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本会議会議録

質問文書

開催別知事提案議員別代表質問一般質問検索用



平成16年2月静岡県議会定例会 質問


質問者:

小楠 和男 議員

質問分類

一般質問

質問日:

03/04/2004

会派名:

自由民主党


質疑・質問事項:



    ○副議長 (小野健吾君)  ただいまから会議を再開します。
     質疑及び一般質問を続けます。
     通告により、 五十三番 小楠和男君。
            (五十三番 小楠和男君登壇 拍手)
    ○五十三番 (小楠和男君)  私は、 自由民主党所属議員として、 当面する県政の諸課題について、 知事及び関係部長に伺います。
     今回の質問は、 諏訪湖を源流とし遠州灘に注ぐ全長二百十三キロメートルの大河川、 天竜川とその河口部海岸に焦点を絞ってお尋ねします。
     天竜川は太古の昔より、 上・中流部は天竜下りに見られるように急流で知られ、 下流部の遠州地方では三方原台地と磐田原台地の間を広く遠州平野全体にわたって流れており、 しかも本流一本ではなく多くの流路をもって網状に流れていたと思われます。 あばれ天竜と呼ばれるように絶えず洪水を引き起こしながら上流から土砂を供給し続け、 現在の肥沃な遠州平野を形づくったとされています。
     また、 天竜川の上流と下流を結びつけた伝説も多く、 浜北市の岩水寺の鍾乳洞が天竜川の源である諏訪湖に通じているとする伝説や遠州七不思議の一つとされ、 おひつ納めで知られる浜岡町の桜ケ池の水脈も諏訪湖につながると言われています。 また見付の天神様として親しまれ奇祭裸まつりで知られる磐田市の矢奈比売神社と信州駒ケ根の光前寺の間には、 見付天神で人身御供とされるはずだった娘を助け怪物を退治した光前寺の飼い犬、 霊犬早太郎、 遠州地方では悉平太郎という犬の活躍の伝説は、 天竜川を介し北遠にもその足跡を残しつつ遠州と信濃を結ぶ伝説としてとても興味深いものです。  歴史の上でも、 十四世紀、 南北朝の時代、 後醍醐天皇の第五皇子宗良親王は南朝方の劣勢挽回のため天竜川の河口部の白羽湊に上陸し、 天竜川に沿って遠州、 信濃、 越中、 越後を転戦し、 諸説ありますが引佐町の井伊城で亡くなり墓は井伊谷宮に祭られています。 また戦国時代には、 京に上り天下を取ろうとした駿河の今川義元、 甲斐の武田信玄、 尾張の織田信長、 三河の徳川家康らが遠州、 伊那、 信濃の地で覇を競ったのも天竜川流域を舞台にした壮大な歴史のドラマでした。
     江戸期以降、 伊那や北遠からは天竜川の水運を利用して大量の木材が搬出され、 その積み出し港として竜洋町の掛塚湊は大いに繁栄しました。 五月の連休に行われる大たこ揚げで知られる浜松まつり、 夜の御殿屋台引き回しに使われるけんらん豪華な屋台の原型が掛塚の屋台であることを知れば、 江戸期から明治初期までの掛塚の繁栄ぶりがうかがい知れるでしょう。
     しかし、 明治二十二年、 東海道線の開通により、 天竜川の水運によってもたらされた木材や鉱物資源は浜松市の中野町から鉄道によって運び出されることとなり、 掛塚湊は急速にその地位を低下させ、 一方で木材を加工する製材業を中心に中野町は大いに栄えました。 その後、 昭和十二年には現在の飯田線が全線開通するとともに、 昭和九年の泰阜ダム以降、 平岡、 佐久間、 秋葉のダム建設により、 天竜川の水運の歴史は終止符を打ち、 現在は天竜峡と天竜市において観光舟下りが残るのみとなりましたが、 天竜川に起因する産業や町の興亡史としても興味深いものだと思います。
     最後に、 天竜川を語る上で忘れてならない人を紹介します。 浜松市の中野町の庄屋、 金原明善その人です。 経済人として銀行や企業を興すだけでなく、 天竜川の治水のための堤防建設に取り組むとともに北遠はもちろん伊那地方にまで植林を大規模に手がけ、 現在も天竜美林としてその名は全国に知れ渡っています。 また治水のための植林は今日の緑のダムの考え方でもあり、 その先見性は驚くばかりです。
