韓国駐在員報告



2024年8月 社会・時事
駐在員 : 高橋 誠


活字離れが進んでいるとよく言われる。事実、韓国の文化体育観光部が4月に発表した「2023国民読書実態調査」によれば、紙媒体・電子媒体・オーディオブックのいずれか1冊でも読んだ人を指す「総合読書率」は、成人の場合、10年前の72.2%から、何と43.0%にまで下がってしまっている。10人のうち約6人は本を全く読んでいないということだ。
 一方で、小中高生はしっかり読んでいる。昨年も95.8%で、10年前から1%低下した程度。むしろ2021年に91.4%まで下がったが、急激に回復している。学生だから1冊くらい読むのは当たり前だろうが、読書量も36冊とかなり多い。一方の成人は3.9冊しか読んでいない。
 実際、出版社の売上及び営業利益はともに低下しており、韓国国内の出版社(293社)の2023年の売上合計額は1,556億ウォンで、前年比で4.8%減っており、営業利益の合計は246億ウォンで、前年比8.9%減っている。
 出版・図書販売業界がこのように苦しい中、意外と好調な動きを見せているのが独立書店だ。近年、個性的でおしゃれな書店やブックカフェなどが次々と誕生している。建築家や芸術家とコラボレーションした書店や、古い建物をリノベーションした書店、テーマ性を重んじ個性豊かな図書を集めた書店やカフェなどが、首都圏のみならず、自然がいっぱいの山奥や漁村などにも点在する。
先日、ソウルの中心に位置する景福宮の西側、西村(ソチョン)と呼ばれるエリアを訪れた。オシャレなカフェやギャラリーなどがあるエリアでもあるが、本に拘った店も多くある。ソウル最古の「デオ書店」のレトロさは他にない個性を放っているし、景福宮のすぐ横にある「IRASUN」は写真集に特化した書店だ。デジタル化が際立つ今だからこそ、アナログの紙の本の持つ質感や空間全体を楽しんだり、本を読むくつろぎの時間を大切にしたい若者が増えているようだ。ちなみに韓国人は日本の小説も大好き。東野圭吾や村上春樹は特に人気だ。
そのようなブームを先取りした形なのだろう。昨年来、当所と協力しながら様々なテーマ性を持った旅行商品(例えばトレイルランニングやマラソン大会、キャンプやスケッチなど)を開発している旅行会社「インターパークトリプル」社は、「ブックトークホリック 静岡4日」として、女優と一緒に回るブックトークヒーリング旅行の商品を販売している。ただ、今のところまだ予約は入っていない。やはり読書の旅行商品は8月でなく秋が良いと思う。

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