの関係団体と連携して支援の充実を図りひきこもりの方が身近な地域で必要な支援が受けられる体制を整備してまいります。以上であります。
○議長(宮沢正美君) 市川くらし・環境部長。
○くらし・環境部長(市川敏之君) マンションの適正な管理の推進についてお答えいたします。
 マンションの適正な管理を進めるためにはまずは各マンションの管理実態の把握が重要であります。県内には約千九百棟、九万二千戸のマンションがあり、県及び市町は管理実態の把握のためアンケート調査を進めております。これまでに約六割の管理組合から回答を頂きましたが、未回答の約八百の組合に対してアンケートの回答をさらにお願いするとともに現地訪問により建物の状況の確認や組合からの聞き取りを引き続き実施してまいります。
 アンケートからは、築四十年以上を経過したマンションの中には管理組合の実態がない、管理規約や長期修繕計画がないなど様々な課題があることが分かってきました。このため県及び市町は一般社団法人静岡県マンション管理士会と連携しマンション管理セミナー及び相談会を開催するとともに、マンション管理士を現地に派遣して個別のマンションに応じた専門的できめ細かな支援を行っております。
 来年四月の改正マンション管理適正化法の施行により、適切な管理計画を有するマンションを認定することでマンションの資産価値を向上させ、良質な管理が評価でき安心して住める仕組みが整います。県及び市町では認定のメリットを紹介するダイレクトメールを管理組合に送付して認定を促すとともに、ホームページ等で認定マンション名を公開することにより認定数を増やし制度の実効性を高めてまいります。
 また、改正法では県及び市町は管理が適切でないマンションに対して助言、指導、勧告ができることとなりました。このため県及び市町の担当者が的確な指導等を行えるようマニュアル等を整備するなどマンションの管理レベルの向上に努めてまいります。
 県といたしましては、改正法の施行に合わせて県、市町で構成する静岡県マンション管理適正化推進協議会を発足させ一体となって認定制度の普及やマンションの管理レベルの向上を図る体制を整備しマンション管理の適正化を推進してまいります。以上であります。
○議長(宮沢正美君) 小長井由雄君。
(六十五番 小長井由雄君 登壇)
○六十五番(小長井由雄君) それぞれお答えを頂きましてありがとうございます。
 要望を三点と再質問を一点させていただきます。
 県産材の需要拡大についてでございます。
 木材利用の拡大はカーボンニュートラルの達成にも寄与します。例えば木造建築で言えば代表的な草薙体育館、ここでは静岡県産のスギが七千二百本使われたというふうに試算されております。面積にすれば約七・二ヘクタールの山林に生育しているスギがあるということになろうかと思います。
 さらに、林野庁公表のガイドラインで算定するとここで貯蔵されている二酸化炭素は三十六万立方メートル、二十五メートルプールにしまして約千杯分の二酸化炭素が貯蔵されていると換算されています。つまり木造建築物が建てられるとそこに森ができ炭素が貯蔵されると考えられます。県産材の需要拡大が脱炭素を推進することになりますので県産材による木造建築の拡大を図っていただくようにお願いいたします。
 次に、ひきこもり対策についてでございます。
 まず、ひきこもりに対応する相談員の育成やひきこもっている方たちの家族が集まれる居場所の充実をお願いしたいと思います。
 さらに、県が委託している居場所についても長年委託費が据え置かれております。そのために経験を積んだ職員の定着が、その点で課題だというふうに聞いております。財政が厳しいことはよく理解はしておりますが委託費にかかる消費税分、この程度はぜひ増額していただくようにお願いいたします。
 次に、マンションの適切な管理の推進についてでございます。
 来年から始まりますマンション管理計画認定制度は強制力のない制度でございます。本来この制度に参加してもらう必要のある管理不全のマンションがわざわざ不利な情報を明らかにするということで参加するということは考えにくいことだと思います。
 したがいまして、申請件数を確実に確保することが実効性のあるものになるということだと考えますので諸施策を取り入れた対応をぜひお願いをしたいと思います。
 それでは、質問に移らせていただきます。
 リニア中央新幹線に係る今後の対応についてでございます。
 国交省へ提出した有識者会議における中間報告案に対する県の見解についてをまだ案という段階で今回取り上げさせていただきました。
 県の見解を読むと有識者会議の議論がよく理解をでき、問題点も明確に分かるものとなっております。
 中間報告案及び県からの見解から、県民の理解、安心を得ることは難しいし、今後生態系への影響の議論が始まったとしても再度大井川の水問題あるいはトンネル湧水の影響による南アルプスの地下水の議論へと戻らざるを得ないというふうに思います。
 このことを念頭に置いて十二月議会での知事、副知事の御答弁を聞いていると現状ではこの国の議論あるいはこれまで行われた県との対話をどこまで続けても、県民の理解を得ることができる説明はJR東海から聞くことはできないというふうにおっしゃっているのではないかなというふうに受け止めました。このことに対する御所見を伺います。
 また、JR東海がこれまでどおり工事を進めようとするならば、不十分である環境影響評価をやり直した上でリニア新幹線について再度検討したほうがいいのではないかと考えます。民間の事業ではありますが県として十分な環境影響評価が実施されていなかったと、こういった認識をお持ちだということですからJR東海への環境影響評価のやり直しを進言することが前向きな対応だと私はそのように思います。
 また、このことは精度の高い予測を求めた環境影響評価書の環境大臣意見にも合致することではないかというふうに考えます。県の考えをお伺いしたいと思います。以上答弁を求めます。
○議長(宮沢正美君) 難波副知事。
○副知事(難波喬司君) リニア中央新幹線に関する再質問についてお答えをしたいと思います。
 環境影響評価についてですけれども、JR東海はこれまでJR東海自分たちの環境影響評価は十分であるというふうな認識をしておりましたけれども、最近のいろいろな議論を踏まえて特に生態系については十分ではないのではないかということをですね、ようやく理解をしてきたという状況にあると思います。
 したがって、そういう気づきが出たということでそれを踏まえてまずはJR東海がしっかりお考えになるんではないかというふうに思います。そのお考えになった結果をまた示していただけると思いますので、それを踏まえて今後の対応をすべきというふうに考えております。以上であります。
○議長(宮沢正美君) これで小長井由雄君の質問は終わりました。(拍手)

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