     さて、 少々長くなりましたが皆様に天竜川について予備知識を持っていただけたところで、 まず知事に悠久の歴史と文化を持つ遠州地方の母なる川、 天竜川について、 どのような思いを持っておられるのかお伺いします。
     次に、 海岸保安林の管理について伺います。
     天竜川河口部の遠州灘海岸は白砂青松の名のとおり、 青々としたクロマツの松林が続いています。 全県で見ますと静岡県の海岸線五百六キロメートルのうち百キロメートルに面積約千二百ヘクタールの松林があり、 これらは飛砂防備、 防風、 潮害防備、 保健などを目的とする保安林に指定されています。
     海岸保安林は、 古くは住民の手で、 また近年では公共事業などにより造成、 整備されてきました。 十六世紀には武田・北条の合戦により刈り払われてしまった沼津市の千本松原を増誉上人という方がクロマツを植林したとのことですし、 遠州灘海岸でも農民による海岸への植林が始まったとの記録が残っています。 以来、 開墾した田畑や住居の保全のため住民の手によりクロマツが植えられてきました。
     遠州灘海岸に多く見られるクロマツに覆われた砂丘は、 私の地元ではドエと呼ばれ天竜川が運んだ砂が漂着し沖へ沖へと土地が広がるにつれては、 また砂を盛ってクロマツを植え松林と松林の間を農地として開墾したようです。 住民は農地や住宅が砂で埋もれないようにクロマツを植えるとともに竹簾の設置やそだ立てなどの砂の移動を抑える作業は、 毎年冬の村の年中行事で遠く三方原台地にまでそだの材料となる雑木の枝を荷車で買いに行き、 浜へそだ立てをするのは大変な重労働だったようです。
     昭和に入ってからは、 農産物増産のための防風を目的とする造林が始まり、 昭和七年からは県事業として海岸林造成が実施され、 戦時中の中断はあったものの戦後も公共事業として海岸の砂地造林が進められて今日に至っております。 現在では大きく育ったクロマツ林により、 防砂、 防風、 防潮の目的が達成されるとともに、 開発が進み住宅や工場が海岸線に立地するようになりました。
     しかし一方で、 かつて防災を目的に植えられた海岸林が、 松の成長とともに新たな課題を生じさせました。 樹齢百年を超す巨木の張り出した枝は民家の屋根にまでかかり、 台風などのときには枝が折れ、 住宅や自動車に損害を及ぼす事例が発生していますし、 張り出した枝は民家に影を伸ばして日照を遮るといった状況も生じています。 また、 たばこの投げ捨てなどによる火災の発生やごみの不法投棄なども、 人の入り込みが容易な松林という性格上、 増加が著しく問題となっています。 遠州灘海岸の遠州浜団地や中田島団地では十数年来の課題となっており、 地元住民の協力をいただきながら、 早期の状況の改善が必要だと思います。
     そこで、 防災の機能を残しながら地域の住環境と美しい松林が共生していくために、 どのような方策を考えていくのか伺います。
     次に、 河川と松林への廃棄物不法投棄対策について伺います。
     先ほどの海岸保安林の管理でも少し触れましたが、 河川と松林のごみの山には閉口してしまいます。 私は平成十四年六月議会において、 天竜川における不法投棄対策について伺いました。 環境森林部長からは河川管理者である国土交通省を初めその他の団体と協議して、 河川への不法投棄に対する連絡網を整備するとの答弁がされ、 その後、 実際にこの連絡網が整備されたとの報告を受けております。
