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北米駐在員報告2002年11月 政治 アメリカは拉致問題をめぐる一連の日朝の交渉、日本政府の対応及び日本のメディア報道をどう見ているか(在米ジャーナリストからの情報)
しかしながら、米政府は拉致問題のみを日朝国交正常化交渉の主要議題にすることには真っ向から反対していたし、小泉首相をはじめとして日本政府当局者にはこれまで何度となく強く要請してきた。つまり、北朝鮮問題を国際問題ととらえた時、核開発とミサイル問題、さらには通常兵器拡散の問題の方が、拉致問題よりも重要な問題であるとの認識をアメリカ政府が持っているためである。テロリスト国家への支援となる兵器拡散の問題等を外した日朝交渉には、はっきりと反対してきた。この点はブッシュ大統領から直接小泉首相に伝えられているという。 (1) ニコラス・エバースタッド(Nicholas Eberstadt)アメリカン・エンタープライズ・インステチュート主任研究員
ワシントンも元々日朝の急接近には心穏やかではなかった。既に米国との枠組み合意を破って核開発を続けている北朝鮮が資金欲しさに日本に近づき、日本政府の一部も日本外交の独自性を見せながら、国内的には未解決の拉致問題を一気に解決しようとした。米政府は日本政府から事前の通告を受けていたが、今、北朝鮮に甘い顔を見せるのはタイミングがよくないという判断がワシントンにはあった。なぜなら、米政府はもう半年後であれば、北朝鮮からより大きな譲歩が引き出せると考えていたからだ。しかしそれを面と向かって日本にも言えなかった。アメリカは当初から現段階で、北朝鮮とは話し合いだけで解決するのは難しいと考えていたため、小泉首相訪朝後の拉致をめぐる日朝の緊張はアメリカにとっては、ある程度予想していた話である。アメリカ政府が今心配していることは、拉致問題に日本政府が振り回されて日本の外交の基軸が失われ出している点である。」
アメリカでも1999年、キューバから母親と一緒にアメリカに亡命しようとして遭難、母親は溺れ死んだが少年は米沿岸警備隊に助けられ、その少年のキューバへの引渡しが問題となった。フロリダには死んだ母親の親戚がおり、キューバには少年の父親がいる。永久亡命か、キューバ送還かで米国論が二分した。結局少年は父親の元に帰ることで決着したが、その間大変な議論があった。今の日本を見ていると、北朝鮮送還とか、本人たちに決定を任せるべきだといった議論が日本人の中から全く出てこないのはなぜか。そうした観点からの声が押しつぶされているとしたら日本は極めて危険な状態にあるのではないかと思う。正常化交渉では案の定、北朝鮮は拉致問題ではへそを曲げてきたが、これで交渉断絶とはいかないだろう。いずれ北朝鮮の方から何か条件を出してくると思われるが、その際の日本の対応が注目される。」 |
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