東南アジア駐在員報告
2020年6月 経済 駐在員 : 福田 渉
5月18日、主要メディアが一斉にタイ国際航空の事実上の破綻を報じた。フラッグキャリアとして国を代表して運航してきたタイ航空が、新型コロナウイルス感染症の影響によって経営破綻の状態に追い込まれたことに多くの人が衝撃を受けた。しかし、破綻の原因は単に新型コロナウイルスによる旅客需要の急減によるものだけではなかった。
2017年以降、タイ航空は3期連続で最終赤字を計上しており、慢性的な経営不振が続いていた。急速に台頭する格安航空会社(LCC)との価格競争に巻き込まれた中でも汚職や縁故主義が蔓延する同社の放漫な経営体質は変わらなかった。国民は51%の株式を保有する政府がこうした状況を見過ごしてきたことに強い怒りを示した。閣議で予定されていた再建計画の提案が見送られ、最終的には政府が引導を渡すかたちで破産法による会社更生手続をとることになった。新型コロナウイルスが今回の破綻の引き金になったのは間違いないが、以前から課題になっていた同社の体質や経営問題が露見し、国民が同社や政府に対してため込んでいた不満が一挙に噴出したことも原因となった。
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