     しかしながら、 昨年暮れに大型車で持ち込まれたと思われる廃タイヤが天竜川右岸の浜北市と天竜市の境にいまだに山積みになっているのを初め、 毎年五月に天竜川漁協が実施する河川清掃では、 大型家電や日用品、 果ては車まで相も変わらぬごみのデパート状態が確認でき、 ごみはふえこそすれ減っていないのが見てとれます。 同じ状況は県管理の遠州灘海岸の松林でも見られ、 県や市、 地元自治会の建てた 「ごみ捨てるな」 との標識が散乱するごみの上に立っている姿は、 むなしさすら感じさせます。 モラルの低下と一言で片づけられない重大な社会構造の問題があると思われます。
     県は来年度予算で、 不法投棄撲滅対策事業費として四千三百五十万円の予算を計上し、 ナンバープーレートの自動観測装置や不法投棄防止さくの設置など、 未然防止の対策をとるとしています。 これらは主に産業廃棄物などの大がかりな不法投棄に効果があると思われますが、 河川や松林などの規模の比較的小さな不法投棄に対して今後どのように取り組んでいくのか伺います。
     次に、 アユの増殖について伺います。
     三月一日に、 県内のほとんどの河川では渓流釣りが解禁されました。 今ごろは多くの釣り人がアマゴやニジマスを求めて、 山深く水清らかな川へと釣り糸を垂らしていることでしょう。 渓流釣りは経験豊かな上級者向けともいいますが、 初心者から上級者までがさまざまな漁法で楽しめるのがアユ釣りだろうと思います。
     その昔、 天竜川はアユの魚影が濃く全国にその名を知られたアユ釣りのメッカでした。 静岡県農林水産統計年報によれば、 直近の平成十三年と十年前の平成三年を比べても全県下の河川におけるアユの漁獲量は、 平成三年の約八百五十トンから四百トンへと半減しています。 特に天竜川では平成三年の五百五十トンから百四十トンへと、 何と約四分の一に激減しているのです。
     十年前までは、 県内のアユの漁獲高の六割以上を占めていた天竜川でしたが、 現在では約三割を占めるにとどまっています。 漁業者や遊漁者による乱獲、 近年深刻になってきた冷水病やカワウによる食害被害等、 幾つかの理由が想像できますが、 安倍川とその支流の藁科川が近年漁獲高をふやし、 とうとう平成十三年には天竜川を上回ったのは、 先ほど述べた理由のほかに河川環境に重大な影響を与えるダムの存在の有無が関係していると言わざるを得ません。
     安倍川、 藁科川にはダムが存在しないのに対し、 天竜川には昭和三十一年の佐久間ダムの完成に続き昭和三十三年の秋葉ダム、 さらには昭和五十二年の船明ダムがその本流に建設され、 特に船明ダム建設後はアユ資源の再生産のための漁場は、 天竜川河口から船明ダムまでのわずか二十九キロメートルでしかありません。 船明ダムにはアユの遡上のための魚道が設置されてはいますが、 魚道を目指すアユの群れはカワウの格好のえさ場となっており、 魚道の効果は期待ほどではないようです。
     このわずか二十九キロメートルの流域でアユが十分に生育すれば問題はないのですが、 アユが成長するには河岸の岩や石に付着した藻類、 つまり藻を食べることが必要であり、 しかもこの藻を食べることによって香魚と呼ばれる天然アユ独特の香りを持つようになります。 しかし、 上流のダムから流れる放流水は堆積土砂の中の細かなちりのような微粒子――これをシルトと呼びますが――これを多く含み、 この微粒子が河岸の岩や石に付着してアユのえさとなる藻類の繁殖を妨げているとの研究もあります。
     一昨年の二月議会における我が党の中谷議員の質問にあるように、 アユ資源は中山間地の地域経済にも大きな影響を持つのはもちろんのこと、 多くの太公望がアユ釣りを楽しめる往年の天竜川をよみがえらせるためには、 県はアユの増殖に対してどのような施策を考えておられるのかお伺いします。
     次に、 天竜川ダム再編事業と海岸管理について伺います。
