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中国駐在員報告
2012年2月 政治 駐在員 : 井口真彦
春節(旧正月)の前々夜の1月21日、上海の衛星テレビ「東方衛視」では、「中国達人秀」という雑技や踊り、歌などのオーディション番組の最終日を迎えていた。これは、あのスーザン・ボイルを生み出したイギリスの番組『Britain's Got Talent』の中国版と言われている人気番組である。
今回は、山東省の農村から北京に出て火鍋屋の店員をしている女性が、その素晴らしい歌声で優勝し、チャイニーズドリームを実現したのだが、翌日はこの話題で盛り上がる職場も多かったと思われる。
中国のテレビは、日本と比べてチャンネル数が非常に多いが、このようなオーディション番組を始め、ゲーム、バラエティ、恋愛、お見合い、トークショーなどの娯楽番組が花盛りであり、恋愛ものや愛憎劇の連続ドラマも人気を博している。
しかし、この状況も、今年から少し様変わりしているようである。
昨年10月、中国共産党第17期全国代表大会第6回全体会議(17期6中全会)が開催され、「文化強国」を建設するという戦略を打ち出された。一見、地味な政策のようにも思えるが、これが目に見える形で現れたと思われるのが、娯楽番組の規制である。
17期6中全会の閉幕直後、中国国家ラジオ・映画・テレビ総局が、衛星テレビが放送する娯楽番組の数などを制限し、視聴率による番組のランキングを禁止する通知を出したのである。目的は、「過度の娯楽化と低俗化を防ぐ」ことであり、「中華民族の伝統的な美徳を発揚する」番組を放送するよう求めている。
具体的には、午前6時から翌日午前0時までの時間帯には、ニュース番組を2時間以上放送するよう求め、国民に人気のオーディションやお見合いなどの娯楽番組は、週2回以下とし、ゴールデンタイム(午後7時30分から10時)は、90分以内とされた。これが1月1日から実施されたのである。
知人の大学教授は、この措置には、文化の低俗化を防ぐ目的がある他、人気娯楽番組を次々と生み出して視聴率を稼ぐ地方の人気番組に対し、国営中国中央電子台(CCTV)の劣勢を跳ね返す意図もあるのではないかと言っていた。
文化をこのような形で規制することの是非はさておき、中央の決定に基づき実行される措置の果断さには目を瞠るばかりである。
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