中国駐在員報告
2019年6月 経済 駐在員 : 石井 亘
流行を取り入れながら低価格に抑えた衣料品を大量生産し、短いサイクルで販売する「ファストファッション」ブランドはおおよそ10年前に中国に進出し、人気を博していたが、近年多くのブランドが業績不振に苦しんでいる。
上海市を代表するメインストリートの南京東路にも店舗を構えていた米国の代表的なファストファッションメーカーの「FOREVER21」が5月になって店舗閉店の告知をしたことは中国国内でも大きなニュースとなり、急な閉店を迎えて、在庫商品の投げ売りや混乱した店舗内の様子が報道された。中国最大のインターネット購買サイト「淘宝(タオバオ)」にあった同社の販売サイトも無くなっている。その他のブランドも同様で、英国の「ニュールック」は既に中国からの撤退を発表しており、中国内の120店舗は全て閉店予定である。同じく英国の「TOPSHOP」はタオバオでの販売を中止した。販売を継続しているブランドも厳しい状況にあり、日本でも良く知られている「ZARA」は2017年までは毎年前年比10%に近い成長を記録していたが、2018年販売実績は前年比3%増に留まった。「H&M」と「GAP」の2018年の市場占有率はそれぞれ0.4%、0.1%という低い数値である。
ファストファッションブランドの人気衰退の原因としては、多くの中国メーカーが同傾向の商品開発・販売を進めたことなどが挙げられている。一方でアパレル業界全体は好調を持続している。関係者は、「今の若者は、自分をアピールできる他人とは違ったファッションを嗜好していて、大量生産を主とするファストファッションにも自分の好みに合わせた商品選びができることを期待している。こうした若者の嗜好に各メーカーが今後どう対応できるかが市場獲得の道である。」と分析している。
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