     国土交通省では、 平成十六年度予算として一億二千万円の調査費を天竜川ダム再編事業に計上しました。 この事業は天竜川下流域の治水対策と佐久間ダム上流の長野県天龍村付近のたび重なる浸水被害の軽減のために、 佐久間ダム、 ダム湖に堆積する土砂一億一千万立方メートルのうち、 五百万立方メートルを湖外に移動させて洪水対策とともに海岸侵食の対策も行おうとするもので、 総事業費七百三十億円が予定されています。 五百万立方メートルの堆積土砂の移動にはダンプカーの利用や佐久間ダムの山腹にダムを迂回するトンネルを掘り、 洪水時に土砂を下流に流す排砂トンネルの建設など、 さまざまな検討がこれからされていくと思われます。
     私は過日、 佐久間ダムの上流約十五キロメートルにある愛知県富山村へ行ってきました。 富山村は佐久間ダムの建設時にほとんどの集落がダム湖に水没し、 平成十二年の国勢調査では人口約二百人の全国一小さな村です。 佐久間ダムの上流は約二十キロにわたりダム湖として水をたたえ、 富山村もふだんは広々としたダム湖に面しています。 しかし湖底には上流で洪水を引き起こす原因となる土砂の堆積が進んだため、 比較的湖底に余裕のあるダム本体近くに土砂を移す流砂促進事業とダム湖から直接湖外に年間四十万立方メートルを搬出する事業とが併用して進められています。
     私が訪れたときは、 流砂促進のためダム湖の水位を約四十メートルほど下げ、 出現した湖底の土砂を上流の平岡ダムの放水する流れによって下流に押し流そうとしている現場でした。 実際に湖底におりてみましたが見渡す限りの広大な土砂の平原に、 自分の足元よりもまだ下に数十メートルの堆積土砂があるのかと思うと、 その量は私の想像をはるかに超えるものであり、 これがすべて下流に流れ遠州灘に注いでいたのなら、 今深刻な問題となっている遠州灘海岸の侵食は起こりはしなかったのだろうと思いをめぐらしました。
     しかしながら、 ダムの存在を否定するのではなく発電と利水のためにつくられた佐久間、 秋葉、 船明の三つのダムですが、 結果として私たちの遠州地域を洪水被害から守ってくれているのです。 また私たちの飲み水や農業用水、 工業用水にも不自由はしていません。 天竜川ダム再編事業はダムと私たち人間の豊かで安全な暮らし、 そして天竜川に住む魚類や鳥類、 昆虫類や植物とがともに生きていくための壮大な大実験が今まさに始まろうとしているのです。
     天竜川においては、 平成十四年度から総合土砂管理に向けた取り組みとして、 天竜川総合土砂管理対策委員会を設置していますし、 平成九年の河川法の改正により、 今後二十年から三十年間の河川の整備の目標や内容を示す河川整備計画を策定するための天竜川流域委員会が設けられて検討がされています。 これらは天竜川の河川管理者である国土交通省の手により進められていますが、 海岸管理者としての責任ある立場の静岡県として、 これからの天竜川における事業についてどのようにかかわっていくのか、 また、 どのような主張をしていくのか伺います。
     最後に、 天竜川下流域の道路整備について伺います。
     あばれ天竜は、 東西交通にとっては大きな妨げであり、 旅人や地域住民は横断のために大変な苦労をさせられてきました。 江戸時代には東海道五十三次の版画にも見られるように、 舟渡しであり豊田町の池田の渡しが最大規模でした。 明治に入って初めて橋がかけられたのは、 明治七年に賃取り、 つまり有料の舟橋として地元の人々により架橋されましたが洪水のたびに流されていました。 本格的な木橋は明治九年に冒頭にも紹介した金原明善によって、 当時のお金で一万二千円で完成し十年で償却するはずのこれまた賃取り橋でした。 想像するに川越人足や舟渡しと同じく架橋は商売になると考え、 地元の資産家たちがこの事業に取り組んだのだと思います。 公共事業の概念のない時代の民間活力の発露の一つと言えるでしょう。
     しかしながら、 明善のかけた橋も洪水のたびに流され明善自身も事業から撤退し、 その後もさまざまな人々が架橋に取り組みましたがいずれも失敗し、 昭和八年にやっと今の天竜川橋が鉄橋として完成しました。 ちなみに鉄道橋は、 明治二十二年の東海道線全線開通時に大変な難工事の末、 鉄橋として完成しています。 その後、 天竜川下流域では昭和三十年に掛塚橋、 四十年に新天竜川橋、 平成元年に遠州大橋と架橋がされ現在に至っています。
     さて、 浜松市と磐南地域は浜松市内の製造業が磐南地区に新工場を建設したり会社そのものの移転が進むとともに磐南地域での宅地開発が進んだことにより、 浜松市内への通勤者が増加するなど、 天竜川を挟んでの人と物の移動はますます増大しています。 国道百五十号の掛塚橋や国道一号の新天竜川橋は慢性的な渋滞に悩まされており、 大きな経済的損失であるとともに周辺住民の生活道路の確保の観点からも重大な支障を来しています。
     これまでも県では、 国道百五十号バイパスとして平成元年に新掛塚橋、 通称遠州大橋の整備をされましたが、 残念ながら有料道路としての建設となり無料化までにはさらに今から十五年を要するとのことですし、 百五十号バイパスの天竜川左岸の竜洋町、 磐田市から大須賀町に至る道路整備は思うに任せず、 アクセスの悪い状況がしばらく続くと思われます。 また国土交通省では、 平成十九年度の供用開始を目指して国道一号の新新天竜川橋の架橋に取り組んでいるところであり、 早期の供用開始と交通渋滞の緩和に大きな期待をしているところです。
     さらに県道磐田細江線、 いわゆる旧国一の天竜川橋と掛塚橋の間で、 浜松市側の都市計画道路飯田鴨江線と磐田市側の高木大原線を結ぶ仮称飯高大橋の構想は、 厳しい財政状況や県内の長大橋の建設計画の中で、 すぐに事業着手とはいかないとは思いますが、 地元住民はもちろん、 遠州地方の食材を一手に扱う浜松市中央卸売市場の関係者にとっても長年の夢であります。
     このような状況を踏まえ、 天竜川下流域の東西方向の交通渋滞解消のために、 県としては将来的な視点に立ったこの地域の道路整備についてどのように考えているのかお伺いして、 私の質問を終わります。 (拍手)
    ○副議長 (小野健吾君)  石川知事。
            (知事 石川嘉延君登壇)
    ○知事 (石川嘉延君)  小楠和男議員にお答えをいたします。
     初めに、 天竜川に対する私の認識についてであります。
     小楠議員の天竜川の歴史についてのうんちくを傾けてのお話に大変感心をいたしますとともに、 興味深く拝聴いたしました。
     我が国屈指の急流河川であります天竜川は、 多彩な動植物が分布する豊かな自然環境の中、 雄大な流れを誇り昔から母なる恵みの川として流域の生活や産業、 交流を支える一方、 あばれ天竜として人々に恐れられ幾多の災害をもたらした川でもありました。 こうした自然の脅威に対して金原明善翁を初め、 地域の人々は時に激しく立ち向かい、 たゆまぬ治水への努力を重ねた結果、 日本三大人工美林と言われる天竜美林を今日に残し、 かつまた、 茶や花卉などの多彩な農業を興し、 下流域には楽器や繊維、 輸送用機器などの産業が集積し、 我が国有数の物づくり地域を形成してきたところでございます。 大河の歴史は流域に暮らす人々の歴史そのものであります。 これまで幾多の課題や危機を乗り越え未来を開いてきた天竜川をめぐる人々の歴史は、 富国有徳の県づくりに多くの教えを残しているものと思います。
     私は、 今後とも天竜川地域を初め県内各地の先人の地域を思う心と努力に学びながら、 豊かで有徳の志を持った、 世界に誇り得る魅力ある県づくりに邁進してまいりたいと考えます。
     次に、 天竜川ダム再編事業と、 海岸管理についてであります。
     天竜川ダム再編事業は、 佐久間ダムに新たな洪水調整機能を持たせ、 下流部の洪水防御を図るとともに下流へ土砂を供給することにより海岸保全対策に寄与するもので、 県といたしましては、 その効果を大いに期待し早期に実施されるよう強く要望してきたところでございます。
     今後は、 国ではダム下流への恒久的な土砂供給システム構築のための基礎データの収集やモニタリング調査、 新技術の開発などを行うとともに、 新たな検討委員会や地域の合意形成の場を設け事業計画を策定していくこととしており、 県として積極的にかかわってまいりたいと考えております。
     海岸保全の点から申し上げますと、 遠州灘沿岸の砂浜の回復には天竜川からの土砂供給が必要不可欠でありますが、 その効果を遠州灘全域において早期に発揮させるため沿岸構築構造物による砂の流れの遮断を回復させるサンドバイパスの導入を図るなど、 県でも取り組みを進めてまいりたいと考えております。 また、 これまでも洪水防御や水利用、 ごみ問題等の課題に対し国や関係自治体とともに一体的に取り組んでまいりましたが、 今後は土砂を移動させることに伴う河川への影響も考えられますので、 これらにつきましても適切に対応してまいります。 流域を代表する立場として県は事業費の一部を負担してまいりますことから、 あらゆる機会をとらえて本事業の推進を国に働きかけてまいります。
     佐久間ダムにつきましては、 私もちょうど中学二年生のときに建設中のダムの見学をいたしました。 もうあれから五十年、 この五十年を振り返ってみますと佐久間ダムが当時の土木技術、 そして科学的な知見を踏まえて構築をされ電力供給、 そして洪水調節に多大な役割を果たしてまいりましたし、 そのような期待のもとにこれも建設されました。
     そういう非常に未来に向けての明るい夢を感ずるものであるということを当時見学をして、 非常に印象強く私も思い出しますけれども一方で五十年間を振り返ってみますと、 ある意味ではこれは部分合理的な我々人類の知恵といいますか、 人間の知恵は大自然に比べると部分合理的なものにすぎなかったのではないかということを昨今のさまざまな現象を見ておりまして痛感するわけでございます。 しょせん人間はそういう大自然と比べると小さな存在ではありますけれども、 一方その大自然は恵みだけをもたらすものでもありません。 これまで人類は多くの部分合理的であっても、 それを積み重ね、 それから生ずる問題、 また次の知恵で克服してまいったわけであります。
     今回の佐久間ダムの再編事業についてもそういう域を出ないかもしれませんけれども、 少なくとも佐久間ダムがこれまで五十年間に恩恵をもたらしたように、 この再編事業が今後少なくとも五十年間ぐらい我々に恩恵、 福音をもたらすものであればということを念願している次第でございます。
     その他の御質問につきましては、 関係部長から御答弁を申し上げます。
    ○副議長 (小野健吾君)  花岡環境森林部長。
            (環境森林部長 花岡志郎君登壇)  
    ○環境森林部長 (花岡志郎君)  海岸保安林の管理についてお答えいたします。
     近年では、 松の成長とともに強風や飛砂などによる被害が大幅に軽減されたことにより、 先人の自然との闘いの歴史は薄らぎ地域住民の松林とのかかわりも希薄になってきております。 この貴重な海岸保安林は、 自然災害から住宅地や農地を守る防災機能と周辺住民の憩いの場として利用される保健休養機能をあわせ持つことから、 地域の暮らしにかけがえのないものであり地域の人々と行政が協働して管理していくことが必要と考えております。
     このため、 今年度は一部の松林において管理上大きな課題となっている日照阻害や枝の落下被害などの解決に向けてワークショップを開催しながら、 飛砂や景観などに対する影響調査を実施しているところであります。 ことしの夏までの調査結果を踏まえ地域住民との協働による海岸防災林管理計画を策定し、 その計画に基づき生活環境保全林の整備や住民が参加する活動などにより、 住民が守り育て地域の誇りとする海岸林となるよう、 管理を進めてまいります。
     次に、 河川と松林への廃棄物不法投棄対策についてであります。
     河川や松林は、 だれでもいつでも、 どこからも自由に出入りでき、 特に夜間の不法投棄への対応において非常に難しいものがありますが、 県では五月三十日のごみゼロの日を中心に環境美化キャンペーンを行うなど、 未然防止のための啓発に重点を置いているところであります。
     しかしながら、 不法投棄が後を絶たないことから、 昨年九月、 天竜川を管理する国土交通省では、 県及び流域の七市町村と天竜川不法投棄防止会議を設置し、 不法投棄の情報を収集しながら順次撤去を行うほか、 土・日曜日の河川監視や悪質なものについては警察へ通報するなどの対応を図っております。 さらに不法投棄が特に多い箇所への進入路には、 今後車どめを設置し防止対策を講じていくと伺っております。
     県といたしましても、 河川や松林の良好な環境の保全に向けて関係機関と連携を図りながら、 不法投棄防止対策に努力してまいります。
    ○副議長 (小野健吾君)  栗原農業水産部長。
            (農業水産部長 栗原 績君登壇)
    ○農業水産部長 (栗原 績君)  アユの増殖についてお答えいたします。  
     アユは昨年のような大雨による濁り等が生育、 産卵に大きな影響を及ぼし漁獲量の変動が生じることから、 県内の河川においては漁業協同組合が毎年約五十トン、 六百万尾、 このうち天竜川水系では、 県全体の約三分の一の十八トン、 二百三十万尾程度を放流しております。 県といたしましては、 放流用アユの人工生産を行っている内水面漁業協同組合連合会のあゆ種苗センターに対し健康なアユが安定的に生産できるよう、 冷水病などの魚病対策指導を行うとともに、 新年度には生産増強を図るための施設整備に助成することとしております。
     また天竜川においては、 アユの産卵を保護するため下流域に設けた保護水面の管理をより徹底するとともに、 近年増加しているカワウによる食害防止のため鳥獣保護管理対策と調整したカワウの駆除のほか、 魚道下流部の巡回を強化して遡上期のアユを保護することにも引き続き取り組んでまいります。
     さらに、 水産試験場では、 天竜川の河川環境やアユの産卵ふ化量、 海における生育状況等の研究に取り組んでおり、 今後国において策定予定のカワウ保護管理指針も踏まえつつ、 これらの対策を総合的に実施することにより、 アユ資源の維持増大を図ってまいりたいと考えております。
    ○副議長 (小野健吾君)  櫻井土木部長。
            (土木部長 櫻井克信君登壇)
    ○土木部長 (櫻井克信君)  天竜川下流域の道路整備についてお答えいたします。
     天竜川下流域は、 浜松市を中心とした本県西部の商工業の中核をなす地域であり、 天竜川にかかる新天竜川橋や掛塚橋などは、 本県の広域的な経済活動と地域住民の日常生活を支える重要な橋梁でありますが、 新天竜川橋では、 その交通量が一日当たり八万台近くに達し朝夕の通勤時間帯を中心に深刻な渋滞が発生するなど、 地域の活動に支障が生じております。
     このため、 国では平成十九年度完成を目途に新天竜川橋八車線化拡幅事業を進めておりますが、 県におきましてもこれに関連して県道豊田竜洋線など五路線につきまして、 交差点改良や新たな歩道の整備を含む改築工事を進めております。 また掛塚橋の渋滞解消に向けて、 現在国道百五十号磐南バイパス第一期区間二・二キロメートルの整備を推進しており、 事業費ベースで今年度末までに七〇%の進捗となる見込みです。 本地域の渋滞の緩和には新天竜川橋拡幅が極めて大きな効果をもたらすものと考えておりますので、 新たな架橋構想につきましては拡幅事業完成後の交通状況や市町村合併後の土地利用状況などを見きわめながら、 その必要性などを関係市町村と一緒になって検討してまいります。
    ○副議長 (小野健吾君)  これで小楠和男君の質問は終わりました。

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